(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041412
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】塗工装置及び塗工方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20230316BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230316BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230316BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230316BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230316BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20230316BHJP
F16B 33/06 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05D7/00 K
B05D7/00 N
B05D3/00 C
B05D1/26 Z
B05C11/10
B05C13/02
F16B33/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148777
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】593086481
【氏名又は名称】株式会社MCシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】郡田 裕生
(72)【発明者】
【氏名】岩田 時歩
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC84
4D075AC88
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4D075DB04
4D075DB06
4D075DB07
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4D075EB51
4F041AA04
4F041AA17
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA21
4F042AA15
4F042AB00
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4F042DB01
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4F042DF07
4F042DF28
4F042DF29
4F042DF32
4F042EB12
4F042EB18
4F042EB21
4F042EB29
(57)【要約】
【課題】ネジ部に処理液を選択的且つ容易に塗工することができる塗工装置及び塗工方法を提供する。
【解決手段】塗工装置10は、ネジ部23を有するワーク20のネジ部23に処理液30を塗工する塗工装置であって、ワーク20のネジ部23上に処理液30を供給する供給機構11と、ワーク20を保持してネジ部23の軸線Axを中心に回転させるホルダー12と、を備えており、塗工方法は、ワーク20のネジ部23上に処理液30を供給する供給工程と、ワーク20をネジ部23の軸線Axを中心に回転させる回転工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ部を有するワークの前記ネジ部に処理液を塗工する塗工装置であって、
前記ワークの前記ネジ部上に前記処理液を供給する供給機構と、
前記ワークを保持して前記ネジ部の軸線を中心に回転させるホルダーと、を備えることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記供給機構は、前記処理液を液滴状にして前記ネジ部上に滴下する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記ネジ部に摺接するガイドを更に備える請求項1又は2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記供給機構は、前記処理液の前記ネジ部上における供給位置を変更する位置変更手段を備える請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記ワークは、前記ネジ部の隣接位置に、前記処理液の塗工が抑制又は禁止されている非塗工部を有している請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の塗工装置。
【請求項6】
ネジ部を有するワークの前記ネジ部に処理液を塗工する塗工方法であって、
前記ワークの前記ネジ部上に前記処理液を供給する供給工程と、
前記ワークを前記ネジ部の軸線を中心に回転させる回転工程と、を備えることを特徴とする塗工方法。
【請求項7】
前記処理液の粘度が1000mPa・s未満である請求項6に記載の塗工方法。
【請求項8】
前記ワークの回転速度1min-1(1rpm)以上、700min-1(700rpm)以下である請求項6又は7に記載の塗工方法。
【請求項9】
前記供給工程において、前記処理液が前記ネジ部上に供給された位置を塗工開始位置として、
前記回転工程において、前記ワークを前記ネジ部の螺入方向へ回転させて、前記ネジ部上の前記塗工開始位置から前記ネジ部の基端部の範囲を前記処理液で塗工する、又は、前記ワークを前記ネジ部の螺退方向へ回転させて、前記ネジ部上の前記塗工開始位置から前記ネジ部の先端部の範囲を前記処理液で塗工する請求項6乃至8のうち何れか1項に記載の塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ部を有するワークのネジ部に処理液を塗工する塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ部を有するワークとして、例えばボルトやビスは、ネジ部が螺刻された軸と、軸の基端に設けられた頭部とを有しており、頭部には締結のための窪み(リセス)が、一字状、十字状、六角状、星状等の形状で凹設されている。こうしたボルトやビスのネジ部は、摩擦係数の安定化、緩み止め、防錆、絶縁、密着性の向上、表面保護などのため、処理液を塗工する表面処理が施される場合がある。この表面処理について、例えば、特許文献1に開示の方法が提案されている。
特許文献1に開示の方法は、ボルトやビスを収容するバスケット状の容器を処理液中に浸漬し、その容器を遠心機に取付け、ボルトやビスに遠心力を印加して余分な処理液を振り落した後、容器を遠心機の回転軸と直交する面内において実質的に180°回動させた状態で再び遠心力を印加し、リセス中に残留する処理液を振り落す方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の目的は、処理液がリセス中に残留してリセスを埋めてしまうことを防止することである。つまり、このリセスのように、ネジ部を有するワークの多くは、精度等の観点から、処理液の塗工が抑制又は禁止されている部位(以下、「非塗工部」ともいう)を有し、こうした非塗工部への対処が表面処理時に問題となる。特に、ワークの中には、ネジ部の近縁位置や隣接位置に非塗工部が配されたものがあり、このようなワークの場合、非塗工部に処理液が付着しないように、非塗工部を予めマスキングする、手作業でネジ部に処理液を選択的に塗工する等の煩雑な作業が必要となり、表面処理が非常に困難なものとなる。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ネジ部に処理液を選択的且つ容易に塗工することができる塗工装置及び塗工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決する手段として、本発明は以下の通りである。
[1]本発明の塗工装置は、ネジ部を有するワークの前記ネジ部に処理液を塗工する塗工装置であって、
前記ワークの前記ネジ部上に前記処理液を供給する供給機構と、
前記ワークを保持して前記ネジ部の軸線を中心に回転させるホルダーと、を備えることを要旨とする。
[2]本発明の塗工装置では、前記供給機構は、前記処理液を液滴状にして前記ネジ部上に滴下することができる。
[3]本発明の塗工装置では、前記ネジ部に摺接するガイドを更に備えることができる。
[4]本発明の塗工装置では、前記供給機構は、前記処理液の前記ネジ部上における供給位置を変更する位置変更手段を備えることができる。
[5]本発明の塗工装置では、前記ワークは、前記ネジ部の隣接位置に、前記処理液の塗工が抑制又は禁止されている非塗工部を有しているものとすることができる。
[6]本発明の塗工方法は、ネジ部を有するワークの前記ネジ部に処理液を塗工する塗工方法であって、
前記ワークの前記ネジ部上に前記処理液を供給する供給工程と、
前記ワークを前記ネジ部の軸線を中心に回転させる回転工程と、を備えることを要旨とする。
[7]本発明の塗工方法では、前記処理液の粘度が1000mPa・s未満であるものとすることができる。
[8]本発明の塗工方法では、前記ワークの回転速度が1min-1(1rpm)以上、700min-1(700rpm)以下であるものとすることができる。
[9]本発明の塗工方法では、前記供給工程において、前記処理液が前記ネジ部上に供給された位置を塗工開始位置として、
前記回転工程において、前記ワークを前記ネジ部の螺入方向へ回転させて、前記ネジ部上の前記塗工開始位置から前記ネジ部の基端部の範囲を前記処理液で塗工する、又は、前記ワークを前記ネジ部の螺退方向へ回転させて、前記ネジ部上の前記塗工開始位置から前記ネジ部の先端部の範囲を前記処理液で塗工することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗工装置及び塗工方法によれば、ネジ部に処理液を選択的且つ容易に塗工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】本発明の塗工装置の一例を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の供給工程の一例を説明する正面図である。
【
図3】本発明の供給工程の他例を説明する正面図である。
【
図4】本発明の回転工程の一例を説明する正面図である。
【
図5】本発明の回転工程の他例を説明する正面図である。
【
図6】本発明のネジ部上における処理液の動きを説明する(a)は断面による模式図、(b)は平面による模式図である。
【
図7】(a)、(b)は、本発明のワークの変更例を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
[1]塗工装置
本発明の塗工装置(10)は、ネジ部(23)を有するワーク(20)の前記ネジ部(23)に処理液(30)を塗工する塗工装置であって、
前記ワーク(20)の前記ネジ部(23)上に前記処理液(30)を供給する供給機構(11)と、
前記ワーク(20)を保持して前記ネジ部(23)の軸線(Ax)を中心に回転させるホルダー(12)と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
図1に例示される塗工装置10は、ネジ部23を有するワーク20を塗工対象として、ワーク20のネジ部23に処理液を塗工するように構成されている。
塗工装置10は、供給機構11と、ホルダー12と、を備えている。
供給機構11は、処理液をワーク20のネジ部23上に供給するためのものである。
ホルダー12は、ワーク20を保持するためのものであり、ワーク20が有するネジ部23の軸線Axを中心として、ワーク20を回転させるように構成されている。
また、塗工装置10は、ネジ部23に摺接するガイド13を更に備えることができる。
【0012】
なお、以下の説明で方向をいう場合、
図1中に矢印で示したx、y、zを基準として、x方向は上方向、y方向は先端方向、z方向は正面方向とする。
また、x方向と逆方向は下方向、y方向と逆方向は基端方向、z方向と逆方向は背面方向とする。
【0013】
(1)供給機構
供給機構11は、ワーク20のネジ部23に処理液を塗工するため、そのネジ部23に処理液を供給するノズル111を有することができる(
図1等参照)。ノズル111は、パイプ状に形成されており、ワーク20のネジ部23の軸線Axと直交する方向、具体的には上下方向に伸びるように配設されている。
ノズル111は、
図1中で下端側(ノズル先端側)の開口が処理液の吐出口(図示略)とされている。
ノズル111の下端部は、下方向へ向かうに従って縮径された形状、つまり吐出口へ近づくに従って径が絞られた形状に形成されている。
【0014】
供給機構11は、特に図示しないが、ノズル111の他に、処理液が貯留されたタンクと、このタンクとノズル111とを繋ぐ供給系とを有している。
ノズル111は、ワーク20の上方位置で、下端の吐出口がワーク20と対向するように、吐出口を下向きにして配置されている。
【0015】
供給機構11において、ノズル111には、供給系を介してタンクから処理液が送られ、その処理液は、ノズル111の下端の吐出口からワーク20に向かって吐出される。
ノズル111の下端部は、吐出口へ近づくに従って径が絞られた形状に形成されているため、このノズル111の吐出口から吐出される処理液は、液滴状となってワーク20に滴下される(
図2、
図4参照)。
【0016】
供給機構11は、処理液のネジ部23上における供給位置を変更する位置変更手段を備えることができる。この位置変更手段は、ネジ部23上における処理液の供給位置を変更できるのであれば、その構成等は特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
即ち、位置変更手段は、塗工装置10のフレーム10Aに取り付けられたレール112を備えている。このレール112は、ワーク20の上方位置でネジ部23の軸線Axと平行に伸びるように配設されている。
レール112にはノズル111が、レール112の伸びる方向に移動可能に取り付けられて、支持されている。
【0017】
位置変更手段は、レール112と更に、ノズル111を移動させる移動機構(図示略)を備えている。
移動機構は、サーボモータやステッピングモータ等の駆動源、その駆動源による駆動力をノズル111に伝達するベルトやワイヤー等の伝達手段、駆動源を制御するアンプ、シーケンサ等の制御装置などを備えている。
移動機構は、レール112に沿ってノズル111を移動させるとともに、そのノズル111の移動を所望位置で停止させることができる。
【0018】
上述の位置変更手段は、ネジ部23に処理液を供給するノズル111を、移動機構によってレール112に沿うように移動させることができる。
つまり、位置変更手段は、ノズル111を、ネジ部23の軸線Axに沿って移動させることにより、処理液のネジ部23上における供給位置を変更することができる。
【0019】
(2)ホルダー
ホルダー12は、ワーク20を保持し、かつネジ部23の軸線Axを中心としてワーク20を回転させることができるのであれば、その構成等は特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
ホルダー12は、本体121と、本体121に設けられたクランプ122とを備えている。
【0020】
本体121は、ワーク20のネジ部23の軸線Ax方向から見て円形をなす板状に形成されている。この本体121は、塗工装置10のフレーム10Aに取り付けられている。
本体121には、モータ等の駆動源(図示略)が接続されている。この駆動源によって、本体121は、ワーク20のネジ部23の軸線Axを中心として、回転駆動することができる。
【0021】
クランプ122は、本体121の一面からワーク20に向かって爪状に突出するように、複数(
図1中で3つ)が設けられている。
これらクランプ122は、それらの間でワーク20の端部(頭部22)を締め付けることにより、ワーク20を本体121に固定している。
なお、複数のクランプ122は、本体121の回転中心を基準として、等間隔に配置されている。このため、複数のクランプ122でワーク20の端部(頭部22)を囲うようにしてワーク20を本体121に固定することにより、ワーク20のネジ部23の軸線Axと、ホルダー12(本体121)の回転中心とを一致させることができる。
【0022】
ホルダー12は、本体121の回転駆動によるワーク20の回転方向を、ネジ部23の螺入方向と、ネジ部23の螺退方向とに切り換えることができる。
ネジ部23の螺入方向とは、ネジ部23によるねじが締まる方向であり、ネジ部23の螺退方向とは、ネジ部23によるねじが緩む方向である。
【0023】
具体的に、ネジ部23が右ねじであれば、螺入方向は、そのネジ部23を基端側から先端側に向かって見た状態で時計方向(右回し方向)となり、螺退方向は、そのネジ部23を基端側から先端側に向かって見た状態で反時計方向(左回し方向)となる。
また、ネジ部23が左ねじであれば、螺入方向は、そのネジ部23を基端側から先端側に向かって見た状態で反時計方向(左回し方向)となり、螺退方向は、そのネジ部23を基端側から先端側に向かって見た状態で時計方向(右回し方向)となる。
【0024】
(3)ガイド
ガイド13は、ワーク20のネジ部23に摺接することができるのであれば、その構成等は特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
ガイド13は、薄板状に形成されており、塗工装置10のフレーム10Aに取り付けられている。このガイド13は、ワーク20の正面側に配置されて、その表面をワーク20のネジ部23に摺接させている。
【0025】
ガイド13は、塗工装置10によってワーク20のネジ部23に処理液を塗工する際、ネジ部23に摺接させることで、該ネジ部23に供給された処理液を、ネジ部23の表面とガイド13の一面との間で押し広げることができる。
つまり、ガイド13は、ネジ部23の表面上に処理液を塗り拡げることができ、塗工に係る作業時間の短縮化を図ることができる。
【0026】
ガイド13の材質は、特に限定されない。その材質の具体例としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
ガイド13のサイズは、ネジ部23の大きさに応じたサイズであれば、特に限定されない。具体的に、ガイド13のサイズは、軸線Ax方向におけるネジ部23の長さに相当するサイズとすることができる。
【0027】
(4)ワーク
本発明の塗工装置に供されるワークについて説明する。
ワーク20は、ネジ部23を有するものであれば、用途、形状、サイズ等について特に限定されない。
ネジ部23は、ワーク20の外周に形成された外ネジ、又はワーク20の内周に形成された内ネジの何れでもよいが、好ましくは外ネジである。
ワーク20の具体例としては、ボルトやビス等のような2以上の被締結部材を締結するための締結部材、ユニオンボルトやシリンダロッドやバルブステムやハンドルステム等のようなワーク自身がネジ部を介して他の部材と連結や接続や接合等される被接合部材、などが挙げられる。
【0028】
ネジ部23は、例えば、締結部材のようにワーク20の軸部21の略全体にわたって設けることができ、あるいは被接合部材のようにワーク20の軸部21の一部にのみ設けることもできる。
ネジ部23は、右ねじ又は左ねじの何れで形成されてもよく、特に限定されない。
なお、右ねじとは、右回転(時計回り)の螺旋を描きながら先端方向に伸びるつる巻線に沿ってねじ溝及びねじ山が形成されたものである。一方、左ねじとは、左回転(反時計回り)の螺旋を描きながら先端方向に伸びるつる巻線に沿ってねじ溝及びねじ山が形成されたものである。
【0029】
本発明の塗工装置10は、処理液をワーク20のネジ部23にのみ選択的に塗工することができる。このため、塗工装置10に供されるワーク20としては、被接合部材のようなワーク20の軸部の一部にのみネジ部23が設けられているものが好ましい。
ネジ部23を有するワーク20は、精度の観点から、処理液の塗工が抑制又は禁止されている部位として非塗工部24を有している場合がある。そして、非塗工部24は、処理液が塗工されるネジ部23の近縁位置や隣接位置に配されている場合がある。
塗工装置10は、上述のように、処理液をネジ部23にのみ選択的に塗工することができる。このため、塗工装置10に供されるワーク20としては、非塗工部24がネジ部23の近縁位置や隣接位置に配されているものが有用であり、特に非塗工部24がネジ部23の隣接位置に配されているものは、非塗工部24への処理液の塗工を確実に防止可能な観点で、有用である。
【0030】
図1に例示されたワーク20は、丸棒状の軸部21と、軸部21の基端に設けられた六角形状の頭部22とを有している。
ネジ部23は、ワーク20の軸部21の中間部に設けられている。具体的に、ネジ部23は、軸部21の中間部の外周に外ネジとして形成されている。このネジ部23は、右ねじであり、ねじ山231とねじ溝232とが、右回転(時計回り)の螺旋を描きながら先端方向に伸びるつる巻線に沿って形成されている。
ワーク20は、軸部21の基端部及び先端部の外周に、処理液の塗工が抑制又は禁止された非塗工部24を有している。これら非塗工部24は、ネジ部23の隣接位置に配されている。
【0031】
ワーク20の材質は、特に限定されない。この材質の具体例として、鉄、鋼、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタニウム、ステンレス鋼、黄銅(真鍮)、ジュラルミン、インコネル、合成樹脂(プラスチック、エンジニアリングプラスチック)等が挙げられる。
ワーク20のネジ部23に塗工される処理液は、表面処理の目的に応じたものが使用され、特に限定されない。処理液の具体例として、耐食剤、耐摩耗剤、耐摺動剤、耐異音剤、防錆剤、耐熱塗料、摩擦係数安定剤、摩擦低減剤、絶縁剤等が挙げられる。
【0032】
ネジ部23のサイズは、特に限定されない。ネジ部23のサイズとして、太さ(呼び径;ねじ山231における外径)は、特に限定されず、例えば、3mm~80mm、好ましくは5mm~50mm、より好ましくは8mm~20mmとすることができる。
また、ネジ部23のサイズとして、長さ(軸部21上におけるネジ部23の基端から先端までの長さ)は、特に限定されず、例えば、1mm~500mm、好ましくは5mm~300mm、より好ましくは8mm~100mmとすることができる。
また、ネジ部23のサイズとして、ピッチ(ねじ山231同士又はねじ溝232同士の間隔)は、0.1mm~5mm、好ましくは0.2mm~3mm、より好ましくは0.3mm~1mmとすることができる。
【0033】
ワーク20は、
図1に例示されたネジ部23を1つのみ有する構成に限らず、例えば、
図7(a),(b)に示したワーク20のように、ネジ部を2つ以上有する構成とすることができる。
図7(a)に例示されたワーク20は、ネジ部として、軸部21の基端部に第1ネジ部23Aが設けられており、軸部21の先端部に第2ネジ部23Bが設けられている。第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bは共に、右ねじで形成されている。そして、第1ネジ部23Aと第2ネジ部23Bとの間は、非塗工部24とされている。
図7(b)に例示されたワーク20は、ネジ部として、軸部21の基端部に第1ネジ部23Aが設けられており、軸部21の先端部に第2ネジ部23Bが設けられている。第1ネジ部23Aは、右ねじで形成されている。第2ネジ部23Bは、左ねじで形成されており、第1ネジ部23Aに比べて太さ(呼び径)が小径となるように形成されている。そして、第1ネジ部23Aと第2ネジ部23Bとの間は、非塗工部24とされている。
【0034】
[2]塗工方法
本発明の塗工方法は、ネジ部(23)を有するワーク(20)の前記ネジ部(23)に処理液(30)を塗工する塗工方法であって、
前記ワーク(20)の前記ネジ部(23)上に前記処理液(30)を供給する供給工程と、
前記ワーク(20)を前記ネジ部(23)の軸線(Ax)を中心に回転させる回転工程と、を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明の塗工方法には、
図1に例示される塗工装置10を使用することができる。
即ち、供給工程は、塗工装置10の供給機構11を用いて実施することができ、回転工程は、塗工装置10のホルダー12を用いて実施することができる。
【0036】
(1)供給工程
供給工程は、ワーク20のネジ部23上に処理液30を供給する工程である。
具体的に、
図2、
図3に示すように、供給工程は、塗工装置10の供給機構11を使用し、ノズル111からワーク20のネジ部23へ処理液30を滴下することによって実施することができる。
この供給工程において、処理液30は、ネジ部23上に供給(滴下)された位置を塗工開始位置S1として、ネジ部23に塗工される。
【0037】
塗工開始位置S1は、特に限定されず、ネジ部23の基端側又は先端側の端部とすることができ、又はネジ部23の中間部で中央、あるいは基端寄り又は先端寄りの位置とすることができる。
通常、ネジ部23の全体に処理液30を塗工する場合には、ネジ部23の基端側又は先端側の端部が塗工開始位置S1とされる。また、ネジ部23の一部にのみ処理液30を塗工する場合には、ネジ部23の中間部が塗工開始位置S1とされる。
【0038】
塗工開始位置S1をネジ部23の端部とする場合、基端側の端部又は先端側の端部の選択は、回転工程におけるワーク20の回転方向に応じて為される。
図2に例示されるように、ネジ部23が右ねじとして形成され、ワーク20が時計回り(右回転)に回転される場合、ワーク20をネジ部23の螺入方向へ回転させることとなり、この場合、塗工開始位置S1は、ネジ部23の先端側の端部とされる。
また、
図3に例示されるように、ネジ部23が右ねじとして形成され、ワーク20が反時計回り(左回転)に回転される場合、ワーク20をネジ部23の螺退方向へ回転させることとなり、この場合、塗工開始位置S1は、ネジ部23の基端側の端部とされる。
【0039】
即ち、ネジ部23上に供給された処理液30は、回転工程において、ネジ部23の螺入方向(ネジ部23によるねじを締める方向)へワーク20を回転させる場合、基端側へ推進されるため、塗工開始位置S1は、ネジ部23の先端側の端部とする(
図2参照)。
また、ネジ部23上に供給された処理液30は、回転工程において、ネジ部23の螺退方向(ネジ部23によるねじを緩める方向)へワーク20を回転させる場合、先端側へ推進されるため、塗工開始位置S1は、ネジ部23の基端側の端部とする(
図3参照)。
なお、ネジ部23が左ねじとして形成されている場合、ネジ部23の螺入方向は、ワーク20を反時計回り(左回転)に回転させる方向であり、ネジ部23の螺退方向は、ワーク20を時計回り(右回転)に回転させる方向となる。
【0040】
供給工程において、ネジ部23上への処理液30の供給量(滴下量)は、特に限定されない。この供給量(滴下量)は、塗工装置10の供給機構11において、供給系を介したタンクからノズル111への処理液の送り量によって調整することができる。
具体的に、処理液30の供給量(滴下量)は、ネジ部23のサイズ等に応じて適宜調整され、例えば、0.01g~0.5gとすることができる。供給量(滴下量)は、より好ましくは0.03g~0.3g、さらに好ましくは0.05g~0.2gとすることができる。
【0041】
(2)回転工程
回転工程は、ワーク20をネジ部23の軸線Axを中心に回転させる工程である。
具体的に、回転工程は、
図4,
図5に示すように、塗工装置10のホルダー12を使用し、このホルダー12にワーク20を保持させて、該ホルダー12を回転させることによって実施することができる。
即ち、塗工装置10のホルダー12は、上述のように本体121が駆動源(図示略)と接続されており、回転自在に構成されている。このため、クランプ122にワーク20の頭部22を固定し、本体121を回転させる作業のみで、ホルダー12に保持されたワーク20を回転させる回転工程を実施することができる。
【0042】
回転工程の開始タイミングは、特に限定されず、回転工程は、供給工程の開始前、供給工程の実施中、又は供給工程の終了後の何れのタイミングでも開始することができる。
即ち、上述の供給工程で処理液30をネジ部23上に供給するとき、具体的にはノズル111からネジ部23上に処理液30を滴下するとき、ホルダー12は、回転した状態とすることもでき、又は停止した状態とすることもできる。
通常、回転工程の開始タイミングは、供給工程の開始前とされ、ホルダー12は回転した状態にして、ノズル111からネジ部23上に処理液30を滴下することにより、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0043】
具体的に、回転工程は、以下の(A)又は(B)の作業で実施することができる。
(A)
図4に例示するように、ワーク20をネジ部23の螺入方向へ回転させて、ネジ部23上の塗工開始位置S1からネジ部23の基端部の範囲を処理液30で塗工する(
図4参照)。
(B)
図5に例示するように、ワーク20をネジ部23の螺退方向へ回転させて、ネジ部23上の塗工開始位置S1からネジ部23の先端部の範囲を処理液30で塗工する(
図5参照)。
即ち、回転工程は、上述の供給工程の後、上記(A)のようにネジ部23の螺入方向へワーク20を回転させる作業、又は上記(B)のようにネジ部23の螺退方向へワーク20を回転させる作業を行うことにより、実施することができる。
【0044】
ネジ部23の螺入方向へワーク20を回転させる場合(上記(A))、処理液30が滴下される塗工開始位置S1は、ネジ部23の先端部とすることができる。
回転工程において、処理液30は、塗工開始位置S1からネジ部23の基端方向(螺退方向)へ向かって、ネジ部23の表面全体に伸び広がる。
そして、処理液30の伸び広がりは、ネジ部23の基端部、つまり非塗工部24の手前で停止するため、処理液30は、ネジ部23にのみ選択的に塗工される。
【0045】
ネジ部23の螺退方向へワーク20を回転させる場合(上記(B))、処理液30が滴下される塗工開始位置S1は、ネジ部23の基端部とすることができる。
回転工程において、処理液30は、塗工開始位置S1からネジ部23の先端方向(螺入方向)へ向かって、ネジ部23の表面全体に伸び広がる。
そして、処理液30の伸び広がりは、ネジ部23の先端部、つまり非塗工部24の手前で停止するため、処理液30は、ネジ部23にのみ選択的に塗工される。
【0046】
上述のように、ネジ部23の螺入方向又は螺退方向へワーク20を回転させることで、処理液30がネジ部23にのみ選択的に伸び広がる原理、理由等について、詳細は不明であるが、以下のように考察することができる。
なお、以下の考察は、ネジ部23の螺入方向へワーク20を回転させる場合(上記(A))を例に挙げ、
図6(a),(b)を用いて説明するものとする。
図6(a)は、ネジ部23を先端側から見た場合の、軸線Axと直交する面における該ネジ部23の断面による模式図である。
図6(a)中で上下方向は、
図1等における上下方向と対応する。
図6(b)は、ネジ部23を上方から見た平面図による模式図である。
図6(b)中で上側は、ネジ部23の基端側となり、下側はネジ部23の先端側となる。
【0047】
ネジ部23に滴下された処理液30は、表面張力や粘性等が作用することにより、該ネジ部23に粘着力を働かせ、その場(滴下された位置)に留まろうとする。このため、処理液30は、回転するネジ部23(ワーク20)から見れば、あたかも当該ワーク20の回転方向と逆方向へ移動するように動く(
図6(a)参照)。
また、ネジ部23に滴下された処理液30は、主にネジ部23のねじ溝232内に入り込む。このため、ねじ溝232内に入り込んだ処理液30は、当該ねじ溝232を挟んで対向する一対のねじ山231が、所謂ガイドレールとして機能することで、ねじ溝232に沿って移動するように、ネジ部23に対する動きを案内される(
図6(b)参照)。
【0048】
上述のように、処理液30は、ネジ部23(ワーク20)から見て、ワーク20の回転方向と逆方向へ移動し、さらにその動きは、ねじ溝232に沿って移動するものとなる。
ネジ部23は、右ねじとして形成されており、ねじ山231とねじ溝232は、螺旋を描きながら先端方向に伸びるつる巻線に沿って形成されている。
つまり、処理液30は、ネジ部23(ワーク20)の螺入方向(ねじを締める方向であり、時計回り方向)への回転に伴い、ねじ山231をガイドレールとし、ねじ溝232に沿うようにして、当該ネジ部23(ワーク20)の回転方向と逆方向であるネジ部23の螺退方向(基端方向)へ推進される。
【0049】
処理液30は、ネジ部23の螺退方向(基端方向)へ推進されながら、その推進時に若干量をねじ溝232及びねじ山231に付着させて残していくことで、ネジ部23の表面全体に伸び広がる。
処理液30は、ネジ部23の基端に達すると、移動のためのガイドレールであるねじ山231が途切れて無くなることから、推進を停止され、表面張力や粘性等が作用することにより、その場に留まる。このため、処理液30の伸び広がりは、ネジ部23の端部、つまり非塗工部24の手前で停止し、処理液30はネジ部23にのみ選択的に塗工される。
即ち、ネジ部23に滴下された処理液30は、右ねじ又は左ねじの何れで形成されたものであっても、ネジ部23を螺入方向(ねじを締める方向)に回転させると、その逆方向である螺退方向(基端方向)へ推進され、ネジ部23を螺退方向(ねじを緩める方向)に回転させると、その逆方向である螺入方向(先端方向)へ推進されると考察される。
【0050】
回転工程において、ワーク20の回転速度は、特に限定されない。
通常、ワーク20の回転速度は、ネジ部23上に供給された処理液30が振り切られて飛散しない程度とすることができる。
具体的に、回転速度は、好ましくは、1min-1(1rpm)以上、700min-1(700rpm)以下とすることができる。また、回転速度は、より好ましくは100min-1(100rpm)以上、600min-1(600rpm)以下、更に好ましくは200min-1(200rpm)以上、400min-1(400rpm)以下とすることができる。
【0051】
処理液の粘度は、特に限定されない。通常、処理液の粘度は、ネジ部23に塗布可能な粘度とすることができ、より詳しくは、ネジ部23表面に粘着して留まることができる粘度であって、ネジ部23の表面全体に伸び広がることができる粘度とすることができる。
具体的に、処理液の粘度は、1000mPa・s未満とすることができる。また、粘度は、好ましくは2mPa・s以上800mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以上600mPa・s以下とすることができる。
【0052】
粘度が上記の範囲を満たす処理液として、例えば防錆剤(商品名「ジオメット(登録商標)」、MCシステムズ社製、粘度;515.5mPa・s(30rpm)、412mPa・s(60rpm))、摩擦係数安定剤(商品名「トルカー(登録商標)」、MCシステムズ社製、粘度;5.6mPa・s(30rpm)、7.3mPa・s(60rpm))、コーティング剤(商品名「メタス(登録商標)」、ユケン工業社製、粘度;484mPa・s(30rpm)、275mPa・s(60rpm))等が挙げられる。
なお、上述の粘度は、JIS Z8803:2011に準拠の方法で回転粘度計(TVB10形粘度計、東機産業社製)を用い、室温にて回転速度を30rpm、60rpmとして測定された値とする。
【0053】
(3)その他の工程
本方法では、上述の供給工程と回転工程以外の他の工程を備えることができる。
他の工程としては、例えば、供給工程の前工程として、ワーク20を洗浄して表面に付着した異物等を除去する洗浄工程、回転工程の後工程として、ネジ部23に塗工された処理液を乾燥、加熱乾燥、焼付等して処理液による皮膜を形成する皮膜形成工程、などを挙げることができる。
【0054】
(4)まとめ
本発明の塗工方法についてまとめると、回転工程において、ネジ部の形状と、ワークの回転方向と、処理液が伸び広がる方向(以下、「塗工方向」とする)とは、以下に示す表1の(1)~(4)の組み合わせで用いられる。
【0055】
【0056】
(1)~(4)のうち、(1)と(3)は、処理液の塗工方向が基端方向(螺退方向)であるから、供給工程において、塗工開始位置S1は、ネジ部の先端寄りとすることができる。
一方、(2)と(4)は、処理液の塗工方向が先端方向(螺入方向)であるから、供給工程において、塗工開始位置S1は、ネジ部の基端寄りとすることができる。
【0057】
ワーク20がネジ部を2つ以上有する構成の場合の塗工方法について、具体例を挙げて説明する。
図7(a)に例示されるワーク20について、第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bは、共に形状が右ねじであるから、塗工方法の回転工程において、ワークの回転方向を同じにする場合、表1の(1)又は(2)を選択して用いることができる。
第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bについて、回転工程が(1)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(a)中に示したS1(1)、つまり第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bの各先端部とすることができる。
また、第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bについて、回転工程が(2)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(a)中に示したS1(2)、つまり第1ネジ部23A及び第2ネジ部23Bの各基端部とすることができる。
【0058】
図7(b)に示されるワーク20について、第1ネジ部23Aは形状が右ねじであり、第2ネジ部23Bは形状が左ねじであるから、塗工方法の回転工程において、ワークの回転方向を同じにする場合、表1の(1)と(4)、又は(2)と(3)を用いることができる。
第1ネジ部23Aについて、回転工程が(1)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(b)中に示したS1(1)、つまり第1ネジ部23Aの先端部とすることができる。一方、第2ネジ部23Bについて、回転工程が(4)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(b)中に示したS1(4)、つまり第2ネジ部23Bの基端部とすることができる。
【0059】
また、第1ネジ部23Aについて、回転工程が(2)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(b)中に示したS1(2)、つまり第1ネジ部23Aの基端部とすることができる。一方、第2ネジ部23Bについて、回転工程が(3)の場合、塗工方法の供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)は、
図7(b)中に示したS1(3)、つまり第2ネジ部23Bの先端部とすることができる。
なお、回転工程において、ワークの回転方向は、作業の途中で任意に切り換えることもできる。即ち、表1の(1)と(2)、又は(3)と(4)は、回転工程中にワークの回転方向を任意に切り換えて実行することもできる。このため、例えば、供給工程において、塗工開始位置S1(ノズル111が配される位置)をネジ部23の中央とし、回転工程において、まず表1の(1)(又は(3))を用いてネジ部23の中央から基端までの範囲に処理液を塗工し、次いでワーク20の回転方向を切り換え、表1の(2)(又は(4))を用いてネジ部23の中央から先端までの範囲に処理液を塗工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の塗工装置及び塗工方法は、ネジ部を有するワークに処理液を塗工する表面処理の用途において広く用いられる。特に、ネジ部を有しつつも、該ネジ部の隣接位置又は近隣位置に、処理液の塗工が抑制又は禁止された非塗工部を有しているワークについて、ネジ部のみに選択的かつ容易に処理液を塗工可能な特性を有し、生産性に優れた表面処理を行うために好適に利用される。
【符号の説明】
【0061】
10;塗工装置、10A;フレーム、
11;供給機構、111;ノズル、112;レール、
12;ホルダー、121;本体、122;クランプ、
13;ガイド、
20;ワーク、21;軸部、22;頭部、
23;ネジ部、231;ねじ山、232;ねじ溝、
24;非塗工部、
Ax;軸線、
30;処理液、
S1;塗工開始位置。