(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041003
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】RFIDトランスポンダとの通信
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20230315BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G06K7/10 184
G06K7/10 124
H04B1/59
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119985
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】21195872
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィスラーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ダーク シュトルーベ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少なくとも1つのRFIDトランスポンダと通信するためのRFID装置及び方法を提示する。
【解決手段】RFID装置(10)は、RFID信号を発信及び受信するための発信器(16a)と、受信器(16b)と、発信アンテナ(14a)と、受信アンテナ(14b)と、複数の周波数チャネルのうち、その都度1つのチャネルにおいてRFID信号を発信及び受信し、特にRFIDプロトコルに従ってRFID情報を前記RFID信号に符号化及び/又はRFID信号から読み取り、更に、発信及び受信のために用いられる周波数チャネルに依存してRFID信号の強度適合化を行う制御及び評価ユニット(18)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのRFIDトランスポンダ(12)と通信するためのRFID装置(10)であって、RFID信号を発信及び受信するための発信器(16a)、受信器(16b)、発信アンテナ(14a)及び受信アンテナ(14b)と、複数の周波数チャネルのうちその都度1つのチャネルにおいてRFID信号を発信及び受信し、特にRFIDプロトコルに従ってRFID情報を前記RFID信号に符号化する及び/又は前記RFID信号から読み取るように構成された制御及び評価ユニット(18)とを備えるRFID装置(10)において、
前記制御及び評価ユニット(18)が更に、発信及び受信のために用いられる周波数チャネルに依存してRFID信号の強度適合化を行うように構成されていることを特徴とするRFID装置(10)。
【請求項2】
前記RFID装置(10)がISO180000-6に従ったUHF領域用に構成されており、特に前記周波数チャネルがETSI帯域又はFCC帯域内に定められている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項3】
前記制御及び評価ユニット(18)が、前記発信アンテナ(14a)の発信出力を、前記周波数チャネルにわたる該発信アンテナ(14a)のアンテナ特性に依存して適合化するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項4】
前記制御及び評価ユニット(18)が、受信されたRFID信号の増幅を、前記周波数チャネルにわたる前記受信アンテナ(14b)のアンテナ特性に応じて適合化するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項5】
前記制御及び評価ユニット(18)が、受信された前記RFID信号の測定強度、特にRSSI値を適合化するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項6】
前記制御及び評価ユニット(18)が、使用される周波数チャネルにおける適合化を前記RFIDトランスポンダ(12)のアンテナ特性に依存して行うように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項7】
前記制御及び評価ユニット(18)が、前記強度適合化により、使用される周波数チャネルから少なくとも十分に独立した強度をもたらすように構成されている、請求項1~6のいずれかに記載のRFID装置(10)。
【請求項8】
前記制御及び評価ユニット(18)が、最も弱い周波数チャネルに合わせて前記強度適合化を行うように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項9】
前記制御及び評価ユニット(18)が、受信された前記RFID信号の強度を前記RFIDトランスポンダ(12)との通信の際に様々な周波数チャネルで測定するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項10】
前記制御及び評価ユニット(18)が、必要な強度適合化を周波数チャネル毎にRFIDトランスポンダ(12)の型に対するパラメータ設定によって決定するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項11】
前記制御及び評価ユニット(18)が、必要な強度適合化を周波数チャネル毎にRFIDトランスポンダ(12)から強度最適化情報を読み取ることにより決定するように構成されている、請求項1に記載のRFID装置(10)。
【請求項12】
少なくとも1つのRFIDトランスポンダ(12)と通信するための方法であって、複数の周波数チャネルのうちその都度1つのチャネルにおいて発信器(16a)が発信アンテナ(14a)を通じてRFID信号を放射し、該RFID信号が受信アンテナ(14b)を通じて受信器(16b)内で受信され、その際、特にRFIDプロトコルに従ってRFID情報が、発信される前記RFID信号に符号化される及び/又は受信された前記RFID信号から読み取られる方法において、
発信及び受信のために用いられる周波数チャネルに依存してRFID信号の強度適合化が行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
強度チャネル毎に、様々な周波数チャネルにおいて受信されたRFID信号の強度を算出することにより、必要な強度適合化が事前に決定される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は12のプレアンブルに記載のRFID装置及び少なくとも1つのRFIDトランスポンダと通信するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは物体及び品物の識別に役立ち、とりわけ物流の自動化に利用されている。識別場所において、特に品物の所有者の変更や輸送手段の変更がある場合に、品物に固定されたRFIDトランスポンダが読み取られ、場合によっては逆に該トランスポンダへ情報が書き込まれる。これにより物流が迅速且つ追跡可能となる。取得された情報は商品及び製品の転送、保管及び選別を制御するために用いられる。
【0003】
RFIDトランスポンダは呼び掛け器(インテロゲータ)とも呼ばれる読み書きシステムの電磁波により励起されて保存情報を放射する。その際、受動型トランスポンダは必要なエネルギーを読み取りシステムの発信エネルギーから受け取る一方、それほど一般的ではない能動型トランスポンダはそのために専用の給電装置を備えている。確立された極超短波規格EPC Generation-2 UHF RFID(その無線インターフェイスはISO180000-6で規定されている)では受動型トランスポンダが後方散乱法により読み取られる。
【0004】
RFID装置はRFID用に認可された周波数帯の範囲内で様々な周波数チャネルで通信を行う。ある具体的な通信に用いられる周波数チャネルは、他の信号を回避できるようにするため、特に様々なRFIDトランスポンダを用いた通信を可能にするために、その都度動的に決定される。従来、RFID装置の発信エネルギーは、RFIDトランスポンダとの通信が全ての利用可能な周波数チャネルにおいて目標の読み取り射程まで可能であるように、画一的に調節される。これは許可された最大の発信出力を超えないという境界条件の下で行われる。
【0005】
しかし実際には、実効的な発信出力及びそれに伴う発信強度並びに受信強度は、関係するRFID装置及びRFIDトランスポンダの各々のアンテナ特性に基づいて周波数依存性を有する。即ちそれらは周波数チャネル毎に大きく違ったものとなる。周波数チャネルと無関係に固定的に調節される発信エネルギーではそれに対処できない。これは今まで顧慮されず、補正されていなかった作用である。
【0006】
これには数多くの問題が結びついている。まず、発信出力を固定すると各周波数チャネルの読み取り射程が異なるものとなる。そうすると、どの周波数チャネルにその固定された発信出力が適合しているかによって弱すぎる又は強すぎる周波数チャネルが生じる。弱すぎる周波数チャネルではRFIDトランスポンダを予定の射程全体にわたって読み取ることはできない。他方、強すぎる周波数チャネルでは、弱い周波数チャネルのための過大な安全マージンが余分な射程超過を生み出し、その下で、場合によっては不所望な遠方のRFIDトランスポンダが捕らえたり、近くの装置との相互作用が発生又は増大したりする。更に、多くのRFIDシステムでは、受信された信号強度(RSSI, Received Signal Strength Indicator)が距離の測定及び分類のために参照される。ここでは周波数チャネルによる信号強度の歪みが追加の誤差原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に、本発明の課題はRFID装置の適合化を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1又は12に記載のRFID装置及び少なくとも1つのRFIDトランスポンダと通信するための方法により解決される。本RFID装置は、呼び掛け器(インテロゲータ)又はRFIDリーダとも呼ばれる他、RFID装置は読み取りも書き込みもできることが好ましいことから、RFID読み書き装置とも呼ばれる。発信器が発信アンテナを通じて発信信号を発信し、該信号が受信器により受信アンテナを通じて再び受信される。発信器と受信器は一緒にトランシーバとして構成することができ、また共通の受発信アンテナを設けることができる。
【0009】
制御及び評価ユニットが、発信されて再び受信される各々のRFID信号のために複数の周波数チャネルの1つを選択する。全部合わせて利用可能な周波数チャネルは規則により、技術的に、そして場合によっては用途に特異的に予め決まっている。好ましくはRFID信号の発信及び受信を通じてRFIDトランスポンダと情報の交換が行われる。つまり、RFIDトランスポンダに伝達すべき若しくはそこに保存すべきRFID情報、又は特定の要求をするために用いられるRFID情報が、発信されるRFID信号に符号化される。或いは、RFIDトランスポンダのRFID情報が、受信されたRFIDトランスポンダ信号から読み取られる。発信信号は、特にUHF RFIDの場合、返信するRFID信号を照会された情報で修正するRFIDトランスポンダの給電に用いられる。
【0010】
本発明の出発点となる基本思想は、様々な周波数チャネルにわたり、比較可能な強度を得ることにある。そのために周波数チャネル毎にRFID信号の強度適合化が行われる。ここで「強度」とは代表として選ばれた概念であり、他に、RFID信号の振幅、発信及び/又は受信出力、その他のそのような同価値の物理量を通じた信号強度の記述をも含む。制御及び評価ユニットは好ましくは、周波数チャネルの強度の相対的な違い又は強度適合化のための適切な補正値を予め知っており、それは複数の類似した周波数チャネルのグループ毎の場合から周波数チャネル毎に個別の場合まである。強度適合化は実施形態に応じて様々なやり方で行われる。それらは互いに組み合わせ可能であり、例えば発信側及び/又は受信側で、物理的及び/又は計算的に、並びにRFID装置及び/又はRFIDトランスポンダのアンテナ特性に依存して行われる。
【0011】
本発明には、射程が全ての周波数チャネルにわたってより類似したもの又は同じものになるという利点がある。システム外のRFID装置、RFIDトランスポンダ又は他のシステムとの相互作用が低減する。今や発信出力をより狙いを定めて適合化することができるため、必要十分な量、可能な最大量、又は許可された量の出力を用いるだけで済む。信号強度に基づくフィルタリング又は分類がより信頼できるものになる。ここに挙げた利点はRFID装置又はRFIDトランスポンダのアンテナが狭帯域である場合により強く現れる。なぜならその場合、本発明による強度適合化を行わない従来のやり方では周波数チャネルにわたる違いが非常に顕著だからである。
【0012】
本RFID装置はISO180000-6に従ったUHF領域用に構成されていることが好ましい。これは確立の一途をたどっており、故に非常に重要な標準規格である。周波数チャネルは好ましくは(欧州の)ETSI帯域内又は(米国の)FCC帯域内で定められていることが好ましい。ETSIでは865~868MHzの間で200KHzずつ15チャネルが設けられ、FCCでは902~928MHzの間で500KHzずつ52チャネルが設けられる。周波数チャネルの数及びそれらにより全体でカバーされる帯域が広ければ広いほど、本発明による強度適合化がない場合の違いが大きくなり得る。故に本発明はFCC帯域においてその強みを非常に良く発揮することができる。
【0013】
制御及び評価ユニットは、発信アンテナの発信出力を、周波数チャネルにわたる該発信アンテナのアンテナ特性に依存して適合化するように構成されていることが好ましい。これは、許可された最大限度を守るという境界条件の下になおもあることが好ましい。発信アンテナ又はそのアンテナ特性は周波数チャネルにわたる強度の違いが生じる原因としてまず考えられるものである。RFID装置自身の発信アンテナの特性はその開発から分かっており、故に読み取り対象のRFIDトランスポンダや使用状況とは無関係に補償可能である。これにより特に、異なる周波数チャネルにおいて同一の実際の発信出力が達成される。言い換えれば、発信アンテナのアンテナ特性が実質的に平坦化される。
【0014】
制御及び評価ユニットは、受信されたRFID信号の増幅を、周波数チャネルにわたる受信アンテナのアンテナ特性に応じて適合化するように構成されていることが好ましい。これは今度は受信側に関係しており、その他の点では発信アンテナ及びそのアンテナ特性に対する前述の考察を転用できる。共通の発信・受信アンテナがある場合、それでもなお、RFID信号の受信時のアンテナ特性の作用を考慮すべきである。
【0015】
制御及び評価ユニットは、受信されたRFID信号の測定強度、特にRSSI値(Received Signal Strength Indicator)を適合化するように構成されていることが好ましい。これは、これまでのような物理的な補正ではなく、今度は計算的な補正であることが好ましい。これにより、その都度用いられる周波数チャネルによるRSSI値の歪みが防止される。そのため、例えばそれを上回るか下回るかがもはや周波数チャネルには依存しないような共通の閾値を設定することができ、それによりRSSI値に基づくフィルタリングや分類がより信頼できるものとなる。
【0016】
制御及び評価ユニットは、使用される周波数チャネルにおける適合化をRFIDトランスポンダのアンテナ特性に依存して行うように構成されていることが好ましい。即ち、RFIDトランスポンダから返信されるRFID信号も同様に、従来技術で考慮されてこなかった周波数チャネル依存性を呈する。これを本RFID装置は補償することができ、それには特にここまでに挙げた各手段又はそれらの任意の組み合わせが適している。RFIDトランスポンダは特に金属基板を備えており(on-metal;オンメタル)、そのため、本発明による適合化を行わなければ周波数チャネルにわたる強度の違いが非常に大きくなる。
【0017】
先に挙げた発信アンテナ、受信アンテナ若しくはトランスポンダアンテナのアンテナ特性に対する適合化、又はRSSIの補正は、個別に、全て一緒に、又は任意の中間的な組み合わせで行うことができる。
【0018】
制御及び評価ユニットは、強度適合化により、使用される周波数チャネルから少なくとも十分に独立した強度をもたらすように構成されていることが好ましい。言い換えれば、強度適合化の目的は全ての周波数チャネルにわたり強度を同一にすることであるが、これを実際に完全に達成する必要はなく、また達成できるものでもない。つまり強度適合化は、それまで弱かった周波数チャネルを強くする及び/又はそれまで強かった周波数チャネルを弱くするのである。なぜ周波数チャネルが様々に弱く又は強く形成されているかという原因は、既に論じたように、発信アンテナ、受信アンテナ並びに割り当てられたアナログ回路に、及び/又は、RFIDトランスポンダとそのトランスポンダアンテナに存在し得る。強度適合化はここでもまた先に挙げた各手段又はそれらの組み合わせを通じて行うことが好ましい。
【0019】
制御及び評価ユニットは、最も弱い周波数チャネルに合わせて強度適合化を行うように構成されていることが好ましい。これは、他の条件が同じだったとすれば最も弱いRFID信号が受信され、又は最も低いRSSIが特定され、最も短い読み取り射程が得られるであろう周波数チャネルである。この最も弱い周波数チャネルにおいて強度が予定の読み取り射程のために十分でなければならず、それより強度が更に低くなれば読み取りの欠落に至る可能性がある。従来技術によれば、最悪のケースとして最も弱い周波数チャネルでも最低限の射程を保証するために、他の周波数チャネルが過大な強度で駆動されるが、それにより射程超過が生じ、それに伴い冒頭で挙げた全ての問題が生じる。これに対して本発明では、残りのチャネルを強度適合化により弱めることでそれらの問題を回避することができる。
【0020】
制御及び評価ユニットは、受信されたRFID信号の強度をRFIDトランスポンダとの通信の際に様々な周波数チャネルで測定するように構成されていることが好ましい。これは強度適合化の学習又は較正乃至は適切な補正値の特定に役立ち、好ましくは、一定の読み取り射程にある既知のRFIDトランスポンダを用いて事前に行われる。この特定は機器毎に実行してもよいし、RFID装置及び/又はRFIDトランスポンダの特定のクラスに対して共通に実行するのみでもよく、しかも使用場所で直接、又はもっと前に例えば仕上げの際に行うことができる。各周波数チャネルにおける強度が互いにどのような比になるかが測定される。好ましくはそのために、稼働時に通信を行うことが原理的にあり得る全ての周波数チャネルにおいて測定が行われる。もっとも、より少数の周波数チャネルから内挿を行うことや、周波数チャネルに対する強度の依存性を若干数のサンプリング点から見積もることも考えられる。測定の代わりに、計算で又はシミュレーションにより得られた予測、特に発信アンテナ、受信アンテナ及び/又はトランスポンダアンテナの特性の予測を根拠として強度適合化を行うことが考えられる。測定には、実際のシステム特性が全て把握され、更に使用場所で測定を実行する場合には用途特有の影響因子さえも把握されるという利点がある。
【0021】
制御及び評価ユニットは、必要な強度適合化を周波数チャネル毎にRFIDトランスポンダの型に対するパラメータ設定によって決定するように構成されていることが好ましい。これによれば、RFIDトランスポンダの型に対し、パラメータ設定により選択される複数の強度適合化法又は補正値が保存されている。保存された強度適合化法は、例えば周波数に対する強度の関数的な関係、又は参照表(LUT, Lookup Table)等、任意の形式にすることができる。
【0022】
制御及び評価ユニットは、必要な強度適合化を周波数チャネル毎にRFIDトランスポンダから強度最適化情報を読み取ることにより決定するように構成されていることが好ましい。従って、該RFIDトランスポンダはそれ自身のアンテナ特性又はそれにより生じる各周波数チャネルでの強度の違いを知っており、この情報をRFID装置からの照会に対して渡す。この情報の形式は前の段落で説明したパラメータ設定の場合と同様に実施形態に応じて様々に変わり、例えばトランスポンダアンテナの特性を最大値と帯域幅のような若干数のパラメータにより簡単に記述したもの、又は周波数チャネル毎に1つの値を持つ完全な特性とすることができる。或いは、ここで既に周波数チャネル間の一様化のための補正値が通知される。
【0023】
RFIDトランスポンダの型に基づくパラメータ設定のため、又はRFIDトランスポンダが必要な強度適合化を通知できるようにするために、何らかの箇所で予め周波数チャネルの相対的な強度を決定する必要がある。そのためには、測定又は較正、モデル化、及びシミュレーションを含めて上記の全ての方法が考えられる。そしてその強度はその後に、例えばRFID装置の仕上げ時に、それどころか既に開発時に取り出すことができる。
【0024】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0025】
その方法では、強度チャネル毎に、様々な周波数チャネルにおいて受信されたRFID信号の強度を算出することにより、必要な強度適合化が事前に決定されることが好ましい。これは、周波数チャネルを切り替えながら他の条件を同一にして行うこと、特に、一定の位置にある同じRFIDトランスポンダとその都度通信することにより行うことが好ましい。既に説明したように、これはRFID装置及び/又はRFIDトランスポンダのクラス又は型を代表して行う他、機器毎に、又は用途を特定して行うことさえ考えられる。
【0026】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】RFID装置と読み取り射程内にあるRFIDトランスポンダの概略的な全体図。
【
図2】RFIDトランスポンダの模範的な周波数特性。
【
図3】異なるRFIDトランスポンダの周波数特性の比較。
【
図4】様々な周波数チャネルにおける強度適合化の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、RFID装置10と、模範例としてその読み取り射程内に配置されたRFIDトランスポンダ12との概略的な全体図を示している。RFID装置10は本実施例では各々別個の発信アンテナ14a及び受信アンテナ14bを備えており、発信器16aが発信アンテナ14aを通じてRFID信号を放射し、受信器16bが受信アンテナ14bを通じて該RFID信号を再び受信する。ハードウェア面での発信チャネルと受信チャネルへの分離は実際にも考えられるが、何よりも、発信側と受信側の作用を分けて説明するための概念的な描写に役立つ。他の実施形態では、共通の発信・受信アンテナが別個の発信アンテナ14a及び受信アンテナ14bの代わりとなる、及び/又は、トランシーバが発信器16a及び受信器16bの代わりとなる。
【0029】
制御ユニット18は、例えばマイクロプロセッサ又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のデジタル部品を備えており、RFID装置10内のプロセスを制御し、RFID情報を符号化してRFID信号にしたり、RFID信号からRFID情報を読み取ったりすることができる。有線又は無線の接続部20がRFID読み取り装置10を上位のシステムに組み入れるために用いられる。
【0030】
詳しく述べると、通信は好ましくは公知のRFIDプロトコル、特にISO18000-6又はEPC Generation-2 UHF RFIDに準拠して行われ、それに必要な手順及び構成要素そのものは公知である。同様に、大まかな機能ブロックを越えるRFID読み取り装置10の詳細な構造も既知であるものとする。なお、この装置は単に純粋に概略的にこの形で示したものであり、代わりにそれ自身公知である他のいずれの配置を前述の要素に採用してもよい。
【0031】
RFID通信が多数の周波数チャネルのうち1つの周波数チャネル上で行われる。例えば、865~868MHzのETSI帯域では15の周波数チャネルが、また902~928MHzのFCC帯域では52の周波数チャネルが設けられている。RFID信号の発信強度及び受信強度、そして読み取り射程は周波数とともに様々に変わるため、各周波数チャネル内で異なる。この周波数挙動には複数の原因が考えられる。それには発信アンテナ14a、受信アンテナ14b及びRFIDトランスポンダ12のトランスポンダアンテナの周波数特性が含まれる。また、具体的な使用環境や、RFID装置10とRFIDトランスポンダ12の配置並びにそれらの材料も周波数挙動に影響を及ぼし得る。
【0032】
図2はFCC帯域用の金属基板を有する(on-metal;オンメタル)RFIDトランスポンダについて、RFID信号の周波数に依存する読み取り射程を模範的に示している。最大の読み取り射程は、このRFIDトランスポンダでは905MHz付近で達成され、読み取り射程は約6.5mである。FCC帯域に最適に一致させるには最大値が915MHz付近にあった方がよい。なぜなら、FCC帯域の上端において読み取り射程が4m程度まで下がっているからである。
【0033】
従来のように発信出力を単に一律に適合化するだけでは曲線全体を上又は下へ伸長又は圧縮することしかできない。そうすると、弱い周波数チャネルにおける読み取りの欠落か、強い周波数チャネルにおける射程超過が生じる。これに対し、本発明では周波数チャネル毎に強度適合化を行うことができ、それにより曲線が平坦化される。これにより全ての周波数チャネルで均一な読み取り射程が達成される。強度、信号強度及び読み取り射程は互いに連関している。従って、強度適合化と言うとき、それは連関した各量の適合化を意味するが、それを全ての箇所でわざわざ厳密に言葉で表現することはしない。
【0034】
強度の周波数依存性は、一部はRFID装置10の特性に依拠し、特に発信アンテナ14a及び受信アンテナ14aのアンテナ特性に依拠する。別の一部に寄与するのはRFIDトランスポンダであり、そのトランスポンダアンテナも同様にアンテナ特性を有しているため、現在の周波数チャネルに応じて増大又は減少した強度が返ってくる。
【0035】
図3はそれについて、
図2と似た図で、複数の異なるRFIDトランスポンダについて、周波数に依存した読み取り射程を示している。破線の曲線は良好に調整されたETSI用トランスポンダに相当する。ここではほとんど何もする必要はなく、曲線は既にそのままでもETSI帯域の内部で十分に平坦になっている。もっとも、このRFIDトランスポンダはFCC帯域では短い射程までしか読み取りができず、この帯域にはあまり適していない。実線の曲線はETSI帯域とFCC帯域の間で全体的な調整を行うための妥協を試みたRFIDトランスポンダに相当するが、それには周波数チャネルにわたる変動が非常に大きくなるという犠牲を払わざるを得ない。特にFCC帯域では読み取り射程が7mから3.5mまで落ちている。点線の曲線はこの作用を少し低減させているが、それでもなおFCC帯域では値が6.5mと4.5mの間にある。
図2からFCC帯域用のトランスポンダを完全なものにすることもできるが、それはFCC帯域とぴったり合っているにも関わらずなおも6.5mから4mへの低下が見られる。
【0036】
適当な強度適合化を見出すために、制御及び評価ユニット18はまず自身のアンテナ14a~bの周波数特性を調整することができる。特定の型のRFID装置10については開発から周波数特性が分かっているから、発信出力を周波数チャネル毎に補償する形で増減させることができる。他に考えられる対策には、受信側での増幅の適合化や、例えばRSSI値の補正による受信側での計算的な補償がある。RFIDトランスポンダ12の周波数特性も同様にデータシートから既知であったり、型毎に測定してから適切に補償したりできる。
【0037】
更に、一定の発信エネルギーで特定のRFIDトランスポンダと様々な周波数チャネルにわたって次々に通信を行って受信強度を測定することにより、RFID装置10とRFIDトランスポンダ12から成るRFIDシステムを精密に測定することが考えられる。これにより
図2や
図3のような曲線を実験的に決定することができる。このような測定は特定のRFIDシステムに対して個別に、しかもその使用場所で行うことさえできるが、代わりに実験室で特定の型のRFID装置10及び/又はRFIDトランスポンダ12について実行することもできる。一実施形態ではそのために学習又は較正の段階が設けられ、該段階においてこれらの測定が実行される。或いは、これが全く独立に事前に行われ、その結果が特定の型のRFIDトランスポンダ12のために保存される。そして、RFID装置10を後でその型に合わせてパラメータ設定すること、即ちトランスポンダ型を設定することができる。更なる代案では、RFIDトランスポンダ12が強度適合化に必要な情報をRFID通信そのものを用いて通知する。
【0038】
このように周波数チャネルの相対的な強度は既知であり、それらを共通の水準で補正することができる。この共通の水準を選択する自由がまだ存在する。それにはまた様々な方法がある。例えば、許可された最大の発信エネルギーを余すところなく利用すれば、従来技術のように他のチャネルに射程超過を強いることなく、最も弱いチャネルにより決まる読み取り射程を最大化するという結果が得られる。好ましくは、以下に模範的且つ具体的な実施例で説明するように、前記共通の水準を、最も弱いチャネルで所定の読み取り射程が得られるように調整する。
【0039】
図4は、ここでは模範例として8本の周波数チャネルにおける強度適合化を概略的に示している。最も弱い周波数チャネルが、目標の読み取り射程を達成できる共通の水準を規定する。そのために、例えば発信出力を、最も弱いチャネルを通じた通信で、読み取り射程にあるRFIDトランスポンダ12との安定した通信が可能になるまで様々に変化させる。
【0040】
他の全ての周波数チャネルでは、矢印で暗に示したように、既知の周波数特性に従って強度が低減されるか、RSSIが補正される。これにより、これらにおいても目標の読み取り射程以上は達せられず、射程超過が回避される。強度、そして読み取り射程がその都度用いられる周波数チャネルに依存しなくなる。なお、
図4のような完全な平坦化は目標とする理想状態に過ぎず、一部のみの平坦化でも既に大きな利点がある。
【0041】
図4は好ましい実施形態を示すに過ぎない。例えば、必要な場合に備えて長い読み取り射程を有する周波数チャネルを利用できるようにするために、図示した平坦化から敢えて逸脱することさえ考えられる。更に、全ての水準を最も弱いチャネルに合わせることは確かに有利ではあるが必須ではない。
【外国語明細書】