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▶ 齊藤 研一の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041483
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】酒類の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/30 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
B65D77/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148884
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】521403867
【氏名又は名称】齊藤 研一
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 研一
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067BA03B
3E067BA05C
3E067BB08B
3E067BB14C
3E067CA06
3E067FA04
3E067FC01
3E067GA19
3E067GD01
3E067GD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワイン又は日本酒が入ったボトルを一旦開封しても、風味や品質を低下させることなくワイン等を保管できるようにする方法の提供。
【解決手段】ワイン、又は、日本酒が充填され、開口部が閉栓されたボトルをグローブボックス内に収容するステップと、前記グローブボックス内を不活性ガスで充填するステップと、前記不活性ガス雰囲気下で前記ボトルを開栓するステップと、前記ボトルから前記ワイン又は日本酒を別容器に小分けするステップと、前記ワイン、又は、日本酒が小分けされた別容器に封をするステップと、当該複数の別容器を前記グローブボックスから搬出するステップと、を有する酒類の調整方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイン、又は、日本酒が充填され、開口部が閉栓されたボトルをグローブボックス内に収容するステップと、
前記グローブボックス内を不活性ガスで充填するステップと、
前記不活性ガス雰囲気下で前記ボトルを開栓するステップと、
前記ボトルから前記ワイン又は日本酒を別容器に小分けするステップと、
前記ワイン、又は、日本酒が小分けされた別容器に封をするステップと、
当該複数の別容器を前記グローブボックスから搬出するステップと、
を有する酒類の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の酸素によって劣化しやすいワイン、日本酒等の酒類の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年以降日本では繰り返しワインブームが起きており、その都度ワインの消費量も飛躍的に拡大してきている。ワインは、ボトルに入れられた後ボトルの開口部を、主としてコルク栓を用いて封をした状態で流通されている。
【0003】
ボトルが開栓されるとボトル内に空気が混入してワインが酸化されて風味が大きく低下してしまうため、一旦開栓された後、窒素等の不活性ガスでボトル内の空気を置換した後コルク栓によってボトルを再び閉栓してワインを保管することも行われている。
【0004】
しかしながら、ワインが一旦空気に触れて酸化されると、その時点でワインは劣化しその後ボトル内を不活性ガスで置換したとしてもワインの劣化は完全には止まらずワインの風味は損なわれてしまう。従って、一度開栓されたボトル内のワインは保管することなくワインを飲みきってしまうことが好ましい。
【0005】
一方、ワインのコルク栓を抜かず細いニードル(針)をコルク栓に差し込み、ニードルを介して必要な分だけのワインをボトルからグラスに注ぐワインサーバが実用化されている(例えば、特開2020-526459号公報)。このワインサーバでは、ボトルからグラスに注がれて減ったワイン量に相当する不活性ガスがワインサーバからボトルに充填されるため、ボトル内のワインは空気に触れることなく保存・熟成が可能であることが謳われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-526459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワインの澱は浮遊すると外観上の濁りの問題だけではなく、ワインの風味や質感の低下を招く。そこで、ワインをサービスする際においては、ボトルを長時間、もしくは、数日から数週間を静置させて澱を瓶底に集めた後、澱が舞うのを防ぎながら上澄みだけをグラスに注ぐ、またはデキャンタと呼ばれる容器に移し替えてからグラスに注ぐようにしなければならない。しかしながら、前記従来のワインサーバでは、コルク栓を介して瓶内に不活性ガスを注入しているため、どうしても澱がワインに舞うことを避け得ない。また、ワインを注ぐ度にボトルを傾ける必要があるため、その度に澱が舞うことを避け得ない。高級ワインであればあるほど、たとえ僅かであっても澱の混入はワインの風味を損なう大きな問題である。
【0008】
さらに、前記従来のワインサーバでは、ニードルをコルク栓に貫通させているために、コルク屑がワインに混入して、ワインの品質や風味の低下の原因となる。さらにまた、ニードル内の僅かな隙間に含まれた空気が不活性ガスと共にボトル内に侵入することを避け得ない。また、コルクに開けられた針孔を介してワインが漏れると共に、空気の流入が起こり、ボトル内のワインの液量が半分にもなるとボトル内の空気によるワインの酸化を無視できない。
【0009】
即ち、ワインや日本酒のように空気によって劣化し易い飲料を、開封後風味や品質を低下させることなく維持させることは従来不可能であった。そこで、本発明はワイン又は日本酒が入ったボトルを一旦開封しても、風味や品質を低下させることなくワイン等を保管できるようにする方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、
ワイン、又は、日本酒が充填され、開口部が閉栓されたボトル(瓶等)をグローブボックス内に収容するステップと、
前記グローブボックス内を、二酸化炭素、アルゴン、窒素等の不活性ガスで充填するステップと、
前記不活性ガス雰囲気下で前記ボトルを開栓するステップと、
前記ボトルから前記ワイン又は日本酒を、小瓶等の複数の小容量の別容器の夫々に前記異物が混入しないように小分け、又は、入れ替えるステップと、
前記ワイン、又は、日本酒が小分けされた複数の別容器の夫々に封をするステップと、
当該複数の小容器を前記グローブボックスから搬出するステップと、
を有することを特徴とする酒類の調整方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワイン又は日本酒が入ったボトルを一旦開封しても、風味や品質を低下させることなくワイン等を保管できるようにした方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
グローブボックスは、外気と遮断された状況下で作業が可能となるように、内部に手だけが入れられるようにした密閉容器である。グローブボックスの壁面にゴム手袋が直結してあり、アルゴン、窒素といった高純度の不活性ガス下で、大気に不安定な物質を外気から隔離させて取り扱うことができる。
【0013】
発明者は、グローブボックスとして、株式会社サンプラテック製、TALGB700を改良した別注ガス置換G型(製品名)を利用した。このグループボックスの実寸は(幅)60cm×(奥行)50cm×(高)60cmであり、グローブ穴(ゴム手袋)を製品の前面上部に設けた。このグローブボックスはガス注入用のバルブ、ガス排気用のバルブを備えている。
【0014】
先ず、酸素濃度計、ワインボトル、ワインオープナー、複数の別容器(例えば、小容量のガラス、又は、プラスチック製容器)、そして、漏斗等をグローブボックス内に入れる。古い赤ワインの場合は、澱を確認するために、光源も入れる。次いで、排気用バルブを開け、不活性ガスのボンベに接続されたガス注入用バルブを開け、ボンベの圧力調整器を操作して、不活性ガスをグローブボックス内に導入する。
【0015】
酸素濃度計の酸素濃度がゼロになったところで、排気用バルブと注入用バルブを閉める。次に、ワインボトルの開栓を行う。古酒の場合にはコルクが瓶内に落ちないように、パニエ(バスケット)にボトルを寝かせて開栓する。ワインボトルは、例えば、750ml、又は、1500mlでよい。ワインに代えて、日本酒でもよい。日本酒のボトルは、例えば、四合瓶(720ml)、又は、一升瓶(1800ml)でよい。
【0016】
漏斗を使って、ワインボトルからワインを別容器に移す。澱のある赤ワイン(例えば、ボルドーまたはブルゴーニュなどの赤ワインで10年といった熟成を経たもの)の場合には澱が混入しないように、光源で照らしながら、上澄みをデキャンタに移し替え、その後に別容器に移す。別容器としては、例えば、内容量が同容量のものだけでなく、30ml~100mlの小容量のものでよい。別容器は主としてガラス瓶であるが、プラスチック容器でもよい。
【0017】
酸素濃度がゼロであることを確認後、ワインが小分けされた別容器を閉栓する。閉栓はスクリューキャップ式によるものでよい。別容器をグローブボックスから出した後、キャップをスクリューキャッパーで締め上げて開栓の防止を図る。
【0018】
赤ワイン(ボルドーの赤ワインで30年以上の熟成を経たもの)を小分けし、小分け後1月経過した別容器を開封してワインをワイングラスに注いでワインを視認しても、澱、コルク屑等の異物は確認されない。次いで、このワインを試飲したところ、風味の低下はない。本発明者が鋭意検討したところ、不活性ガスとしては、二酸化炭素が、ワインの風味を維持する上で最も好適である。