(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041012
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】フィルムコーティング顆粒、それを含む製剤、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20230315BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230315BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230315BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230315BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230315BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230315BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131099
(22)【出願日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2021148154
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】尾曲 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 新也
(72)【発明者】
【氏名】木全 崚太
(72)【発明者】
【氏名】吉原 尚輝
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076DD38
4C076DD47
4C076EE07
4C076EE12
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE33
4C076GG16
(57)【要約】
【課題】本発明の一実施形態によると、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒を提供する。または、本発明の一実施形態は、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒を含む製剤を提供する。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒の新規な乾式の製造方法を提供する。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒を含む製剤の新規な乾式の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、溶融成分を含む核粒子と、核粒子の表面に配置されたフィルムと、を含み、フィルムが、多孔性物質と、可塑剤と、ポリマーと、を含む、フィルムコーティング顆粒が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融成分を含む核粒子と、前記核粒子の表面に配置されたフィルムと、を含み、
前記フィルムは、多孔性物質と、可塑剤と、ポリマーと、を含む、フィルムコーティング顆粒。
【請求項2】
前記可塑剤は、前記ポリマーの分子間に配置可能な可塑剤から選択される、請求項1に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項3】
前記可塑剤は、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群から選択される1つ以上であり、前記ポリマーは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、メタクリル酸コポリマーL、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー及びメタクリル酸コポリマーSからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項4】
前記核粒子は、核物質と、前記核物質の表面に配置された溶融成分層と、前記溶融成分層の表面に配置された原薬含有層と、を含む、請求項1に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項5】
前記核粒子は、原薬と、溶融成分と、を含み、
前記原薬と、前記溶融成分とが結着している、請求項1に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項6】
前記核粒子は、ポリマーをさらに含み、
前記原薬と、前記溶融成分と、前記ポリマーとが結着している、請求項5に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項7】
前記フィルムは、医薬的に許容された1つ以上の第1の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のフィルムコーティング顆粒。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載のフィルムコーティング顆粒と、
医薬的に許容された1つ以上の第2の添加剤と、を含む、製剤。
【請求項9】
多孔性物質に可塑剤を吸着させ、
前記可塑剤を吸着させた多孔性物質を、溶融成分を含む核粒子に吸着させて第1の粒子を得て、
前記第1の粒子にポリマーを吸着させて、前記多孔性物質と、前記可塑剤と、前記ポリマーと、を含む、フィルムを前記核粒子上に形成する、フィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項10】
第1の温度で前記第1の粒子に前記ポリマーを吸着させ、
前記第1の温度以上の第2の温度で前記フィルムを前記核粒子上に形成する、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項11】
前記可塑剤は、前記ポリマーの分子間に配置可能な可塑剤から選択される、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項12】
前記可塑剤は、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群から選択される1つ以上であり、前記ポリマーは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、メタクリル酸コポリマーL、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー及びメタクリル酸コポリマーSからなる群から選択される1つ以上である、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項13】
核物質に前記溶融成分を吸着させて溶融成分層を形成し、
前記溶融成分に原薬を吸着させ、
前記溶融成分と前記原薬と、を含む原薬含有層を形成して、前記核粒子を得る、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項14】
前記溶融成分と原薬とを結着させ、
前記溶融成分と前記原薬と、を含む前記核粒子を得る、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項15】
前記溶融成分と、原薬と、ポリマーとを結着させ、
前記溶融成分と、前記原薬と、前記ポリマーと、を含む前記核粒子を得る、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項16】
前記フィルムを前記核粒子上に形成する際に、医薬的に許容された1つ以上の滑沢剤をさらに添加する、請求項9に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法。
【請求項17】
請求項9乃至16の何れか一に記載のフィルムコーティング顆粒の製造方法により得られたフィルムコーティング顆粒と、医薬的に許容された1つ以上の第2の添加剤と、を混合して、打錠する、製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒に関する。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒を含む製剤に関する。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒の製造方法に関する。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒を含む製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製剤においては、胃溶性、腸溶性、徐放性のような薬剤の溶出制御や、薬剤の苦味マスキング等の様々な用途でコーティングが行われる。コーティング手法としては、乾式法と湿式法に大別される。湿式法では、溶媒のスプレーや乾燥に膨大な製造時間が一般的に必要である。また、湿式法では、溶媒が薬剤の安定性に悪影響を与えることもある。このため、例えば、特許文献1には、溶媒を用いない方法として、固形薬剤に、高分子被覆剤に対する接触角が10°以下である液状物質と可塑剤との混合物を連続的に噴霧しながら、粉末状の高分子被覆剤を散布被覆する方法が記載されている。しかし、特許文献1の方法では、一定量の粉末を製造装置内に投入できるような特殊な装備が必要である。また、特許文献1の方法では、造粒物が団粒しやすく、粒子径が大きな粒子や錠剤にしか適用できない。
【0003】
一方、乾式法として、特許文献2には、コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕する方法が記載されている。しかし、乾式法の既存技術の多くは、粉末状態のコーティングであるため、形成されたフィルムに緻密性がなく、目的とする機能を得られない可能性がある。また、従来の技術により緻密なフィルムを形成する場合、コーティングに用いられるポリマーが、最低造膜温度の低いポリマーに限られる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3417772号公報
【特許文献2】特許6067154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一実施形態は、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒を含む製剤を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒の新規な乾式の製造方法を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一実施形態は、フィルムコーティング顆粒を含む製剤の新規な乾式の製造方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、溶融成分を含む核粒子と、核粒子の表面に配置されたフィルムと、を含み、フィルムが、多孔性物質と、可塑剤と、ポリマーと、を含む、フィルムコーティング顆粒が提供される。
【0007】
可塑剤は、ポリマーの分子間に配置可能な可塑剤から選択されてもよい。
【0008】
可塑剤は、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群から選択される1つ以上であり、ポリマーは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、メタクリル酸コポリマーL、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー及びメタクリル酸コポリマーSからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0009】
核粒子は、核物質と、核物質の表面に配置された溶融成分層と、溶融成分層の表面に配置された原薬含有層と、を含んでもよい。
【0010】
核粒子は、原薬と、溶融成分と、を含み、原薬と、溶融成分とが結着していてもよい。
【0011】
核粒子は、ポリマーをさらに含み、原薬と、溶融成分と、ポリマーとが結着していてもよい。
【0012】
フィルムは、医薬的に許容された1つ以上の第1の添加剤をさらに含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によると、上記の何れかのフィルムコーティング顆粒と、医薬的に許容された1つ以上の第2の添加剤と、を含む、製剤が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、多孔性物質に可塑剤を吸着させ、可塑剤を吸着させた多孔性物質を、溶融成分を含む核粒子に吸着させて第1の粒子を得て、第1の粒子にポリマーを吸着させて、多孔性物質と、可塑剤と、ポリマーと、を含む、フィルムを核粒子上に形成する、フィルムコーティング顆粒の製造方法が提供される。
【0015】
第1の温度で第1の粒子にポリマーを吸着させ、第1の温度以上の第2の温度でフィルムを核粒子上に形成してもよい。
【0016】
可塑剤は、ポリマーの分子間に配置可能な可塑剤から選択されてもよい。
【0017】
可塑剤は、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群から選択される1つ以上であり、ポリマーは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、メタクリル酸コポリマーL、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー及びメタクリル酸コポリマーSからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0018】
核物質に溶融成分を吸着させて溶融成分層を形成し、溶融成分に原薬を吸着させ、溶融成分と原薬と、を含む原薬含有層を形成して、核粒子を得てもよい。
【0019】
溶融成分と原薬とを結着させ、溶融成分と原薬と、を含む核粒子を得てもよい。
【0020】
溶融成分と、原薬と、ポリマーとを結着させ、溶融成分と、原薬と、ポリマーと、を含む粒子を得てもよい。
【0021】
フィルムを核粒子上に形成する際に、医薬的に許容された1つ以上の滑沢剤をさらに添加してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によると、上記何れかのフィルムコーティング顆粒の製造方法により得られたフィルムコーティング顆粒と、医薬的に許容された1つ以上の第2の添加剤と、を混合して、打錠する、製剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によると、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒が提供される。または、本発明の一実施形態によると、新規なフィルム構成を有するフィルムコーティング顆粒を含む製剤が提供される。または、本発明の一実施形態によると、フィルムコーティング顆粒の新規な乾式の製造方法が提供される。または、本発明の一実施形態によると、フィルムコーティング顆粒を含む製剤の新規な乾式の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒100を示す模式図(断面端図)である。
【
図2】一実施形態に係る核粒子10を示す模式図(断面端図)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る核粒子10の製造方法を説明するフロー図である。
【
図4】一実施形態に係る核粒子20を示す模式図(断面端図)である。
【
図5】一実施形態に係る核粒子20の製造方法を説明するフロー図である。
【
図6】一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒200を示す模式図(断面端図)である。
【
図7】(A)は、一実施形態に係る可塑剤を吸着した多孔性物質150を準備する工程を説明するフロー図であり、(B)は、一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒100の製造方法を説明するフロー図である。
【
図8】(A)はキュアリング前の実施例1の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(B)はキュアリング後の実施例1の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(C)はキュアリング前の実施例2の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(D)はキュアリング後の実施例2の粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【
図9】(A)はキュアリング前の比較例2の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(B)はキュアリング後の比較例2の粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【
図10】実施例3及び比較例4のフィルムコーティング顆粒におけるデュロキセチン塩酸塩の溶出率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係るフィルムコーティング顆粒、それを含む製剤、及びそれらの製造方法について説明する。なお、本発明のフィルムコーティング顆粒、それを含む製剤、及びそれらの製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
上述したように、乾式法を用いた場合、ポリマーを粉末状態で付着させるため、フィルムの緻密性が低くなる。乾式法において、緻密なフィルムを作る場合には、付着させたポリマーの最低造膜温度以上の温度まで加温することで、ポリマーを軟化させて、造膜する必要があるが、原薬の熱に対する安定性や製造機器の加温限界を踏まえると、使用できるポリマーは、最低造膜温度が低いポリマーに限られる。このため、それ以外のポリマーを用いる場合には、ポリマーの最低造膜温度を下げる必要がある。例えば、湿式法では、ポリマーのガラス転移点を低下させる可塑剤を添加することにより、ポリマーの最低造膜温度を下げる技術が知られている。乾式法においても可塑剤を添加することにより、ポリマーの最低造膜温度が下がることが期待される。一方で、ポリマーと可塑剤が速やかに反応して、ポリマーが急激に軟化するため、粒子同士が固着して団粒が生じる。
【0027】
本発明においては、可塑剤を吸着させた多孔性物質を用いることで、多孔性物質の細孔から徐々に可塑剤が染み出す。このため、ポリマーと可塑剤が速やかに反応することによる、ポリマーの急激な軟化が回避され、上述の問題が解消された。
【0028】
[フィルムコーティング顆粒]
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒100を示す模式図(断面端図)である。フィルムコーティング顆粒100は、溶融成分を含む核粒子10と、核粒子10の表面に配置されたフィルム130と、を含む。フィルム130は、多孔性物質150と、可塑剤と、ポリマーと、を含む。フィルムコーティング顆粒100の製造方法について後述するが、本実施形態に係るフィルムコーティング顆粒100においては、フィルム130を形成する際に、多孔性物質150に吸着した可塑剤が、多孔性物質150から徐々に染み出して、ポリマーと混ざり合うことにより、ポリマーのガラス転移点を低下させる。これにより、フィルム130は緻密な膜になる。
【0029】
本実施形態においては、可塑剤の全てが多孔性物質150から染み出すことは必須ではなく、可塑剤の一部は、多孔性物質150に吸着していてもよい。多孔性物質150は、医薬的に許容された多孔性物質から選択することができる。一実施形態において、「多孔性物質」とは、表面に多数の孔が形成された粒子である。一実施形態において、多孔性物質150は、嵩密度が2ml/g~18ml/g、BET比表面積が110m2/g~700m2/g、細孔容積が0.4cm3/g~2.1cm3/g、又は吸油量が1ml/g~4ml/gの1つ以上を満たす粒子である。一実施形態において、多孔性物質150は、医薬的に許容された多孔質のケイ酸塩であり、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択することができる。一実施形態において、多孔性物質150の表面及び/又は孔の内部に可塑剤が吸着している。一実施形態において、フィルムコーティング顆粒100は、100重量%のフィルムコーティング顆粒に対して、1重量%~30重量%の多孔性物質150を含んでもよい。
【0030】
一実施形態において、可塑剤は、ポリマーの分子間に配置可能な可塑剤から選択することができる。可塑剤は、例えば、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、フィルムコーティング顆粒100は、100重量%のフィルムコーティング顆粒に対して、1重量%~30重量%の可塑剤を含んでもよい。
【0031】
一実施形態において、ポリマーは、フィルムを形成可能な添加剤から選択され、例えば、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、メタクリル酸コポリマーL、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー及びメタクリル酸コポリマーSからなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、フィルムコーティング顆粒100は、100重量%のフィルムコーティング顆粒に対して、1重量%~30重量%のポリマーを含んでもよい。
【0032】
一実施形態において、フィルムは、医薬的に許容された1つ以上の添加剤(第1の添加剤)をさらに含んでもよい。なお、核粒子10及び多孔性物質150の構成は上述した構成と同様の構成であってもよく、詳細な説明は省略される。また、フィルム130に含まれるポリマーも上述したポリマーから選択することができる。フィルム130に含有可能な添加剤は、例えば、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マンニトール、エリスリトール、トレハロース、乳糖水和物、クロスポビドン、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、タルク、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ジブチルヒドロキシトルエン、アスパルテーム及びスクラロースからなる群から選択される1つ以上の添加剤である。
【0033】
[核粒子]
本実施形態において、核粒子10は、少なくともその表面に溶融成分を含む。また、核粒子10は、原薬を含む。
図2(A)は、一実施形態に係る核粒子10を示す模式図(断面端図)である。一実施形態において、核粒子10は、核物質11と、核物質11の表面に配置された溶融成分層13と、溶融成分層13の表面に配置された原薬含有層15と、を含む。
【0034】
核物質11は、溶融成分層13及び原薬含有層15を配置するための担体であり、核粒子10を製造する際に、溶融成分層13及び原薬含有層15を配置するための核となる物質である。核物質11は、例えば、アンバーライトIRP-64、イオン交換樹脂、カオリン、カルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、脱脂綿、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、デキストリン、二酸化ケイ素、複合ケイ酸アルミニウムカリウム粒、ベントナイト、ポリエチレン繊維、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、薬用炭、ケイ酸カルシウム、酢酸セルロース、無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、マンニトール、白糖、デンプン、乳糖水和物、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー等からなる群から選択することができる。なお、後述するように、核物質11は、アンバーライトIRP-64、イオン交換樹脂、カオリン、カルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、脱脂綿、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、デキストリン、二酸化ケイ素、複合ケイ酸アルミニウムカリウム粒、ベントナイト、ポリエチレン繊維、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及び薬用炭等の吸着剤であることが好ましい。
【0035】
核物質11は、溶融成分層13及び原薬含有層15を均一に配置するために球形であることが好ましい。
【0036】
溶融成分層13は、核物質11と原薬含有層15との間に配置される層である。溶融成分層13は、原薬含有層15を配置するための下地層である。核粒子10において、溶融成分層13を核物質11の表面に配置することにより、溶融成分層13に、より多くの原薬を付着させることができ、核粒子10における原薬の含有量を効果的に高めることができる。
【0037】
「溶融成分」とは、加熱により溶融可能な成分である。溶融成分層13を構成する溶融成分は、油性の添加剤から選択される。溶融積層法により溶融成分層13を形成するため、溶融成分は、常温で固体の添加剤から選択される。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、溶融成分は100℃以下の融点を有する添加剤から選択されることが好ましく、原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲に融点を有する添加剤から選択されることが好ましい。このような特性を有する添加剤として、例えば、モノステアリン酸グリセリン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、ラウロマクロゴール及びステアリン酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、溶融成分は、原薬との接触により原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない添加剤から選択されることが好ましい。
【0038】
溶融成分層13は、原薬含有層15を配置可能な量で核物質11の表面に配置されていればよく、核物質11の表面の少なくとも一部に配置されていればよい。溶融成分層13が核物質11の表面の90%以上を覆っていることが好ましく、核物質11の表面の全面を覆っていることが好ましい。溶融成分層13の厚さは特には限定されないが、1つの核粒子10当たりの原薬含有量を高める観点から、溶融成分層13の厚さは可能な限り薄い方が好ましい。一実施形態において、核物質11が吸着剤である場合、溶融成分層13を構成する溶融成分は、核物質11がその表面に有する細孔にも配置されることが好ましい。一実施形態において、核物質11が吸着剤である場合、核物質11と溶融成分層13との界面においては、溶融成分層13を構成する溶融成分が核物質11の表面から入り込んだ構造を有してもよい。この場合、核物質11と溶融成分層13とは明確な界面を有さなくてもよい。溶融成分が核物質11の表面のみならず、核物質11の表面に接続する細孔にも配置されることにより、溶融成分層13に核物質11へのアンカー効果が付与され、核物質11への溶融成分層13の密着性が向上する。
【0039】
原薬含有層15は、少なくとも原薬を含む層であり、溶融成分層13の表面に配置される。
【0040】
原薬含有層15は、溶融成分又はポリマーをさらに含んでもよい。原薬含有層15に含まれる溶融成分として、溶融成分層13に含まれる溶融成分の融点よりも低い融点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層15を形成する際に、溶融成分層13の表面構造に大きな影響を与えることなく、又は溶融成分層13の表面構造を変更することなく、溶融成分層13の表面に原薬含有層15を配置することができる。一方、原薬含有層15に含まれる溶融成分として、溶融成分層13に含まれる溶融成分の融点よりも高い融点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層15を形成する際に、溶融成分層13の表面がわずかに溶けて、溶融成分層13と原薬含有層15との界面が融合して、溶融成分層13に対する原薬含有層15の付着性を向上させることができる。
【0041】
原薬含有層15に含まれる溶融成分として用いる添加剤としては、例えば、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、カルナウバロウ、硬化油、ラウロマクロゴール、パルミチン酸及びセチルアルコール等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。原薬含有層15に含まれる溶融成分は、原薬との接触により原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない添加剤から選択されることが好ましい。なお、核物質11に付着させる観点から、溶融成分の粒径は、核物質11の粒径よりも小さい必要がある。また、原薬含有層15に含まれる溶融成分は、溶融成分層13に含まれる溶融成分と同じ添加剤であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
一実施形態において、核粒子10は、溶融成分層13に含まれる溶融成分に対して相溶性を有するポリマーを原薬含有層15に含んでもよい。溶融成分に対してポリマーが「相溶性を有する」とは、溶融成分とポリマーとが分離しない状態を示す。または、ポリマーが溶融成分に分散した状態、若しくは溶融成分がポリマーに分散した状態を示す。一実施形態において、溶融成分とポリマーとが分離しない状態は、溶融成分とポリマーと混合して、溶融成分を溶融させた際の混合物(液体又は流動性を有する半固体)の粘度の上昇により確認することができる。溶融成分層13に含まれる溶融成分に対して相溶性を有するポリマーを用いることで、溶融成分層13表面の粘度がさらに向上し、より安定的に原薬含有層15を付着させることができる。溶融成分と相溶性を有するポリマーの組合せとしては、溶融成分がステアリン酸又はラウロマクロゴールである場合に、ポリマーとしてアミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル又はポリビニルピロリドンを好ましく組合せることができる。より好ましくは、溶融成分がステアリン酸である場合に、ポリマーとしてアミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー若しくはポリビニルピロリドンを組合せることができる。または、溶融成分がラウロマクロゴールである場合に、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー又はヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを好ましく組合せることができる。
【0043】
原薬含有層15にポリマーを含む場合、核粒子10において、溶融成分の含有量はポリマーの含有量以上であることが好ましい。例えば、核粒子10において、溶融成分とポリマーの配合比率は20:1~1:1であることが好ましく、4:1~1:1であることがより好ましい。
【0044】
原薬含有層15は、主成分として、原薬を含む。原薬含有層15に含まれる原薬は、溶融積層法により原薬含有層15を形成可能な原薬であれば、特には限定されない。換言すると、原薬含有層15に含まれる原薬は、溶融成分との接触により変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない原薬から選択される。原薬含有層15には、原薬含有層15に含まれる物質の重量の合計に対して、50重量%以上の原薬が含まれることが好ましい。換言すれば、原薬含有層15に溶融成分又はポリマーを含む場合、原薬含有層15においては、溶融成分層13の表面に原薬含有層15を形成可能な範囲で溶融成分若しくはポリマーを少なく含有させることが好ましい。これにより、核粒子10における原薬の含有量を効果的に高めることができる。
【0045】
[核粒子10の製造方法]
図3は、本発明の一実施形態に係る核粒子10の製造方法を説明するフロー図である。核物質11と溶融成分12を混合し、核物質11の表面に溶融成分12を配置する(S101)。また、溶融積層法により、溶融成分12を溶融させて、核物質11の表面に溶融成分層13を形成する(S103)。このとき、核物質11と溶融成分12を溶融成分12の融点以上の温度に加熱する。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。また、核物質11に吸着剤を用いる場合、溶融成分12が核物質11の表面のみならず、核物質11の表面に接続する細孔にも配置されることにより、溶融成分層13に核物質11へのアンカー効果を付与して、核物質11への溶融成分層13の密着性を向上させることが好ましい。
【0046】
溶融成分層13を配置した核物質11と、原薬16とを混合し、溶融成分層13の表面に原薬16を配置する(S105)。また、溶融積層法により、溶融成分層13の表面を溶融させて、溶融成分層13の表面に原薬含有層15を形成する(S107)。
【0047】
一実施形態において、原薬含有層15に原薬16と共に溶融成分をさらに含む場合、原薬16と共に、原薬含有層15に含まれる溶融成分を、溶融成分層13を配置した核物質11と混合する。原薬含有層15に含まれる溶融成分として、溶融成分層13に含まれる溶融成分の融点よりも低い融点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層15を形成する際に、原薬含有層15に含まれる溶融成分の融点よりも高く、且つ溶融成分層13に含まれる溶融成分の融点よりも低い温度に加熱することにより、溶融成分層13の表面構造に大きな影響を与えることなく、又は溶融成分層13の表面構造を変更することなく、溶融成分層13の表面に原薬含有層15を形成することができる。一方、原薬含有層15に含まれる溶融成分として、溶融成分層13に含まれる溶融成分の融点よりも高い融点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層15を形成する際に、原薬含有層15に含まれる溶融成分の融点よりも高い温度に加熱することにより、溶融成分層13の表面がわずかに溶けて、溶融成分層13と原薬含有層15との界面が融合して、溶融成分層13に対する原薬含有層15の付着性を向上させることができる。なお、原薬16が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲で溶融積層することが好ましい。
【0048】
一実施形態において、原薬含有層15に原薬16と共にポリマーをさらに含む場合、原薬16と共に、ポリマーを、溶融成分層13を配置した核物質11と混合する。溶融成分層13に含まれる溶融成分に対して相溶性を有するポリマーを使用することができる。本実施形態においては、溶融成分層13に含まれる溶融成分に対して相溶性を有するポリマーを用いることで、溶融成分層13表面の粘度がさらに向上し、より安定的に原薬含有層15を付着させることができる。
【0049】
[核粒子の変形例]
上述した核粒子は、核物質の表面に溶融成分層及び原薬含有層を積層した構造であるが、本実施形態に係る核粒子は、これらに限定されない。核粒子の変形例として、核物質を含まない核粒子について説明する。
図4は、一実施形態に係る核粒子20を示す模式図(断面端図)である。核粒子20は、原薬16と、溶融成分12と、必要によりポリマー27と、を含む。核粒子20は、原薬16と、溶融成分12とが、溶融造粒により結着して構成された粒子である。ポリマー27を含む場合は、核粒子20は、原薬16と、溶融成分12と、ポリマー27とが、溶融造粒により結着して構成された粒子である。
【0050】
ポリマー27を含む場合は、核粒子20においては、溶融成分12と、ポリマー27とを結着させるため、ポリマー27は、溶融成分12に対して相溶性を有し、溶融造粒に適用可能な添加剤から選択される。本実施形態においては、溶融成分12は、核粒子10について説明した溶融成分から選択することができる。また、ポリマー27は、核粒子10について説明したポリマーから選択して、溶融成分12と組合せることができる。本実施形態において、原薬16は、溶融造粒により溶融成分12及び/又はポリマー27と結着可能な原薬であれば、特には限定されない。換言すると、原薬16は、溶融成分12及び/又はポリマー27との接触により変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない原薬から選択される。このため、これらの添加剤の詳細な説明は省略する。
【0051】
核粒子20において、原薬16と、溶融成分12とは、核粒子を形成していればよく、原薬16と、溶融成分12とが溶融して互いに混合した構造であってもよく、原薬16と、溶融成分12との一部が溶融して互いに結着した構造であってもよい。一実施形態において、原薬16の粒子と、溶融成分12の粒子との一部が溶融して互いに結着した構造であることが好ましい。
【0052】
ポリマー27を含む場合は、核粒子20において、原薬16と、溶融成分12と、ポリマー27とは、核粒子を形成していればよく、原薬16と、溶融成分12と、ポリマー27とが溶融して互いに混合した構造であってもよく、原薬16と、溶融成分12と、ポリマー27との一部が溶融して互いに結着した構造であってもよい。一実施形態において、原薬16の粒子と、溶融成分12の粒子と、ポリマー27の粒子との一部が溶融して互いに結着した構造であることが好ましい。
【0053】
核粒子20は、主成分として、原薬16を含むことが好ましい。核粒子20には、原薬16及び溶融成分12の重量の合計に対して、50重量%以上の原薬16が含まれることが好ましい。換言すれば、核粒子20は形成可能な範囲で溶融成分12を少なく含有することが好ましい。これにより、核粒子20における原薬16の含有量を効果的に高めることができる。また、核粒子20においては、造粒物の粒子径の均一性が高い。
【0054】
ポリマー27を含む場合は、核粒子20には、原薬16、溶融成分12及びポリマー27の重量の合計に対して、50重量%以上の原薬16が含まれることが好ましい。換言すれば、核粒子20は形成可能な範囲で溶融成分12及びポリマー27を少なく含有することが好ましい。これにより、核粒子20における原薬16の含有量を効果的に高めることができる。また、核粒子20においては、造粒物の粒子径の均一性が高い。
【0055】
[核粒子20の製造方法]
図5は、一実施形態に係る核粒子20の製造方法を説明するフロー図である。原薬16及び溶融成分12を混合し、溶融造粒法により、原薬16及び溶融成分12を溶融させて造粒し、核粒子20を形成する(S201)。このとき、これらの製品温度を、溶融成分12の融点以上の温度に加熱する。溶融造粒法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。なお、原薬16が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲で溶融造粒することが好ましい。
【0056】
核粒子20がポリマー27を含む場合は、原薬16、溶融成分12及びポリマー27を混合し、溶融造粒法により、原薬16、溶融成分12及びポリマー27を溶融させて造粒し、核粒子20を形成する(S201)。このとき、これらの製品温度を、溶融成分12の融点以上、且つポリマー27のガラス転移点以上の温度に加熱する。溶融造粒法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。なお、原薬16が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲で溶融造粒することが好ましい。
【0057】
このような温度制御下において核粒子20を製造することにより、原薬16と、溶融成分12とが、結着して、核粒子20を製造することができる。または、原薬16と、溶融成分12と、ポリマー27とが、結着して、核粒子20を製造することができる。このように、核粒子20は、溶融造粒法により簡便に製造することができる。
【0058】
[フィルムコーティング顆粒の変形例]
上述した核粒子10又は核粒子20は溶融成分を含むため、本実施形態に係るフィルムコーティング顆粒の核粒子として用いることができる。したがって、核粒子10に代えて、核粒子20を用いて、フィルムコーティング顆粒を得ることができる。
【0059】
図6は、一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒200を示す模式図(断面端図)である。フィルムコーティング顆粒200は、溶融成分を含む核粒子20と、核粒子20の表面に配置された可塑剤を吸着した多孔性物質150と、フィルム130と、を含む。なお、フィルム130の構成は、上述した構成と同様の構成であるため、詳細な説明は省略される。
【0060】
[フィルムコーティング顆粒の製造方法]
本実施形態に係るフィルムコーティング顆粒の製造方法について説明する。
図7(A)は、一実施形態に係る可塑剤を吸着した多孔性物質150を準備する工程を説明するフロー図である。多孔性物質151に可塑剤153を吸着させる。例えば、多孔性物質151と可塑剤153を乳鉢で混合し、多孔性物質151に可塑剤153を吸着させる(S301)。このとき、多孔性物質151の表面だけではなく、多孔性物質151の表面に開口した孔の内部にも、可塑剤153が吸着することが好ましい。
【0061】
上述した核粒子を準備して、可塑剤を吸着した多孔性物質150を吸着させる。
図7(B)は、一実施形態に係るフィルムコーティング顆粒100の製造方法を説明するフロー図である。
図7(B)においては、核粒子10を用いた例を示すが、本実施形態はこれに限定されず、上述した核粒子20を用いることができる。可塑剤を吸着した多孔性物質150と、溶融成分を含む核粒子10とを混合し、溶融造粒法により、溶融成分12を溶融させて、核粒子10の表面に多孔性物質150が吸着した粒子(第1の粒子)を得る(S311)。このとき、核粒子10と多孔性物質150を、溶融成分12の融点以上の温度(第1の温度)に加熱する。溶融造粒法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。
【0062】
次に、多孔性物質150が吸着した核粒子10と、ポリマー131とを混合し、溶融造粒法により、溶融成分12を溶融させて、核粒子10の表面にポリマー131が吸着した粒子(第2の粒子)を得る(S313)。このとき、核粒子10とポリマー131を、溶融成分12の融点以上の温度(第2の温度)に加熱する。溶融造粒法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。なお、核粒子10に多孔性物質150を吸着させる時の第1の温度と、核粒子10にポリマー131を吸着させる時の第2の温度は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、一実施形態において、医薬的に許容された1つ以上の添加剤を、多孔性物質150が吸着した核粒子10と、ポリマー131と混合し、溶融造粒法により、溶融成分12を溶融させて、核粒子10の表面にポリマー131と共に医薬的に許容された1つ以上の添加剤が吸着した粒子(第2の粒子)を得ることもできる。
【0063】
キュアリング工程により、核粒子10に吸着したポリマー131をフィルム化する(S315)。これにより、多孔性物質151と、可塑剤153と、ポリマー131と、を含む、フィルム130を核粒子10上に形成することができる。このとき、ポリマー131が吸着した核粒子10を、第2の温度以上の温度(第3の温度)に加熱する。本実施形態においては、キュアリングする際の遠心力により、多孔性物質151に吸着した可塑剤153が徐々に染み出すことにより、ポリマー131のガラス転移点を下げることができる。これにより、フィルム130の最低造膜温度が下がり、緻密なフィルムを形成することができる。
【0064】
一実施形態において、キュアリング工程において、滑沢剤を添加してもよい。滑沢剤を添加することにより、キュアリング時での団粒抑制効果を高めることができる。
【0065】
ポリマーに可塑剤を直接添加すると、最低造膜温度を下げることは可能である。しかし、溶融造粒時に、ポリマーが急激に軟化するため、粒子同士が固着して団粒が生じる。一方、本実施形態においては、キュアリング時に、多孔性物質151に吸着した可塑剤153が徐々に染み出すため、最低造膜温度を下げながら、ポリマーが急激に軟化することによる団粒を抑制することができる。また、本実施形態の製造方法では、従来に比して短時間でフィルム130を形成することができる。
【0066】
一実施形態において、核粒子10に吸着したポリマー131をフィルム化する際に、滑沢剤をさらに添加してもよい。滑沢剤は、公知の添加剤から選択することができ、例えば、軽質無水ケイ酸、タルク、カルナウバロウ、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を用いることができる。滑沢剤を添加することにより、溶融造粒時の団粒抑制効果を高めることができる。
【0067】
なお、キュアリング工程には、上述した乾式法だけではなく、流動層造粒機等の装置を用いて、顆粒を流動させている状態で、水等の溶媒を噴霧しながら加熱する湿式法を用いてもよい。
【0068】
[製剤]
フィルムコーティング顆粒100又は200を用いた製剤を製造することができる。例えば、フィルムコーティング顆粒100又は200と、医薬的に許容された公知の1つ以上の添加剤とを混合して医薬組成物としてもよい。また、医薬組成物を打錠して錠剤としてもよい。また、崩壊剤を添加した医薬組成物を打錠して口腔内崩壊錠としてもよい。また、医薬組成物をカプセルに封入してカプセル剤としてもよい。
【実施例0069】
[実施例1]
核物質として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社、Sylopure(登録商標)P100) 140g、溶融成分としてステアリン酸(日油株式会社、植物) 84g、ステアリン酸(BASFジャパン、Kolliwax(登録商標)S Fine) 112gを高速撹拌造粒機(株式会社アーステクニカ、ハイスピードミキサー LFS-GS-2J)に投入し、製品温度を80℃として、13分間吸着した。
【0070】
得られた溶融成分を含む核物質 76.3gと、原薬としてシタグリプチンリン酸塩 198.3g、及びポリマーとして、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニック社、オイドラギット(登録商標)EPO) 25.4gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を65℃として、30分間造粒して、核粒子を得た。
【0071】
多孔性物質として、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 12g、可塑剤として、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社、シトロフレックス(登録商標)2) 30gを乳鉢で混合して、軽質無水ケイ酸にクエン酸トリエチルを吸着させた。
【0072】
核粒子 300gと、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸 42gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸を核粒子の表面に吸着させた。
【0073】
得られた粒子 342gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF) 100gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。
【0074】
滑沢剤として、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 44.2gをさらに投入して、給気温度を90℃として、1時間キュアリングを行い、実施例1のフィルムコーティング顆粒を得た。
【0075】
図8(A)はキュアリング前の実施例1の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、
図8(B)はキュアリング後の実施例1の粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図8(A)においては、粒子の表面に吸着したヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの粒子が観察されたが、
図8(B)においては、キュアリングによりフィルムが形成されたことが確認された。本実施例においては、団粒が生じることなく、フィルムが形成可能であることが示された。
【0076】
[実施例2]
核粒子の原薬をラコサミドへ変更して、フィルムコーティング顆粒を製造した。原薬としてラコサミド 21.6g、核物質としてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(エボニック社、オイドラギット(登録商標)RSPO) 4.0g、溶融成分としてモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 2.6gを恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Caleva UK、Mixer Torque Rheometer;MTR)に投入し、製品温度を72℃として、30分間造粒して、溶融成分を含む核粒子を得た。
【0077】
核粒子28.2gと、実施例1で調製したクエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸 4.0gを恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Caleva UK、Mixer Torque Rheometer;MTR)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸を核粒子の表面に吸着させた。
【0078】
得られた粒子 32.2gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF)9.4gを恒温水循環ジャケット付き横型二軸混合装置(Caleva UK、Mixer Torque Rheometer;MTR)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。その後、給水温度を90℃として、1時間キュアリングを行い、実施例2のフィルムコーティング顆粒を得た。
【0079】
図8(C)はキュアリング前の実施例2の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、
図8(D)はキュアリング後の実施例2の粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図8(C)においては、粒子の表面に吸着したヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの粒子が観察されたが、
図8(D)においては、キュアリングによりフィルムが形成されたことが確認された。本実施例においては、団粒が生じることなく、フィルムが形成可能であることが示された。
【0080】
[比較例1]
比較例1として、核粒子が溶融成分を含むことの効果を検討した。核粒子として、結晶セルロース(旭化成株式会社、セルフィア(登録商標)CP102) 300gを用い、実施例1で調製したクエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸 42gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸を核粒子の表面に吸着させた。
【0081】
得られた粒子342gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF)100gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃~65℃として、10分間造粒した。
【0082】
比較例1においては、フィルムコーティング工程において、55℃の低温条件下ではヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルが粒子の表面に吸着しなかった。また、65℃の高温条件下では団粒が生じた。このため、比較例1においては、フィルムコーティング顆粒を得ることはできなかった。比較例1の結果より、可塑剤を吸着した多孔性物質とポリマーが核粒子の表面に吸着するためには、核粒子が溶融成分を含むことが必要であることが示された。
【0083】
[比較例2]
比較例2として、可塑剤を吸着した多孔性物質を含むことの効果を検討した。実施例1で調製した核粒子 300gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF)100gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。その後、給気温度を90℃として、1時間キュアリングを行った。
【0084】
図9(A)はキュアリング前の比較例2の粒子の走査型電子顕微鏡像であり、
図9(B)はキュアリング後の比較例2の粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図9(A)と
図9(B)を比較した結果、核粒子の表面に吸着したポリマーがフィルム化していないことが確認された。比較例2の結果より、ポリマーがフィルム化するためには、可塑剤を吸着した多孔性物質を含むことが必要であることが示された。
【0085】
[比較例3]
比較例3として、可塑剤を吸着させるための多孔性物質の効果を検討した。多孔性物質の代わりに、無孔質の軽質無水ケイ酸(日本アエロジル株式会社、アエロジル(登録商標)200) 12g、可塑剤として、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社、シトロフレックス(登録商標)2)30gを乳鉢で混合して、軽質無水ケイ酸にクエン酸トリエチルを吸着させた。
【0086】
実施例1で調製した核粒子 300gと、比較例3のクエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸 42gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸を核粒子の表面に吸着させた。
【0087】
得られた粒子 342gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF) 100gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を55℃として、10分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。その後、給気温度を90℃として、1時間キュアリングを行った。
【0088】
比較例3においては、フィルムコーティング工程において、団粒が生じ、フィルムコーティング顆粒を得ることはできなかった。比較例3の結果より、無孔質の軽質無水ケイ酸では、可塑剤が吸着されないため、ポリマーを投入した時点で一度にポリマーと可塑剤が反応し、急激にポリマーが軟化したため団粒が生じたと考えられた。比較例3の結果より、可塑剤を吸着させるためには、多孔性物質が必要であることが示された。
【0089】
[苦味抑制効果の検討]
実施例1、比較例2の顆粒及び実施例1の核粒子について、シタグリプチンリン酸塩の苦味を抑制可能か、官能検査による検討を行った。実施例1及び比較例2の顆粒 50mgを被験者5名が口腔内で20秒間保持し、苦味の有無を確認した。実施例1のフィルムコーティング顆粒では、4名の被験者が苦味を感じず、1名が僅かに苦味を感じた。一方、ポリマーがフィルム化しなかった比較例2の顆粒及び実施例1の核粒子では、5名の被験者が強い苦味を感じた。この結果から、実施例1のフィルムコーティング顆粒においては、苦味を抑制可能な緻密なフィルムが形成されていることが確認された。
【0090】
[実施例3]
核物質として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社) 430.5g、溶融成分としてステアリン酸(花王株式会社、ステアリン酸70) 336.0g、を高速撹拌造粒機(株式会社アーステクニカ、ハイスピードミキサー FS-GS-5J)に投入し、製品温度を75℃として、17分間吸着した。
【0091】
得られた溶融成分を含む核物質(吸着粒) 186.15gと、原薬としてデュロキセチン塩酸塩 286.45g、及びポリマーとして、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(エボニック社、オイドラギット(登録商標)EPO) 47.60gを高速撹拌造粒機(株式会社アーステクニカ、ハイスピードミキサー FS-GS-5J)に投入し、製品温度を65℃として、28分間造粒して、核粒子を得た。
【0092】
得られた核粒子520.2gと、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115)15.3gを高速撹拌造粒機(株式会社アーステクニカ、ハイスピードミキサー FS-GS-5J)に投入し、製品温度を65℃として、1分間混合して、付着防止処理を行った。
【0093】
多孔性物質として、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 24g、可塑剤として、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社、シトロフレックス(登録商標)2) 60gを乳鉢で混合して、軽質無水ケイ酸にクエン酸トリエチルを吸着させた。
【0094】
核粒子 126gと、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸 25.2gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を65.3℃として、5分間造粒して、クエン酸トリエチルを吸着した軽質無水ケイ酸を核粒子の表面に吸着させた。
【0095】
得られた粒子 151.2gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF) 120g、滑沢剤として、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 2gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を65℃として、15分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。
【0096】
給気温度を90℃として、90分キュアリングを行い、実施例3のフィルムコーティング顆粒を得た。
【0097】
[比較例4]
実施例3の核粒子 126gと、ポリマーとして、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業株式会社、Shin-Etsu AQOAT(登録商標)AS-LF) 120g、滑沢剤として、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 2gを流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)に投入し、製品温度を65℃として、15分間造粒して、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを核粒子の表面に吸着させて、キュアリング工程前の粒子を得た。
【0098】
給気温度を90℃として、90分キュアリングを行い、比較例4のフィルムコーティング顆粒を得た。
【0099】
[フィルムの評価]
第十七改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法)に準じて、実施例3及び比較例4のフィルムコーティング顆粒について、デュロキセチン塩酸塩の溶出性を評価した。実施例3のフィルムコーティング顆粒 136.6g、比較例4のフィルムコーティング顆粒 124gをそれぞれヒプロメロースカプセルに充填し試験用製剤とした。試験液として、溶出試験第一液(JP1)900mlを用いた。パドルの回転速度は、50rpmとした。試験開始後60分及び120分の時点でのデュロキセチン塩酸塩の溶出率を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。デュロキセチン塩酸塩の溶出率の測定結果を
図10に示す。可塑剤を吸着した多孔性物質を含む実施例3のフィルムコーティング顆粒は、腸溶性ポリマーであるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルのコーティングによって、溶出試験開始120分後においてもデュロキセチン塩酸塩の溶出が抑えられていた。一方、核粒子に直接腸溶性ポリマーをコーティングした比較例4のフィルムコーティング顆粒は実施例3と比較してデュロキセチン塩酸塩が顕著に溶出した。この結果から、可塑剤を吸着した多孔性物質を含む実施例3では、ポリマーが緻密な膜を形成しており、デュロキセチン塩酸塩の溶出を抑制することが明らかとなった。
10 核粒子、11 核物質、12 溶融成分、13 溶融成分層、15 原薬含有層、16 原薬、20 核粒子、27 ポリマー、100 フィルムコーティング顆粒、130 フィルム、131 ポリマー、150 可塑剤を吸着した多孔性物質、151 多孔性物質、153 可塑剤、200 フィルムコーティング顆粒