(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041290
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】内視鏡用可撓管の製造方法、この内視鏡用可撓管の製造方法を用いて製造された内視鏡用可撓管を具備する内視鏡、内視鏡用可撓管の製造時に用いられる芯材
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
A61B1/005 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148563
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 賢作
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF26
4C161FF27
4C161FF28
4C161JJ06
(57)【要約】
【課題】減摩剤を使用することなく高い清浄度の作業環境を維持することができ可撓管の内部清浄度を確保でき生産性の向上にも寄与し得る内視鏡用可撓管の製造方法を提供する。
【解決手段】弾性及び伸縮性を有する棒状樹脂部材2の外周に第1の網状管3を密着させて被覆した芯材1を長軸方向に伸長させた状態で芯材の外周に金属帯を螺旋状に巻回して形成される螺旋管6を巻き付ける工程と、螺旋管の外周に第2の網状管8を被覆する工程と、第2の網状管の外周に樹脂10aを被覆し外皮10を成形すると共に、樹脂を第2の網状管を通して螺旋管の表面にまで浸透させる工程と、芯材と螺旋管及び第2の網状管とからなり外皮によって外周が被覆された積層管状部材11から芯材1のみを抜き出す工程とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性及び伸縮性を有する棒状樹脂部材の外周に第1の網状管を密着させて被覆した芯材を長軸方向に伸長させた状態で、当該芯材の外周に金属帯を螺旋状に巻回して形成される螺旋管を巻き付ける工程と、
前記螺旋管の外周に第2の網状管を被覆する工程と、
前記第2の網状管の外周に樹脂を被覆し外皮を成形する工程と、
前記芯材と前記螺旋管及び前記第2の網状管とからなり、前記外皮によって外周が被覆される積層管状部材から前記芯材のみを抜き出す工程と、
を有することを特徴とする内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項2】
前記外皮は、押出成形によって前記第2の網状管の外周を被覆し成形される樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項3】
前記棒状樹脂部材は、さらに耐熱性を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項4】
前記第1の網状管の編角は、角度40度~70度の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項5】
前記第1の網状管の編角は、さらに角度50度~65度の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡用可撓管の製造方法。
【請求項6】
被検体内に挿入される挿入部と、操作部と、ユニバーサルコードとを備えた内視鏡において、
弾性及び伸縮性を有する棒状樹脂部材の外周に第1の網状管を密着させて被覆した芯材を長軸方向に伸長させた状態で、当該芯材の外周に金属帯を螺旋状に巻回して形成される螺旋管と、
前記螺旋管の外周に被覆した第2の網状管と、
前記第2の網状管の外周に樹脂を被覆して成形した外皮と、
を有し、
前記芯材と前記螺旋管及び前記第2の網状管とからなり、前記外皮によって外周が被覆される積層管状部材から前記芯材のみを抜き出す製造方法を用いて製造された可撓管が、前記挿入部または前記ユニバーサルコードに適用されていることを特徴とする内視鏡。
【請求項7】
前記内視鏡用可撓管は、前記可撓管部に適用されていることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記内視鏡用可撓管は、前記ユニバーサルコードに適用されていることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記内視鏡用可撓管は、空気清浄度が確保されたクリーンルーム内で製造され、
1回使用したのみで廃棄されるシングルユース内視鏡であることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡。
【請求項10】
螺旋管、網状管、樹脂外皮を積層してなる内視鏡用可撓管の製造時に用いられる棒状の芯材であって、
弾性及び伸縮性を有し所定の長さを有する棒状樹脂部材と、
複数の金属素線を束ねた素線束を編み込んで形成される金網を所定の長さを有する管状に形成した他の網状管と、
を有し、
前記他の網状管が前記棒状樹脂部材の外周に密着し被覆されて形成されていることを特徴とする芯材。
【請求項11】
軸方向における少なくとも一端には、リング状の連結部材が固定されていることを特徴とする請求項10に記載の芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡用可撓管の製造方法と、この内視鏡用可撓管の製造方法を用いて製造された内視鏡用可撓管を具備する内視鏡と、内視鏡用可撓管の製造時に用いられる芯材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟性内視鏡において、例えばユニバーサルコードや挿入部の可撓管部等は、可撓性を有する可撓管を備えて構成されているものがある。この種の内視鏡用可撓管は、例えば内周側から螺旋管、網状管、外皮の順に積層させた形態の積層管状部材によって構成されているのが一般である。
【0003】
そして、この種の形態の内視鏡用可撓管の製造方法としては、例えば日本国特許第3490647号公報等によって、種々の提案がなされ、また実用化されている。
【0004】
上記日本国特許第3490647号公報等によって開示されている内視鏡用可撓管の製造方法においては、芯材の外周面に減摩剤(ボロン等の粉末)を塗布した後に螺旋管を巻回するようにしている。この減摩剤は、芯材の外周に螺旋管を巻き付ける際、あるいは、芯材の外周に螺旋管、網状管、外皮を順に形成した後の積層管状部材から最終的に芯材のみを抜去する際などにおける作業性を向上させるために塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記日本国特許第3490647号公報等によって開示されている内視鏡用可撓管の製造方法において使用される減摩剤は、製造時に周辺雰囲気中に飛散して、作業環境を悪化させる可能性がある。また、減摩剤は、可撓管の製造時に所定の塗布領域以外に付着してしまう可能性がある。このような場合、所定の塗布領域外へ付着した減摩剤を洗浄又は払拭する等の作業が必要になってしまうという問題点がある。さらに、減摩剤は、可撓管の内部(螺旋管の内側等)に残留する可能性がある。可撓管内部に残留した減摩剤は、内視鏡の組立て工程において外部に漏れ出てしまい製品の美観を損ねる虞がある。このような場合も、やはり減摩剤を拭取る等の作業が必要になってしまう。
【0007】
ところで、1回使用するのみで廃棄される形態のいわゆるシングルユースタイプの内視鏡の場合、製造時は、異物や細菌等の混入等を抑止するために主にクリーンルームなどの清浄度が維持された環境下で組み立てなどが行われるのが一般である。
【0008】
この場合において、上記日本国特許第3490647号公報等によって開示されている従来の製造方法を適用すると、減摩剤が周辺雰囲気中へ飛散してしまう可能性がある。そのため、クリーンルーム等での雰囲気の清浄度を維持することができない等、製造環境に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるという問題点が生じる。
【0009】
さらに、シングルユースタイプの内視鏡では内部滅菌処理等を考慮して、可撓管部やユニバーサルコード等は水密構造としない構成を採用している場合がある。この場合、可撓管内部に減摩剤等が残留若しくは付着していると、運搬時等に減摩剤等が外部に漏れ出てしまう可能性がある。したがって、シングルユースタイプの内視鏡の場合には、製造工程において減摩剤等の使用は避けることが要望されている。
【0010】
そこで、減摩剤を使用せずに可撓管の製造を行うためには、例えば表面の滑りの良い材質を用いた金属素材(例えばSUSなど)等の硬質な棒状部材を芯材として適用することが考えられる。しかしながら、このような硬質部材からなる芯材では、複数の芯材を連結した状態で可撓管の外皮層を連続的に成形することが困難となってしまい、生産性が低下してしまうという問題点がある。
【0011】
本発明の目的とするところは、減摩剤を使用することなく、高い清浄度の作業環境を維持することができると同時に、製造完了後の内視鏡用可撓管の内部清浄度を確保することができ、かつ生産性の向上にも寄与することのできる内視鏡用可撓管の製造方法、この内視鏡用可撓管の製造方法を用いて製造された内視鏡用可撓管を具備する内視鏡、内視鏡用可撓管の製造時に用いられる芯材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の内視鏡用可撓管の製造方法は、弾性及び伸縮性を有する棒状樹脂部材の外周に第1の網状管を密着させて被覆した芯材を長軸方向に伸長させた状態で、当該芯材の外周に金属帯を螺旋状に巻回して形成される螺旋管を巻き付ける工程と、前記螺旋管の外周に第2の網状管を被覆する工程と、前記第2の網状管の外周に樹脂を被覆し外皮を成形する工程と、前記芯材と前記螺旋管及び前記第2の網状管とからなり、前記外皮によって外周が被覆される積層管状部材から前記芯材のみを抜き出す工程と、を有する。
【0013】
本発明の一態様の内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部と、操作部と、ユニバーサルコードとを備えた内視鏡において、弾性及び伸縮性を有する棒状樹脂部材の外周に第1の網状管を密着させて被覆した芯材を長軸方向に伸長させた状態で、当該芯材の外周に金属帯を螺旋状に巻回して形成される螺旋管と、前記螺旋管の外周に被覆した第2の網状管と、前記第2の網状管の外周に樹脂を被覆して成形した外皮と、を有し、前記芯材と前記螺旋管及び前記第2の網状管とからなり、前記外皮によって外周が被覆される積層管状部材から前記芯材のみを抜き出す製造方法を用いて製造された可撓管が、前記挿入部または前記ユニバーサルコードに適用されている。
【0014】
本発明の一態様の芯材は、螺旋管、網状管、樹脂外皮を積層してなる内視鏡用可撓管の製造時に用いられる棒状の芯材であって、弾性及び伸縮性を有し所定の長さを有する棒状樹脂部材と、複数の金属素線を束ねた素線束を編み込んで形成される金網を所定の長さを有する管状に形成した他の網状管とを有し、前記他の網状管が前記棒状樹脂部材の外周に密着し被覆されて形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、減摩剤を使用することなく、高い清浄度の作業環境を維持することができると同時に、製造完了後の内視鏡用可撓管の内部清浄度を確保することができ、かつ生産性の向上にも寄与することのできる内視鏡用可撓管の製造方法、この内視鏡用可撓管の製造方法を用いて製造された内視鏡用可撓管を具備する内視鏡、内視鏡用可撓管の製造時に用いられる芯材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法によって製造される内視鏡用可撓管を適用する内視鏡を含む内視鏡システムの全体構成を概略的に示す外観図
【
図2】本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における製造工程のうちの前半部を示す図
【
図3】本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法による可撓管製造時に用いられる芯材の構成を示す図
【
図4】本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における製造工程の第3工程を示す図
【
図5】本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における製造工程の第3工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法を説明する前に、当該製造方法によって製造される内視鏡用可撓管を適用する内視鏡と、この内視鏡を含む内視鏡システムの概略構成について、以下に簡単に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法によって製造される内視鏡用可撓管を適用する内視鏡と、この内視鏡を含む内視鏡システムの全体構成を概略的に示す外観図である。この内視鏡システムの構成は、基本的には、従来一般的な構成の内視鏡システムと略同様である。
【0020】
図1に示すように、内視鏡システム101は、内視鏡102と、ビデオプロセッサ103と、光源装置104と、モニタ装置105等によって主に構成されている。
【0021】
内視鏡102は、生体などの被検体の体腔内を観察し、体内の画像を撮像する観察装置である。この内視鏡102は、挿入部106と、操作部107と、ユニバーサルコード108等を有して構成されている。
【0022】
挿入部106は、被検体の体腔内等に挿入される細長管形状からなる構成ユニットである。この挿入部106は、先端側に設けられた硬質の先端部106aと、先端部106aの後端に設けられた湾曲自在の湾曲部106bと、湾曲部106bの後端に設けられ長尺かつ可撓性を有する可撓管部106cとを有して構成されている。
【0023】
操作部107は、挿入部106の基端側に配設され、術者が把持して内視鏡の操作を行う各種の操作部材が設けられている構成ユニットである。
【0024】
ユニバーサルコード108は、一端が操作部107の側部から延出し、細長管形状からなる構成ユニットである。ユニバーサルコード108の他端にはコネクタ109が設けられている。このコネクタ109は、電気接点部が設けられ、光源装置104に対して着脱自在に接続される接続部材である。
【0025】
コネクタ109の側面には、接続ケーブル110の一端が接続されている。この接続ケーブル110の他端は、ビデオプロセッサ103に接続されている。
【0026】
挿入部106の先端部106aには、撮像素子や照明装置等が設けられている。これら撮像素子や照明装置等から延出される信号線やライトガイドファイバーなどは、挿入部106、操作部107、ユニバーサルコード108の内部を挿通して、コネクタ109、接続ケーブル110を通じて、光源装置104及びビデオプロセッサ103と接続されている。
【0027】
ビデオプロセッサ103は、内視鏡102からの撮像信号を受けて所定の画像処理を施すプロセッサである。このビデオプロセッサ103は、不図示の接続ケーブルによってモニタ装置105と接続されている。これにより、ビデオプロセッサ103によって所定の画像処理が施された表示用の画像信号がモニタ装置105へと出力される。これを受けて、モニタ装置105は、内視鏡102により取得された体腔内の画像を表示する。
【0028】
光源装置104は、被検体を照明するための照明光を供給する装置である。光源装置104から供給される照明光は、コネクタ109、ユニバーサルコード108、操作部107、挿入部106を挿通するライトガイドファイバーを通じて、挿入部106の先端部106aへと伝送される。そして、先端部106aの前面から被検体に向けて照明光が照射される。
【0029】
このような構成の内視鏡システム101に含まれる内視鏡102において、挿入部106の可撓管部106cとユニバーサルコード108とは、長尺で可撓性を有する細長管形状に形成されている。この場合において、可撓管部106cとユニバーサルコード108との可撓性を担保しつつ、内部を挿通する信号ケーブル等を保護するために、内視鏡102における可撓管部106cとユニバーサルコード108とには内視鏡用可撓管が適用されている。
【0030】
ここで、内視鏡用可撓管は、一般に、螺旋管と、網状管と、外皮とが積層されて管状に形成された形態を有している。この場合において、螺旋管は、金属製からなり帯状に形成されて弾性を有する薄板状部材を螺旋状に巻いて管状に形成されている。網状管は、複数の金属素線を束ねた素線束を編み込んで形成される金網を管状に形成され螺旋管の外周に巻き付けられる。外皮は、例えば樹脂材を固化して形成され網状管の外周面を被覆する。
【0031】
次に、本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法を、
図2~
図5を用いて以下に説明する。
図2~
図5は、本発明の一実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法を説明する図である。このうち
図2は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における製造工程のうちの前半部を示している。
図3は本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法による可撓管製造時に用いられる芯材の構成を示す図である。
図4、
図5は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における製造工程の第3工程を示す図である。
【0032】
まず、
図2において符号[2A]は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第1工程を示している。
【0033】
この第1工程は、長軸方向に伸長させた状態の芯材1の外周に螺旋管6を巻き付ける工程である。
【0034】
ここで、芯材1は、これから製造しようとする内視鏡用可撓管(
図1参照)の長さより若干長めに設定された所定の長さを有し、当該製造方法における第1工程において外周面に螺旋管6が巻回される棒状部材である。つまり、芯材1は、製造しようとする可撓管の形状を規定する基台となる部材である。
【0035】
芯材1は、
図3に示すように、棒状樹脂部材2と、第1の網状管3と、スプライスバンド4と、連結リング5とによって主に構成されている。
【0036】
なお、
図3において符号[3A]は芯材の平面を示している。同
図3の符号[3B]は[C]-[C]線に沿う断面を示している。同
図3の符号[3C]は芯材の表面を詳細に示す図である。同
図3の符号[3D]は芯材の拡大断面([D]-[D]線に沿う断面)を示している。
【0037】
棒状樹脂部材2は、弾性及び伸縮性を有し、全体として棒状(例えば円柱状又は円筒状等)に形成された樹脂部材(例えばシリコンゴム、フッ素ゴム材又は合成樹脂材等)からなる。
【0038】
なお、棒状樹脂部材2は、さらに耐熱性を有する素材であれば、より望ましい。即ち、後述する第3工程において、熱溶融した状態の熱可塑性樹脂10a(以下、単に樹脂10aという)が第2中間製造品9の外周に被覆される。このとき、第2中間製造品9の内部には芯材1が配置されている状態である。押出成形機24を用いて外皮10が第2中間製造品9の外周に被覆されるとき、当該第2中間製造品9の外周は、例えば摂氏250度程度の熱溶融した樹脂10aが付着する。この熱は、内部の芯材1の棒状樹脂部材2にまで伝達される可能性がある。したがって、このことを考慮して、芯材1の棒状樹脂部材2は、所定の耐熱性を有する素材であることが望ましい。
【0039】
第1の網状管3は、例えば複数の金属素線を束ねた素線束を編み込んで形成される金網を管状に形成されてなる。
【0040】
そして、芯材1は、棒状樹脂部材2の外周に第1の網状管3を密着させて被覆して形成されている。この場合において、第1の網状管3は、芯材1の両端部分において絞られて、スプライスバンド4によって固定されている。また、芯材1の両端部分には、連結リング5が設けられている。この連結リング5は、本実施形態の内視鏡可撓管の製造方法における第2工程あるいは第3工程(後述する)において、複数の芯材1を連結するのに用いられる。
【0041】
なお、芯材1は、螺旋管6の長さより若干長くなるように形成されている。例えば、芯材1の全長は、螺旋管6に対して略50~100mm程度長く設定されている。つまり、
図2に示すように、芯材1に対して螺旋管6を巻き付けた際には、芯材1の両端部分が螺旋管6の両端からそれぞれ
図2の符号Lで示す程度の長さだけ露呈する。この場合において、L=25~50mm程度とするのが望ましい。
【0042】
また、芯材1は、外径が螺旋管6の内径と略等しいか若しくは大きく設定されている。例えば、
図2に示すように、芯材1の外径を符号D1とし、螺旋管6の内径を符号D2としたとき、芯材1及び螺旋管6の両者が共に自然状態にあるとき、
【0043】
D1≧D2
の関係に設定されている。
【0044】
また、芯材1における第1の網状管3は、
図3に示す編角N=40°~70°の範囲とするのが好ましい。さらに、芯材1における第1の網状管3の編角N=50°~65°の範囲とするのが、より好ましい。
【0045】
このように構成される芯材1を用いて行われる本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第1工程では、芯材1の外周に螺旋管6を巻き付けて配置する。ここで、螺旋管6は、金属帯を螺旋状に巻回して管状に形成されている。
【0046】
まず、
図2の符号[2A]に示されるように、芯材1を固定引張治具20の固定台21(例えば万力等)に固定する。固定台21に固定された状態の芯材1の連結リング5にワイヤ22を連結する。このとき、芯材1とワイヤ22の各軸方向を一致させて配置する。そして、当該ワイヤ22を螺旋管6に挿通させた状態とする。なお、螺旋管6は、予め管形状に形成してあるものとする。
【0047】
この状態において、ワイヤ22を軸方向において
図2の矢印X1方向に引っ張ると、芯材1は縮径状態になる。この場合において、芯材1の第1の網状管3の編角は、引っ張りや圧縮に応じて変動する。このことから、第1の網状管3によって棒状樹脂部材2の外周が被覆された芯材1であっても、軸方向への伸縮は可能である。
【0048】
こうしてワイヤ22によって芯材1が縮径されると、芯材1の外径は螺旋管6の内径よりも小となる(D1<D2)。芯材1の縮径状態を維持しながら、螺旋管6を、
図3の矢印X2方向へ移動させて芯材1の外周における所定の位置に配置する。
【0049】
こうして螺旋管6を芯材1の外周において所定の位置に配置したら、芯材1の引っ張り力を解除する。これにより、芯材1の縮径状態は通常状態に復帰する。これにより、芯材1は縮径状態から、外径D1で示す通常状態に戻る。
【0050】
ここで、上述したように、芯材1と螺旋管6の両者が自然状態にあるときには、D1≧D2の関係にある。そして、芯材1は弾性及び伸縮性を有している。このことから、
図2の芯材1に対して小径の螺旋管6は芯材1の外周で確実に固定される。
【0051】
このような第1工程によって、
図2の符号[2B]、[2C]に示す第1中間製造品7が製造される。ここで、
図2の符号[2B]は第1中間製造品7の平面を示している。
図2の符号[2C]は[A]-[A]線に沿う第1中間製造品7の断面を示している。なお、第1中間製造品7とは、芯材1の外周に螺旋管6が所定の位置に巻き付いて配置された状態の棒状部材である。
【0052】
次に、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第2工程を行う。
図2において符号[2D]、[2E]は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第2工程によって製造される第2中間製造品9を示している。
【0053】
この第2工程は、第1工程によって製造された第1中間製造品7の外周(即ち螺旋管6の外周)に第2の網状管8を巻き付けて第2中間製造品9を製造する工程である。
【0054】
第2の網状管8は、第1の網状管3と同様に、例えば複数の金属素線を束ねた素線束を編み込んで形成される金網を管状に形成されてなる。
【0055】
第2工程では、第1中間製造品7(螺旋管6)の外周を、第2の網状管8で被覆して配置する。第2の網状管8の両端部分は絞った状態でスプライスバンド4を用いて固定する。そして、端部には連結リング5を形成する。
【0056】
このような第2工程によって、
図2の符号[2D]、[2E]に示す第2中間製造品9が製造される。ここで、
図2の符号[2D]は第2中間製造品9の平面を示している。
図2の符号[2E]は[B]-[B]線に沿う第2中間製造品9の断面を示している。なお、第2中間製造品9とは、第1中間製造品7(芯材1、螺旋管6)の外周を第2の網状管8にて被覆した状態の棒状部材である。
【0057】
次に、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第3工程を行う。
図4は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第3工程を示している。なお、
図4において符号[4A]は外皮10を成形する工程を拡大して示している。
図4において符号[4B]は第3工程の全体を概略的に示している。
【0058】
また、
図5において符号[5A]、[5B]は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第3工程によって製造される第3中間製造品11を示している。
【0059】
この第3工程は、第2工程によって製造された第2中間製造品9の外周(即ち第2の網状管8の外周)に、
図4における押出成形によって樹脂10aを被覆して外皮10を形成し、第3中間製造品11を製造する工程である。また、形成された外皮10を、冷却し固化する工程をも含む。
【0060】
外皮10は、樹脂10aが冷却固化した形態からなる。第3工程では、周知の押出成形機24を用いて第2の網状管8の外周に外皮10を被覆する。
【0061】
第2中間製造品9(第2の網状管8)の外周に、例えば熱可塑性樹脂からなる外皮10を被覆するのに際しては、次のように行う。まず、上述の第1工程~第3工程を繰り返して複数の第2中間製造品9を予め製造しておく。
【0062】
これら複数の第2中間製造品9の各両端部分のそれぞれに形成されている連結リング5に、例えばS字状若しくはC字形状に形成されたフック部材23を引っ掛けて、多数本の第2中間製造品9を連結して長尺形態にする。そして、この多数本が連結されてなる長尺形態の第2中間製造品9を供給ドラム26に巻き付ける。
【0063】
供給ドラム26に巻き付けられた第2中間製造品9を、一端部から引き出して、押出成形機24及び周知の冷却装置25(
図4には水冷式の装置を例示している)を通す。これによって、第2中間製造品9の外周には、外皮10が連続して被覆される。このようにして、第2中間製造品9の外周に外皮10を被覆する際には、複数の第2中間製造品9への連続的な外皮10の被覆成形が行われる。その後、外皮10が成形された第3中間製造品11は、複数が連結された状態で巻取ドラム27に巻き取られる。巻取ドラム27に巻き取られた第3中間製造品11は、次の工程に回すために、フック部材23を取り外されて、一本一本の第3中間製造品11に分離される。
【0064】
この場合において、第3工程では、フック部材23の外面部分にも樹脂10aが被覆されている場合がある。しかし、第3中間製造品11を個々に分離する際には、連結部分の樹脂10aを引き剥がせばよい。
【0065】
このような第3工程によって、
図5の符号[5A]、[5B]に示す第3中間製造品11が製造される。ここで、
図5の符号[5A]は第3中間製造品11の平面を示している。
図5の符号[5B]は[E]-[E]線に沿う第3中間製造品11の断面を示している。なお、第3中間製造品11とは、第2中間製造品9(芯材1、螺旋管6、第2の網状管8)の外周を外皮10にて被覆した状態の積層管状部材である。
【0066】
なお、上述した第2工程においても、上述の第3工程と略同様の工程形態とすることができる。即ち、第2工程において、複数の第1中間製造品7の各連結リング5にフック部材23を用いて連結した長尺形態とし、個々の第1中間製造品7に対して第2の網状管8を被覆する作業を連続的に行うようにすることができる。
【0067】
次に、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における第4工程を行う。
図5において符号[5C]は第4工程を示している。なお、
図5において符号[5D]、[5E]は、本実施形態の内視鏡用可撓管の製造方法における最終製造品としての内視鏡用可撓管12を示している。
【0068】
この第4工程は、第3工程によって製造された第3中間製造品11(芯材1、螺旋管6、第2の網状管8、外皮10からなる積層管状部材)から芯材1のみを抜き出す工程である。
【0069】
この第4工程では、まず、第3中間製造品11の一端部を切り取って芯材1の一端部を外部に露呈させる。
図5に示す例では、符号Cで示す二点鎖線によりカット領域を示している。
【0070】
そして、第3中間製造品11の他端部を所定の固定治具28を用いて固定する。この状態で、第3中間製造品11の一端部の外部に露呈された芯材1の連結リング5を、
図5に示す矢印X1方向に引っ張る。すると、芯材1は、自身の弾性及び伸縮性によって伸張し縮径状態になる。これにより、芯材1は、第3中間製造品11内の螺旋管6の内径よりも小径となる。したがって、芯材1は容易に引き抜くことができる。引き抜いた芯材1は、次の製造時に再利用することができる。
【0071】
このような第4工程によって、
図5の符号[5D]、[5E]に示す最終製造品としての内視鏡用可撓管12が製造される。ここで、
図5の符号[5D]は内視鏡用可撓管12の平面を示している。
図5の符号[5E]は[F]-[F]線に沿う内視鏡用可撓管12の断面を示している。
【0072】
このようにして製造された内視鏡挿入部の可撓管12は、所定の長さに切断された後、両端部分に対して所定の処理がなされて、内視鏡の可撓管部或いはユニバーサルコードとして組み付けられる。
【0073】
なお、上記一実施形態の製造方法は、主に空気清浄度が確保されたクリーンルーム内で用いられ、この製造方法によって製造される内視鏡用可撓管12は、通常の複数回使用可能なリユース方式の内視鏡における可撓管部あるいはユニバーサルコードに適用される。また、上記リユース方式の内視鏡と同様の構造を有し、例えば1回使用したのみで廃棄されるシングルユース内視鏡における可撓管部あるいはユニバーサルコードに対しても適用され得る。
【0074】
以上説明したように上記一実施形態によれば、弾性及び伸縮性、耐熱性を有する棒状樹脂部材2の外周に第1の網状管3を密着させて被覆した芯材1を用いて、螺旋管6と第2の網状管8と外皮10との3層構造の管状部材からなる内視鏡用可撓管12を製造する製造方法を提示できる。当該製造方法では、従来用いていた減摩剤を使用する必要がない。したがって、作業環境(クリーンルームなどの内部環境)における高い清浄度を維持することができる。同時に、製造完了後の内視鏡用可撓管12の内部清浄度を確保することができる。また、製品に付着した減摩剤の洗浄又は拭取り作業が不要となり、生産性の向上に寄与することができる。
【0075】
さらに、芯材1は、弾性及び伸縮性を有する素材を用いて構成したので、第2中間製造品9の外周に外皮10を被覆する第3工程において、複数の第2中間製造品9を連結した長尺形態の第2中間製造品9を供給ドラム26に巻き付けることができると共に、外皮10が成形された第3中間製造品11は巻取ドラム27に巻き取ることができる。これにより、複数の第2中間製造品9への外皮10の被覆成形を連続的に行うことができるので、内視鏡用可撓管12を高い生産性で製造することができる。
【0076】
なお、第2工程でも、複数本の第1中間製造品7を連結して処理することで、さらなる生産性の向上に寄与することができる。
【0077】
また、芯材1の外周に螺旋管6を巻き付けて配置する第1工程と、第3中間製造品11から芯材1のみを抜き出す第4工程とにおいては、芯材1を引っ張ることによって縮径させるようにしている。これにより、芯材1の外周に螺旋管6を配置したり、第3中間製造品11から芯材1を抜き出すことが極めて容易に行うことができる。そして、いずれの場合にも、芯材1と螺旋管6との間に生じる摩擦力によって、螺旋管6の整列乱れが生じたり、損傷したりするようなことがない。
従来の内視鏡に本発明の各実施形態の製造方法を適用できるが、これに限定されることはなく、シングルユースタイプの内視鏡にも本発明の製造方法を適用できる。
【0078】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0079】
1…芯材
2…棒状樹脂部材
3…第1の網状管
4…スプライスバンド
5…連結リング
6…螺旋管
7…第1中間製造品
8…第2の網状管
9…第2中間製造品
10…外皮
10a…熱可塑性樹脂
11…第3中間製造品
12…内視鏡用可撓管
20…固定引張治具
21…固定台
22…ワイヤ
23…フック部材
24…押出成形機
25…冷却装置
26…供給ドラム
27…巻取ドラム
28…固定治具
101…内視鏡システム
102…内視鏡
103…ビデオプロセッサ
104…光源装置
105…モニタ装置
106…挿入部
106a…先端部
106b…湾曲部
106c…可撓管部
107…操作部
108…ユニバーサルコード
109…コネクタ
110…接続ケーブル