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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041169
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】付与処理組成物、石鹸及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20230316BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230316BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20230316BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230316BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230316BHJP
   C11D 7/44 20060101ALI20230316BHJP
   C11D 3/382 20060101ALI20230316BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20230316BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20230316BHJP
   C11D 9/38 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q19/10
A61Q19/00
A61K35/644
A61P17/00 101
A61P17/16
A61Q15/00
C11D7/44
C11D3/382
C11D17/06
C11D17/08
C11D9/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148377
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】521403111
【氏名又は名称】ウェルビーイングラボ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川人 紫
(72)【発明者】
【氏名】永峯 由紀子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AC241
4C083AC242
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC17
4C083CC22
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
4C083EE18
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087CA03
4C087MA13
4C087MA16
4C087MA34
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZA90
4C087ZB35
4H003AB03
4H003BA01
4H003BA12
4H003DA02
4H003DC02
4H003EB46
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】女性のDZに対して付与する種々の優れた効果を奏する付与処理組成物、及び、女性のDZに付与して洗浄する洗浄方法を提供すること。
【解決手段】プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有し、女性のDZに対して付与するものであることを特徴とする付与処理組成物によって課題を解決した。また、該付与処理組成物を含有し、固形状、液状又は泡状である石鹸、及び、該付与処理組成物を女性のDZに対して付与して洗浄する洗浄方法によって課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有し、女性のDZに対して付与するものであることを特徴とする付与処理組成物。
【請求項2】
女性のDZの、防臭・消臭用、抗菌用、洗浄用、マイルドな洗浄・保湿用、又は、清涼・爽快感付与用である請求項1に記載の付与処理組成物。
【請求項3】
女性のDZに生息する嫌気性菌の抗菌用である請求項1又は請求項2に記載の付与処理組成物。
【請求項4】
女性のDZに生息する真菌の抗菌用である請求項1又は請求項2に記載の付与処理組成物。
【請求項5】
更に、高級脂肪酸の塩を含有する請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の付与処理組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の付与処理組成物を含有し、固形状、液状又は泡状であることを特徴とする石鹸。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の付与処理組成物を、女性のDZに対して付与して洗浄することを特徴とする洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性のデリケートゾーン(膣等を含む外陰部とその周辺を意味する)(以下、「DZ」と略記する)に付与する付与処理組成物に関し、更に、該付与処理組成物を含有する石鹸、該付与処理組成物を付与して洗浄する洗浄方法に関する。
【0002】
DZに付与する塗布剤や組成物としては種々知られている。また、体臭抑制、その原因菌の抑制等を目的としたものも知られている。
【0003】
特許文献1には、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、保湿剤等を含む薬剤と、該薬剤を保湿状態で保持する基布からなるウェットティシュ型塗布薬が記載されており、DZに適用できるとしている。
【0004】
特許文献2には、(ポリ)アルキレンオキシド誘導体とアミノ酸系陰イオン性界面活性剤と水とを特定の割合で含む身体洗浄剤組成物が記載されており、DZに適用してマイルドな使用感と洗浄中の泡の持続性に優れるとしている。
【0005】
特許文献3には、特定のリン酸誘導体を有効成分として含む体臭抑制剤が記載されており、該有効成分は、皮膚に適用することにより「体臭の原因物質の揮発性を低下させるグルタチオン」の合成を促進させて、脇下等の体臭を抑制する効果があるとしている。
【0006】
特許文献4には、植物由来成分を含むDZ用スキンケア剤が記載され、該植物として、グレープフルーツ、シソ、茶、カミツレ、ローズマリー等が挙げられており、日常生活において手軽にDZを清潔に保つことができるとしている。
【0007】
特許文献5には、エリスリトールを有効成分とする体臭抑制剤が記載され、それによると、体臭が抑制され、腋臭症が予防・改善され、体臭原因菌の数が抑制されるとしている。
【0008】
特許文献6には、乳酸菌とそれによる乳発酵液とを含むDZ塗布用組成物が記載され、該乳酸菌として、エンテロコッカス属の菌と乳酸桿菌とが挙げられており、該組成物をDZに塗布することにより、DZのフローラ(善玉菌の細菌叢)を整える薬用化粧品としての効果を奏するとしている。
【0009】
一方、プロポリスを有効成分として含有する体臭改善剤も知られている。
特許文献7には、プロポリスを含有する体臭改善剤を含む健康食品、栄養補助食品、サプリメント等が記載され、1日に1~3回経口投与することが好ましい旨が記載されている。すなわち、特許文献7では、プロポリスを食品に含有させることにより、それを食した人や飲用した人の体臭が改善されるとしている。
【0010】
しかしながら、特にDZに関しては、世間一般はもとより、医薬・医薬業界、化粧品業界、美容業界等において関心が低く、DZに付与することにより、防臭効果を奏することに加え、抗菌効果、洗浄効果、保湿効果等をも奏する組成物は、今まで殆ど開発されていなかった。
【0011】
DZの不快症状を改善し、これらを手軽に効果的に改善・治療することができるものについては見出されていない。
また、安心して手軽にDZに使用され、安全性の高い「洗浄効果等を奏するもの」も、今まで殆ど開発されていない状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-145762号公報
【特許文献2】特開2019-019079号公報
【特許文献3】特開2020-033326号公報
【特許文献4】特開2020-176099号公報
【特許文献5】特開2021-004196号公報
【特許文献6】特開2021-042172号公報
【特許文献7】特開2016-216392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、DZに対して付与する、種々の優れた性能・効果を奏する付与処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定成分を有効成分として含有する組成物が上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有し、女性のDZに対して付与するものであることを特徴とする付与処理組成物を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、女性のDZの、防臭・消臭用、抗菌用、洗浄用、マイルドな洗浄・保湿用、又は、清涼・爽快感付与用である前記の付与処理組成物を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、女性のDZに生息する嫌気性菌又は真菌の抗菌用である前記の付与処理組成物を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、更に、高級脂肪酸の塩を含有する前記の付与処理組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記の付与処理組成物を含有し、固形状、液状又は泡状であることを特徴とする石鹸を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記の付与処理組成物を、女性のDZに対して付与して洗浄することを特徴とする洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、前記問題点や課題を解決し、DZに対し、防臭性・消臭性、抗菌性、洗浄性、マイルドな洗浄性・保湿性、清涼性・爽快感等をも奏する組成物を提供することができる。
また、安心して手軽にDZに使用でき、安全性が高く(安全性に関しては全く問題にならず)、また印象も極めて良い、DZ用の組成物を提供することができる。
【0021】
本発明の付与処理組成物には、水を含有させることができる。すなわち、液状又は泡状にすることができる。
水を含有する場合や、本発明の付与処理組成物を付与した後に水洗する場合は、そこで使用した水によっても、防臭、抗菌、洗浄等は進行するが、本発明の付与処理組成物中に、更にプロポリス又はプロポリス抽出物が存在することによって、それらの性能・効果が助長される。
【0022】
また、本発明の付与処理組成物には、脂肪酸の塩を含有させることが好ましく、更には、高級脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を含有させることが特に好ましい。また、本発明の付与処理組成物には、石鹸(成分)を含有させることが好ましい。そして、それを含有する場合には、本発明の付与処理組成物を付与した後に水洗することは、ほぼ必須である。
そのとき、該脂肪酸の塩や該石鹸によっても、また、付与後の水洗水によっても、DZの防臭、抗菌、洗浄等は進行する。
【0023】
しかしながら、それらの場合でも、本発明の付与処理組成物中にプロポリス又はプロポリス抽出物が存在することによって、防臭、抗菌、洗浄等の性能・効果は増大する。
同条件で比較した場合、すなわち、本発明の付与処理組成物が脂肪酸の塩や石鹸(成分)等を含有する場合、それを付与した後(すなわち、本発明品を付与した後)に同様に水洗したときは、脂肪酸の塩や石鹸等のみを付与し、その後に水洗したときに比べて、防臭性、抗菌性、洗浄性、マイルドな洗浄性(保湿性)、清涼性・爽快感等、前記した性能・効果は増大する。
【0024】
本発明の付与処理組成物には抗菌作用が認められたので、女性のDZに生息する嫌気性菌の抗菌用として特に有用であり、更には、通性嫌気性菌の抗菌用として特に有用であり、また、グラム陽性菌の抗菌用として有用である。また、細菌と真菌に対する抗菌用として有用である。
その結果、膀胱炎、膣炎等の病気の予防等にも好適である。また、DZに生息する非病原菌や、日和見感染症の原因菌等に対しても効果を奏する。
【0025】
更に、プロポリス又はプロポリス抽出物は、天然物であり抗菌に対して程良い作用を有するので、言い換えれば、あらゆる菌に対して極めて強い抗菌作用を有する訳ではないので、DZのフローラ(デーデルライン桿菌等の善玉菌を含む菌叢)を整えることができる。本発明の付与処理組成物は、レンサ球菌(溶連菌等)、カンジダ菌等の所謂悪玉菌に対しても、特に抗菌効果を発揮する。
【0026】
本発明の付与処理組成物には、要すれば配合物を加え、固形状とすることによって、使い易くなり好ましいものとなる。更に、固形のフィルム状であって1回で使い切るような形態にすることによって、より使い易くなり、女性にとって極めて好ましいものとなる。
【0027】
本発明の付与処理組成物は、従来、見過ごされていたり、軽視されていたりしたDZに着目し、女性に対して、肉体的や精神的にも福音をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0029】
本発明は、プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有し、女性のDZに対して付与するものであることを特徴とする付与処理組成物である。
【0030】
<プロポリス、プロポリス抽出物>
「プロポリス」とは、ミツバチの巣の外壁等の巣壁を構成する物質のことを言う。
詳しくは、ミツバチが集めた、例えば、ハーブ等や樹木(の新芽)、花・葉等の植物からの収穫物と、自らの酵素成分を含む唾液とを混ぜあわせて、外壁や巣壁の隙間に作った樹脂状又は蝋状の固形の物質である。
ミツバチは、プロポリスによって、ウイルス、細菌、真菌等の進入や、巣内で死んだ昆虫等の腐敗を防ぎ、巣内を清潔に保っている。
【0031】
プロポリス(プロポリス原塊)は、限定はされないが、例えば、およそ、植物樹脂が55質量%、蝋が30質量%、芳香性精油が10質量%、花粉が5質量%という成分構成となっている。
プロポリスには、具体的には、例えば、カルボン酸、フラボノイド、テルペン、エステル、アルコール、アルデヒド、フェノール、アミノ酸、酵素、ビタミン、オリゴ糖、多糖、ミネラル等が含まれていることが知られている。
【0032】
本発明に使用されるプロポリスとしては、例えば、ブラジル産、中国産、ヨーロッパ諸国産、オセアニア産、マケドニア産、アメリカ産、日本産等、何れの産地のものであってもよい。また、ミツバチが収穫する対象の上記植物についても、アレクリン、ユーカリ等を含め、何れの植物であってもよい。
ミツバチの種類は、特に限定されず、例えば、セイヨウミツバチ、アフリカミツバチ、ニホンミツバチ、それらの交雑種等を挙げることができる。また、プロポリスの品質ランクに限定はない。
【0033】
本発明の付与処理組成物は、プロポリス(プロポリス原塊)又はプロポリス抽出物を有効成分として含有するが、該プロポリス抽出物としては、プロポリス(原塊)から、水又は親水性有機溶媒を含有する溶媒で抽出したもの、超臨界抽出をしたもの等が挙げられる。
抽出前に、粉砕等の前処理をしてもよく、抽出後に、溶媒留去による濃縮;該濃縮による固形化・粉末化;他の粉末と混合することによる固形化・造粒;等の処理が施されたプロポリス処理物であってもよい。
【0034】
「プロポリス抽出物」は、水及び/又は親水性有機溶媒を含有する溶媒で抽出したものが、抽出効率(速度)、有効成分をバランス良く含有する点から好ましい。
該親水性有機溶媒としては、エタノールが好ましく、該溶媒としては、水、エタノール、水とエタノールの混合溶媒等が特に好ましい。
【0035】
プロポリス、プロポリス抽出物、その処理物は、市販されているものを用いてもよい。
具体的には、例えば、株式会社山田養蜂場製の「プロポリス300」、「プロポリス液30(ブラジル産)」、「プロポリスヘルプ」、「プロポリス粒」、「プロポリス顆粒APC」、「プロポリスマイルド」、「プロポリスドリンク」等が挙げられる。また、ブラジル、中国、ヨーロッパ、マケドニア、オセアニア、アメリカ等から輸入されたものが挙げられる。
【0036】
上記「プロポリス又はプロポリス抽出物」は、1種のみ(の形態で)用いてもよいし、2種以上(の形態)を組み合わせて用いてもよい(併用してもよい)。
【0037】
<液状又は泡状の付与処理組成物>
本発明の付与処理組成物は、プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有するが、該有効成分以外に、水等の液体を含有させて、液状又は泡状の付与処理組成物とすることができる。
「液状又は泡状の付与処理組成物」には、粘度の低い水性液体、粘度の高いクリーム、ジェル等の形態が含まれる。
【0038】
液状又は泡状の付与処理組成物とする際には、水以外に、エタノール、(ジ)エチレングリコール、(ジ)プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリン等の液体を含有させることも好ましい。
また、泡状にするため、その他の目的で、界面活性剤を配合させることも好ましい。
【0039】
液状又は泡状の付与処理組成物の場合は、有効成分である「プロポリス又はプロポリス抽出物」は、該付与処理組成物全体に対して、固形分として、0.01質量%以上5.0質量%以下で含有させることが好ましく、0.03質量%以上1.5質量%以下で含有させることがより好ましく、0.10質量%以上0.5質量%以下で含有させることが特に好ましい。
有効成分である「プロポリス又はプロポリス抽出物」は、上記範囲より少ないと、本発明の効果を奏しない場合があり、一方、上記範囲より多いと、それ以上の効果が発揮されない、液体に溶解し難い、高価になり過ぎる等の場合がある。
【0040】
上記「液状又は泡状の付与処理組成物」は、水等の液体を含有するが、更に、後記するような「他の成分」を含有させることもできる。
【0041】
本発明は、前記の付与処理組成物を含有し、液状又は泡状であることを特徴とする石鹸でもある。言い換えると、本発明は、液状石鹸又は泡状石鹸でもある。
【0042】
<固形状の付与処理組成物>
本発明の付与処理組成物は、プロポリス又はプロポリス抽出物を有効成分として含有するが、該有効成分以外に、脂肪酸の塩や石鹸の成分を含有させて、固形状の付与処理組成物とすることができる。
【0043】
上記脂肪酸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の何れでもよいが、飽和脂肪酸が好ましい。該脂肪酸の炭素数は、特に限定はないが、カルボキシル基の炭素数も入れて、6以上24以下が好ましく、8以上22以下がより好ましく、12以上18以下が特に好ましく、それらの混合物でもよい。
上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が、水溶性を付与できる等の点から好ましい。
【0044】
上記脂肪酸の由来としては、特に限定はなく、ヤシ油、パーム油、牛脂、オリーブ油等の天然由来品;化学的な(半)合成品;等が挙げられる。
【0045】
上記「石鹸」としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ石鹸が挙げられ、「例えば、牛脂・羊脂・豚脂・硬化油・ヤシ油・綿実油等の動物油や植物油」を、水酸化ナトリウム等でケン化して得られるもののナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。
【0046】
固形状の付与処理組成物の場合は、有効成分である「プロポリス又はプロポリス抽出物」は、該付与処理組成物全体に対して、固形分として、0.01質量%以上5.0質量%以下で含有させることが好ましく、0.03質量%以上1.5質量%以下で含有させることがより好ましく、0.10質量%以上0.5質量%以下で含有させることが特に好ましい。
有効成分である「プロポリス又はプロポリス抽出物」は、上記範囲より少ないと、本発明の効果を奏しない場合があり、一方、上記範囲より多いと、それ以上の効果が発揮されない、脂肪酸の塩や石鹸に相溶又は微分散し難い、製造し難い、高価になり過ぎる等の場合がある。
【0047】
上記「固形状の付与処理組成物」は、脂肪酸の塩や石鹸の成分を含有することが好ましいが、更に、後記するような「他の成分」を含有させることもできる。
【0048】
本発明は、前記の付与処理組成物を含有し、固形状であることを特徴とする石鹸でもある。言い換えると、本発明は、固形石鹸でもある。
【0049】
<<フィルム状の付与処理組成物>>
本発明の付与処理組成物は、固形のフィルム状であって1回で使い切るようになっている固形石鹸であることが好ましい。言い換えると、所謂「紙石鹸」であることが好ましい。本発明の固形状の付与処理組成物や固形石鹸の形態は、フィルム状であって1回で使い切るようになっていることが特に好ましい。
【0050】
フィルム状であって1回で使い切るようになっていることによって、使用し易い、収納・保管・所持がし易い、体積が小さいので使用若しくは所持していることが分からない、1回の使用で無くなる(存在しなくなる)ので上記効果を奏し易く便利である、等の利点がある。
【0051】
<他の成分>
本発明の付与処理組成物は、有効成分としてプロポリス又はプロポリス抽出物を含有することが必須であるが、それ以外に、例えば下記する「他の成分」を、本発明による効果を妨げない限り含有することができる。
下記「他の成分」は、固形状、液状、泡状を問わず、何れの「付与処理組成物や石鹸」にも好適に含有させることができる。
【0052】
「他の成分」としては、例えば、賦形剤、結合剤、基剤、フィラー、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、発泡剤、泡安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、清涼剤、着色料、香料、精油、植物抽出物、安定化剤、増粘剤、防腐剤、徐放調整剤等が挙げられる。
「他の成分」の化学種としては、例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸類、脂肪類、タンパク質類、四級アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0053】
<用途>
本発明の付与処理組成物は、女性のDZの、防臭・消臭用、抗菌用、洗浄用、マイルドな洗浄・保湿用、清涼・爽快感付与用等に特に好適に用いられる。
本発明の付与処理組成物には、女性のDZに付与することによって、抗菌効果、防臭効果、洗浄効果、清涼効果、保湿効果等があることが確認されている。
従って、本発明は、女性のDZの、防臭・消臭用、抗菌用、洗浄用、マイルドな洗浄・保湿用、又は、清涼・爽快感付与用の付与処理組成物でもある。
【0054】
<<抗菌用付与処理組成物>>
実施例に示したように、本発明の付与処理組成物には抗菌作用が認められたので、本発明は「DZの抗菌用付与処理組成物」でもある。
本発明の付与処理組成物は、DZに生息・存在する、種々の細菌、又は、カンジダ菌等の真菌の抗菌用として有用である。
本発明の付与処理組成物は、特に、DZに生息又は存在する嫌気性菌の抗菌用として特に有用であり、更には、通性嫌気性菌の抗菌用として特に有用であり、また、表皮ブドウ球菌、レンサ球菌(溶連菌等)等のグラム陽性菌でも、大腸菌等のグラム陰性細菌の抗菌用としても有用である。
また、DZに生息する、非病原菌や常在菌、日和見感染症の原因菌等に対しても、抗菌効果を発揮する。
【0055】
<<洗浄用付与処理組成物>>
本発明の付与処理組成物は、限定はされないが、前記した通り、DZに付与した後、DZを水洗することが好ましい。該水洗は、残存する過剰の付与処理組成物を除くためや、特に、本発明の付与処理組成物が、高級脂肪酸の塩、石鹸成分、前記した他の成分等を含有する場合にはそれらを除くために行われる。
本発明の洗浄用付与処理組成物は、該水洗に先立ってDZに付与することによって使用されるが、該水洗のみの場合よりも、本発明の付与処理組成物の付与に次いで水洗を行った方が、抗菌効果が強い、言い換えれば洗浄効果がより奏される。
【0056】
<<防臭用付与処理組成物、清涼用付与処理組成物>>
本発明の付与処理組成物には、抗菌効果があり、洗浄効果が単なる水洗よりもあるので、その結果、本発明は「DZの防臭用付与処理組成物」でもあり、「DZの清涼用・爽快感用付与処理組成物」でもある。
【0057】
<<保湿用付与処理組成物>>
プロポリス又はプロポリス抽出物には、前記した通り、ミツバチが運んできた又は産生(分泌)した植物樹脂、蝋、精油等が含有され、具体的には、カルボン酸、フラボノイド、テルペン、エステル、アルコール、フェノール、アミノ酸、糖類、ミネラル等が含まれているので、DZに保湿性・マイルド性を好適に与えることができる。
従って、本発明は「DZの保湿用・マイルドな洗浄用付与処理組成物」でもある。
【0058】
<洗浄方法>
本発明は、前記の付与処理組成物を、女性のDZに対して付与して洗浄することを特徴とする洗浄方法でもある。
本発明の付与処理組成物をDZに付与する前に、水で洗浄することもできる。
また、本発明の付与処理組成物をDZに付与した後に、水で洗浄することもできる。特に、本発明の付与処理組成物が、高級脂肪酸の塩等の石鹸成分を含む場合には、該石鹸成分を除くために、該付与処理組成物を付与した後に、水で洗浄することが好ましい。
【実施例0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
製造例1
<液状の石鹸の製造>
以下の組成の、高級脂肪酸の塩を含有する液状の付与処理組成物、すなわち、液状の石鹸を調製した。得られたものを「プロポリス配合」と略記する。
対照として、「プロポリス又はプロポリス抽出物」を含有させなかった以外は同組成(比)のものを調製した。得られたものを「コントロール」と略記する。
【0061】
<<液状石鹸「プロポリス配合」の組成>>
プロポリス又はプロポリス抽出物:マケドニアの農家から直接購入した「マケドニア産プロポリス」1.00質量部
高級脂肪酸の塩:炭素数12~18個の直鎖飽和脂肪酸のナトリウム塩10.0質量部
純水1000質量部
【0062】
ここで、上記「マケドニア産プロポリス」は、固形状のプロポリス自体からなるものである。
また、上記「炭素数12~18個の直鎖飽和脂肪酸のナトリウム塩」は、ヤシ油、パーム油、牛脂及び/又はオリーブ油に含まれる脂肪酸をナトリウム塩にして水に可溶にしたものである。
【0063】
上記成分を全て撹拌容器に入れ、液を35℃に加熱して、1時間撹拌した後、簡易濾過をして液中の不溶分を除去して、液状の付与処理組成物(液状の石鹸)を調製した。これを「プロポリス配合」と略記する。
【0064】
評価例1
<サンプリング方法>
女性A~Fの計6名に、製造例1で調製した液状の付与処理組成物(液状の石鹸、「プロポリス配合」)を、以下に示す手順で、それぞれ、DZに付与してもらい、途中、サンプリングをしてもらった。
同様の処理を、プロポリスを含有していない液状の石鹸(コントロール)でも行ってもらった。
【0065】
該付与に先立ち、綿棒でDZを拭ってもらった。以下の評価において、該綿棒で拭えたものを「付与前」と略記する。
【0066】
上記プロポリス含有の付与処理組成物10g、又は、プロポリスを含有していない液状の石鹸(コントロール)10gを、手のひらに取り、各自のDZに付与してもらった。そのまま1分放置し、1分後、弱い圧力のシャワーで、5秒間、各自のDZを水で流してもらった。
【0067】
その後、別の綿棒でDZを拭ってもらった。以下の評価において、上記付与処理後、該綿棒で拭えたものを「付与後」と略記する。
【0068】
<抗菌性の評価方法>
評価例1でサンプリングした、「付与前」と「付与後」の綿棒を、それぞれ、「固体培地である寒天培地を入れた直径20cmのシャーレ」に、常法に従い軽く塗りつけた。
【0069】
恒温槽に入れ、常法に従って培養し、コロニーの有無を観察し、それぞれのコロニーの菌を同定し、該菌ごとにコロニーの面積を測定した。同種の菌のコロニーが複数得られた場合は、菌ごとに、該複数のコロニーの面積を合計した。
【0070】
<抗菌性の判定方法>
抗菌性は、シャーレ中の「菌ごとのコロニーの面積(の合計)」を用いて、以下の表1に示した基準で判定した。
【0071】
【表1】
【0072】
<抗菌性の評価結果>
<<表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)>>
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対する抗菌性を表2に示す。
表皮ブドウ球菌は、グラム陽性の通性嫌気性菌である。
【0073】
【表2】
【0074】
製造例1で調製した「プロポリス含有の付与処理組成物(プロポリス配合)」では、被験者Aを除いた全ての被験者(B~F)で著しい抗菌性が認められた。
一方、プロポリス非含有の「コントロール」では、被験者Eでは付与前と付与後で変化なし、被験者Aでは付与後の方が付与前より菌が逆に多い結果となり、有意な抗菌効果が認められなかった。
【0075】
<<大腸菌(Escherichia coli)>>
大腸菌(Escherichia coli)に対する抗菌性を表3に示す。
大腸菌は、グラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌である。
【0076】
【表3】
【0077】
製造例1で調製した「プロポリス含有の付与処理組成物(プロポリス配合)」では、被験者Fだけは、付与後の方が付与前より菌が若干多い結果となったが、一方、プロポリス非含有の「コントロール」では、被験者A、D、Eの3人で、付与後の方が付与前より菌が多い結果となった。「プロポリス配合」では、「コントロール」と比べて良結果が得られた。
【0078】
<<エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)>>
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に対する抗菌性を表4に示す。
エンテロコッカス・フェカリスは、グラム陽性の球菌で通性嫌気性菌である。
【0079】
【表4】
【0080】
<<レンサ球菌(α-Streptococcus)>>
レンサ球菌(α-Streptococcus)に対する抗菌性を表5に示す。
レンサ球菌は、グラム陽性の球菌で、通性嫌気性又は偏性嫌気性菌であり、所謂、悪玉菌である。
【0081】
【表5】
【0082】
被験者Eで、付与前に「2+」であったが、製造例1で調製した「プロポリス含有の付与処理組成物(プロポリス配合)」で処理すると、「2+」が「0+」となった。しかし、プロポリス非含有の「コントロール」で処理しても、「2+」が「2+」のままであり、抗菌効果がなかった。
所謂善玉菌に対する抗菌効果より、レンサ球菌と言った悪玉菌への抗菌効果が強いと言う結果が得られた。
【0083】
製造例2
<石鹸成分なし液状>
製造例1において、「高級脂肪酸の塩」(石鹸成分)を配合しない以外は、製造例1と同様にして、高級脂肪酸の塩を含有しない液状の付与処理組成物(「プロポリス配合」)を調製した。
また、「高級脂肪酸の塩」(石鹸成分)も、プロポリスも含有しない「コントロール」(すなわち純水のみ)を準備した。
【0084】
評価例2
評価例1と同様に、製造例2の「高級脂肪酸の塩を含有しない液状の付与処理組成物(「プロポリス配合」)の抗菌性を評価したところ、製造例1の高級脂肪酸の塩(石鹸成分)を含有する場合(評価例1)に比べて、付与後の菌の絶対量は多かったが(付与後における菌の減り方は少なかったが)、コントロール(純水)に比較して、付与後では付与前より菌の数が減少した。付与前後での菌の減少率が大きかった。
【0085】
製造例3
<固形状の石鹸の製造>
純水1000質量部に、以下の成分・組成を溶解し、液を35℃に加熱して、1時間撹拌した後、簡易濾過をして液中の不溶分を除去した後、純水を加熱減圧留去して、固形状の付与処理組成物(固形状の石鹸)を調製した。
固形状石鹸の組成は以下である。
【0086】
<<固形状石鹸の組成>>
プロポリス又はプロポリス抽出物:製造例1で使用したもの0.1質量部
高級脂肪酸の塩:炭素数12~18個の直鎖飽和脂肪酸のナトリウム塩100質量部
【0087】
評価例3
評価例1と同様に、製造例3の「固形状の付与処理組成物(プロポリス配合)の抗菌性を評価したところ、製造例1の「液状の付与処理組成物」と比べて、それぞれの菌に関して、評価例1とほぼ同等の結果が得られた。
紙石鹸は固形状石鹸であるから、紙石鹸でも同等の効果が得られるはずである。
【0088】
評価例4
<カンジダ菌(真菌)に対する抗菌性>
評価例1~3の被験者の中に、カンジダ菌を有する者がいなかったので、寒天培地を使用したハロー法を用いて抗菌性を評価した。
【0089】
<<検体>>
製造例1で用いたプロポリスと同じもの、すなわち「プロポリス配合」を、メンブレンフィルターを用いて濾過して「検体」とした。
【0090】
<<試験菌の種類、試験菌液の調製>>
試験菌として、カンジダ菌:Candida albicans NBRC 1594 を用いた。
上記試験菌を、サブロー・デキストロース寒天培地(SDA)に接種し、20~25℃で48時間培養後、生理食塩水を用いて菌数が10CFU/mLとなるように調整したものを試験菌液とした。
【0091】
<<試験方法>>
上記試験菌液をSDAに塗抹接種して試験培地とした。
メンブレンフィルターを用いて濾過滅菌した検体を、ペーパーディスク(直径8mm)に含浸させ試験片とし、その試験片を試験培地の中央にのせた。
20~25℃で48~120時間培養後、発育阻止帯(ハロー)の直径を測定し、ハローの幅Wを以下の方法で算出した。検体の代わりに滅菌精製水を対照として用い、同様に試験を行った。
このハローの幅W(mm)で抗菌性を定量的に評価した。
【0092】
<<<ハローの幅Wの算出法>>>
ハローの幅Wを以下の式(1)により算出した。
W=(T-D)/2 ・・・・(1)
W:ハローの幅(mm)
T:試験片とその周りのハローの合計直径(mm)
D:試験片の直径(mm)
【0093】
<<結果>>
検体の試験菌に対する抗菌性について、ハロー法を用いた結果を以下の表6に示す。
検体(プロポリス)はn=3で、対照(滅菌精製水)はn=1で行った。
【0094】
【表6】
【0095】
以上から分かる通り、検体(プロポリス)は、カンジダ菌(真菌)に対して抗菌性を示した。これより、評価例1のように、DZに対して付与して評価しても、同様の結果が得られることが示唆された。カンジダ菌と言った悪玉菌への抗菌効果が強いと言う結果が得られた。
【0096】
評価例5
<DZへのマイルドな洗浄性(保湿性)の評価>
2名の女性の被験者P及び被験者Qによる使用感の評価を行った。
製造例1で製造した「高級脂肪酸の塩を含有する液状の付与処理組成物(液状の石鹸)」をこの評価にも使用した。製造例1と同様に、これを「プロポリス配合」と略記する。
また、対照として、「プロポリス又はプロポリス抽出物」を含有させなかった以外は同組成(比)のものを、この評価にも使用した。製造例1と同様に、これを「コントロール」と略記する。
【0097】
「プロポリス配合」1gを手に取って、手の平で十分に泡立てた後、DZへのマイルドな洗浄性(保湿性)について、被験者各人が、下記絶対評価にて、0点~3点の4段階で判定した。
「コントロール」についても同様に評価(判定)した。結果を以下の表7に示す。
【0098】
<<評価(判定)基準>>
3:洗浄中及び洗浄後に、マイルドな洗浄性を十分に感じられた
2:洗浄中及び洗浄後に、マイルドな洗浄性を感じられた
1:洗浄中及び洗浄後に、マイルドな洗浄性をあまり感じなかった
0:洗浄中及び洗浄後に、マイルドな洗浄性(保湿性)を全く感じなかった
【0099】
【表7】
【0100】
<結果>
被験者の両方(P、Q)とも、「プロポリス配合」の方が、「コントロール」より、DZのマイルドな洗浄性(保湿性)をより強く感じた。
【0101】
評価例6
<DZの清涼感・爽快感の評価>
2名の女性の被験者P及び被験者Qによる清涼感・爽快感の評価を行った。
本発明の「プロポリス配合」、対照としての「コントロール」は、評価例5と同様、製造例1で製造したものを使用した。
【0102】
「プロポリス配合」1gを手に取って、手の平で十分に泡立てた後、DZの洗浄後の清涼感や爽快感について、被験者各人が、下記絶対評価にて、0点~3点の4段階で判定した。
「コントロール」についても同様に評価(判定)した。結果を以下の表8に示す。
【0103】
<<評価(判定)基準>>
3:洗浄後に、さっぱりとした清涼感や爽快感が十分に得られた
2:洗浄後に、清涼感や爽快感が得られた
1:洗浄後に、清涼感や爽快感があまり得られなかった
0:洗浄後に、清涼感や爽快感が得られなかった
【0104】
【表8】
【0105】
<結果>
被験者の両方(P、Q)とも、「プロポリス配合」の方が、「コントロール」より、DZの洗浄後の清涼感や爽快感をより強く感じた。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明における付与処理組成物は、女性のDZに直接付与するものであり、ヘルスケア、化粧品、医療、医薬、介護、美容、生活雑貨、サニタリー製品、油脂加工製品、石鹸等の、製造・販売・使用分野等に広く利用されるものである。