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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041054
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】細胞培養装置における流量最適化
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230315BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022144281
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】21195867.3
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22175853.5
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522360747
【氏名又は名称】フィンアドヴァンス オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ニューエン ハオン トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】シン プラテーク
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA08
4B029AA12
4B029BB02
4B029BB06
4B029BB11
4B029BB12
4B029CC01
4B029CC02
4B029GB01
4B029HA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】各培養培地リザーバにおいて、流出口が既存の液体ハンドリングシステムと適合する細胞培養装置および細胞培養方法を提供する。
【解決手段】細胞培養装置は、互いに隣接して配置された複数の細胞培養モジュール106を含む。各細胞培養モジュールは、2つ以上のフローチャネル210、212によって接続された2つ以上の培養培地リザーバ202、204を含む。このフローチャネルは、上側チャンバ206の下に配置された下側チャンバ208を通過する。これらの上側チャンバ及び下側チャンバは多孔質膜214によって隔てられる。上記少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は、液体ハンドリングシステム602と適合するように構成された保持部材240を含む。下側チャンバは、培養培地リザーバのそれぞれの下部より高く配置される下部を有する。この細胞培養装置はさらに、下側チャンバの下部の下に空洞224を含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養装置であって、
互いに隣接して配置された複数の細胞培養モジュールであって、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールは、
・それぞれ上部及び下部を有する少なくとも2つの培養培地リザーバであって、前記上部は培養培地のための入口を有し、前記下部は前記培養培地のための出口を有する少なくとも2つの培養培地リザーバ、
・第1のチャンバであって、前記第1のチャンバ及び前記少なくとも2つの培養培地リザーバが第1の方向に互いに整列するように、前記少なくとも2つの培養培地リザーバの間に配置された第1のチャンバ、
・前記第1のチャンバの下に配置され、第2の方向に前記第1のチャンバと整列している第2のチャンバであって、前記第2の方向は前記第1の方向に垂直であり、前記第2のチャンバは、少なくとも2つの横穴を有する下部を有し、前記第2のチャンバの前記下部は、前記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれの前記下部より高く配置される第2のチャンバ、
・中に形成された貫通細孔を有する膜であって、前記膜は、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが前記貫通細孔を介して互いに流体連通するように、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に配置される膜、並びに
・前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つの前記下部の前記出口を前記第2のチャンバの前記下部の前記少なくとも2つの横穴のうちの1つにそれぞれ接続する少なくとも2つのフローチャネル
を含む複数の細胞培養モジュールと、
流動駆動ユニットであって、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールにおいて、前記少なくとも2つのフローチャネルを介した前記少なくとも2つの培養培地リザーバと前記第2のチャンバとの間で前記培養培地を流すように構成された流動駆動ユニットと
を含み、前記少なくとも2つの培養培地リザーバの前記下部は、液体ハンドリングシステムと適合するように構成された保持部材を含む装置。
【請求項2】
前記保持部材が円錐台形状を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記培養培地リザーバの下部が前記保持部材として連続し、前記保持部材の上縁部が、前記培養培地のための前記出口を含み、前記培養培地のための前記出口が、前記液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成されている請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記保持部材が、前記培養培地リザーバの下部に下縁部を有し、前記保持部材の前記下縁部がより大きい直径を有し、前記保持部材の前記上縁部がより小さい直径を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記保持部材の側面が、対応する培養培地リザーバの下部から始まって、前記第1の方向に対して第2の傾斜角で延在する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記培養培地のための前記出口が、前記液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成され、前記培養培地が、前記出口を通って前記フローチャネルに向けられるように構成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの培養培地リザーバが、前記保持部材と前記培養培地リザーバの下部との間にオーバーフロー空洞を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記培養培地が、前記出口から前記フローチャネルに注入されるように構成され、前記培養培地のための前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の注入速度が、最大生細胞流量より小さく、かつ細胞沈降速度より大きく、
前記注入速度は、前記フローチャネルに注入される細胞懸濁液の速度であり、
前記最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度であり、
前記細胞沈降速度は、前記培養培地中の細胞が前記チャンバ、リザーバ、フローチャネル、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
最適注入時間が、前記培養培地の量を前記注入速度で割ることにより計算されるように構成されている請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも1つのフローチャネル、少なくとも1つの培養培地リザーバ、第1の及び/又は 第2のチャンバのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、内側から細胞忌避層でコーティングされている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記細胞忌避層が、以下の材料、テフロン(登録商標)、Pluronic、PEG、又は類似の鎖状ポリマーのうちの少なくとも1つから作製されている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールが、少なくとも前記第2のチャンバの前記下部の下に空洞を含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれが、少なくとも部分的に、前記第1の方向に対してある傾斜角で延在し、前記第2のチャンバの前記下部及び前記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれの少なくとも一部が前記空洞を形成する請求項12に記載の装置。
【請求項14】
細胞培養インキュベータであって、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の細胞培養装置と、
前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を供給するように構成された液体ハンドリングシステムと
を含む細胞培養インキュベータ。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法であって、
(a)前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を提供する工程と、
(b)前記流動駆動ユニットによって、前記培養培地を、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つから前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの残りに所定の時間にわたって流す工程であって、前記所定の時間は前記培養培地に基づいて選択される工程と
を含む方法。
【請求項16】
工程(a)が、注入速度を最適化することにより、前記培養培地の前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の供給を制御することを含み、前記培養培地の前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の最適注入速度が、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)が、注入時間を最適化することを含み、最適注入時間が、前記培養培地の量を前記注入速度で割ることにより計算される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法であって、
(a)前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの1つ以上に、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を提供する工程と、
(b)前記流動駆動ユニットによって、前記培養培地を、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの前記1つ以上から前記第2のチャンバに流す工程と、
(c)前記細胞培養装置を反転位置に置く工程と、
(d)前記細胞培養装置を前記反転位置で所定の時間にわたってインキュベートする工程であって、前記所定の時間は前記培養培地に基づいて選択される工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、バイオテクノロジー及び流量最適化の分野に関する。特に、本開示は、細胞培養装置、この細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法、及びこの細胞培養装置を含む細胞培養インキュベータに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養又は細胞培養法は、細胞増殖及び生存率を維持するために、制御されたインビトロ条件下で、生体外で所望の種類(1種又は複数種)の細胞を増殖させることを含む。細胞培養は、細胞生物学、組織工学、医用生体工学、細胞分化研究、細胞ベースのバイオセンサ、細胞-細胞相互作用、細胞シグナル伝達、細胞遊走、生理学的及び病態生理学的研究等を含む様々なバイオテクノロジーの部門において広く使用されている。
【0003】
培養細胞のために作り出される環境条件は、インビボで同じ細胞が経験する条件にできるだけ厳密に似ている必要がある。これは、大きい容器、例えば皿、スピナー及びシェーカーフラスコ等の中で細胞培養を行うことによって行われてもよい。しかしながら、これらの容器によって提供される細胞培養条件は、培養される細胞のインビボ環境を真には表さない。さらに、これらの容器は容積が大きいため、かなりの量の試薬、培養培地、化学物質等を消費し、これにより細胞培養条件を制御及び/又は変更することが困難になる。
【0004】
マイクロ流体力学の出現により、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、接着性及び非接着性のような様々な種類の細胞を培養するように構成された新しいデバイス及び方法が開発されている。上述の容器に基づく従来の細胞培養方法とは異なり、マイクロ流体細胞培養方法は、連続栄養素(培養液又は培地)供給、廃棄物除去、スケジュールの柔軟性、及び高い自動化能力を提供する可能性がある。流体の消費が少なく、体積が小さく、それゆえ細胞培養の時間及びコストが低減されるため、これらのマイクロ流体方法は、細胞ベースのアッセイにとって特に興味深いものになっている。マイクロ流体細胞培養デバイスの主な目標は、インビボ細胞微小環境を厳密に模倣し、再現性のある結果のために単純さを維持することである。
【0005】
しかしながら、現行のマイクロ流体細胞培養デバイスの制限要因は、個別の(離散的な)配置及び限られた数のマイクロ流体チャネルに起因する、それらのデバイスの低スループット並びに利用可能な液体ハンドリングシステム及びイメージングシステムとの不適合性である。さらには、現行のマイクロ流体細胞培養デバイスにおける流体の流れの制御は、1つの方法に限定されることが多く、異なる資源設定及び異なる細胞ベースのアッセイに適合するほど柔軟ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この概要は、発明を実施する形態において以下でさらに説明される概念のうちで選択したものを簡略化された形で紹介するために提供される。この概要は、本開示の主要な特徴を特定することを意図するものではなく、本開示の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。
【0007】
本開示の目的は、各培養培地リザーバにおいて、流出口が既存のロボット液体ハンドリングシステムと適合してもよい技術的解決手段を提供することである。特に、流出口は、最適化された細胞充填(ローディング)及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導するように、円錐形状を有してもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞が流路に沿って沈降する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、添付の特許請求の範囲における独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施形態及び例は、従属請求項、発明を実施するための形態及び添付の図面から明らかである。
【0009】
第1の態様によれば、細胞培養装置が提供される。この装置は、互いに隣接して配置された複数の細胞培養モジュールを含んでもよい。この複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールは、少なくとも2つの培養培地リザーバと、第1のチャンバと、第2のチャンバと、膜と、少なくとも2つのフローチャネルと、空洞とを含んでもよい。少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれは、上部及び下部を有してもよく、この上部は培養培地のための入口を有し、この下部はこの培養培地のための出口を有する。第1のチャンバは、第1のチャンバ及び上記少なくとも2つの培養培地リザーバが第1の方向に互いに整列してもよいように、上記少なくとも2つの培養培地リザーバの間に配置されてもよい。第2のチャンバは、第1のチャンバの下に配置され、第2の方向に第1のチャンバと整列してもよい。この第2の方向は、第1の方向に垂直であってもよい。第2のチャンバは、少なくとも2つの横穴を有する下部を有してもよい。第2のチャンバのこの下部は、上記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれの下部より高く配置されてもよい。上記膜は、その中に形成された貫通細孔を有してもよく、第1のチャンバ及び第2のチャンバがこの貫通細孔を介して互いに流体連通するように、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に配置されてもよい。上記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、上記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つの下部の出口を第2のチャンバの下部の少なくとも2つの横穴のうちの1つに接続してもよい。当該装置は、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールにおいて、上記少なくとも2つのフローチャネルを介した上記少なくとも2つの培養培地リザーバと第2のチャンバとの間で培養培地を流すように構成された流動駆動ユニットをさらに含んでもよい。上記少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は、保持部材も含んでもよい。この少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は、液体ハンドリングシステムと適合するように構成された保持部材を含んでもよい。この少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は、液体ハンドリングシステムのための保持部材を含んでもよい。この構成により、当該細胞培養装置は、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、細胞培養モジュールの多孔質膜の下側面(すなわち、下面)において、同じ又は異なる種類の細胞を培養してもよい。さらに、多孔質膜の下側面への細胞の堆積は、細胞を膜に結合させ膜を覆うために、装置を反転させる必要なく、又は培養培地中で高濃度の細胞を使用する必要なく提供されてもよい。最適化された細胞充填及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導することも可能であってもよい。
【0010】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記保持部材は、円錐台形状を有していてもよい。この種の形状により、液体ハンドリングシステムを流出口内に少なくとも部分的にしっかりと配置することが可能になってもよい。この培養培地は、液体ハンドリングシステムから直接、例えばピペッティング装置の先端から流出口を通ってフローチャネルに直接的に流れてもよい。これは、液体ハンドリングシステムを用いてフローチャネルへの培養培地充填(ローディング)の直接制御を可能にしてもよい。
【0011】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記培養培地リザーバの下部は、保持部材として連続してもよく、保持部材の上縁部は、培養培地のための出口を含んでもよい。
【0012】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記培養培地リザーバの下部は、保持部材として連続してもよく、この保持部材の上縁部は、培養培地のための出口を含んでもよく、この培養培地の出口は、上記液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成されてもよい。この種の形状は、培養培地を液体ハンドリングシステムから直接、例えばピペッティング装置の先端から流出口を通ってフローチャネルに直接的に流してもよい。これは、フローチャネルへの培養培地充填の直接制御を可能にしてもよい。
【0013】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記保持部材は、培養培地リザーバの下部に下縁部を有してもよく、この保持部材の下縁部はより大きい直径を有してもよく、保持部材の上縁部はより小さい直径を有してもよい。保持部材は、培養培地リザーバの内部に位置してもよい。保持部材の高さは、培養培地リザーバの下部から培養培地リザーバの上部に向かって増加してもよい。上記保持部材の下縁部は、上記培養培地リザーバの下部の中央に位置してもよい。これらの特徴のすべては、液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を流出口の内側に配置することを容易にしてもよい。
【0014】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記保持部材の側面は、対応する培養培地リザーバの下部から始まって、上記第1の方向に対して第2の傾斜角で延在してもよい。そのような傾斜した側面により、少なくとも部分的に流出口の内側での液体ハンドリングシステムの保持を改善することが可能であってもよい。
【0015】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記培養培地のための出口は、液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成されてもよく、培養培地は、出口を通ってフローチャネルに向けられるように構成されてもよい。フローチャネルは、保持部材の下縁部から継ぎ目なく直接始まってもよい。これは、フローチャネルへの培養培地充填の直接制御を可能にしてもよい。
【0016】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記少なくとも1つの培養培地リザーバは、保持部材と培養培地リザーバの下部との間にオーバーフロー空洞を含んでもよい。このオーバーフロー空洞は、保持部材の外側部分と培地リザーバの下部の内側部分との間に位置してもよい。保持部材の円錐形の入口/出口設計は、過剰の液体を貯留するために培養培地リザーバの下部にオーバーフロー空洞を作り出してもよく、従って、培養培地リザーバが乾燥するのを防いでもよい。
【0017】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記培養培地は、出口からフローチャネルに注入されるように構成され、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の注入速度は、最大生細胞流量より小さく、かつ細胞沈降速度より大きくてもよく、この注入速度は、フローチャネルに注入される細胞懸濁液の速度であり、最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度であり、細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ、リザーバ、フローチャネル、及び/又は培養培地の下部(底)に沈降する速度である。最適化された注入速度は、最適化された細胞充填及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導してもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞がフローチャネル又はチャンバに沿って沈降する可能性がある。
【0018】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算されるように構成されてもよい。これは、最適な注入速度を使用することによって最適注入時間を計算することを可能にしてもよい。上記液体ハンドリングシステムは、注入速度及び/又は注入時間を最適化するために使用されてもよい。
【0019】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも1つのフローチャネル、少なくとも1つの培養培地リザーバ、並びに第1及び/又は第2のチャンバのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、内側から細胞忌避層でコーティングされてもよい。この細胞忌避コーティング又は細胞忌避層は、上記膜の部にオルガノイドを形成し、細胞がマイクロチャネル又はフローチャネルのいくつかの特定の部分に接着するのを防ぐために使用されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、膜領域のみが、細胞接着のために使用されてもよく、これは、必要とされる細胞の数を低減させ、非特異的結合を回避する可能性がある。例示的な実施形態によれば、膜の上面及び/又は下面は、細胞接着増強コーティングでコーティングされてもよい。
【0020】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記細胞忌避層は、以下の材料の少なくとも1つから作製されてもよい:テフロン(登録商標)、Pluronic(プルロニック(登録商標))、PEG、又は類似の鎖状ポリマー。細胞忌避層は、装置のいくつかの特定の部分に細胞が接着するのを防ぐために使用されてもよい。
【0021】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールは、少なくとも第2のチャンバの下部の下に空洞を含んでもよい。この空洞は、細胞を膜に結合させ膜を覆うために、当該装置を反転させる必要なく、又は培養培地中で高濃度の細胞を使用する必要なく、多孔質膜の下側面への細胞の堆積を可能にしても
【0022】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、第1の方向に対してある傾斜角で少なくとも部分的に延在してもよく、第2のチャンバの下部及び上記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれの少なくとも一部は上記空洞を形成してもよい。第2のチャンバ又は上記複数のフローチャネルの少なくとも1つにおける屈曲又は傾斜した構造は、細胞培養モジュール全体を反転させる必要なく、膜の下面での細胞堆積(細胞捕集)を促進する可能性がある。
【0023】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、第1のチャネル部分及び第2のチャネル部分を含んでもよい。この第1のチャネル部分は、対応する培養培地リザーバのうちの1つの下部から延在してもよく、上記第1の方向と平行であってもよい。上記第2のチャネル部分は、第1のチャネル部分を第2のチャンバの少なくとも2つの横穴のうちの1つに接続してもよい。第2のチャネル部分は、第1の方向に対して上記傾斜角で少なくとも部分的に延在してもよい。第2のチャンバの下部及び上記少なくとも2つのフローチャネルの各第2のチャネル部分の少なくとも一部は上記空洞を形成してもよい。フローチャネルのこの構成により、各細胞培養モジュールにおける流動特性を改善し、これにより、第2のチャンバへの細胞送達を改善することができる。
【0024】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの細胞培養モジュール内の上記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、対応する培養培地リザーバの出口から始まって、上記第1の方向に対してある傾斜角で延在してもよい。上記第2のチャンバの下部及び上記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれの少なくとも一部は空洞を形成してもよい。これは、第1の方向に平行な第1のチャネル部分がなくてもよいことを意味する。そのような構成では、上記複数のフローチャネルは、製造がより容易かつ安価である可能性がある。
【0025】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記傾斜角は、5度~45度の範囲内であってもよい。そのような傾斜したフローチャネルにより、適切な流動特性を達成し、それゆえ、第2のチャンバへの細胞送達を改善することが可能であってもよい。
【0026】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、可変若しくは一定のチャネル高さ、及び/又は第2のチャンバに向かって増加してもよい可変のチャネル幅を有してもよい。フローチャネルのこの構成により、各細胞培養モジュールにおける流動特性を改善し、これにより、第2のチャンバへの細胞送達、ひいては多孔質膜の下側面への細胞付着を改善することが可能であってもよい。
【0027】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記可変のチャネル幅は、第2のチャンバに向かって徐々に増加する。これは、フローチャネル内の培養培地の層流のより良好な保持を達成することを可能にする可能性がある。
【0028】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の第1のチャンバは、無底の中空管として実装されてもよい。この第1のチャンバでは、多孔質膜の上側面(すなわち上面)に細胞を堆積させることが可能であってもよい。多孔質膜の上側面に堆積される細胞は、多孔質膜の下側面に堆積される細胞と同じ又は他の種類であってもよい。従って、このように構成される第1のチャンバは、多孔質膜の上側面に細胞単層を堆積させ、膜の下側面及び上側面に堆積された細胞の相互作用を研究することを可能にしてもよい。さらに、そのような構成では、第1のチャンバは、製造がより容易かつ安価である。
【0029】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の第1のチャンバは、湾曲した又は角度付きの底面を有する中空管として実装されてもよい。この実施形態では、湾曲した又は角度付きの底面は、少なくとも1つの空洞と、この少なくとも1つの空洞のそれぞれに形成された少なくとも1つの穴とを有してもよい。この第1のチャンバでは、多孔質膜の上側面の別々の部分に細胞を堆積させることが可能であってもよい。第1のチャンバのこの構成は、研究中の類似又は異なる粒子(例えば、オルガノイド又はスフェロイド)を多孔質膜の上側面に形成し、多孔質膜の下側面に堆積した細胞とのそれらの相互作用を研究するためにとりわけ有用であってもよい。
【0030】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記湾曲した又は角度付きの底面は、上記少なくとも1つの空洞の少なくとも1つの穴が開いたままであってもよいように、外側から細胞接着増強層でコーティングされてもよい。この細胞接着増強層は、親水性材料(例えば、I型コラーゲン)から作製されてもよい。このようなコーティング層により、細胞が第1のチャンバの底面の外側で凝集し、さらに多孔質膜の上側面に接着してもよい。従って、このコーティング層は、より少ない細胞が実験において使用されることを可能にし、多孔質膜の上側面への細胞のより正確な堆積を可能にする。死細胞はアポトーシスを促進する因子を放出する傾向がある場合があるため、より少ない数の細胞は、ひいては、細胞培養物中のより少ない細胞死、又は言い換えれば、より健康な細胞も意味してもよい。
【0031】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記第2のチャンバは、50μm~150μmの範囲内の高さを有してもよい。このような第2のチャンバを用いることにより、第1の態様に係る細胞培養装置をよりコンパクトにすることができる。
【0032】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の第2のチャンバは、内側から細胞接着増強層でコーティングされてもよい。この細胞接着増強層は、親水性材料(例えば、I型コラーゲン)から作製されてもよい。このようなコーティング層により、細胞は、多孔質膜の下側面により効率的に付着してもよい。従って、このコーティング層は、より少ない細胞が実験において使用されることを可能にし、多孔質膜の下側面への細胞のより正確な堆積を可能にする可能性がある。死細胞はアポトーシスを促進する因子を放出する傾向がある場合があるため、より少ない数の細胞は、ひいては、細胞培養物中のより少ない細胞死、又は言い換えれば、より健康な細胞も意味してもよい。
【0033】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれは、内側から細胞接着増強層でコーティングされてもよい。この細胞接着増強層は、親水性材料(例えば、I型コラーゲン)から作製されてもよい。この接着増強層を使用することにより、フローチャネルの側面(並びに、第2のチャンバの側面及び多孔質膜)への細胞付着はより強くなってもよく、細胞増殖はモデル化される組織に適切であってもよく、細胞生存率はより良好であってもよい。正しい接着増強層を選択することは、細胞型間の適切な連絡において役割を果たす可能性もある。従って、このコーティング層は、より少ない細胞が実験において使用されることを可能にし、多孔質膜の下側面への細胞のより正確な堆積を可能にする可能性がある。死細胞はアポトーシスを促進する因子を放出する傾向がある場合があるため、より少ない数の細胞は、ひいては、細胞培養物中のより少ない細胞死、又は言い換えれば、より健康な細胞も意味してもよい。
【0034】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記流動駆動ユニットは、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールにおいて、
上記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれの入口に圧縮ガス若しくは加圧空気を供給すること、又は
規則的な時間間隔で、若しくは上記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれにおける培養培地のレベルに基づいて、少なくとも2つの培養培地リザーバの1つから少なくとも2つの培養培地リザーバの別のリザーバに培養培地をピペッティングする(ピペットで移送する)こと、又は
上記複数の細胞培養モジュールを周期的に揺動させること
により、上記少なくとも2つの培地リザーバの間で培養培地を流動させるように構成されてもよい。
【0035】
従って、現行のマイクロ流体細胞培養デバイスとは異なり、第1の態様に係る細胞培養装置は、異なる流動制御手段、すなわち、空気圧ポンプ作動流動制御、及びポンプレス流動制御(これは、複数の細胞培養モジュールを揺動させた結果として重力によって、又は培養培地ピペッティングによって提供される)と適合性があってもよい。
【0036】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれは、中空管として実装されてもよい。そのような構成では、培養培地リザーバは、製造がより容易かつ安価であってもよい。
【0037】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれの下部は、正のテーパ形状を有してもよい。培養培地リザーバのこのような構成を使用することにより、当該装置を傾けても、培養培地リザーバに含まれる培養培地全体を第2のチャンバに向かって底に流すことが可能であり、培養培地リザーバに培養培地が残らないようにすることが可能であってもよい。これも、多孔質膜の下側面に堆積又は下側面で増殖される必要があってもよい細胞の数を低減するのに役立つ場合がある。加えて、培養培地リザーバのこの構成は、各細胞培養モジュールにおいて最適な流量を達成することを可能にする場合がある。
【0038】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュールは、第1のチャンバ内に配置された第1の電極と、第2のチャンバ内に配置された第2の電極とをさらに含んでもよい。これらの電極は、異なる目的を果たしてもよい。例えば、それらは、第1及び第2のチャンバ内に存在する筋肉細胞若しくは神経細胞に電気パルスを供給するために使用されてもよく、又は種々の種類の他のセンサに連結されてもよい。より具体的には、これらの電極は、リアルタイム経上皮/経内皮電気抵抗(TEER)測定を実行するために使用されてもよく、この場合、信号は外部の制御ユニットによって読み出されてもよい。
【0039】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュールは、上記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つ以上に配置された第1の電極と、上記第1のチャンバ内に配置された第2の電極とをさらに含んでもよい。第1及び第2の電極のこの配置は、例えば、TEER測定を実行するためにも使用されてもよい。
【0040】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュールは、上記第1のチャンバ内に配置された少なくとも2つの第3の電極をさらに含んでもよい。この第3の電極は、第1のチャンバ内の同じ壁又は対向する壁に配置されてもよい。これらの電極は、第1のチャンバ内の液体/培地レベル測定を実行するために使用されてもよい。
【0041】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュールは、上記膜に埋め込まれた少なくとも2つの第4の電極をさらに含んでもよい。これらの電極は、例えば、膜の上側面及び/又は下側面に堆積された細胞に異なる刺激信号を提供するために使用されてもよい。
【0042】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュールは、上記第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバ内の酸素センサ、pHセンサ、及び/又はCO2センサのうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。これらのセンサは、細胞挙動に重要なパラメータのリアルタイム測定を可能にしてもよい。
【0043】
第1の態様の例示的な実施形態によれば、上記膜の貫通細孔は、0.2μm~10μmの範囲内の平均細孔サイズ(平均細孔径)を有してもよい。平均細孔サイズをこの範囲内で変化させることによって、異なるサイズの細胞の挙動を研究することが可能であってもよく、このような細胞は膜の上側面及び下側面の一方又はそれぞれに堆積されてもよい。
【0044】
第2の態様によれば、細胞培養インキュベータが提供される。この細胞培養インキュベータは、第1の態様に係る細胞培養装置と、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は上記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に培養培地を供給するように構成された液体ハンドリングシステムとを含んでもよい。この液体ハンドリングシステムは、ロボット液体ハンドリングシステム、例えばピペッティングステーションであってもよい。この液体ハンドリングシステムは、注入速度及び/又は注入時間を最適化するために使用されてもよい。この構成により、当該細胞培養インキュベータは、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、細胞培養モジュールの多孔質膜上で同じ又は異なる種類の細胞を培養してもよい。さらに、多孔質膜の下側面への細胞の堆積は、細胞を膜に結合させ膜を覆うために、細胞培養装置を反転させる必要なく、又は培養培地中で高濃度の細胞を使用する必要なく提供されてもよい。
【0045】
第2の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入速度を最適化することにより、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の供給を制御することを含んでもよく、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の最適な注入速度は、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい。
【0046】
第2の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入時間を最適化することを含んでもよく、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算される。
【0047】
第3の態様によれば、第1の態様に係る細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法が提供される。この方法は、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は上記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に培養培地を提供する工程から開始してもよい。次いで、この方法は、上記流動駆動ユニットによって、培養培地を、複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で上記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つからこの少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの残りに所定の時間にわたって流すことに進んでもよい。この所定の時間は、培養培地に基づいて選択されてもよい。こうすることにより、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、細胞培養モジュールの多孔質膜上で同じ又は異なる種類の細胞を培養することが可能であってもよい。さらに、多孔質膜の下側面への細胞の堆積は、細胞を膜に結合させ膜を覆うために、細胞培養装置を反転させる必要なく、又は培養培地中で高濃度の細胞を使用する必要なく提供されてもよい。
【0048】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入速度を最適化することにより、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の供給を制御することを含んでもよく、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の最適な注入速度は、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい。この注入速度は、フローチャネルに注入される細胞懸濁液の速度であり、最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度であり、細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ、リザーバ、フローチャネル、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である。最適化された注入速度は、最適化された細胞充填及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導することを可能にしてもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞がフローチャネル及び/又はチャンバに沿って沈降する可能性がある。
【0049】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入時間を最適化することをさらに含んでもよく、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算される。これは、最適な注入速度を使用して最適注入時間を計算することを可能にしてもよい。
【0050】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、当該方法はさらに、培養培地を流すときに、複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内で、第1のチャンバを介して、膜に向かって別の培養培地を供給することを含んでもよい。こうすることにより、多孔質膜の下側面で第1の種類の細胞、及び多孔質膜の上側面で異なる第2の種類の細胞を培養し、これにより異なる細胞の共培養物を生成することが可能であってもよい。
【0051】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、培養培地は、複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバに、所定の時間、陽圧を印加することにより流動させられてもよい。こうすることにより、各細胞培養モジュールにおける培養培地の流れを適正にすることができ、これにより、各細胞培養モジュールにおける多孔質膜上での細胞培養を向上させることができる。
【0052】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、培養培地は、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの残りを閉じ(キャップし)ながら、上記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つに、所定の時間、陽圧を印加することにより流動させられてもよい。こうすることにより、各細胞培養モジュールにおける培養培地の流れを適正にし、これにより、各細胞培養モジュールにおける多孔質膜上での細胞培養を向上させることが可能であってもよい。
【0053】
第3の態様の例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバは、第1の培養培地リザーバと第2の培養培地リザーバとを含んでもよい。この実施形態では、培養培地は、
上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の第2の培養培地リザーバを閉じながら、第1の培養培地リザーバに、所定の時間間隔にわたって第1の陽圧を印加すること、及び
上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の第1の培養培地リザーバを閉じながら、第2の培養培地リザーバに、所定の時間間隔にわたって第2の陽圧を印加すること
により流動させられてもよい。
【0054】
こうすることにより、各細胞培養モジュールにおける培養培地の流れを適正にし、これにより、各細胞培養モジュールにおける多孔質膜上での細胞培養を向上させることが可能であってもよい。
【0055】
第4の態様によれば、第1の態様に係る細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法が提供される。この方法は、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つ以上に、及び/又は上記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に培養培地を提供する工程から開始してもよい。次いで、当該方法は、流動駆動ユニットによって、培養培地を、複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で上記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの上記1つ以上から上記第2のチャンバに流すことに進んでもよい。その後、細胞培養装置は反転位置(倒置した位置)に置かれてもよい。次に、当該方法は、細胞培養装置を反転位置で所定の時間にわたってインキュベートすることに進んでもよい。この所定の時間は、培養培地に基づいて選択されてもよい。こうすることにより、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、細胞培養モジュールの多孔質膜上で同じ又は異なる種類の細胞を培養することが可能であってもよい。多孔質膜の下側面への細胞の堆積は、細胞培養装置を反転させることによって提供されてもよいが、第4の態様に係る方法は、細胞を膜に結合させ膜を覆うために高濃度の細胞が培養培地中で使用されることを必要としない。
【0056】
第4の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入速度を最適化することにより、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の供給を制御することを含んでもよく、培養培地の出口からフローチャネルへの培養培地の最適な注入速度は、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい。この注入速度は、フローチャネルに注入される細胞懸濁液の速度であり、最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度であり、細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ、リザーバ、フローチャネル、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である。最適化された注入速度は、最適化された細胞充填(投入)及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導することを可能にしてもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞がフローチャネル及び/又はチャンバに沿って沈降する可能性がある。
【0057】
第4の態様の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入時間を最適化することをさらに含んでもよく、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算される。これは、最適な注入速度を使用することによって最適注入時間を計算することを可能にしてもよい。
【0058】
第4の態様の例示的な実施形態によれば、当該方法は、培養培地を流すときに、別の培養培地が、複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内で、第1のチャンバを介して、膜に向かって供給されてもよいことをさらに含んでもよい。こうすることにより、多孔質膜の下側面で第1の種類の細胞、及び多孔質膜の上側面で異なる第2の種類の細胞を培養し、これにより異なる細胞の共培養物を生成することが可能であってもよい。
【0059】
第4の態様の例示的な実施形態によれば、培養培地はヒト脳血管内皮細胞を含んでもよく、上記別の培養培地はヒト星状細胞を含んでもよい。これらの種類の細胞を使用することにより、人工血液脳関門(BBB)を作製するか、又はヒト模倣人工BBBを作製することが可能であってもよい。
【0060】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施する形態を読み、添付の図面を検討すると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
以下、添付の図面を参照して本開示を説明する。
【0062】
図1図1は、1つの例示的な実施形態に係る細胞培養装置のブロック図を示す。
図2A図2Aは、第1の例示的な実施形態に係る、図1に示される装置に含まれる細胞培養モジュールの異なる模式図を示す、つまり、図2Aは、細胞培養モジュールの模式的側面図を示す。
図2B図2Bは、第1の例示的な実施形態に係る、図1に示される装置に含まれる細胞培養モジュールの異なる模式図を示す、つまり、図2Bは、細胞培養モジュールの模式的上面図を示す。
図3図3は、1つの例示的な実施形態に係る細胞培養インキュベータのブロック図を示す。
図4図4は、第1の例示的な実施形態に係る、図1に示される装置を使用することによる細胞培養方法のフローチャートを示す。
図5図5は、第2の例示的な実施形態に係る、図1に示される装置を使用することによる細胞培養方法のフローチャートを示す。
図6A図6Aは、図5に示される方法に従って図1に示される装置を使用することによるBBBモデルの共焦点画像を示す。
図6B図6Bは、図5に示される方法に従って図1に示される装置を使用することによるBBBモデルの共焦点画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本開示の様々な実施形態について、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示は、多くの他の形態で具現化されてもよく、以下の説明で論じられる任意の特定の構造又は機能に限定されるものと解釈されるべきではない。対照的に、これらの実施形態は、本開示の説明を詳細かつ完全にするために提供される。
【0064】
発明を実施するための形態の記載によれば、本開示の範囲は、本開示の任意の実施形態が独立して実行されるか、本開示の任意の他の実施形態と協働して実行されるかにかかわらず、本明細書に開示されるその任意の実施形態を包含することが当業者には明らかであろう。例えば、本明細書に開示される装置及び/又は方法は、本明細書に提供される任意の数の実施形態を使用して、実際に実行されてもよい。さらには、本開示の任意の実施形態は、添付の特許請求の範囲に提示される要素のうちの1つ以上を使用して実行されてもよいということを理解されたい。
【0065】
「例示的」という用語は、本明細書では、「実例として使用される」という意味で使用される。特段の記載がない限り、「例示的」として本明細書に記載される任意の実施形態は、他の実施形態よりも好ましい又は利点を有すると解釈されるべきではない。
【0066】
「左」、「右」、「上部」、「頂」、「底」、「上」、「下」、「上側」、「下側」等の任意の位置を示す用語は、図面に従って、1つの要素又は特徴部の1つ以上の他の要素又は特徴部に対する関係を説明するために便宜上本明細書で使用されてもよい。位置を示す用語は、図に描写される配向に加えて、本明細書に開示される構造及びデバイスの異なる配向を包含することが意図されることが明白であるはずである。一例として、図において構造又はデバイスを90度時計回りに想像上で回転させる場合、他の要素又は特徴部に対して「上部」及び「底」と記載される要素又は特徴部は、その他の要素又は特徴部に対してそれぞれ「右」及び「左」に向けられることになる。それゆえ、本明細書で使用される位置を示す用語は、本開示のいかなる限定としても解釈されるべきではない。
【0067】
さらには、「第1の」、「第2の」等のような序数詞の用語が、様々な実施形態、要素、又は特徴部を説明するために本明細書で使用されてもよいが、これらの実施形態、要素、又は特徴部は、この序数詞の用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。この序数詞の用語は、ある実施形態、要素又は特徴部を別の実施形態、要素又は特徴部から区別するためにのみ本明細書で使用される。例えば、以下に論じられる第1のチャンバは、本開示の教示から逸脱しない範囲で、第2のチャンバと呼ばれることもあり、逆もまた同様である。
【0068】
本明細書に開示される実施形態では、細胞は、植物細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、細菌細胞、真菌細胞等の生物学的細胞を指してもよい。哺乳動物細胞は、例えば、ヒト、マウス、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、霊長類等に由来してもよい。
【0069】
本明細書に開示される実施形態において使用される場合、増殖培地とも呼ばれる培養培地は、人工環境において、すなわちインビトロにおいて細胞増殖を支えるように設計された液体、懸濁液、又はゲルを指してもよい。異なる種類の細胞を増殖させるのに適した異なる種類の培養培地がある。一般に、培養培地は、天然培地及び合成培地の2つの主要なカテゴリーに分けられてもよい。天然培地は、組織抽出又は動物の体液、例えば血漿、リンパ液及び血清に由来する培地である。合成培地は、様々な有機化合物及び無機化合物を用いて作られる培地である。さらに、培養培地自体は、細胞、細胞体(例えば、オルガノイド)、天然の脂質粒子又は操作された脂質粒子(例えば、種々の設計のエキソソーム微小胞、液胞、ミセル又は脂質粒子、ウイルス粒子、ナノ粒子等)を含む脂質粒子を含んでもよい。
【0070】
本明細書に開示される実施形態では、細胞培養装置は、マイクロチャネルによって接続される種々のウェル(例えば、リザーバ、チャンバ等)を有する装置を指してもよく、この装置では、流体(すなわち、培養培地)は、このマイクロチャネルを通るそれらの流動においてマイクロ流体挙動を示すことになる。このような細胞培養装置は、この技術分野ではマイクロ流体チップとも呼ばれる。細胞培養装置によって行われるマイクロ流体細胞培養は、概して、マイクロスケールの流体体積における細胞培養、維持、及び摂動に関連する。マイクロ流体細胞培養の人気の背後にある理由は、経済的及び科学的の両方である。マイクロ流体チップは、インビボ同様の性能を有して、インビトロ細胞培養の利点(ハイスループット、並列実験、実験は実験者の裁量で行われてもよい、専門のインフラストラクチャ及び人員を必要としない、等)を有する。例えば、マウスモデルでは、薬物は、ヒトではなくマウスのために実際に選択される。ヒト細胞を使用することによって、薬物はヒトについてスクリーニングされる。従って、ヒト化マイクロ流体細胞及び組織培養物を使用して薬物候補をスクリーニングすることは前臨床試験時間を短縮し、臨床試験に入る薬物は、ヒトにより適している。これは、有害作用の可能性を低減し、有効性を示す機会を増加させてもよく、臨床試験における不成功を少なくする。
【0071】
本明細書に開示される実施形態では、細胞培養装置の各マイクロチャネルは、フローチャネルとも呼ばれ、1mm未満の水力直径を有し細胞培養装置のウェルを流体的に接続するために使用されるサブミリメートルスケールのチャネルに関連してもよい。言い換えれば、マイクロチャネル又はフローチャネルは、概して、マイクロスケール体積で、例えば培養培地(例えば、細胞懸濁液)、試薬、又はゲル等の異なる流体を通過させるように構成されたチャネルを表す。マイクロチャネルは、特定の用途に応じて、適切な流動特性(例えば、流量)を有するように成形されてもよい。例えば、マイクロチャネルは、長方形、例えば、正方形、又は丸みを帯びた断面を有してもよく、加えて直線的でもよく、屈曲していてもよく、又は必要とされる方向に向かって傾斜していてもよい。
【0072】
マイクロ流体細胞培養は、細胞堆積のために、マイクロチャネル内の2つの流動層の間に、又は培養チャンバとマイクロチャネルとの間に挟まれた多孔質膜を使用することを含んでもよい。しかしながら、これまでに公知である膜ベースの細胞培養装置は、低スループット、並びに利用可能な液体ハンドリングシステム(例えば、マイクロタイタープレートフォーマット)及びイメージングシステムとの不適合性という問題を抱えている。さらには、そのような装置における流動制御は1つの方法に限定されることが多く、異なるリソース設定に適合するほど柔軟ではない。それに加えて、多孔質膜(複数可)の下側面(すなわち下面)への細胞堆積は、非常に高い細胞濃度を用い、液体流動制御を用い、かつ細胞培養装置を反転させることによってのみ、現行の細胞培養装置において可能である。
【0073】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、従来技術の欠点を軽減又は排除することさえ可能にする技術的解決手段を提供する。特に、本明細書に開示される技術的解決手段は、互いに隣接して配置された複数の細胞培養モジュールを含む細胞培養装置を提供する。各細胞培養モジュールは、2つ以上のフローチャネルによって接続される2つ以上の培養培地リザーバを含んでもよい。この少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は、液体ハンドリングシステムと適合するように構成された保持部材を含んでもよい。フローチャネルは、上側チャンバの下に配置された下側チャンバを通過する。上側チャンバ及び下側チャンバは、多孔質膜によって隔てられる。下側チャンバは、培養培地リザーバのそれぞれの下部よりも高い位置に配置された下部を有する。各細胞培養モジュールはさらに、第2のチャンバの下部の少なくとも下に空洞を含んでもよい。この装置構成において、培養培地の流れは、装置を揺動プラットフォーム上に配置すること、又は装置を空気圧ポンプに接続することのいずれかによって、各細胞培養モジュール内の培養培地リザーバ間で灌流及び調節されてもよい。さらに、このように構成される当該装置は、均一かつ制御されたインビトロ条件下で、細胞培養モジュールにおける多孔質膜の下側面で、同じ又は異なる種類の細胞を培養してもよい。多孔質膜の下側面への細胞の堆積は、装置を反転させる必要なく、培養培地中で高濃度の細胞を使用する必要なく提供されてもよい。
【0074】
図1は、1つの例示的な実施形態に係る細胞培養装置100のブロック図を示す。装置100は、上述のマイクロ流体細胞培養を目的とする。図1に示すように、装置100は、細胞培養プレート102と、細胞培養プレート102に結合された流動駆動ユニット104とを含んでもよい。細胞培養プレート102は、複数の細胞培養モジュール106を含んでもよく、標準的な96、384、又は1536マイクロタイタープレートに適合するように構成されてもよい。流動駆動ユニット104は、以下により詳細に説明されるように、各細胞培養モジュール106の中で培養培地を流動させるように構成されてもよい。図1に示される、装置100を構成する構成要素の数、配置、及び相互接続は、本発明のいかなる限定も意図せず、単に、どのように構成要素が装置100内で実装されてもよいかの一般的なアイデアを提供するために使用されることに留意されたい。例えば、細胞培養プレート102が2つ以上の細胞培養プレートで置き換えられてもよく、流動駆動ユニット104が、それぞれそれらの細胞培養プレートのうちの1つにおける培養培地の流れを制御するように構成された2つ以上の流動駆動ユニットに置き換えられてもよい。
【0075】
図2A及び図2Bは、第1の例示的な実施形態に係る装置100に含まれる細胞培養モジュール106の異なる模式図を示す。より具体的には、図2Aは、細胞培養モジュール106の模式的側面図の例を示し、図2Bは、細胞培養モジュール106の模式的上面図の例を示す。図2A及び図2Bに示されるように、細胞培養モジュール106は、第1の培養培地リザーバ202と、第2の培養培地リザーバ204と、第1の(上側又は上部)チャンバ206と、第2の(下側又は下部)チャンバ208と、第1のフローチャネル210と、第2のフローチャネル212と、膜214と、第2のチャンバ208の下方の空洞224とを含んでもよい。本開示は、細胞培養モジュール106の構成要素の図示された数、配置、及び相互接続に限定されないことに再び留意されたい。例示的な実施形態によれば、上記少なくとも2つの培養培地リザーバの下部は保持部材240を含む。保持部材240は、液体ハンドリングシステム602に適合するように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、3つ以上の培養培地リザーバが存在してもよく、これにより3つ以上のフローチャネルがもたらされる。他の例示的な実施形態では、2つの培養リザーバ間に3つ以上の上側チャンバ及び3つ以上の下側チャンバが存在してもよく、これによっても、上側チャンバ及び下側チャンバを通して2つの培養リザーバを接続するフローチャネルの数が増加する。
【0076】
第1の培養培地リザーバ202は、培養培地のための入口216を有する上部と、培養培地のための出口218を有する下部とを有してもよい。同様に、第2の培養培地リザーバ204は、培養培地のための入口220を有する上部と、培養培地のための出口222を有する下部とを有してもよい。第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204は、同一の中空管として実装されてもよい。図2A及び図2Bは、第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204のそれぞれが円形断面を有することを示すが、これは本開示のいかなる限定とも解釈されるべきではない。いくつかの実施形態では、必要に応じて、及び特定の用途に応じて、例えば多角形、楕円形等の任意の他の断面形状が可能である。さらに、第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204のそれぞれの下部は、異なるプロファイル、例えば、図2A及び図2Bに示されるような正のテーパ形状を有してもよい。
【0077】
上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール106の少なくとも2つの培養培地リザーバ202、204の下部は、液体ハンドリングシステム602と適合するように構成された保持部材240を含んでもよい。保持部材240は、円錐台形状を有してもよい。図2A及び図2Bは、保持部材240のそれぞれが円形断面を有することを示すが、これは本開示のいかなる限定とも解釈されるべきではなく、いくつかの実施形態では、必要に応じて、及び特定の用途に応じて、例えば多角形、楕円形等の任意の他の断面形状が可能である。
【0078】
例示的な実施形態によれば、培地リザーバ202、204の下部は、保持部材240として連続する。保持部材240の上縁部は、培養培地のための出口218、222を含んでもよい。培養培地のための出口218、222は、液体ハンドリングシステム602の少なくとも一部を受け入れるように構成されてもよい。例示的な実施形態によれば、培養培地のための出口218、222は、液体ハンドリングシステム602の少なくとも一部を受け入れるように構成される。培養培地は、出口218、222を通ってフローチャネル210、212に向けられるように構成されてもよい。
【0079】
例示的な実施形態によれば、保持部材240は、培養培地リザーバ202、204の下部に下縁部242を有し、この保持部材240の下縁部242は、より大きい直径を有し、保持部材240の上縁部又は培養培地のための出口218、222は、より小さい直径を有する。保持部材240は、培養培地リザーバ202、204の内部に位置してもよい。保持部材の高さは、培養培地リザーバ202、204の下部から培地リザーバ202、204の上部に向かって増加してもよく、同時に、保持部材は、培養培地のための出口218、222に向かって先細りしてもよい。保持部材の高さは、例えば0.5mm~6mmの範囲内であってもよい。保持部材240の下縁部242は、培養培地リザーバ202、204の下部の中央に位置してもよい。
【0080】
例示的な実施形態によれば、保持部材240の側面246は、対応する培養培地リザーバ202、204の底(下端)から始まって、第1の方向Aに対して第2の傾斜角βで延在する。傾斜角βは、5度~85度の範囲内であってもよい。
【0081】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの培養培地リザーバ202、204は、保持部材240と培地リザーバ202、204の下部との間にオーバーフロー空洞244を含む。このオーバーフロー空洞244は、保持部材240の外側面246と培地リザーバ202、204の下部の内面との間に位置してもよい。オーバーフロー空洞244は、液体ハンドリングシステム602からの過剰の液体を貯留して、従って、培養培地リザーバ202、204が乾燥することを防止してもよい。
【0082】
第1のチャンバ206は、第1のチャンバ206並びに第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204が第1の(水平)方向Aにおいて互いに整列するように、第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204の間に配置されてもよい。第1のチャンバ206は、例えば、(図2Aに示すように)正のテーパ形状を有するか又は均一な断面を有する、無底の中空管として実装されてもよい。この場合もやはり、第1のチャンバ206の示された円形断面は、例示のみを目的としており、本開示のいかなる限定とも見なされるべきではない。
【0083】
第2のチャンバ208は、第1のチャンバ206の下に配置され、第2の(上下、鉛直)方向Bにおいて第1のチャンバ206と整列してもよい。第1の方向Aは、第2の方向とほぼ垂直であってもよい。第1の方向Aと第2の方向Bとの間の角度は、例えば約90度である。第2のチャンバ208は、第1のチャンバ206の断面に対応する断面を有してもよい。第2のチャンバ208は、2つ以上の横穴(図2Aに図示せず)を有する下部を有してもよい。図2A及び図2Bに示すように、第2のチャンバ208は、第1のチャンバ206よりも著しく小さい寸法を有してもよい。例えば、第1のチャンバが約7mmの高さを有する場合、第2のチャンバ208の高さは、50μm~150μm(150μmより高い高さ値では、第2のチャンバ208はマイクロ流体特性を失う可能性がある)の範囲内にあってもよい。(リザーバ202及び204の高さに加えて)第1及び第2のチャンバ206及び208のこのような高さ値は、細胞培養モジュール106をよりコンパクトにし、これにより、装置100の総寸法を低減させうる。
【0084】
膜214は、貫通細孔(図2B参照)を有してもよく、第1のチャンバ206と第2のチャンバ208とが膜214の貫通細孔を介して互いに流体連通するように、第1のチャンバ206と第2のチャンバ208との間に配置されてもよい。膜214は、シリコーン、プラスチック、タンパク質、天然ポリマー、人工ポリマー(例えば、ポリエステル(PET))、金属ポリマー又は炭水化物(例えば、セルロース)から構成されてもよく、リソグラフィ、スタンピング、注型(キャスティング)、電界紡糸又はインサイチュ重合(その場重合)といった方法のうちの1つを使用することによって形成されてもよい。この貫通細孔は、例えば三角形、長方形、正方形、楕円形、又は多角形(例えば、六角形)等の異なる断面形状を有してもよい。貫通細孔の多角形断面形状は、凸多角形又は凹多角形を指してもよい。いくつかの他の実施形態では、貫通細孔は、上述の断面形状のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(例えば、円形及び正方形の断面形状の組み合わせ)等の異なる断面形状を有してもよい。さらには、貫通細孔のそれぞれは、所定の値の範囲内で変動する細孔サイズ(細孔径)を有してもよい。例えば、細孔サイズは、0.2μm~10μmで変動してもよい。概して、細孔サイズ(及び貫通細孔間の間隔)の所定の値の範囲は、膜214上に堆積される特定の細胞に基づいて選択されてもよい。より具体的には、細孔サイズは、膜上に堆積される細胞のサイズより大きくても小さくてもよい。例えば、細孔サイズが細胞サイズより小さい場合、細胞が膜214の下側面と上側面との間を移動するのを防ぐことができる。
【0085】
第1及び第2のフローチャネル210及び212は、第2のチャンバ208を通る第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204の間の培養培地の通過を提供するマイクロチャネルであってもよい。特に、第1のフローチャネル210は、第1の培養培地リザーバ202の下部の下縁部242を、第2のチャンバ208の下部の左側に配置された横穴のうちの1つ以上に接続してもよい。第2のフローチャネル212は、第2の培養培地リザーバ204の下部の下縁部242を、第2のチャンバ208の下部の右側に配置された横穴のうちの1つ以上に接続してもよい。第1及び第2のフローチャネル210及び212のそれぞれは、必要な流れ特性(例えば、適切な流量)を達成することを可能にする縦断面及び横断面を有してもよい。例えば、第1及び第2のフローチャネル210及び212のそれぞれは、第2のチャンバ208に向かって(例えば、徐々に)増加する可変のチャネル高さ及び可変のチャネル幅を有してもよい。図2Aの例では、第1及び第2のフローチャネル210及び212のそれぞれは、一定のチャネル高さ、及び第2のチャンバ208に向かって(例えば、徐々に)増加する可変のチャネル幅を有する。例示的な実施形態によれば、上記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール106内の少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれは、可変若しくは一定のチャネル高さ、及び/又は第2のチャンバ208に向かって増加する可変のチャネル幅を有してもよい。
【0086】
別の例示的な実施形態によれば、培養培地は、出口218、222からフローチャネル210、212に注入されるように構成され、培養培地の出口218、222からフローチャネル210、212への培養培地の注入速度は、最大生細胞流量より小さく、細胞沈降速度より大きい。培養培地の注入速度は、フローチャネル210、212に注入される細胞懸濁液の速度である。最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度である。細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ206、208、リザーバ202、204、フローチャネル210、212、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である。最適化された注入速度は、最適化された細胞充填及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導することを可能にしてもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞がフローチャネル及び/又はチャネルに沿って沈降する可能性がある。
【0087】
別の例示的な実施形態によれば、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算されるように構成される。上記液体ハンドリングシステムは、注入速度及び/又は注入時間を最適化するために使用されてもよい。
【0088】
図2Aの例では、細胞培養モジュール106の第1及び第2のフローチャネル210、212を見ることができる。図2Aに示すように、第2のフローチャネル212は、第1のチャネル部分300と第2のチャネル部分302とを含んでもよい。第1のフローチャネル210は、第2のフローチャネルと同様の第1のチャネル部分300と第2のチャネル部分302とを有してもよく、鏡像として提示されているにすぎないことに留意されたい。第1のチャネル部分300は、第2の培養培地リザーバ204の底から延在してもよく、第1の(水平)方向と平行である。第2のチャネル部分302は、第1のチャネル部分300を、第2のチャンバ208の右側に配置された横穴(複数可)(図2Aに図示せず)に接続してもよい。第2のチャネル部分は、第2のチャンバ208の下部が第2の培養培地リザーバ204の下部より高く配置され又は持ち上げられても(すなわち、保持部材の下縁部242よりも高くても)よいように、上方に傾けられ(すなわち、第1の方向に対して傾斜角αを有し)てもよい。第1の(水平)方向Aに対する第2のチャネル部分302の傾斜角αは、適切な流動特性を提供するために、好ましくは5度~45度の範囲内であってもよい。
【0089】
別の例示的な実施形態によれば、第1及び第2のフローチャネル210及び212のそれぞれは、対応する培養培地リザーバ218、222の底から始まって、傾斜角αで全体的に傾けられてもよい(すなわち、第1の(水平)方向に平行な第1のチャネル部分は存在しなくてもよい)。例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの細胞培養モジュール206内の少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれは、対応する培養培地リザーバ202、204の底又は下縁部242から始まって、第1の方向Aに対して傾斜角αで延在する。第2のチャンバ208の下部(底)及び少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれの少なくとも一部は空洞を形成してもよい。
【0090】
例示的な実施形態によれば、複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール106内の少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれは、第1のチャネル部分300と第2のチャネル部分302とを含む。第1のチャネル部分300は、対応する培養培地リザーバ202、204のうちの1つの底から延在してもよく、第1の方向Aと平行である。第2のチャネル部分302は、第1のチャネル部分300を第2のチャンバ208の少なくとも2つの横穴のうちの1つに接続してもよい。第2のチャネル部分は、少なくとも部分的に、第1の方向Aに対して傾斜角αで延在してもよい。第2のチャンバ208の底及び少なくとも2つのフローチャネル210、212の第2のチャネル部分302のそれぞれは、第2のチャンバ208の持ち上げられた下部の下に空洞224を形成してもよい。空洞224は反転され(inverted)てもよい。
【0091】
例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの細胞培養モジュール206内の少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれは、対応する培養培地リザーバ202、204の底から始まって、第1の方向Aに対して傾斜角αで延在する。第2のチャンバ208の下部及び少なくとも2つのフローチャネル210、212のそれぞれの少なくとも一部は、空洞224を形成してもよい。
【0092】
1つの実施形態では、第2のチャンバ208、第1のフローチャネル210、及び第2のフローチャネル212のそれぞれは、内側から細胞接着増強層でコーティングされてもよい。この細胞接着増強層は、親水性材料から作製されてもよい。親水性材料のいくつかの非限定的な例としては、マトリゲル、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、異なる種類のコラーゲン(例えば、装置100に基づいて血液脳関門細胞培養モデルを作製するのに適したI型コラーゲン)、ラミニン、テネイシン、エラスタン(elastane)、多数の異なる分子を有するナノセルロースを挙げてもよい。このような細胞接着増強層は、より少ない細胞が実験において使用されることを可能にし、膜214の下側面への細胞のより正確な堆積を可能にする。
【0093】
例示的な実施形態によれば、複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール106内の少なくとも1つのフローチャネル210、212、少なくとも1つの培養培地リザーバ202、204、第1及び/又は第2のチャンバ206、208のうちの少なくとも1つの少なくとも一部は、内側から細胞忌避層でコーティングされる。例示的な実施形態によれば、この細胞忌避層は、以下の材料のうちの少なくとも1つから作製される:テフロン(登録商標)、Pluronic(プルロニック(登録商標))、PEG、又は類似の鎖状ポリマー。細胞忌避コーティングは、膜214の上にオルガノイドを形成し、細胞がフローチャネル210、212のいくつかの特定の部分に接着するのを防ぐために使用されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、膜領域のみが、細胞接着のために使用されてもよく、これは、必要とされる細胞の数を低減させ、非特異的結合を回避する可能性がある。細胞忌避層は、細胞が当該装置のいくつかの特定の部分に接着するのを防ぐために使用されてもよい。
【0094】
例示的な実施形態によれば、層状構造は、細胞培養モジュール106の1つの可能な実装例を表す。この層状構造は、第1の層及び第2の層を含んでもよい。第1の層は、保持部材240を伴う第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204、並びに第1のチャンバ206を含んでもよい。第2の層は、膜214の真下に配置される第2のチャンバ208、並びにフローチャネル210及び212を含んでもよい。膜214は、第1のチャンバ206と第2のチャンバ208との間に配置されて、貫通細孔を介してそれらの間に流体連通を提供してもよい。さらに、フローチャネル210及び212の入口は、それぞれ培養培地リザーバ202及び204の保持部材240の出口218、222及び下縁部242の真下に継ぎ目なく配置されて、それぞれリザーバ202及び204とフローチャネル210及び212との間に閉じた流体連通を提供してもよい。第1の層及び第2の層のそれぞれは、室温硬化型(RTV)シリコーン(例えば、RTV615)又はポリジメチルシロキサン(PDMS)から作製されてもよいことに留意されたい。さらに、これらの層は、接着剤又はプラズマ結合を使用することによって互いに結合されてもよい。このように構成される細胞培養モジュール106は、装置100の細胞培養プレート102を実装するために、同じ接着剤又はプラズマ結合を使用することによって互いに結合されてもよい。
【0095】
第2の実施形態によれば、細胞培養モジュール106は、第1の培養培地リザーバ202と、第2の培養培地リザーバ204と、第1の(上側又は上部)チャンバ206と、第2の(下側又は下部)チャンバ208と、第1のフローチャネル210と、第2のフローチャネル212と、膜214と、空洞224とを含んでもよい。第1の培養培地リザーバ202は、培養培地のための入口216を有する上部と、培養培地のための出口218を有する下部とを有してもよい。同様に、第2の培養培地リザーバ204は、培養培地のための入口220を有する上部と、培養培地のための出口222を有する下部とを有してもよい。概して、第1の培養培地リザーバ202、第2の培養培地リザーバ204、第2のチャンバ208、第1のフローチャネル210、第2のフローチャネル12、膜214、空洞224、及び保持部材240は、図2A及び図2Bに示されるものと同じ又は同様の様式で実装されてもよい。しかしながら、第1のチャンバ206は、湾曲した又は角度付きの底面を有する中空管として実装されてもよい。第1のチャンバ206の湾曲した又は角度付きの底面は、それぞれが1つ以上の穴を備える9つの空洞を含んでもよく、そのとき、第1のチャンバ206及び第2のチャンバ208は、膜214の貫通細孔を介して流体連通する。例えば、1つの穴を有する1つの空洞があってもよい。一般に、空洞(1つ又は複数個)の構成は、特定の用途(例えば、多数のオルガノイド及び/又はスフェロイドが膜214の上側面に形成される予定である)に依存する。例示的な実施形態によれば、第1のチャンバ206の湾曲した又は角度付きの底面は、空洞の穴が開いたままであるように、外側から細胞接着増強層でコーティングされる。細胞接着増強層は、細胞培養モジュール106の第1の実施形態に関して上述したものと同じであってもよい。
【0096】
図1の例に戻って参照すると、流動駆動ユニット104は、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106において、第1の培地リザーバ202と第2の培地リザーバ204との間で培養培地を流すように構成されている。1つの実施形態では、流動駆動ユニット104は、細胞培養プレート102を周期的に揺動させ、これにより培養培地の流れを提供するように構成された揺動プラットフォームであってもよい。別の実施形態では、流動駆動ユニット104は、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1及び第2の培地リザーバ202及び204のそれぞれの入口に圧縮ガス又は加圧空気を供給し、これにより、その中に培養培地の流れを引き起こすように構成された空気圧ポンプであってもよい。さらに別の実施形態では、流動駆動ユニット104は、規則的な時間間隔で、又は各リザーバ内の培養培地のレベルに基づいて、第1の培養培地リザーバ202から第2の培養培地リザーバ204に、又はその逆に、培養培地をピペッティングすることによって、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内に培養培地の流れを引き起こすように構成されてもよい。ピペッティングは、液体ハンドリングシステム602を用いて行われてもよい。従って、現行のマイクロ流体細胞培養デバイスとは異なり、装置100は、上記に示される少なくとも3つの異なる流動制御方法に適合してもよい。
【0097】
1つの実施形態では、装置100は、様々な電極をさらに含んでもよい。これらの電極は、異なる目的を果たしてもよく、装置100内のそれらの配置は、それらがどの目的のために使用されるかに依存する。1つの実施形態では、細胞培養プレート102の1つ以上の細胞培養モジュールは、第1のチャンバ206内に配置された第1の電極と、第2のチャンバ208内に配置された第2の電極とを含んでもよい。別の実施形態では、第1の電極は、1つ以上の培養モジュール106内の第1の培養培地リザーバ202及び/又は第2の培養培地リザーバ204内に配置されてもよく、第2の電極は、細胞培養モジュール106の第1のチャンバ206内に配置されてもよい。第1及び第2の電極を有するこれらの実施形態の両方は、例えば、リアルタイム経上皮/経内皮電気抵抗(TEER)測定を行うために使用されてもよい。この場合、第1及び第2の電極は、外部の制御ユニットに接続されてもよい。
【0098】
追加的又は代替的に、装置100はさらに、1つ以上の細胞培養モジュール106の第1のチャンバ206の中に配置された2つ以上の第3の電極を含んでもよい。これらの第3の電極は、第1のチャンバ206内の液面レベルを測定するためにチャンバ壁に配置されてもよい。この場合、第3の電極は、電気伝導率測定を行うことによって液面レベルを決定するために流体/培養培地と直接接触してもよく、又は第3の電極における誘導的又は容量的な変化を測定することによって液面レベルを決定するためにチャンバ壁に(例えば、互いから0.5mm~2mmの距離に)埋め込まれてもよい。同時に、2つの第3の電極は、2つの第3の電極の一方が超音波を発するために使用され、2つの第3の電極の他方が、第1のチャンバ206の内部を通過した超音波を受信するために使用されるように、互いに対向して配置されてもよい(これらの超音波測定は、レーダー測定とまったく同様に実行されてもよい)。
【0099】
追加的又は代替的に、装置100はさらに、1つ以上の細胞培養モジュール106の膜214に埋め込まれた2つ以上の第4の電極を含んでもよい。これらの第4の電極は、膜の上側面及び/又は下側面に堆積された細胞に異なる刺激信号を提供するために使用されてもよい。
【0100】
1つの実施形態では、細胞培養プレート102の1つ以上の細胞培養モジュール106の第1のチャンバ206又は第2のチャンバ208はさらに、酸素センサ、pHセンサ、COセンサ、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。これらのセンサは、細胞挙動に重要な異なるパラメータのリアルタイム測定を可能にするために使用されてもよい。
【0101】
図3は、1つの例示的な実施形態に係る細胞培養インキュベータ600のブロック図を示す。細胞培養インキュベータ600は、細胞培養装置100と、装置100に連結された液体ハンドリングシステム602とを含んでもよい。より具体的には、液体ハンドリングシステム602は、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204のそれぞれに、並びに/又は上記少なくとも2つの培養培地リザーバの各出口に培養培地を供給するように構成されてもよい。保持部材240は、少なくとも2つの培養培地リザーバ202、204の出口218、222を含んでもよく、液体ハンドリングシステム602の少なくとも一部分、例えばピペッティング装置のチップ(先端)が取り付けられてもよい。
【0102】
液体ハンドリングシステム602は、上記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれに、及び/又はその少なくとも2つの培養培地リザーバの各出口に培養培地を供給するために使用されてもよい。液体ハンドリングシステム602は、規則的な時間間隔で、又は少なくとも2つの培養培地リザーバ102、104のそれぞれにおける培養培地のレベルに基づいて、少なくとも2つの培養培地リザーバ102、104のうちの1つから少なくとも2つの培養培地リザーバ102、104のうちの別のものに培養培地をピペッティングするための流動駆動ユニット104において使用されてもよい。
【0103】
例示的な実施形態によれば、液体ハンドリングシステム602の種類は、固定又は使い捨てチップ(先端)を伴う、デジタル式及び電子式の両方のピペッティングデバイス、ピペット及びマイクロピペット、マイクロプレート又はマイクロタイタープレート用ディスペンサー、スタッカー、ハンドラー、及びワッシャー、並びに多種多様な自動ロボットシステムを含む。液体ハンドリングシステム602は、当該技術分野において周知であるため、ここではその説明を省略する。
【0104】
図4は、第1の例示的な実施形態に係る細胞培養装置100を使用することによる細胞培養方法700のフローチャートを示す。方法700は、例えば、液体ハンドリングシステム602、例えば、ピペッティングステーションによって、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1及び第2の培養培地リザーバ202及び204のうちの少なくとも1つに、並びに/又はその少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの少なくとも1つの出口に、必要とされる培養培地が提供される、操作S702から開始してもよい。培養培地が第1の培養培地リザーバ202及び/又は第1の培養培地リザーバ202の出口に提供されてもよいと仮定する。次いで、方法700は、流動駆動ユニット104が、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内で第1の培地リザーバ202から第2の培地リザーバ204に培養培地を所定の時間にわたって流してもよい、操作S704に進む。この所定の時間は、培養培地(すなわち、そこで使用される細胞の種類)に基づいて選択されてもよい。特に、膜214の下側面への細胞堆積は、流量が重力よりも大きく、連続流が少なくとも30分、好ましくは60分続く場合に達成されてもよい。
【0105】
1つの実施形態では、方法700は、操作S704中に、異なる培養培地が、例えば、液体ハンドリングシステム602によって、細胞培養プレート102の1つ以上の細胞培養モジュール106内で第1のチャンバ206を介して膜214に向かって供給されてもよい、追加の操作を含んでもよい。第1のチャンバ206が使用される場合、細胞単層は、膜214の上側面に形成されてもよく、この細胞単層は、膜214の貫通細孔を介して、膜214の下側面に形成される細胞層と相互作用してもよい。第1のチャンバ206が使用される場合、複数の微小空洞が膜214に結合されてもよく、このため、異なる培養培地からの細胞が捕捉されて、各空洞内に単一のオルガノイドが形成されてもよい。この場合、フローチャネル210及び212は、膜214を通して培養培地を灌流して、オルガノイドを生存させ続けてもよい。
【0106】
1つの実施形態では、方法700の操作S704は、所定の時間(例えば、60分)にわたって、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1及び第2の培養培地リザーバ210及び212に陽圧を印加することによって行われてもよい。別の実施形態では、方法700の操作S704は、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第2の培養培地リザーバ204を閉じながら、所定の時間(例えば、60分)にわたって、第1の2つの培養培地リザーバ202に陽圧を印加することによって、又はこの逆によって、行われてもよい。さらに別の実施形態では、方法700の操作S704は、(i)細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第2の培養培地リザーバ204を閉じながら、所定の時間間隔にわたって、第1の培養培地リザーバ202に第1の陽圧を印加すること、及び(ii)細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1の培養培地リザーバ202を閉じながら、所定の時間間隔にわたって、第2の培養培地リザーバ204に第2の陽圧を印加すること、によって実行されてもよい。操作S704の上記の実施形態のそれぞれの選択は、特定の用途に依存する。
【0107】
例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入速度を最適化することによって、培地の出口218、222からフローチャネル210、212への培養培地の供給を制御することを含み、培養培地の出口からフローチャネル210、212への培養培地の最適注入速度は、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい。これは、最大生細胞流量>最適注入速度>細胞沈降速度を意味する。注入速度は、フローチャネル210、212に注入される細胞懸濁液の速度である。最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度である。細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ206、208、リザーバ202、204、フローチャネル210、212、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である。液体ハンドリングシステムは、注入速度及び/又は注入時間を最適化するために使用されてもよい。最適化された注入速度は、最適化された細胞充填及び流動機構を提供し、細胞を膜領域に付着させるように誘導することを可能にしてもよい。注入速度が高すぎると細胞が損傷する可能性があり、注入速度が低すぎると細胞がフローチャネル及び/又はチャネルに沿って沈降する可能性がある。
【0108】
別の例示的な実施形態によれば、工程(a)は、注入時間を最適化することを含み、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることによって計算される。
【0109】
図5は、第2の例示的な実施形態に係る細胞培養装置100を使用することによる細胞培養方法800のフローチャートを示す。方法800は、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内の第1の培養培地リザーバ202及び第2の培養培地リザーバ204の一方又はそれぞれに、及び/又は上記少なくとも2つの培養培地リザーバ202、204の少なくとも1つの出口218、222に、必要とされる培養培地が提供されてもよい操作S802から開始する。次いで、方法800は、流動駆動ユニット104が、細胞培養プレート102の各細胞培養モジュール106内で第1の培養培地リザーバ202及び/又は第2の培養培地リザーバ204から第2のチャンバ208に培養培地を流してもよい、操作S804に進む。その後、方法800は、細胞培養プレート102が反転位置に置かれてもよい操作S806に進む。次に、方法800は、細胞培養プレート102が、所定の時間にわたって反転位置でインキュベートされてもよい、操作S808に進む。この所定の時間は、ここでも培養培地に基づいて選択されてもよい。
【0110】
例示的な実施形態によれば、方法700と同様に、方法800において、工程(a)は、注入速度を最適化することによって、培地の出口218、222からフローチャネル210、212への培地の供給を制御することを含み、培養培地の出口218、222からフローチャネル210、212への培養培地の最適注入速度は、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい。これは、最大生細胞流量>最適注入速度>細胞沈降速度を意味する。注入速度は、フローチャネル210、212に注入される細胞懸濁液の速度である。最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度である。細胞沈降速度は、培養培地中の細胞がチャンバ206、208、リザーバ202、204、フローチャネル210、212、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である。
【0111】
別の例示的な実施形態によれば、方法700と同様に、方法800において、工程(a)は、注入時間を最適化することを含み、最適注入時間は、培養培地の量を注入速度で割ることにより計算される。上記液体ハンドリングシステムは、注入速度及び/又は注入時間を最適化するために使用されてもよい。
【0112】
1つの実施形態では、方法700と同様に、方法800は、操作S804中に、異なる培養培地が、例えば、液体ハンドリングシステム602によって、細胞培養プレート102の1つ以上の細胞培養モジュール106内で、第1のチャンバ206を介して膜214に向かって供給される追加の操作をさらに含む。第1のチャンバ206が使用される場合、細胞単層は、膜214の上側面に形成されてもよい。第1のチャンバ206が使用される場合、単一のオルガノイドが、第1のチャンバの各空洞に形成される。培養培地は、フローチャネル210及び212を通して灌流されてもよく、ヒト脳血管内皮細胞を含んでもよく、これに対して、第1のチャンバ206に供給される異なる培養培地は、ヒト星状細胞を含んでもよい。これらの種類の細胞を使用することにより、人工血液脳関門(BBB)を模倣することが可能である。
【0113】
当該方法のさらなる特徴は、例えば、添付の特許請求の範囲及び本明細書全体に記載されるような細胞培養装置100及び細胞培養インキュベータ600の機能性及びパラメータから直接生じ、従って、ここでは繰り返さない。様々な例示的な実施形態に関連して説明したように、当該方法の異なる変形形態も適用されてもよい。
【0114】
細胞培養装置は、本明細書に記載される方法の任意の態様を実施するか、又はその実施を引き起こすように構成されてもよい。
【実施例0115】
実験結果
図2A及び図2Bに示されるもののような細胞培養モジュールを含む装置100を方法800に従って使用して、マウス星状細胞及びヒト脳内皮細胞に基づくBBBモデルを得た。各BBBモデルは、以下により詳細に記載する2段階で得た。
【0116】
I. 装置100を準備する段階
材料
【0117】
【表1】
【0118】
準備する段階は以下のように行った。
1. 乾燥装置100を血漿で60秒間処理した。
2. 装置100を96%エタノールで洗浄した。50μLの96%エタノールを各上部開放(第1の)チャンバ206に添加した。
3. フローチャネル210、212及び第1チャンバ206内のエタノールを50μLのPBSで2回置換/洗浄した。
4. 50μLのI型コラーゲンコーティング溶液をフローチャネル210、212に注入した。
5. 50μLのI型コラーゲンコーティング溶液を、装置100の各第1のチャンバ206に添加した。
6. 各培養培地リザーバを50μLのPBSで満たし、閉じ、37℃、5%COで1時間、揺動プラットフォーム(15分当たり1サイクル)上でインキュベートした。
7. インキュベーション後、装置100のフローチャネル210、212及び各第1のチャンバ206内のコーティング溶液をPBSに交換した。
【0119】
II. BBBモデルを得る段階
材料
【0120】
【表2】
【0121】
マウス細胞(すなわち、MA細胞及びMPBMEC)に基づくBBBモデルを以下のように得た。
1. 4800μLの2×10細胞/mLのMA細胞を従来の細胞培養プロトコルに従って調製した。
2. このMA細胞を氷上に置いた。
3. MA細胞充填は、以下によって行った。
a. 第1のチャンバ206からすべてのPBSを除去し、
b. フローチャネル210、212内のPBSを100μLの内皮細胞培地に交換し、
c. 50μLの2×10細胞/mLのMA細胞懸濁液を第1のチャンバ206にピペッティングし、
d. 装置100を37℃、5%COで1時間インキュベートし(静的であり、揺動プラットフォーム上ではない)、
e. 10分毎に膜214が乾燥しないことをチェックする(必要であれば、新鮮な培養培地を第1のチャンバ206に添加して、膜214を湿った状態に保ってもよい)。
4. 4800μLの2×10細胞/mLのMPBMECを、従来の細胞培養プロトコルに従って調製した。
5. このMPBMECを再び氷上に置いた。
6. 50μLの2×10細胞/mLのMPBMEC懸濁液をプレート102のフローチャネル210、212に注入することにより、細胞培養培地(工程3eで装置に添加した)を交換した。
7. プレート102を手動で数回揺動させて、細胞コンフルエンシーが確実に一貫するようにした。
8. プレート102を反転させ、37℃、5%COで1時間インキュベートした(静的であり、揺動プラットフォーム上ではない)。
9. 100μLのMPBMECをプレート102の各フローチャネルの片側の培養培地リザーバに添加した。
10. 15μLのMPBMECを、プレート102の各フローチャネルの片側の細胞培養リザーバに添加した。
11. プレート102を37℃、5%COで揺動プラットフォーム上に置いた。
【0122】
ヒト細胞(すなわち、HA細胞及びHPBMEC)に基づくBBBモデルは、同じ様式で得てもよい(上記の操作1~11において、「MA」及び「MPBMEC」をそれぞれ「HA」及び「HPBMEC」で置き換えるだけでよい)。
【0123】
こうして、MAを第1のチャンバ206に導入し、膜214の上側面で単層に成長させ、MPBMECを第2のチャンバ208を通して灌流し、膜214の下側に堆積させた。
【0124】
続いて、細胞を、CD31、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、アクチン及びDAPI(細胞核を示すDNAに結合する小分子である)に対する抗体で免疫組織化学的に処理した。
【0125】
図6A及び図6Bは、方法800に従って装置100を使用することによるBBBモデルの共焦点画像を示す。より具体的には、図6Aは、MPBMECが培養された膜214の下側面を示す。接着結合マーカーCD31(MPBMECの細胞型特異的マーカーとして使用した)及びアクチンの発現は、強固な発現を示し、無傷の細胞結合を示した。図6Bは、MAが培養された膜の上側面を(第1のチャンバ206の側から)示す。図6Bは、GFAP(マウス脳星状細胞の細胞型特異的マーカーとして使用した)及びアクチンの発現を示す。
【0126】
本開示の例示的な実施形態が本明細書に記載されているが、添付の特許請求の範囲によって定められる法的保護の範囲から逸脱しない範囲で、本開示の実施形態において任意の様々な変更及び改変を行うことができることに留意されたい。添付の特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は、他の要素、工程又は操作を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養装置であって、
互いに隣接して配置された複数の細胞培養モジュールであって、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールは、
・それぞれ上部及び下部を有する少なくとも2つの培養培地リザーバであって、前記上部は培養培地のための入口を有し、前記下部は前記培養培地のための出口を有する少なくとも2つの培養培地リザーバ、
・第1のチャンバであって、前記第1のチャンバ及び前記少なくとも2つの培養培地リザーバが第1の方向に互いに整列するように、前記少なくとも2つの培養培地リザーバの間に配置された第1のチャンバ、
・前記第1のチャンバの下に配置され、第2の方向に前記第1のチャンバと整列している第2のチャンバであって、前記第2の方向は前記第1の方向に垂直であり、前記第2のチャンバは、少なくとも2つの横穴を有する下部を有し、前記第2のチャンバの前記下部は、前記少なくとも2つの培養培地リザーバのそれぞれの前記下部より高く配置される第2のチャンバ、
・中に形成された貫通細孔を有する膜であって、前記膜は、前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが前記貫通細孔を介して互いに流体連通するように、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に配置される膜、並びに
・前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つの前記下部の前記出口を前記第2のチャンバの前記下部の前記少なくとも2つの横穴のうちの1つにそれぞれ接続する少なくとも2つのフローチャネル
を含む複数の細胞培養モジュールと、
流動駆動ユニットであって、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールにおいて、前記少なくとも2つのフローチャネルを介した前記少なくとも2つの培養培地リザーバと前記第2のチャンバとの間で前記培養培地を流すように構成された流動駆動ユニットと
を含み、前記少なくとも2つの培養培地リザーバの前記下部は、液体ハンドリングシステムと適合するように構成された保持部材を含む装置。
【請求項2】
前記保持部材が円錐台形状を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記培養培地リザーバの下部が前記保持部材として連続し、前記保持部材の上縁部が、前記培養培地のための前記出口を含み、前記培養培地のための前記出口が、前記液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成されている請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記保持部材が、前記培養培地リザーバの下部に下縁部を有し、前記保持部材の前記下縁部がより大きい直径を有し、前記保持部材の前記上縁部がより小さい直径を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記保持部材の側面が、対応する培養培地リザーバの下部から始まって、前記第1の方向に対して第2の傾斜角で延在する請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記培養培地のための前記出口が、前記液体ハンドリングシステムの少なくとも一部を受け入れるように構成され、前記培養培地が、前記出口を通って前記フローチャネルに向けられるように構成されている請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの培養培地リザーバが、前記保持部材と前記培養培地リザーバの下部との間にオーバーフロー空洞を含む請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記培養培地が、前記出口から前記フローチャネルに注入されるように構成され、前記培養培地のための前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の注入速度が、最大生細胞流量より小さく、かつ細胞沈降速度より大きく、
前記注入速度は、前記フローチャネルに注入される細胞懸濁液の速度であり、
前記最大生細胞流量は、細胞懸濁液又は培養培地の流れの最大速度であって、それを超えると細胞が損傷を受けるか又は死滅することになる速度であり、
前記細胞沈降速度は、前記培養培地中の細胞が前記チャンバ、リザーバ、フローチャネル、及び/又は培養培地の下部に沈降する速度である
請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項9】
最適注入時間が、前記培養培地の量を前記注入速度で割ることにより計算されるように構成されている請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の細胞培養モジュールの少なくとも1つの細胞培養モジュール内の少なくとも1つのフローチャネル、少なくとも1つの培養培地リザーバ、第1の及び/又は 第2のチャンバのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、内側から細胞忌避層でコーティングされている請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項11】
前記細胞忌避層が、以下の材料、テフロン(登録商標)、Pluronic、PEG、又は類似の鎖状ポリマーのうちの少なくとも1つから作製されている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュールが、少なくとも前記第2のチャンバの前記下部の下に空洞を含む請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれが、少なくとも部分的に、前記第1の方向に対してある傾斜角で延在し、前記第2のチャンバの前記下部及び前記少なくとも2つのフローチャネルのそれぞれの少なくとも一部が前記空洞を形成する請求項12に記載の装置。
【請求項14】
細胞培養インキュベータであって、
請求項1又は請求項2に記載の細胞培養装置と、
前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を供給するように構成された液体ハンドリングシステムと
を含む細胞培養インキュベータ。
【請求項15】
請求項1又は請求項2に記載の細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法であって、
(a)前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの少なくとも1つに、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を提供する工程と、
(b)前記流動駆動ユニットによって、前記培養培地を、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの1つから前記少なくとも2つの培養培地リザーバのうちの残りに所定の時間にわたって流す工程であって、前記所定の時間は前記培養培地に基づいて選択される工程と
を含む方法。
【請求項16】
工程(a)が、注入速度を最適化することにより、前記培養培地の前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の供給を制御することを含み、前記培養培地の前記出口から前記フローチャネルへの前記培養培地の最適注入速度が、最大生細胞流量よりも小さく、細胞沈降速度よりも大きい請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)が、注入時間を最適化することを含み、最適注入時間が、前記培養培地の量を前記注入速度で割ることにより計算される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1又は請求項2に記載の細胞培養装置を使用することによる細胞培養方法であって、
(a)前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内の前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの1つ以上に、及び/又は前記少なくとも2つの培養培地リザーバの少なくとも1つの出口に前記培養培地を提供する工程と、
(b)前記流動駆動ユニットによって、前記培養培地を、前記複数の細胞培養モジュールの各細胞培養モジュール内で前記少なくとも2つの培地リザーバのうちの前記1つ以上から前記第2のチャンバに流す工程と、
(c)前記細胞培養装置を反転位置に置く工程と、
(d)前記細胞培養装置を前記反転位置で所定の時間にわたってインキュベートする工程であって、前記所定の時間は前記培養培地に基づいて選択される工程と
を含む方法。
【外国語明細書】