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特開2023-41322タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041322
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230316BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230316BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230316BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20230316BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230316BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K9/10
C08K5/17
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148624
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】北村 臣将
(72)【発明者】
【氏名】福原 和城
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA18
3D131BC31
3D131BC33
3D131BC47
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC111
4J002BC022
4J002BC092
4J002BF022
4J002BG042
4J002BG052
4J002DA036
4J002DJ017
4J002EE038
4J002EU078
4J002EU188
4J002EX000
4J002FB282
4J002FB288
4J002FB298
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD058
4J002FD068
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
(57)【要約】
【課題】タイヤの長期使用に対して優れた劣化抑制効果を示し、かつタイヤの着色による外観劣化も防止可能なタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
アミン系老化防止剤をさらに配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物を使用したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低燃費・省資源など環境意識の高まりから当業界では軽量化タイヤの開発が行われている。タイヤの軽量化のためには、例えば、各パーツを薄ゲージ化することが挙げられるが、ゴムへの負担が大きくなり、これまで以上に長寿命なゴムが求められている。
一方、ゴムの劣化防止の手法として、ゴムローラやシリコーンゴム製品などに紫外線吸収剤を配合する技術は知られているが(例えば下記特許文献1、2参照)、タイヤ用のゴムに単に紫外線吸収剤を配合しても、その持続性が十分ではなかった。
【0003】
また、タイヤ用ゴム組成物に老化防止剤を配合する技術が知られている。老化防止剤はゴムに耐疲労性や耐オゾン性を付与する重要な配合剤であるが、ゴム中に配合された老化防止剤は、その分子極性の高さによってマイグレーションが発生しやすく、長期使用時にタイヤ外観が悪化するという問題点がある。とくにフェニレンジアミン系老化防止剤は、優れた老化防止効果を有してはいるものの、上記マイグレーションが発生しやすく、タイヤが茶変するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-212763号公報
【特許文献2】特開2017-2223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、タイヤの長期使用に対して優れた劣化抑制効果を示し、かつタイヤの着色による外観劣化も防止可能なタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを特定量配合し、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を内包した徐放性樹脂カプセルを特定量を配合したタイヤ用ゴム組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
また本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物を使用したタイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなることを特徴としているので、前記有効成分がゴム中に徐放され、タイヤの長期使用に対する優れた劣化抑制効果を提供できる。また、前記有効成分が老化防止剤の作用を補完するので、老化防止剤の配合量を減少でき、タイヤの着色による外観劣化も可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基、ポリオルガノシロキサン基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0010】
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは特に限定されず、タイヤ用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のカーボンブラックを用いることができる。
前記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。前記カーボンブラックは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m/gであることが好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0011】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは特に限定されず、タイヤ用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
前記シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。前記シリカは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~400m/gであることが好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0012】
(徐放性樹脂カプセル)
本発明で使用される徐放性樹脂カプセルは、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包してなり、該有効成分を徐放する効果を有するものである。
【0013】
紫外線吸収剤としては、とくに制限されないが、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、ホルムアミジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
中でも、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチロキシベンゾフェノン(アデカスタブ1413、ADEKA社製)、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、および、2,2’-ジヒドロキシ-4-ブチルオキシベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン化合物として、好ましくは、汎用性が高い観点から、アデカスタブ1413が挙げられる。
【0014】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として、例えば、BASF社製、TINUVIN 400、405、460、477、479が販売されている。
【0015】
ラジカル捕捉剤しては、例えばヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤(HALS)が挙げられ、具体的には、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ [5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールとのエステル(アデカスタブLA-63P、ADEKA社製)、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2'-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0016】
本発明の徐放性樹脂カプセルは、疎水性の前記有効成分を、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、ラジカル重合して、重合体を生成し、乾燥することにより得られる。
【0017】
重合性ビニルモノマーは、例えば、ビニル基を少なくとも1つ分子内に有するモノマーである。重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N-フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0019】
重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、10質量部/水100質量部以下、好ましくは、8質量部/水100質量部以下である。
【0020】
また、重合性ビニルモノマーは、架橋性モノマーを含むこともできる。
【0021】
架橋性モノマーは、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0022】
架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、1~100質量部、好ましくは、10~80質量部である。
【0023】
そして、本発明で使用される徐放性樹脂カプセルの製造方法では、まず、前記有効成分を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
【0024】
疎水性溶液は、有効成分および重合性ビニルモノマーを配合し、溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、均一に攪拌することにより得ることができる。
【0025】
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、加熱して実施することもできる。
加熱温度は、例えば、30~100℃、好ましくは、40~80℃である。
【0026】
次いで、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。
【0027】
すなわち、疎水性溶液および水を配合し、均一に攪拌することにより、疎水性溶液を水分散(懸濁)させる。これにより、疎水性溶液の水分散(懸濁)液を得る。
【0028】
水の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、100~1000質量部、好ましくは、150~500質量部である。
【0029】
疎水性溶液の水分散では、好ましくは、分散剤および界面活性剤を配合する。
【0030】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、スチレンマレイン酸コポリマーおよびそのナトリウム塩などの水溶性ポリマー、例えば、第三燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリナイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛華などの無機系分散剤などが挙げられる。
【0031】
分散剤のうち、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)、第三燐酸カルシウムが挙げられる。
【0032】
分散剤の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは、0.1~5質量部である。
【0033】
界面活性剤は、ラジカル重合中の粒子の凝集を有効に防止するために、好ましくは、上記した分散剤と併用され、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0034】
界面活性剤の配合割合は、疎水性溶液100質量部に対して、例えば、0.0001~1.0質量部、好ましくは、0.001~0.1質量部である。
【0035】
これら分散剤および界面活性剤は、例えば、疎水性溶液および水の配合前または配合後のいずれにおいても、配合することができ、好ましくは、疎水性溶液と配合する前の水に配合する。これにより、分散剤および界面活性剤の水溶液を調製する。
【0036】
上記した疎水性溶液の水分散(懸濁)では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
【0037】
次いで、水分散された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、油溶性開始剤の存在下、ラジカル重合して、重合体を生成する。
【0038】
油溶性開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの有機過酸化物、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ系化合物などが挙げられる。
【0039】
油溶性開始剤は、例えば、水と配合する前の疎水性溶液に配合することができ、または、それらの配合後における水分散液に配合することもできる。好ましくは、水と配合する前の疎水性溶液、より具体的には、水と配合する直前の疎水性溶液に配合する。
【0040】
油溶性開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01~2質量部、好ましくは、0.1~1質量部である。
【0041】
また、このラジカル重合は、懸濁液の懸濁状態を維持するように、懸濁液を攪拌しながら実施することから、懸濁重合とされる。また、原料となるモノマーが疎水性相(油相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合とされる。
【0042】
また、ラジカル重合は、例えば、水分散液を、例えば、加熱することにより、反応を開始させる。
【0043】
加熱条件は、油溶性開始剤の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、30~100℃、好ましくは、50~100℃であり、加熱時間が、例えば、3~24時間、好ましくは、5~12時間である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
【0044】
また、ラジカル重合時における圧力は、特に限定されず、常圧である。
【0045】
なお、上記した説明では、ラジカル重合を常圧で実施しているが、例えば、高圧下で実施することもできる。これにより、反応系を、100℃を超過する温度に設定でき、室温で固体の有効成分を容易に液状にすることもできる。
【0046】
その後、重合後の水分散液を、例えば、放冷などによって冷却する。冷却温度は、例えば、室温(20~30℃、より具体的には、25℃)である。
その後、放冷した水分散液を、乾燥させる。乾燥方法としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)、真空乾燥、および、常温(25℃)放置が挙げられる。好ましくは、スプレードライが挙げられる。
【0047】
本発明における徐放性樹脂カプセルの粒子径は、特に制限されず、平均粒子径(メジアン径)で、例えば、0.5μm~100μm、好ましくは、5μm~30μmである。
【0048】
本発明における徐放性樹脂カプセルは、その全体を100質量%としたときに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包してなるものであり、好ましくは25~65質量%内包してなる。紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤を併用する場合、両者の配合割合は任意であり、用途に応じて適宜決定される。
【0049】
本発明における徐放性樹脂カプセルは、好適には車両走行中に分割されて前記有効成分を徐放するため、タイヤの長期使用に対する優れた劣化抑制効果を提供できる。また、老化防止剤の作用効果の一部を担うことができるので、老化防止剤の配合量を減少でき、タイヤの着色による外観劣化も可能になる。
【0050】
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの劣化防止に対する即効性を確保するため、前記着色による問題を生じない程度に老化防止剤を添加することが好ましい。
好ましい老化防止剤としてはアミン系老化防止剤が挙げられ、その具体例としては、アルキル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N′-(3-メタクロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
なお当該形態における老化防止剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.1~5.0質量部が好ましい。
【0051】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなることを特徴とする。
カーボンブラックおよび/またはシリカの前記配合量が20質量部未満であると、ゴムの剛性および強靭性、耐摩耗性が悪化し、逆に200質量部を超えると低燃費性が悪化する。
徐放性樹脂カプセルの前記配合量が有効成分量として0.1質量部未満であると、添加量が少な過ぎて本発明の効果を得ることができず、逆に10質量部を超えると徐放性樹脂カプセルがタイヤ中で異物となって耐摩耗性が悪化する。
【0052】
本発明において、カーボンブラックおよび/またはシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、25~160質量部が好ましい。
また本発明において、徐放性樹脂カプセルの配合量は、有効成分量として0.5~8.0質量部が好ましい。
【0053】
(その他成分)
本発明におけるタイヤ用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0054】
本発明のタイヤは、前記本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造することができる。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、下記例中、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0056】
(徐放性樹脂カプセルの調製)
紫外線吸収剤としてアデカスタブ1413を25質量%、並びに、ラジカル捕捉剤としてアデカスタブLA-63Pを25質量%内包してなる(合計50質量%)、徐放性樹脂カプセル(メジアン径20μm)を特開2011-79816号公報の製造方法に従い調製後、スプレードライにより乾燥し、徐放性樹脂カプセルを得た。
【0057】
実施例1~3および比較例1~4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、混練物をミキサー外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにおいて加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0058】
EB保持率1:JIS K 6251に従い、加硫ゴム試験片の破断伸びを室温で測定した(BL値)。これとは別に、加硫ゴム試験片を70℃の環境下で1週間保存し、老化試験片を得て、この老化試験片の破断伸びを室温で試験した。結果は、前記BL値を100とした場合の老化試験片の値を指数表示した。指数が大きいほど老化後の破断伸びの保持率が高く、タイヤの長期使用に対して優れた劣化抑制効果を有することを意味する。
EB保持率2:上記EB保持率1の試験において、老化条件を70℃の環境下、3週間に変更したこと以外は、上記EB保持率1の試験と同様である。
耐摩耗性:岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用い、荷重5kg(49N)、スリップ率25%、時間4分、室温の条件にて測定し摩耗減量を求めた。結果は、比較例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
ゴムの変色:70℃の環境下で3週間保存した前後のゴム試験片で表面の変色の有無および度合いを目視で調査した。
【0059】
結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
*1:SBR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1739、油展量=SBR100質量部あたり37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製Nipol 1220)
*3:シリカ(Solvay社製Zeosil 1165MP、CTAB比表面積=165m/g)
*4:カーボンブラック(キャボットジャパン社製ショウブラックN339、NSA=94m/g)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*7:紫外線吸収剤UVA(ADEKA社製商品名アデカスタブ1413)
*8:ラジカル捕捉剤HALS(ADEKA社製商品名アデカスタブLA-63P)
*9:徐放性樹脂カプセル(上記のようにして調製した徐放性樹脂カプセル)
*10:老化防止剤6C(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD,N-フェニル-N′-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン)
*11:ワックス(大内新興化学工業(株)製サンノック)
*12:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*13:シランカップリング剤(エボニクデグッサ社製Si69)
*14:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
*16:加硫促進助剤(住友化学株式会社製ソクシノールD-G)
【0062】
表1の結果から、各実施例のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20~200質量部、並びに、有効成分として紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を20~70質量%内包した徐放性樹脂カプセルを前記有効成分量として0.1~10質量部、配合してなるものであるので、前記有効成分がゴム中に徐放され、とくにEB保持率2が改善されていることから、タイヤの長期使用に対する優れた劣化抑制効果を提供できることが分かった。
一方比較例1は、徐放性樹脂カプセルを使用せず、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤をそのまま組成物に配合したものであるので、各実施例で奏された効果を得ることはできなかった。
比較例2は、徐放性樹脂カプセルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、EB保持率1および2がともに改善されず、タイヤの長期使用に対する劣化抑制効果が得られなかった。
比較例3は、徐放性樹脂カプセルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、耐摩耗性が悪化した。
比較例4は、徐放性樹脂カプセルを使用せず、その代わりに老化防止剤6Cを配合した例である。老化防止剤の配合によりゴムの茶変が確認されたが、一方、比較例4と実施例3とを比較すると、実施例4では徐放性樹脂カプセルを配合したため老化防止剤6Cの配合量を低下できるので、ゴムの茶変が抑制されている。