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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004100
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】X線管装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/02 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
H05G1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105601
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 雄一
【テーマコード(参考)】
4C092
【Fターム(参考)】
4C092AB27
4C092AC14
4C092AC17
4C092BD17
(57)【要約】
【課題】ラジエータの組み立てが容易にできるX線管装置を提供する。
【解決手段】本実施形態のX線管装置において、ラジエータは、熱交換部と、熱交換部を収納する筐体と、ネジ部材と、スペーサとを備え、筐体は、熱交換部を重ねて取り付けるベースを備え、ネジ部材は、雄ネジが形成された軸部と、軸部よりも径が大きい頭部とを備え、熱交換部には雄ネジが螺合する雌ネジが形成されており、スペーサは、ベースに配置してネジ部材を受けるものであり、ネジ部材の軸部を挿通する軸挿通孔が形成してある共に前記ネジ部材の頭部を受ける座部を有し、ベースには、ネジ部材の軸を挿通する軸挿通孔が形成してあり、ベースの軸挿通孔の内径は、スペーサの軸挿通孔の内径よりも大きく且つ座部の外径よりも小さくしてあり、スペーサの軸挿通孔の位置を雌ネジの位置に一致させて、雄ネジが雌ネジに螺合している。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、前記X線管を収納する管容器と、前記管容器に接続されて前記管容器との間を絶縁油が循環するラジエータとを備え、
前記ラジエータは、熱交換部と、前記熱交換部を収納する筐体と、ネジ部材と、スペーサとを備え、
前記筐体は、前記熱交換部を重ねて取り付けるベースを備え、
前記ネジ部材は、雄ネジが形成された軸部と、前記軸部よりも径が大きい頭部とを備え、
前記熱交換部には前記雄ネジが螺合する雌ネジが形成されており、
前記スペーサは、前記ベースに配置して前記ネジ部材を受けるものであり、前記ネジ部材の前記軸部を挿通する軸挿通孔が形成してあると共に前記ネジ部材の前記頭部を受ける座部を有し、
前記ベースには、前記ネジ部材の前記軸を挿通する軸挿通孔が形成してあり、
前記ベースの前記軸挿通孔の内径は、前記スペーサの前記軸挿通孔の内径よりも大きく且つ前記座部の外径よりも小さくしてあり、前記スペーサの前記軸挿通孔の位置を前記雌ネジの位置に一致させた状態で、前記雄ネジが前記雌ネジに螺合しているX線管装置。
【請求項2】
前記スペーサの前記軸挿通孔には、その孔の周縁に沿う筒状のカラーが形成してある請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記座部が円環状であり、前記カラーが円筒状を成し、前記座部と前記カラーとが連続して一体に形成されている請求項2に記載のX線管装置。
【請求項4】
前記熱交換部は、前記筐体の内側で前記ベースに重ねてあり、前記ネジ部材は、頭部を前記筐体の外側にして前記雄ネジを前記雌ネジに螺合している請求項1~3のいずれか一項に記載のX線管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管容器内に収納したX線管を、管容器とラジエータとの間を循環する絶縁油で冷却する構成のX線管装置が公知である。
例えば、X線CT(Computed Tomography)装置用及び循環器用回転陽極X線管装置では、ラジエータは安価で熱交換効率の高いフィン-パイプ構造の熱交換部を有するラジエータが使用されている。
一般的に、フィン-パイプ構造の熱交換部は、ラジエータの筐体内に設けてあり、筐体のベースに取り付けられている。
熱交換部と筐体のベースとの取り付けは、どちらか一方は貫通穴(軸挿通孔)で、もう一方には雌ネジが形成してあり、この貫通穴(軸挿通孔)にねじやボルト等のネジ部材の軸部を通して、軸部に形成された雄ネジを雌ネジに螺合して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-182549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フィン-パイプ構造のラジエータの最終組立状態(熱交換部を筐体のベースに組み込んだ状態)での組立公差、特に、筐体のベースに対する熱交換部の取り付け位置の公差は、数mmであり一般の機械加工に比べ非常に大きい。
例えば、熱交換部の雌ネジとベースの貫通孔(軸挿通孔)との間で、位置ずれが生じると、ボルト等のネジ部材でのラジエータの組み立てが困難になるという問題があった。
本実施形態の目的は、ラジエータの組み立てが容易にできるX線管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、X線を発生するX線管と、前記X線管を収納する管容器と、前記管容器に接続されて前記管容器との間を絶縁油が循環するラジエータとを備え、前記ラジエータは、熱交換部と、前記熱交換部を収納する筐体と、ネジ部材と、スペーサとを備え、前記筐体は、前記熱交換部を重ねて取り付けるベースを備え、前記ネジ部材は、雄ネジが形成された軸部と、前記軸部よりも径が大きい頭部とを備え、前記熱交換部には前記雄ネジが螺合する雌ネジが形成されており、前記スペーサは、前記ベースに配置して前記ネジ部材を受けるものであり、前記ネジ部材の前記軸部を挿通する軸挿通孔が形成してあると共に前記ネジ部材の前記頭部を受ける座部を有し、前記ベースには、前記ネジ部材の前記軸を挿通する軸挿通孔が形成してあり、前記ベースの前記軸挿通孔の内径は、前記スペーサの前記軸挿通孔の内径よりも大きく且つ前記座部の外径よりも小さくしてあり、前記スペーサの前記軸挿通孔の位置を前記雌ネジの位置に一致させた状態で、前記雄ネジが前記雌ネジに螺合しているX線管装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るX線管装置の概略構成図である。
図2図2は、図1に示すラジエータの概略的構成であって、(a)は正面図、(b)は横断面図である。
図3図3は、筐体ベースに熱交換部を固定した状態を示す斜視図である。
図4図2(a)に示すA-A断面図である。
図5図4に示すネジ部材の固定部分を示す分解斜視図である。
図6】第1実施形態に係るスペーサの斜視図である。
図7】第2実施形態に係るスペーサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
図1は、実施形態に係るX線管装置1の概略構成図である。
X線管装置1は、X線を発生するX線管3と、X線管3を収納する管容器5と、管容器5にパイプ6a、6bを介して接続されて管容器5との間を絶縁油が循環するラジエータ7とを備えている。
X線管3は、例えば、回転陽極X線管であり、ステータコイル9により内部に設けたローターを回転しつつ、ローターと共に回転する陽極と、陰極との間の電位差により電子を放電し、放出した電子が陽極ターゲットに衝突することでX線を発生する。
管容器5内には絶縁油が満たされている。
パイプ6aは管容器5への流入パイプであり、パイプ6bは管容器5からの流出パイプである。
【0009】
ラジエータ7は、熱交換部11と、この熱交換部11を内部に収納する筐体13とを備えている。
筐体13内には、更に、絶縁油を循環するポンプ15、及び熱交換部11を送風するファン17が収納されている。
【0010】
図2及び図3に示すように、熱交換部11は、パイプ6a、6b間に接続された冷却パイプ6cと、冷却パイプ6cに取り付けた多数のフィン12とを有するフィン-パイプ構造であり、熱交換部11の左右側には、対向する一対の取付け金具14、14を備えている。
筐体13には、一側面に熱交換部11を重ねて取り付けるベース19が設けてあり、熱交換部11の一対の取付け金具14、14は、それぞれベース19に設けた網材21を挟む位置に固定されている。
【0011】
次に、一対の取付け金具14、14とベース19との固定について説明する。
一対の取付け金具14,14は、それぞれ同じ構成であるから、以下の説明では一方の取付け金具14とベース19との固定について説明する。
図4及び図5に示すように、一方の取付け金具14とベース19とは、ネジ部材23と、スペーサ25とにより固定されている。
【0012】
ネジ部材23は、例えば、ボルトやネジであり、雄ネジ27が形成された軸部29と、軸部29よりも径が大きい頭部31とを備えている。
スペーサ25は、ネジ部材23の軸部29を挿通する軸挿通孔34が形成されており、軸挿通孔34を囲む円筒形状のカラー33と、ネジ部材23の頭部31を受ける円盤形状の座部35を備えている(図6を併せて参照)。
カラー33は、軸挿通孔34に挿通されたネジ部材23の軸部29の挿通を真っすぐに案内するものである。
また、取付け金具(熱交換部)14には、ネジ部材23の雄ネジ27が螺合する雌ネジ37が形成されている。
ベース19には、ネジ部材23の取付け位置に対応して、スペーサ25のカラー33を移動自在に配置するカラー配置孔(軸挿通孔)39が形成されている。カラー配置孔39は、ネジ部材23の軸部29を挿通する軸挿通孔でもある。この実施形態では、カラー配置孔39は丸穴である。
【0013】
次に、図5を参照して、ベース19のラカー配置孔(軸挿通孔)39と、スペーサ25における各部の寸法の関係について説明する。
前記ベース19において、カラー配置孔39の内径W1は、カラー33の外径W2よりも大きく、且つ座部35の外径W3よりも小さい。
即ち、W2<W1<W3の関係にある。
従って、カラー33は、カラー配置孔39内を移動領域として前後左右に移動自在であり、スペーサ25はカラー33が移動自在な領域内で任意の位置に配置することができる。
これにより、熱交換部11の雌ネジ37の位置とカラー配置孔39の中心が多少ずれていても、スペーサ25と共にネジ部材23を前後左右に移動させて調整し(図4に示す矢印F参照)、ネジ部材23の雄ネジ27とネジ部材23の雄ネジ27の位置を一致させて螺合することができる。
【0014】
次に、ラジエータ7の組み立てについて説明する。
図2及び図3に示すように、ラジエータ7の筐体13には、そのベース19の内側に熱交換部11を重ねて配置する。熱交換部11では、一対の取付金具14、14をベース19の網材21を跨ぐ位置に配置する(図3参照)。
次に、一対の取付金具14、14をネジ部材23でベースに固定するが、一対の取付金具14、14には、それぞれ予め所定位置にネジ部材23を螺合する雌ネジ37を形成しておく(図4及び図5参照)。
一方、ベース19には、カラー配置孔(軸挿通孔)39を形成しておく、カラー配置孔39はスペーサ25のカラー33の外径W2よりも充分に大きいが、座部35の外径W3よりも小さい径の孔である。
【0015】
その後、ベース19のカラー配置孔39にスペーサ25のカラー33を挿入して、スペーサ25をカラー配置孔39に配置する。
そして、スペーサ25をカラー配置孔39内で前後左右に移動して、カラー33の内側側の空間であるスペーサの軸挿通孔34を取付金具14の雌ネジ37の位置に合わせる。その位置でネジ部材23の軸部29をカラー33内に挿通し、ネジ部材23の雄ネジ27を熱交換部11の雌ネジ37に合わせ、ネジ部材23の頭部31をドライバー等で締め付ける。
以下同様にして、熱交換部11をベース19に他のネジ部材23で所定箇所を固定する。
【0016】
次に、実施形態に係るX線管装置1の作用について説明する。
図1に示すように、X線管3で発熱した熱は、管容器5内の絶縁油に伝達され、絶縁油はラジエータ7に運ばれる。
ラジエータ7では、熱交換部11で通風されることにより、絶縁油の熱が放熱され、これにより、絶縁油が冷却される。
【0017】
次に、実施形態に係るX線管装置1の効果について説明する。
ラジエータ7の組立て時において、熱交換部11をベース19に取付けるときには、熱交換部11に予め形成した雌ネジ37よりも大きな内径W1のカラー配置孔(軸挿通孔)39をベースに形成しており、スペーサ25と共にネジ部材23の雄ネジ27の位置を上下左右に移動して位置決めできるので、熱交換部11の雌ネジ37とベース19の軸挿通孔34との間で、多少の位置ずれがあっても、ネジ部材23の雄ネジ27を熱交換部11の雌ネジ37の位置に一致させて、ベース19と熱交換部11を容易に固定できる。
スペーサ25に設けた座部35の外径W3は、ベース19に形成したカラー配置孔(軸挿通孔)39の内径W1よりも大きいから、スペーサ25を上下左右に移動しても座部35で受けたネジ部材23の頭部31を常にベース19に当接できる。
【0018】
スペーサ24には、カラー33を設けてネジ部材23の軸部29の挿通を真っすぐに案内しているので、ネジ部材23の軸部29が傾かないで、雌ネジ37に固定することができる。
スペーサ25は、円環状の座部35と、その円環の内周に連続する筒状のカラー33で構成されているので、簡易な構成であると共に、製造が容易にできる。例えば、スペーサ25は円盤の内周側を切り起すようにして内側を曲げることで、カラー33を形成しても良い。
熱交換部11はベース19の内側(筐体の内側)に配置し、ネジ部材23は頭部31を外側にして止めているので、ネジ部材23の軸部29は筐体13の内側に位置するので軸部29が大きく突出した場合でも外観を損ねることがない。
【0019】
次に、図7を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、スペーサ25にカラー33を設けていないことが第1実施形態と異なっている。即ち、スペーサ25には、座部35の内周側にネジ部材23の軸部29を挿通する軸挿通孔34のみが形成されている。
そして、第1実施形態におけるベース19のカラー配置孔39は、第2実施形態では、スペーサ25の軸挿通孔34に、カラー33の外径W2は、軸挿通孔34の内径W4に置き換えて、適用することができる。
【0020】
この第2実施形態によれば、第1実施形態のカラー33を設けていないので、カラー33を有する効果を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
第2実施形態では、スペーサ25は、カラー33の厚み分だけ、第1実施形態よりもスペーサ25の調整範囲を広くすることができる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0022】
例えば、第1及び第2実施形態において、スペーサ25は、座部35の外周の形状は円に限らず、六角形や八角形であっても良く、外形は限定されない。
第1実施形態では、カラー33は円筒に限らず、四角筒や六角筒形状であっても良く、筒の形状は限定されない。
第1実施形態において、スペーサ25は、カラー33を座部35とは別体に設けて、溶接等により座部35に固定しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1…X線管装置、3…X線管、5…管容器、7…ラジエータ、11…熱交換部、
13…筐体、19…ベース、23…ネジ部材、25…スペーサ、
27…雄ネジ、29…軸部、31…頭部、33…カラー、
34…軸挿通孔(スペーサの軸挿通孔)、35…座部、37…雌ネジ、39…カラー配置孔(ベースの軸挿通孔)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7