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特開2023-41383新型コロナウイルスを不活化可能な口腔ケア組成物
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  • 特開-新型コロナウイルスを不活化可能な口腔ケア組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041383
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】新型コロナウイルスを不活化可能な口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20230316BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230316BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230316BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230316BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P1/02
A61P31/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/22
A61K47/46
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/14
A61K8/37
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148740
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】596036256
【氏名又は名称】株式会社ビーエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】玄 丞烋
(72)【発明者】
【氏名】玄 優基
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB22
4C076CC35
4C076DD38T
4C076DD46F
4C076DD61T
4C076DD63F
4C076DD67T
4C076DD68F
4C076DD70T
4C076EE41T
4C076EE58
4C076EE58T
4C076FF43
4C076FF52
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB172
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC242
4C083AC391
4C083AC421
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC861
4C083AD191
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD242
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD531
4C083AD571
4C083BB01
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD14
4C083DD15
4C083EE07
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA57
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】製剤品が、口腔内に含まれた際に溶解または崩壊して、口腔内のSARS-CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス)に対して不活化作用を行うことが可能な口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】一実施形態において、1個の錠剤中に、純度が95重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG;EGCg)5~15mgと、緑茶粉末50~400mgと、ショ糖や果糖を除く糖質系甘味料300~1500mgとが含まれ、必要に応じて、非糖質系甘味料5~30mg、及び/または、食品用乳化剤5~30mgが含まれる。他の一実施形態において、1個のカプセル剤中に、純度が95重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)70~150mgと、粉末状の賦形剤50~200mgとが含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の製剤品中に、純度が95重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレートを5~200mg含有しており、前記製剤品が口腔内に含まれた際に溶解または崩壊して、口腔内のSARS-CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス)に対して不活化作用を行うことが可能な口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記製剤品が錠剤(タブレット)であり、1個の錠剤中に、純度が95重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG;EGCg)5~15mgと、緑茶粉末50~400mgと、ショ糖や果糖を除く糖質系甘味料300~1500mgとが含まれ、必要に応じて、非糖質系甘味料5~30mg、及び/または、食品用乳化剤5~30mgが含まれ、これら以外の成分の量が100mg以下である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記糖質系甘味料は、マルチトース、トレハロース、キシリトール、オリゴ糖、及びパラチノースよりなる群から選択され、
前記非糖質系甘味料は、アスパルテームまたはその誘導体、ステビア、グリチルリチン、スクラロース、サッカリン、及びアセスルファムKよりなる群から選択され、
前記食品用乳化剤は、ョ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸モノグリセリド)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンよりなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記製剤品がカプセル剤であり、1個のカプセル剤中に、純度が95重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)70~150mgと、粉末状の賦形剤50~200mgとが含まれ、これら以外の成分の量が100mg以下であることを特徴とする請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型コロナ(COVID-19)ウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス性効果を有する口腔ケア組成物に関する。特には、口腔内にて徐々に溶け出して新型コロナ(COVID-19)ウイルスを持続的に不活化可能な口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナ(COVID-19)の感染を防止又は抑制することは、今日の大きな課題となっている。新型コロナ(COVID-19)の感染は、感染した者の唾液が空気中に飛散して浮遊するか物に付着した後、他の者が、飛沫の吸い込みや、手で物を触ってから自身の口や目に触れるなどすることにより起こる場合が多いとされている。
【0003】
最近の研究(非特許文献1)によっても、唾液を通じて感染が広がっていくこと、無症状感染者の唾液から3週間以上にわたって新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出された例もあったこと、体外から持ち込まれたSARS-CoV-2ウイルスが口腔内の細胞に直接感染することなどが、明らかになった。
【0004】
そこで、口腔内のSARS-CoV-2ウイルスに対して、増殖の防止・抑制、望ましくは不活化を行う口腔ケア組成物が求められる。特には、抗ウイルス効果が持続するものであって、特別な装置や設備を必要とせず、外出中などでも容易に用いることができるものが望ましい。
【0005】
従来、抗菌・抗ウイルス性の化合物を配合したマウスウォッシュ、液体歯磨き、口腔うがい薬(洗浄剤)などが用いられている。ところが、SARS-CoV-2ウイルスなどのウイルスに対する不活化を行うためには、一般に、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、トリクロサン、過酸化化合物、亜鉛錯体などといった、非常に強力な薬剤が用いられている。
【0006】
より安全な口腔ケア組成物として、生薬や植物に由来する抗菌成分を用いることも試みられている(例えば、特許文献1)。しかし、一般に、天然由来成分では、新型コロナ(COVID-19)の感染を防止又は抑制する程度の抗ウイルス性や、ウイルスを不活化する程度の抗ウイルス性は、確かめられていない。
【0007】
一方、漂白剤や殺菌剤としての過酸化カルバミドやクロルヘキシジンを、非水溶性のポリマー溶液中に溶かし込むことで、マイクロカプセル化する試みも行われている(特許得文献2)。ここでは、「口腔内で水溶性活性剤の持続放出を制御されたやり方で可能にする」「好適には100μm未満の粒子サイズ」のカプセル形成を行うとしている。
【0008】
他方、本件出願人は、口腔カンジダ症などの真菌症に対処する口腔ケア組成物として、高純度のエピガロカテキンガレート(EGCG)をタブレット剤の形で用いることを提案した(特許文献3)。
【0009】
茶に含まれているポリフェノールには、抗酸化作用、抗ウイルス作用、抗菌・殺菌作用および細菌毒素阻害作用など多くの生理活性が知られている。茶の苦味や、渋味の主体はタンニンと呼ばれているが、その主成分はカテキン類である。緑茶に含まれているカテキンは8種類あるが、その主なものは(-)-エピカテキン(EC;茶葉全カテキン中の比率=10%)、(-)-エピガロカテキン(EGC;22%)、(-)-エピカテキンガレート(ECG;11%)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG;54%)であり、これらの中でEGCGが主成分である。また、これらカテキンの中でEGCGが最も抗酸化活性が高いと言われている。
【0010】
EGCG等のカテキン化合物は細菌に対する抗菌効果があることが報告されており、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等に対する抗菌効果も報告されている。また、緑茶ポリフェノールの主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)が細菌の酵素活性を抑制し細菌進入を減少させることができることも報告されている。さらには、抗真菌作用に関する報告もある。なお、数種の他の天然物による抗真菌活性に対しても報告されている。しかし、カテキン化合物単独では、抗真菌作用等が不充分であるとされており、他の抗菌成分と組み合わせて用いることが提案されている。(これらの文献名は、特許文献3中に記載)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-47157
【特許文献2】特表2017-522299(WO2016/001022; PCT/EP2015/064190)
【特許文献3】特開2009-269899
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nature Medicine VOL27, May 202, 892-903 (https://www.nature.com/articles/s41591-021-01296-8.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本件発明は、口腔内のSARS-CoV-2ウイルスに対して不活化が可能な口腔ケア組成物であって、外出中などでも容易に使用できるものを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
好ましい一実施形態において、1個の錠剤(タブレット)、カプセル剤または丸剤中に、純度が95重量%以上、好ましくは98重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG;EGCg)5~15mgと、緑茶粉末50~400mgと、糖質系甘味料(ショ糖や果糖を除く)300~1500mgとが含まれ、必要に応じて、非糖質系甘味料5~30mg、及び/または、食品用乳化剤5~30mgが含まれ、これら以外の成分の量が100mg以下である。
【0015】
糖質系甘味料は、マルチトース、トレハロース、キシリトール、オリゴ糖、及びパラチノースよりなる群から適宜に選択することができる。
【0016】
非糖質系甘味料は、アスパルテームまたはその誘導体、ステビア、グリチルリチン、スクラロース、サッカリン、及びアセスルファムKよりなる群から適宜に選択することができる。
【0017】
食品用乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸モノグリセリド)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びレシチンよりなる群から適宜に選択することができる。
【0018】
好ましい他の一実施形態において、1個のカプセル剤中に、純度が95重量%以上、好ましくは98重量%以上である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)70~150mgと、粉末状の賦形剤50~200mgとが含まれ、これら以外の成分の量が100mg以下である。
【0019】
粉末状の賦形剤は、高純度のEGCGが凝集または付着するのを防ぎ、カプセルが溶けて崩壊した際に、EGCGが速やかに唾液中などに分散されるようにするものである。このような賦形剤としては、特に、でんぷん(トウモロコシでんぷん、バレイショでんぷんなど)、ステアリン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素(沈降シリカ)などを用いることができるが、この他にも、乳糖水和物、結晶セルロース、マンニトールなどを適宜に用いることができる。ここでは、医薬の固形製剤を製造するのに用いられる、各種の粉末材料を用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
抗COVID-19効果が得られ、かつ、副作用や耐性菌誘発の問題を生じないため、特にCOVID-19感染の予防に最適である。さらに、加齢臭や食後の口臭防止の効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2ウイルス)に対する不活化効果試験の結果を示すグラフである。試験開始から5分間の間のウイルス量の減少を、TCID50/mL (TCID50:Median Tissue Culture Infectious Dose)で示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)は、緑茶由来のものを用いることができ、精製により、純度を少なくとも90重量%以上、通常は95重量%以上、好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上としたものを用いることができる。このような高純度の(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)は、茶葉から、水、エタノール、酢酸エチルなどの溶剤を用いて得られた茶抽出物あるいは市販の茶抽出物から、クロロフィルの除去、さらにカラムクロマトグラフ法による精製をすることによって得ることができる。
【0023】
好ましい実施形態においてポリフェノールを安定化させるため、L-アスコルビン酸および二亜硫酸カリウムが添加されていても良い。L-アスコルビン酸の濃度は0.0001~0.3重量%(1~300ppm)である。二亜硫酸カリウムの濃度は0.0001~0.3重量%(1~300ppm)である。
【0024】
好ましい実施形態の口腔ケア組成物は、トローチ、ジェルあるいはチューインガム等の形態とすることができ、それぞれの剤型の特徴に応じその他の成分を本発明の効果を損ねない範囲で使用し、通常の方法で調製することができる。
【0025】
好ましい実施形態において、口腔ケア組成物は、錠剤(タブレット)の形態であり、好ましくは穴あきトローチ(リング)の形態である。好ましい形態において、錠剤は、高純度の(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)と、緑茶粉末と、糖質系甘味料とを粉末状態で混合して錠剤成形することで得ることができる。この際、非糖質系甘味料、及び、食品用乳化剤の少なくとも一方を添加することができる。
【0026】
より具体的な実施形態において、一粒の錠剤(タブレット)中に、高純度の(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)を3mg以上、5mg以上または7mg以上で、17mg以下、15mg以下または3mg以下と、緑茶粉末30mg以上、50mg以上または100mg以上で、400mg以下、300mg以下または250mg以下と、糖質系甘味料(ショ糖や果糖を除く)200mg以上、300mg以上または500mg以上で、2000mg以下、1500mg以下または1000mg以下とが含まれ、必要に応じて、非糖質系甘味料を3mg以上、5mg以上または10mg以上で、50mg以下、30mg以下または20mg以下、及び/または、食品用乳化剤を3mg以上、5mg以上または10mg以上で、50mg以下、30mg以下または20mg以下が含まれ、これら以外の成分の量が200mg以下、100mg以下または50mg以下である。ここで、錠剤は、コーティング層(糖衣)を有しないのでありうるが、場合により有してもよい。
【0027】
具体的な一実施形態において、一粒の錠剤の重量が500mg以上または800mg以上であって、2000mg以下または1500mg以下であり、この中で、高純度のEGCGが0.5~1.5重量%、緑茶粉末が10~30重量%、糖質系甘味料(ショ糖や果糖を除く)が50~85重量%、非糖質系甘味料が0.5~3重量%、及び食品用乳化剤が0.5~3重量%含まれうる。
【0028】
本実施形態の口腔ケア製品は、錠剤の形態であることによって、例えば5~30分の間に、口の中に入れてなめると、唾液などの作用により、徐々に溶解・崩壊して、EGCGが放出されていく。このようにして、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に対する不活化ないし増殖抑制の効果が、比較的長時間にわたって持続する。なお、錠剤が完全に崩壊ないし溶解した後にも、口腔内の粘膜中に浸透しているため、飲食を行わないならば、しばらくの間、抗ウイルス効果が持続する。
【0029】
別の実施形態において、口腔ケア組成物は、カプセル剤の形態でありうる。ここでのカプセル剤は、顆粒を収納したハードカプセル、または、ジェル剤を封入したソフトカプセルでありうる。ハードカプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から形成されるのが安定性などから好ましいが、ゼラチンやプルランから形成することもできる。なお、ソフトカプセルも同様の材料から製造することができ、この中に封入するジェル剤の形態とするためには、例えば、植物油、及びこれに溶解する増粘ポリマー(例えばパルミチン酸デキストリン)を添加することができる。
【0030】
カプセル剤とする場合、一粒のカプセルの中に、錠剤の場合よりも多量に高純度EGCGを入れることができ、例えば40mg以上、60mg以上、または80mg以上であって、200mg以下、150mg以下または130mg以下とすることができる。また、これに添加して混合する賦形剤は、例えば、高純度EGCGの量の50重量%以上、70重量%以上または80重量%以上で、150重量%以下、120重量%以下または100重量%未満とすることができる。
【0031】
カプセル剤の形態であると、口に入れて舐めた場合、カプセルの崩壊時に一度に高純度EGCGが口の中に広がることによって、苦みを感じうるものの、比較的強力な、ウイルス不活化を実現することができる。したがって、例えば、発現や会話の少し前(例えば5分前)に、口の中に入れることで、唾液の飛沫を介したウイルスの感染を防ぐことができる。
【0032】
さらに別の実施形態において、口腔ケア組成物は、チューインガムの形態でありうる。チューインガムの形態とするためには、ガムベースとして、天然チクルを用いるか、または、酢酸ビニル樹脂、エステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウムなどから選択して用いる。そして、このガムベースに、上記錠剤の製造に用いたと同様の組成の混合粉末を、適量の香料とともに加えることができる。例えば、上記の一粒の錠剤の材料に対して、その3~10倍のガムベースを加え、さらに、例えば5~30mgの香料を加えることができる。また、必要に応じて、軟化剤(可塑剤)などの添加剤をさらに添加することができる。
【0033】
本発明の口腔ケア組成物には、用途に応じて抗酸化剤、安定化剤等の薬剤が適宜添加されても良い。そのような成分として、以下が挙げられる: リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸; 抗酸化剤(例えば、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ビタミンE またはグルタチオン); 低分子量ポリペプチド; タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン); 親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン); アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン); 単糖類、二糖類、及び多糖類の化合物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む); キレート剤(例えば、EDTA); 糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール); 塩形成対イオン(例えば、ナトリウム); ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、ポリオキシエチレン・ソルビタンエステル(Tween(商標))、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体(プルロニック(pluronic)(登録商標))またはポリエチレングリコール); 血栓溶解剤; 血管拡張剤; 組織賦活化剤; カテコラミン; PDEII阻害剤; カルシウム拮抗剤; β ブロッカー; ステロイド剤; 脂肪酸エステル; 抗炎症剤; 抗アレルギー剤; 抗ヒスタミン剤等。
【0034】
本発明の錠剤(タブレット)及びジェル剤の口腔ケア組成物は、高純度EGCG(少なくとも純度94%以上)としてのポリフェノール成分のみを、実質上の有効成分とするものである。但し、有効成分の効果を高めたり、その他の作用を行ったりするための各種成分を含有することができる。
【0035】
錠剤(タブレット)には、苦み抑制剤としてβシクロデキストリンを含むことができる。また甘味料および賦形剤としてアスパルテーム、マルチトール、トレハロース、蔗糖脂肪酸エステル、キシリトール、グルコースなどを含むことができる。好ましい具体例において、タブレットの大きさは直径10mmから20mmで、重さは1gから2gである。ジェルはヒアルロン酸やゼラチン、甘味料としてアスパルテーム、マルチトール、トレハロース、蔗糖脂肪酸エステル、キシリトール、グルコースなどを含むことができる。以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。
【実施例0036】
株式会社 食環境衛生研究所(群馬県前橋市荒口町)に依頼して、本願実施例の口腔ケア製品について、SARS-CoV-2ウイルスに対する不活化効果を確認した下記の報告書を得た。
「試験資材のウイルスに対する不活化効果試験」
-試験報告書-
試験番号:217031N
試験実施責任者:上谷 智英 試験担当者の氏名:遠藤 昇里
試験開始日:2021年7月6日 試験終了日:2021年7月20日
【0037】
この効果の確認に用いた口腔ケア製品(「試験資材」)は、下記(1)~(2)である。
(1) 錠剤(「試験資材1」)
重量:1000.00mg
(内訳)
・緑茶:200.00mg
・EGCG:10.00mg
・マルチトース、トレハロース、キシリトール、アスパルテーム、ショ糖脂肪酸エステル:790.00mg
※上記と同様の組成にて、EGCg10.00mg、20.00mgを添加した試作品を作製し、味の評価を行ったところ、20.00mgのタイプは苦味がかなりきつかったため、10.00mgを採用した。
【0038】
(2) ハードカプセル(「試験資材2」)
重量:236.00mg
(内訳)
・EGCG:100.00mg
・でんぷん、ステアリン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素:90.00mg
・ハードカプセル(HPMC)2号:46.00mg
【0039】
以下の1)~8)には、報告書の記載を転記する。
【0040】
1)目的:試験資材と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を反応させた時のウイルス不活化効果を確認するために実施した。
【0041】
2)試験資材
試験資材1(錠剤):粉状にした上で精製水に1:1.5の比率で懸濁した。
試験資材2(ハードカプセル):内容物を精製水に 1:1.5 の比率で懸濁した。
対照資材:滅菌リン酸緩衝液。
【0042】
3)供試微生物
SARS-CoV-02(新型コロナウイルス):人由来分離株。唾液よりvero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行った。
培養細胞:vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)。
【0043】
4)試験区の設定
区 処置 感作時間
対照区 リン酸緩衝液10mLにウイルス液1mL添加 試験開始後0.5分
試験区1 試験資材1 10mLにウイルス液1mL添加 試験開始後5分
試験区2 試験資材2 10mLにウイルス液1mL添加 試験開始後5分
【0044】
5)「試験方法」
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考 として実施した。
【0045】
6)試験手順
6-1)予備試験:試験実施前に、各資材を10倍段階希釈後、培養細胞に接種し、37℃、5%CO2下で5日間培養した。培養細胞が正常な形状を示さなかった場合、資材による細胞毒性有りと判定し、本試験では細胞毒性が確認された希釈倍率を試験判定から除外した。その結果、1000倍希釈液で細胞毒性が確認された。このため、本試験における検出限界は104.5TCID50/mLとした。
【0046】
6-2)本試験・試験液混合:試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各10mLをそれぞれ分取し、ウイルス液を添加した。ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
【0047】
6-3)本試験・細胞接種:試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0048】
6-4)評価:試験結果において、検査時点ごとに、対照区に対する試験区の減少率(%)を算出し、効果を確認した。なお、本試験において減少率は以下の式で算出した。
減少率(%)=[対照区-試験区]÷対照区×100
【0049】
7)結果
SARS-CoV-2に対する試験結果を表1及び図1に示した。
・対照区では試験開始から、開始後5分までの間にウイルス量の変化は見られなかった(106.7TCID50/mL)。
・試験区1では開始後5分で105.7TCID50/mL(90.0%減少)となった。
・試験区2では開始後5分で<104.5TCID50/mL(99.4%減少)となった。
【0050】
【0051】
8)むすび(「考察」)
今回、試験資材のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に対する不活化効果試験を実施した。その結果、試験資材1(錠剤)において、5分の反応で90.0%の不活化効果が、試験資材2(ハードカプセル)において5分で99.4%の不活化効果があることが判明した。
【0052】
以上の報告書の記載から明らかなように、本願実施例の口腔ケア製品を口に入れて舐めることで、口腔内のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)を実質的に不活化することが可能である。遠からず、SARS-CoV-2に対するワクチン接種が普及し、さらに抗体治療薬が普及することが予想されるが、その際にも、唾液を介した感染を防止または抑制することの意味は大きいと考えられる。例えば、マスクを外した状態などでの打合せや談話、合唱や吹奏などを、ある程度、新型コロナ(COVID-19)の流行前と同様に行うのを可能にすると思われる。
図1