(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041288
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20230316BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230316BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230316BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230316BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230316BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 E
C01B25/45 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148560
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 愉子
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA10
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の単位体積あたりのエネルギー密度とレート特性とを効果的に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】下記式(a):
LifMngFehM1
xPO4・・・(a)
で表され、かつ平均粒径が8μm~50μmである造粒体Aの表面に、下記式(b):
LiM2
aMnbO4 ・・・(b)
で表される粒子Bが被覆してなり、
造粒体Aと粒子Bとの質量比(A:B)が95:5~55:45であるリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a):
LifMngFehM1
xPO4・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.3≦g≦1.2、0.2≦h≦1.2、0≦x≦0.3、及び3/17≦g/h≦13/7を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が8μm~50μmである造粒体Aの表面に、下記式(b):
LiM2
aMnbO4 ・・・(b)
(式(b)中、M2はNi、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、Cu、及びSiから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a及びbは、0≦a≦0.1、0<b≦2、及び(M2の価数)×a+(Mnの価数)×b=7を満たす数を示す。)
で表される粒子Bが被覆してなり、
造粒体Aと粒子Bとの質量比(A:B)が95:5~55:45であるリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項2】
造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率が、95%~100%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項3】
粒子Bの平均粒径が、50nm~200nmである請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項4】
造粒体Aが、式(a)で表される粒子であって、その粒子の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素が担持してなる予備粒子aの集合体である請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池における単位体積あたりのエネルギー密度を高めるとともに、レート特性を向上させるリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。こうしたリチウムイオン二次電池の正極材料として、その安全性の高さや容量の大きさから、LiMnxFe1-xPO4のような、いわゆるリン酸マンガンリチウムやリン酸鉄リチウム等のオリビン型構造を有する粒子が有望視されており、かかる粒子を活用した種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リチウムマンガン酸化物等の活物質を含有する第1の層と、LiFePO4等の活物質を含有する第2の層で形成される正極活物質層が配置されたリチウムイオン二次電池用正極が開示されており、放電レート特性の改善を試みている。
また、特許文献2には、LiMnO2等のリチウム含有遷移金属酸化物等から形成されたコア部として、リン酸マンガン鉄リチウム等のリチウム金属酸化物粒子と高分子とを含むシェル部を備える電極活物質が開示されており、安全性と安定性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-147790号公報
【特許文献2】特表2015-503196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~2のような構造を有する正極活物質では、得られるリチウムイオン二次電池において、未だ充分に単位体積あたりのエネルギー密度を高めるには至らず、また優れたレート特性をも発現させるには、依然として改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、リチウムイオン二次電池の単位体積あたりのエネルギー密度とレート特性とを効果的に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の平均粒径を有するリン酸マンガン鉄リチウム造粒体の表面に、LiMn2O4等の特定の式で表される粒子が被覆されてなり、かつこれらの粒子が特定の質量比を有することにより、得られるリチウムイオン二次電池において、単位体積あたりのエネルギー密度を効果的に高めるとともに、レート特性の向上をも図ることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子が提供できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(a):
LifMngFehM1
xPO4・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.3≦g≦1.2、0.2≦h≦1.2、0≦x≦0.3、及び3/17≦g/h≦13/7を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が8μm~50μmである造粒体Aの表面に、下記式(b):
LiM2
aMnbO4 ・・・(b)
(式(b)中、M2はNi、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、Cu、及びSiから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a及びbは、0≦a≦0.1、0<b≦2、及び(M2の価数)×a+(Mnの価数)×b=7を満たす数を示す。)
で表される粒子Bが被覆してなり、
造粒体Aと粒子Bとの質量比(A:B)が95:5~55:45であるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質によれば、単位体積あたりのエネルギー密度とともに、レート特性をも有効に高められたリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、下記式(a):
LifMngFehM1
xPO4・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.3≦g≦1.2、0.2≦h≦1.2、0≦x≦0.3、及び3/17≦g/h≦13/7を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が8μm~50μmである造粒体Aの表面に、下記式(b):
LiM2
aMnbO4 ・・・(b)
(式(b)中、M2はNi、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、Cu、及びSiから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a及びbは、0≦a≦0.1、0<b≦2、及び(M2の価数)×a+(Mnの価数)×b=7を満たす数を示す。)
で表される粒子Bが被覆してなり、
造粒体Aと粒子Bとの質量比(A:B)が95:5~55:45である。
【0011】
このように、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、特定の式で表され、かつ特定の平均粒径を有する造粒体Aと、特定の式で表される粒子Bとから構成されてなる粒子であり、これら造粒体Aと粒子Bとが限られた質量比を保持しながら、造粒体A(コア部)の表面に粒子B(シェル部)が被覆してなる特異な粒子構造を呈することにより、電極密度及び粒子-電解液間の電子伝導性が向上し、得られるリチウムイオン二次電池において、単位体積あたりのエネルギー密度とレート特性とを効果的に高めることを可能とする。
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を構成する造粒体Aは、下記式(a):
LifMngFehM1
xPO4・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.3≦g≦1.2、0.2≦h≦1.2、0≦x≦0.3、及び3/17≦g/h≦13/7を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が8μm~50μmである造粒体である。
【0013】
上記式(a)で表される造粒体Aは、少なくとも遷移金属としてマンガン(Mn)及び鉄(Fe)の双方を含むオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物であって、上記式(a)で表される予備粒子a(一次粒子、いわゆるLMFP粒子に相当)が造粒されて凝集することにより形成される集合体である。かかる造粒体Aとの間で特定の質量比を保持する粒子Bにより造粒体Aの表面が被覆されてなるため、単位体積あたりのエネルギー密度を効果的に高めながら、レート特性の向上に寄与することとなる。
【0014】
上記造粒体Aとしては、平均放電電圧の観点から、fについては、0.6≦f≦1.2が好ましく、0.65≦f≦1.15がより好ましく、0.7≦f≦1.1がさらに好ましい。gについては、0.15≦g≦0.65が好ましく、0.2≦g≦0.6がより好ましく、0.25≦g≦0.55がさらに好ましい。hについては、0.35≦h≦0.85が好ましく、0.4≦h≦0.8がより好ましく、0.45≦h≦0.75がさらに好ましい。xについては、0≦x≦0.2が好ましく、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.1がさらに好ましい。そして、g/hは、いわゆる造粒体Aを構成するMnとFeとのモル比であり、1/4≦g/h≦3/2が好ましく、1/3≦g/h≦11/9がより好ましく、3/7≦g/h≦1がさらに好ましい。
【0015】
具体的には、例えばLiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.75Fe0.15Mg0.1PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4、LiMn0.5Fe0.5PO4等が挙げられる。なかでもLiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.3Fe0.7PO4、又はLiMn0.6Fe0.4PO4が好ましい。
【0016】
上記式(a)で表される造粒体(A)の平均粒径は、リチウムイオンの挿入及び脱離に伴う上記一次粒子の膨張収縮量を抑制することができ、粒子割れを有効に防止する観点、及びハンドリングの観点から、8μm~50μmであって、好ましくは9μm~40μmであり、より好ましくは9.5μm~30μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmである。
ここで、造粒体Aにおける「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
【0017】
予備粒子aが造粒されてなる、予備粒子aの集合体である造粒体Aは、優れた放電容量を確保して、レート特性のさらなる向上を図る観点から、予備粒子aが、その粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持されてなる粒子であってもよい。
セルロースナノファイバーとは、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維である。かかるセルロースナノファイバーの繊維径は1nm~1000nmであり、水への良好な分散性も有している。また、セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子鎖では、炭素による周期的構造が形成されている。そのため、かかるセルロースナノファイバーが炭化されて炭素となり、これが予備粒子aの表面に堅固に担持してなると、予備粒子aにより構成されてなる造粒体Aの表面にも担持されてなる炭素が存在することとなり、さらに後述する粒子Bが造粒体Aの表面を密に被覆することにより、電子導電パスの低下を有効に抑制して単位体積あたりのエネルギー密度を有効に高め、得られる電池において優れたレート特性の発現を確保することができる。
【0018】
造粒体Aが、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる予備粒子aの集合体である場合、炭化してなるセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量、すなわちセルロースナノファイバー由来の炭素の担持量は、100質量%の造粒体A中に、好ましくは0.1質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.3質量%~4.0質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~3.0質量%である。
【0019】
水溶性炭素材料とは、セルロースナノファイバーと同様、炭化されて炭素となり、これが表面に担持してなる予備粒子aの集合体である造粒体Aであると、セルロースナノファイバーと同様、電子導電パスの低下を有効に抑制して単位体積あたりのエネルギー密度を有効に高め、得られる電池において優れたレート特性の発現を確保することができる。
かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて炭素材料として効果的に機能させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリンが好ましく、グルコースがより好ましい。
【0020】
造粒体Aが、表面に水溶性炭素材料由来の炭素が担持してなる予備粒子aの集合体である場合、水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量、すなわち水溶性炭素材料由来の炭素の担持量は、100質量%の造粒体A中に、好ましくは4.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0021】
これらセルロースナノファイバー由来の炭素、及び水溶性炭素材料由来の炭素は、予備粒子aの表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素のみを担持、水溶性炭素材料由来の炭素のみを担持、或いはセルロースナノファイバー由来の炭素と水溶性炭素材料由来の炭素とを双方とも担持させてもよい。なかでも、予備粒子aの集合体である造粒体Aの表面において、その一部のみを覆って、造粒体Aの変形を妨げない観点から、セルロースナノファイバー由来の炭素を担持させるのが好ましい。
【0022】
造粒体Aが、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる予備粒子aの集合体である場合、セルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量の合計、すなわちセルロースナノファイバー由来の炭素の担持量及び水溶性炭素材料由来の炭素の担持量の合計は、100質量%の造粒体A中に、好ましくは0.1質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.3質量%~4.0質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~3.0質量%である。
【0023】
なお、造粒体A中に存在するセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量(担持量)、及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量(担持量)は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる値を意味する。
また、造粒体Aが、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる予備粒子aの集合体である場合、後述する造粒体Aとしての量は、これらの炭素の担持量も含めた量とする。
【0024】
なお、造粒体Aは、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、次の工程(Ia)~(IVa):
(Ia)リチウム化合物、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、必要に応じてセルロースナノファイバー及び/又は水溶性炭素材料、並びに水を添加してスラリー水iを得た後、水熱反応に付して、予備粒子aを得る工程
(IIa)得られた予備粒子a、及び水を添加して、スラリー水iiを得る工程
(IIIa)スラリー水iiを噴霧乾燥に付して、予備造粒体xを得る工程
(IVa)得られた予備造粒体xを還元雰囲気又は不活性雰囲気で焼成して、造粒体Aを得る工程
を備える製造方法である。
【0025】
上記工程(Ia)は、リチウム化合物、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、必要に応じてセルロースナノファイバー及び/又は水溶性炭素材料、並びに水を添加してスラリー水iを得た後、水熱反応に付して、予備粒子aを得る工程である。予備粒子aは、上記式(a)で表されるLMFP粒子であって造粒体Aの一次粒子に相当する粒子であり、後の工程を経ることにより、かかる予備粒子aが適宜凝集し、いわゆる予備粒子aの集合体である造粒体Aが形成される。
用いるリチウム化合物としては、水酸化物(例えばLiOH・H2O、LiOH)、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩が挙げられる。なかでも、水酸化物が好ましい。
マンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、酸化マンガン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、酸化マンガンが好ましい。
なお、これらリチウム化合物、及びマンガン化合物とともに、金属化合物として、マンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M1)化合物を用いてもよい。
【0026】
リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70質量%~90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
造粒体xAの表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持させる場合には、さらに上記セルロースナノファイバー及び/又は水溶性炭素材料を用いればよい。
【0027】
なお、スラリー水iは、目的とする造粒体Aの組成に応じ、適宜リチウム化合物、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物等の使用量を決定し、通常の方法にしたがって調製すればよい。
【0028】
次いで、得られたスラリー水iを水熱反応に付して、予備粒子aを得る。
水熱反応に付する際に用いる水の使用量は、金属化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、スラリー水i中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10モル~50モルであり、より好ましくは12.5モル~45モルである。
【0029】
水熱反応は、100℃以上であればよく、130℃~200℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130℃~200℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.3MPa~1.6MPaであるのが好ましく、140℃~160℃で反応を行う場合の圧力は0.3MPa~0.6MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は0.1時間~48時間が好ましく、さらに0.2時間~24時間が好ましい。
得られた予備粒子aは、ろ過後、水で洗浄し、乾燥することにより単離する。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
上記工程(IIa)は、得られた予備粒子a、及び水を添加して、スラリー水iiを得る工程である。得られるスラリー水iiの固形分濃度は、好ましくは5質量%~30質量%であり、より好ましくは5質量%~20質量%であり、さらに好ましくは5質量%~15質量%である。
【0030】
水を添加した後、工程(IIIa)へ移行する前にスラリー水iiを予め攪拌するのが好ましい。かかるスラリー水iiの撹拌時間は、好ましくは3分~60分であり、より好ましくは5分~30分である。また、スラリー水iiの温度は、好ましくは10℃~60℃であり、より好ましくは20℃~40℃である。
【0031】
上記工程(IIIa)は、スラリー水iiを噴霧乾燥に付して、予備造粒体xを得る工程である。噴霧乾燥では、用いる装置に応じて適宜運転条件を設定すればよい。
例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(藤崎電気(株)製 MDL-050M)での処理条件としては、熱風温度が110℃~300℃であるのが好ましく、150℃~250℃であるのがより好ましい。また、熱風の供給量とスラリー水の供給量の容積比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)が、500~10000であるのが好ましく、1000~9000であるのがより好ましい。
【0032】
上記工程(IVa)は、得られた予備造粒体xを還元雰囲気又は不活性雰囲気で焼成して、造粒体Aを得る工程である。
焼成温度は、好ましくは500℃~750℃であり、より好ましくは520℃~720℃であり、焼成時間は、好ましくは0.3時間~12時間であり、より好ましくは0.5時間~6時間である。
【0033】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を構成する粒子Bは、下記式(b):
LiM2
aMnbO4 ・・・(b)
(式(b)中、M2はNi、Co、Al、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Zr、Ga、Cu、及びSiから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a及びbは、0≦a≦0.1、0<b≦2、及び(M2の価数)×a+(Mnの価数)×b=7を満たす数を示す。)
で表される。
【0034】
上記式(b)で表される粒子Bは、スピネル構造を有する粒子である。上記造粒体Aをコア部として、かかる微細な粒子Bがこれを特定の質量比を保持しながら被覆してなることにより、飛躍的に単位体積あたりのエネルギー密度を高め、レート特性を向上させることができる。
【0035】
上記式(b)で表される粒子Bとしては、具体的には、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiCrMnO4、LiFeMnO4、LiAlMnO4、LiCu0.5Mn1.5O4を用いることができる。なかでも、LiMn2O4が好ましい。
【0036】
粒子Bの平均粒径は、優れたレート特性を確保する観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは50nm~200nmであり、より好ましくは60nm~190nmであり、さらに好ましくは70nm~180nmであり、またさらに好ましくは80nm~170nmである。
ここで、粒子Bにおける「平均粒径」とは、SEMにおいて観察した粒子100個の粒径の平均を意味する。
【0037】
なお、粒子Bは、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、次の工程(Ib)~(IIb):
(Ib)リチウム化合物、マンガン化合物、及び水を添加してスラリー水i'を得た後、水熱反応に付して、予備粒子bを得る工程
(IIb)得られた予備粒子bを大気雰囲気下で乾燥して、粒子Bを得る工程
を備える製造方法である。
【0038】
上記工程(Ib)は、リチウム化合物、マンガン化合物、及び水を添加してスラリー水i'を得た後、水熱反応に付して、予備粒子bを得る工程である。
【0039】
リチウム化合物としては、上記造粒体Aと同様のものを用い得るが、なかでも水酸化物が好ましい。
マンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、酸化マンガン、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、反応性の観点から、酸化マンガン、過マンガン酸カリウムが好ましい。
なお、これらリチウム化合物、及びマンガン化合物とともに、これらの化合物以外の金属(M2)化合物を用いてもよい。
【0040】
かかるスラリー水i'は、目的とする造粒体Aの組成に応じ、適宜リチウム化合物、マンガン化合物等の使用量を決定し、通常の方法にしたがって調製すればよい。
【0041】
次いで、得られたスラリー水i'を水熱反応に付して、予備粒子bを得る。
水熱反応は、160℃~250℃が好ましく、170℃~240℃がより好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、160℃~250℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.6MPa~4.0MPaであるのが好ましく、170℃~240℃で反応を行う場合の圧力は0.8MPa~3.3MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は12時間~168時間が好ましく、さらに24時間~96時間が好ましい。
得られた予備粒子bは、ろ過後、水で洗浄するのがよい。
【0042】
上記工程(IIb)は、上記工程(Ib)を経ることにより得られた予備粒子bを大気雰囲気下で乾燥して、粒子Bを得る工程である。
乾燥する際の温度は、好ましくは50℃~150℃であり、より好ましくは60℃~130℃である。かかる乾燥には、一般的な温風乾燥機を用いるのがよいが、特に限定されるものではない。
【0043】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、造粒体Aの表面に粒子Bが被覆してなる。造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率は、粒子Bが密に被覆してなり、効果的に単位体積あたりのエネルギー密度を高め、有効にレート特性の向上を図る観点から、好ましくは95%~100%であり、より好ましくは96%~100%であり、さらに好ましくは97%~100%であり、またさらに好ましくは98%~100%である。
【0044】
なお、造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率(%)とは、次の方法により求めた値を意味する。
まず、SEMの電子顕微鏡観察により、得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質の粒子断面を観察し、造粒体A外周の全長において、粒子Bに被覆されている外周の長さを測定して、下記式(x)より被覆率(%)を算出する。次いで、リチウムイオン二次電池用正極活物質の粒子100個について算出した被覆率(%)の平均値を求め、造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率(%)とする。
被覆率(%)
={(粒子Bに被覆されている外周の長さ)/(造粒体A外周の全長)}×100
・・・(x)
【0045】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、造粒体Aと粒子Bとの質量比(A:B)は、粒子Bの不要な自己凝集を有効に回避しつつ、かかる粒子Bを造粒体Aの表面を密に被覆させ、効果的にレート特性を高める観点から、95:5~55:45であって、好ましくは90:10~55:45であり、より好ましくは85:15~55:45であり、さらに好ましくは80:20~55:45である。
【0046】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の平均粒径は、粒子Bが造粒体Aの表面を密に被覆してなる粒子とし、効果的にレート特性を高める観点から、好ましくは10μm~45μmであり、より好ましくは12μm~34μmであり、さらに好ましくは13μm~23μm、よりさらに好ましくは15μm~20μmである。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質における「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
【0047】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記造粒体A及び粒子Bについて、上記質量比(A:B)を満たすような量に調整した後、これらを乾式混合すればよい。かかる乾式混合には、例えばMPミキサー(日本コークス工業社製)、NOB-130(ホソカワミクロン社製)のような、圧縮力及びせん断力を付加しながら混合する装置を用いることができ、造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率を高める観点から、負荷される積算エネルギー0.15kJ/g~0.45kJ/gとなるよう混合するのが好ましい。
なお、乾式ミキサーにより負荷される積算エネルギーは、以下の式(1)で求められる。
積算エネルギー(kJ/g)
=粉体にかける負荷量(kW)×処理時間(s)÷処理量(g)・・・式(1)
【0048】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を正極材料として適用し、正極と負極と電解液とセパレータ、又は正極と負極と固体電解質を必須構成とするリチウムイオン二次電池を構築することができる。具体的には、例えば本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質と、アセチレンブラックやケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデン、N-メチル-2-ピロリドン等とを混練して正極スラリーを調製した後、集電体に塗工し、次いでプレス成形して正極を作製する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質であれば、上記造粒体Aと粒子Bとが限られた質量比を保持しながら、造粒体Aの表面に粒子Bが密に被覆してなる特異な粒子構造を呈していることから、効果的に電極密度を増大させて、レート特性を有効に高め得る有用性の高い正極を得ることができる。
【0049】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、2種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
【0050】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0051】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)2及びLiN(SO3CF3)2、LiN(SO2C2F5)2及びLiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【0053】
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li7La3Zr2O12、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.3N0.46、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5、50Li2S・50GeS2、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4を用いればよい。
【0054】
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型、角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
【実施例0055】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
各製造例の記載にしたがって、各造粒体及び粒子を製造した。次いで、得られた各造粒体及び粒子の物性について、下記方法にしたがって測定及び算出した。
結果を表1に示す。
【0057】
《造粒体Aの平均粒径》
レーザー回折・散乱法(マイクロトラックMT3000II、MicrotracBEL社製)により体積基準の粒度分布を求め、得られたD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を平均粒径の値とした。
なお、測定条件は、粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.52とし、溶媒にはエタノールを用いて溶媒屈折率:1.36とした。
【0058】
《粒子Bの平均粒径》
SEM(JSM-7001F、日本電子社製)において観察される、粒子100個の粒径の平均を平均粒径の値とした。
【0059】
《炭素の担持量》
炭素・硫黄分析装置(EMIA-220V2、堀場製作所社製)を用い、得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の炭素の担持量を測定した。
【0060】
《造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率》
造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率を次の方法により求めた。まず、前処理として、得られた正極活物質をエポキシ樹脂と混練して硬化させたのち、クロスセクションポリッシャー(日本電子社製、IB-19530CP)により樹脂表面を研磨し、正極活物質の粒子断面を露出させた。なお、研磨は加速電圧4kV、研磨時間3時間で行った。
露出させた正極活物質の粒子断面をSEMにより観察し、造粒体A外周の全長、及び粒子Bに被覆されている外周の長さを測定して、上記式(x)より被覆率(%)を算出し、正極活物質の粒子100個の平均値を求めて、造粒体Aの表面における粒子Bの被覆率(%)とした。
【0061】
[製造例1:造粒体A-1の製造]
LiOH・H2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリー水i1を得た。次いで、得られたスラリー水i1を、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4~20nm)5892gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌して、Li3PO4を含むスラリー水i2を得た。得られたスラリー水i2に窒素パージして、スラリー水i2の溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリー水i2全量に対し、MnSO4・5H2O 482g、FeSO4・7H2O 2224gを添加してスラリー水i3を得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、20:80であった。
次いで、得られたスラリー水i3をオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して予備粒子a1を得た。得られた予備粒子a1を1500g分取し、これに水1Lを添加して、スラリー水ii1を得た。得られたスラリー水ii1を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライ(ノズルエアー流量15L/min、給気温度190℃)に付して予備造粒体x1を得た。
得られた予備造粒体x1を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)にて700℃で1時間焼成して、造粒体A-1(LiMn0.2Fe0.8PO4、炭素の担持量:1.0質量%、平均粒径:40μm)を得た。
【0062】
[製造例2:造粒体A-2の製造]
セルロースナノファイバーを7070g添加し、MnSO4・5H2Oを964g、FeSO4・7H2Oを1668g添加し、かつスプレードライの条件であるノズルエアー流量を40L/minとした以外、製造例2と同様にして、造粒体A-2(LiMn0.4Fe0.6PO4、炭素の担持量:1.2質量%、平均粒径:15μm)を得た。
【0063】
[製造例3:造粒体A-3の製造]
セルロースナノファイバーを7660g添加し、MnSO4・5H2Oを1446g、FeSO4・7H2Oを2502g添加し、かつスプレードライの条件であるノズルエアー流量を45L/minとした以外、製造例2と同様にして、造粒体A-3(LiMn0.6Fe0.4PO4、炭素の担持量:1.3質量%、平均粒径:9μm)を得た。
【0064】
[製造例4:造粒体A-4の製造]
セルロースナノファイバーを5892g添加し、MnSO4・5H2Oを964g、FeSO4・7H2Oを1668g添加し、かつスプレードライの条件であるノズルエアー流量を50L/minとした以外、製造例2と同様にして、造粒体A-4(LiMn0.4Fe0.6PO4、炭素の担持量:1.0質量%、平均粒径:5μm)を得た。
【0065】
[製造例5:造粒体A-5の製造]
セルロースナノファイバーを4714g添加し、MnSO4・5H2Oを241g、FeSO4・7H2Oを2502g添加し、かつスプレードライの条件であるノズルエアー流量を40L/minとした以外、製造例2と同様にして、造粒体A-5(LiMn0.1Fe0.9PO4、炭素の担持量:0.8質量%、平均粒径:14μm)を得た。
【0066】
[製造例6:造粒体A-6の製造]
セルロースナノファイバーを7070g添加し、MnSO4・5H2Oを1687g、FeSO4・7H2Oを834g添加し、かつスプレードライの条件であるノズルエアー流量を40L/minとした以外、製造例2と同様にして、造粒体A-6(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の担持量:1.2質量%、平均粒径:15μm)を得た。
【0067】
[製造例7:粒子B-1の製造]
Mn:Liのモル比が2:1となるように、過マンガン酸カリウム3160gと水酸化リチウム一水和物420gを水10Lと混合し、スラリーbを得た。次いで、得られたスラリー水bをオートクレーブに投入し、200℃で24時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は1.6MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を大気雰囲気下において100℃で5時間乾燥し、粒子B-1(LiMn2O4、平均粒径120nm)を得た。
【0068】
【0069】
[実施例1、3、5、比較例2~4]
表2に示す配合にしたがい、造粒体Aと粒子Bを配合して粉体を得た。次いで、かかる粉体を300g採取し、MPミキサー(日本コークス社製)を用いて、圧縮力及びせん断力を付加しながら粉体を混合し(粉体にかかる負荷量0.4kWで3分間の混合、負荷した積算エネルギー0.24kJ/g)、造粒体Aの表面に粒子Bが被覆してなる正極活物質を得た。
【0070】
[実施例2、比較例1]
表2に示す配合にしたがい、造粒体Aと粒子Bを配合して粉体を得た。次いで、かかる粉体300gを採取し、MPミキサー(日本コークス社製)を用いて、圧縮力及びせん断力を付加しながら粉体を混合し(粉体にかかる負荷量0.4kWで2分間の混合、負荷した積算エネルギー0.16kJ/g)、造粒体Aの表面に粒子Bが被覆してなる正極活物質を得た。
【0071】
[実施例4]
表2に示す配合にしたがい、造粒体Aと粒子Bを配合して粉体を得た。次いで、かかる粉体300gを採取し、MPミキサー(日本コークス社製)を用いて、圧縮力及びせん断力を付加しながら粉体を混合し(粉体にかかる負荷量0.4kWで5.5分間の混合、負荷した積算エネルギー0.44kJ/g)、造粒体Aの表面に粒子Bが被覆してなる正極活物質を得た。
【0072】
《電池特性(レート特性)の評価》
得られた各正極活物質を正極材料として用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた各正極活物質、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
【0073】
次いで、上記正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、高分子多孔フィルムを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を得た。
【0074】
次いで、得られたコイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での、0.2C(34mA/g)、10C(1.7A/g)の放電容量(mAh/g)を測定し、下記式(y)によるレート特性の値(容量比(%))を求めた。
レート特性
=[(10Cにおける放電容量)/(0.2Cにおける放電容量)]×100・・(y)
【0075】
さらに、下記式(z1)による電極密度を算出し、これを下記式(z2)に導入して単位体積あたりのエネルギー密度を算出した。
電極密度(g/cm3)=
正極中の正極活物質質量(g)/電極体積(cm3)(φ14mm×厚さ(μm))
・・・(z1)
30℃環境での正極の単位体積あたりのエネルギー密度(Wh/L)=
30℃における放電容量(mAh/g)×平均電圧(V)×電極密度(g/cm3) ・・・(z2)
結果を表2に示す。
【0076】