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特開2023-41525グラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法
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  • 特開-グラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041525
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】グラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/47 20060101AFI20230316BHJP
   E02F 3/413 20060101ALI20230316BHJP
   B66C 3/02 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E02F3/47 E
E02F3/413
B66C3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148946
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 宏
(72)【発明者】
【氏名】久木田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】古賀 諒太
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA36
3F004PA06
3F004PB01
3F004PC27
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、浚渫作業で揚収する余剰水を効果的に低減できるグラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法を提供する。
【解決手段】気体Gを封入した変形可能な袋部2を浚渫用グラブバケット10のバケットシェル11の内壁12に取付けておき、浚渫用グラブバケット10を水底地盤Bに向かって降下させる降下工程では、袋部2を収縮させた状態にする。その後の浚渫用グラブバケット10を水上に向かって上昇させる上昇工程では、袋部の収縮状態を緩和させることにより、バケットシェル11内の余剰水Wをバケットシェル11の外部に排出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫用グラブバケットのバケットシェルの内側に装着されるグラブ浚渫用アタッチメントにおいて、
前記バケットシェルの内壁に取付けられる袋部を有し、前記袋部は気体が封入されて変形可能であり、前記袋部が変形することで前記バケットシェルの収容積を変化させることを特徴とするグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項2】
前記袋部の少なくとも一部が弾性部材によって形成されている請求項1に記載のグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項3】
前記袋部の外面の少なくとも一部を被覆する保護部を有する請求項1または2に記載のグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項4】
前記袋部に前記気体の注入および排出を行うバルブを有する請求項1~3のいずれかに記載のグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項5】
前記バルブは、前記袋部の内圧が所定の閾値を超えると前記袋部の内圧が前記閾値以下になるまで前記袋部の内部の前記気体が排出される内圧調整機構を有する請求項4に記載のグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項6】
前記袋部の内部空間を複数の隔室に区分けする隔壁を有する請求項1~5のいずれかに記載のグラブ浚渫用アタッチメント。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の前記グラブ浚渫用アタッチメントが装着されたことを特徴とする浚渫用グラブバケット。
【請求項8】
前記袋部が前記バケットシェルに対して着脱可能な構成である請求項7に記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項9】
前記バケットシェルの内壁に複数の前記袋部が配設されている請求項7または8に記載の浚渫用グラブバケット。
【請求項10】
浚渫用グラブバケットを使用した浚渫方法において、
気体を封入した変形可能な袋部を前記浚渫用グラブバケットのバケットシェルの内壁に取付けておき、前記浚渫用グラブバケットを水底地盤に向かって降下させる降下工程では前記袋部を収縮させた状態とし、その後の前記浚渫用グラブバケットを水上に向かって上昇させる上昇工程では前記袋部の収縮状態を緩和させることにより、前記バケットシェル内の余剰水を前記バケットシェルの外部に排出することを特徴とする浚渫方法。
【請求項11】
前記袋部に設けられたバルブに連結管を介して給排気装置を接続した状態とし、前記降下工程では前記給排気装置により前記袋部に封入されている気体を排気することで前記袋部を収縮させ、前記上昇工程では前記給排気装置により前記袋部に気体を注入することで前記袋部の収縮状態を緩和させる請求項10に記載の浚渫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法に関し、さらに詳しくは、簡素な構成でありながら、浚渫作業で揚収する余剰水を効果的に低減できるグラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラブバケットを使用する浚渫作業において、最終的な仕上げ掘りでは水底地盤を浅く掘るため、仕上げ掘りを行う深さがそのグラブバケットによる最大掘り深さよりも浅くなる。そのため、仕上げ掘りでは、バケットシェルで掬う土砂の量は深堀時に比して少なく、閉じたバケットシェルの内部に余分な水(余剰水)を多く取り込んでしまうことになる。そのため、仕上げ掘り時にはバケット容量に対する土砂量の割合(含泥率)が低くなる。浚渫した土砂とともに余剰水も揚収して運搬、処理することになるため、揚収する余剰水が多いと運搬効率や土砂処理場での処理効率を低下させる要因となる。
【0003】
そこで、仕上げ掘りにおける含泥率の向上を図る手段として、バケット内部の密閉空間の容積を変更できる浚渫用グラブバケットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の浚渫用グラブバケットでは、バケットシェルの内部に区分された区室に板状の第1区画板と第2区画板とで構成した区画体を装着することによりバケット容量に対する減容空間を画成している。そして、減容空間の内部に水が浸入することを防ぐために発泡樹脂からなる充填部材を配置している。
【0004】
しかしながら、この浚渫用グラブバケットでは、予め減容空間の形状に合わせて加工した充填部材を用意する必要があり、浚渫現場においても充填部材を減容空間の内部に設置する作業が必要となる。バケット容量が大きい場合には、充填部材は巨大になるため取り扱いが困難となる。充填部材を複数に分割した場合にも搬送や設置作業に多くの労力を有する。また、減容空間(充填部材)によりバケットシェルの収容積が小さくなった状態で土砂の掘削を行うことになるため、土砂がバケットシェルに円滑に取り込まれ難くなり、掘削作業の作業性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-83734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成でありながら、浚渫作業で揚収する余剰水を効果的に低減できるグラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のグラブ浚渫用アタッチメントは、浚渫用グラブバケットのバケットシェルの内側に装着されるグラブ浚渫用アタッチメントにおいて、前記バケットシェルの内壁に取付けられる袋部を有し、前記袋部は気体が封入されて変形可能であり、前記袋部が変形することで前記バケットシェルの収容積を変化させることを特徴とする。
【0008】
本発明の浚渫用グラブバケットは、上記のグラブ浚渫用アタッチメントが装着されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の浚渫方法は、浚渫用グラブバケットを使用した浚渫方法において、浚渫用グラブバケットを使用した浚渫方法において、気体を封入した変形可能な袋部を前記浚渫用グラブバケットのバケットシェルの内壁に取付けておき、前記浚渫用グラブバケットを水底地盤に向かって降下させる降下工程では、前記袋部を収縮させた状態とし、その後の前記浚渫用グラブバケットを水上に向かって上昇させる上昇工程では、前記袋部の収縮状態を緩和させることにより、前記バケットシェル内の余剰水を前記バケットシェルの外部に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法によれば、気体を封入した変形可能な袋部を浚渫用グラブバケットのバケットシェルの内壁に取付けておく。そして、グラブバケットを水底地盤に向かって降下させる降下工程では袋部を収縮させた状態にすることで、バケットシェル内の収容積を大きく確保して水底地盤の土砂を円滑に掬うことができる。その後のグラブバケットを水上に向かって上昇させる上昇工程では、バケットシャルの内側で袋部の収縮状態を緩和させて、バケットシェル内の収容積を減少させることで、バケットシェル内の余剰水をバケットシェルの外部に排出できる。それ故、簡素な構成でありながら、浚渫作業で揚収する余剰水を効果的に低減でき、バケット容量に対する土砂量の割合(含泥率)を高くできる。余剰水の低減に伴い、運搬効率や土砂処理場での処理効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のグラブ浚渫用アタッチメントを装着した浚渫用グラブバケットが水面付近で全開している状態を縦断面視で例示する説明図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1の浚渫用グラブバケットを水底地盤近くまで降下させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図4図3の浚渫用グラブバケットによって水底地盤の土砂を掬いバケットシェルを閉じた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図5図4の浚渫用グラブバケットを水面付近まで上昇させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図6図1の袋部に設けられたバルブに連結管を介して給排気装置を接続した状態で、浚渫用グラブバケットによって水底地盤の土砂を掬ってバケットシェルを閉じた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図7図6の浚渫用グラブバケットを水面付近まで上昇させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図8】本発明の別のグラブ浚渫用アタッチメントを装着した浚渫用グラブバケットを縦断面視で例示する説明図である。
図9図8のグラブ浚渫用アタッチメントを断面視で例示する説明図である。
図10】本発明のさらに別のグラブ浚渫用アタッチメントを装着した浚渫用グラブバケットを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のグラブ浚渫用アタッチメント、浚渫用グラブバケットおよび浚渫方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2に例示する本発明のグラブ浚渫用アタッチメント1(以下、アタッチメント1)は、浚渫用グラブバケット10(以下、グラブバケット10)のバケットシェル11の内側に装着される。
【0014】
アタッチメント1は、主にグラブバケット10の最大掘り深さよりも浅い深さを浚渫する仕上げ掘りを行う際に使用される。アタッチメント1を装着していないグラブバケット10で仕上げ掘りを行うと、仕上げ深さに対してバケット容量が大きいため、バケットシェル11内に余分な水W(以下、余剰水W)を多く取り込んでしまい、そのまま多くの余剰水Wを揚収することになる。そこで、本発明では、バケットシェル11の内側にアタッチメント1を装着することによって、バケットシェル11の収容積を変化できる構成とし、浚渫作業時に揚収する余剰水Wを低減させる。
【0015】
アタッチメント1は、所謂、密閉式のグラブバケット10に装着される。密閉式のグラブバケット10は、水底地盤Bの土砂Sを掬って一対のバケットシェル11を閉じると、バケットシェル11の内部に取り込まれた土砂Sは外部に流出し難い状態となるが、バケットシェル11の開口端14どうしの間などには水Wが通過可能な比較的小さなすき間がある。バケットシェル11の開口端14は、グラブバケット10を全開させた状態で、バケットシェル11の内壁12の下側に位置する端部である。バケットシェル11の内壁12は、一対のバケットシェル11が閉じた状態で、バケットシェル11の内側の上方に位置する壁面である。バケットシェル11には壁面に水が通過可能な通水孔が設けられているものもある。
【0016】
アタッチメント1は、バケットシェル11の内壁12に取付けられる袋部2を有している。袋部2は変形可能であり、内部に気体Gが封入される。袋部2に封入する気体Gとしては空気が例示できるが、空気以外の気体Gを袋部2に封入することもできる。袋部2は、例えば、ゴムや樹脂などで形成される。袋部2は、例えば、2枚のシート部材の周縁どうしを接着することで形成できる。袋部2は、伸縮性を有することが好ましい。袋部2の少なくとも一部は弾性部材によって形成するとよい。例えば、袋部2を複数種類の素材で形成して、袋部2が伸縮する部位と伸縮しない部位とを有する構成にすることもできる。
【0017】
この実施形態では、袋部2の周縁に板状の突出部が設けられていて、突出部が取付け機構4によってバケットシェル11の内壁12に固定されている。袋部2の形状やサイズ、容量(外側の容積)などはバケットシェル11の形状やサイズに応じて適宜決定できる。この実施形態では、左右のそれぞれのバケットシェル11に一つずつ袋部2を取付けているが、バケットシェル11に複数の袋部2を配設することもできる。
【0018】
この実施形態では、袋部2の外面を被覆する保護部3が設けられている。保護部3は土砂Sや石などによる袋部2の損傷を防止する。保護部3は例えば、シート状部材や板状部材で構成され、アラミド繊維などの合成繊維や樹脂等で形成される。保護部3は、袋部2の外面に接着されて袋部2と一体化している。保護部3は袋部2に追従して変形可能な構成にすることが好ましい。この実施形態では、バケットシェル11を全開した状態で下側に位置する袋部2の外面の一部に保護部3が接着されていて、保護部3で被覆されていない袋部2の根元部分が伸縮可能な構成になっている。変形し難い保護部3を採用する場合には、袋部2が変形(伸縮)し易いように、例えば、複数の保護部3を互いに間隔をあけて配設することもできる。
【0019】
この実施形態では、取付け機構4により、袋部2がバケットシェル11に対して着脱可能な構成になっている。取付け機構4は、バケットシェル11の内壁12に固定される固定部材4aと、固定部材4aに対して袋部2を着脱自在に固定する取付け具4bとを有して構成されている。固定部材4aは例えば、金属製の管状部材や板状部材、形鋼などで構成され、バケットシェル11の内壁12に溶接やボルト接合等で固定される。固定部材4aの形状や配置は、バケットシェル11の内壁12の形状や袋部2のサイズなどに応じて適宜決定できる。取付け具4bは、板状部材とボルトで構成されていて、袋部2の周縁に設けられている突出部が、固定部材4aと板状部材とで挟まれた状態でボルトによって固定されている。取付け機構4は、この実施形態の構成に限定されず、他にも様々な構成にすることもできる。
【0020】
この実施形態では、袋部2に気体Gの注入および排出を行うバルブ5が設けられている。この実施形態では、バケットシェル11の内壁12に形成された貫通孔にバルブ5が挿設されていて、袋部2に設けられている連結部2a(貫通孔)にバルブ5の先端が着脱可能に連結されている。この実施形態では、バルブ5の給排気口をバケットシェル11の外側に配置しているが、例えば、バルブ5の給排気口をバケットシェル11の内側に配置することもできる。バルブ5は、例えば、袋部2からの気体Gの流出を防止する蓋体(キャップ)を設けた構成にすることもできるが、袋部2からの気体Gの流出を抑制する逆止弁構造にすると利便性がより高くなる。
【0021】
次に、アタッチメント1を装着したグラブバケット10による浚渫方法を説明する。
【0022】
グラブバケット10を用いて、所定の仕上げ深さを残して水底地盤Bの浚渫を行なう。仕上げ深さはグラブバケット10の最大掘り深さよりも浅い深さである。その後、バケットシェル11の内側にアタッチメント1を装着して仕上げ掘りを行う。バケットシェル11に対するアタッチメント1の装着作業は例えば、船上や陸上等で行う。
【0023】
この実施形態では、固定部材4aとバルブ5は浚渫作業を開始する前に予めバケットシェル11に固定している。固定部材4aとバルブ5は、仕上げ掘りを行う直前にバケットシェル11に固定することもできる。仕上げ掘りを行う際には、バケットシェル11の内壁12に袋部2を取付ける。具体的には、袋部2に設けられている連結部2aにバケットシェル11に固定されているバルブ5の先端部を連結する。そして、袋部2の周縁に設けられている突出部を取付け具4bによって固定部材4aに固定する。
【0024】
そして、コンプレッサーなどの給排気装置を使用して、バルブ5から袋部2の内部に気体Gを注入して、袋部2の内部に気体Gを封入した状態にする。袋部2に封入する気体Gの量や袋部2の内圧は、バケットシェル11の収容積と浚渫時にバケットシェル11内に取り込む想定土砂量(過去の実績値)に基づいて設定する。図1に示すように、袋部2に封入する気体Gの量は、グラブバケット10が水面付近の浅い水深に位置した状態で、袋部2が膨らんだ状態となり、バケットシェル11の内側で袋部2が占める体積が、アタッチメント1を装着していない状態のバケットシェル11の収容積から、浚渫時にバケットシェル11内に取り込む想定土砂量の体積を差し引いた残存容積の20%以上80%以下、より好ましくは50%以上80%以下の範囲内になるように設定するとよい。袋部2に気体Gを注入する作業は、袋部2をバケットシェル11に固定する前に行うこともできる。
【0025】
次いで、アタッチメント1を装着した状態のグラブバケット10を開いた状態で水底地盤Bに向かって降下させる。この降下工程では、グラブバケット10が位置する水深が深くなっていくことで、水圧が徐々に高くなる。水圧の上昇に伴って、気体Gが封入されている袋部2は徐々に収縮する。
【0026】
図3に示すように、グラブバケット10が水底地盤B付近に位置すると、袋部2は水圧によって押しつぶされて変形し、収縮した状態になる。そして、袋部2の体積が小さくなることで、グラブバケット10が水面付近の浅い水深に位置していたときよりも、バケットシェル11の収容積は大きい状態となる。そして、図4に示すように、袋部2が収縮した状態で、一対のバケットシェル11を閉じて水底地盤Bの土砂Sを掬う。
【0027】
次いで、一対のバケットシェル11を閉じた状態で水上に向かって上昇させる。この上昇工程では、グラブバケット10が位置する水深が浅くなっていくことで、水圧が徐々に低くなる。水圧の低下に伴って、気体Gが封入されている袋部2の収縮状態は緩和され、袋部2は徐々に膨張する。そして、上昇工程では、バケットシェル11で水底地盤Bの土砂Sを掘削した時よりも、袋部2の体積が大きくなり、それに伴いバケットシェル11の収容積が小さくなることで、バケットシェル11内に取り込まれていた余剰水Wの一部が、バケットシェル11の開口端14どうしの間のすき間などからバケットシェル11の外部に流出される。
【0028】
図5に示すように、グラブバケット10が水面付近の浅い水深に位置すると、袋部2が比較的大きく膨張した状態となり、グラブバケット10の内部に取り込まれている余剰水Wの量が、グラブバケット10が水底地盤B付近に位置していたときよりも減少した状態になる。次いで、グラブバケット10を水上に揚げて土運船上などに移動させ、一対のバケットシェル11を開いて浚渫した土砂Sと残存する余剰水Wを排出する。
【0029】
浚渫作業が完了した後には、アタッチメント1をバケットシェル11から取り外す。この実施形態では、固定部材4aおよび取付け具4bによる袋部2の拘束を解除し、バルブ5と袋部2の連結部2aとの連結を解除して、バケットシェル11から袋部2を取外す。アタッチメント1は、異なる現場や異なるグラブバケット10において繰り返し使用することができる。
【0030】
このように、本発明によれば、グラブバケット10を水底地盤Bに向かって降下させる降下工程では袋部2を収縮させた状態にすることで、バケットシェル11内の収容積を大きく確保して水底地盤Bの土砂Sを円滑に掬うことができる。バケットシェル11内の収容積を大きく確保できることで、掘り残しや掘削時に土砂Sがバケットシェル11内に取り込まれ難くなる不具合が発生する可能性を低くできる。その後のグラブバケット10を水上に向かって上昇させる上昇工程では、バケットシェル11の内側で袋部2の収縮状態を緩和させて、バケットシェル11内の収容積を減少させることで、バケットシェル11内の余剰水Wをバケットシェル11の外部に排出できる。それ故、簡素な構成でありながら、浚渫作業で揚収する余剰水Wを効果的に低減でき、バケット容量に対する土砂量の割合(含泥率)を高くできる。余剰水Wの低減に伴い、運搬効率や土砂処理場での処理効率の向上を図ることができる。
【0031】
さらに、グラブバケット10を水上に揚げるまでに、水中においてバケットシェル11内の余剰水Wをバケットシェル11の外部に排出させることができる。それ故、グラブバケット10を水上に揚げてから速やかに土運船などに土砂Sを排出することができ、浚渫作業を非常に効率よく行える。袋部2はバケットシェル11の内側の形状やバケットシェル11内に取り込まれている土砂Sの形状(起伏)に合わせて変形するので、バケットシェル11内の余剰水Wをバケットシェル11の外部に効果的に排出できる。また、複雑な制御が不要であり、アタッチメント1は既存のグラブバケット10にも簡易に適用できる。袋部2に封入する気体Gの量や袋部2のサイズを変更することで、浚渫する土砂量や排出する余剰水Wの量を調整できるので、現場の状況に応じて臨機応変に対応することが可能である。それ故、当業者にとって非常に有用である。
【0032】
袋部2の少なくとも一部が弾性部材によって形成されていると、下降工程では袋部2の弾性部材によって形成されている部分が縮んだ状態になることで袋部2がよりコンパクトになり、水底地盤Bの土砂Sを掬う作業をより円滑に行い易くなる。また、上昇工程では袋部2がバケットシェル11の内側の形状やバケットシェル11内の土砂Sの形状に合わせて変形し易くなるので、バケットシェル11内の余剰水Wをより効果的に排出するには有利になる。
【0033】
袋部2の外面の少なくとも一部を被覆する保護部3を有すると、掘削した土砂Sや石が袋部2に接触することを保護部3によって防ぐことができるので、袋部2が破損するリスクを低減するには有利になる。また、伸縮性を有する素材で形成した袋部2の一部に保護部3を付設することで、袋部2の伸縮性を維持しつつ、耐久性を簡易に高めることができる。保護部3が袋部2に追従して変形可能な構成にすると、袋部2および保護部3がバケットシェル11に取り込まれた土砂Sの形状に合わせて変形するので、バケットシェル11内の余剰水Wを効果的に排出するには有利になる。
【0034】
アタッチメント1がバルブ5を有する構成にすると、浚渫する想定土砂量に応じて袋部2に注入する気体Gの量や袋部2の内圧を適宜調整することが可能になるので、浚渫作業の作業性を確保しつつ、余剰水を効果的に低減するにはより有利になる。バルブ5は、例えば、袋部2の内圧が所定の閾値を超えると袋部2の内圧が閾値以下になるまで袋部2の内部の気体Gが排出される内圧調整機構を有する構成にすることもできる。内圧調整機構を有すると、袋部2に想定よりも大きな圧力がかかった場合にも、袋部2の内圧が過大になることを回避して袋部2が破裂することをより確実に回避できる。
【0035】
袋部2がバケットシェル11に対して着脱可能な構成であると、水底地盤Bを深掘する深掘時にはバケットシェル11から袋部2を取外しておくことができるので、深掘時に使用するグラブバケット10と仕上げ掘り時に使用するグラブバケット10とを別々に用意する必要がなくなる。深掘時と仕上げ掘り時とでグラブバケット10を交換する作業も不要になるので、浚渫作業の効率性を向上させるには有利になる。
【0036】
図6および図7に例示するように、本発明では、例えば、袋部2に設けられたバルブ5に連結管6を介して給排気装置8を接続した状態で浚渫作業を行うこともできる。この実施形態では、バケットシェル11の内側に水圧を検知する内圧検知器7が設置されていて、内圧検知器7の検知データに基づいて給排気装置8が制御される構成になっている。
【0037】
図6に示すように、この実施形態では、グラブバケット10を水底地盤Bに向かって降下させる降下工程では、給排気装置8により袋部2に封入されている気体Gを排気することで袋部2を収縮させる。より具体的には、内圧検知器7によって検知された水圧が高くなるほど、給排気装置8により袋部2に封入されている気体Gを減少させる制御が行なわれる。そして、袋部2を収縮させた状態で、一対のバケットシェル11を閉じて水底地盤Bの土砂Sを掬う。
【0038】
次いで、グラブバケット10を水上に向かって上昇させる上昇工程では、給排気装置8により袋部2に気体Gを注入することで袋部2の収縮状態を緩和させる。そして、グラブバケット10を水面付近まで上昇させるまでに袋部2を膨張させて、バケットシェル11内の余剰水Wをバケットシェル11の外部に排出する。より具体的には、内圧検知器7によって検知された水圧が低くなるほど、給排気装置8により袋部2に封入されている気体Gを増加させる制御が行なわれる。次いで、グラブバケット10を水上に揚げて土運船上などに移動させ、一対のバケットシェル11を開いて土砂Sと余剰水Wを排出する。
【0039】
このように、バルブ5に連結管6を介して給排気装置8を接続した状態で浚渫作業を行うと、例えば、水底地盤Bの水深が比較的浅い水域で浚渫作業を行う場合にも、袋部2から気体Gを排気することで、袋部2をより小さく収縮させることができる。それ故、掘削時にバケットシェル11内の収容積をより大きく確保することが可能になり、掘り残しや土砂Sがバケットシェル11内に取り込まれ難くなる不具合が発生する可能性をより低くできる。上昇工程では、給排気装置8により袋部2に気体Gを注入することで、袋部2をより大きく膨張させることが可能となる。それ故、袋部2によるバケットシェル11内の収容積の変化量を大きくすることができ、浚渫作業の作業性を確保しつつ、余剰水Wを低減するにはより有利になる。
【0040】
さらに、バケットシェル11に設置した内圧検知器7の検知データに基づいて給排気装置8が制御される構成にすると、水圧が高い水深で袋部2に過剰に気体Gが注入されて給排気装置8や袋部2に過度な負荷がかかることや、水圧が低い水深で袋部2が過剰に膨張して袋部2が破損するリスクを低減できる。なお、この実施形態では、内圧検知器7の検知データに基づいて給排気装置8が自動制御させる場合を例示したが、内圧検知器7の検知データに基づいて管理者が給排気装置8を人為的に操作することもできる。また、内圧検知器7に代えて、例えば、グラブバケット10が位置する水深を測定する深度検知器を設けて、深度検知器の測定値に基づいて袋部2に対する気体Gの注入量を調整する構成にすることもできる。
【0041】
図8および図9に本発明に係る別の実施形態のアタッチメント1およびグラブバケット10を例示する。
【0042】
この実施形態のアタッチメント1は、袋部2の内部空間を複数の隔室(空間)に区分けする隔壁2bを有している。隔壁2bによって区分けされているそれぞれの隔室にバルブ5が設けられていて、それぞれの隔室ごとに気体Gの注入量を調整できる構成になっている。
【0043】
このように、袋部2に隔壁2bを設けると、例えば、袋部2の一部に穴が開いてしまった場合にも、気体Gが抜ける範囲を穴が開いた一部の隔室に限定することができ、他の穴が開いていない隔室の機能を維持できる。それ故、浚渫作業を中断させるリスクを低減でき、浚渫作業を効率的に行うにはより有利になる。
【0044】
また、例えば、隔壁2bによって区分けされているそれぞれの隔室ごとに気体Gの注入量や内圧を変えて隔室ごとの膨張具合を変えることで、グラブバケット10に取り込まれている余剰水Wを排水箇所に誘導して、余剰水Wをより効果的に排出することも可能になる。具体的には、例えば、バケットシェル11の開口端14から遠い隔室の気体Gの注入量を比較的多く設定し、開口端14に近い隔室の気体Gの注入量を比較的少なく設定して、袋部2が開口端14から遠い隔室から開口端14に近い隔室に向かって順に膨むようにする。このようにすると、上昇工程において袋部2によって余剰水Wを開口端14に向かって誘導することができ、余剰水Wをより効率的に外部に排出することが可能になる。
【0045】
図10に本発明に係るさらに別の実施形態のアタッチメント1およびグラブバケット10を例示する。
【0046】
図10に示すように、バケットシェル11の内壁12に、バケットシェル11を補強する補強リブ13が設けられている場合がある。一般的な補強リブ13は、格子状に配設されていて、内壁12から内側に突出している。この実施形態では、補強リブ13によって区分されている複数の区画にそれぞれ袋部2を配設している。それぞれの袋部2、取付け機構4およびバルブ5の構成は図1~5に例示した実施形態と概ね同じである。
【0047】
このように、バケットシェル11の内壁12に複数の袋部2が配設されている構成にすると、例えば、ある袋部2に穴が開いてしまった場合にも、その他の穴が開いていない袋部2の機能を維持できる。それ故、浚渫作業を中断させるリスクを低減でき、浚渫作業を効率的に行うにはより有利になる。また、バケットシェル11に取付ける袋部2の数を変更することで、浚渫する土砂量や排出する余剰水Wの量を調整できるので、現場の状況に応じてより臨機応変に対応することが可能になる。
【0048】
また、例えば、それぞれの袋部2ごとに袋部2の伸縮性の高さや気体Gの注入量を変えて袋部2ごとの膨張具合を変えることで、バケットシェル11に取り込まれた余剰水Wを排水箇所に誘導して、余剰水Wをより効果的に排出することも可能になる。具体的には、例えば、開口端14から遠い袋部2から開口端14に近い袋部2に向かって順に膨らむようにする。このようにすれば、上昇工程において複数の袋部2により余剰水Wを開口端14に向かって誘導することができ、余剰水Wをより効率的に外部に排出することが可能になる。
【0049】
バケットシェル11の内壁12に補強リブ13が設けられている場合にも、例えば、バケットシェル11の内壁12に、補強リブ13以上に内側に突出する固定部材4aを溶接やボルト接合等によって固定することで、補強リブ13の影響を排除して袋部2を、補強リブ13を跨ぐように取付けることも可能である。
【0050】
なお、グラブバケット10に取付ける袋部2のサイズや個数、配置などは上記の実施形態に限定されず、バケットシェル11の形状やサイズなどに応じて適宜決定することができる。例えば、左右のバケットシェル11で異なるサイズの袋部2を取付けることもできるし、片方のバケットシェル11のみに袋部2を取付けることもできる。仕上げ掘りに限らず、アタッチメント1を装着したグラブバケット10で他の浚渫作業を行うこともできる。また、例えば、仕上げ掘りを行う前の深堀作業時にバケットシェル11に予め袋部2を取付けておき、深堀作業時は袋部2に収容する気体Gの量を少なく設定する。そして、仕上げ掘り時に袋部2に気体Gを注入することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 グラブ浚渫用アタッチメント
2 袋部
2a 連結部
2b 隔壁
3 保護部
4 取付け機構
4a 固定部材
4b 取付け具
5 バルブ
6 連結管
7 内圧検知器
8 給排気装置
10 浚渫用グラブバケット
11 バケットシェル
12 内壁
13 補強リブ
14 開口端
G 気体
S 土砂
W 水
B 水底地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10