(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040982
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】光コネクターおよび光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20230315BHJP
G02B 6/24 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183350
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2021147934
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 悠生
(72)【発明者】
【氏名】今 亜耶乃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 ほの香
【テーマコード(参考)】
2H036
2H137
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036LA03
2H036LA07
2H036LA08
2H036QA22
2H036QA23
2H036QA51
2H137BA03
2H137BA04
2H137BA15
2H137BA20
2H137BC07
2H137CA13A
2H137CA25A
2H137CC01
2H137CD32
(57)【要約】
【課題】光コネクターに対して光伝送体の端部を位置決めする際に、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる光コネクターを提供すること。
【解決手段】光伝送体同士を光学的に結合させるための光コネクターであって、第1光学部と、第2光学部と、を有し、光伝送体の端面の少なくとも一部が第1光学部に接触するように光伝送体を配置させるための、一方向に延在する溝を有し、前記第1光学部と前記第2光学部との間の光路および前記溝の軸を含む断面において、前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面と、前記溝の軸とが成す角度は90°未満である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送体同士を光学的に結合させるための光コネクターであって、
一方の光伝送体の端部を保持するための保持部と、
前記保持部に保持された前記光伝送体の端面からの光を前記光コネクター内部に入射させるか、または前記光コネクターの内部を進行した光を前記光伝送体の前記端面に向けて出射させるための第1光学部と、
他方の光伝送体を保持する他の光コネクターからの光を前記光コネクター内部に入射させるか、または前記光コネクター内部を進行した光を前記他の光コネクターに向けて出射させるための第2光学部と、
を有し、
前記保持部は、前記光伝送体の端面の少なくとも一部が前記第1光学部に接触するように前記光伝送体を配置させるための、一方向に延在する溝を有し、
前記第1光学部と前記第2光学部との間の光路および前記溝の軸を含む断面において、前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面と、前記溝の軸とが成す角度は90°未満である、
光コネクター。
【請求項2】
前記溝は、前記光コネクターの表側に配置されており、
前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面は、前記光コネクターの裏面に対して傾斜しており、
前記溝の軸は、前記光コネクターの裏面に対して平行である、
請求項1に記載の光コネクター。
【請求項3】
前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面は、前記光コネクターの裏面に近づくにつれて前記第2光学部に近づくように傾斜している、請求項2に記載の光コネクター。
【請求項4】
前記溝は、前記光コネクターの表側に配置されており、
前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面は、前記光コネクターの裏面に対して垂直であり、
前記溝の軸は、前記光コネクターの裏面に対して傾斜している、
請求項1に記載の光コネクター。
【請求項5】
前記溝の軸は、前記第1光学部に近づくにつれて前記光コネクターの裏面に近づくように傾斜している、請求項4に記載の光コネクター。
【請求項6】
前記溝と前記第1光学部との間に配置された第1凹部をさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の光コネクター。
【請求項7】
前記第1光学部は、前記光伝送体の端面の下部を支持するための支持部を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の光コネクター。
【請求項8】
前記第1光学部は、前記光伝送体の端面を位置決めするための第2凹部を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光コネクター。
【請求項9】
光伝送体と、
請求項1~8のいずれか一項に記載の光コネクターと、
を有し、
前記光伝送体の端面の少なくとも一部は、前記光コネクターの前記第1光学部に接触している、
光モジュール。
【請求項10】
2つの前記光モジュールを光学的に結合させたときに、一方の光モジュールにおける光伝送体の中心軸と、他方の光伝送体の中心軸とが同一直線上に位置しないように構成されている、請求項9に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクターおよび光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送体同士を光学的に結合させるための光コネクターが知られている。光コネクターは光伝送体の端部を収容するように構成されている。光伝送体の端部を収容した2つの光コネクターのそれぞれが、例えば嵌合などによって互いに位置決めしつつ結合される。これにより、2つの光伝送体の端部が互いに位置決めされて、光伝送体同士が光学的に結合される。
【0003】
たとえば、特許文献1には、マルチコアファイバと、単心ファイバーとを光学的に結合させるためのコネクタシステムが記載されている。特許文献1に記載のコネクタシステムは、マルチコアファイバの端部を保持する第1フェルールと、単心ファイバーの端部を保持する第2フェルールと、第1フェルールおよび第2フェルールを接続するためのガイドピンとを有する。第1フェルールおよび第2フェルールには、ガイドピンを挿入するための挿入孔がそれぞれ形成されている。
【0004】
特許文献1に記載のコネクタシステムでは、第1フェルールおよび第2フェルールを対向させた状態で、対向して配置された挿入孔にガイドピンを挿入することで、第1フェルールおよび第2フェルールを接続し、マルチコアファイバおよび単心ファイバーを光学的に結合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、特許文献1に示されているような光コネクターが光伝送体の端部を保持した状態の模式的な断面図を示す。
図1に示されるように、光伝送体11の端面は光コネクター12の光学面(第1光学部16)に接触している。
【0007】
光伝送体11の端面から出射された光は、光コネクター12の光学面(第1光学部16)から入射するが、光伝送体11の端面から出射された光の一部は、光コネクター12の光学面で反射して光伝送体11の端面に戻ってきてしまうことがある。この反射光が光伝送体110に入射するのを抑制するために、
図1に示されるように、光伝送体11の端面には、傾斜がつけられることがある。
【0008】
また、光コネクター12は、一般に型によって成形されるため、光コネクター12には、型から成形品である光コネクター12を離型させるための抜き勾配となる形状を設けることがある。具体的には、
図1に示されるように、光コネクター12において、光伝送体11からの光が入射する光学面(第1光学部16)には傾斜がつけられることがある。
【0009】
上記の様な光コネクターの第1光学部16に対して光コネクター12の端部を位置決めする際には、
図1の矢印に示されるように光伝送体11の端面を光コネクター12の第1光学部16に突き当てるようにする。
【0010】
しかし、このようにして位置決めすると、光伝送体11は、
図1の上向きの矢印に示されるように、第1光学部16の傾斜面に沿うようにして上方に移動してしまうことがある。このため、光伝送体11の端部を正しい位置に位置させることができず、光コネクター12に対する光伝送体11の位置精度が低下してしまうことがある。
【0011】
本発明の目的は、光コネクターに対して光伝送体の端部を位置決めする際に、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる光コネクターを提供することである。また、本発明の別の目的は、当該光コネクターを有する光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る光コネクターは、光伝送体同士を光学的に結合させるための光コネクターであって、一方の光伝送体の端部を保持するための保持部と、前記保持部に保持された前記光伝送体の端面からの光を前記光コネクター内部に入射させるか、または前記光コネクターの内部を進行した光を前記光伝送体の前記端面に向けて出射させるための第1光学部と、他方の光伝送体を保持する他の光コネクターからの光を前記光コネクター内部に入射させるか、または前記光コネクター内部を進行した光を前記他の光コネクターに向けて出射させるための第2光学部と、を有し、前記保持部は、前記光伝送体の端面の少なくとも一部が前記第1光学部に接触するように前記光伝送体を配置させるための、一方向に延在する溝を有し、前記第1光学部と前記第2光学部との間の光路および前記溝の軸を含む断面において、前記第1光学部の前記光伝送体の端面と接触する面と、前記溝の軸とが成す角度は90°未満である。
【0013】
本発明の一実施の形態に係る光モジュールは、光伝送体と、上記の光コネクターと、を有し、前記光伝送体の端面の少なくとも一部は、前記光コネクターの前記第1光学部に接触している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光コネクターに対して光伝送体の端部を位置決めする際に、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる光コネクターを提供することができる。また、本発明によれば、この光コネクターを有する光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、従来の光モジュールの断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る光モジュールの断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る光コネクターの斜視図である。
【
図4】
図4Aは、実施の形態1に係る光コネクターの平面図であり、
図4Bは、実施の形態1に係る光コネクターの底面図である。
【
図6】
図6A、Bは、実施の形態1に係る光コネクターの断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る光コネクターに対して光伝送体を位置決めする様子を示す模式図である。
【
図8】
図8A、Bは、実施の形態1に係る光コネクターが接続された状態を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る光モジュールの光路図を示す。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る光モジュールの断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る光コネクターの斜視図である。
【
図12】
図12Aは、実施の形態2に係る光コネクターの平面図であり、
図12Bは、実施の形態2に係る光コネクターの底面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2に係る光コネクターの断面図である。
【
図15】
図15は、実施の形態2に係る光コネクターに対して光伝送体を位置決めする様子を示す模式図である。
【
図16】
図16は、実施の形態2に係る光モジュールの光路図である。
【
図17】
図17Aはブレード切断された光伝送体の端面を示す図であり、
図17Bはレーザーで切断された光伝送体の端面を示す図である。
【
図21】
図21A、Bは、変形例に係る光モジュールの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る光コネクターおよび光モジュールについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[実施の形態1]
(光モジュール構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る光モジュール100の構成を示す断面図である。
【0018】
図2に示されるように、本実施の形態に係る光モジュール100は、光伝送体110と、光コネクター120とを有する。光モジュール100は、光コネクター120に複数の光伝送体110が接続されて使用される。光モジュール100は、2個1組(一対)で使用される。複数の光伝送体を保持した一方の光コネクターに対して、他の複数の光伝送体110を保持した他方の光モジュール100を表裏反転させた状態で同一形状の光コネクター同士を接続し、複数の光伝送体110同士を光学的に結合させる。
【0019】
光伝送体110の種類は、特に限定されない。光伝送体110の種類の例には、光ファイバー、光導波路が含まれる。光伝送体110の数は、複数であれば限定されない。本実施の形態では、光伝送体110の数は、16個である。光伝送体110は、光コネクター120の保持部130に配置される。光伝送体110は、その端面が第1光学部160に突き当てられ、接触した状態で、接着剤が塗布され、蓋150により押さえつけられることにより、光コネクター120に固定される。本実施の形態では、光伝送体110は、光ファイバーである。また、光ファイバーは、シングルモード方式でもよいし、マルチモード方式でもよい。光伝送体110の端面は、後述する、突き当たる光コネクター120の第1光学部160に対応するように傾斜している。すなわち、光伝送体110の端面の傾斜角度は、溝143の軸に対する第1光学部160の傾斜角度と同一であることが好ましい。
【0020】
光伝送体110の数は、複数であれば限定されない。本実施の形態では、光伝送体110の数は、16本である。光伝送体110の端部は、光コネクター120に固定される。
【0021】
(光コネクターの構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る、蓋150を除いた光コネクター120の斜視図である。
図4Aは、本発明の実施の形態1に係る蓋150を除いた光コネクター120の平面図であり、
図4Bは、底面図である。
図5Aは、本発明の実施の形態1に係る光コネクター120の正面図であり、
図5Bは、背面図であり、
図5Cは、左側面図であり、
図5Dは、右側面図である。
図6Aは、
図4Aに示されるA-A線の断面図であり、
図6Bは、
図6Aの部分拡大図である。
【0022】
なお、以下の説明では、光伝送体110が並列に配置される方向(第2光学部170の凸面171が配列されている方向)を「第1の方向」または「X方向」とし、第2光学部170を正面視したとき(2つの光コネクター120の間の光路に沿う方向に見たとき)のX方向に直交する方向を「第2の方向」または「Z方向」とし、X方向およびZ方向に直交する方向を「第3の方向」または「Y方向」とする。
【0023】
図2~
図5Dに示されるように、光コネクター120は、略直方体形状の部材である。光コネクター120は、保持部130と、第1光学部160と、第2光学部170とを有する。なお、本実施の形態では、光コネクター120は、上記の構成に加え、凸部181と、凹部182と、係合凸部183と、係合凹部184とをさらに有する。
【0024】
光コネクター120は、光通信に用いられる波長の光に対して透光性を有する材料を用いて形成される。光コネクター120の材料の例には、ウルテムなどのポリエーテルイミド(PEI)や環状オレフィン樹脂などの透明な樹脂が含まれる。また、光コネクター120は、例えば射出成形により製造されうる。
【0025】
保持部130は、光伝送体110を保持する。保持部130の構成は、光伝送体110を保持できれば特に限定されない。保持部130の構成は、光伝送体110を押さえつけて保持する構成でもよいし、光伝送体110を挿入して保持する構成でもよい。本実施の形態では、保持部130は、保持用凹部140と蓋150とを有し、保持用凹部140に配置された光伝送体110を押さえつけて保持するように構成されている。
【0026】
保持用凹部140は、光コネクター120の天面と背面とに開口している。保持用凹部140の平面視形状は、複数の光伝送体110を適切な位置に配置できれば特に限定されない。本実施の形態では、保持用凹部140の平面視形状は、矩形である。保持用凹部140の第1の方向(X方向)における両端部には、蓋150を所定の位置に配置するための切り欠き部141が配置されている。これにより、配置された蓋150が第3の方向(Y方向)に外れることを防止できる。
【0027】
本実施の形態において、保持用凹部140の底面には、複数の凸条142が配置され、凸条142と凸条142との間は溝143となっている。溝143は一方向に延在しており、溝143は、第1の方向(X方向)に沿って複数存在している。溝143の構成は、光伝送体110を溝143に沿わせて配置させることにより、光伝送体110の端面が第1光学部160に接触するように光伝送体110の端部を導くことができれば特に限定されない。
【0028】
溝143は、保持用凹部140の底面全体に配置されていてもよいし、保持用凹部140の底面の一部に配置されていてもよい。本実施の形態では、溝143は、保持用凹部140の底面の第1光学部160側の一部の領域に配置されている。溝143の数は、設置される光伝送体110の数以上であればよい。本実施の形態においては、溝143の数は、光伝送体110の数と同じ数である。すなわち、本実施の形態では、溝143の数は、16個である。溝143の断面形状は、特に限定されない。溝143は、V字溝でもよいし、U字溝でもよい。本実施の形態では、溝143は、V字溝である。溝143の深さは、溝143に光伝送体110を配置した状態において、光伝送体110の上端部が溝143の上端部よりも突出するような深さが好ましい。これにより、後述の蓋150によって、光伝送体110を溝143に向けて押し付けて、光伝送体110が外れてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
本実施の形態において、光コネクター120をYZ平面で切断した場合、溝143の軸は、Y方向に沿うように配置されている。つまり、溝143の軸は、光コネクター120の裏面に対して平行である。
【0030】
蓋150は、光伝送体110を、光コネクター120を溝143に向けて押し当てる。蓋150は、保持用凹部140を覆うように配置されている。蓋150の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。
【0031】
本実施の形態では、蓋150は、蓋本体151と、突起部152とを有する(後述する
図8A、B参照)。蓋本体151は、光コネクター120の天面側から保持用凹部140を覆う。突起部152は、蓋本体151の第1の方向の両端部に配置されており、裏側に向けて突出している。突起部152の形状は、保持用凹部140に配置された切り欠き部141の形状と相補的な形状である。
【0032】
本実施の形態では、複数の光伝送体110を複数の溝143上に配置し、光伝送体110の端面を第1光学部160に突き当てる。この状態で、光伝送体110の端面と、第1光学部160との間に空気層が介在しないように接着剤を塗布する。接着剤が硬化する前に、蓋150で光伝送体110を保持用凹部140の底面に向かって押し付ける。この状態で接着剤が硬化させることにより、光コネクター120に対して光伝送体110を固定できる。
【0033】
第1光学部160は、保持部130に保持される複数の光伝送体110の端面と対向して配置されている。第1光学部160は、光伝送体110から出射された光を入射させるか、複数の光伝送体110の端面に向けて光を出射させる。第1光学部160の形状は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、第1光学部160は、平面である。第1光学部160は、保持用凹部140の内側面の一部に配置されている。
【0034】
第1光学部160と第2光学部170との間の光路および溝143の軸を含む断面、すなわち第2の方向および第3の方向を含む平面(ZY平面)において、第1光学部160の光伝送体110の端面と接触する面と、溝143の軸とが成す角度は90°未満である。当該角度が90°未満であることで第1光学部160に光伝送体110の端面を押し当てるようにして位置決めする際に、位置精度が低下することが抑制される。当該角度は90°未満であれば特に制限されないが、当該角度の上限は、88°以下であることが好ましい。下限は例えば80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ましい。
【0035】
本実施の形態において、
図6A、Bに示されるように、第1光学部160の光伝送体110の端面と接触する面は、光コネクター120の裏面に対して傾斜しており、光伝送体110の軸は光コネクター120の裏面に対して平行である。また、本実施の形態において、第1光学部160の光伝送体110の端面と接触する面は、光コネクター120の裏面に近づくにつれて第2光学部170に近づくように傾斜している。
【0036】
第2光学部170は、第1光学部160で入射した光を外部に出射させるか、または他の光コネクターからの光を入射させる。第2光学部170の形状は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。第2光学部170は、複数の凸面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、第2光学部170は、複数の凸面171を含む。凸面171は、第1の方向に並列に配置され、第1光学部160で入射した光を他の光コネクター120に向けて出射させるか、または他の光コネクター120からの光を入射させる。第2光学部170は、光コネクター120の正面に配置されている。凸面171の平面視形状は、特に限定されない。凸面171の平面視形状は、円形でもよいし、矩形でもよい。本実施の形態では、凸面171の平面視形状は、円形である。また、凸面171の数は、光伝送体110の数と同じ数である。すなわち、本実施の形態では、凸面171の数は、16個である。
【0037】
第2光学部170を正面視したとき(光コネクター120と他の光コネクター120との間の光路に沿ってみたとき)、第1の方向に平行な基準直線に対して線対称となる位置には、一対の凸部181および凹部182が配置されている。本実施の形態では、第2光学部170を正面視したとき(光コネクター120と他の光コネクター120との光路に沿ってみたとき)、第1の方向(X方向)に直交する第2の方向(Z方向)には、第2光学部170を挟んで、凸部181および凹部182が配置されている。本実施の形態では、光コネクター120の正面において、第2光学部170、凸部181および凹部182が配置されていない接触面187は、平面である。接触面187は、他のコネクター120の接触面187に接触する。接触面187は、光コネクター120の裏面に対して垂直となるように配置されていてもよいし、光コネクター120の裏面に対して傾斜して配置されていてもよい。本実施の形態では、接触面187は、光コネクター120の裏面に対して垂直となるように配置されている。
【0038】
凸部181は、他の光コネクター120の凹部182に嵌合可能な形状である。本実施の形態では、凸部181は、光コネクター120の正面における表側(上側)に配置されている。凸部181の形状は、第2の方向における光コネクター120の位置ずれを抑制できれば特に限定されない。本実施の形態では、凸部181の形状は、第1の方向(X方向)に幅広の凸条である。
【0039】
凹部182は、他の光コネクター120の凸部181に嵌合可能な形状である。凹部182の形状は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、凹部182は、光コネクター120の正面の裏側(下側)配置されている。凹部の形状は、第2の方向における光コネクター120の位置ずれを抑制できれば特に限定されない。
【0040】
なお、本実施の形態では、第2光学部170の表面側(上面側)に凸部181が配置され、第2光学部170の裏面側(下面側)に凹部182が配置されているが、逆に配置されていてもよい。すなわち、第2光学部170の表側に凹部182が配置され、第2光学部170の裏面側に凸部181が配置されていてもよい。また、凸部181と凹部182とは、相補的な形状であることが好ましい。また、凸部181および凹部182は、光コネクター120を正面視したときに、表裏方向における中心を通り、第1の方向に延在する仮想直線に対して、線対称となるように配置されることが好ましい。
【0041】
係合凸部183は、第1の方向における光コネクター120の両端部であって、かつ裏面側に配置され、光コネクター120の正面から突出した、矩形柱の形状である。係合凸部は、内側の平面に内向規制面185を有する。
【0042】
係合凹部184は、第1の方向における両端部であって、かつ表面(上面)側の角に開口した凹部である。係合凹部184は、内側の平面に外向規制面186を有する。
【0043】
光コネクター120と他の光コネクター120とを係合させたとき、少なくとも一対の内向規制面185は他の光コネクター120の一対の外向規制面186にそれぞれ接触し、少なくとも一対の外向規制面186は、他の光コネクター120の少なくとも一対の内向規制面185にそれぞれ接触することにより、第1の方向(X方向)について位置規制される。
【0044】
(光モジュールの使用方法)
ここで、光モジュール100の使用方法について、
図7~
図8Bを参照しつつ説明する。
【0045】
図7は、実施の形態1に係る光コネクター120に対して光伝送体110を位置決めする様子を模式的に示す。
【0046】
図7に示されるように、本実施の形態においては、光コネクター120の第1光学部160に対して光伝送体110を突き当てるようにしても、光伝送体110には下方向の力が加わり、位置精度が低下することが抑制される(
図1比較参照)。これは、光コネクター120において、第1光学部160の光伝送体110の端面と接触する面と、光伝送体110を配置させるための溝143の軸とが成す角度が90°未満だからである。
【0047】
図8A、Bは、光モジュール100同士を接続した状態を示す斜視図である。なお、
図8A、Bでは、光伝送体110を省略している。
【0048】
図8A、Bに示されるように、一方の光モジュール100は蓋150を上側に向け、他方の光モジュールは第1の方向に沿う直線を回転軸として光モジュール100を回転(表裏反転)させる。そして、一方の光モジュール100の凸部181と他方の光モジュール100の凹部182とを係合させるとともに、一方の光モジュール100の凹部182と他方の光モジュール100の凸部181とを係合させる。これにより、第2の方向(Z方向)について、一方の光モジュール100と他方の光モジュール100との間の位置ずれが規制される。また、一方の光モジュール100の係合凸部183と他方の光モジュール100の係合凹部184とを係合させるとともに、一方の光モジュール100の係合凹部184と他方の光モジュール100の係合凸部183とを係合させる。これにより、第1の方向(X方向)について、一方の光モジュール100と他方の光モジュール100との間の位置ずれが規制される。これにより、一方の光モジュール100に接続された複数の光伝送体110と、他方の光モジュール100に接続された光伝送体110とが光学的に結合される。
【0049】
次に、一方の光モジュール100と他の光モジュール100との間の光路について説明する。
図9は、一方の光モジュール100と他方の光モジュール100とが接続され、一方の光伝送体110と他方の光伝送体110とが光学的に結合している状態を示す。なお、
図9は、第2の方向および第3の方向を含む平面(ZY平面)における断面図である。
【0050】
図9に示されるように、一方の光モジュール100と他方の光モジュール100とを接続させた状態では、一方の光モジュール100の光伝送体の中心軸(第2光学部170(凸面171)の中心軸)と、他方の光モジュール100の光伝送体110の中心軸(第2光学部170(凸面171)の中心軸)とは同一直線上にない。
【0051】
図9に示される本実施の形態では、左側の裏側が上を向いた光コネクター120における光伝送体110の中心軸(第2光学部170(凸面171)の中心軸)の方が、右側の表側が上を向いた光コネクター120における光伝送体110の中心軸(第2光学部(凸面171)の中心軸)より第2の方向(Z方向)で僅かに上に位置している。
【0052】
本実施の形態において、光伝送体110の端面および第1光学部160は、第2の方向(Z方向)に対して垂直ではなく、傾斜しており、進行する光は屈折する。したがって、これに合わせて、上記の様に光伝送体110の中心軸同士が同一直線上にない状態にすることで、2つの光伝送体110を光学的に結合させることができる。
【0053】
2つの光伝送体110が光学的に結合された状態での光の進行を以下に説明する。
【0054】
一方の光伝送体110から出射された光は、ほぼ水平に進行し、第1光学部160で光コネクター120内に入射する。光コネクター120に入射した光は、第2光学部170の凸面171から出射される。一方の光モジュール100から出射された光は、他方の光モジュール100の第2光学部170の凸面171から入射する。光コネクター120に入射した光は、第1光学部160から出射され、他方の光モジュール100に固定された光伝送体110に入射する。このように、本実施の形態に係る光モジュール100を接続した場合、一方の光モジュール100の光伝送体110から出射された光は、ほぼ直進して、他方の光モジュール100の光伝送体110に到達する。
【0055】
(効果)
本実施の形態の光モジュール100によれば、第1光学部160の光伝送体の端面と接触する面と、溝の軸とが成す角度は90°未満であるため、光コネクターに対して光伝送体の端部を位置決めする際に、光伝送体110が、斜面に沿うように移動して、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0056】
[実施の形態2]
(光モジュールおよび光コネクターの構成)
次に、実施の形態2に係る光モジュール200について説明する。
【0057】
図10は本発明の実施の形態2に係る光モジュール200の構成を示す断面図である。
図11は、本発明の実施の形態2に係る、蓋250を除いた光コネクター220の斜視図であり、
図12Aは、平面図であり、
図12Bは、底面図である。
図13Aは、本発明の実施の形態2に係る光コネクター220の正面図であり、
図13Bは、左側面図であり、
図13Cは、右側面図である。
図14は、
図12AのA-A線に沿う断面図である。実施の形態2に係る光モジュール200および光コネクター220において、実施の形態1と同様の構成には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
実施の形態2に係る光モジュール200においては、実施の形態1に係る光モジュール100と同様に、第1光学部260と第2光学部270との間の光路および溝243の軸を含む断面において、第1光学部260の光伝送体210の端面と接触する面と、溝の軸とが成す角度は90°未満である。
【0059】
しかし、光モジュール200においては、光コネクター220の第1光学部260の光伝送体210の端面と接触する面は、光コネクター220の裏面に対して垂直であり、溝243の軸は、光コネクター220の裏面に対して傾斜している点で実施の形態1に係る光モジュール100と主に異なる。具体的には、本実施の形態において、溝243の軸は、第1光学部260に近づくにつれて光コネクター220の裏面に近づくように傾斜している。
【0060】
(光モジュールの使用方法)
ここで、光モジュール200の使用方法について、
図15、
図16を参照しつつ説明する。
【0061】
図15は、実施の形態2に係る光コネクター220に対して光伝送体210を位置決めする様子を模式的に示す。
【0062】
図15に示されるように、本実施の形態においては、光コネクター220の第1光学部260に対して光伝送体210を突き当てるようにしても、光伝送体210に上方向の力が加わらず位置精度が低下することが抑制される(
図1比較参照)。これは、光コネクター220も光コネクター120と同様に、第1光学部260の光伝送体210の端面と接触する面と、光伝送体210を配置させるための溝243の軸とが成す角度が90°未満だからである。
【0063】
図16は、一方の光モジュール200と他の光モジュール200とが接続され、一方の光伝送体210と他方の光伝送体210とが光学的に結合している状態を示す、なお、
図16は、第2の方向および第3の方向を含む平面(ZY平面)における断面図である。
【0064】
図16に示されるように、一方の光モジュール200と他方の光モジュール200とを接続させた状態では、一方の光モジュール200の光伝送体210の中心軸(第2光学部270(凸面271)の中心軸)と、他方の光モジュール200の光伝送体210の中心軸(第2光学部270(凸面271)の中心軸)とは同一直線上にない。
【0065】
図16に示される本実施の形態では、左側の裏側が上を向いた光コネクター220における光伝送体210の中心軸(第2光学部270(凸面271)の中心軸)の方が、右側の表側が上を向いた光コネクター220における光伝送体210の中心軸(第2光学部270(凸面271)の中心軸)より第2の方向(Z方向)で少し下に位置している。
【0066】
本実施の形態において、光伝送体210の軸は、第2の方向(Z方向)に対して垂直ではなく、傾斜しており、進行する光は屈折する。したがって、これに合わせて、上記の様に光伝送体110の中心軸同士が同一直線上にない状態にすることで、2つの光伝送体210を光学的に結合させることができる。
【0067】
(効果)
本実施の形態の光モジュール200によれば、第1光学部260の光伝送体210の端面と接触する面と、溝243の軸とが成す角度は90°未満であるため、光コネクター220に対して光伝送体210の端部を位置決めする際に、光伝送体210が、斜面に沿うように移動して、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる。また、本実施の形態において、第1光学部260の光伝送体210と接触する面は光コネクター220の裏面に対して垂直である。このため、第1光学部260が光コネクター220を離型する際のアンダーカットとなることが抑制され、光コネクター220は離型しやすい(Z方向に離型しやすい)。
【0068】
[変形例]
本発明の光コネクターに適用可能な構成を有する変形例について、以下に説明する。
【0069】
図17Aはブレード(刃物)で切断された光伝送体の断面図を示し、
図17Bはレーザーで切断された光伝送体310の断面図を示す。これらの図では光伝送体の内部構造を省略している。
図17Aに示されるようにブレードで切断された光伝送体の端面は平面である。これに対して、
図17Bに示されるように、光伝送体310をレーザーで切断すると、切断時の熱の影響により、光伝送体310の端面は、曲面(ドーム形状)となり、かつ光伝送体310の端面近傍が膨らむことがある。このような形状を有する、光伝送体310の端面を、溝に沿わせつつ、光レセプタクルの第1光学部160に対して突き当てるようにして位置決めすると、位置精度が低下してしまうことがある。
【0070】
変形例に係る光コネクター320が有する構成は、上記のような位置精度の低下を抑制するためのものである。これらの構成は本発明の光コネクターに適用可能であり、実施の形態1および2のどちらにも適用可能である。以下、これらの構成が実施の形態1に適用された場合を、変形例に係る光コネクター320として説明する。なお、光コネクター320において、実施の形態1に係る光コネクター120と同様の構成については同様の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
【0072】
図20B、
図21Aに示されるように、光コネクター320は、溝143と第1光学部160との間に配置された第1凹部144を有する。また、光コネクター320の第1光学部160は、光伝送体310の端面の下部を支持するための支持部161を有してもよい。また、第1光学部160は、光伝送体310の端面を位置決めするための第2凹部162を有してもよい。以下、これらの構成要素について説明する。
【0073】
第1凹部144は、溝143と第1光学部160との間に配置される。第1凹部144は、光伝送体310の端面を第1光学部160に対して突き当てるようにして位置決めするときに、光伝送体310の端部の膨らんだ部分を受け入れる。これにより、光伝送体310が上方に浮き上がることを防止して、正しい位置に配置させることができる。
【0074】
第1凹部144の構成は上記の機能が発揮できれば特に制限されない。本変形例において、第1凹部144は、第1光学部160に近づくにつれて裏面に近づくように傾斜する傾斜面を有する。第1凹部144の深さおよび長さは、光伝送体310の端部の膨らみを受け入れ可能であればよい。第1凹部144の深さおよび長さは、光伝送体310の端部の膨らみに応じて適宜設定されればよい。また、
図18Aに示されるように、本変形例において、第1凹部144は、第1の方向(X方向)に延在している溝である。
【0075】
支持部161は、第1光学部160に配置される。支持部161は、光伝送体310の端面が第1光学部160に接触したときに光伝送体310の端面の下部を支持するためのものである。支持部161の構成は上記の機能を発揮できれば特に制限されない。
【0076】
本変形例において、支持部161は、
図21Aに示されるように、後述する第2凹部162の一部である。また、支持部161は、
図21Bに示されるように、第1光学部160から突出した凸部であってもよい。支持部161は、第2凹部162の一部であってもよいし、独立した構造物であってもよい。
【0077】
第2凹部162は、第1光学部160に配置され、光伝送体310の端面を位置決めするためのものである。すなわち、第2凹部162を有する場合、光伝送体310の端面の少なくとも一部は、第2凹部162に接触するように配置されている。第2凹部162の構成は、上記の機能が発揮できれば特に制限されない。第2凹部162は、当該機能を発揮できるように、光伝送体310の端面に相補的な形状を有することが好ましい。たとえば、光伝送体310の端面が、ドーム形状(凸曲面)である場合、第2凹部162は、ドーム形状に相補的な凹曲面形状を有することが好ましい。
【0078】
具体的には、第2凹部162は、第2光学部170に向かって突出する円弧状に形成されている部分を有することが好ましい。円弧状に形成されている部分は、第1の方向(X方向)からみたときに円弧状であってもよいし、第2の方向(Z方向)からみたときに円弧状であってもよいし、第1の方向および第2の方向の両方からみたときに円弧状であってもよい。なお、第2凹部162を有する場合、光コネクター320に対する光伝送体310の位置精度をより向上するという効果を有する。第1光学部160の光伝送体310の端面と接触する面と、溝143の軸とが成す角度が90°の場合であっても、この効果を有する。
【0079】
(効果)
変形例に係る光コネクター320によれば、端面が膨らんだ形状を有する光伝送体310を位置決めする際に、位置精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る光コネクターおよび光モジュールは、光伝送体を用いた光通信に有用である。
【符号の説明】
【0081】
100、200 光モジュール
11、110、210、310 光伝送体
12、120、220、320 光コネクター
130、230 保持部
140、240 保持用凹部
141 切り欠き部
142、242 凸条
143、243 溝
144 第1凹部
150、250 蓋
151 蓋本体
152 突起部
16、160、260 第1光学部
161 支持部
162 第2凹部
170、270 第2光学部
171、271 凸面
181 凸部
182 凹部
183 係合凸部
184 係合凹部
185 内向規制面
186 外向規制面
187 接触面