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特開2023-40981太陽電池およびその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040981
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】太陽電池およびその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20230315BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20230315BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20230315BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20230315BHJP
【FI】
H01L31/04 240
H01L31/04 420
H01L31/06 300
G02B1/115
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171256
(22)【出願日】2021-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】202111064317.8
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521376620
【氏名又は名称】上海晶科緑能企業管理有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】リ ウン チー
(72)【発明者】
【氏名】鄭霈霆
(72)【発明者】
【氏名】楊潔
(72)【発明者】
【氏名】徐孟雷
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
(72)【発明者】
【氏名】金浩
【テーマコード(参考)】
2K009
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009BB06
2K009CC02
2K009CC03
2K009DD01
5F151AA02
5F151AA16
5F151BA16
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5F151CB24
5F151CB29
5F151CB30
5F151DA03
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5F151HA06
5F251AA02
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5F251DA03
5F251GA04
5F251GA14
5F251HA03
5F251HA06
(57)【要約】
【課題】本願は、太陽電池の技術分野に関し、特に太陽電池およびその製造方法、光起電力モジュールに関する。
【解決手段】太陽電池は、対向する前面と裏面を有するベースと、ベースの前面に位置しかつベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層と、ベースの裏面に位置しかつ裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及びベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、を備える。本願の実施例は、入射光線に対する太陽電池の反射率を小さくすることに有利である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面と裏面を有するベースと、
前記ベースの前記前面に位置しかつ前記ベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層と、
前記ベースの裏面に位置しかつ前記裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、
を備えることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第3パッシベーション層の屈折率は、前記第2パッシベーション層の屈折率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第3パッシベーション層の屈折率は1.4~1.6であり、前記第2パッシベーション層の屈折率は1.8~2である、
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第3パッシベーション層は、前記ベースから離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層および第2酸化ケイ素層を含み、
前記第1酸化ケイ素層において、1.9<s/r≦2.2であり、前記第2酸化ケイ素層において、2.2≦s/r≦3.2であり、かつ前記第1酸化ケイ素層の屈折率は、前記第2酸化ケイ素層の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記誘電体材料は、Al材料であり、且つ1.4≦y/x≦1.6である、
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記前面に垂直な方向において、前記第3パッシベーション層の厚さは、60nm~90nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記前面に垂直な方向において、前記第2パッシベーション層の厚さは、35nm~55nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記前面に垂直な方向において、前記第1パッシベーション層の厚さは、2nm~8nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1パッシベーション層の屈折率は、1.6~1.8である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記ドープ導電層における前記ベースから離反する側に位置する第4パッシベーション層をさらに備え、
前記第4パッシベーション層は、第2Si材料(1.2≦n/m≦1.6)を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第4パッシベーション層の屈折率は、1.9~2.1であり、
前記裏面に垂直な方向において、前記第4パッシベーション層の厚さは、80nm~100nmである、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記ベースは、N型半導体ベースであり、
前記ドープ導電層は、N型ドープポリシリコン層、N型ドープ微結晶シリコン層、またはN型ドープアモルファスシリコン層のうちの少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる少なくとも1つのセルストリングと、
前記セルストリングの表面を覆うための封止層と、
前記封止層における前記セルストリングから離れる表面を覆うためのカバープレートと、
を備えることを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項15】
対向する前面と裏面を有するベースを提供することと、
前記ベースの裏面において前記裏面から離れる方向に、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層が順に形成されることと、
前記ベースの前面において前記ベースから離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層が、順に形成されることと、
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項16】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第3パッシベーション層を形成し、
前記第3パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素を導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記亜酸化窒素との流量比が1:15~1:20、反応時間が3s~22sであることを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第2パッシベーション層を形成し、
前記第2パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~180mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記アンモニアガスとの流量比が1:3~1:16、反応時間が3s~31sであることを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項18】
原子層堆積法により前記第1パッシベーション層を形成し、
前記第1パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にトリメチルアルミニウム及び水を導入し、前記トリメチルアルミニウムと前記水の割合が1:2~1:3、温度が200℃~300℃であることを含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項19】
前記第1パッシベーション層を形成した後に、さらに、
窒素ガス雰囲気下で前記第1パッシベーション層をアニール処理し、アニール温度が500℃~600℃、アニール時間が10min~13minであることを含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池の分野に関し、特に太陽電池およびその製造方法、光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、良好な光電変換能力を有しており、太陽電池の表面におけるキャリア再結合を抑制するために、通常、太陽電池の表面にパッシベーション構造が作製される。通常、太陽電池の表面に位置するパッシベーション構造は、比較的高い屈折率および良好なパッシベーション効果を有し、入射光線をできるだけ多く吸収することで、キャリア濃度を高くする。
【0003】
しかしながら、太陽電池の表面にパッシベーション層を作製した後も、太陽電池の入射光線に対する反射率は依然として比較的高いため、太陽電池の開放電圧、短絡電流およびフィルファクター(FF)が比較的低く、太陽電池の光電変換率が比較的低くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、少なくとも入射光線に対する太陽電池の反射率を低減するのに有利な太陽電池およびその製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願の実施例により提供される太陽電池は、対向する前面と裏面を有するベースと、ベースの前面に位置しかつベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層と、ベースの裏面に位置しかつ裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及びベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、を備える。
【0006】
また、第3パッシベーション層の屈折率は、第2パッシベーション層の屈折率よりも小さい。
【0007】
また、第3パッシベーション層の屈折率は1.4~1.6であり、第2パッシベーション層の屈折率は1.8~2である。
【0008】
また、第3パッシベーション層は、ベースから離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層および第2酸化ケイ素層を含み、第1酸化ケイ素層において、1.9<s/r≦2.2であり、第2酸化ケイ素層において、2.2≦s/r≦3.2であり、かつ第1酸化ケイ素層の屈折率は、第2酸化ケイ素層の屈折率よりも大きい。
【0009】
また、誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含む。
【0010】
また、誘電体材料は、Al材料であり、且つ1.4≦y/x≦1.6である。
【0011】
また、前面に垂直な方向において、第3パッシベーション層の厚さは、60nm~90nmである。
【0012】
また、前面に垂直な方向において、第2パッシベーション層の厚さは、35nm~55nmである。
【0013】
また、前面に垂直な方向において、前記第1パッシベーション層の厚さは、2nm~8nmである。
【0014】
また、第1パッシベーション層の屈折率は、1.6~1.8である。
【0015】
また、ドープ導電層におけるベースから離反する側に位置する第4パッシベーション層をさらに備え、第4パッシベーション層は、第2Si材料(1.2≦n/m≦1.6)を含む。
【0016】
また、第4パッシベーション層の屈折率は、1.9~2.1であり、裏面に垂直な方向において、第4パッシベーション層の厚さは、80nm~100nmである。
【0017】
また、ベースはN型半導体ベースであり、ドープ導電層は、N型ドープポリシリコン層、N型ドープ微結晶シリコン層、またはN型ドープアモルファスシリコン層のうちの少なくとも一種である。
【0018】
これに応じて、本願の実施例は、上記の太陽電池を複数接続してなるセルストリングと、セルストリングの表面を覆うための封止層と、封止層におけるセルストリングから離れる表面を覆うためのカバープレートと、を備える光起電力モジュールをさらに提供する。
【0019】
これに応じて、本願の実施例は、対向する前面と裏面を有するベースを提供することと、ベースの裏面において裏面から離れる方向に、トンネル酸化層及びベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層が順に形成されることと、ベースの前面においてベースから離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層が、順に形成されることと、を含む太陽電池の製造方法をさらに提供する。
【0020】
また、プラズマ強化化学気相成長法により第3パッシベーション層を形成し、第3パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素(笑気)を導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cm、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、シランと亜酸化窒素との流量比が1:15~1:20、反応時間が3s~22sであることを含む。
【0021】
また、プラズマ強化化学気相成長法により前記第2パッシベーション層を形成し、第2パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~180mW/cm、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、シランとアンモニアガスとの流量比が1:3~1:16、反応時間が3s~31sであることを含む。
【0022】
また、原子層堆積法により第1パッシベーション層を形成し、第1パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にトリメチルアルミニウム及び水を導入し、トリメチルアルミニウムと水の割合が1:2~1:3、温度が200℃~300℃であることを含む。
【0023】
また、第1パッシベーション層を形成した後に、さらに、窒素ガス雰囲気下で第1パッシベーション層をアニール処理し、アニール温度が500℃~600℃、アニール時間が10min~13minであることを含む。
【0024】
本願の実施例により提供される技術案は、少なくとも以下の利点がある。
【0025】
本願の実施例により提供される太陽電池の技術案において、太陽電池は、対向する前面と裏面を有するベースと、ベースの前面に位置しかつベースから離れる方向に順次設置されている第1パッシベーション層、第2パッシベーション層及び第3パッシベーション層と、を備えており、第1パッシベーション層は、誘電体材料を含み、第2パッシベーション層は、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含み、第1Si材料における原子数比を調整することにより、第2パッシベーション層が比較的高い屈折率を有し、第2パッシベーション層の長波長光に対する吸収能力が強くなり、第3パッシベーション層は、Si材料(1.9≦s/r≦3.2)を含み、Si材料における原子数比の値を調整することにより、Si材料が短波長光に対して強い吸収能力を有する。このように、第2パッシベーション層の長波長光に対する強い吸収能力を相乗させて、太陽電池全体の入射光線に対する吸収能力を強くすることで、太陽電池の入射光線に対する反射率を小さくすると共に、第1Si材料およびSi材料が良好な水素不活性化効果を有し、さらに、太陽電池の開放電圧、短絡電流およびフィルファクターを向上させ、太陽電池の光電変換率を向上させることができる。
【0026】
また、第3パッシベーション層の屈折率は第2パッシベーション層の屈折率よりも小さいため、入射光線が垂直に近い角度で入射するようにし、入射光線に対する利用率を高め、さらに入射光線に対する太陽電池の反射率を小さくして、ベースの裏面におけるキャリア濃度を増加させ、太陽電池の光電変換率を高める。
【図面の簡単な説明】
【0027】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明されるが、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、特に断りのない限り、添付の図面における図は縮尺に制限されない。
図1図1は、本願の一実施例に係る太陽電池の一種の構造を示す図である。
図2図2は、本願の一実施例に係る太陽電池のもう一種の構造を示す図である。
図3図3は、本願の一実施例に係る太陽電池の別の種類の構造を示す図である。
図4図4は、本願の一実施例に係る太陽電池のさらに別の種類の構造を示す図である。
図5図5は、本願の実施例に係る波長-反射率の対比模式図である。
図6図6は、本願の実施例に係る光起電力モジュールの構造模式図である。
図7図7は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図8図8は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図9図9は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図10図10は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図11図11は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図12図12は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造模式図である。
図13図13は、本願による比較例1における太陽電池のの構造を示す図である。
図14図14は、本願による比較例2における太陽電池のの構造を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0028】
背景技術から分かるように、現在、入射光線に対する太陽電池の反射率が比較的高いという問題がある。
【0029】
分析の結果、入射光線に対する太陽電池の反射率が比較的高い原因の一つは、現在、太陽電池の表面にパッシベーション層として窒化ケイ素材料を用いるのが一般的であるが、窒化ケイ素材料はパッシベーション効果がよいものの、窒化ケイ素材料の比較的高い屈折率が一定の光吸収損失をもたらしており、すなわち、窒化ケイ素パッシベーション層の反射防止率が低いため、入射光線に対する太陽電池の吸収能力が弱くなってしまうことが分かった。
【0030】
本願の実施例により提供される太陽電池は、ベースの前面に位置しかつベースから離れる方向に順次設置されている第1パッシベーション層、第2パッシベーション層及び第3パッシベーション層を備えており、第1パッシベーション層は、誘電体材料を含み、第2パッシベーション層は、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含み、第1Si材料における原子数比を調整することにより、第2パッシベーション層が比較的高い屈折率を有し、第2パッシベーション層の長波長光(例えば、赤外光または近赤外光)に対する吸収能力が強くなり、第3パッシベーション層は、Si材料(1.9≦s/r≦3.2)を含み、Si材料における原子数比の値を調整することにより、Si材料が短波長光に対して強い吸収能力を有する。このように、第2パッシベーション層の長波長光に対する強い吸収能力を相乗させて、太陽電池全体の入射光線に対する吸収能力を強くすることで、太陽電池の表面における反射防止率が大きくなると共に、第1Si材料およびSi材料が良好なパッシベーション効果を有し、さらに、太陽電池の開放電圧、短絡電流およびフィルファクターを向上させ、太陽電池の光電変換率を向上させることができる。
【0031】
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をより良く理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部および以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0032】
図1は、本願の一実施例に係る太陽電池の構造を示す図である。
【0033】
図1を参照して、太陽電池は、対向する前面と裏面を有するベース100と、ベース100の前面に位置しかつベース100から離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層120、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層130、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層140と、ベース100の裏面に位置しかつ裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層150、及びベース100と同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層160と、を備える。
【0034】
ベース100は、入射光線を受光して光生成キャリアを生成するためのものであり、いくつかの実施例において、ベース100は、シリコンベース100であってもよく、シリコンベース100の材料は、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、及び微結晶シリコンを含み得る。また、他のいくつかの実施例において、ベース100の材料は、炭素単体、有機材料、及び多価化合物であってもよく、多価化合物は、ガリウムヒ素、テルル化カドミウム、銅インジウムセレン等を含む。いくつかの実施例において、太陽電池は、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化層150がパッシベーションコンタクトしている)電池であり、ベース100の前面および/または裏面は、いずれも入射光線を受光するために用いられる。通常、前面は、光源に向けられた主受光面とされる。いくつかの実施例において、ベース100の前面は、入射光線に対するベース100の前面の反射率が小さくなるようにピラミッドテクスチャーとして設けられることができ、これにより、光線に対する吸収利用率が大きくなる。ベース100の裏面は、例えば積層した段差模様のような非ピラミッドテクスチャーとして設けられてもよく、これにより、ベース100の裏面に位置するトンネル酸化層150が高い緻密性および均一性を有し、ベース100の裏面に対するトンネル酸化層150の不動態化効果を良好にする。
【0035】
いくつかの実施例において、ベース100は、N型半導体ベース100であり、即ち、ベース100内にN型イオンがドープされており、N型イオンは、リン、ヒ素、またはアンチモンのいずれであってもよい。ベース100の前面においてエミッタ110を有し、エミッタ110は、P型イオンがドーピングされたP型ドーピング層であってもよく、エミッタ110は、ベース100とPN接合を形成している。いくつかの実施例において、エミッタ110は、ベース100の表層に対してP型イオンの拡散ドーピングを行うことによって得られ、ドーピングされた一部のベース100がエミッタ110に変換されている。具体的には、いくつかの実施例において、P型イオンは、ボロンイオンであってもよい。
【0036】
第3パッシベーション層140のSi材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表す。Si材料におけるO原子数とSi原子数との比の大きさを調整することで、Si材料の厚さの大きさ及び屈折率の大きさを調整することができ、第3パッシベーション層140の屈折率と第2パッシベーション層130の屈折率とを合わせ、屈折率整合性に劣ることによる光反射損失を小さくする一方、第3パッシベーション層140の厚さを、入射光線の波長及び屈折率と整合させる。これは、パッシベーション層の厚さ及び屈折率と入射光線の波長との間において、数式の「入射光線の波長=4×厚さ×屈折率」を満たす場合、パッシベーション層が良好な光透過性を有して、入射光線に対する吸収能力が強くなるだけでなく、パッシベーション層が良好なパッシベーション効果を奏することもできるからである。いくつかの実施例において、入射光線の波長を632nmとしてもよい。
【0037】
また、Si材料におけるO原子数とSi原子数との比値を調整することにより、第3パッシベーション層140の短波長光に対する吸収能力が強くなり、第2パッシベーション層130の長波長光に対する強い吸収能力と協力することで、入射光線に対する太陽電池全体の吸収能力が強くなり、さらに、太陽電池のベース100の前面におけるキャリア濃度を増加させ、開放電圧及び短絡電流を向上させることで、フィルファクターを大きくし、太陽電池の光電変換率を向上させる。なお、従来の太陽電池では、青色を呈することが一般的であるが、これは、従来の太陽電池では、パッシベーション層の短波長光に対する反射率が比較的高いからである。本願の実施例では、第3パッシベーション層140の短波長光に対する吸収能力が強いため、封止した後に、太陽電池モジュールの色が納戸色ひいては黒色を呈するので、濃色モジュールの製造に有利である。
【0038】
いくつかの実施例において、第3パッシベーション層140の屈折率は、第2パッシベーション層130の屈折率よりも小さい。具体的には、Si材料におけるO原子数とSi原子数との比値を調整することで、第3パッシベーション層140の屈折率が第2パッシベーション層130の屈折率よりも小さくなる。第3パッシベーション層140が光粗媒体(rarer medium)であり、第2パッシベーション層130が光密媒体(denser medium)であり、入射光線が光粗媒体から密媒体に入るとき、光密媒体の屈折率が大きいため、光密媒体中にある入射光線と法線とのなす角が小さいので、入射光線が、垂直入射に近い角度でベース100に入射することができ、ベース100に入射した光線が多く、さらに、太陽電池の入射光線に対する反射率が小さくなる。なお、第3パッシベーション層140におけるSi材料の屈折率自体は、第2パッシベーション層130における第1Si材料の屈折率よりも小さいものの、Si材料におけるO原子数とSi原子数との比値を更に調整することにより、第1Si材料の屈折率よりもSi材料の屈折率をより一層低くし、このように、第3パッシベーション層140から第2パッシベーション層130へ入射光線を進入させるとき、Si材料の屈折率がさらに小さくならないのに対して、より垂直に近い角度で入射させることができ、入射光線に対する太陽電池の反射率をさらに低下させ、太陽電池のベース10の前面におけるキャリア濃度を増加させて、光電変換率を向上させる。
【0039】
具体的には、いくつかの実施例において、第3パッシベーション層140の屈折率が1.4~1.6であり、この屈折率範囲では、Si材料の屈折率を第1Si材料の屈折率よりも小さくすることで、第3パッシベーション層140の屈折率が第2パッシベーション層130の屈折率よりも小さくなるため、入射光線に対する吸収利用率が高い。一方では、Si材料の屈折率が小さすぎるという問題も回避することができ、これにより、第3パッシベーション層140がこの屈折率範囲において入射光線に対する反射防止効果が強く、入射光線に対する利用率をより一層向上する。
【0040】
なお、入射光線の波長及び第3パッシベーション層140の屈折率が既に決定された場合、Si材料におけるO原子数とSi原子数との比値を調整することにより、第3パッシベーション層140の厚さを入射光線及び屈折率に合わせて、良好なパッシベーション効果及び光透過性を達成し、また、第3パッシベーション層140の厚さを第2パッシベーション層130の厚さにも合わせて、太陽電池のベース100の前面におけるパッシベーション効果全体が良好となる。
【0041】
いくつかの実施例では、前面に垂直な方向において、第3パッシベーション層140の厚さは、60nm~90nmである。この厚さの範囲では、第3パッシベーション層140がよい光透過能力を有しており、多くの短波長光を吸収することができる。また、この厚さの範囲では、良いパッシベーション効果も有しており、このように、太陽電池のベース100の前面におけるキャリア濃度が高いだけでなく、ベース100の前面におけるキャリア再結合が抑制されることができ、太陽電池の開放電圧及び短絡電流を向上させ、さらに太陽電池の光電変換率を増大させる。
【0042】
具体的には、いくつかの実施例において、O原子数とSi原子数との比値は、1.9≦s/r≦2.2であってもよく、第3パッシベーション層140の屈折率は1.51~1.6であってもよく、第3パッシベーション層140の厚さは60nm~67nmであってもよい。また、他のいくつかの実施例において、O原子数とSi原子数との比値は、2.2<s/r≦2.5であってもよく、第3パッシベーション層140の屈折率は1.47~1.51であってもよく、第3パッシベーション層140の厚さは67nm~74nmであってもよい。別の実施例において、O原子数とSi原子数との比値は、2.5<s/r≦2.7であってもよく、第3パッシベーション層140の屈折率は1.45~1.47であってもよく、第3パッシベーション層140の厚さは74nm~79nmであってもよい。さらに別の実施例において、O原子数とSi原子数との比値は、2.7<s/r≦3.2であってもよく、第3パッシベーション層140の屈折率は1.4~1.45であってもよく、第3パッシベーション層140の厚さは79nm~90nmであってもよい。
【0043】
図2を参照して、いくつかの実施例において、第3パッシベーション層140は、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142を含む2層構造であってもよく、第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142は、いずれもSi材料を含む。ここで、第1酸化ケイ素層141において、1.9≦s/r≦2.2であり、第2酸化ケイ素層142において、2.2<s/r≦3.2であり、且つ、第1酸化ケイ素層141の屈折率は第2酸化ケイ素層142の屈折率よりも大きい。
【0044】
第3パッシベーション層140が単層構造であるのに対して、第1酸化ケイ素層141及び第2酸化ケイ素層142を設け、かつ第1酸化ケイ素層141の屈折率を第2酸化ケイ素層142の屈折率よりも大きくすることで、入射光線の第3パッシベーション層140の内部での反射及び干渉回数が増加し、第3パッシベーション層140による入射光線の吸収がより大きく増加するため、良い反射防止効果を達成することができる
【0045】
第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142は、いずれもSi材料を含み、Si材料におけるO原子数とSi原子数との比値を調整することで、第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142の屈折率および厚さの大きさが制御され、第1酸化ケイ素層141の屈折率が第2酸化ケイ素層142の屈折率よりも大きくなるとともに、第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142の厚さがそれぞれ屈折率に合わせ、これにより、第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142の厚さが揃えられることにより、第1酸化ケイ素層141および第2酸化ケイ素層142は良いパッシベーション効果を有する。
【0046】
具体的には、いくつかの実施例において、第1酸化ケイ素層141の屈折率は1.51~1.6、具体的には1.53~1.6であってもよく、これに応じて、第1酸化ケイ素層において、O原子数とSi原子数との比値は、1.9≦s/r≦2.1であってもよく、厚さは30nm~40nmであってもよい。第2酸化ケイ素層142の屈折率は、1.4~1.51であってもよく、具体的には1.4~1.47であってもよく、これに応じて、第2酸化ケイ素層において、O原子数とSi原子数との比値は、2.4≦s/r≦3.2であってもよく、厚さは30nm~50nmであってもよい。
【0047】
図3を参照して、他のいくつかの実施例において、第3パッシベーション層140は、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層141、第2酸化ケイ素層142および第3酸化ケイ素層143を含む3層構造であってもよく、第1酸化ケイ素層141、第2酸化ケイ素層142および第3酸化ケイ素層143は、いずれもSi材料を含み、且つ、第1酸化ケイ素層141、第2酸化ケイ素層142および第3酸化ケイ素層143の屈折率は、順次に小さくなっている。いくつかの実施例において、第1酸化ケイ素層141におけるO原子数とSi原子数との比値は、1.9≦s/r≦2.2であってもよく、具体的には1.9≦s/r≦2.1であってもよく、屈折率は1.51~1.6であってもよく、具体的には1.53~1.6であってもよく、厚さは10nm~20nmであってもよい。第2酸化ケイ素層142におけるO原子数とSi原子数との比値は、2.2<s/r≦2.7であってもよく、具体的には2.2≦s/r≦2.5であってもよく、屈折率は1.45~1.51であってもよく、具体的には1.46~1.51であってもよく、厚さは20nm~30nmであってもよい。第3酸化ケイ素層143におけるO原子数とSi原子数との比値は、2.7<s/r≦3.2であってもよく、具体的には2.9≦s/r≦3.2であってもよく、屈折率は1.4~1.45であってもよく、具体的には1.4~1.43であってもよく、厚さは30nm~40nmであってもよい。
【0048】
なお、第3パッシベーション層140が単層構造であっても多層構造であっても、第3パッシベーション層140の全体の屈折率範囲は、1.4~1.6の範囲内であり、これにより、第3パッシベーション層140の屈折率と第2パッシベーション層130の屈折率とを合わせ、入射光線に対するベース100の吸収能力が強くなる。第3パッシベーション層140の全体の屈折率範囲が1.4~1.6の範囲内である条件において、第3パッシベーション層140が単層構造であっても多層構造であっても、第3パッシベーション層140の全体の厚さは60nm~90nmの範囲内であることが理解できる。
【0049】
続いて図1を参照すると、第2パッシベーション層130における第1Si材料が高い屈折率を有するため、第1Si材料におけるSi-H結合の密度が大きく、第1Si材料に良いパッシベーション効果を持たせる。しかしながら、第1Si材料の高い屈折率も一定の光吸収損失をもたらし、すなわち、入射光線に対する反射防止能力が劣る。本願の実施例では、第2パッシベーション層130におけるベース100から離れる側に第3パッシベーション層140が設けられており、第3パッシベーション層140におけるSi材料が相対的小さい屈折率を有するため、第2パッシベーション層130の高い屈折率と第3パッシベーション層140の低い屈折率とが光学的に整合し、入射光線に対するベース100の吸収能力が向上する。また、第2パッシベーション層130は長波長光を重点的に吸収し、第3パッシベーション層140は短波長光を重点的に吸収するため、異なる波長帯域の入射光線に対する太陽電池の吸収能力を良好にすることができる。
【0050】
第2パッシベーション層130の第1Si材料において、1.3≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数であり、uはSi原子の数である。N原子数とSi原子数の比値を調整することにより、第2パッシベーション層130の屈折率が第3パッシベーション層140の屈折率よりも大きくなるように、第2パッシベーション層130の屈折率および厚さの大きさを制御することで、第3パッシベーション層140から第2パッシベーション層130に入射光線を垂直に近い角度で入射させ、入射光線の利用率を高めることができる。
【0051】
具体的には、いくつかの実施例において、第2パッシベーション層130は、単層構造であってもよく、第2パッシベーション層130の屈折率は、1.8~2であってもよい。この屈折率範囲において、第2パッシベーション層130の屈折率と第3パッシベーション層140の屈折率との光学整合性がよく、入射光線に対するベース100の吸収能力が強くなり、入射光線に対する太陽電池の反射率が低減される。また、この屈折率範囲においては、第2パッシベーション層130の屈折率が低くなり過ぎないため、第1パッシベーション層120の反射光又は出射光を、第2パッシベーション層130を介して再びベース100内に入射させることができる。また、この屈折率範囲においては、第2パッシベーション層130のパッシベーション効果が良いので、ベース100の前面における界面欠陥を少なくして、ベース100の前面におけるキャリア再結合を抑制し、太陽電池の光電変換率を向上させることができる。
【0052】
入射光線の波長及び第2パッシベーション層130の屈折率の大きさに応じて、第2パッシベーション層130の厚さを設定し、第2パッシベーション層130の厚さを屈折率に合わせることで、入射光線に対する第2パッシベーション層130の吸収能力及びパッシベーション効果が良くなる。また、太陽電池の全体の厚さに合わせて、第2パッシベーション層130の厚さを設定することで、太陽電池の全体の厚さが薄くなりすぎて割れの問題が生じるのを防止すること、及び、太陽電池の全体の厚さが厚くなりすぎて封止しにくいという問題を回避することもできる。具体的には、Si原子数とN原子数の比値を調整することで、第2パッシベーション層130の厚さの大きさを制御することができる。
【0053】
具体的には、いくつかの実施例では、前記前面に垂直な方向において、第2パッシベーション層130の厚さは、35nm~55nmである。この厚さの範囲において、第2パッシベーション層130の厚さが薄くなり過ぎないため、入射光線に対する第2パッシベーション層130の屈折効果が良好となり、第2パッシベーション層130が薄くなり過ぎることにより、入射光線が他のパッシベーション膜層を介して出射されるおそれや、ベース100に吸収されずにベース100を介して出射されるおそれが生じることを回避する。一方、この厚さの範囲内では、第2パッシベーション層130内に位置する正電荷量が水素不活性化効果を満たすので、ベース100の前面でのキャリア再結合がより一層抑制される。
【0054】
具体的には、いくつかの実施例において、N原子数とSi原子数との比値が1.3≦v/u≦1.4であってもよく、第2パッシベーション層130の屈折率が1.93~2であってもよく、第2パッシベーション層130の厚さが35nm~40nmであってもよい。また、他のいくつかの実施例において、N原子数とSi原子数との比値が1.4<v/u≦1.55であってもよく、第2パッシベーション層130の屈折率が1.87~1.93であってもよく、第2パッシベーション層130の厚さが40nm~48nmであってもよい。別の実施例において、N原子数とSi原子数との比値が1.55<v/u≦1.65であってもよく、第2パッシベーション層130の屈折率が1.84~1.87であってもよく、第2パッシベーション層130の厚さが48nm~53nmであってもよい。さらに別の実施例において、N原子数とSi原子数との比値が1.65<v/u≦1.7であってもよく、第2パッシベーション層130の屈折率が1.8~1.84であってもよく、第2パッシベーション層130の厚さが53nm~55nmであってもよい。
【0055】
図4を参照して、他のいくつかの実施例において、第2パッシベーション層130は、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132及び第3窒化ケイ素層133を含む3層構造であってもよく、且つ、第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132及び第3窒化ケイ素層133の屈折率は、順次に小さくなり、第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132及び第3窒化ケイ素層133は、いずれも第1Si材料を含む。多層構造が設けられるのは、長波長光のうちの長波長フォトンを第2パッシベーション層130の内部で複数回反射及び干渉させることができ、窒化ケイ素層を一層だけとするよりも、長波長フォトンの利用率をより一層大きく増加させ、長波長応答を高めることで、より多くの長波長光を吸収することができるからである。
【0056】
第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132および第3窒化ケイ素層133におけるN原子数とSi原子数との比値を調整することにより、第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132および第3窒化ケイ素層133の屈折率および厚さを制御する。具体的には、いくつかの実施例において、第1窒化ケイ素層131におけるN原子数とSi原子数との比値を1.3≦v/u≦1.4とし、第2窒化ケイ素層132におけるN原子数とSi原子数との比値を1.4<v/u≦1.55とし、第3窒化ケイ素層133におけるN原子数とSi原子数との比値を1.55<v/u≦1.7とするように調整してもよい。
【0057】
これに応じて、第1窒化ケイ素層131の屈折率は1.93~2であってもよく、厚さは8nm~15nmであってもよい。第2窒化ケイ素層132の屈折率は1.87~1.93、具体的には1.88~1.9であってもよく、これに応じて、第1窒化ケイ素層においては、N原子数とSi原子数との比値が1.43≦v/u≦1.52であってもよく、厚さが10nm~15nmであってもよい。第3窒化ケイ素層133の屈折率は1.8~1.87、具体的には1.8~1.84とすることができ、これに応じて、第1窒化ケイ素層においては、N原子数とSi原子数との比値が1.59≦v/u≦1.7とすることができ、厚さは17nm~25nmとすることができる。
【0058】
別のある実施例において、第2パッシベーション層130は、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132、第3窒化ケイ素層133および第4窒化ケイ素層を含む4層構造であってもよく、第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132、第3窒化ケイ素層133および第4窒化ケイ素層(不図示)は、いずれも第1Si材料を含み、且つ、第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132、第3窒化ケイ素層133および第4窒化ケイ素層の屈折率は、順次に小さくなっている。具体的には、いくつかの実施例において、第1窒化ケイ素層131におけるN原子数とSi原子数との比値は、1.3≦v/u≦1.4、具体的には1.3≦v/u≦1.36であってもよく、屈折率は1.93~2、具体的には1.96~2であってもよく、厚さは8nm~13nmであってもよい。第2窒化ケイ素層132におけるN原子数とSi原子数との比値は、1.4<v/u≦1.55、具体的には1.43≦v/u≦1.52であってもよく、屈折率は1.87~1.93、具体的には1.89~1.92であってもよく、厚さは8nm~13nmであってもよい。第3窒化ケイ素層133におけるN原子数とSi原子数との比値は、1.55<v/u≦1.65、具体的には1.57≦v/u≦1.63であってもよく、屈折率は1.84~1.87、具体的には1.85~1.86であってもよく、厚さは9nm~14nmであってもよい。第4窒化ケイ素層におけるN原子数とSi原子数との比値は、1.65<v/u≦1.7、具体的には1.67<v/u≦1.7であってもよく、屈折率は1.8~1.84、具体的には1.8~1.83であってもよく、厚さは10nm~15nmであってもよい。
【0059】
なお、第2パッシベーション層130が単層構造であっても多層構造であっても、第2パッシベーション層130の屈折率が1.8~2の範囲内であり、これにより、第2パッシベーション層130の屈折率と第3パッシベーション層140の屈折率とが光学的に一致し、入射光線に対するベース100の前面の反射率が小さくなり、入射光線に対するベースの吸収能力が強くなる。第2パッシベーション層130の全体の屈折率範囲が1.8~2の範囲内である条件において、第2パッシベーション層130が単層構造であっても多層構造であっても、第2パッシベーション層130の全体の厚さは35nm~55nmの範囲内であるが理解できる。
【0060】
図5を参照して、本願の実施例により提供される太陽電池は、短波長(例えば、紫外光または近紫外光)の範囲において、従来のTOPCON電池に比べてより低い反射率を有している。従来のTOPCON電池は、通常、酸化アルミニウム/窒化ケイ素積層体を用いて正面パッシベーション層とし、波長360nmを例にとれば、波長360nmの位置では、従来のTOPCON電池の反射率は27%程度であるが、本願の実施例により提供される太陽電池の反射率は、11.2%程度であり、約58%低下している。また、本願の実施例により提供される太陽電池は、短波長域において光線の反射率が低いため、従来の太陽電池が青色を呈するのに対して、納戸色を呈することができ、濃色モジュールの製造に有利である。
【0061】
本願の実施例により提供される太陽電池は、380nm~1050nmの波長区間の平均反射率からも明らかに低下し、具体的には、従来のTOPCON電池は、全波長区間範囲において、平均反射率が2.2%程度であるが、本願の実施例により提供される太陽電池は、平均反射率が1.3%であり、41%程度低下した。また、本願の実施例における第1パッシベーション層120、第2パッシベーション層130、及び第3パッシベーション層140をTOPCON電池に適用した場合、電池の短絡電流を70mA以上向上させることが可能である。
【0062】
第1パッシベーション層120は、ベース100に近いパッシベーション層として、よいパッシベーション効果を有する必要がある。いくつかの実施例において、第1パッシベーション層120の誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含んでいてもよい。なお、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムは、フィールドパッシベーション材料であり、ベース100の前面に対してフィールドパッシベーション効果を有し、フィールドパッシベーションとは、ベース100の界面にビルドアップ電界を形成して、ベース100の界面における電子または正孔の濃度を低減し、表面の不活性化効果を達成することであり、このようなビルドアップ電界は、通常、ベース100の界面に固定電荷を形成して得られる。
【0063】
具体的には、いくつかの実施例において、誘電体材料は、Al材料であり、かつ1.4≦y/x≦1.6であってもよく、yはO原子数であり、xはAl原子数である。Al材料は、良いフィールドパッシベーション効果を有しており、これは、Al材料が十分な数量の固定負電荷を提供できるので、ベース100の前面にビルドアップ電界を形成して、ベース100の前面における少数キャリアの濃度を減少させ、キャリア再結合を抑制し、太陽電池の開放電圧及び短絡電流を向上させるからである。また、Al材料は、一定の化学不活性化効果を有し、即ち、ベース100の前面における欠陥数を低減することで、キャリアの再結合レートを抑制する。具体的には、O原子数とAl原子数との比値を調整することにより、第1パッシベーション層120の屈折率の大きさ及び厚さの大きさを調整することで、第1パッシベーション層120の屈折率を厚さに合わせ、パッシベーション層120に良いパッシベーション効果を持たせる。
【0064】
具体的には、いくつかの実施例において、第1パッシベーション層120の屈折率は、1.6~1.8である。この屈折率範囲において、第1パッシベーション層120の屈折率が第2パッシベーション層130の屈折率に合わせ、屈折率整合性に劣ることによる光反射損失を低減することで、第1パッシベーション層120は入射光線に対して良い吸収能力を有する。
【0065】
入射光線波長及び屈折率が決定された条件のもとで、第1パッシベーション層120の厚さが屈折率に合わせるように、第1パッシベーション層120の厚さを決定することができ、これにより、第1パッシベーション層120に良いパッシベーション効果を持たせる。具体的には、いくつかの実施例では、前面に垂直な方向において、第1パッシベーション層120の厚さは、2nm~8nmである。この場合、第1パッシベーション層120は強い負帯電性を持っているため、キャリアの選択的な輸送が可能となる。また、第1パッシベーション層120の厚さは、フィールドパッシベーション効果に関し、第1パッシベーション層120の厚さが大きいほど、第1パッシベーション層120のフィールドパッシベーション効果が良くなる。第1パッシベーション層120の厚さがこの比率範囲内になるように制御することで、第1パッシベーション層120のフィールドパッシベーション効果が良好であるとともに、厚さが大きすぎることに起因してベース100が応力ダメージを受けるという問題を回避できる。
【0066】
具体的には、いくつかの実施例において、O原子数とAl原子数との比値は、1.4≦y/x≦1.42であってもよく、第1パッシベーション層120の屈折率は、1.78~1.8であってもよく、第1パッシベーション層120の厚さは、2nm~2.6nmであってもよい。また、他のいくつかの実施例において、O原子数とAl原子数との比値は、1.42<y/x≦1.48であってもよく、第1パッシベーション層120の屈折率は、1.72~1.78であってもよく、第1パッシベーション層120の厚さは、2.6nm~4.4nmであってもよい。別のある実施例において、O原子数とAl原子数との比値は、1.48<y/x≦1.55であってもよく、第1パッシベーション層120の屈折率は、1.65~1.72であってもよく、第1パッシベーション層120の厚さは、4.4nm~6.5nmであってもよい。また、さらに別のある実施例において、O原子数とAl原子数との比値は、4<y/x≦7であってもよく、第1パッシベーション層120の屈折率は、1.6~1.65であってもよく、第1パッシベーション層120の厚さは、6.5nm~8nmであってもよい。
【0067】
ベース100の裏面にパッシベーションコンタクト構造としてトンネル酸化層150とドープ導電層160を設けている。トンネル酸化層150は、裏面における界面パッシベーションを実現するために用いられ、いくつかの実施例において、トンネル酸化層150の材料は、誘電体材料、例えば酸化ケイ素であってもよい。ドープ導電層160は、フィールドパッシベーションを形成するためのものであり、ドープ導電層160は、ベース100と同じ導電型のドーパントを有しており、いくつかの実施例において、ドープ導電層160は、N型ドープポリシリコン、N型ドープ微結晶シリコン、又はN型ドープアモルファスシリコンの一種又は複数種であってもよく、ドープ導電層160には、N型ドープイオンが含まれており、例えば、リン、ヒ素、又はアンチモンのいずれであってもよい。
【0068】
具体的には、いくつかの実施例において、ドープ導電層160は、ドープポリシリコン層であり、裏面に垂直な方向において、ドープ導電層160の厚さ範囲は、60nm~150nmであり、例えば、60nm、80nm、又は120nmである。
【0069】
いくつかの実施例において、ドープ導電層160におけるベース100側から離反する側に位置する第4パッシベーション層170をさらに備え、第4パッシベーション層170は、第2Si材料(1.2≦n/m≦1.6)を含む。第4パッシベーション層170は、電池背部における入射光の反射効果を増強するために用いられ、また、ベース100の裏面におけるパッシベーションコンタクト構造のパッシベーション効果を増強することにも用いられる。第2Si材料におけるnは、N原子の数を表し、mは、Si原子の数を表し、n/mの比の大きさを調整することによって、第4パッシベーション層170の屈折率の大きさ及び厚さの大きさが調整される。具体的には、いくつかの実施例において、第4パッシベーション層170は単層構造であってもよく、第4パッシベーション層170の屈折率は1.9~2.1であってもよく、厚さは80nm~100nmであってもよい。また、いくつかの実施例において、第4パッシベーション層170は、多層構造とすることができ、かつ、ベース100の裏面に沿ってドープ導電層160への方向において、各層の屈折率が徐々に低くなるので、内部反射を利用して入射光の電池裏面における反射効果を増強するのに有利である。
【0070】
太陽電池は、さらに、ベース100の前面に位置し、第3パッシベーション層140、第2パッシベーション層130及び第1パッシベーション層120を貫通してエミッタ110と電気的に接続されている第1電極180と、ベース100の裏面に位置し、第4パッシベーション層170を貫通してドープ導電層と電気的に接続されている第2電極190と、を備える。
【0071】
ベース100の前面においてベース100から離れる方向に順次設置されている第1パッシベーション層120、第2パッシベーション層130及び第3パッシベーション層140を備えており、第1パッシベーション層120は、誘電体材料を含み、第2パッシベーション層130は、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含み、第1Si材料における原子数比を調整することにより、第2パッシベーション層130が比較的高い屈折率を有し、第2パッシベーション層130の長波長光に対する吸収能力が強くなり、第3パッシベーション層140は、Si材料(1.9≦s/r≦3.2)を含み、Si材料における原子数比の値を調整することにより、Si材料が短波長光に対して強い吸収能力を有する。このように、第2パッシベーション層130の長波長光に対する強い吸収能力を相乗させて、太陽電池全体の入射光線に対する吸収能力を強くすることで、太陽電池の表面における反射防止率が大きくなると共に、第1Si材料およびSi材料が良好なパッシベーション効果を有し、さらに、太陽電池の開放電圧、短絡電流およびフィルファクターを向上させ、太陽電池の光電変換率を向上させることができる。
【0072】
これに応じて、図6を参照して、本願の実施例は、上記の実施例により提供される太陽電池1を複数接続してなる少なくとも1つのセルストリングと、少なくとも1つのセルストリングの表面を覆うための封止層2と、封止層2における少なくとも1つのセルストリングから離れる表面を覆うためのカバープレート3と、を備える光起電力モジュールをさらに提供する。太陽電池をノリシックまたはマルチフラグメント(例えば、1/2等分片、1/3等分片、1/4等分片などのマルチフラグメント)で電気的に接続して複数のセルストリングが形成され、複数のセルストリングが直列および/または並列に電気的に接続される。具体的には、いくつかの実施例において、複数のセルストリングの間を導電帯電により電気的に接続することができる。封止層2は、太陽電池の前面及び裏面を覆い、いくつかの実施例において、太陽電池の裏面に位置する封止層2は、白色とすることができ、これにより、太陽電池の前面から入射した入射光線を、隣り合う2つの太陽電池の間の間隙から太陽電池の裏面に照射する際に、白色の封止層2により、太陽電池の前面のカバープレート3まで反射され、さらに太陽電池の前面まで2次反射されることで、入射光線に対する吸収能力を増大させることができる。具体的には、いくつかの実施例において、封止層2の材質は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンオクテン共エラストマー(POE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)等の有機材料であってもよい。いくつかの実施例において、カバープレート3は、ガラスカバープレート又はプラスチックカバープレートなどの透光性機能を有するカバープレート3であってもよい。具体的には、カバープレートの封止層2に向かう面を凹凸面とすることができ、これにより、入射光線の利用率を増大させることができる。本願の実施例により提供される光起電力モジュールの太陽電池は、前面に第1パッシベーション層120と、第2パッシベーション層130と、第3パッシベーション層140とを備え、そのうち、第2パッシベーション層130は長波長光を重点的に吸収し、第3パッシベーション層140は短波長光を重点的に吸収する。このように、太陽電池は、異なる波長帯域の入射光に対して強い吸収能力を有し、太陽電池のベース100の前面での光線に対する反射率が低減される。よって、太陽電池を封止して太陽電池モジュールとした後、太陽電池モジュール全体が納戸色ひいては黒色を呈するようになり、濃色モジュールの製造に有利となる。
【0073】
これに応じて、本願の別の実施例は、上記実施例により提供される太陽電池を形成することが可能な太陽電池の製造方法をさらに提供する。以下に、図面を参照しながら本願の別の実施例に係る太陽電池の製造方法を詳細に説明する。
【0074】
図7乃至図13は、本願の別の実施例により提供される太陽電池の製造方法における各ステップに対応する構成を示す図である。
【0075】
図7を参照して、対向する前面と裏面を有するベース100を提供する。
【0076】
ベース100は、入射光線を受光して光生成キャリアを生成するためのものであり、いくつかの実施例において、ベース100は、シリコンベース100であってもよく、シリコンベース100の材料は、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、及び微結晶シリコンを含み得る。また、他のいくつかの実施例において、ベース100の材料は、炭素単体、有機材料、及び多価化合物であってもよく、多価化合物は、ガリウムヒ素、テルル化カドミウム、銅インジウムセレン等を含む。いくつかの実施例において、太陽電池は、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化層150がパッシベーションコンタクトしている)電池であり、ベース100の前面と裏面は、いずれも入射光線を受光するために用いられる。いくつかの実施例において、ベース100の前面は、入射光線に対するベース100の前面の反射率が小さくなるようにピラミッドテクスチャーとして設けられることができ、これにより、光線に対する吸収利用率が大きくなる。いくつかの実施例において、ベース100は、N型半導体ベースであり、すなわち、ベース100内にN型イオンがドープされており、N型イオンは、リン、ヒ素、またはアンチモンのいずれであってもよい。
【0077】
図8を参照して、エミッタ110が形成される。
【0078】
いくつかの実施例において、ベース100は、N型半導体ベースであり、エミッタ110は、P型エミッタであってもよい。具体的には、エミッタ110を形成する具体的なプロセス方法として、ベース100の前面をホウ素拡散処理してエミッタ110を形成し、エミッタ110とN型ベース100とがPN接合を形成することを採用してもよい。なお、エミッタ110を形成した後に、ホウ素拡散処理によって形成されたホウ珪酸ガラスを除去する必要があり、このように、後にエミッタ110に第1パッシベーション層120を形成するとき、第1パッシベーション層120の厚さが均一になり、入射光線に対するベース100の前面の吸収能力が向上するのに有利である。具体的には、ホウ素拡散処理に用いられるホウ素源は、液体三臭化ホウ素を含む。
【0079】
図9を参照して、ベース100の裏面において裏面から離れる方向に、トンネル酸化層150と、ベース100と同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層160とが順次に形成されている。
【0080】
いくつかの実施例において、ベース100の裏面には、温度可変プロセスおよび化学気相成長法によってトンネル酸化層150が堆積形成される。堆積過程において、昇温レートが0.5℃/min~3℃/min、例えば1.0℃/min、1.5℃/min、2.0℃/min又は2.5℃/min等となり、堆積温度が560℃~620℃、例えば570℃、590℃又は610℃等となり、堆積時間が3min~10min、例えば4min、6min又は8min等となるように制御する。ほかのいくつかの実施例において、In-situ(その場)生成プロセスでトンネル酸化層150を形成することもでき、例えば、熱酸化プロセスおよび硝酸パッシベーションなどのプロセスによってトンネル酸化層150をIn-situ生成する。
【0081】
具体的には、いくつかの実施例において、トンネル酸化層150の厚さは、1nm~2nm、例えば1.2nm、1.4nm、1.6nm、又は1.8nmとすることができる。
【0082】
また、いくつかの実施例において、トンネル酸化層150の形成後に、トンネル酸化層150の表面に堆積プロセスによってドープ導電層160を形成してもよい。具体的には、堆積プロセスによって、トンネル酸化層150の表面に真性ポリシリコンを堆積させてポリシリコン層を形成し、イオン注入及びソース拡散によりリンイオンをドーピングしてN型のドープポリシリコン層を形成し、ドープポリシリコン層をドープ導電層160としてもよい。
【0083】
具体的には、いくつかの実施例において、ベース100の裏面に垂直な方向において、形成されるドープ導電層160の厚さは、60nm~150nm、例えば60nm、80nm、又は120nmであってもよい。
【0084】
図10図13を参照して、ベース100の前面においてベース100から離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層120、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層130、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層140が、順次に形成される。
【0085】
図10を参照して、トンネル酸化層150の表面にAl材料を含む第1パッシベーション層120が形成される。いくつかの実施例において、原子層堆積法により第1パッシベーション層120を形成することができ、第1パッシベーション層120を形成する方法は、反応チャンバー内にトリメチルアルミニウムと水を導入し、トリメチルアルミニウムと水の割合が1:2~1:3、温度が200℃~300℃であることを含む。形成される第1パッシベーション層120は、Al材料におけるO原子数とAl原子数との比値が1.4≦y/x≦1.6であり、且つ、第1パッシベーション層120の屈折率が1.6~1.8であり、厚さが2nm~8nmである。
【0086】
いくつかの実施例において、第1パッシベーション層120を形成した後に、さらに、窒素ガス雰囲気下で第1パッシベーション層120をアニール処理し、アニール温度が500℃~600℃、アニール時間が10min~13minであることを含む。このようにすれば、残留水分子及び有機官能基を除去することができる。
【0087】
図11を参照して、第1パッシベーション層120の表面には、第1Si材料を含む第2パッシベーション層130が形成される。いくつかの実施例において、プラズマ強化化学気相成長法により第2パッシベーション層130を形成することができ、第2パッシベーション層130を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~180mW/cm、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、シランとアンモニアガスとの流量比が1:3~1:16、反応時間が3s~31sであることを含む。
【0088】
いくつかの実施例において、第2パッシベーション層130は3層構造であってもよく、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1窒化ケイ素層131(図4参照)、第2窒化ケイ素層132(図4参照)、及び第3窒化ケイ素層133(図4参照)を含んでいてもよい。第2パッシベーション層130を形成するプロセス方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、第1パッシベーション層120の表面に第1窒化ケイ素層131を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:3~1:5であってもよく、反応時間が4s~6sであってもよい。反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを継続的に導入してイオン化し、第1窒化ケイ素層131の表面に第2窒化ケイ素層132を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが150mW/cm~180mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:5~1:9であり、反応時間が5s~8sであってもよい。反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを継続的に導入してイオン化し、第2窒化ケイ素層132の表面に第3窒化ケイ素層133を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが150mW/cm~180mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:9~1:16であり、反応時間が10s~14sであってもよい。
【0089】
上記製造プロセスにより、形成された第1窒化ケイ素層131において、N原子数とSi原子数の比値が1.3≦s/r≦1.4であり、第1窒化ケイ素層131の屈折率が1.93~2.0であり、厚さが8nm~15nmである。形成された第2窒化ケイ素層132において、N原子数とSi原子数の比値が1.4<s/r≦1.55であり、第2窒化ケイ素層132の屈折率が1.87~1.93であり、厚さが10nm~15nmである。第3窒化ケイ素層133において、N原子数とSi原子数の比値が1.55<s/r≦1.7であり、第3窒化ケイ素層133の屈折率が1.8~1.87であり、厚さが17nm~25nmである。
【0090】
また、いくつかの実施例において、第2パッシベーション層130は、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1窒化ケイ素層131、第2窒化ケイ素層132、第3窒化ケイ素層133および第4窒化ケイ素層を含む4層構造であってもよい。具体的には、第2パッシベーション層130を形成するプロセス方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアを導入してイオン化し、第1パッシベーション層120の表面に第1窒化ケイ素層131を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:3~1:5であり、反応時間が3s~5sであってもよい。反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを継続的に導入してイオン化し、第1窒化ケイ素層131の表面に第2窒化ケイ素層132を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが150mW/cm~180mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:5~1:7であり、反応時間が4s~6sであってもよい。反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを継続的に導入してイオン化し、第2窒化ケイ素層132の表面に第3窒化ケイ素層133を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが150mW/cm~180mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:7~1:10であり、反応時間が4s~6sであってもよい。反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを継続的に導入してイオン化し、第3窒化ケイ素層133の表面に第4窒化ケイ素層を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが150mW/cm~180mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランとアンモニアガスとの流量比が1:10~1:16であり、反応時間が10s~14sであってもよい。
【0091】
図12を参照して、第2パッシベーション層130の表面には、Si材料を含む第3パッシベーション層140が形成されている。具体的には、いくつかの実施例において、プラズマ強化化学気相成長法により第3パッシベーション層140を形成することができ、第3パッシベーション層140を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素(笑気)を導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cm、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、シランと亜酸化窒素との流量比が1:15~1:20、反応時間が3s~22sであることを含む。
【0092】
いくつかの実施例において、第3パッシベーション層140は2層構造であってもよく、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層141(図2参照)及び第2酸化ケイ素層142(図2参照)を含んでいてもよい。第3パッシベーション層140を形成するプロセス方法は、下記の通りである。すなわち、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素を導入してイオン化し、第2パッシベーション層130の表面に第1酸化ケイ素層141を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランと亜酸化窒素とのガス流量比が1:15~1:17であり、反応時間が6s~8sであってもよい。反応チャンバー内にシランおよび亜酸化窒素を継続的に導入してイオン化し、第1酸化ケイ素層141の表面に第2酸化ケイ素層142を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランと亜酸化窒素とのガス流量比が1:17~1:20であり、反応時間が6s~10sであってもよい。
【0093】
上記製造プロセスによって、形成された第1酸化ケイ素層141においては、O原子数とSi原子数との比値が1.9≦s/r≦2.2であり、第1酸化ケイ素層141の屈折率が1.51~1.6であり、厚さが30nm~40nmである。形成された第2酸化ケイ素層142においては、O原子数とSi原子数との比値が2.2<s/r≦3.2であり、第2酸化ケイ素層142の屈折率が1.4~1.51であり、厚さが30nm~50nmである。
【0094】
ほかのいくつかの実施例において、第3パッシベーション層140は3層構造であってもよく、ベース100から離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層141(図3参照)と、第2酸化ケイ素層142(図3参照)と、第3酸化ケイ素層143(図3参照)とを含んでいてもよい。第3パッシベーション層140を形成するプロセス方法は、下記の通りである。すなわち、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素を導入してイオン化し、第2パッシベーション層130の表面に第1酸化ケイ素層141を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランと亜酸化窒素とのガス流量比が1:15~1:16.5であってよく、反応時間が3s~6sであってよい。反応チャンバー内にシランおよび亜酸化窒素を継続的に導入してイオン化し、第1酸化ケイ素層141の表面に第2酸化ケイ素層142を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランと亜酸化窒素とのガス流量比が1:16.5~1:18であり、反応時間が3s~6sであってもよい。反応チャンバー内にシランおよび亜酸化窒素を継続的に導入してイオン化し、第2酸化ケイ素層142の表面に第3酸化ケイ素層143を形成し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cmであり、反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorrであり、シランと亜酸化窒素とのガス流量比が1:18~1:20であり、反応時間が6s~10sであってもよい。
【0095】
上記製造プロセスによって、形成された第1酸化ケイ素層141においては、O原子数とSi原子数との比値が1.9≦s/r≦2.2であり、第1酸化ケイ素層141の屈折率が1.51~1.6であり、厚さが10nm~20nmである。形成された第2酸化ケイ素層142においては、O原子数とSi原子数との比値が2.2<s/r≦2.7であり、第2酸化ケイ素層142の屈折率が1.45~1.51であり、厚さが20nm~30nmである。形成された第3酸化ケイ素層143においては、O原子数とSi原子数との比値が2.7<s/r≦3.2であり、第3酸化ケイ素層143の屈折率が1.4~1.45であり、厚さが30nm~40nmである。
【0096】
図1を参照して、ドープ導電層160に第4パッシベーション層170と、第1電極180及び第2電極190とが形成されている。
【0097】
いくつかの実施例において、第4パッシベーション層170は、第2Si材料を含み、具体的には、ドープ導電層160の表面にプラズマ強化化学気相成長法により第4パッシベーション層170を形成してもよい。いくつかの実施例において、形成された第4パッシベーション層170は単層構造であってもよく、他のいくつかの実施例において、形成された第4パッシベーション層170は、多層構造であってもよく、かつ、ベース100の裏面に沿ってドープ導電層160に向かう方向に、各層の屈折率が漸減している。
【0098】
第4パッシベーション層170を形成した後、ベース100の前面の第3パッシベーション層140及びベース100の裏面の第4パッシベーション層170表面に金属化処理を行い、具体的にはスクリーン印刷プロセスおよび高温焼結プロセスを含み、これにより、ベース100前面のエミッタ110と電気的に接続された第1電極180及びベース100裏面のドープ導電層160と電気的に接続された第2電極190を形成し、形成された1電極180は、ベース100前面の第3パッシベーション層140、第2パッシベーション層130及び第1パッシベーション層120を貫通し、形成された第2電極190は、第4パッシベーション層170を貫通している。
【0099】
上記実施例により提供される太陽電池の製造方法では、ベース100の前面においてベース100から離れる方向に、第1パッシベーション層120、第2パッシベーション層130及び第3パッシベーション層140が順次に形成され、第1パッシベーション層120は、誘電体材料を含み、第2パッシベーション層130は、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含み、第1Si材料における原子数比を調整することにより、第2パッシベーション層130が比較的高い屈折率を有し、第2パッシベーション層130の長波長光に対する吸収能力が強くなり、且つ第2パッシベーション層130における第1Si材料が良好な水素不活性化効果を有し、第3パッシベーション層140は、Si材料(1.9≦s/r≦3.2)を含み、Si材料における原子数比の値を調整することにより、Si材料が短波長光に対して強い吸収能力を有する。このように、第2パッシベーション層130の長波長光に対する強い吸収能力を相乗させて、太陽電池全体の入射光線に対する吸収能力を強くすることで、太陽電池の表面における反射防止率が大きくなると共に、第1Si材料およびSi材料が良好なパッシベーション効果を有し、さらに、太陽電池の開放電圧、短絡電流およびフィルファクターを向上させ、太陽電池の光電変換率を向上させることができる。
【0100】
比較例1
比較例1では、一種の太陽電池構造が提供され、具体的には、図13に示すように、対向する前面と裏面とを有するベース200と、ベース200の前面に位置する、Si材料を含む前面パッシベーション層220と、を備える。
【0101】
図1に示す本願実施例の太陽電池構造を参照すると、比較例1と本願実施例の相違点は、下記の通りである。すなわち、比較例1では、ベース200の前面にSi材料である前面パッシベーション層220が1層のみ設けられているのに対し、本願実施例では、ベース100の前面においてベース100から離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層120と、第1Si材料を含む第2パッシベーション層130と、Si材料を含む第3パッシベーション層140とが順次に設けられている。対比実験を通して、本願実施例と比較例1とのパラメータ対比を表1に示す。
表1
【0102】
表1から明らかなように、本願実施例における太陽電池は、比較例1よりも、入射光線に対する反射率が低く、かつ、本願実施例における開放電圧、短絡電流、フィルファクター(FF)および並列抵抗のいずれも大きいため、本願実施例における太陽電池の変換効率はより高い。ここで、入射光線に対する太陽電池の反射率は、比較例1よりも0.62%低く、太陽電池の変換効率は、比較例1よりも0.88%高い。これは、比較例1では、単層パッシベーション層構造としてSi材料のみを設けており、Si材料は高い屈折率を有しているものの、高い屈折率も一定の光吸収損失をもたらしており、入射光線に対する吸収能力が劣るためである。これに対して、本願実施例では、第2パッシベーション層130として第1Si材料を設けて長波長光を重点的に吸収し、第3層パッシベーション層としてSi材料を設けて短波長光を重点的に吸収することで、異なる波長帯の入射光線に対する太陽電池の吸収能力がよく、これにより、太陽電池の入射光線に対する利用率が高くなり、ベース100の前面におけるキャリア濃度が増加して、太陽電池の変換効率が向上する。
【0103】
比較例2
比較例2では、一種の太陽電池構造が提供され、具体的には、図14に示すように、対向する前面と裏面とを有するベース300と、ベース300の前面に位置しかつベース300から離れる方向に順次設置されている、A材料を含む第1パッシベーション層320及びSi材料を含む第2パッシベーション層330と、を備える。
【0104】
図1に示す本願実施例の太陽電池構造を参照すると、比較例2と本願実施例の相違点は、下記の通りである。すなわち、比較例2では、ベース300の前面にパッシベーション層が2層のみ設けられているのに対して、本願実施例では、ベース100の前面においてベース100から離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層120と、第1Si材料を含む第2パッシベーション層130と、Si材料を含む第3パッシベーション層140とが順次に設けられている。対比実験を通して、本願実施例と比較例2とのパラメータ対比を表2に示す。
表2
【0105】
表2から明らかなように、本願実施例における太陽電池は、比較例2よりも、入射光線に対する反射率が低く、かつ、本願実施例における開放電圧、短絡電流、フィルファクターおよび並列抵抗のいずれも大きいため、本願実施例における太陽電池の変換効率はより高い。ここで、入射光線に対する太陽電池の反射率は、比較例2よりも0.68%低く、太陽電池の変換効率は、比較例2よりも0.25%高い。これは、比較例2では、第2パッシベーション層330としてSi材料のみを設けたため、長波長光のみに対して良い吸収効果を有するためである。本願実施例では、第3層パッシベーション層としてSi材料を設けて、短波長光を重点的に吸収し、第2パッシベーション層130における第1Si材料に合わせて、異なる波長帯の入射光線に対する太陽電池の吸収能力を良好にする。そして、本願実施例では、入射光線が光粗媒体から光密媒体に入射し、垂直に近い角度でベース100に入射するように、第3パッシベーション層140の屈折率が第2パッシベーション層130の屈折率よりも小さくなるように設けることで、入射光線に対する利用率が高くなり、ベース100の裏面におけるキャリア濃度が増加して、太陽電池の変換効率が向上する。
【0106】
本願は、好ましい実施例で上記のように開示しているが、請求の範囲を限定するものではなく、当業者は、本願の構想を逸脱しない限り、若干の可能な変動、修正を加えることができる。よって、本願の保護範囲は、本願の請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
【0107】
当業者であれば、前記各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面と裏面を有するベースと、
前記ベースの前記前面に位置しかつ前記ベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si料を含む第2パッシベーション層、及びSi料を含む第3パッシベーション層と、
前記ベースの裏面に位置しかつ前記裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、を備え、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si 材料において、1.3≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi 材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表すことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第3パッシベーション層の屈折率は、前記第2パッシベーション層の屈折率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第3パッシベーション層の屈折率は1.4~1.6であり、前記第2パッシベーション層の屈折率は1.8~2である、
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第3パッシベーション層は、前記ベースから離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層および第2酸化ケイ素層を含み、
前記第1酸化ケイ素層において、1.9<s/r≦2.2であり、前記第2酸化ケイ素層において、2.2≦s/r≦3.2であり、かつ前記第1酸化ケイ素層の屈折率は、前記第2酸化ケイ素層の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記誘電体材料は、Al材料であり、且つ1.4≦y/x≦1.6である、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記前面に垂直な方向において、前記第3パッシベーション層の厚さは、60nm~90nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記前面に垂直な方向において、前記第2パッシベーション層の厚さは、35nm~55nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記前面に垂直な方向において、前記第1パッシベーション層の厚さは、2nm~8nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1パッシベーション層の屈折率は、1.6~1.8である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記ドープ導電層における前記ベースから離反する側に位置する第4パッシベーション層をさらに備え、
前記第4パッシベーション層は、第2Si材料(1.2≦n/m≦1.6)を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第4パッシベーション層の屈折率は、1.9~2.1であり、
前記裏面に垂直な方向において、前記第4パッシベーション層の厚さは、80nm~100nmである、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記ベースは、N型半導体ベースであり、
前記ドープ導電層は、N型ドープポリシリコン層、N型ドープ微結晶シリコン層、またはN型ドープアモルファスシリコン層のうちの少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる少なくとも1つのセルストリングと、
前記セルストリングの表面を覆うための封止層と、
前記封止層における前記セルストリングから離れる表面を覆うためのカバープレートと、
を備えることを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項14】
対向する前面と裏面を有するベースを提供することと、
前記ベースの裏面において前記裏面から離れる方向に、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層が順に形成されることと、
前記ベースの前面において前記ベースから離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料(1.3≦v/u≦1.7)を含む第2パッシベーション層、及びSi材料(1.9≦s/r≦3.2)を含む第3パッシベーション層が、順に形成されることと、を含み、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si 材料において、1.3≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi 材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表すことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項15】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第3パッシベーション層を形成し、
前記第3パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素を導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記亜酸化窒素との流量比が1:15~1:20、反応時間が3s~22sであることを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項16】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第2パッシベーション層を形成し、
前記第2パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~180mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記アンモニアガスとの流量比が1:3~1:16、反応時間が3s~31sであることを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
原子層堆積法により前記第1パッシベーション層を形成し、
前記第1パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にトリメチルアルミニウム及び水を導入し、前記トリメチルアルミニウムと前記水の割合が1:2~1:3、温度が200℃~300℃であることを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項18】
前記第1パッシベーション層を形成した後に、さらに、
窒素ガス雰囲気下で前記第1パッシベーション層をアニール処理し、アニール温度が500℃~600℃、アニール時間が10min~13minであることを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の太陽電池の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
対向する前面と裏面を有するベースと、
前記ベースの前記前面に位置しかつ前記ベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料を含む第2パッシベーション層、及びSi材料を含む第3パッシベーション層と、
前記ベースの裏面に位置しかつ前記裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、を備え、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si材料において、1.4≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表すことを特徴とする太陽電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項14】
対向する前面と裏面を有するベースを提供することと、
前記ベースの裏面において前記裏面から離れる方向に、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層が順に形成されることと、
前記ベースの前面において前記ベースから離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si料を含む第2パッシベーション層、及びSi料を含む第3パッシベーション層が、順に形成されることと、を含み、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si材料において、1.4≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表すことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面と裏面を有するベースと、
前記ベースの前記前面に位置しかつ前記ベースから離れる方向に順次設置されている、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料を含む第2パッシベーション層、及びSi材料を含む第3パッシベーション層と、
前記ベースの裏面に位置しかつ前記裏面から離れる方向に順次設置されている、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層と、を備え、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si材料において、1.4≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層は、前記ベースから離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層および第2酸化ケイ素層を含み、
前記第1酸化ケイ素層において、1.9<s/r≦2.2であり、前記第2酸化ケイ素層において、2.2≦s/r≦3.2であり、かつ前記第1酸化ケイ素層の屈折率は、前記第2酸化ケイ素層の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第3パッシベーション層の屈折率は、前記第2パッシベーション層の屈折率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第3パッシベーション層の屈折率は1.4~1.6であり、前記第2パッシベーション層の屈折率は1.8~2である、
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記誘電体材料は、Al材料であり、且つ1.4≦y/x≦1.6である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記前面に垂直な方向において、前記第3パッシベーション層の厚さは、60nm~90nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記前面に垂直な方向において、前記第2パッシベーション層の厚さは、35nm~55nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記前面に垂直な方向において、前記第1パッシベーション層の厚さは、2nm~8nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1パッシベーション層の屈折率は、1.6~1.8である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記ドープ導電層における前記ベースから離反する側に位置する第4パッシベーション層をさらに備え、
前記第4パッシベーション層は、第2Si 材料を含み、ここで、1.2≦n/m≦1.6である
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第4パッシベーション層の屈折率は、1.9~2.1であり、
前記裏面に垂直な方向において、前記第4パッシベーション層の厚さは、80nm~100nmである、
ことを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記ベースは、N型半導体ベースであり、
前記ドープ導電層は、N型ドープポリシリコン層、N型ドープ微結晶シリコン層、またはN型ドープアモルファスシリコン層のうちの少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなる少なくとも1つのセルストリングと、
前記セルストリングの表面を覆うための封止層と、
前記封止層における前記セルストリングから離れる表面を覆うためのカバープレートと、
を備えることを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項13】
対向する前面と裏面を有するベースを提供することと、
前記ベースの裏面において前記裏面から離れる方向に、トンネル酸化層、及び前記ベースと同じ導電型のドーパントを有するドープ導電層が順に形成されることと、
前記ベースの前面において前記ベースから離れる方向に、誘電体材料を含む第1パッシベーション層、第1Si材料を含む第2パッシベーション層、及びSi材料を含む第3パッシベーション層が、順に形成されることと、を含み、
前記誘電体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化ハフニウムのうちの一種または複数種を含み、
前記第1Si材料において、1.4≦v/u≦1.7であり、ここで、vはN原子の数を表し、uはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層のSi材料において、1.9≦s/r≦3.2であり、sはO原子の数を表し、rはSi原子の数を表し、
前記第3パッシベーション層は、前記ベースから離れる方向に積層されて設けられた第1酸化ケイ素層および第2酸化ケイ素層を含み、
前記第1酸化ケイ素層において、1.9<s/r≦2.2であり、前記第2酸化ケイ素層において、2.2≦s/r≦3.2であり、かつ前記第1酸化ケイ素層の屈折率は、前記第2酸化ケイ素層の屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項14】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第3パッシベーション層を形成し、
前記第3パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及び亜酸化窒素を導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~170mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記亜酸化窒素との流量比が1:15~1:20、反応時間が3s~22sであることを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項15】
プラズマ強化化学気相成長法により前記第2パッシベーション層を形成し、
前記第2パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にシラン及びアンモニアガスを導入してイオン化し、単位面積あたりのパルスパワーが140mW/cm~180mW/cm、前記反応チャンバーにおける圧力度が1600mTorr~2000mTorr、前記シランと前記アンモニアガスとの流量比が1:3~1:16、反応時間が3s~31sであることを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項16】
原子層堆積法により前記第1パッシベーション層を形成し、
前記第1パッシベーション層を形成する方法は、反応チャンバー内にトリメチルアルミニウム及び水を導入し、前記トリメチルアルミニウムと前記水の割合が1:2~1:3、温度が200℃~300℃であることを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
前記第1パッシベーション層を形成した後に、さらに、
窒素ガス雰囲気下で前記第1パッシベーション層をアニール処理し、アニール温度が500℃~600℃、アニール時間が10min~13minであることを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の太陽電池の製造方法。