(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041363
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】削孔撹拌機
(51)【国際特許分類】
E21B 17/02 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
E21B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148702
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(71)【出願人】
【識別番号】509235545
【氏名又は名称】株式会社SEET
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】白子 将則
(72)【発明者】
【氏名】高岡 千宗
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 由徳
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129EB04
2D129EC03
2D129EC11
2D129EC14
2D129EC21
(57)【要約】
【課題】ロッドに付与した上下方向の振動とロッド軸周りの正逆方向の回転力を、ロッドの先端に設けた掘削ヘッドに伝達することの可能な、削孔撹拌機を提供する。
【解決手段】先端に掘削ヘッドが接続されたロッドに回転力と上下方向の振動を付与することにより、前記掘削ヘッドで地盤を掘削する削孔撹拌機であって、前記ロッドは、ロッド本体と、該ロッド本体を軸線方向に連結する継手構造とを有し、前記継手構造は、外周面にフランジが設けられ、角筒部を備える凸継手と、外周面にフランジが設けられ、前記角筒部と嵌合する角孔部を備える凹継手と、前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合わせて挟持する押さえ部材と、により構成され、前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合せた断面が、外周縁に向けて先細りになるテーパーをなす。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ヘッドが接続されたロッドに回転力と上下方向の振動を付与することにより、前記掘削ヘッドで地盤を掘削する削孔撹拌機であって、
前記ロッドは、ロッド本体と、該ロッド本体を軸線方向に連結する継手構造とを有し、
前記継手構造は、
外周面にフランジが設けられ、角筒部を備える凸継手と、
外周面にフランジが設けられ、前記角筒部と嵌合する角孔部を備える凹継手と、
前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合わせて挟持する押さえ部材と、により構成され、
前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合せた断面が、外周縁に向けて先細りになるテーパーをなすことを特徴とする削孔撹拌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削するための削孔撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、地中にソイルセメント柱を築造する際に用いる削孔攪拌装置が開示されている。削孔攪拌装置は、先端に掘削ビットが接続されたロッドを備えており、回転手段によりロッドを軸周りに回転させながら起振手段を介してロッドに上下方向の振動を付与することにより、掘削ビットで地中を削孔する。また、地中を削孔しつつ、掘削ビットの先端よりセメントミルクを吐出することにより、削孔した孔内にソイルセメント柱を構築する。
【0003】
上述する特許文献1の削孔攪拌装置において、ロッドは、複数の鋼管をネジ式の継手構造により一連に接続された形状となっている。このため、ロッドを軸周りに回転させる回転手段は、ネジ式の継手構造における締付け方向と同一方向にのみ回転するよう、その動作が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の削孔攪拌装置によれば、ロッドを介して掘削ビットが回転しつつ上下方向に振動するため、地中に硬質層が存在しても効率よく掘削し、ソイルセメント柱を築造することができる。しかし、上記のとおり掘削ビットを備えるロッドの回転方向は、軸周りの一方向に限定される。このため、例えば、地盤中に砂礫層やスラグなどを締め固めた埋戻し層などが存在し、掘削途中で掘削ビットが空回りしたりこれらの層に食い込むなどして掘進不能となった場合、ロッドの回転方向を一旦逆転させるなどの対策を講じることができない。
【0006】
したがって、ロッドとともに掘削ビットを一旦上昇させたのち、適宜回転するなどして掘削ビットの位置移動をしたうえで下降して、掘削底面へ着底させたのちに地中削孔を再開する、といった対処をせざるを得ず、施工操作が煩雑となっていた。
【0007】
また、起振手段を介してロッドに上下方向の振動を付与すると、ネジ式の継手構造は弛みやすくガタツキを生じる可能性がある。このようなガタツキが生じると、ロッドに上下方向の振動を付与しても掘削ビットまでスムーズに伝達できず、振動を付与したことによる削孔効率の向上を見込めない場合がある。
【0008】
ロッドの連結に利用される継手構造としては、特許文献1のネジ式の継手構造だけでなく、例えば、
図10(a)で示すようなフランジ式の継手構造や、
図10(b)で示すような六角ジョイントピン式の継手構造の採用も考えられる。
【0009】
図10(a)のフランジ式の継手構造70は、上下に配置された鋼管31a、31b各々の端部に設けたフランジ71、72を突き合せ、これらをボルト73で締結するものである。このようなフランジ式の継手構造70は、上側の鋼管31bに付与された上下方向の振動や鋼管軸周りの回転力を、ボルト73を介して下側の鋼管31bに伝達する。このため、地中に硬質層が存在する場合には、ボルト73の数量を増大することにより対応することとなり、接続作業に多大な時間を要する。また、ボルト接合に上記の上下方向の振動や鋼管軸周りの回転力を繰り返し作用させるとゆるみが生じやすく、このような場合には施工を中断してボルトを締め直すなど、作業が煩雑となりやすい。
【0010】
図10(b)の六角ジョイントピン式の継手構造80は、オス継手82に設けた六角形の断面を有する角筒部821を、メス継手83に設けた角孔部831に嵌合したのち、これらに一対の接続ピン81を貫通させるものである。一対の接続ピン81は、オス継手82とメス継手83の軸線を挟んだ両側に高さ方向に位置をずらして、軸線と直交する方向に貫通させる。このため、角孔部831には接続ピン81が貫通する貫通孔832が、また角筒部821には接続ピン81が通過する切り欠き822がそれぞれ設けられている。
【0011】
このような六角ジョイントピン式の継手構造80は、嵌合した状態の角孔部831及び角筒部821と接続ピン81との間に遊びがない場合、接続ピン81を挿入できない。すると、上側の鋼管31bに上下方向の振動を付与してもこの振動を、遊びにより下側の鋼管31aに伝達できない恐れが生じる。遊びを設ける構造に代えて、例えば、接続ピン81にテーパーを設けてくさび形状にすることも考えられるが、加工が煩雑であるとともに製作費が高価となる。
【0012】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、ロッドに付与した上下方向の振動とロッド軸周りの正逆方向の回転力を、ロッドの先端に設けた掘削ヘッドに伝達することの可能な、削孔撹拌機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明の削孔撹拌機は、先端に掘削ヘッドが接続されたロッドに回転力と上下方向の振動を付与することにより、前記掘削ヘッドで地盤を掘削する削孔撹拌機であって、前記ロッドは、ロッド本体と、該ロッド本体を軸線方向に連結する継手構造とを有し、前記継手構造は、外周面にフランジが設けられ、角筒部を備える凸継手と、外周面にフランジが設けられ、前記角筒部と嵌合する角孔部を備える凹継手と、前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合わせて挟持する押さえ部材と、により構成され、前記凸継手のフランジと前記凹継手のフランジとを突き合せた断面が、外周縁に向けて先細りになるテーパーをなすことを特徴とする。
【0014】
上述する本発明の削孔撹拌機によれば、先端に掘削ヘッドが接続されたロッドが、複数のロッド本体とロッド本体を連結する継手構造により構成され、継手構造を構成する凸継手が角筒部を有し、凹継手が角筒部が嵌合する角孔部を有する。これにより、継手構造を構成する凹継手の角孔部と凸継手の角筒部を介して、継手構造により連結されたロッド本体の一方に付与された正逆方向の回転力を他方に伝達できる。
【0015】
また、押さえ部材により挟持された凸継手のフランジと凹継手のフランジとを突き合せた断面が、外周縁に向けて先細りになるテーパーをなす。このため、このテーパーと嵌合する嵌合溝を押さえ部材に設ければ、凸継手のフランジと凹継手のフランジが嵌合溝に対してくさび状に入り込むため、上下方向(凸継手及び凹継手の軸線方向)の締付け力が増大し、凸継手と凹継手を強固に挟持できる。これにより、継手構造を構成する押さえ部材を介して、継手構造により連結されたロッド本体の一方に付与された上下方向の振動を他方に伝達できる。
【0016】
したがって、複数のロッド本体を継手構造により連結してなるロッドの基端に付与された、上下方向の振動とロッド軸周りの正方向及び逆方向の回転力を、ロッドの先端に設けた掘削ヘッドに付与することが可能となる。こうすると、地盤中に礫分が締め固まった砂礫層が存在する場合に、例えば、掘削ヘッドが空回りしたり砂礫層に食い込むなどして掘削不能となっても、ロッドを介して掘削ヘッドを逆回転させるといった対策を講じることができる。これにより、地中に砂礫層が存在する場合にも、煩雑な操作を行うことなく掘削作業を継続でき、地盤掘削に係る作業性を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、掘削ヘッドを先端に設けたロッドを構成する複数のロッド本体を、角筒部を備える凸継手及び角筒部が嵌合する角孔部を備える凹継手と、これらを挟持する押さえ部材とを用いた継手構造で接続することにより、ロッドに付与した上下方向の振動とロッド軸周りの正逆方向の回転力を、ロッドの先端に設けた掘削ヘッドに、スムーズに伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における削孔撹拌機を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるロッド本体を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における凸継手の角筒部及び凹継手の角孔部を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における継手構造を形成する手順を示す図である(その1)。
【
図5】本発明の実施の形態における継手構造を形成する手順を示す図である(その2)。
【
図6】本発明の実施の形態における継手構造の詳細を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるロッド本体を継ぎ足しロッドを延伸する手順を示す図である(その1)。
【
図8】本発明の実施の形態におけるロッド本体を継ぎ足しロッドを延伸する手順を示す図である(その2)。
【
図9】本発明の実施の形態における削孔撹拌機により砂礫層を掘削する様子を示す図である。
【
図10】従来技術の継手構造(フランジ式及び六角ジョイントピン式)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の削孔撹拌機について、
図1~
図9を参照しつつその詳細を説明する。本実施の形態では、地中孔を構築する場合を事例に挙げるが、削孔撹拌機はソイルセメント柱を築造することも可能である。
【0020】
≪≪削孔撹拌機≫≫
図1で示すように、対象地盤を掘削する際に使用する削孔撹拌機1は、クローラ走行体2と、クローラ走行体2に搭載されている上部旋回体3と、起倒自在に支持されたリーダー4とを備える。
【0021】
リーダー4は、起立姿勢においてその前面側に上下方向に延在するガイド41が設けられ、また、ガイド41に沿って昇降する昇降体42が装着されている。背面側には2台の伸縮装置43、44が設けられ、これらを介してリーダー4と上部旋回体3とが連結されている。リーダー4は、伸縮装置43、44の伸縮動作により起倒の各姿勢が自在となっている。
【0022】
また、リーダー4はその下端部に、チャック機構45を備えている。チャック機構45は、後述するロッド20及び掘削ヘッド10を把持可能な構成を有していれば、いずれの装置を採用してもよい。また、チャック機構45は必ずしもリーダー4に装着されていなくてもよく、さらには、削孔撹拌機1とは別体の装置を採用してもよい。
【0023】
削孔撹拌機1はさらに、昇降体42に搭載されたれた起振装置9と、起振装置9の下部に接続された回転装置8と、回転装置8を貫通し基端が起振装置9に接続される駆動軸7と、駆動軸7の先端に接続されるロッド20と、ロッド20の先端に接続された掘削ヘッド10とを備える。
【0024】
起振装置9は、偏芯重錘を回転させることで上下方向の起振力を発生させる装置であり、昇降体42を介してガイド41に沿って移動するため、リーダー4の起立時には昇降方向に移動する態様となる。なお、起振装置9は、駆動軸7に対して上下方向の成分を含む振動を伝達可能な起振力を発生できる装置であれば、いずれを採用してもよい。
【0025】
回転装置8は、昇降体42に設置されるとともに起振装置9に接続されており、起振装置9とともに起立姿勢のリーダー4に沿って移動する。その内部には、図示しない駆動軸係止部が備えられており、駆動軸7の周面を係止して軸周りに正方向もしくは逆方向の回転力を付与する。
【0026】
駆動軸7は中空部を備える一重管よりなり、その中間にスイベル継手6が装着されて、例えば、セメントミルク供給管や安定液供給管などの流体供給管5が接続されている。これにより、流体供給管5から供給されたセメントミルクや安定液Sなどの流体を、スイベル継手6から駆動軸7を介してロッド20に供給することが可能となる。
図1では、安定液Sを供給する場合を事例に挙げている。
【0027】
ロッド20は、ロッド本体30と、ロッド本体30を軸線方向に連結する継手構造50とにより構成されている。その基端部は、継手構造50を介して駆動軸7に接続され、先端部は、継手構造50を介して掘削ヘッド10に接続されている。ロッド本体30及び継手構造50の詳細については、後述する。
【0028】
掘削ヘッド10は、ロッド20に接続され、中空部を備える一重管よりなる軸部11と、軸部11の先端部近傍であって側方に延びるように取り付けられた掘削翼本体13と、掘削翼本体13に取り付けられたビット14とを備える。また、軸部11には掘削翼本体13から上方に離間した位置に、放射方向に延在する複数の攪拌翼12が設置され、軸部11の先端には先端ビット15と流体吐出口16とが設けられている。
【0029】
ビット14及び先端ビット15は、掘削ヘッド10がロッド軸周りに正方向及び逆方向のいずれの方向に回転した場合にも地盤を掘削可能な形状を有している。また、流体吐出口16は、流体供給管5からスイベル継手6、駆動軸7及びロッド20を経由して軸部11に供給された流体を地盤に向けて吐出する。本実施の形態では、地中孔Hを掘削しているため、流体供給管5から吐出される流体は安定液Sであるが、流体としてセメントミルクを採用すれば、地中孔Hに代えてソイルセメント柱を築造することも可能である。
【0030】
また、掘削ヘッド10に設けた攪拌翼12は、上記のとおりソイルセメント柱を築造する際、地盤を掘削しながら流体吐出口16からセメントミルクを吐出しつつ撹拌する場合、もしくは、地中孔Hを構築したのち、この地中孔Hにセメント系固化材を供給して安定液と攪拌する場合などに使用する。
【0031】
≪≪ロッドの詳細≫≫
上述した構成を有する削孔撹拌機1において、ロッド20は、駆動軸7を介して起振装置9から付与された上下方向の振動と回転装置8から付与されたロッド軸周りの正方向及び逆方向の回転を、掘削ヘッド10に伝達可能な構成を有している。以下に、ロッド20を構成するロッド本体30と継手構造50の詳細について説明する。継手構造50は、駆動軸7及び掘削ヘッド10とロッド20との接続にも採用されていることから、これらについても併せて説明する。
【0032】
≪≪ロッド本体≫≫
ロッド本体30は、
図2で示すように、管材31とその両端に凸継手32と凹継手33とを備えている。
【0033】
管材31は、前述した駆動軸7及び掘削ヘッド10の軸部11と同様の一重管よりなり、流体供給管5から供給された流体が流下する中空部311を有している。その一端には凸継手32が接続され、他端には凹継手33が接続されている。
図2では、凸継手32を上側にして管材31を立設させた状態を例示している。
【0034】
凸継手32は、管材31の中空部311と連通する中空部321が設けられた筒体よりなり、基端側は、その断面が管材31と同様の大きさ及び外形形状の円筒部322に形成され、管材31に対して溶接等の固着手段により固定されている。一方、先端側は、その断面が管材31より小さく形成されるとともに、
図3(a)で示すような、六角形のドーナツ形状に形成された角筒部323となっている。
【0035】
そして、基端側の円筒部322と先端側の角筒部323との境界部近傍に、凸側フランジ324が設けられている。凸側フランジ324は、円筒部322の外周面から張り出すように形成され、角筒部323側を下底面とし、円筒部322側を側面とする円錐台形状に形成されている。
図6で示すように、角筒部323側は後述する凹側フランジ334との対向面324aとなり、円筒部322側は後述する押さえ部材40との当接面324bとなる。
【0036】
凹継手33は、
図2で示すように、全長に渡って断面が管材31と同様の大きさ及び外形形状の収納筒部332に形成され、基端側に管材31の中空部311と連通する中空部331が設けられている。一方、先端側には、凸継手32の角筒部323と嵌合する角孔部333が形成され、角孔部333と中空部331は連通している。角孔部333の内周断面は、
図3(b)で示すように、角筒部323の外周面と同様の大きさの六角形に形成されている。
【0037】
そして、収納筒部332の先端に、凹側フランジ334が設けられている。凹側フランジ334は、収納筒部332の外周面から張り出すように形成され、先端側を下底面とし、管材31側を側面とする円錐台形状に形成されている。
図6で示すように、先端側は上述した凸側フランジ324との対向面334aとなり、管材31側は後述する押さえ部材40との当接面334bとなる。
【0038】
≪≪継手構造50≫≫
上記の構成を有するロッド本体30は、
図1で示すように、複数が軸線方向に並列配置されるとともに隣り合うロッド本体30の間に、ロッド本体30が備える凸継手32及び凹継手33と、押さえ部材40とにより構成される継手構造50が形成されて、ロッド20となる。
【0039】
つまり、
図4(a)(b)で示すように、下側に位置するロッド本体30aの凸継手32を構成する角筒部323を、上側に位置するロッド本体30bの凹継手33を構成する角孔部333に挿入して嵌合させ、凸側フランジ324の対向面324aと凹側フランジ334の対向面334aを当接させる。これにより、上側のロッド本体30bに付与された正方向及び逆方向の回転力を、下側のロッド本体30aに対して凹継手33の角孔部333と凸継手32の角筒部323を介して伝達することが可能となる。
【0040】
このとき、凸継手32の角筒部323先端と凹継手33の角孔部333との間に、ロッドパッキン60を介装する。ロッドパッキン60は、凸継手32と凹継手33の中空部321、331の連通状態を維持するよう、中央に孔が設けられたリング形状に形成されている。
【0041】
こうして、対向面324a、334aどうしを突き合せた凸側フランジ324と凹側フランジ334を、
図5(a)(b)で示すような押さえ部材40により挟持する。これにより、上側のロッド本体30bに付与された上下方向の振動を、下側のロッド本体30aに対して押さえ部材40を介して伝達できる。
【0042】
≪押さえ部材40≫
上記のような継手構造50を構成する押さえ部材40は、
図5(a)(b)で示すように、半割部材401,402と締結具403とを備え、締結具403は、ボルト403a及びナット403bを備える。
【0043】
半割部材401、402は、
図5(a)で示すように、凸継手32の凸側フランジ324及び凹継手33の凹側フランジ334を囲繞可能な大きさのリング状部材を半割にしたものであり、半割部材401の周方向両端部には、放射方向に突出する耳部401bが設けられている。これら耳部401bには、ボルト403aが貫通するボルト孔が形成されている。半割部材402にも同様に、周方向両端部に耳部402bが設けられ、ボルト403aが貫通するボルト孔が形成されている。
【0044】
また、半割部材401の内周面には、周方向に連続した嵌合溝401aが形成されている。その断面形状は、
図6で示すように、対向面324a、334aを突き合せた状態の凸側フランジ324と凹側フランジ334を挿入した際、これらと嵌合する形状に形成されている。凸側フランジ324と凹側フランジ334とを突き合せた断面は、外周縁に向けて先細りになるテーパーをなすから、嵌合溝401aは、このテーパーと嵌合可能な略V型のテーパー溝に形成されている。半割部材402にも周方向に連続した嵌合溝402aが形成され、嵌合溝401aと同様の略V型のテーパー溝が形成されている。
【0045】
上記の構成を有する押さえ部材40の装着手順は、つぎのとおりである。
図5(a)で示すように、半割部材401、402を、突き合せた状態の凸側フランジ324と凹側フランジ334とを囲繞するようにして配置し、これらを嵌合溝401a、402aに挿入し嵌合する。これにより、半割部材401,402の耳部401b、402bが対向するから、
図5(b)で示すように、耳部401b、402bに形成されているボルト孔に、ボルト403aを挿通するとともに、ナット403bを螺合して締め込む。
【0046】
すると、
図6で示すように、半割部材401,402が徐々に近接することに伴って、凸側フランジ324と凹側フランジ334が、嵌合溝401a、402aに対してくさび状に入り込む。このとき、嵌合溝401a、402aはともに、凸側フランジ324と凹側フランジ334の外周端面が、溝底に当接しない程度の溝深さDを確保している。これにより、凸側フランジ324と凹側フランジ334は十分に嵌合溝401a、402aに貫入するため、上下方向(凸継手32及び凹継手33の軸線方向)の締付け力が増大し、凸継手32と凹継手33を強固に挟持できる。
【0047】
したがって、凹継手33側から上下方向の振動が伝達された場合にもガタツキを生じることなく、押さえ部材40を介して凸継手32側にこの上下方向の振動を伝達することが可能となる。上記の凸側フランジ324と凹側フランジ334に対する押さえ部材40の締付け効果は、凸側フランジ324と凹側フランジ334とを突き合せた断面のテーパー角θを10~60°程度に設定することが好ましく、より好ましくは26°程度である。
【0048】
なお、押さえ部材40には、例えば
図6で示すようなアイボルトEを設けてもよい。こうすると、押さえ部材40の着脱作業時に、アイボルトEを利用して押さえ部材40をワイヤーにて吊持することで落下防止対策を講じることが可能となる。
【0049】
上記の継手構造50は、
図1で示すように、ロッド20と駆動軸7との接続、及びロッド20と掘削ヘッド10との接続にも採用している。
図1では、立設状態のロッド本体30における下端側に凹継手33を配置し、上端側に凸継手32を配置している。したがって、これに倣って、掘削ヘッド10の上端に凸継手32を設置し、駆動軸7の下端に凹継手33を設置している。
【0050】
また、長大な地中孔Hを構築する場合には、継手構造50を利用して容易にロッド本体30を継ぎ足しロッド20を延伸させることができるとともに、延伸したロッド20を駆動軸7に接続することができる。以下に、新たなロッド本体30cを継ぎ足してロッド20を延伸する手順を説明する。
【0051】
≪ロッド本体を継ぎ足す手順≫
図7(a)で示すように、回転装置8による正方向の回転力と起振装置9による上下方向の振動を、駆動軸7からロッド20を介して掘削ヘッド10に伝達することにより地盤を掘削し、地中孔Hを構築する。地中削孔を開始するにあたっては、次のような準備工を実施している。
【0052】
伸縮装置43、44を介してガイド41を立設姿勢に配置したリーダー4が所定位置に配置されるよう削孔撹拌機1を据え付ける。次に、あらかじめ掘削予定位置を予備掘削して掘削ヘッド10を挿入し、掘削ヘッド10の軸部11及び駆動軸7にロッド本体30を接続する。これらいずれも前述したように、継手構造50を設けることにより接続している。
【0053】
具体的には、
図1で示すように、軸部11の凸継手32とロッド本体30の凹継手33とを嵌合させ、これらに押さえ部材40を装着して継手構造50を設けることにより、軸部11とロッド本体30を接続する。同様に、ロッド本体30の凸継手32と駆動軸7の凹継手33とを嵌合させ、これらに押さえ部材40を装着して継手構造50を設けることによりロッド本体30と駆動軸7を接続する。
【0054】
また、施工中は、
図7(a)で示すように、安定液Sを流体供給管からスイベルジョイントを介して駆動軸7に供給し、ロッド20及び掘削ヘッド10の軸部11を経由して、流体吐出口16から地中孔Hに吐出させている。地中孔Hを満たす安定液Sは、孔内に挿入したバキュームホースVを利用して排出している。
図7(b)で示すように、掘削が進むにつれて掘削ヘッド10が降下し、ロッド20に形成された継手構造50がチャック機構45の上端近傍に近接したところで、回転装置8及び起振装置9を一旦停止する。
【0055】
チャック機構45でロッド20を構成するロッド本体30を把持した状態で、ロッド本体30と駆動軸7とを接続する継手構造50から押さえ部材40を取り外す。押さえ部材40を取り外したところで、
図7(c)で示すように、ガイド41に沿って回転装置8及び起振装置9が設置されている昇降体42を上昇させる。こうして、ロッド本体30が上端に備える凸継手32を露出させるとともに、駆動軸7が下端に備える凹継手33を露出させる。また、駆動軸7の凹継手33とロッド本体30の凸継手32との間に、新たなロッド本体30cを継ぎ足すための作業空間を設ける。
【0056】
この作業空間を利用して、
図8(a)で示すように、駆動軸7とチャック機構45に把持されているロッド本体30とに、新たなロッド本体30cを接続する。具体的には、
図8(b)で示すように、チャック機構45に把持されたロッド本体30の凸継手32と新たなロッド本体30cの凹継手33とを嵌合し、これらに押さえ部材40を装着して継手構造50を設ける。これにより新たなロッド本体30cが継ぎ足され、ロッド20はその部材長が延伸する。
【0057】
こののち、昇降体42を利用して駆動軸7の高さ位置を適宜調整しつつ、新たなロッド本体30cの凸継手32と駆動軸7の凹継手33とを嵌合し、これらに押さえ部材40を装着して継手構造50を設ける。これにより、部材長が延伸したロッド20は駆動軸7から垂下した状態となるから、チャック機構45を開放して、
図9(c)で示すように、回転装置8及び起振装置9を作動させ、地中孔Hの構築作業を再開する。
【0058】
このような手順で、継手構造50を介してロッド本体30が継ぎ足されたロッド20は、駆動軸7を介して付与された、回転装置8による正方向の回転力と起振装置9による上下方向の振動を、ロッド20の先端側に接続された掘削ヘッド10にスムーズに伝達する。したがって、掘削途中の地盤に硬質層が存在した場合にも、上下方向の振動が伝達された掘削ヘッド10のビット14及び先端ビット15で打撃破砕したり、大きな礫を振動で移動させるなどして、掘削を継続することが可能となる。
【0059】
また、継手構造50は、押さえ部材40を採用し、従来技術の一つとして説明した
図10(b)の六角ジョイントピン式の継手構造80のような一対の接続ピン81を使用しない。このため、凸継手32と凹継手33の嵌合範囲を短小化することが可能となる。つまり、一対の接続ピン81を採用する場合には、
図10(b)で示すように、角孔部831には接続ピン81を貫通する貫通孔832を、また角筒部821には接続ピン81が通過する切り欠き822を、それぞれ高さ方向に位置をずらして設ける必要が生じる。しかし、継手構造50の角孔部333と角筒部323はこれらを省略できることから高さを低く設定できるため、嵌合範囲も小さくなる。
【0060】
これにより、ロッド本体30の全長を変えずに、凸継手32と凹継手33の嵌合範囲を短小化させた分だけ管材31の部材長を長くして製作することができる、すると、施工対象領域が低空頭な空間にあり、ロッド本体30を継ぎ足すための作業空間の確保に制限がある場合にも、ロッド20を延伸するべく継ぎ足すロッド本体30の数量を減少することが可能となる。これに伴って、ロッド本体30を継ぎ足す作業の回数も減少できるため、地中孔Hを施工する際の作業効率が大幅に向上し、工期短縮に寄与することが可能となる。
【0061】
さらに、削孔撹拌機1による地中削孔時に、
図9(a)で示すような礫分が締め固まった砂礫層Gが存在する場合、掘削ヘッド10のビット14及び先端ビット15が砂礫層Gに食い込む、もしくは、分離した礫分が砂礫層Gと掘削ヘッド10との間に入り込んで掘削ヘッド10が空転するなどして、掘削不能な事態となる場合がある。このような場合には、
図9(b)で示すように、回転装置8にてロッド20に対して軸心周りに逆方向の回転力を付与するといった対策を講じることができる。
【0062】
これにより、地中に砂礫層Gが存在する場合にも、煩雑な操作を行うことなく掘削作業を継続でき、地中削孔に係る作業性を大幅に向上することが可能となる。このとき、掘削ヘッド10は正方向及び逆方向のいずれの回転でも掘削可能な構造を有しているから、逆回転のまま掘削を進行してもよいし、正回転に切り替えて掘削作業を再開してもよい。
【0063】
本発明の削孔撹拌機は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、本実施の形態では
図4で示すように、凸継手32の角筒部323及び凹継手33の角孔部333を六角型に形成したが、必ずしもこれに限定するものではない。凸継手32及び凹継手33の軸周りに相互に回転することのない形状であれば、三角型や四角型などいずれの形状を採用してもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、起立姿勢のロッド本体30において、上端に凸継手32を配置するとともに下端に凹継手33を配置したが、これに限定するものではない。上下逆転させてもよいし、上下に凸継手32を配置したロッド本体30と上下に凹継手33を配置したロッド本体30とを準備し、両者の組み合わせを継手構造50で接続しロッド20を構成してもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態では
図5(a)で示すように、押さえ部材40を、半割部材401,402と締結具403とにより構成し、締結具403に合計4本のボルト403a及びナット403bを採用したが、その数量はいずれでもよい。また、
図6で示すように、凸側フランジ324と凹側フランジ334に対して上下方向の締付け力を作用させることが可能であれば、締結具403は、ボルト403a及びナット403bの組み合わせに限定するものではない。
【0067】
加えて、半割部材401,402は必ずしも別体でなくてもよく、例えば、2組の耳部401b、402bのうち、一方の組み合わせにヒンジ部材を設け、他方の組み合わせをボルト403a及びナット403bで締付ける構造としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 削孔撹拌機
2 クローラ走行体
3 上部旋回体
4 リーダー
41 ガイド
42 昇降体
43 伸縮装置
44 伸縮装置
45 チャック機構
5 流体供給管
6 スイベル継手
7 駆動軸
8 回転装置
9 起振装置
10 掘削ヘッド
11 軸部
12 攪拌翼
13 掘削翼本体
14 ビット
15 先端ビット
16 流体吐出口
20 ロッド
30 ロッド本体
30a ロッド本体(下側)
30b ロッド本体(上側)
30c 新たなロッド本体
31 管材
31a 鋼管(下側)
31b 鋼管(上側)
32 凸継手
321 中空部
322 円筒部
323 角筒部
324 凸側フランジ
324a 対向面
324b 当接面
33 凹継手
331 中空部
332 収納筒部
333 角孔部
334 凹側フランジ
334a 対向面
334b 当接面
40 押さえ部材
401 半割部材
401a 嵌合溝
401b 耳部
402 半割部材
402a 嵌合溝
402b 耳部
403 締結具
403a ボルト
403b ナット
50 継手構造
60 ロッドパッキン
70 継手構造(フランジ式)
71 フランジ
72 フランジ
73 ボルト
80 継手構造(六角ジョイントピン式)
81 接続ピン
82 オス継手
821 角筒部
822 切り欠き部
83 メス継手
831 角孔部
G 砂礫層
H 地中孔
V バキュームホース
E アイボルト
S 安定液