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  • 特開-放熱装置および放熱板 図1
  • 特開-放熱装置および放熱板 図2
  • 特開-放熱装置および放熱板 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041258
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】放熱装置および放熱板
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230316BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230316BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H01L23/36 Z
C09K5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148521
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恭
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322EA11
5E322FA04
5F136BB13
5F136BC01
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
5F136FA51
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を抑制するとともに放熱性能を向上させることのできる放熱装置および放熱板を提供する。
【解決手段】一方の面に設けられ、電子部品4から放出される熱を吸収する熱吸収面12aと、他方の面に設けられ、熱吸収面12aから吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面12bと、を有する放熱板12を備え、放熱板12は、シリコンを含む部材からなり、厚さ方向の大きさが150μm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に設けられ、発熱源から放出される熱を吸収する熱吸収面と、他方の面に設けられ、前記熱吸収面から吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面と、を有する放熱板を備え、
前記放熱板は、
シリコンを含む部材からなり、
厚さ方向の大きさが150μm以上である
放熱装置。
【請求項2】
一方の面に設けられ、発熱源から放出される熱を吸収する熱吸収面と、他方の面に設けられ、前記熱吸収面から吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面と、を有する放熱板であって、
シリコンを含む部材からなり、
厚さ方向の大きさが150μm以上である
放熱板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の発熱体において発生する熱を吸収して放出する放熱装置および放熱板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放熱装置としては、例えばフィン型のヒートシンクが挙げられ、電子部品等の発熱体の外面に取り付けられ、発熱体の熱がヒートシンクに伝達され、その熱をフィンから大気に放出する、もしくは送風機を用いてフィン間の大気を強制的に対流させ、大気に放出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-155521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放熱装置は、熱伝導を利用して放熱するため、ヒートシンクのような温度が低い部品を設ける必要があり、装置が大型化するおそれがある。
【0005】
本発明の目的とするところは、装置の大型化を抑制するとともに放熱性能を向上させることのできる放熱装置および放熱板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放熱装置は、一方の面に設けられ、発熱源から放出される熱を吸収する熱吸収面と、他方の面に設けられ、前記熱吸収面から吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面と、を有する放熱板を備え、前記放熱板は、シリコンを含む部材からなり、厚さ方向の大きさが150μm以上である。
【0007】
また、本発明に係る放熱板は、一方の面に設けられ、発熱源から放出される熱を吸収する熱吸収面と、他方の面に設けられ、前記熱吸収面から吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面と、を有する放熱板であって、シリコンを含む部材からなり、厚さ方向の大きさが150μm以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコンを含む厚さ方向の大きさが150μm以上の放熱板を用いることで、放熱板の熱放射による放熱量を増加させることが可能となるので、装置の大型化を抑制するとともに放熱性能を向上させることが可能となる。また、本発明によれば、熱吸収面と熱放出面の機能をシリコン製の一つの部材によって構成することが可能となり、製造工程を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る放熱装置を適用した電子機器の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る放熱装置の性能を評価する試験の方法を説明する断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る放熱装置の性能を評価する試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図3は、本発明の一実施形態を示すものである。図1は放熱装置を適用した電子機器の断面図であり、図2は放熱装置の性能を評価する試験の方法を説明する断面図であり、図3は放熱装置の性能を評価する試験の結果を示すグラフである。
【0011】
本実施形態の放熱装置10は、図1に示すように、電子機器1に適用されるものである。
【0012】
電子機器1は、筐体2と、筐体2の内部に取り付けられる基板3と、基板3に取り付けられる発熱源としての電子部品4と、電子部品4に取り付けられる本発明に係る放熱装置10と、を備えている。
【0013】
電子部品4は、例えばCPU(中央演算処理装置)等、動作時に熱を放出するものである。
【0014】
放熱装置10は、電子部品4から放出される熱を後述する放熱板に伝えるための熱伝導材料11と、電子部品4から熱伝導材料11を介して伝わる熱を熱放射によって放出するための放熱板12と、を有している。
【0015】
熱伝導材料11は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等のフィラーを添加した樹脂からなるシート状の部材や、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属基板、熱伝導グリス等が例示されるが、これに限られない。また、熱伝導材料11としては、電子部品4の外面に貼り付けられているものが例示されるが、これに限られない。熱伝導材料11は、電子部品4から放出される熱を放熱板12の全面にわたって均一に伝導させるものであれば、どのような形態であってもよい。特に、熱伝導材料11は、放熱板12の後述する熱吸収面12a側が平面状である場合に、電子部品4の外面形状にかかわらず、電子部品4から放出される熱を、放熱板12に伝えることができるものが好ましく、グリスやペースト、ゲル状であることが好ましい。
【0016】
放熱板12は、シリコンからなり、厚さ方向の大きさtが150μm以上に形成された板状部材である。放熱板12は、一方の面に設けられ、電子部品4から放出される熱を吸収するための熱吸収面12aと、他方の面に設けられ、熱吸収面12aから吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面12bと、を有している。
【0017】
放熱板12の熱吸収面12aは、全面にわたって熱伝導材料11に当接している。また、放熱板12の熱放出面12bは、筐体2の内面と間隔をおいて、筐体2の内面に対して対向している。
【0018】
以上のように構成された電子機器1において、電子部品4から放出される熱の一部は、熱伝導によって基板3を介して筐体2に伝わり、電子部品4から放出されるその他の熱は、熱放射および対流によって放熱装置10を介して筐体2に伝わる。筐体2に伝わる熱は、筐体2の外側の空気中に放出される。
【0019】
また、電子部品4から放熱装置10に伝わる熱は、熱吸収面12aの全面から放熱板12に吸収される。また、放熱板12が吸収した熱の少なくとも一部は、熱放射によって熱放出面12bの全面から電磁波として放出され、筐体2の内面に伝わる。
【0020】
ここで、厚さ方向の大きさtが異なる放熱板12を有する複数種類の放熱装置10のそれぞれについて、放熱性能を評価する試験の結果について説明する。
【0021】
まず、放熱性能を評価する試験は、図2に示す試験装置100を使用する。試験装置100は、アルミニウム製の箱体110と、箱体110の内部に収容され、シリコンゴム製の面状の放熱面を有するラバーヒータ120と、ラバーヒータ120の一方の面を覆う断熱部材130と、ラバーヒータ120の温度を検出するための温度センサ140と、を有している。放熱性能を評価する試験は、箱体110内における、ラバーヒータ120の他方の面側に試験の対象となる放熱装置10を設置し、ラバーヒータ120に通電を開始してからの時間の経過に伴う温度の変化を温度センサ140によって検出することにより行う。
【0022】
次に、試験装置100による放熱装置10の放熱性能を評価する試験の結果を、図3のグラフを用いて説明する。
【0023】
まず、試験装置100に放熱装置10を設置しなかった場合におけるラバーヒータ120の時間の経過に伴う温度の変化が、実線で表されている。また、複数種類の放熱装置10のそれぞれを設置した場合におけるラバーヒータ120の時間の経過に伴う温度の変化が、実線以外の線種で表されている。
【0024】
これにより、試験装置100に放熱装置10を設置した場合には、放熱装置10を設置しなかった場合におけるラバーヒータ120の温度の変化と比較して、ラバーヒータ120の温度の上昇する程度が小さいことがわかる。即ち、ラバーヒータ120の温度は、ラバーヒータ120から発せられる熱が放熱装置10を介して放出されることで、低い状態が維持されている。
【0025】
また、厚さ方向の大きさtが100μmの放熱板12を有する放熱装置10の温度の上昇の程度(図3の破線)は、厚さ方向の大きさtが200μm、400μm、725μmの放熱板12を有する放熱装置10の温度の上昇の程度(図3の二点鎖線、一点鎖線、点線)よりも大きいことがわかる。即ち、厚さ方向の大きさtが100μmの放熱板12を有する放熱装置10は、厚さ方向の大きさtが200μm、400μm、725μmの放熱板12を有する放熱装置10と比較して放熱量が小さい。
【0026】
放熱板12は、図3におけるそれぞれの厚さ方向の大きさtの放熱板12の温度の変化の曲線に基づいて、厚さ方向の大きさtが150μm以上である場合に、有効な放熱効果を奏するものと判断できる。
【0027】
このように、本実施形態の放熱装置10によれば、一方の面に設けられ、電子部品4から放出される熱を吸収する熱吸収面12aと、他方の面に設けられ、熱吸収面12aから吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面12bと、を有する放熱板12を備え、放熱板12は、シリコンを含む部材からなり、厚さ方向の大きさtが150μm以上である。
【0028】
また、本実施形態の放熱板12によれば、一方の面に設けられ、電子部品4から放出される熱を吸収する熱吸収面12aと、他方の面に設けられ、熱吸収面12aから吸収した熱の少なくとも一部を電磁波として放出する熱放出面12bと、を有する放熱板12であって、シリコンを含む部材からなり、厚さ方向の大きさが150μm以上である。
【0029】
これにより、シリコンを含む厚さ方向の大きさtが150μm以上の放熱板12を用いることで、放熱板12の熱放出面12bからの熱放射による熱の放出量を増加させることが可能となるので、装置の大型化を抑制するとともに放熱性能を向上させることが可能となる。
【0030】
尚、前記実施形態では、シリコンからなる放熱板12を示したが、放熱板は、例えば、単結晶シリコンや、多結晶シリコン、他の材料を含むシリコン系の部材であっても、前記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。また、放熱板は、単一のシリコン系の材料からなる部材によって形成することにより、熱を吸収する機能と熱を放出する機能とを一の部材によって構成することが可能となる。これにより、放熱板の製造工程を簡略化するとともに、放熱板の品質を安定化することが可能となり、製造コストを削減することが可能となる。
【0031】
また、前記実施形態では、熱伝導材料11および放熱板12を有する放熱装置10について示したが、放熱装置は、本発明の放熱板12を有するものであれば、熱伝導材料11以外の部材を有するものであってもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、熱伝導材料11および放熱板12を有する放熱装置10を電子部品に設置するようにしたものについて示したが、これに限られるものではない。例えば、熱伝導材料11を介することなく放熱板のみを、電子部品に対して熱吸収面を直接的に当接させるように、電子部品に設置してもよい。この場合に、電子部品から放出される熱は、放熱板の熱吸収面から直接的に吸収されることになる。
【符号の説明】
【0033】
4 電子部品
10 放熱装置
12 放熱板
12a 熱吸収面
12b 熱放出面
図1
図2
図3