(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041213
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】供給設備およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20230316BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20230316BHJP
B63J 3/04 20060101ALI20230316BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63J99/00 A
B63J3/04
B63B11/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148446
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】市村 欣也
(57)【要約】
【課題】船舶の位置に関わらず電気を供給できる供給設備およびその制御方法を提供する。
【解決手段】船舶に対して電気を供給する供給設備1の制御方法において、電気を発生させる発電機構2と、この発電機構2が搭載される第一補助船舶3とを供給設備1が予め備えていて、第一補助船舶3を船舶に接近させるとともにケーブル6で接続して、このケーブル6を介して第一補助船舶3から船舶に電気を供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に対して電気を供給する供給設備において、
電気を発生させる発電機構と、この発電機構が搭載される第一補助船舶とを備えていて、前記船舶と前記第一補助船舶とを接続するケーブルを介して前記船舶に電気を供給することを特徴とする供給設備。
【請求項2】
前記発電機構に燃料を供給する燃料タンクを備える請求項1に記載の供給設備。
【請求項3】
前記燃料タンクが搭載される第二補助船舶を備える請求項2に記載の供給設備。
【請求項4】
前記燃料タンクが水素燃料を貯留していて、前記発電機構が前記水素燃料を利用して発電する請求項2または3に記載の供給設備。
【請求項5】
前記船舶と前記第一補助船舶とを連結する第一連結機構を備えていて、
前記船舶に対する前記第一補助船舶の初期位置が予め設定されていて、この初期位置よりも前記第一補助船舶が前記船舶に対して接近する際および離間する際に復元力を発生させる復元部を前記第一連結機構が有する請求項1~4のいずれかに記載の供給設備。
【請求項6】
前記第一補助船舶と前記第二補助船舶とを連結する第二連結機構を備えていて、
前記第一補助船舶に対する前記第二補助船舶の初期位置が予め設定されていて、この初期位置よりも前記第二補助船舶が前記第一補助船舶に対して接近する際および離間する際に復元力を発生させる復元部を前記第二連結機構が有する請求項3に記載の供給設備。
【請求項7】
船舶に対して電気を供給する供給設備の制御方法において、
電気を発生させる発電機構と、この発電機構が搭載される第一補助船舶とを前記供給設備が予め備えていて、前記第一補助船舶を前記船舶に接近させるとともにケーブルで接続して、このケーブルを介して前記第一補助船舶から前記船舶に電気を供給することを特徴とする供給設備の制御方法。
【請求項8】
前記発電機構に燃料を供給する燃料タンクと、この燃料タンクが搭載される複数の第二補助船舶とを前記供給設備が予め備えていて、
前記第一補助船舶に燃料を供給する前記第二補助船舶を別の前記第二補助船舶に切り替えることで、前記第一補助船舶への燃料の供給を継続させる請求項7に記載の供給設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に対して電気を供給する供給設備およびその制御方法に関するものであり、詳しくは船舶の位置に関わらず電気を供給できる供給設備およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
岸壁に係留中の船舶に電気を供給する供給設備が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には海底から延びるケーブルを船舶に接続することで、船舶に電気を供給する供給設備が開示されている。ケーブルは岸壁側に固定される設備であるため、ケーブルの届く範囲にしか船舶を係留させることができなかった。
【0003】
船舶を係留可能な空間が岸壁にあってもケーブルが届かないために船舶を係留できないことがあった。岸壁の空間を効率よく利用して多くの船舶を係留させることが従来は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2012-239365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は船舶の位置に関わらず電気を供給できる供給設備およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための供給設備は、船舶に対して電気を供給する供給設備において、電気を発生させる発電機構と、この発電機構が搭載される第一補助船舶とを備えていて、前記船舶と前記第一補助船舶とを接続するケーブルを介して前記船舶に電気を供給することを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成するための供給設備の制御方法は、船舶に対して電気を供給する供給設備の制御方法において、電気を発生させる発電機構と、この発電機構が搭載される第一補助船舶とを前記供給設備が予め備えていて、前記第一補助船舶を前記船舶に接近させるとともにケーブルで接続して、このケーブルを介して前記第一補助船舶から前記船舶に電気を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電機構を搭載される第一補助船舶を移動させることができるため、船舶の位置に関わらず電気を供給できる。岸壁の空間を効率よく利用して多くの船舶を係留させるには有利である。ある岸壁に船舶が停泊していない場合には、別の岸壁に停泊中の船舶に第一補助船舶は電気を供給できる。船舶に対して電気を供給する供給設備を全ての岸壁に配置する必要がないため投資を抑制するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の供給設備をA-A矢視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の供給設備の変形例を例示する説明図である。
【
図4】供給設備から船舶に電気を供給している状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、供給設備およびその制御方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中では第一補助船の前後方向を矢印y、この前後方向を直角に横断する幅方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0011】
図1に例示するように供給設備1は、電気を発生させる発電機構2と、この発電機構2が搭載される第一補助船舶3とを備えている。発電機構2は、例えば軽油を燃料として駆動するディーゼルエンジンと発電用モータとを組み合わせたディーゼル発電機で構成できる。また発電機構2は、水素ガスを燃料として発電を行う燃料電池や水素エンジンや水素ガスタービンで構成されてもよい。
【0012】
第一補助船舶3は、一般的な船舶と同様に海上を自力で移動することができる。つまり第一補助船舶3は、推進用の動力を発生させるエンジンまたはモータ等を有している。
【0013】
供給設備1は、発電機構2に燃料を供給する燃料タンク4を備えていてもよい。この実施形態では燃料タンク4は第一補助船舶3に搭載されている。供給設備1は、燃料タンク4を備えず外部から燃料の供給を受ける構成であってもよい。燃料タンク4に貯留される燃料は、発電機構2に合わせて適宜選択される。発電機構2がディーゼル発電機で構成される場合は、燃料タンク4に軽油が貯留される。
【0014】
発電機構2が燃料電池で構成される場合は、燃料タンク4に水素燃料が貯留される。水素燃料は水素ガスに限らず液体水素であってもよい。本明細書において液体水素は、水素とトルエンとを化学反応させたメチルシクロヘキサンも含まれる。燃料タンク4に充填される燃料は、アンモニウムや水素化合物であってもよい。また燃料はメタンやエタンなど炭素数の比較的少ないアルカン(炭素数4以下)で構成されてもよい。燃料が水素燃料や炭素数の比較的少ないアルカンで構成される場合は、軽油に比べて二酸化炭素の排出量を抑制できる。
【0015】
発電機構2と燃料タンク4とは燃料を供給するためのパイプ5で連結されている。パイプ5は、鋼管や変形可能なホースなど搬送される燃料に応じて適宜構成される。
【0016】
供給設備1が、燃料タンク4と発電機構2との間に配置される変換部を備えていてもよい。変換部は供給設備1の必須の構成要件ではない。変換部は、燃料タンク4から供給される燃料を発電機構2に適する形に変換する構成を有している。変換部は、例えば燃料タンク4から供給される液体水素を適切な圧力を有する水素ガスに変換したり、メチルシクロヘキサンを水素ガスとトルエンとに分離して水素ガスを取り出したりする構成を有している。
【0017】
供給設備1は、電気の供給先である船舶と発電機構2とを接続するケーブル6を備えていてもよい。ケーブル6は供給設備1の必須の構成要件ではない。電気の供給先である船舶がケーブルを有していて、このケーブルが発電機構2に接続される構成であってもよい。船舶と供給設備1との両方がケーブルを有していて、このケーブルどうしを接続する構成であってもよい。
【0018】
図1および
図2に例示するように供給設備1が、電気の供給先である船舶と第一補助船舶3とを連結する第一連結機構7を備えていてもよい。第一連結機構7は供給設備1の必須の構成要件ではない。
【0019】
図2に例示するように第一連結機構7は、例えば複数の腕部7aと、腕部7aどうしを連結する関節部7bとを有している。腕部7aは例えば直線状の鋼材で構成される。関節部7bは例えば球面軸受やユニバーサルジョイントで構成される。また関節部7bは所定の一軸方向を中心に回転するヒンジで構成されてもよい。この実施形態では腕部7aの端部と第一補助船舶3との間にも関節部7bが配置されている。
【0020】
また腕部7aと腕部7aとの間に例えば伸縮シリンダで構成される復元部7cが配置されている。復元部7cは伸縮シリンダに限定されない。第一連結機構7の所定の状態を初期状態として、この初期状態から変化したときに初期状態に戻す方向に復元力が発生する構成を復元部7cは有していればよい。
図2では説明のため初期状態である第一連結機構7を実線で示し、収納状態である第一連結機構7を破線で示している。第一連結機構7が収納状態であるとき、復元部7cは機能せず復元力を発生させない状態となる。
【0021】
第一連結機構7の一端は第一補助船舶3に連結されて、他端は開放端となる。第一連結機構7の開放端には、電気の供給先である船舶の例えば舷側に吸着する吸着部7dが配置されてもよい。吸着部7dは関節部7bを介して腕部7aの端部に連結されている。吸着部7dは例えば電磁石で構成されて磁力により第一連結機構7の開放端を船舶に固定する。また吸着部7dは例えばポンプで構成されて真空吸着により開放端を船舶に固定する。
【0022】
次に船舶に対して供給設備1から電気を供給する方法を説明する。船舶が例えば荷役等のために岸壁に係留されているとき、船舶に対して第一補助船舶3を接近させる。供給設備1が第一連結機構7を備える場合は、第一連結機構7を介して第一補助船舶3が船舶に連結される。その後、第一補助船舶3の発電機構2と船舶とをケーブルで接続する。燃料タンク4から供給される燃料により発電機構2は発電して、電気を船舶に供給する。船舶は供給設備1から電気を供給されるため、船舶に予め搭載されているディーゼル発電機等の補機発電機を停止させることができる。船舶の補機発電機から排ガスが排出されない状態となる。
【0023】
供給設備1は第一補助船舶3により海上を自由に移動することができるため、岸壁に係留されている船舶の位置に関わらずこの船舶に電気を供給できる。岸壁の空間を効率よく利用して多くの船舶を係留させるには有利である。大小様々な船舶を効率よく岸壁に係留することができる。
【0024】
さらにある岸壁に船舶が停泊していない場合には、別の岸壁に停泊中の船舶に第一補助船舶は電気を供給できる。船舶に対して電気を供給する供給設備1を全ての岸壁に配置する必要がないため投資を抑制できる。
【0025】
係留中の船舶に対して電気を供給するための供給設備1が、ケーブルも含めて岸壁に配置されない。岸壁における荷役作業等は供給設備1により妨げられないため、荷役作業等の際に岸壁を効率よく利用できる。
【0026】
供給設備1は第一補助船舶3により移動できるため、岸壁に係留されている船舶に限らず電気を供給できる。例えば岸壁に向かって航行中の船舶に対しても供給設備1から電気を供給できる。また岸壁から離岸して沖に向かって航行中の船舶に対しても電気を供給できる。例えば船舶の推進力を発生させる主機を停止してタグボートにより移動している最中であっても、供給設備1から船舶に電気を供給できる。そのため船舶は主機に加えてディーゼル発電機等の補機発電機も停止した状態で岸壁への接岸および離岸が可能となる。沿岸部において船舶から排出される排ガスの量を抑制するには有利である。
【0027】
港湾内で岸壁への接岸を待っている状態の船舶に対して、供給設備1は電気を供給できる。船舶は岸壁への接岸を数日にわたり待たされる場合がある。このような場合であっても供給設備1から電気を供給することで、港湾内において船舶から排出される排ガスの量を抑制できる。また待機していた船舶が接岸して岸壁に係留される場合に、供給設備1は電気の供給を維持したまま船舶とともに岸壁まで移動できる。船舶が岸壁に係留された後も、供給設備1による電気の供給が継続される。船舶の接岸前から接岸後にわたる電気の供給を継続可能とする構成を供給設備1は有している。
【0028】
供給設備1が水素燃料など軽油よりも二酸化炭素の排出量が少ない燃料を使用して発電する場合には、岸壁から沿岸部にわたる広い範囲で二酸化炭素の排出量を抑制することが可能となる。港湾の排ガス基準等に適合しない船舶であっても、入港させることが可能となる。
【0029】
第一補助船舶3が港湾の排ガス基準の適合した排ガス処理装置を搭載していてもよい。この場合は第一補助船舶3に搭載される発電機構2がディーゼル発電機であっても、港湾内で排出されるSOxやNOxを抑制できる。港湾の排ガス基準に適合しない古い船舶であっても港湾に入港させることが可能となる。港湾において入港可能となる船舶の範囲を広げることができる。船舶の補機発電機の燃料よりも硫黄の含有量の少ない低硫黄燃料を供給設備1が使用して発電する場合には、排ガス処理装置を有さない場合であっても、港湾内で排出されるSOxやNOxを抑制できる。
【0030】
図3に例示するように燃料タンク4が、第一補助船舶3とは別の第二補助船舶8に搭載される構成を有していてもよい。つまり供給設備1が第一補助船舶3および第二補助船舶8を備える構成であってもよい。供給設備1が複数の第二補助船舶8を備えることが望ましい。第二補助船舶8は、第一補助船舶3と同様に推進用のエンジン等を有していて海上を自力で移動することができる。第二補助船舶8が推進用のエンジン等を有さない台船などで構成されてもよい。
【0031】
第一補助船舶3に搭載される第一連結機構7と同様の構成を有する第二連結機構9を、第二補助船舶8が有していてもよい。供給設備1が発電を行う際には、第一補助船舶3の発電機構2と第二補助船舶8の燃料タンク4とがパイプ5で連結される。発電機構2と燃料タンク4とを連結する前の状態のパイプ5は、発電機構2または燃料タンク4のいずれか一方に配置されてもよく、両方に配置されてもよい。
【0032】
第一補助船舶3と第二補助船舶8とはそれぞれ独立して海上を移動することができる。供給設備1が船舶への電気の供給を行うと、燃料タンク4の中の燃料が減少していく。燃料タンク4の燃料が所定量以下となったとき、第一補助船舶3に燃料を供給する第二補助船舶8を別の第二補助船舶8に切り替える。発電機構2に連結されている燃料タンク4を、別の第二補助船舶8に搭載されていて燃料を十分に充填されている別の燃料タンク4に切り替えることができる。船舶と第一補助船舶3とのケーブルの接続を維持したままで、燃料タンク4を交換できることになる。
【0033】
例えば船舶が岸壁に24時間係留される場合であっても、48時間係留される場合であっても、供給設備1は途切れることなく安定的に電気を船舶に供給し続けることができる。
【0034】
図4に例示するように岸壁11に係留されている船舶10に供給設備1から電気を供給する際には、船舶10と第一補助船舶3とが電気を供給するためのケーブル6で接続される。第一補助船舶3が第一連結機構7を有する場合には、第一連結機構7の端部である吸着部7dが船舶10に連結される。この実施形態では例えば電磁石で構成される吸着部7dが、船舶10の舷側に吸着している。第一連結機構7が船舶10に連結されているときは、復元部7cが復元力を発生させる状態となる。
【0035】
第一補助船舶3と第二補助船舶8とが燃料を搬送するパイプ5で連結される。第二補助船舶8が第二連結機構9を有する場合には第二連結機構9の端部が第一補助船舶3に連結される。この実施形態では第二連結機構9の端部が、第一補助船舶3の上甲板に固定されている。第一連結機構7と同様の吸着部7dが第二連結機構9の端部に配置されている場合は、吸着部7dが第一補助船舶3に吸着する。第二連結機構9が第一補助船舶3に連結されているとき、第二連結機構9の復元部7cが復元力を発生させる状態となる。
【0036】
第二補助船舶8が、第一補助船舶3の代わりに船舶10に連結される構成であってもよい。また第一補助船舶3または船舶10に対して二隻以上の第二補助船舶8が連結される構成であってもよい。
【0037】
第二補助船舶8の燃料タンク4からパイプ5を介して第一補助船舶3の発電機構2に燃料が供給される。発電機構2は発電してケーブル6を介して電気を船舶10に供給する。
【0038】
船舶10に対する第一補助船舶3の初期位置C1が予め設定される。風や波浪により第一補助船舶3が幅方向xに移動することがある。このとき第一補助船舶3を初期位置C1に戻す方向に、第一連結機構7の復元部7cが復元力を発生させる。第一補助船舶3は初期位置C1を維持する状態となる。船舶10に対する第一補助船舶3の相対位置が固定される状態となる。
【0039】
上記と同様に第一補助船舶3に対する第二補助船舶8の初期位置C2も予め設定される。第二補助船舶8が幅方向xに移動するとき、第二連結機構9の復元部7cが復元力を発生させる。第二補助船舶8を初期位置C2に戻す方向に復元力が働くため、第二補助船舶8は初期位置C2を維持する状態となる。第一補助船舶3に対する第二補助船舶8の相対位置が固定される状態となる。
図4では説明のため初期位置C1、C2を一点鎖線で示している。
【0040】
第一連結機構7により船舶10と第一補助船舶3との幅方向xにおける間隔が所定の範囲で維持される。船舶10と第一補助船舶3との接近にともなう衝突や、離間にともないケーブル6に過大な張力が発生することを防止できる。ケーブル6を比較的短く設定できるため、ケーブル6を介して電気を供給する際の損失を抑制するには有利である。
【0041】
第二連結機構9により第一補助船舶3と第二補助船舶8との幅方向xにおける間隔が所定の範囲で維持される。第一補助船舶3と第二補助船舶8との衝突や、パイプ5に過大な圧縮力や張力が発生することを防止できる。パイプ5を比較的短く設定できるため、パイプ5を介して燃料を供給する際の圧力損失を抑制するには有利である。また柔軟性を有するパイプ5に限らず、柔軟性を有さないパイプ5を採用することが可能となる。そのためパイプ5を介して比較的高圧の水素ガスなどを発電機構2に供給することが可能となる。燃料タンク4から発電機構2に供給する燃料の種類や、圧力などの条件の選択の自由度が向上する。
【0042】
第一連結機構7が関節部7bを有するため、船舶10の喫水や傾きの変化を第一補助船舶3が受け難くなる。第一補助船舶3の安定性を向上するには有利である。発電機構2として採用できる機器の選択の自由度が向上する。
【0043】
第一連結機構7や第二連結機構9が、幅方向xに限らず前後方向yや上下方向zにおいても初期位置C1、C2を維持する構成であってもよい。船舶10に対する荷役作業にともない船舶10の喫水や傾きが変化した場合であっても、ケーブル6等への張力の発生を抑制できる。船舶10は係留中であっても荷役作業やバラストの調整にともない、喫水が変化したり、幅方向xまたは前後方向yを中心軸として傾いたりすることがある。復元部7cは初期位置C1、C2からの変位量が大きいほど、大きい復元力を発生させる構成を有することが望ましい。
【0044】
第一補助船舶3が第一連結機構7を有さない場合は、船舶10に対して第一補助船舶3を係留せずに電気を供給することができる。この場合、船舶10に対する第一補助船舶3の位置は、第一補助船舶3の推進用のエンジン等を利用して制御される。船舶10に電気を供給している間、常に第一補助船舶3を操作する必要がある。船舶10に対して第一補助船舶3を係留ロープで係留して電気を供給してもよい。この場合は、荷役に伴う貨物重量の変化により生じる船舶10の喫水の変化に合わせてその都度係留ロープの長さを調整する必要がある。
【0045】
第一補助船舶3が第一連結機構7を有する場合は、第一補助船舶3を操作してその位置を調整する必要がない。また係留ロープの長さを管理する必要もない。第一補助船舶3から船舶10に長時間にわたり電気を供給する際には、第一補助船舶3における作業量が大きく低減されるので有利である。
【0046】
船舶10が例えば燃料電池や水素エンジンや水素タービンなど水素燃料を利用する機器を有している場合、第二補助船舶8を利用して船舶10に水素燃料を供給することも可能である。供給設備1から船舶10に電気を供給するとともに、他の第二補助船舶8を使用して船舶10に水素燃料を供給してもよい。複数の第二補助船舶8を効率よく使用するには有利である。
【0047】
燃料を適する形に変換する変換部を供給設備1が備えている場合は、第二補助船舶8に変換部が配置されることが望ましい。第二補助船舶8を利用して船舶10に水素燃料等を供給する際に、変換部で変換した燃料を船舶10に供給することができる。例えば燃料タンク4に貯留されているメチルシクロヘキサンから変換部で水素ガスを取り出して、水素ガスのみを船舶10に供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 供給設備
2 発電機構
3 第一補助船舶
4 燃料タンク
5 パイプ
6 ケーブル
7 第一連結機構
7a 腕部
7b 関節部
7c 復元部
7d 吸着部
8 第二補助船舶
9 第二連結機構
10 船舶
11 岸壁
x 幅方向
y 前後方向
z 上下方向
C1、C2 初期位置