(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041437
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 11/02 20060101AFI20230316BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
F26B11/02
C10L5/44
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148813
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】501146502
【氏名又は名称】株式会社シーエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】益川 大介
(72)【発明者】
【氏名】古谷 篤史
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩人
(72)【発明者】
【氏名】大西 宏和
【テーマコード(参考)】
3L113
4H015
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB03
3L113AC51
3L113AC58
3L113AC61
3L113AC68
3L113BA04
3L113BA36
3L113CB24
3L113CB34
3L113DA24
4H015AA02
4H015AA03
4H015AA12
4H015AA19
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA09
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】乾燥物の品質ばらつきを抑えることのできる食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法を提供する。
【解決手段】食品残渣乾燥装置は、乾燥機18、第1澱粉質除去装置30、および第2澱粉質除去装置35を備える。食品残渣の乾燥物を製造する際には、先ず、第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35を利用して、乾燥機18による乾燥前の食品残渣から澱粉質が除去される。その後、食品残渣が乾燥機18に投入されて乾燥される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質を含む食品残渣を利用して同食品残渣の乾燥物を製造する食品残渣乾燥装置であって、
前記食品残渣を乾燥させる乾燥機と、
前記乾燥機によって乾燥させる前の前記食品残渣から前記澱粉質を除去する澱粉質除去部と、を備える食品残渣乾燥装置。
【請求項2】
前記食品残渣乾燥装置は、前記乾燥機によって乾燥させる前の前記食品残渣を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留されている前記食品残渣の一部を前記貯留部の外部に切り出す切り出し部と、を備え、
前記澱粉質除去部は、前記切り出し部によって前記貯留部の外部に切り出された前記食品残渣を、前記澱粉質の除去対象とするものである
請求項1に記載の食品残渣乾燥装置。
【請求項3】
前記澱粉質除去部は、前記食品残渣を水洗いするものである
請求項1または2に記載の食品残渣乾燥装置。
【請求項4】
前記食品残渣乾燥装置は、前記食品残渣を前記乾燥機まで搬送する搬送部と、前記搬送部の途中部分を構成するとともに前記食品残渣を計量する計量部と、を備え、
前記澱粉質除去部は、前記搬送部における前記計量部よりも搬送方向上流側の位置の前記食品残渣を、前記水洗いの対象とするものである
請求項3に記載の食品残渣乾燥装置。
【請求項5】
澱粉質を含む食品残渣を利用して同食品残渣の乾燥物を製造する食品残渣乾燥方法であって、
前記食品残渣を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の前に、前記食品残渣から前記澱粉質を除去する澱粉質除去工程と、を含む食品残渣乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品残渣を乾燥させる食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品残渣を乾燥機によって乾燥させたものを有機性のエネルギー資源(いわゆるバイオマス)として利用することが実用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥機を用いて食品残渣を乾燥させる際には、その乾燥過程において、食品残渣が大きな塊(いわゆるダマ)になることがある。この場合、食品残渣を乾燥させた結果得られるバイオマスの大きさにばらつきが生じたり、バイオマスの内部が半乾き状態になることで乾燥の度合いにムラが生じたりするなど、バイオマスの品質にばらつきが生じてしまう。食品残渣からなるバイオマスを製造する際には、こうした不都合の解消が望まれている。
【0005】
なお、こうした乾燥物の品質ばらつきに関する問題は、食品残渣を乾燥させてバイオマスを製造する装置や方法に限らず、食品残渣を乾燥させて乾燥物を製造する装置や方法においては同様に生じうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための食品残渣乾燥装置は、澱粉質を含む食品残渣を利用して同食品残渣の乾燥物を製造する食品残渣乾燥装置であって、前記食品残渣を乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機によって乾燥させる前の前記食品残渣から前記澱粉質を除去する澱粉質除去部と、を備える。
【0007】
澱粉質を含む食品残渣を乾燥機によって乾燥させる際には、糊化して粘性の高くなった澱粉質が接着剤のように機能することで、食品残渣同士が接着されて塊(いわゆるダマ)になるおそれがある。
【0008】
上記構成によれば、食品残渣に含まれる澱粉質を予め減少させた上で、同食品残渣を乾燥機によって乾燥させることができる。そのため、食品残渣に含まれる澱粉質によって食品残渣同士が接着されることを抑えることができる。これにより、乾燥機による食品残渣の乾燥過程において同食品残渣が「ダマ」になることを抑えることができるため、大きさのばらつきや乾燥度合いのばらつきの小さい高品質の乾燥物を製造することができる。
【0009】
上記食品残渣乾燥装置において、前記乾燥機によって乾燥させる前の前記食品残渣を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留されている前記食品残渣の一部を前記貯留部の外部に切り出す切り出し部と、を備え、前記澱粉質除去部は、前記切り出し部によって前記貯留部の外部に切り出された前記食品残渣を、前記澱粉質の除去対象とするものであることが好ましい。
【0010】
上記構成では、貯留された食品残渣の一部を切り出す際に、剪断部分に作用する力によって食品残渣が潰れることで、食品残渣の表面に澱粉質が現出したり表面の澱粉質が増加したりするおそれがある。そして、この状態のままで食品残渣が乾燥機によって乾燥されると、食品残渣同士が接着され易くなっているため、食品残渣が「ダマ」になり易くなってしまう。また食品残渣に含まれる澱粉質を除去する場合には、通常、食品残渣の表面に付着している澱粉質は除去し易く、食品残渣の内部の澱粉質は除去し難い。
【0011】
上記構成によれば、切り出し部による切り出しに伴って食品残渣の表面の澱粉質が多くなってしまうとはいえ、その後に澱粉質除去部による澱粉質の除去を実行することで、多くなってしまった食品残渣の表面の澱粉質を好適に減少させることができる。したがって、食品残渣の切り出しに起因して同食品残渣が「ダマ」になり易くなることを抑えることができ、ひいては乾燥物の品質の低下を抑えることができる。
【0012】
上記食品残渣乾燥装置において、前記澱粉質除去部は、前記食品残渣を水洗いするものであることが好ましい。
上記構成によれば、食品残渣の表面の澱粉質を洗い流すことができる。これにより、食品残渣の表面の粘性を低下させることができるため、食品残渣同士が接着されて「ダマ」になることを好適に抑えることができる。
【0013】
上記食品残渣乾燥装置において、前記食品残渣を前記乾燥機まで搬送する搬送部と、前記搬送部の途中部分を構成するとともに前記食品残渣を計量する計量部と、を備え、前記澱粉質除去部は、前記搬送部における前記計量部よりも搬送方向上流側の位置の前記食品残渣を、前記水洗いの対象とするものであることが好ましい。
【0014】
乾燥機による食品残渣の乾燥を効率よく実行するためには、食品残渣に含まれる水分の量(水分含有量)が少ないほうがよい。上記構成では、食品残渣が水洗い(以下、洗浄)されるため、同食品残渣の水分含有量が増加してしまう。そのため、上記構成においては、食品残渣の洗浄が完了してから同食品残渣の乾燥機による乾燥が開始されるまでの期間、言い換えれば食品残渣からの脱水が見込まれる時間は長いほうが好ましいと云える。
【0015】
また、搬送部における計量部よりも搬送方向下流側において食品残渣を洗浄すると、洗浄による水分含有量の増加に起因して、計量部による計量結果と実際の食品残渣の重量とのずれが大きくなるおそれがある。このことから、食品残渣を洗浄する位置は、搬送部における上記計量部よりも搬送方向上流側の位置にすることが好ましいと云える。
【0016】
上記構成によれば、搬送部における上記計量部よりも搬送方向上流側の位置において食品残渣が洗浄される。そのため、食品残渣の洗浄が実行されるとはいえ、計量部による食品残渣の計量精度の低下を抑えるとともに、乾燥機による乾燥開始時における食品残渣の水分含有量の増加を抑えることができる。
【0017】
上記課題を解決するための食品残渣乾燥方法は、澱粉質を含む食品残渣を利用して同食品残渣の乾燥物を製造する食品残渣乾造方法であって、前記食品残渣を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程の前に、前記食品残渣から前記澱粉質を除去する澱粉質除去工程と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥物の品質ばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態の食品残渣乾燥装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】ホッパーおよび切り出しコンベアの概略構成を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の食品残渣乾燥装置は、麦茶の製造に際して排出される食品残渣(本実施形態では、麦茶抽出後の大麦粕)を利用して、食品残渣の乾燥物であるバイオマスを製造するバイオマス製造装置である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の食品残渣乾燥装置は、ホッパー11、切り出しコンベア12、第1搬送コンベア13、計量コンベア14、第2搬送コンベア15、解砕機16、投入コンベア17、乾燥機18を備えている。
【0022】
なお本実施形態では、切り出しコンベア12、第1搬送コンベア13、計量コンベア14、第2搬送コンベア15、解砕機16、および投入コンベア17が、食品残渣F(本実施形態では、大麦粕)を乾燥機18まで搬送する搬送部20に相当する。また本実施形態では、切り出しコンベア12が搬送部20における食品残渣Fの搬送方向(
図1に矢印Aで示す方向)の最上流側の部分に相当し、投入コンベア17が、搬送部20における搬送方向Aの最下流側の部分に相当する。
【0023】
(ホッパー)
図1および
図2に示すように、ホッパー11は、食品残渣Fを一時的に貯留するためのものである。ホッパー11は、下方に向かうほど先細の筒状をなしている。本実施形態では、
図2中に白抜きの矢印で示すように、運搬車両19によって運ばれてきた食品残渣Fが、ホッパー11の上部開口から同ホッパー11の内部に投入されるようになっている。これにより、食品残渣Fはホッパー11の内部に一時的に貯留される。なお本実施形態では、ホッパー11が、乾燥機18によって乾燥させる前の食品残渣Fを貯留する貯留部に相当する。
【0024】
(切り出しコンベア)
切り出しコンベア12は、ホッパー11に貯留されている食品残渣Fの一部を同ホッパー11の外部に切り出すためのものである。
【0025】
切り出しコンベア12は、ホッパー11の下方に設けられている。切り出しコンベア12は、一列に並ぶ態様で配置された複数の容器部121を有している。容器部121は、いずれも上方が開口した容器状をなし、且つ、ホッパー11の下部開口を塞ぐことの可能な形状をなしている。切り出しコンベア12は、複数の容器部121の何れかが順にホッパー11の下部開口を塞ぐようになる態様でスライド移動する構造になっている。また切り出しコンベア12は、ホッパー11の下部開口を塞いだ状態になる容器部121(
図2における容器部121A)に、同ホッパー11の下部開口から食品残渣Fが落ちて溜まる構造になっている。
【0026】
本実施形態では、食品残渣Fを切り出す際には、容器部121を水平方向にスライド移動させる態様で、切り出しコンベア12が作動する。これにより、容器部121Aに溜まった食品残渣Fがホッパー11の外部に切り出されるようになる。このときには、食品残渣Fが入っていない空状態の容器部121(
図2の容器部121B)がホッパー11の下部開口を塞ぐ位置にスライド移動される。そして、この容器部121B内にホッパー11の下部開口から食品残渣Fが落ちて溜まる。切り出しコンベア12は、このようにして次回の食品残渣Fの切り出しに備える構造になっている。なお本実施形態では、切り出しコンベア12が切り出し部に相当する。
【0027】
(第1搬送コンベア)
図1に示すように、第1搬送コンベア13は、食品残渣Fを搬送するベルトコンベアである。第1搬送コンベア13は、切り出しコンベア12によって切り出された食品残渣Fを受けるとともに、その食品残渣Fを計量コンベア14まで搬送する。第1搬送コンベア13は、上記切り出しコンベア12の搬送方向Aにおける下流側に配設されている。
【0028】
(計量コンベア)
計量コンベア14は、食品残渣Fを計量しつつ、搬送方向Aにおける下流側に送り出すためのものである。計量コンベア14は、上記第1搬送コンベア13の搬送方向Aにおける下流側に配設されている。
【0029】
計量コンベア14は、同計量コンベア14上の食品残渣Fの重量(またはその指標値)を計測する。本実施形態では、計量コンベア14の計測値に基づいて、切り出しコンベア12による食品残渣Fの切出速度を制御することが可能になっている。本実施形態では、切り出しコンベア12の作動制御を通じて、予め定められた所定量(例えば、数トン/時間)の食品残渣Fが搬送方向Aの下流側に送り出される。なお本実施形態では、計量コンベア14が、搬送部20の途中部分を構成するとともに食品残渣Fを計量する計量部に相当する。
【0030】
(第2搬送コンベア)
第2搬送コンベア15は、食品残渣Fを搬送するベルトコンベアである。第2搬送コンベア15は、計量コンベア14によって計量および送出された食品残渣Fを受けるとともに、その食品残渣Fを解砕機16まで搬送する。第2搬送コンベア15は、上記計量コンベア14の搬送方向Aにおける下流側に配設されている。
【0031】
(解砕機)
解砕機16は、食品残渣Fを解きほぐしつつ搬送方向Aにおける下流側に送り出すためのものである。解砕機16は、食品残渣Fの解砕に利用する解砕羽根や同食品残渣Fの搬送に利用するスクリュー羽根などを有している。
【0032】
(投入コンベア)
投入コンベア17は、食品残渣Fを搬送するスクリューコンベアである。投入コンベア17は、解砕機16によって解きほぐされた食品残渣Fを受けるとともに、その食品残渣Fを搬送して乾燥機18に投入する。
【0033】
(乾燥機)
乾燥機18は、食品残渣Fを乾燥させるものである。乾燥機18としては、タコロータリー乾燥機が採用されている。乾燥機18は、円筒状をなして軸周りに回転する回転シェルと、同回転シェルの内部に固定された主管と、主管に繋がる多数の熱風吹込管とを備えている。乾燥機18では、主管および熱風吹込管を介して回転シェル内に熱風を供給しつつ同回転シェルを軸周りにおいて回転駆動した状態で、回転シェルの内部に食品残渣Fが投入される。そして、この食品残渣Fは、回転シェルの内部を通過する際に加熱および乾燥される。
【0034】
(バイオマス)
本実施形態では、乾燥機18から排出される乾燥後の食品残渣Fがバイオマス21として利用される。なお本実施形態では、バイオマス21は燃料として利用されるものである。
【0035】
ここで、乾燥機18を用いて食品残渣Fを乾燥させる場合に、その乾燥過程において、食品残渣Fが大きな塊(いわゆるダマ)になることがある。発明者等による各種の実験の結果、ダマになる原因は以下のようなものであることが分かった。食品残渣Fを乾燥機18の内部で加熱する際に、糊化して粘性の高くなっている澱粉質が接着剤のように機能することで、食品残渣F同士が接着されて「ダマ」になってしまう。
【0036】
この点をふまえて、本実施形態の食品残渣乾燥装置には、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fから澱粉質を除去するための澱粉質除去装置30,35が設けられている。これら澱粉質除去装置30,35は、乾燥機18に投入される前の食品残渣Fの表面の澱粉質を洗い流すべく、同食品残渣Fに水Wを掛ける構造になっている。なお本実施形態では、澱粉質除去装置30,35が澱粉質除去部に相当する。
【0037】
以下、これら澱粉質除去装置30,35について詳しく説明する。
(第1澱粉質除去装置)
図3に示すように、第1澱粉質除去装置30は、水Wが供給される供給部31と、同供給部31内の水Wを外部に放出する放出口32とを有している。この供給部31としては、水道の蛇口に接続されたホース(または配管)を採用したり、圧送ポンプに接続されたホース(または配管)を採用したりすることができる。
【0038】
本実施形態では、切り出しコンベア12の搬送方向Aの下流側の端部122と第1搬送コンベア13の搬送方向Aの上流側の端部131とが、切り出しコンベア12が第1搬送コンベア13の上方になるように、上下方向に重なる状態で配置されている。そのため本実施形態では、食品残渣Fは、切り出しコンベア12の下流側の端部122においては下方に落ちる。そして、落ちた食品残渣Fは第1搬送コンベア13の上流側の端部131の上面によって受け止められるとともに、同第1搬送コンベア13によって下流側に搬送される。
【0039】
第1澱粉質除去装置30は、切り出しコンベア12の端部122と第1搬送コンベア13の端部131とが重なる部分の近傍に設けられている。詳しくは、第1澱粉質除去装置30は、切り出しコンベア12の下流側の端部122から第1搬送コンベア13の上流側の端部131に落ちる途中の食品残渣Fに、放出口32から放出される水Wが掛かる態様で配置されている。
【0040】
本実施形態では、第1澱粉質除去装置30から水Wが放出されて食品残渣Fに掛けられる。これにより、食品残渣Fの表面の澱粉質が、水Wで洗い流されて除去される。本実施形態では、第1澱粉質除去装置30の放出口32から放出された水Wは、食品残渣Fの表面を洗い流した後、第1搬送コンベア13の下方に垂れ落ちる。そして、この洗浄後の水Wは、回収部(図示略)に回収されるようになっている。
【0041】
(第2澱粉質除去装置)
第2澱粉質除去装置35は、水Wが供給される供給部36と、同供給部36内の水Wを外部に放出する放出口37とを有している。供給部36としては、第1澱粉質除去装置30の供給部31と同様に、水道の蛇口に接続されたホース(または配管)を採用したり、圧送ポンプに接続されたホース(または配管)を採用したりすることができる。
【0042】
第2澱粉質除去装置35は、第1搬送コンベア13の搬送方向Aにおける途中部分の上方に配置されている。第2澱粉質除去装置35の放出口37から水Wが放出されると、この水Wが食品残渣Fの上面に掛かるようになっている。
【0043】
本実施形態では、洗浄用の水Wが、第2澱粉質除去装置35から放出されて第1搬送コンベア13上の食品残渣Fに掛けられる。これにより、食品残渣Fの表面の澱粉質が、水Wで洗い流されて除去されるようになる。本実施形態では、第2澱粉質除去装置35の放出口37から放出された水Wは、食品残渣Fの表面を洗い流した後、第1搬送コンベア13の下方に垂れ落ちるようになっている。そして、この洗浄後の水Wは、回収部(図示略)に回収されるようになっている。
【0044】
(作用)
本実施形態の食品残渣乾燥装置では、バイオマス21を製造する際に、切り出しコンベア12と第1搬送コンベア13との間の部分(
図3に矢印PUで示す部分)に向けて第1澱粉質除去装置30から水Wが放出されて食品残渣Fに掛けられる。これにより、切り出しコンベア12と第1搬送コンベア13との間の部分PUにおいて、食品残渣Fが水洗いされて、食品残渣Fの表面の澱粉質が除去されるようになる。
【0045】
また、バイオマス21を製造する際には、第1搬送コンベア13の途中部分(
図2に矢印PDで示す部分)において、第2澱粉質除去装置35から水Wが放出されて食品残渣Fに掛けられる。これにより、第1搬送コンベア13の途中部分PD、すなわち上記部分PUよりも搬送方向Aにおける下流側の部分においても、食品残渣Fが水洗いされて、食品残渣Fの表面の澱粉質が除去されるようになる。本実施形態では、第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35を利用して食品残渣Fから澱粉質を除去する工程が、食品残渣乾燥方法における澱粉質除去工程に相当する。
【0046】
そして、表面の澱粉質を予め減少させた状態の食品残渣Fが乾燥機18に投入されて、同乾燥機18によって乾燥される。乾燥機18から排出される乾燥後の食品残渣Fがバイオマス21として利用される。本実施形態では、食品残渣Fを乾燥させる工程が、食品残渣乾燥方法における乾燥工程に相当する。
【0047】
(効果)
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態によれば、第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35を利用して、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fから澱粉質が除去される。そのため、食品残渣Fの表面の澱粉質を予め減少させた上で、同食品残渣Fを乾燥機18によって乾燥させることができる。これにより、食品残渣Fに含まれる澱粉質によって食品残渣F同士が接着されることを抑えることができる。そのため、乾燥機18による食品残渣Fの乾燥過程において同食品残渣Fが「ダマ」になることを抑えることができる。これにより、大きさのばらつきや乾燥度合いのばらつきの小さい高品質のバイオマス21を製造することができる。
【0048】
(2)切り出しコンベア12と第1搬送コンベア13との間の部分PUに向けて第1澱粉質除去装置30から水Wが放出されて食品残渣Fに掛けられる。また、第1搬送コンベア13の途中部分PDに向けて、第2澱粉質除去装置35から水Wが放出されて食品残渣Fに掛けられる。これにより本実施形態では、第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35による澱粉質の除去対象が、切り出しコンベア12によってホッパー11の外部に切り出された食品残渣Fになっている。
【0049】
食品残渣F(本実施形態では大麦粕)は外面を覆う外皮の内部に澱粉質を含んでいる。このことから、食品残渣Fは、潰される等して外皮が破れることで表面に澱粉質が現出するようになると云える。本実施形態では、ホッパー11に貯留された食品残渣Fの一部を切り出しコンベア12によって切り出す際に、剪断部分(
図2中にPPで示す部分)に作用する力によって食品残渣Fが潰れることで、食品残渣Fの表面に澱粉質が現出するようになる。そして、この状態のままで食品残渣Fが乾燥機18によって乾燥されると、食品残渣F同士が接着され易くなっているため、食品残渣Fが「ダマ」になり易くなってしまう。また、水洗いなどによって食品残渣Fに含まれる澱粉質を除去する場合には、食品残渣Fの表面に付着している澱粉質は除去し易く、食品残渣Fの内部の澱粉質は除去し難い。
【0050】
本実施形態によれば、切り出しコンベア12による食品残渣Fの切り出しに伴って同食品残渣Fの表面の澱粉質が多くなってしまう。とはいえ、その後に第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35によって食品残渣Fが水洗いされることで、多くなってしまった食品残渣Fの表面の澱粉質を好適に減少させることができる。したがって、食品残渣Fの切り出しに起因して同食品残渣Fが「ダマ」になり易くなることを抑えることができ、ひいてはバイオマス21の品質の低下を抑えることができる。
【0051】
(3)第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35によって、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fを水洗いするようにした。そのため、食品残渣Fの表面の澱粉質を洗い流すことができる。これにより、食品残渣Fの表面の粘性を低下させることができるため、食品残渣F同士が接着されて「ダマ」になることを好適に抑えることができる。
【0052】
なお、本実施形態のように食品残渣Fを水洗いする場合には、食品残渣Fに含まれる水分の量(水分含有量)が多くなってしまったり、その分だけ食品残渣Fの嵩が増してしまったりする。そして、水分含有量の多い食品残渣Fが乾燥機18に投入される場合や、乾燥機18への食品残渣Fの単位時間当たりの投入量が多くなる場合には、乾燥機18による食品残渣Fの乾燥にかかる品質の低下を招き易くなる。発明者等による各種の実験の結果、食品残渣Fを水洗いした場合に、水洗いしない場合と比較して、食品残渣Fの乾燥物であるバイオマス21を高い品質で製造することができることが確認された。この点をふまえて、本実施形態では、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fを水洗いするようにしている。
【0053】
(4)第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35による澱粉質の除去対象が、搬送部20における計量コンベア14よりも搬送方向Aの上流側の位置の食品残渣Fになっている。
【0054】
乾燥機18による食品残渣Fの乾燥を効率よく実行するためには、食品残渣Fの水分含有量が少ないほうがよい。本実施形態では、食品残渣Fが水洗いされるため、同食品残渣Fの水分含有量が増加してしまう。そのため本実施形態では、食品残渣Fの洗浄が完了してから同食品残渣Fの乾燥機18による乾燥が開始されるまでの期間、言い換えれば食品残渣Fからの脱水が見込まれる時間は長いほうが好ましいと云える。
【0055】
また、搬送部20における計量コンベア14よりも搬送方向Aの下流側において食品残渣Fを洗浄すると、洗浄による水分含有量の増加に起因して、計量コンベア14による計量結果と実際の食品残渣Fの重量とのずれが大きくなるおそれがある。このことから、食品残渣Fを洗浄する位置は、搬送部20における上記計量コンベア14よりも搬送方向Aの上流側の位置にすることが好ましいと云える。
【0056】
本実施形態では、搬送部20における上記計量コンベア14よりも搬送方向Aの上流側の位置において食品残渣Fが洗浄される。そのため、食品残渣Fの洗浄が実行されるとはいえ、計量コンベア14による食品残渣Fの計量精度の低下を抑えることができる。しかも、計量コンベア14よりも搬送方向Aの下流側の位置において食品残渣Fを洗浄する場合と比較して、食品残渣Fからの脱水が見込まれる時間を長くすることができる。そのため、乾燥機18による乾燥開始時における食品残渣Fの水分含有量の増加を抑えることができる。
【0057】
(5)第1澱粉質除去装置30の放出口32から放出される水Wが、切り出しコンベア12の下流側の端部122から第1搬送コンベア13の上流側の端部131に落ちる途中の食品残渣Fに掛かるようになっている。
【0058】
切り出しコンベア12の下流側の端部122において、食品残渣F(本実施形態では、大麦粕)は、崩れながら落下するようになる。この落下に際して食品残渣Fがほぐれて各部に隙間が生じるようになるため、食品残渣Fの内部(詳しくは大麦粕同士の隙間)に水Wが進入しやすい状態になる。
【0059】
本実施形態によれば、落下に伴って各部に隙間が生じた状態の食品残渣Fに、第1澱粉質除去装置30から水Wを掛けることができる。これにより、食品残渣F(詳しくは、個々の大麦粕)の表面に広範囲にわたって水Wを掛けることができるため、食品残渣Fの表面の澱粉質を好適に洗い流すことができるようになる。
【0060】
(変形例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35の一方を省略してもよい。
・第1澱粉質除去装置30を設ける位置や第2澱粉質除去装置35を設ける位置は、任意に変更することができる。澱粉質除去装置30,35を搬送部20上の食品残渣Fに水Wを掛けるようになる位置に設けることで、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fを水洗いして同食品残渣Fの表面の澱粉質を除去することはできる。また、澱粉質除去装置30,35を搬送方向Aにおいて並ぶ2種類のコンベア装置の一方の端部から他方の端部に落ちる途中の食品残渣Fに水Wを掛ける位置に設けることで、食品残渣Fの表面に広範囲にわたって水Wを掛けることが可能になる。
【0062】
・食品残渣Fを乾燥機18まで搬送する搬送部20の構造は、任意に変更することができる。例えば切り出しコンベア12を省略したり、計量コンベア14を省略したり、解砕機16を省略したりすることができる。その他、搬送部20を投入コンベア17のみによって構成すること等も可能である。
【0063】
・第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35の構造は、食品残渣Fを水洗いすることのできる構造であれば、任意に変更可能である。そうした構造としては、例えば外部から供給される水Wを内部に溜める貯留槽と、同貯留槽に形成された貫通孔とを有する構造を採用することができる。その他、水槽の内部を食品残渣Fが通過する構造を採用したり、水槽の内部で食品残渣Fを「もみ洗い」する構造を採用したりすること等も可能である。
【0064】
・第1澱粉質除去装置30および第2澱粉質除去装置35の一方、あるいは両方を、粘着性を低下させる物質(薬剤)を食品残渣Fに添加して同食品残渣Fを改質する構造の装置にしてもよい。こうした構成によっても、乾燥機18による乾燥前の食品残渣Fから澱粉質を除去することができる。
【0065】
・乾燥機18としては、任意の構造のものを採用することができる。乾燥機18としては、回転シェルの内部に熱を供給するタイプの乾燥機であれば、タコロータリー乾燥機以外のものを採用することができる。その他、回転シェルそのものを加熱するタイプの乾燥機(例えばロータリーキルン乾燥機)を採用すること等も可能である。
【0066】
・上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法の適用対象は、各種コンベアや解砕機によって構成された搬送部20を利用して乾燥機18への食品残渣Fの搬送を行う装置や方法に限定されない。乾燥機18への食品残渣Fの搬送を産業車両(ショベルカー、ホイールローダなど)を利用して行う装置や方法にも、上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置および食品残渣乾燥方法は適用可能である。この場合においても、乾燥機18による乾燥前に食品残渣Fを水洗いするなどして同食品残渣Fから澱粉質を除去することで、乾燥機18による食品残渣Fの乾燥過程において同食品残渣Fが「ダマ」になることを抑えることができる。
【0067】
なお、食品残渣Fをその集積場所から産業車両によって切り出して搬出する際にも、食品残渣Fが潰されて表面に澱粉質が現出する現象は生じうる。この場合においては、澱粉質を除去する除去対象を、産業車両によって集積場所から切り出された食品残渣Fにすることが好ましい。これにより、産業車両による食品残渣Fの切り出しに伴って同食品残渣Fの表面の澱粉質が多くなってしまうとはいえ、その後に、食品残渣Fの表面の澱粉質を減少させることができる。そのため、食品残渣Fの切り出しに起因して同食品残渣Fが「ダマ」になり易くなることを抑えることができる。
【0068】
・上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置や食品残渣乾燥方法は、ホッパー11や切り出しコンベア12を備えていない食品残渣乾燥装置や同装置を利用する食品残渣乾燥方法にも適用することができる。
【0069】
・食品残渣Fとして大麦粕を利用する装置や方法に限らず、澱粉質を含む食品残渣を利用する装置や方法であれば、上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置や食品残渣乾燥方法は適用可能である。そうした食品残渣の一例としては、鳩麦茶抽出後の鳩麦粕や、麦以外の穀類(例えば米、トウモロコシ)の粕、芋類(例えば薩摩芋、馬鈴薯)の粕などを挙げることができる。上記食品残渣の他の例としては、澱粉質を多く含む食品残渣と澱粉質をさほど含まない食品残渣とが混ざった状態の食品残渣や、澱粉質を含む食品残渣と含まない食品残渣とが混ざった状態の食品残渣などを挙げることもできる。
【0070】
・上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置や食品残渣乾燥方法は、食品残渣を利用してバイオマスを製造する装置や方法に限らず、食品残渣を利用して最終的に産業廃棄物になる乾燥物を製造する装置や方法にも適用可能である。要は、澱粉質を含む食品残渣を利用して同食品残渣の乾燥物を製造する食品残渣乾燥装置や食品残渣乾燥方法であれば、上記実施形態にかかる食品残渣乾燥装置や食品残渣乾燥方法は適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
11…ホッパー
12…切り出しコンベア
13…第1搬送コンベア
14…計量コンベア
15…第2搬送コンベア
16…解砕機
17…投入コンベア
18…乾燥機
20…搬送部
21…バイオマス
30…第1澱粉質除去装置
35…第2澱粉質除去装置