(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041112
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】印刷装置並びに処理制御装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/387 20060101AFI20230316BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230316BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B41J29/387
B41J29/38 701
G06F3/12 310
G06F3/12 329
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148288
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】金田 裕
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061HJ07
2C061HK05
2C061HK11
2C061HK20
2C061HK23
2C061HM00
2C061HN08
2C061HN15
2C061HN20
2C061HN22
2C061HV01
2C061HV17
2C061HV32
(57)【要約】
【課題】不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止する印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部10と、供給される電源の情報を取得する電源情報取得部21と、電源情報取得部21によって取得された電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、印刷部10の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行う制御部30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、
供給される電源の情報を取得する電源情報取得部と、
前記電源情報取得部によって取得された電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、前記印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行う制御部とを備えた印刷装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記印刷部の初期化動作の前に、前記設置位置の変化の検出処理を行う請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記電源情報取得部が、前記電源の情報として、前記電源の電圧値および周波数の少なくとも一方を取得する請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記電源の情報に基づいて、前記印刷部の動作の禁止と前記制限付き印刷処理とを切り替える請求項1から3いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
未使用の時間を取得する未使用時間取得部を備え、
前記制御部が、前記未使用時間取得部によって取得された未使用の時間または前記電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出する請求項1から4いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項6】
未使用の時間を取得する未使用時間取得部を備え、
前記制御部が、前記未使用時間取得部によって取得された未使用の時間および前記電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出する請求項1から4いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項7】
設置床との接触状態の変化を検出する設置状態検出部を備え、
前記制御部が、前記設置状態検出部による前記接触状態の変化または前記電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出する請求項1から4いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項8】
設置床との接触状態の変化を検出する設置状態検出部を備え、
前記制御部が、前記設置状態検出部による前記接触状態の変化および前記電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出する請求項1から4いずれか1項記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、
設置位置の情報を取得する設置位置情報取得部と、
前記設置位置情報取得部によって取得された設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、前記印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行う制御部とを備えた印刷装置。
【請求項10】
前記制御部が、前記設置位置の情報に基づいて、前記印刷部の印刷処理の禁止と前記制限付き印刷処理とを切り替える請求項9記載の印刷装置。
【請求項11】
電源の供給を受けて所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部と、
前記電源の情報を取得する電源情報取得部と、
前記電源情報取得部によって取得された電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、前記処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行う制御部とを備えた処理制御装置。
【請求項12】
所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部に供給される電源の情報を取得し、
該取得した電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、前記処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行う処理制御方法。
【請求項13】
所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部に供給される電源の情報を取得するステップと、
該取得した電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出するステップと、
該設置位置の変化が検出された場合には、前記処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行うステップとをコンピュータに実行させる処理制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に印刷処理を施す印刷装置並びに処理制御装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置などの精密機器においては、装置をお客様の使用場所に設置する際、その装置を熟知しているサービスマンが設置作業を行う。この際、装置の開梱作業(梱包材や固定部材の除去)だけでなく、装置の水平度調整、インク充填動作、お客様が実際に使用する用紙での通紙や画像品質の確認を行う。
【0003】
このように装置が安全で、かつ最高の品質で使用できるように様々なパラメータ設定や機械的調整が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット印刷装置を設置後にその装置を移動するときに、必要な固定をしなかったり、インク経路内のインクを抜かなかったりすることで、部品が変形したり、装置内にインクが飛散してしまうことがあり、この状態で装置を動作させようとすると、破損部品が増えたり、インクの汚損範囲が広がったり、被害が拡大し、より大きな時間や費用の発生を誘発することがあった。
【0006】
たとえばベルトプラテンを備えたインクジェット印刷装置においては、ベルトプラテンは上部からワイヤーで吊り下げられる機構であるため、輸送時にはベルトプラテンが移動しないように固定しなければ、周囲の部品へ衝突し、変形が発生するおそれがある。
【0007】
また、その他ローラなども過度の衝撃が加えられた場合、脱落したり、ばねなどの部品が脱落したりするおそれがある。
【0008】
そして、このような状態で電源を投入し、動作させようとした場合、部品変形のためベルトに裂傷などのダメージを与えたり、ローラ間に部品を噛み込んで、ゴム部品の変形やモータロックを誘発したりする。
【0009】
また、インクが充填された状態での装置移動により、インクジェットヘッドからのインク落下やインク供給経路からのインク漏れにより、周囲部品を汚してしまうことがある。この場合、インクがベルトプラテンやローラに付着していると、印刷用紙を媒介して、インク汚れの範囲を拡大させたり、ローラの回転によりインクを散布させたりすることがある。
【0010】
このように不適切な状態で装置を移動して、不具合が発生した状態で装置を動作させた場合、メンテナンスが必要な範囲を拡大させ、より多くの部品の交換や清掃が必要になってしまう。
【0011】
また、インクジェット印刷装置は、用紙搬送や印刷処理を行うために多くの機構部品を備えている。これらは実際の印刷処理を行う前の電源投入時に、初期化(イニシャライズ)動作が行われる。
【0012】
しかしながら、初期化動作には機構部品の回転・移動を伴うため、装置の移動によって上述したような破損や汚損が発生している場合には避けた方が良いが、初期化動作前に部品変形・脱落や、インク汚損の検知は困難である。
【0013】
また、インクジェット印刷装置に限らず、所定の駆動機構を用いて所定の処理を行う装置では、装置の移動に伴って電源の電圧や周波数が変わった場合、その変更後の電圧や周波数では、誤動作を生じてしまう場合がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止することができる印刷装置並びに処理制御装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の印刷装置は、印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、供給される電源の情報を取得する電源情報取得部と、電源情報取得部によって取得された電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行う制御部とを備える。
【0016】
本発明の第2の印刷装置は、印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷部と、設置位置の情報を取得する設置位置情報取得部と、設置位置情報取得部によって取得された設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、該設置位置の変化が検出された場合には、印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行う制御部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の印刷装置によれば、供給される電源の情報を取得し、その電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行うようにしたので、不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止することができる。
【0018】
本発明の第2の印刷装置によれば、設置位置の情報を取得し、その設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部の動作を禁止するまたは制限付き印刷処理を行うようにしたので、不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の印刷装置の第1の実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示すブロック図
【
図2】電源電圧値検出回路および電圧波形の一例を示す図
【
図3】電源周波数検出回路およびコレクタ信号波形の一例を示す図
【
図4】本発明の印刷装置の第1の実施形態を用いたインクジェット印刷装置の処理の流れを説明するためのフローチャート
【
図6】本発明の印刷装置の第2の実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の印刷装置の第1の実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図1に示すように、印刷部10と、電源部20と、制御部30とを備えている。
【0022】
印刷部10は、紙などの印刷媒体に対して印刷処理を施す。本実施形態の印刷部10は、インクジェット方式の印刷処理を行う。印刷部10は、印刷媒体に対してインクを吐出するインクジェットヘッド、インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給機構、印刷媒体を搬送するベルトプラテン、印刷媒体を給紙する給紙機構、印刷済みの印刷媒体を排紙する排紙機構、印刷媒体の搬送制御に用いられる用紙検出センサや各機構の基準位置(ホームポジション)を検出するセンサやエンコーダなどの図示省略したセンサ部と、インク供給の有無や、ベルトプラテン、給紙機構、排紙機構のローラ等を回転駆動する図示省略したアクチュエータ部を備えている。
【0023】
電源部20は、商用電源からの電力の供給を受けて、制御部30および印刷部10に対して電力を供給する。印刷部10には、電源部20から制御部30を介して電力が供給される。
【0024】
電源部20は、商用電源AC(Alternating Current)85~264Vが入力定格の電源ユニットである。図示省略した電源スイッチをオンにすることによって、電源部20に対して商用電源から電力供給される。
【0025】
電源部20は、5Vと24Vの電源電圧を制御部30に供給可能に構成されている。電源部20は、電源スイッチがオンされた時点では、自動的に5Vの電源電圧を制御部30に供給する。一方、電源部20は、電源スイッチがオンされた時点では、24Vの電源電圧の供給は遮断している。電源部20は、制御部30からの制御信号に応じて24Vの電源電圧の供給をオンオフする。
【0026】
また、電源部20は、電源情報取得部21を備えている。電源情報取得部21は、電源部20に供給される商用電源の情報を取得する。本実施形態の電源情報取得部21は、商用電源の情報として、商用電源の電圧値および周波数を取得する。電源情報取得部21は、電源電圧値検出回路22と電源周波数検出回路23とを備えている。
【0027】
図2Aは、電源電圧値検出回路22の一例を示す図である。電源電圧値検出回路22は、トランス22aと、ダイオードブリッジ22bおよびコンデンサ22cを備えている。
図2Bは、商用電源の電圧波形、ダイオードブリッジ22bで全波整流された電圧波形およびコンデンサで検出される電圧波形の一例を示す図である。
【0028】
図2Bに示すように正弦波で供給される商用電源は、トランス22aを経由した後、ダイオードブリッジ22bで全波整流される。
図2Bに示すように全波整流された電圧波形は、後段のコンデンサ22cにより包絡線波形となり、電圧のピーク値付近の電圧となる。すなわち、
図2Aに示す電源電圧値検出回路22では、商用電源がAC100Vの場合にはDC(Direct Current)141Vが検出され、商用電源がAC230Vの場合はDC325Vが検出される。なお、トランス22aの巻線比を変更することで、電圧を低下させることができ、後段の取り扱いが容易になる。また、商用電源の電圧値は、抵抗により分圧して検出するようにしてもよい。
【0029】
電源電圧値検出回路22によってDC電圧に変換された後は、A/Dコンバータやコンパレータを経由することで、所定の電圧値を検出することができる。A/Dコンバータやコンパレータは、電源情報取得部21に設けるようにしてもよいし、制御部30のマイコン31に設けるようにしてもよい。
【0030】
図3Aは、電源周波数検出回路23の一例を示す図である。電源周波数検出回路23は、トランス23aと、2つのLED(Light Emitting Diode)23b,23cと、フォトトランジスタ23dとを備えている。
図3Bは、商用電源の電圧波形、およびLED23b,23cの両端に印加される電圧とフォトトランジスタ23dのコレクタ信号波形との関係の一例を示す図である。
【0031】
商用電源の電圧波形は、トランス23aを経由した後、LED23b,23cに供給される。商用電源の正弦波電圧がLED23b,23cの両端に供給されると、正弦波の正負のいずれかの電圧に応じて、LED23b,23cのどちらか一方のみが発光する。このとき、フォトトランジスタ23dのベースをGNDに接続し、コレクタにプルアップ抵抗を接続した場合、LED23bまたはLED23cの光によって、フォトトランジスタ23dはオンして、
図3Bに示すようにコレクタ信号の電圧はGNDレベル付近になる。
【0032】
商用電源の正弦波電圧が0V付近に到達した場合、2つのLED23b,23cは両方ともオフになる。このとき、光が入力されないため、フォトトランジスタ23dはオフとなり、コレクタの電圧はプルアップされた電源付近の電圧になる。
【0033】
すなわち、
図3に示す電源周波数検出回路23により、商用電源が0V付近になったこと(ゼロクロス)を検出可能となる。フォトトランジスタ23dのコレクタ信号は、
図3Bに示すように、商用電源の正弦波電圧が0Vと交差する付近でオンするため、このコレクタ信号がオンになる周期の2倍が商用電源の周期となり、これにより商用電源の周波数を検出可能となる。すなわち、1秒間におけるコレクタ信号のクロックパルス数をカウントすることで周波数を測定し、その2倍を求めることによって商用電源の周波数を取得する。あるいは、コレクタ信号のクロック周期を、予め周期が分かっている基準のクロックパルスがコレクタ信号のクロック周期中に何パルス含まれるかによって測定し、その2倍の逆数を求めることによって商用電源の周波数を取得してもよい。周波数の測定は、電源情報取得部21で行うようにしてもよいし、後述するマイコン31に内蔵されているタイマを使用するようにしてもよい。
【0034】
制御部30は、インクジェット印刷装置1全体を制御するものである。特に、本実施形態の制御部30は、電源情報取得部21によって取得された商用電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部10の動作を禁止する。
【0035】
制御部30は、
図1に示すように、マイコン31、アクチュエータドライバ32および図示省略したセンサ部とのインターフェイス部を備えている。
【0036】
マイコン31は、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備えている。半導体メモリには、インクジェット印刷装置1を動作させるための印刷処理制御プログラムおよび各種設定値が保存されている。なお、本実施形態においては、印刷処理制御プログラムが、本発明の処理制御プログラムに相当する。
【0037】
印刷処理制御プログラムがCPUによって実行されることによって、印刷部10の各機構が制御されて印刷処理が行われるとともに、電源情報取得部21および制御部30の機能が実現する。
【0038】
なお、本実施形態においては、CPUによって印刷処理制御プログラムを実行することによって電源情報取得部21および制御部30を機能させるようにしたが、印刷処理制御プログラムが実行する一部の機能または全部の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の電気回路などのハードウェアから構成するようにしてもよい。
【0039】
また、マイコン31は、フラッシュメモリなどから構成される電源情報記憶部33を備えている。電源情報記憶部33は、過去の設置位置においてインクジェット印刷装置1に接続された商用電源の情報(電源電圧値および電源周波数)を記憶する。電源情報記憶部33は、たとえばインクジェット印刷装置1が出荷された後、最初の設置位置においてインクジェット印刷装置1に接続された商用電源の情報(電源電圧値および電源周波数)を記憶する。
【0040】
また、電源情報記憶部33に記憶される商用電源の情報は、インクジェット印刷装置1の設置位置を変更した後、サービスマンなどがインクジェット印刷装置1のメンテナンスを終了した場合には、設置位置変更後のインクジェット印刷装置1に接続された商用電源の情報に更新される。
【0041】
また、マイコン31には、印刷部10に設けられたセンサ部から出力されたセンサ信号が入力され、このセンサ信号を用いて初期化動作や印刷媒体の搬送制御などが行われる。
【0042】
また、マイコン31は、アクチュエータドライバ32に対して制御信号を出力する。
【0043】
アクチュエータドライバ32は、マイコン31から出力された制御信号に基づいて、印刷部10の各機構が有するDCモータやステッピングモータなどを駆動する。
【0044】
また、マイコン31は、電源部20に対して24Vの電源電圧の供給をオンオフするための制御信号を出力する。すなわち、マイコン31は、任意のタイミングで24Vの電源電圧の供給および遮断を制御できる。
【0045】
印刷部10の各機構に設けられたアクチュエータは24Vで動作するため、マイコン31から電源部20に対して、24Vの電源電圧の供給をオンする制御信号が出力されなければ、アクチュエータドライバ32に電源電圧が供給されず、印刷部10のアクチュエータも動作しない。すなわち、マイコン31は、24Vの電源電圧の供給を制御することによって、印刷部10の動作を制御する。
【0046】
マイコン31は、電源スイッチがオンされた時点において電源情報取得部21によって取得された現在の商用電源の情報(電源電圧値および電源周波数)を取得し、電源情報記憶部33に記憶された過去の商用電源の情報と比較する。
【0047】
そして、マイコン31は、過去の商用電源の情報と現在の商用電源の情報との間の差異を検出することによって、設置位置の変化を検出する。すなわち、マイコン31は、過去の商用電源の情報と現在の商用電源の情報との間の差異が予め設定された閾値以上である場合には、インクジェット印刷装置1の設置位置に変化があったと判定する。
【0048】
ここで、商用電源とは、一般家庭やオフィスなどの壁から供給されている交流電源のことである。日本国内では、西日本と東日本とで電源周波数が異なり、各国によって電源電圧または電源周波数が異なる。したがって、マイコン31は、インクジェット印刷装置1に供給される商用電源の電源電圧や電源周波数に変化があった場合には、インクジェット印刷装置1の設置位置が変化したものと判定する。
【0049】
たとえば日本国内の場合、東日本と西日本では、電源電圧値はAC100Vで共通であるが、電源周波数が、東日本は50Hzであり、西日本は60Hzである。したがって、マイコン31は、過去の商用電源の電源電圧値と現在の商用電源の電源電圧値とが両方とも100Vで差異がないが、電源周波数の差が10Hz程度である場合には、インクジェット印刷装置1が、西日本と東日本とを跨いで移動し、設置位置が変化したと判断する。
【0050】
なお、各国の商用電源の電圧値と電源周波数の例を下表1に示す。
【0051】
【0052】
上表1に示すように日本の電源電圧値はAC100Vであり、米国の電源電圧値はAC115Vであり、カナダの電源電圧値は120Vであるので、マイコン31が、電源電圧値の差がAC15V~AC20V程度である場合には、インクジェット印刷装置1が日本と米国またはカナダとの間で移動したものとして、設置位置が変化したと判断するようにしてもよい。
【0053】
ただし、商用電源は、たとえば公称AC100Vであっても、使用場所や負荷によって変動するため、電源電圧値の差異を用いて設置位置の変化を検出する場合には、その変動分も考慮して閾値を設定することが好ましい。
【0054】
また、電源電圧値だけでなく、日本国内の場合と同様に、電源周波数の差も考慮することが好ましく、これにより設置位置の変化の検出精度を向上させることができる。
【0055】
また、電源周波数の差のみを用いて設置位置の変化を検出するようにしてもよいが、たとえば中国と豪州では電源周波数が50Hzで同じであるため、上述したように電源電圧値と電源周波数との両方を用いて設置位置の変化を検出することが好ましい。
【0056】
そして、マイコン31は、インクジェット印刷装置1の設置位置の変化を検出した場合には、電源部20からの24Vの電源電圧の供給を遮断することによって、印刷部10の動作を禁止する。
【0057】
また、マイコン31は、インクジェット印刷装置1の設置位置の変化を検出した場合には、インクジェット印刷装置1に設けられた操作パネル(図示省略)に、メンテナンスを促すようなメッセージを表示させる。
【0058】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の処理の流れについて、
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、上述したインクジェット印刷装置1の設置位置の変化に基づく、印刷処理の禁止について主に説明する。
【0059】
まず、インクジェット印刷装置1の電源スイッチがオンされる(S10)。電源スイッチのオンに応じて、電源部20は、マイコン31に対して5Vの電源電圧を供給する(S12)。
【0060】
また、電源部20の電源情報取得部21によって現在の商用電源の情報(電源電圧値および電源周波数)が取得され、マイコン31に出力される(S14)。
【0061】
次いで、マイコン31は、電源情報記憶部33に記憶された過去の商用電源の情報を読み出し(S16)、その過去の商用電源の情報と現在の商用電源の情報との間の差異に基づいて、設置位置の変化があったか否かを検出する(S18)。
【0062】
そして、マイコン31は、設置位置の変化が検出されなかった場合には(S18,NO)、通常通り、印刷部10の初期化動作を開始する(S20)。なお、初期化動作は、インクジェット印刷装置1の電源オフ時に機構部品の場所が不定になったり、印刷処理前に所望の印刷処理が行われるか確認したりするために必要な動作である。たとえば各機構を基準位置(ホームポジション)に設定したり、各機構が正常に機能することを確認するPOST(Power ON Self Test)が行われたりする。たとえば搬送ローラを回転させ、その回転数をエンコーダで検出し、所定の回転数で回転することを確認したりする。
【0063】
一方、マイコン31は、設置位置の変化が検出された場合には(S18,YES)、電源部20に制御信号を出力し、24Vの電源電圧の供給を遮断することによって、印刷部10の初期化動作およびそれ以降の動作を禁止する(S22)。
【0064】
また、マイコン31は、インクジェット印刷装置1の操作パネルに対して、サービスマンを呼び、メンテナンスするように促すメッセージを表示する(S24)。
【0065】
操作パネルのメッセージを見たユーザは、サービスマンなど点検、調整などを依頼する(S26)。
【0066】
そして、サービスマンは、部品交換、清掃および調整などを行った後(S28)、メンテナンスモードでインクジェット印刷装置1を起動する(S30)。メンテナンスモードでは、部品の単独動作確認、センサやアクチュエータのON/OFF、画像品質確認用のチャートの印刷が可能となる。
【0067】
なお、メンテナンスモードへの移行は、原則としてサービスマンなどの関係者が実行可能であるが、緊急の場合や簡易な修理・確認など、電話によりユーザに操作を依頼するなどして、メンテナンスモードへの移行方法が漏洩することがある。このような場合、安易にメンテナンスモードへ移行して不適切な者によるメンテナンス実行による装置故障等を防止するため、たとえば操作パネル上に暗証番号(パスコード)の設定入力画面を表示させ、サービスマンによって暗証番号が入力された場合に、メンテナンスモードに移行可能とすることが好ましい。
【0068】
そして、サービスマンは、インクジェット印刷装置1に異常がなくなるまでS28およびS30を繰り返して行い、異常がなくなった場合には(S32,YES)、印刷部10の動作禁止状態を解除する(S34)。印刷部10の動作禁止状態の解除については、たとえばインクジェット印刷装置1の操作パネル上で所定の操作を受け付けて行われる。この際にも、操作パネル上に暗証番号(パスコード)の設定入力画面を表示させ、サービスマンによって暗証番号が入力された場合に、動作禁止状態を解除することが好ましい。
【0069】
そして、マイコン31は、動作禁止状態を解除した場合には、今回、電源情報取得部21によって取得された商用電源の情報を電源情報記憶部33に記憶することによって、商用電源の情報を更新する(S36)。
【0070】
上記実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、供給される商用電源の情報を取得し、その電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部10の動作を禁止するようにしたので、不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止することができる。
【0071】
具体的には、たとえば設置位置の変化によって、インクジェット印刷装置1内においてインク漏れが発生していた場合、周囲のローラなどにインクが飛散したり、印刷媒体を通して汚損範囲が広がったりすることを防止することができる。
【0072】
また、印刷部10が備える機構部品が破損・変形した状態で動作させることによる多数の部品破損の誘発、たとえばローラ間に部品を噛み込むことでのローラ破損やモータロックなどの二次災害を未然防止できる。
【0073】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1では、印刷部10の初期化動作の前に、設置位置の検出処理を行うようにしたので、初期化動作による部品の破損やインクの汚損範囲の拡大を防止することができる。
【0074】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1では、商用電源の情報として電源の電圧値および周波数を取得するようにしたので、コストをかけることなく、より簡易な構成にて設置位置の変化の検出のための情報を取得することができる。
【0075】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、商用電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出するようにしたが、さらに、インクジェット印刷装置1の未使用時間を計測し、未使用時間が予め設定された閾値以上である場合には、インクジェット印刷装置1の設置位置が移動している可能性があるため、設置位置の変化があったと判断するようにしてもよい。
【0076】
具体的には、マイコン31のタイマ機能を用いて最後に印刷処理を行った時点からの未使用時間を計測し、その未使用時間が予め設定された閾値(たとえば3か月)以上である場合には、設置位置の変化を検出し、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。
【0077】
この場合、マイコン31は、商用電源の情報または未使用時間に基づいて、設置位置の変化を検出し、どちらかによって設置位置の変化が検出された場合に、印刷部10の動作を禁止する。このように、商用電源の情報だけでなく、未使用時間も使用することによって、設置位置の変化の検出精度を上げることができる。なお、上記説明では、マイコン31が、本発明の未使用時間取得部に相当する。
【0078】
また、マイコン31が、商用電源の情報および未使用時間に基づいて、設置位置の変化を検出するようにしてもよい。すなわち、マイコン31が、商用電源の変化を検出し、かつ未使用時間が閾値以上の場合に、設置位置の変化を検出するようにしてもよい。これにより、設置位置の変化の検出精度(正確性)を向上させることができる。
【0079】
また、インクジェット印刷装置1の設置床との接触状態を検出することによって、設置位置の変化を検出するようにしてもよい。具体的には、たとえばインクジェット印刷装置1が、
図5に示すように、インクジェット印刷装置1の設置床との接触状態の変化を検出する設置状態検出部40を設けるようにしてもよい。
【0080】
図5に示す設置状態検出部40は、インクジェット印刷装置1の底部に設けられ、検出スイッチ41および支持部材42を備えている。
【0081】
支持部材42は、棒状の部材から構成され、その一端が設置床に接触し、他端が検出スイッチ41に当接するように設けられる。
【0082】
検出スイッチ41は、支持部材42が当接している間はオンし、当接していない間はオフするように構成されている。
【0083】
そして、インクジェット印刷装置1が所定の位置に設置されている状態では、
図5に示すように、支持部材42は設置床に接触するとともに、検出スイッチ41に当接させて配置される。すなわち、この際、検出スイッチ41はオン状態となっている。
【0084】
そして、インクジェット印刷装置1の底部に設けられたキャスタが回転することによってインクジェット印刷装置1が移動した場合には、支持部材42が倒れ、検出スイッチ41がオフ状態となる。マイコン31は、検出スイッチ41がオフ状態になったことを検出し、これにより設置位置が変化したことを検出し、印刷部10の動作を禁止する。
【0085】
このように設置状態検出部40によって設置床との接触状態の変化を検出する場合、マイコン31は、商用電源の情報または設置床との接触状態の変化に基づいて、設置位置の変化を検出し、どちらかによって設置位置の変化が検出された場合に、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。このように、設置床との接触状態の変化も使用して、設置位置の変化を検出することによって、インクジェット印刷装置1が移動した場合には確実に印刷部10の動作を禁止することができる。
【0086】
また、インクジェット印刷装置1の移動先において支持部材42が取り付けられた場合には、商用電源の情報の変化のみによって設置位置の変化を検出することができる。
【0087】
なお、マイコン31および検出スイッチ41に電池給電することで、商用電源が供給されていないときでも検出スイッチ41の変化を検出できるように構成してもよい。
【0088】
また、商用電源の情報も用いて設置位置の変化を検出することによって、たとえばインクジェット印刷装置1を移動させていないが、インクジェット印刷装置1に供給される商用電源に異常が発生している場合などにおいて、その異常を検出し、印刷部10の動作を禁止することで、印刷部10の故障を防止することができる。
【0089】
また、マイコン31が、商用電源の情報および設置床との接触状態の変化に基づいて、設置位置の変化を検出するようにしてもよい。すなわち、マイコン31が、商用電源の変化と接触状態の変化(検出スイッチ41のオフ状態)との両方を検出した場合に、設置位置の変化を検出し、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。
【0090】
なお、設置位置状態検出部40の構成については、上述したような構成に限らず、インクジェット印刷装置1の設置床との接触状態の変化を検出する構成であれば、その他の構成でもよい。たとえば光学センサなどのセンサを用いるようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部10の動作を禁止するようにしたが、インクジェット印刷装置1を直ぐに使用したい場合も考えられる。たとえばサービスマンがメンテナンスをするまでの時間が取れない場合や、インクジェット印刷装置1をごく近くへ移動しただけの場合や、緊急時としてバックアップ電源を使ったために商用電源の情報が変化してしまった場合などがあり得る。
【0092】
ただし、このような場合でもインクジェット印刷装置1の移動によるリスクはあるため、完全に全機能・性能で動作させるのは避けるべきであり、なるべく早急にサービスマンによるメンテナンスをするべきである。
【0093】
したがって、上記実施形態において印刷部10の動作を禁止する代わりに、高速動作による部品破損やインク飛散の低減のため、機能・性能を制限して動作させる制限付き印刷処理を行うようにしてもよい。
【0094】
制限付き印刷処理では、たとえばマイコン31が、印刷媒体の搬送系やインクジェットヘッドを制御することによって、印刷速度を通常よりも遅くしたり、インクジェットヘッドから吐出されるインク量を通常よりも減らしたり、印刷処理は実行するがインクヘッドヘッドへのインクの供給を停止させたりしてもよい。より具体的には、たとえば120ppmの生産性があるインクジェット印刷装置1を30ppmで動作させたり、インクジェットヘッドの異常によるインク飛散やインク漏れのリスクを低減するために、通常の電圧よりも低い電圧でインクジェットヘッドを駆動させたり、インク経路異常によるインク漏れ被害の拡散防止のため、新たにインクを供給しないようにインク供給機構を制御してインク供給を停止したりして制限付き印刷処理を行うようにしてもよい。
【0095】
また、上記説明では、印刷部10の動作を禁止する代わりに、制限付き印刷処理を行うようにしたが、マイコン31が、現在の商用電源の情報と過去の商用電源の情報の差異によって、印刷部10の動作の禁止と制限付き印刷処理とを自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0096】
具合的には、たとえば日本国内では、上述したように東日本と西日本では電源周波数が異なるが、日本国内のインクジェット印刷装置1の移動であれば移動距離が短く、影響が小さいものとして許容することとし、電源電圧値と電源周波数のうちの電源周波数のみが異なる場合には、印刷部10の動作を禁止するのではなく、制限付き印刷処理を行うようにしてもよい。なお、このような例に限らず、現在の商用電源の情報と過去の商用電源の情報の差異に基づいて、インクジェット印刷装置1の移動距離が短いとみなされる場合には制限付き印刷処理を行い、移動距離が長いとみなされる場合には印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。
【0097】
上述したように、商用電源の情報に基づいて、印刷部10の動作の禁止と制限付き印刷処理とを切り替えるようにした場合には、インクジェット印刷装置1の移動による影響が小さいとみなされる場合には、リスクを最低限に抑えつつ印刷処理を行うことができるとともに、インクジェット印刷装置1の移動の影響が大きいとみなされる場合には、破損部品の増加などの発生を確実に防止することができる。
【0098】
また、マイコン31が、現在の商用電源の電源電圧値と過去の商用電源の電源電圧値の差に基づいて、制限付き印刷処理と印刷部10の動作禁止とを自動的に切り替えるようにしてもよい。具体的には、たとえば現在の商用電源の電源電圧値と過去の商用電源の電源電圧値との差が、予め設定された閾値以下である場合には、リスクが少ないものとして、制限付き印刷処理を行い、予め設定された閾値を超える場合には、リスクが大きいものとして、印刷部10の動作を禁止し、操作パネルに対して電源電圧値が異なることを表示させ、サービスマンによる確認を促すようにしてもよい。
【0099】
また、上述したようにマイコン31が、制限付き印刷処理と印刷部10の動作禁止とを自動的に切り替えるのではなく、たとえば設置位置の変化が検出され、操作パネルに対して、サービスマンを呼び、メンテナンスするように促すメッセージが表示された際に、操作パネルに対して、制限付き印刷処理のボタンと、印刷部10の動作禁止のボタンとを表示させるようにしてもよい。そして、ユーザが、制限付き印刷処理のボタンを選択した場合には、マイコン31が、上述した制限付き印刷処理を可能とし、印刷部10の動作禁止のボタンを選択した場合に、マイコン31が、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。また、デフォルトの設定として印刷部10の動作の禁止とし、制限付き印刷処理のボタンのみを操作パネルに表示させるようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、商用電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出するようにしたが、商用電源の情報をその他の目的に利用するようにしてもよい。
【0101】
たとえばインクジェット印刷装置1は、仕向け先(輸出先)の国によって操作パネルの言語や、電源ケーブルの形状、商用電源の電源電圧値などが異なる。
【0102】
そこで、たとえば仕向け先が日本であるインクジェット印刷装置1には、日本の商用電源の情報を電源情報記憶部33に記憶し、仕向け先が日本以外の国のインクジェット印刷装置1には、その仕向け先の国の商用電源の情報を電源情報記憶部33に記憶しておく。
【0103】
そして、それぞれの仕向け先においてインクジェット印刷装置1を設置して商用電源に接続した後、最初に電源スイッチをオンした時点における商用電源の情報を電源情報取得部21によって取得し、マイコン31は、その取得された商用電源の情報と電源情報記憶部33に予め記憶された商用電源の情報とを比較する。
【0104】
そして、マイコン31が、これらの商用電源の情報が異なる場合には、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。たとえば日本向けのインクジェット印刷装置1では、商用電源の情報としてAC100Vが電源情報記憶部33に記憶されるが、これに対して、電源情報取得部21によって取得された商用電源の情報がAC100V以外の電源電圧値である場合には、マイコン31は、印刷部10の動作を禁止する。これにより、電源異常に対して注意喚起をすることができる。また、仕向け先が異なるインクジェット印刷装置1が設置されていることを認識することができる。
【0105】
次に、本発明の印刷装置の第2の実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。第1の実施形態のインクジェット印刷装置1においては、商用電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出するようにしたが、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2は、インクジェット印刷装置2の設置位置の情報を取得し、その取得した設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出するようにしたものである。以下、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と異なる点を中心に説明する。
【0106】
図6は、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2の概略構成を示すブロック図である。第2の実施形態のインクジェット印刷装置2は、第1の実施形態の電源情報取得部21の代わりに設置位置情報取得部50を備え、第1の実施形態の電源情報記憶部33の代わりに、設置位置情報記憶部34を備えている。
【0107】
設置位置情報取得部50は、インクジェット印刷装置2の設置位置の情報を取得する。設置位置情報取得部50は、具体的には、GPS(Global Positioning System)を使用してインクジェット印刷装置2の設置位置の情報を取得する。なお、設置位置情報取得部50としてはGPSに限らず、地磁気センサなどを用いて設置位置の情報を取得するようにしてもよい。
【0108】
設置位置情報取得部50による設置位置の情報の取得タイミングは、商用電源の情報の取得タイミングと同様に、インクジェット印刷装置2の電源スイッチのオン時である。
【0109】
設置位置情報取得部50によって取得された設置位置の情報は、制御部30のマイコン31に出力される。
【0110】
マイコン31は、入力された設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部10の動作を禁止する。
【0111】
具体的には、マイコン31は、入力されたインクジェット印刷装置2の現在の設置位置の情報と設置位置情報記憶部34に記憶された過去の設置位置の情報とを用いて、インクジェット印刷装置2の移動距離を算出する。
【0112】
そして、マイコン31は、インクジェット印刷装置2の移動距離が、予め設定された閾値以上である場合に、設置位置の変化を検出する。そして、マイコン31は、インクジェット印刷装置2の移動距離に基づいて設置位置の変化を検出した場合には、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と同様に、マイコン31は、印刷部10の動作(初期化動作)を禁止する。
【0113】
上記第2の実施形態のインクジェット印刷装置2によれば、設置位置の情報を取得し、その設置位置の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、設置位置の変化が検出された場合には、印刷部の動作を禁止するようにしたので、不適切な状態での動作による破損部品の増加や、インクの汚損範囲の拡大などを防止することができる。
【0114】
なお、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2は、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と設置位置の変化の検出方法が異なるだけであり、設置位置の変化の検出以降の処理については、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と同様である。
【0115】
また、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2においても、設置位置の変化を検出した場合、印刷部10の動作を禁止する代わりに、制限付き印刷処理を行うようにしてもよい。
【0116】
また、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2においても、マイコン31が、設置位置の情報に基づいて、印刷部10の動作の禁止と制限付き印刷処理とを切り替えるようにしてもよい。
【0117】
具体的には、たとえばマイコン31は、インクジェット印刷装置2の移動距離に基づいて設置位置の変化を検出した場合、その移動距離が予め設定された閾値以下である場合には、インクジェット印刷装置2の移動距離が短く、移動の影響が小さいものとして制限付き印刷処理を行い、上記閾値を超える場合には、移動の影響が大きいものとして印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。
【0118】
なお、設置位置の変化を検出する際に用いる移動距離の閾値を第1の閾値とし、上述したように印刷部10の動作の禁止と制限付き印刷処理とを自動的に切り替える際に用いる閾値を第2の閾値とすると、第1の閾値と第2の閾値との関係は、第1の閾値<第2の閾値である。
【0119】
上述したように、インクジェット印刷装置2の設置位置の情報(移動距離)に基づいて、印刷部10の動作の禁止と制限付き印刷処理とを切り替えるようにした場合には、インクジェット印刷装置1の移動による影響が小さいとみなされる場合には、リスクを最低限に抑えつつ印刷処理を行うことができるとともに、インクジェット印刷装置1の移動の影響が大きいとみなされる場合には、破損部品の増加などの発生を確実に防止することができる。
【0120】
また、第2の実施形態のインクジェット印刷装置2においても、マイコン31が、制限付き印刷処理と印刷部10の動作禁止とを自動的に切り替えるのではなく、操作パネルに対して、制限付き印刷処理のボタンと、印刷部10の動作禁止のボタンとを表示させるようにしてもよい。そして、ユーザが、制限付き印刷処理のボタンを選択した場合には、マイコン31が、上述した制限付き印刷処理を可能とし、印刷部10の動作禁止のボタンを選択した場合に、マイコン31が、印刷部10の動作を禁止するようにしてもよい。また、デフォルトの設定として印刷部10の動作の禁止とし、制限付き印刷処理のボタンのみを操作パネルに表示させるようにしてもよい。
【0121】
なお、上記第1および第2の実施形態は、本発明の印刷装置をインクジェット印刷装置に適用した例であるが、印刷方式としてはインクジェット方式に限らず、レーザ方式または孔版印刷方式の印刷装置に本発明の印刷装置を適用するようにしてもよい。
【0122】
また、上記第1および第2の実施形態は、本発明を印刷装置に適用した例であるが、印刷装置に限らない。商用電源の供給を受けて所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部を有する処理制御装置であれば、如何なる装置に適用するようにしてもよい。なお、印刷装置の場合、印刷部が、上記処理部に相当する。本発明は、たとえば読取センサを駆動機構によって移動させて原稿を読み取るスキャナ装置にも適用することが可能である。具体的には、スキャナ装置を移動させた場合にも駆動機構の設置状態が変わるなど不適切な状態となる可能性がある。したがって、たとえばスキャナ装置の設置位置の変化を検出した場合には、読取り処理を禁止したり、たとえば読取速度を遅くして制限付き読取り処理を行ったりしてもよい。これにより、スキャナ装置の故障などを防止することができる。
【0123】
本発明の印刷装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0124】
本発明の第1の印刷装置において、制御部は、印刷部の初期化動作の前に、設置位置の検出処理を行うことができる。
【0125】
また、本発明の第1の印刷装置において、電源情報取得部は、電源の情報として電源の電圧値および周波数の少なくとも一方を取得することができる。
【0126】
また、本発明の第1の印刷装置において、制御部は、電源の情報に基づいて、印刷部の動作の禁止と制限付き印刷処理とを切り替えることができる。
【0127】
また、本発明の第1の印刷装置においては、未使用の時間を取得する未使用時間取得部を備えることができ、制御部は、未使用時間取得部によって取得された未使用の時間または電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出することができる。
【0128】
また、本発明の第1の印刷装置においては、設置床との接触状態の変化を検出する設置状態検出部を備えることができ、制御部は、設置状態検出部による接触状態の変化または電源の情報に基づいて、設置位置の変化を検出することができる。
【0129】
また、本発明の第2の印刷装置において、制御部は、設置位置の情報に基づいて、印刷部の印刷処理の禁止と制限付き印刷処理とを切り替えることができる。
【0130】
本発明の処理制御装置は、電源の供給を受けて所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部と、電源の情報を取得する電源情報取得部と、電源情報取得部によって取得された電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、その設置位置の変化が検出された場合には、処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行う制御部とを備える。
【0131】
本発明の処理制御方法は、所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部に供給される電源の情報を取得し、その取得した電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出し、その設置位置の変化が検出された場合には、処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行う。
【0132】
本発明の処理制御プログラムは、所定の駆動機構を動作させて所定の処理を行う処理部に供給される電源の情報を取得するステップと、その取得した電源の情報に基づいて設置位置の変化を検出するステップと、その設置位置の変化が検出された場合には、処理部の処理を禁止するまたは制限付き処理を行うステップとをコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0133】
1 インクジェット印刷装置
2 インクジェット印刷装置
10 印刷部
20 電源部
21 電源情報取得部
22 電源電圧値検出回路
22a トランス
22b ダイオードブリッジ
22c コンデンサ
23 電源周波数検出回路
23a トランス
23b,23c LED
23d フォトトランジスタ
30 制御部
31 マイコン
32 アクチュエータドライバ
33 電源情報記憶部
34 設置位置情報記憶部
40 設置状態検出部
41 検出スイッチ
42 支持部材
50 設置位置情報取得部