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特開2023-41055ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041055
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20230315BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230315BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20230315BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20230315BHJP
   C08K 11/00 20060101ALI20230315BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/10
C08K7/18
C08K5/101
C08K11/00
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144546
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120938
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121050
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
4F071AB26
4F071AC10
4F071AE09
4F071AF20
4F071AF21Y
4F071AF31Y
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4F071AH19
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4J043ZB23
4J043ZB44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無色透明な光学的物性が低下せず、かつ、光学ムラがなく、視認性などに優れ、耐熱性および機械的特性に優れたポリアミドイミドフィルム形成用組成物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造単位を含むジアミンから誘導された構造単位、特定の構造単位を含む二無水物から誘導された構造単位、および特定の構造単位を含む二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、およびブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上の添加剤を含み、前記無機ナノ粒子は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%含まれ、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、2重量%~10重量%含まれるポリアミドイミドフィルム形成用組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、
添加剤と、を含み、
前記添加剤は、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、およびブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上を含み、
前記無機ナノ粒子は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%で含まれ、
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%で含まれ、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上から誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
【請求項2】
前記無機ナノ粒子は、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子の平均直径は5nm~50nmである、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項4】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記ブルー系の顔料または染料の最大吸収波長は520nm~650nmである、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記顔料は、天然鉱物、または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属またはこれらの金属酸化物を含む無機顔料である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項8】
下記式1を満たす、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
[式1]
5,000≦VPAI≦40,000
前記式1中、
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分含量が14重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【請求項9】
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位が前記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つのみから誘導された構造単位を含む場合、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として5モル%~50モル%で含まれる、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項10】
前記二酸二塩化物から誘導された構造単位が前記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含む場合、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位および前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位の全体100モル%を基準として、50モル%超過90モル%未満の量で含まれる、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項11】
前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比が5:95~95:5である、請求項1に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項12】
ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物を準備するステップと、
ブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上を含む反応媒質に、前記ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物、および二無水物を加えて反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップと、
前記ポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%の無機ナノ粒子、およびポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%の多官能性(メタ)アクリル系化合物を投入するステップと、
を含み、
前記ジアミンは、下記化学式1で表される化合物を含み、前記二無水物は、下記化学式2で表される化合物を含み、前記二酸二塩化物は、下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上を含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[化学式1]
【化5】
[化学式2]
【化6】
[化学式3]
【化7】
[化学式4]
【化8】
【請求項13】
前記ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物を準備するステップは、前記化学式1で表される化合物を含むジアミンおよび溶媒を混合してジアミン溶液を製造した後、前記ジアミン溶液に前記化学式3で表される化合物および前記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上を含む二酸二塩化物を加えて反応させるステップを含む、請求項12に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項14】
ポリアミック酸溶液を製造するステップ以後に、下記式1を満たすように有機溶媒を投入して粘度を調節するステップをさらに含む、請求項12に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[式1]
5,000≦VPAI≦40,000
前記式1中、
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分含量が14重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を硬化して得たポリアミドイミドフィルム。
【請求項16】
前記ポリアミドイミドフィルムは、破断伸びが10%以上であり、550nmの波長における厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が950nm以下である、請求項15に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項17】
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが20μm~500μmであり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下である、請求項15に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルムと、
前記ポリアミドイミドフィルム上に位置するコーティング層と、
を含む、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項19】
前記コーティング層は、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせである、請求項18に記載のディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項20】
請求項15~17のいずれか一項に記載のポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物、その製造方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミドフィルムは、ディスプレイ装置の基板およびカバーウィンドウなどの素材として強化ガラスを代替できる次世代素材として注目されている。しかし、ポリアミドイミドフィルムをディスプレイ装置に適用するためには、固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を付与することが必須である。さらに、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能にするためには、機械的な物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリアミドイミドフィルムの要求性能は次第に高度化している。
【0003】
このために、多様な構造の単量体を組み合わせるか変更してCTC効果を減少させるための研究が続いているが、依然として残留黄色が現れ、フィルムの厚さが厚くなるほど黄色度が増加するという限界がある。また、ポリアミドイミドフィルムに添加剤を添加する方案が提示されたことがあるが、製造工程上の問題により接近が難しい点があり、透明性を確保する代わりにポリアミドイミド固有の優れた機械的物性が低下することを解決するには限界がある。
【0004】
そこで、ディスプレイ装置の基板はいうまでもなく、カバーウィンドウ代替素材を含む多様なディスプレイ素材分野に適用できるように、透明性および機械的特性を同時に満たすことで、卓越した光学的物性を有しながらも固有の優れた機械的物性が低下しないようにすることにより、適用範囲をさらに広げられるようにするポリアミドイミドフィルムに対する技術開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2020-0083797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、無色透明な光学的物性が低下せず、かつ、光学ムラがなく、視認性などに優れ、耐熱性および機械的特性に優れたポリアミドイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0007】
他の一実施形態は、無色透明な光学的物性が低下せず、かつ、光学ムラがなく、視認性などに優れ、耐熱性および機械的特性に優れたポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0008】
また他の一実施形態は、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を硬化して得たポリアミドイミドフィルムおよびそれを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウまたはディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、
添加剤と、を含み、
前記添加剤は、無機ナノ粒子と、多官能性(メタ)アクリル系化合物と、ブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上と、を含み、この際、前記無機ナノ粒子は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%で含まれてもよく、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%で含まれてもよく、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位および下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位のうちいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0010】
[化学式1]
【化1】
【0011】
[化学式2]
【化2】
【0012】
[化学式3]
【化3】
【0013】
[化学式4]
【化4】
【0014】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物を準備するステップと、
ブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上を含む反応媒質に、前記ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物、および二無水物を加えて反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップと、
前記ポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%の無機ナノ粒子、およびポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%の多官能性(メタ)アクリル系化合物を投入するステップと、を含んでもよく、
前記ジアミンは、下記化学式1で表される化合物を含み、前記二無水物は、下記化学式2で表される化合物を含み、前記二酸二塩化物は、下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0015】
[化学式1]
【化5】
【0016】
[化学式2]
【化6】
【0017】
[化学式3]
【化7】
【0018】
[化学式4]
【化8】
【0019】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を硬化して得たものであってもよい。
【0020】
一実施形態に係るディスプレイ装置用カバーウィンドウは、いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルムと、ポリアミドイミドフィルム上に形成されたコーティング層と、を含んでもよい。
【0021】
一実施形態に係るディスプレイ装置は、いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物およびそれを用いて製造したポリアミドイミドフィルムは、強化ガラスと類似レベルの機械的強度を有する厚さ範囲においても無色透明な光学的物性を実現することができる。また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物およびそれを用いて製造したポリアミドイミドフィルムは、卓越した光学特性により、表示品質および視認性が顕著に向上するだけでなく、柔軟性および機械的物性も優れるため、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置などの光学用途として有用に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、一実施形態について本明細書に記載された技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。ただし、一実施形態は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものでもない。
【0024】
また、本明細書に記載された技術用語および科学用語は、他の定義がなければ、本明細書に記載された技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有してもよい。
【0025】
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0026】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0027】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、同種重合体および共重合体を含んでもよい。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0028】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリアミドイミド」は、アミドモイエティおよびイミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0029】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリアミドイミドフィルムは、ポリアミドイミドを含むフィルムであってもよく、具体的に、ジアミン化合物溶液に二無水物化合物と二酸二塩化物を溶液重合してポリアミック酸を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化することで製造される高耐熱性フィルムであってもよい。
【0030】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0031】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」または「アクリル」をいずれも含む意味として用いられてもよい。
【0032】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体」は、(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物が互いに架橋されて形成された架橋重合体を意味し得、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、(メタ)アクリル基、例えば、(メタ)アクリレート基を含んでも含まなくてもよい。
【0033】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を説明する。
ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に応用するためには、ポリイミドフィルム固有の黄色度を改善し、無色透明な性能を付与することが非常に重要である。それを解決するために、多様な構造の単量体の組み合わせによりCTC効果を低くし、無色透明なポリイミドを製造する研究が続いてきた。しかし、前記方法により製造された透明ポリイミドフィルムは、依然として残留黄色が現れ得、フィルムの厚さが厚くなるほど黄色度が増加するという限界があった。
【0034】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを形成するための組成物(以下、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物とも称する)は、ジアミンから誘導された構造単位、二無水物から誘導された構造単位、および二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む、ポリアミック酸またはポリアミドイミドと、添加剤と、を含むことで、強化ガラスと類似レベルの機械的強度を有する厚さ範囲においても無色透明な光学的物性を実現することができる。
【0035】
この際、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上から誘導された構造単位を含んでもよい。また、前記添加剤は、無機ナノ粒子、多官能性(メタ)アクリル系化合物、およびブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0036】
[化学式1]
【化9】
【0037】
[化学式2]
【化10】
【0038】
[化学式3]
【化11】
【0039】
[化学式4]
【化12】
【0040】
前記無機ナノ粒子は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%で含まれてもよい。前記無機ナノ粒子の重量%は、必ずしも前記範囲に限定されるものではなく、例えば、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、15重量%~40重量%、20重量%~40重量%、または25重量%~40重量%で含まれてもよい。無機ナノ粒子を前記含量で投入することで、さらに透明でありながらも低い厚さ方向位相差を有し、優れた機械的物性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することができる。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを意味し得る。
【0041】
前記無機ナノ粒子は、例えば、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、チタン酸バリウム、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0042】
前記無機ナノ粒子の平均直径は、必ずしも特定の範囲に限定されるものではないが、5nm~50nmであってもよく、または、例えば、5nm~30nm、または5nm~20nmであってもよい。
【0043】
前記無機ナノ粒子は、有機溶媒に分散した形態で前記ポリアミドイミド樹脂と混合されてもよく、分散性を向上させるために表面処理された物質であってもよい。
【0044】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%で含まれてもよい。前記多官能性(メタ)アクリル系化合物の重量%は、必ずしも前記範囲に限定されるものではなく、例えば、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%、3重量%~10重量%、4重量%~10重量%、または5重量%~10重量%で含まれてもよい。多官能性(メタ)アクリル系化合物を前記含量で投入することで、さらに透明でありながらも低い厚さ方向位相差を有し、優れた機械的物性を有するポリアミドイミドフィルムを提供することができる。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを意味し得る。
【0045】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物であり、前記(メタ)アクリル基は、例えば、(メタ)アクリレート基であってもよい。前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
または、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0047】
一実施形態に係る前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、その後に加熱などの手段を介して多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体を形成してもよく、前記架橋重合体は、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物の全部または一部が架橋されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物に分散して複合体(composite)を形成してもよい。ただし、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリアミドイミド重合体相互間の結合は化学的結合を含まなくてもよく、例えば、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体およびポリアミドイミド重合体は互いに共有結合しなくてもよい。
【0048】
前記ブルー系の顔料または染料の最大吸収波長は、黄色系の波長範囲を含む範囲であれば特に制限されないが、例えば、520nm~650nm、550nm~650nm、または550nm~620nmであってもよい。上述した範囲の最大吸収波長を有する顔料または染料を用いることで、上述した構造単位を含むポリアミック酸またはポリアミドイミドから製造されたポリアミドイミドフィルムの青色または紫色波長の光吸収現象を効果的に相殺させ、黄色度をさらに効果的に改善することができる。さらに、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造に用いられる単量体の種類および組成、またはポリアミドイミドフィルムの光学的物性に応じて無機顔料の最大吸収波長範囲を適宜選択することで、さらに優れたフィルムの黄色度、屈折率、厚さ方向位相差などの光学的物性も有することができる。
【0049】
前記顔料は、ブルー系の顔料または520nm~650nmの最大吸収波長を有する公知の顔料を特に限定なく用いてもよく、例えば、天然鉱物;または亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、およびアルミニウムから選択される1つ以上の金属またはその金属酸化物;を含む無機顔料であってもよい。前記顔料は、分散剤とともに顔料分散液に含まれて用いられてもよい。
【0050】
前記無機顔料の平均粒度は30nm~100nmであってもよい。または、前記平均粒度は、必ずしも制限されるものではないが、例えば、50nm~100nm、または70nm~100nmであってもよい。前記無機顔料の平均粒度は、例えば、分散液中で測定されるか、またはポリアミドイミドフィルム中で測定されてもよい。また、例えば、前記顔料の分散前の固相の平均粒度は、例えば、10nm~70nmであってもよく、例えば、30nm~70nmであってもよく、または50nm~70nmであってもよい。
【0051】
前記顔料は、分散性を向上させるために超音波などの手段が用いられてもよく、分散剤を用いてもよい。前記分散剤は、顔料間の凝集を防止し、顔料の分散性および分散安定性を向上できるものであれば特に制限されないが、例えば、顔料に吸着する官能基および分散媒(前記有機溶媒)に親和性が高い官能基を有してもよく、前記2つの官能基のバランスを調節して分散剤を決めてもよい。前記分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせて多様な種類が用いられてもよい。例えば、一実施形態に係る顔料分散剤は、酸性官能基を有してもよく、この場合、酸性官能基が顔料に吸着してもよい。前記酸性官能基は、例えば、カルボン酸(carboxylic acid)であってもよい。
【0052】
前記染料は、ブルー系の染料または520nm~650nmの最大吸収波長を有する公知の染料を特に限定なく用いてもよく、例えば、酸性染料、直接染料、媒染染料などが挙げられる。または、カラーインデックス(The society of Dyers and Colourists出版)においてピグメント以外に色を有するものと分類されている化合物や、染色ノート(色染社)に記載されている公知の染料が挙げられる。または、化学構造としては、アゾ系染料、シアニン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、アントラキノン系染料、ナフトキノン系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、アゾメチン系染料、スクアリリウム系染料、アクリジン系染料、スチリル系染料、クマリン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、インジゴ系染料などが挙げられる。
【0053】
一実施形態に係る前記顔料は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分を基準として10ppm~1,500ppmであってもよく、または、例えば、100ppm~1,500ppm、または500ppm~1,500ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを意味し得る。
【0054】
一実施形態に係る前記染料は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分を基準として10ppm~500ppmであってもよく、または、例えば、10ppm~300ppm、10ppm~200ppm、50ppm~200ppm、または80ppm~200ppmであってもよい。ここで、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド固形分は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを意味し得る。
【0055】
一実施形態において、前記添加剤は、ポリアミドイミドフィルムまたはポリイミドフィルムを形成するための組成物に添加する通常の添加剤をさらに含んでもよく、例えば、難燃剤、接着力向上剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、または可塑剤をさらに含んでもよい。
【0056】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、下記式1を満たしてもよい。特定の理論に拘るものではないが、このような条件を満たすポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、フィルムの形成時に薄膜工程への適用が有利であり、硬化時にポリアミドイミドフィルムのパッキング密度を阻害し、無定形(amorphous)にして光学的物性が向上するものであってもよい。
【0057】
[式1]
5,000≦VPAI≦40,000
【0058】
前記式1中、
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分含量が14重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。前記粘度(VPAI)は、例えば、5,000cp~30,000cp、5,000cp~25,000cp、5,000cp~20,000cp、5,000cp~15,000cpであってもよい。これにより、高含量の固形分を含むポリアミドイミドフィルム形成用組成物を薄膜工程にさらに容易に適用することができ、無色透明な性能、光学的物性、および耐熱性にさらに優れたポリアミドイミドフィルムを提供することができる。この際、前記固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドであってもよい。
【0059】
前記ポリアミドイミドフィルムは、前記化学式1および化学式2、そして化学式3および化学式4のうちいずれか1つ以上の化合物から誘導された構造単位を含むことで、リジッドな構造からなるポリアミドイミド重合体を含むポリアミドイミドフィルムに比べて光の歪み現象がさらに改善されることができる。例えば、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムにおいて、前記二無水物から誘導された構造単位は、リジッドな構造単位を含まなくてもよい。例えば、2つの無水物基が1つの環に縮合した二無水物に由来した構造単位を含まなくてもよい。前記環は、単環または縮合環であってもよく、芳香族環、脂肪族環、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記二無水物から誘導された構造単位は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導された構造単位、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0060】
一実施形態において、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として5モル%~50モル%で含まれてもよい。または、例えば、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、5モル%~40モル%、または20モル%~40モル%で含まれてもよい。ここで、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位は、具体的に、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうちいずれか1つ以上の化合物から誘導された構造単位であってもよく、前記ジアミンから誘導された構造単位は、具体的に、化学式1で表される化合物から誘導された構造単位であってもよい。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムは、二酸二塩化物から誘導された構造単位をジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として前記範囲だけ含むことで、さらに透明でありながらも低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0061】
一実施形態において、前記二酸二塩化物から誘導された構造単位が前記化学式3で表される化合物および前記化学式4で表される化合物を全て含む場合、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位および前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位の全体100モル%を基準として、50モル%超過90モル%未満の量で含まれてもよい。または、例えば、55モル%超過90モル%未満、60モル%超過90モル%未満、50モル%超過88モル%以下、または50モル%超過85モル%以下で含まれてもよい。または、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位と前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位のモル比は1.1:1~9:1、1.1:1~8:1、1.1:1~7:1、1.1:1~6:1、1.5:1~8:1、1.5:1~7:1、または1.5:1~6:1であってもよい。ただし、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0062】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物に含まれる前記二無水物から誘導された構造単位と前記二酸二塩化物から誘導された構造単位のモル比は5:95~95:5であってもよく、または、例えば、5:95~80:20、10:90~60:40、5:95~50:50、5:95~40:60、10:90~40:60、5:95~35:65、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよい。具体的に、二無水物から誘導された構造単位が前記化学式3および化学式4のうちいずれか1つから誘導された構造単位を含む場合には95:5~50:50、90:10~50:50、90:10~60:40、95:5~60:40、または80:20~60:40であってもよく、化学式3および化学式4から誘導された構造単位を全て含む場合には5:95~95:5、5:95~80:20、10:90~60:40、5:95~50:50、5:95~40:60、10:90~40:60、または5:95~35:65であってもよい。ただし、必ずしも前記モル比に限定されるものではない。一実施形態に係る前記ポリアミドイミドフィルムは、二無水物から誘導された構造単位と二酸二塩化物から誘導された構造単位を前記モル比で含むことで、さらに透明でありながらも低い厚さ方向位相差を有することができ、高いモジュラス、破断伸びなどの優れた機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0063】
また、前記ジアミンは、必要に応じて、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどから選択される1つまたは2つ以上と混合して用いてもよく、これに制限されない。
【0064】
また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリット酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(4,4’-オキシジフタル酸無水物)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタル酸無水物)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、6FDA(2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリット酸モノエステル無水物)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、NTDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0065】
また、前記二酸二塩化物は、必要に応じて、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NEC(1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0066】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、上記で例示されたジアミン、二無水物、二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂から製造されてもよく、この際、前記ポリアミドイミド樹脂は、10,000g/mol~80,000g/mol、10,000g/mol~70,000g/mol、または10,000g/mol~60,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよいが、これに限定されない。
【0067】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の固形分含量は、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量を基準として40重量%以下、10重量%~40重量%、35重量%以下、30重量%以下、または10重量%~25重量%を満たしてもよい。ここで、固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドであってもよい。
【0068】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法を説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、
ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物を準備するステップと、
ブルー系の顔料および染料のうちいずれか1つ以上を含む反応媒質に、前記ジアミンと二酸二塩化物の反応生成物、および二無水物を加えて反応させ、ポリアミック酸溶液を製造するステップと、
前記ポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として5重量%~40重量%の無機ナノ粒子、およびポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として2重量%~10重量%の多官能性(メタ)アクリル系化合物を投入するステップと、を含んでもよい。
【0069】
前記ジアミンは、下記化学式1で表される化合物を含んでもよく、前記二無水物は、下記化学式2で表される化合物を含んでもよく、前記二酸二塩化物は、下記化学式3で表される化合物および下記化学式4で表される化合物のうちいずれか1つを含んでもよい。
【0070】
[化学式1]
【化13】
【0071】
[化学式2]
【化14】
【0072】
[化学式3]
【化15】
【0073】
[化学式4]
【化16】
【0074】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、前記ジアミンおよび溶媒を混合してジアミン溶液を製造した後、前記ジアミン溶液に二酸二塩化物を加えて反応させるステップを含んでもよい。
【0075】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、ポリアミック酸溶液を製造するステップ以後に、下記式1を満たすように有機溶媒を投入して粘度を調節するステップをさらに含んでもよい。
【0076】
[式1]
5,000≦VPAI≦40,000
【0077】
前記式1中、
PAIは、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の総重量に対して、ポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分含量が14重量%であるときのポリアミドイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計により、25℃で52Zスピンドルを用いてトルク80%、2分を基準として測定された粘度(単位:cp)である。
【0078】
前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、ポリアミック酸溶液を製造するステップは、有機溶媒、極性溶媒、具体的には、アミド系溶媒下で行われてもよい。前記アミド系溶媒は、アミドモイエティを含む化合物を意味し得る。前記アミド系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよく、例えば、脂肪族であってもよい。また、例えば、前記アミド系溶媒は、環式化合物または鎖式化合物であってもよく、具体的には、2~15の炭素数を有してもよく、例えば、3~10の炭素数を有してもよい。前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミドモイエティを含んでもよく、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに縮合して環を形成するか、または前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基が分子内の他の置換基と縮合して環を形成してもよく、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基がアミドモイエティのカルボニル炭素に連結されたアルキル基と縮合して環を形成してもよい。ここで、前記環は4~7員環であってもよく、例えば5~7員環であってもよく、例えば5員または6員環であってもよい。前記アルキル基は、例えばC1-10アルキル基、例えばC1-8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであってもよい。より具体的に、前記アミド系溶媒は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミド重合に一般的に用いられるものであれば制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含んでもよい。
【0079】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、ブルー系の顔料または染料は、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを重合するステップにおいて添加してもよい。具体的には、ジアミンおよび溶媒を反応させてジアミン溶液を製造した後、製造したジアミン溶液に二酸二塩化物を添加して反応させて製造したジアミノオリゴマーを製造し、それをブルー系の顔料または染料を含む反応媒質に添加して溶解させるステップに進行してもよい。一方、染料は、先に添加するか、重合反応が始まる際に添加するか、または重合後に後添加して用いてもよく、添加順に制限はない。一方、顔料の場合、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドの重合が完了した後に顔料を後投入して分散させる場合には、顔料が均一に分散することができず、ポリアミドイミドフィルムの光学物性が低下し得る。これに対し、下記実施例1と同一の組成で実験するが、顔料分散液をポリアミック酸および/またはポリアミドイミドの重合後に投入して実験した結果、顔料が全く分散しないことを確認した。その反面、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを重合するステップにおいて、顔料または染料とポリアミック酸および/またはポリアミドイミド単量体を共に投入する場合、顔料の安定した分散性を確保することができる。すなわち、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドを重合するステップにおいて、染料または顔料と単量体を共に投入することで、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物中での染料または顔料の分散性を顕著に向上させることができ、これにより、硬化後にもフィルムの機械的物性が低下することなく黄色度を改善することができる。
【0080】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造方法において、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物に関して上述した内容を適用することができる。
【0081】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムについて説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を硬化して得たものであってもよい。
【0082】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、20μm以上の厚さにおいても、透明でありがらも低い厚さ方向位相差を実現することができ、視認性をさらに向上させることができるため、前記ポリアミドイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、ユーザの目の疲労をさらに減らすことができる。また、20μm以上の厚さにおいても、上述したように優れた光学的特性だけでなく、機械的強度をさらに向上させることができるため、動的曲げ(dynamic bending)特性がさらに向上し、繰り返し折り畳んで広げる動作を繰り返すフォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用するのに好適である。
【0083】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、破断伸びが10%以上であってもよい。または、前記破断伸びは、例えば、10%~20%、10%~18%、11%以上、11%~20%、または10%~16%であってもよいが、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0084】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、550nmの波長における厚さ方向位相差の絶対値が950nm以下であってもよい。または、前記厚さ方向位相差は、例えば、900nm以下、800nm以下、200nm~950nm、300nm~900nm、400nm~950nm、500nm~950nm、600nm~950nm、または500nm~900nmであってもよく、600nm以下、200nm~600nm、200nm~500nm、250nm~600nm、250nm~550nm、300nm~600nm、または300nm~500nmであってもよいが、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。前記厚さ方向位相差値は、フィルムを加熱する前の常温(normal temperature)で測定してもよく、前記常温は、人為的に温度調節をしていない状態の温度であってもよい。例えば、前記常温は20℃~40℃、20℃~30℃、または23℃~26℃であってもよい。一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、前記破断伸びおよび厚さ方向位相差を全て満たすことで、ディスプレイ装置用カバーウィンドウに適用するのに十分な機械的物性および耐久性を提供することができる。
【0085】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下であってもよい。または、例えば、前記黄色度は3.0以下、1.0~3.5、1.5~3.5、1.0~3.0、1.5~3.0、1.0~2.8、1.5~2.8、または2.0~3.0であってもよいが、必ずしも前記範囲に限定されるものではない。
【0086】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムのASTM E111に準じたモジュラスは3.5GPa以上、4.0GPa以上、4.3GPa以上、または4.0GPa~6.0GPa、5.0GPa以上、5.0GPa~7.0GPa、5.3GPa以上、5.5GPa以上、5.3GPa~6.5GPa、または5.5GPa~6.5GPaであってもよい。
【0087】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの厚さは20μm~500μmであってもよい。または、例えば、前記厚さは20μm~300μm、20μm~250μm、20μm~200μm、20μm~150μm、20μm~100、30μm~100μm、または20μm~80μmであってもよい。
【0088】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、上述した範囲の物性を満たすことで、光によるイメージの歪みを防止し、さらに向上した視認性を付与することができる。また、フィルムの中央部および辺部に全体的にさらに均一な機械的物性(破断伸びなど)および光学的物性(厚さ方向位相差など)を示すことができ、フィルムのロス(loss)をさらに減少させることができる。また、前記ポリアミドイミドフィルムは、柔軟で、曲げ(bending)特性に優れるため、所定の変形が繰り返し起こっても、フィルムの変形および/または損傷が発生せず、本来の形態にさらに容易に戻ることができる。また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、さらに優れた視認性を有することができ、折り畳み跡および微細クラックの発生を防止することができるため、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置にさらに優れた耐久性および長期寿命性を付与することができる。
【0089】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法を説明する。
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法は、いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物を基板に塗布した後に熱処理するステップを含んでもよい。
【0090】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記熱処理するステップの熱処理は、必ずしも特定の温度範囲で行わなければならないものではないが、例えば、280℃以上350℃以下の温度で10分~60分間行ってもよい。相対的に低い温度で硬化する場合には、フィルムが熱履歴を少なく受けるため、相対的に黄色度が低くなる傾向があり得るが、ガラス転移温度(Tg)以下で硬化する場合には、分子構造のオリエンテーション(orientation)問題により厚さ方向位相差が高くなる問題が発生し得る。また、前記熱硬化は、例えば、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよい。
【0091】
また、前記熱処理ステップ以前に、必要に応じて、乾燥ステップをさらに行ってもよい。前記乾燥ステップの温度も必ずしも特定の温度範囲で行わなければならないものではないが、例えば、50℃~150℃、50℃~130℃、60℃~100℃、または約80℃の温度で行われてもよい。
【0092】
一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布した後、常温に放置する放置ステップをさらに含んでもよい。前記放置ステップにより、フィルム表面の光学的物性をさらに安定的に維持させることができる。特定の理論に拘るものではないが、従来のポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、硬化前にこのような放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部に水分が拡散し、ポリアミック酸および/またはポリアミドイミドと衝突してフィルム表面から白濁が発生し、凝集現象が発生してコーティング不均一性が発生し得る。これに対し、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、空気中に長時間放置しても、白濁現象および凝集現象がなく、向上した光学的物性を有するフィルムを確保可能であるという長所を実現することができる。前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われてもよい。ここで、前記常温は40℃以下であってもよく、例えば30℃以下であってもよく、例えば25℃以下であってもよく、より具体的には15℃~25℃であってもよく、20℃~25℃であることが特に好ましい。また、前記高湿とは、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上の相対湿度であってもよい。前記放置するステップは、1分から3時間、例えば10分から2時間、例えば20分から1時間行われてもよい。
【0093】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミドイミドフィルムを形成するための前記塗布は、当該分野で通常用いられるものであれば制限なく用いられてもよい。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)、およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順次適用可能であることはいうまでもない。
【0094】
前記基板は、当該分野で通常用いられるものであれば制限なく用いられてもよく、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロハン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを用いてもよい。
【0095】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムの用途を説明する。
一実施形態は、前記いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含む多層構造体であってもよい。例えば、前記ポリアミドイミドフィルムと、前記ポリアミドイミドフィルム上に位置するコーティング層と、を含むディスプレイ装置用カバーウィンドウであってもよい。また、前記多層構造体は、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムと互いに異なる組成の単量体を含むポリアミドイミドフィルムと、2層以上のコーティング層と、を含んでもよい。
【0096】
この際、前記コーティング層の非限定的な例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。この際、前記コーティング層の厚さは1μm~500μm、2μm~450μm、または2μm~200μmであってもよいが、これに限定されない。
【0097】
また、一実施形態に係る前記多層構造体は、基板上に形成された一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムおよび半導体層を含んでもよい。前記半導体層の非限定的な一例としては、低温ポリシリコン(LTPS)、低温多結晶酸化物(LTPO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、およびインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などが挙げられ、例えば、LTPSおよび/またはLTPOを含んでもよい。LTPS(low temperature polysilicon)および/またはLTPO(low temperature polycrystalline oxide)を用いるディスプレイ装置の場合、工程温度が350℃以上500℃以下に近接したりもする。このような高温工程においては、耐熱性に優れたポリアミドイミドであるとしても、加水分解による熱分解が起こりやすい。したがって、LTPSおよび/またはLTPO用フレキシブルデバイスを製造するためには、高温工程においても加水分解による熱分解が起こらない優れた耐熱性を有する素材が求められる。一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムは、優れた光学的特性および耐熱性を同時に有することで、LTPSおよび/またはLTPO用ディスプレイ装置に活用することができる。
【0098】
一実施形態は、前記いずれか1つの実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置であってもよい。
一例として、ディスプレイ装置は、優れた光学的物性が求められる分野であれば特に制限されず、それに合うディスプレイパネルを選択して提供することができる。具体的には、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能であり、その非限定的な一例としては、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置などが挙げられが、これに制限されない。
【0099】
また、一実施形態に係るポリアミドイミドフィルムを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、特に虹色のムラが発生するレインボー現象が顕著に改善され、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなるにつれ、側面から画面を見る場合が多くなるが、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリアミドイミドフィルムをディスプレイ装置に適用する場合、側面から見ても視認性に優れるため、大型ディスプレイ装置に有用に適用することができる。
【0100】
以下、一実施形態の実施例および実験例を下記に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は、一実施形態の一部を例示するものにすぎないため、一実施形態がこれに限定されるものではない。
【0101】
<測定方法>
1.黄色度(Yellow Index、YI)
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0102】
2.モジュラスおよび破断伸び
ASTM E111に準じて、厚さ50μm、長さ50mm、および幅10mmの試験片を25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて測定した。モジュラスの単位はGpaであり、破断伸びの単位は%である。
【0103】
3.位相差(Rth)
AxoScan(OPMF、Axometrics Inc.)を用いて測定した。550nmの波長に対して厚さ方向位相差(Rth)を測定し、550nmの波長における厚さ方向位相差を絶対値で示した。単位はnmである。
【0104】
<実施例1>
ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素雰囲気下で、反応器にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)253gを充填した。反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-benzidine、TFMB)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた後、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride、TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥し、白色粉末を得た。
【0105】
得られた白色粉末を、再び窒素雰囲気下で、反応器にDMPAと分散液中の顔料の平均粒度が90nmである顔料分散液(5重量% in DMAc、OP-1803B、Toyoink)1,200ppmを混合した溶媒を共に入れて溶解させた後、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)を入れ、12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体TFMB:BPAF:TPCのモル比を下記表1のとおりにし、固形分含量が14重量%となるように調節した。その次に、ポリアミック酸樹脂組成物のポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として、シリカ粒子(SSD 330T、DMAc 30重量%、RANCO社、15nm)25重量%およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol Hexaacrylate、DPHA)(M500、Miwon Specialty Chemical社)5重量%を添加した後に5時間撹拌し、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。
【0106】
ポリアミドイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、上記で得られたポリアミドイミドフィルム形成用組成物をアプリケータで塗布し、窒素雰囲気下で、80℃で30分間、その後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0107】
<実施例2>
多官能性アクリル系化合物であるDPHAの重量%を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で実施例2のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの実施例2のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0108】
<実施例3>
実施例1において、顔料を含む顔料分散液を添加するステップを除いては同様に重合した後、シリカ粒子(SSD 330T、DMAc 30重量%、RANCO社、15nm)40重量%とDPHA(M500、Miwon Specialty Chemical社)5重量%および5%希釈された染料(SI1001、Kyung-In Synthetic Corporation)120ppmを添加した後に5時間撹拌し、実施例3のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。その次に、前記実施例1と同様の方法で50μmの実施例3のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0109】
<実施例4および実施例5>
実施例1において、TPCの代わりに塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride、IPC)を用い、シリカ粒子およびDPHAの重量%を下記表2のように変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で実施例4および実施例5のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの実施例4および実施例5のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0110】
<実施例6>
実施例3において、TPCの代わりにIPCを用いたことを除いては、前記実施例3と同様の方法で実施例6のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例3と同様の方法で厚さ50μmの実施例6のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0111】
<実施例7>
ポリアミドイミドフィルム形成用組成物の製造
窒素雰囲気下で、反応器にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)253gを充填した。反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-benzidine、TFMB)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた後、塩化テレフタロイル(Terephthaloyl chloride、TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。その後、過量のメタノールを用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を50℃で6時間以上真空乾燥し、白色粉末を得た。その次に、上記のような条件でTFMBと塩化イソフタロイル(Isophthaloyl chloride、IPC)を反応させて6時間撹拌した後、同様の方法で沈殿および乾燥させた後に白色粉末を得た。
【0112】
得られた白色粉末を、再び窒素雰囲気下で、反応器にDMPAと分散液中の顔料の平均粒度が90nmである顔料分散液(5重量% in DMAc、OP-1803B、Toyoink)1,200ppmを混合した溶媒を共に入れて溶解させた後、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene dianhydride、BPAF)を入れ、12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体TFMB:BPAF:TPC:IPCのモル比を下記表1のとおりにし、固形分含量が14重量%となるように調節した。その次に、ポリアミック酸樹脂組成物のポリアミック酸またはポリアミドイミド固形分を基準として、シリカ粒子(SSD 330T、DMAc 30重量%、RANCO社、15nm)25重量%およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol Hexaacrylate、DPHA)(M500、Miwon Specialty Chemical社)5重量%を添加した後に5時間撹拌し、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。
【0113】
ポリアミドイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、上記で得られたポリアミドイミドフィルム形成用組成物をアプリケータで塗布し、窒素雰囲気下で、80℃で30分間、その後、300℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0114】
<実施例8および実施例9>
実施例7において、TFMB、BPAF、TPC、およびIPCのモル比、および添加剤の重量%を下記表1および表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で実施例8および実施例9のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの実施例8および実施例9のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0115】
<実施例10>
実施例7において、顔料を含む顔料分散液を添加するステップを除いては同様に重合した後、シリカ粒子(SSD 330T、DMAc 30重量%、RANCO社、15nm)40重量%とDPHA(M500、Miwon Specialty Chemical社)5重量%および5%希釈された染料(SI1001、Kyung-In Synthetic Corporation)120ppmを添加した後に5時間撹拌し、実施例10のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。その次に、前記実施例7と同様の方法で50μmの実施例10のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0116】
<比較例1>
実施例1において、添加剤である無機ナノ粒子、多官能性アクリル系化合物、および顔料を添加しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法で比較例1のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの比較例1のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0117】
<比較例2および比較例3>
実施例1において、TFMB、BPAF、およびTPCのモル比、および添加剤の重量%を下記表1および表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で比較例2および比較例3のポリアミドイミドフィルム形成用組成物をそれぞれ製造し、前記実施例1と同様の方法で厚さ50μmの比較例2および比較例3のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0118】
<比較例4>
実施例7において、添加剤である無機ナノ粒子、多官能性アクリル系化合物、および顔料を添加しないことを除いては、前記実施例7と同様の方法で比較例4のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの比較例4のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0119】
<比較例5>
前記実施例7において、TFMB、BPAF、TPC、およびIPCのモル比、および添加剤の重量%を下記表1および表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で比較例5のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの比較例5のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0120】
<参照例1および参照例2>
前記実施例7において、TFMB、BPAF、TPC、およびIPCのモル比、および添加剤の重量%を下記表1および表2のように変更したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で参照例1および参照例2のポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造し、前記実施例7と同様の方法で厚さ50μmの参照例1および参照例2のポリアミドイミドフィルムを製造した。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
<実験例>光学的物性および機械的物性の評価
前記実施例1~実施例10、比較例1~比較例5、および参照例1および参照例2によるポリアミドイミドフィルムの黄色度(YI)、破断伸び、厚さ方向位相差(Rth)、およびモジュラスを前記測定方法により測定し、下記表3および表4に示した。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
前記表3および表4から確認できるように、TFMBを含むジアミン、BPAFを含む二無水物、そしてTPCおよびIPCのうちいずれか1つ以上を含む二酸二塩化物を含むポリアミドイミドフィルム形成用組成物から製造されたポリアミドイミドフィルムは、ブルー系の染料または顔料、無機ナノ粒子、およびアクリル系化合物をさらに含むことで、優れた破断伸び、モジュラス、および位相差を有しながらも、比較例のポリアミドイミドフィルムに比べてさらに優れた黄色度を有することにより、表示品質および視認性を顕著に向上可能なフィルムを提供することができる。
【0127】
以上、限定された実施例により一実施形態を説明したが、これは一実施形態のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、一実施形態は上記の実施例に限定されない。本明細書に開示された発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0128】
したがって、本明細書に開示された思想は、前記実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本明細書に開示された思想の範囲に属するといえる。