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特開2023-41540MEMS異物検出素子及び、MEMS異物検出素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041540
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】MEMS異物検出素子及び、MEMS異物検出素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20230316BHJP
   G01F 1/692 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
G01F1/692 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148965
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】521515735
【氏名又は名称】MMIセミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】桃谷 幸志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓馬
【テーマコード(参考)】
2F035
2G060
【Fターム(参考)】
2F035EA08
2F035EA10
2G060AA18
2G060AE20
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG10
2G060GA01
2G060JA07
2G060KA09
(57)【要約】
【課題】MEMS流量測定装置等の微小測定装置にも適用可能であり、流体に含まれる異物を検出することで、測定における異物の影響を排除し、より高精度な測定が可能な技術を提供する。
【解決手段】流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子であって、シリコン基板(2)と、シリコン基板(2)上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の検出用電極(3、4)と、前記複数の検出用電極の各々を外部と接続するための端子部と、を備え、前記複数の検出用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯(3a、4a)が所定間隔を介して交互に平行に並ぶように配置された。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子であって、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の検出用電極と、
を備え、
前記複数の検出用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置されたことを特徴とする、MEMS異物検出素子。
【請求項2】
前記所定間隔は、0.2μm以上、20μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項3】
前記検出用電極の厚みは、0.1μm以上、5μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項4】
前記第1の絶縁膜は、前記検出用電極の前記櫛歯における歯の下部に配置されており、前記櫛歯における歯の下部に配置された前記第1の絶縁膜の幅は、前記櫛歯における歯の幅より小さく形成されたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項5】
前記第1の絶縁膜の厚みは、0.1μm以上、5μm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項6】
前記複数の検出用電極の各々を外部と接続するための端子部をさらに備え、
前記端子部は、該MEMS異物検出素子において、前記複数の検出用電極の前記櫛歯における歯の延びる方向の端部に配置されたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項7】
前記検出用電極の表層には、第2の絶縁膜が形成されており、該第2の絶縁膜の厚みは、前記検出用電極の厚み以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項8】
前記複数の検出用電極の前記櫛歯における歯の延びる方向が、前記流体の流れ方向に垂直に配置されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項9】
前記複数の検出用電極における特定の二つの間の静電容量または該静電容量の変化量を測定することで、前記流体における異物が検出されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項10】
前記第1の絶縁膜上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の参照用電極をさらに備え、
前記複数の参照用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置されるとともに、前記特定の二つの参照用電極の櫛歯における歯どうしの間の空間には、誘電体層を介在させたことを特徴とする、請求項1に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項11】
前記複数の参照用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置された領域が、前記誘電体層で覆われ、前記誘電体層の表面の表
面凹凸が0.1μm以下であることを特徴とする、請求項10に記載のMEMS異物検出素子。
【請求項12】
流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子を半導体製造工程によって製造する、MEMS異物検出素子の製造方法であって、
シリコン基板に、該シリコン基板を覆う第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1の絶縁膜の上に、導電体膜を形成する導電体膜形成工程と、
前記導電体膜から、複数の櫛歯状の電極を形成する電極形成工程と、
を有し、
前記導電体膜形成工程においては、前記複数の櫛歯状の電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように形成されることを特徴とする、MEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1の絶縁膜が、前記櫛歯状の電極の前記櫛歯における歯の下部において、該第1の絶縁膜の幅が、前記櫛歯における歯の幅より狭くなるようにエッチングする、第1のエッチング工程をさらに有することを特徴とする、請求項12に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項14】
前記櫛歯状の電極の表層に、第2の絶縁膜を形成する、第2絶縁膜形成工程をさらに有し、
前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第2の絶縁膜の厚みが、前記櫛歯状の電極の厚み以下となるように前記第2の絶縁膜が形成されることを特徴とする、請求項12または13に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1絶縁膜形成工程において形成される第1の絶縁膜と、前記第2絶縁膜形成工程において形成される前記第2の絶縁膜とは、異なる材質であることを特徴とする、請求項14に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項16】
前記導電体膜形成工程において、前記導電体膜は、多結晶シリコン、単結晶シリコン、アモルファスシリコンのいずれかによって形成されることを特徴とする、請求項12から15のいずれかに記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1絶縁膜形成工程において、前記第1の絶縁膜を、酸化シリコン膜によって形成することを特徴とする、請求項12から16のいずれかに記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項18】
前記第2絶縁膜形成工程において、前記第2の絶縁膜を、窒化シリコン膜によって形成することを特徴とする、請求項14に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項19】
前記電極形成工程においては、互いの櫛歯における歯が所定間隔を介して交互に平行に並ぶように形成される特定の二つの櫛歯状の電極の組が複数組形成され、
前記複数組の櫛歯状の電極の組のうちの一部における、前記所定間隔で交互に平行に並ぶように形成される歯の間の空間を埋める誘電体層を形成させる誘電体層形成工程を、をさらに有することを特徴とする、請求項12から18のいずれか一項に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項20】
前記誘電体層形成工程においては、前記複数組の櫛歯状の電極の組のうちの前記一部が覆われるように前記誘電体層が形成され、
前記誘電体層の表面を平坦化する、平坦化工程をさらに有することを特徴とする、請求
項19に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【請求項21】
前記誘電体層形成工程においては、前記誘電体層は、酸化シリコン膜によって形成されることを特徴とする、請求項19または20に記載のMEMS異物検出素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で製造され異物の検出が可能なMEMS異物検出素子及び、MEMS異物検出素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体の流速又は流量を算出する流量測定装置が知られている。この流量測定装置としては、例えば、ヒータおよび温度センサを備え、流体の流れによって変化する温度分布を温度センサが検出することにより、流体の流速又は流量を算出する熱式の流量測定装置が提案されていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上述のような熱式の流量測定装置では、時間の経過とともに、温度センサ表面に塵埃等の異物が付着し、温度センサにより検出される温度分布が影響を受けることで、流量測定の特性が変化してしまう場合があった。そのため、流量測定装置の精度が低下したり、流量測定装置自体の使用環境が清浄気体の計測等に制限される場合があった。また、ヒータおよび温度センサがメンブレン(薄膜)に設けられたような場合には、異物がメンブレンに付着することで、その熱伝導率や熱容量が変化してしまうため、異物が装置の故障の原因となる。このため、流量測定装置においては、異物に対する耐性を有していること、もしくは異物による故障を検出する機能が求められている。
【0004】
この異物の存在を検出する異物検出素子に関しては、例えば、静電容量型の検出電極部と、この検出電極部と接続された処理回路を備えたセンサ装置であり、検出電極部は、複数の電極指が所定の間隔で略平行に対峙して静電容量を形成する櫛歯状の分岐部を有しており、この分岐部は、電極指の電極幅が第1の電極幅からなる第1の分岐部と、第1の電極幅より広い第2の電極幅からなる第2の分岐部を有する構成としたものが公知である。(例えば、特許文献1を参照。)
【0005】
特許文献1に記載の技術は、例えば、コピー機の現像剤容器等に適用されるものであり、容器の形状にかかわらず適用可能で、粉体量の測定精度と耐ノイズ性を向上できるという効果を有する。しかしながら、当該技術は、特に、現像剤容器等に収納された現像剤の量等の容器内に充填される粉体の量を検出する装置に関するものであり、気体等の流体に含まれる異物を検出することは困難であった。
【0006】
また、粒子状物質検出装置であって、検出用の電極の形状を櫛歯状にし、櫛歯状の電極の櫛骨部を誘電体によって被覆することにより、櫛歯部分の一端を連結する部分(櫛骨部)と、これに対向する櫛歯部分との間隔までを均一にし、装置の測定精度向上を可能とする技術が公知である。(例えば、特許文献2を参照。)しかしながら、特許文献2に記載の技術は、自動車の排ガスの粒子状物質の検出を主たる目的としており、装置が大型で、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)フローセンサ等の小型の装置に対して適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-129470号公報
【特許文献2】特開2013-50577号公報
【特許文献3】特許第5542006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、MEMS流量測定装置等の微小測定装置にも適用可能であり、流体に含まれる異物を検出することで、測定における異物の影響を排除し、より高精度な測定が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、
流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子であって、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の検出用電極と、
を備え、
前記複数の検出用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置されたことを特徴とする、MEMS異物検出素子である。
【0010】
これによれば、半導体製造工程(MEMS製造プロセス)において形成された、微小なサイズの櫛歯状の電極パターンからなる検出用電極によって、異物検出を行うことができる。そうすると、通常の大気などに含まれる、特に微小な異物に対しても、高感度な検出を行うことが可能となる。なお、ここにおける流体には空気、水等の自然界に存在する流体の他、特定成分の濃度を意図的に高めた気体及び液体を含む。
【0011】
本発明においては、前記所定間隔は、0.2μm以上、20μm以下であってもよい。また、前記検出用電極の厚みは、0.1μm以上、5μm以下であってもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記第1の絶縁膜は、前記検出用電極の前記櫛歯における歯の下部に配置されており、
前記櫛歯における歯の下部に配置された前記第1の絶縁膜の幅は、前記櫛歯における歯の幅より小さく形成されるようにしてもよい。
【0013】
これによれば、第1の絶縁膜と検出用電極の櫛歯における歯によって、上部の方がせり出した庇構造を形成させることができる。この庇構造の庇の下部には異物が付着・堆積し易くなるので、より高感度に異物の検出を行うことが可能となる。なお、上記の第1の絶縁膜の厚みは、0.1μm以上、5μm以下としてもよい。
【0014】
また、本発明においては、前記複数の検出用電極の各々を外部と接続するための端子部をさらに備え、
前記端子部は、該MEMS異物検出素子において、前記複数の検出用電極の前記櫛歯における歯の延びる方向の端部に配置されるようにしてもよい。
【0015】
本発明におけるMEMS異物検出素子は、櫛歯における歯の延びる方向が、後述のように、流体の流れに垂直方向となるように配置することで、異物の検出感度は向上する。それは、櫛歯における歯の段差に異物が付着し易いという特性による。そして、端子部を、MEMS異物検出素子において、前記複数の検出用電極の前記櫛歯における歯の延びる方向の端部に配置することで、仮に端子部に電気線を接続させた場合でも、櫛歯における歯の近傍の流体の流れを乱すことを防止でき、より高感度に異物検出を行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、前記検出用電極の表層には、第2の絶縁膜が形成されており、該第2の絶縁膜の厚みは、前記検出用電極の厚み以下であることとしてもよい。これによれば、保護膜が、二つの櫛歯における歯の間に生じる静電容量に影響を及ぼすことを防
止できる。
【0017】
また、本発明においては、前記複数の検出用電極の前記櫛歯における歯の延びる方向が、前記流体の流れ方向に垂直に配置されることとしてもよい。前述のように、このことで、異物検出の感度を向上させることが可能である。
【0018】
また、本発明においては、前記複数の検出用電極における特定の二つの間の静電容量または該静電容量の変化量を測定することで、前記流体における異物が検出されるようにしてもよい。本発明においては、二つの櫛歯における歯の間に生じる静電容量が異物により変化することを利用して、異物を検出する。よって、特定の二つの検出用電極の間の静電容量または該静電容量の変化量を測定することで、感度よく異物の検出を行うことが可能である。
【0019】
また、本発明においては、前記第1の絶縁膜上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の参照用電極をさらに備え、
前記複数の参照用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置されるとともに、前記特定の二つの参照用電極の櫛歯における歯どうしの間の空間には、誘電体層を介在させるようにしてもよい。
【0020】
ここで、特定の二つの参照用電極の櫛歯における歯どうしの間の空間に誘電体層を介在させることで、二つの参照用電極の櫛歯における歯の間に、異物が付着することを防止できる。そうすると、櫛歯における歯どうしの間に誘電体層が設けられた二つの参照用電極の静電容量をレファレンスとすることで、二つの検出用電極により生じる静電容量の変化を精度よく測定することができる。その結果、より精度よく、異物の検出を行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、前記複数の参照用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置された領域が、前記誘電体層で覆われ、前記誘電体層の表面の表面凹凸が0.1μm以下であることとしてもよい。
【0022】
ここで、特定の二つの参照用電極の櫛歯における歯どうしの間の空間に誘電体層を介在させた場合であって、例えば、二つの参照用電極の櫛歯を誘電体層で覆った場合には、誘電体層の表面に、櫛歯における歯に対応する凹凸が生じる場合がある。このような場合には、当該凹凸に異物が付着し易く、二つの参照用電極による静電容量がこの異物により変化してしまう虞がある。
【0023】
これに対し、本発明においては、二つの参照用電極の櫛歯を覆う誘電体層の表面の凹凸を0.1μm以下とした。これにより、誘電体層への異物の付着を抑制でき、二つの参照用電極による静電容量が変化してしまうことを抑制することが可能となる。
【0024】
また、本発明は、流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子を半導体製造工程によって製造する、MEMS異物検出素子の製造方法であって、
シリコン基板に、該シリコン基板を覆う第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1の絶縁膜の上に、導電体膜を形成する導電体膜形成工程と、
前記導電体膜から、複数の櫛歯状の電極を形成する電極形成工程と、
を有し、
前記導電体膜形成工程においては、前記複数の櫛歯状の電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯が所定間隔を介して交互に平行に並ぶように形成されることを特徴とする、MEMS異物検出素子の製造方法であってもよい。
【0025】
また、本発明においては、
前記第1の絶縁膜が、前記櫛歯状の電極の前記櫛歯における歯の下部において、該第1の絶縁膜の幅が、前記櫛歯における歯の幅より狭くなるようにエッチングする、第1のエッチング工程をさらに有することとしてもよい。
【0026】
また、本発明においては、前記櫛歯状の電極の表層に、第2の絶縁膜を形成する、第2絶縁膜形成工程をさらに有し、
前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第2の絶縁膜の厚みが、前記櫛歯状の電極の厚み以下となるように前記第2の絶縁膜が形成されることとしてもよい。
【0027】
また、本発明においては、前記第1絶縁膜形成工程において形成される第1の絶縁膜と、前記第2絶縁膜形成工程において形成される前記第2の絶縁膜とは、異なる材質であることとしてもよい。
【0028】
また、本発明においては、前記導電体膜形成工程において、前記導電体膜は、多結晶シリコン、単結晶シリコン、アモルファスシリコンのいずれかによって形成されることとしてもよい。
【0029】
また、本発明においては、前記第1絶縁膜形成工程において、前記第1の絶縁膜を、酸化シリコン膜によって形成することとしてもよい。
【0030】
また、本発明においては、前記第2絶縁膜形成工程において、前記第2の絶縁膜を、窒化シリコン膜によって形成することとしてもよい。
【0031】
また、本発明においては、前記電極形成工程においては、互いの櫛歯における歯が所定間隔を介して交互に平行に並ぶように形成される特定の二つの櫛歯状の電極の組が複数組形成され、
前記複数組の櫛歯状の電極の組のうちの一部における、前記所定間隔で交互に平行に並ぶように形成される歯の間の空間を埋める誘電体層を形成させる誘電体層形成工程を、をさらに有することとしてもよい。
【0032】
また、本発明においては、誘電体層形成工程においては、前記複数組の櫛歯状の電極の組のうちの前記一部が覆われるように前記誘電体層が形成され、
前記誘電体層の表面を平坦化する、平坦化工程をさらに有することとしてもよい。
【0033】
また、本発明においては、誘電体層形成工程においては、前記誘電体層は、酸化シリコン膜によって形成されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、MEMS流量測定装置等の微小測定装置にも適用可能であり、流体に含まれる異物を検出することで、測定における異物の影響を排除し、より高精度な測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施例1に係る異物検出素子の基本原理について説明するための図である。
図2】本発明の実施例1における異物検出素子の基本構造を示す図である。
図3】本発明の実施例1における櫛歯構造を有する2つの電極間の静電容量の、粉塵試験前後における変化の例を示すグラフである。
図4】本発明の実施例1における異物検出素子の断面図と、電極の歯の拡大断面図である。
図5】本発明の実施例1における異物検出素子の使用状態の例を示す図である。
図6】本発明の実施例1における異物検出素子の製造工程を示す第1の図である。
図7】本発明の実施例1における異物検出素子の製造工程を示す第2の図である。
図8】本発明の実施例2における参照電極の概略図である。
図9】本発明の実施例2における参照電極の断面図である。
図10】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極とを用いたブリッジ回路について示す図である。
図11】本発明の実施例2におけるブリッジ回路25における異物検出の動作を確認した結果のグラフである。
図12】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極の第1の配置態様を示す図である。
図13】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極の第2の配置態様を示す図である。
図14】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極の第3の配置態様を示す図である。
図15】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極の第4の配置態様を示す図である。
図16】本発明の実施例2における異物検出素子と参照電極とが並べて配置されている場合の異物検出チップ10の断面図である。
図17】本発明の実施例2における異物検出素子の製造工程を示す第1の図である。
図18】本発明の実施例2における異物検出素子の製造工程を示す第2の図である。
図19】本発明の実施例2における異物検出素子の製造工程を示す第3の図である。
図20】本発明の実施例3における異物検出チップの第1の概略図である。
図21】本発明の実施例3における異物検出チップの第2の概略図である。
図22】本発明の実施例3における異物検出素子と流量測定素子とが並べて配置されている場合の異物検出チップの断面図である。
図23】本発明の実施例3における異物検出素子の製造工程を示す第1の図である。
図24】本発明の実施例3における異物検出素子の製造工程を示す第2の図である。
図25】本発明の実施例3における異物検出素子の製造工程を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<適用例>
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
本適用例に係る異物検出素子は、図1に示すように、電位の異なる2つの電極201、202の周囲を流れる流体に異物Pが含まれていた場合、電極201、202の間に異物が付着し堆積することにより、電極201、202によって生じる静電容量が変化することを利用する素子であり、静電容量の変化の度合いを検出することで、異物の存在を検出する。
【0038】
MEMS異物検出素子1(以下、単に異物検出素子ともいう。)は、図2に示すように、半導体製造工程(MEMSプロセス)によって、シリコン基板2上に、電極3、4を形
成することで作製されている。この電極3、4は、櫛歯状の構造を有し、電極3、4における櫛歯構造の歯3a、4aは、その並び方向について、互いに平行に交互に並ぶように配置される。そして、櫛歯の歯が延びる方向に垂直な方向(櫛歯の並び方向)に流れる流体に異物が含まれており、異物検出素子1がこの流体に曝された場合には、電極3、4の歯3a、4aにおける段差部分に異物が付着し堆積する。異物検出素子1では、電極3、4間の静電容量の変化を測定する。
【0039】
本適用例において、歯3a、4aの表面は、図4に示すように、非導電体から形成される保護膜6で覆われる。これにより、異物に導電体が含まれていた場合の、歯3a、4aの間(静電電極間)の電気的リークを防止することができる。その際、保護膜6をSiOやSiN膜のようなシリコン系誘電体膜とすることで、半導体プロセスで薄膜を形成し易くなる。
【0040】
また、本適用例では、歯3a、4aと基板2との間には絶縁層からなる土台膜5が形成されており、この土台膜5の幅が歯3a、4aの幅より狭い庇構造となっている。このことで、庇により窪んだ部分に異物が挟まって付着し易くすることができ、異物の検出感度を向上させることができる。なお、このことにより、基板2と電極3、4の歯3a、4aの間の距離を大きくし、寄生容量の影響を小さくできるという副次的な効果もある。本適用例において、土台膜5の高さは0.1μm~5μmがより好適である。また、歯間距離は、0.2~20μmがより好適である。
【0041】
図5は、異物検出素子1の使用状態の例を示す図である。この場合、プリント基板30にチップコンデンサなどを形成することで、異物の検出回路を容易に形成することが可能である。その際、図5に示すように、異物検出素子1の電極端子7と、プリント基板30とを接続するワイヤ7a、7bは、流体の流れを阻害しないように、流体の進行方向に対して垂直方向の端部に設けられた電極端子7から、同方向に延びるように配置されている。
【0042】
本適用例では、半導体製造工程により異物検出素子1を作製するため、異物検出素子1の作製(寸法)バラツキを小さくし易い。すなわち、微細な電子回路を形成する加工技術であるため、寸法バラツキをミクロンオーダー以下に抑えることができ、加工精度を向上させることが可能である。また、本実施例における異物検出素子1によれば、自然下の大気における微小粒子等を高感度で検出することができ、また、装置も大幅に小型化することができる。さらに製造工程を自動化することができ、コスト低減が可能となる。
【0043】
なお、図8に示すように、異物検出素子1と同等の構造を有する素子の表面を、誘電体膜9で覆った構造を有する参照電極11を用いることで、測定精度を向上させることが可能である。この参照電極11は、異物検出素子1を誘電体膜9で覆うことで、参照電極11における電極3、4の歯3a、4aの間に異物が付着し難くしたものである。すなわち、異物検出素子1における静電容量の変化を、異物が付着しづらい参照電極11における静電容量変化と比較することで、より精度よく、異物の付着を検出することができる。
【0044】
図9(a)に示すように、参照電極11においては、誘電体膜9の表面には異物検出素子1の電極3、4及び、櫛歯構造の歯3a、3bに対応する部分に段差9aが生じる場合があるが、電極の歯3aと4aの間は、誘電体膜9で覆われているため異物による静電容量の変化は大幅に低減する。さらに、図9(b)に示すように、誘電体膜9の成膜後に、CMP法(化学機械研磨)などにより誘電体膜9の平坦化処理を行うことで、誘電体膜9の表面にさらに異物が付着しづらくすることができ、参照電極11における静電容量の変化をさらに低減することが可能である。
【0045】
<実施例1>
以下では、本発明の実施例に係る異物検出素子について、図面を用いて、より詳細に説明する。
【0046】
〔基本原理〕
図1を用いて、本実施例に係る異物検出素子の基本原理について説明する。図1(a)、(b)は、基板200上に互いに電位差を有する電極201及び202が配置された場合の断面図を示す。この電極201、202は、図1の紙面に垂直方向に延びる棒状の構造を有するとする。この場合、図1(a)に示すように、電位の異なる2つの電極201、202の間には電界が生じ、この2つの電極によって静電容量が生じる。
【0047】
そして、図1(b)に示すように、この電極201、202の周囲を流れる空気等の流体に異物Pが含まれていた場合、電極201、202の段差部分に異物が付着し易い。そして、電極201、202の間に異物が付着し堆積することにより、電極201、202で生じる静電容量は変化する。この変化の度合いを検出することで、異物の存在を検出することが可能である。
【0048】
図2には、本実施例における異物検出素子1の基本構造を示す。図2(a)は異物付着前の状態、図2(b)は異物付着後の状態を示す。図2(a)、(b)において、上段の図は素子全体の斜視図、下段の図は白矢印方向から見た断面図である。異物検出素子1は、半導体製造工程(後述)によって、シリコン基板2(以下、単純に基板2ともいう)上に、電極3、4を形成することで作製されている。この電極3、4は、櫛歯状の構造を有し、電極3、4における櫛歯構造の歯3a、4aは、図2(a)に示すように、その並び方向について、互いに平行に交互に並ぶように配置される。ここで、歯3a、4aの間の距離(以下、歯間距離ともいう。)は、本実施例において「所定間隔」に相当する。
【0049】
そして、例えば、櫛歯の歯が延びる方向に垂直な方向(櫛歯の並び方向)に流れる流体に異物が含まれており、異物検出素子1がこの流体に曝された場合には、電極3、4の歯3a、4aにおける段差部分に異物が付着し堆積する。そして、この異物の存在により、電極3、4によって生じる静電容量が変化する。この変化を測定することで、異物の存在または量を検出することが可能である。本実施例において電極3、4は検出用電極に相当する。
【0050】
図3には、櫛歯構造を有する2つの電極間の静電容量の、粉塵試験前後における変化の例を示す。図に示す例では、粉塵試験前後で静電容量が20%以上増加することが確認されている。
【0051】
電極3、4の櫛歯構造の歯のサイズは、厚さ0.1~10μm、幅0.1μm~10μm、歯間距離0.1~100μmとしてもよい。また、歯の長さは10μm~1mmとしてもよい。歯数は各々5~500本であってもよい。例えば、厚さ2μm、幅2μm、歯間距離2μm、対向する歯の長さ400μmで、歯数が各々50本とした場合に、400μm×400μmのエリアにおいて、1pFの静電容量を得ることができる。そして、この場合には、例えば500μm×600μm×400μm(厚み)という程度の、非常に小型の素子サイズを実現することが可能である。
【0052】
なお、本実施例における異物検出素子1では、歯間距離によって、検出感度やサイズが変化する。歯間距離は、0.2~20μmがより好適である。歯間距離を小さくすれば、静電容量が大きくなるため異物が付着したときの容量変化が大きくなり検出感度が向上する。また、電極自体を小型化することができる。しかしながら、歯間距離が過度に小さい場合には、大きな異物を捕捉することができなくなる。また、加工寸法のバラツキの影響
を受け易くなる。これらより、0.2μm以上の電極間距離が望ましい。0.2μmより小さい異物については素子への影響があまりないと考えらえる。一方、歯間距離が大きいと、より大きなサイズの異物を検出することができる。比較的異物が多く含まれるようなケースで、異物の許容度が大きい場合には歯間距離が大きい方が有利と言える。しかしながら、電極自体が大きくなってしまう。これらより、20μm以下の歯間距離が望ましい。歯間距離が20μmより大きい場合には、半導体プロセスで作製すると素子が大型になったり、異物付着時の容量変化が十分に得られないことも有り得る。
【0053】
〔異物検出素子の断面図の詳細〕
図4には、異物検出素子1の断面図の一例と、特に電極3、4の歯3a、4aの拡大断面図を示す。歯3a、4aの表面は、図4に示すように、非導電体から形成される保護膜6で覆われるようにしてもよい。これによれば、異物に導電体が含まれていた場合の、歯3a、4aの間(静電電極間)の電気的リークを防止することができ、回路の保護を強化することができる。その際、保護膜6をSiOやSiN膜のようなシリコン系誘電体膜とすることで、半導体プロセスで薄膜を形成し易くなる。この保護膜6は、本実施例において第2の絶縁膜に相当する。
【0054】
また、各電極3、4の歯3a、4aの断面において、歯3a、4aと基板2との間には絶縁層からなる土台膜5が形成されており、この土台膜5の幅が歯3a、4aの幅より狭い庇構造としてもよい。このようにすることで、庇により窪んだ部分に異物が挟まって付着し易くすることができ、異物の検出感度を向上させることができる。
【0055】
なお、この場合、各電極3、4における歯3a、4aの間には、シリコン基板を介した寄生容量が生じており、この寄生容量は、異物が付着しても変動しないことから、電気的な感度を低下させる要因となる。これに対し、電極の歯3a、4aと基板2との間に、土台膜5を形成することで基板2と電極3、4の歯3a、4aの間の距離を大きくし、寄生容量の影響を小さくすることが可能である。
【0056】
また、庇構造の下層の土台膜5の高さによって、検出感度や生産性が変化する。土台膜5の高さは0.1μm~5μmがより好適である。土台膜5の高さが低いと、作製プロセスが容易である。成膜やエッチングの時間が短くなる。また、半導体製造工程で庇構造を作製する際に、アンダーカット量(横方向のエッチングの進む距離)を制御し易い。一方、土台膜5の高さが低いと、基板2の寄生容量が大きくなってしまい、電気的に感度が低くなる。また、土台膜5+歯3a、4aの合計高さが低くなるため、異物の捕捉性が悪くなる。これらの理由により、土台膜5の高さは0.1μm以上が望ましい。
【0057】
一方、土台膜5の高さが高いと、感度の点で有利である。段差が大きくなるため、異物を捕捉し易くなる。また、基板2の寄生容量を低減することができ、電気的な感度を得やすい。一方、土台膜5が厚いと製造工程において長時間の成膜やエッチングが必要となったり、庇構造の形状安定性が確保し難くなる。これらより、5μm以下の高さが望ましい。
【0058】
図5は、異物検出素子1の使用状態の例を示す図である。図5(a)は、異物検出素子1の使用状態を上面から見た図である。図5(b)は、プリント基板30に搭載された異物検出素子1の使用状態の斜視図である。異物検出素子1は櫛歯状の電極3、4を一組有する素子としている。この場合、プリント基板30にチップコンデンサなどを形成することで、検出回路を形成することが可能である。その際、図5(b)に示すように、異物検出素子1の電極端子7と、プリント基板30とを接続するワイヤ7a、7bは、流体の流れを阻害しないように、流体の進行方向に対して垂直方向の端部に設けられた電極端子7から、同方向に延びるように配置されている。
【0059】
〔異物検出素子の作製プロセス〕
以下、図6及び図7を用いて、異物検出素子1の半導体製造工程による作成プロセスについて説明する。
【0060】
(1)工程1
図6(a)に示すように、基板2となるべき単結晶シリコン基板12に、土台膜5となる誘電体膜(SiO)15を厚さ1μmで成膜する。同様に、単結晶シリコン基板12の底面にも絶縁層としての誘電体膜(SiO)15を成膜する。この誘電体膜は、本発明における第1の絶縁膜に相当する。また、工程1は、本実施例において第1絶縁膜形成工程に相当する。
【0061】
(2)工程2
図6(b)に示すように、電極3、4及び、電極端子7となる導電膜13を形成する。例えば、多結晶シリコン(Poly-Si)膜を厚さ2μmで成膜する。この工程は、本実施例において導電体膜形成工程に相当する。そして、成膜後に適宜、不純物を導入し抵抗値を低減する。成膜後、パターニング工程(フォトマスクによるフォトリソグラフィー、エッチング)によって、電極3、4(歯3a、4a)のパターンを形成する。その際、例えば上述のように、歯幅が2μmで、歯間距離が2μmとする。各々の歯の長さ400μmとしてもよい。この工程は、本実施例において電極形成工程に相当する。なお、導電膜13は、多結晶シリコンの他、単結晶シリコンやアモルファスシリコンによって形成しても構わない。
【0062】
(3)工程3
図7(a)に示すように、パターニング工程にて、各電極3、4及び電極端子7の周囲の誘電体膜15を除去する。その際、Poly-Siの導電膜13のうち、電極3、4となる部分にマスクしてSiOの誘電体膜15を等方性エッチングすると、図7(a)に示すような庇構造とすることができる。例えば、1μm厚の誘電体膜15を等方性エッチングすることで、土台膜5に片側1μmのアンダーカットを生成することができる。工程3は、本実施例において第1のエッチング工程に相当する。
【0063】
(4)工程4
図7(b)に示すように、電極3、4の保護膜6とすべく、全体にSiN膜16を0.1μmの厚さで成膜する。同様に、単結晶シリコン基板12の底面にも保護膜6としてのSiN膜16を成膜する。その際、成膜にLPCVD法を用いることで、庇構造を良好に被膜することができる。その後、電極3、4の周囲及び、電極端子7の表面におけるSiN膜16、電極端子7のSiN膜16を除去する。工程4は、本実施例において第2絶縁膜形成工程に相当する。
【0064】
(5)工程5
図7(c)に示すように、電極端子7の表面に金属膜8となるAu/Ti膜18を0.5μm/0.1μm厚で成膜し、パターニングを行う。
【0065】
ここで、先述の従来技術においても、櫛歯電極を用いる例があったが、櫛歯電極でコンデンサ電極を形成する場合には、静電容量のバラツキが問題になり易い。それは、電極作製プロセスにおいて、電極間の距離や厚みの出来上がり寸法にバラツキが生じるためである。特にセンサを小型化しようとすると、寸法バラツキの影響が大きくなり易く、小型化の妨げになっていた。
【0066】
そのような問題に対し、本発明では、半導体製造工程(半導体プロセス)により異物検
出素子1を作製するため、作製(寸法)バラツキを小さくし易い。すなわち、微細な電子回路を形成する加工技術であるため、寸法バラツキをミクロンオーダー以下に抑えることができ、加工精度を向上させることが可能である。
【0067】
また、先述の従来技術においては、櫛歯部の厚みが5~30μm、幅は30~400μm、歯間距離が30~400μmとされており、本実施例と比較して大型であるところ、本実施例における異物検出素子1によれば、自動車の排気ガス等ではない自然下の大気における微小粒子等を高感度で検出することができ、また、装置も大幅に小型化することができる。さらに製造工程を自動化することができ、コスト低減が可能となる。
【0068】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2においては、実施例1で説明した異物検出素子1に加えて、異物検出素子1の電極3、4間の静電容量の変化を検出しやすくするために、参照(リファレンス)電極を追加する例について説明する。
【0069】
本実施例における参照電極11は、異物が付着しづらい構造で形成された固定コンデンサとして機能する。図8には、本実施例における参照電極11の概略図を示す。図8に示すように、参照電極11は、異物検出素子1と同等の構造を有する素子の表面を、誘電体膜9で覆った構造を有する。異物検出素子1を誘電体膜9で覆うことで、参照電極11における電極3、4の歯3a、4aの間には誘電体層が介在することで異物が付着し難く、また異物が付着しても静電容量の変化が生じ難くすることが可能である。本実施例において、電極3、4の各々は参照用電極に相当する。
【0070】
図9には、参照電極11の、図8の白矢印方向から見た断面図を示す。図9(a)は、単純に異物検出素子1の表面に誘電体膜9を形成した例を示す。この場合は、誘電体膜9の表面には異物検出素子1の電極3、4及び、櫛歯構造の歯3a、3bに対応する部分に段差9aが生じる。従って、この段差9aの部分に異物が付着、堆積する可能性があるが、電極の歯3aと4aの間は、誘電体膜9で覆われているため異物による静電容量の変化は大幅に低減し、参照電極11において検出される静電容量を静電容量変化の基準値として用いることが可能である。
【0071】
図9(b)は、誘電体膜9の成膜後に、CMP法(化学機械研磨)などにより平坦化処理を行った例である。このように、誘電体膜9に平坦化処理を行うことで、誘電体膜9の表面に異物が付着しづらくすることができ、参照電極11における静電容量の変化をさらに低減することが可能である。
【0072】
参照電極11を用いることのメリットとしては、(1)異物検出素子1による出力と、参照電極11による出力とを比較することで異物検出素子1における静電容量の変化を検出するので、静電容量のバラツキをキャンセルし易い。(2)様々な検出回路と組み合わせることが可能となり、感度を得易い。等を挙げることができる。
【0073】
なお、櫛歯構造の電極3、4によってコンデンサを形成する場合、静電容量のバラツキが問題になり易い。電極3、4の作製プロセスで、歯間距離や厚みの出来上がり寸法にバラツキが生じるためである。特にセンサを小型化しようとすると、寸法バラツキの影響が大きくなり易く、小型化の妨げになっていた。
【0074】
本実施例においては、参照電極11として、異物検出素子1と同一構成の素子に誘電体膜9を形成した素子を用いるので、製造バラツキを軽減することができる。さらに、それらを同一チップ上に作製する場合には、製造バラツキを大幅に軽減することができる。半導体製造工程における主な製造バラツキの要因が、膜厚のバラツキや、パターニング(露
光、エッチング)のバラツキであり、これらは同一チップ内であれば、バラツキが小さいからである。そして、外付けのチップコンデンサを参照電極として利用する場合に比べて、参照電極11を小さくでき、全体の構成を小型にできる。また、部品コストも抑えることが可能である。
【0075】
静電容量の変化の検出回路の例としては、例えば、LC発振回路等を挙げることができる。外付けのL(コイル)と直列に接続し、交流信号を加えると、共振周波数で発振される。異物が付着し静電容量Cの値が変化すると、共振周波数が変化する。参照電極11によるLC発振回路の共振周波数と、異物検出素子1によるLC発振回路の周波数の違いを検出することで異物の付着を検出することができる。
【0076】
図10には、異物検出素子1と参照電極11とを用いたブリッジ回路25について示す。図10に示す例では、2つの異物検出素子1と、2つの参照電極11とによってブリッジ回路25を構成し、入力信号を供給することで、静電容量の変化を検出する。例えば、ブリッジ回路25におけるINPUTとGNDの間にパルス状の電圧を入力する。異物が付着すると異物検出素子1で構成されるC1とC3の静電容量が大きくなるため、OUT1とOUT2における出力電力に差が生じる。OUT1とOUT2の出力との間における位相差もしくは電圧差を検出することで、静電容量の変化、すなわち異物の付着を検出することができる。なお、図10に示すブリッジ回路25は一例であり、図10においてINPUTとGNDは逆にしても構わない。
【0077】
<ブリッジ回路の特徴>
上記のように、異物検出素子1と参照電極11とを用いてブリッジ回路25を構成することで、検出感度が大幅に向上する。一方、4つの素子が必要であるという点がデメリットであった。これに対し、本実施例では、2つの異物検出素子1と参照電極11とを、半導体製造工程で1つのチップに形成することができるため、素子数が増えても作製工数は変化しない。素子1つあたりの面積を小さくすることができ、ブリッジ回路25全体を小型化することができる。4つの素子の製造バラツキを小さくできる。等のメリットがあり、測定精度の向上と、生産効率の向上を両立することが可能である。
【0078】
図11には、回路シミュレーションにて、ブリッジ回路25における異物検出の動作を確認した結果を示す。C1、C2、C3、C4でブリッジ回路を構成している。初期状態(異物付着なし)では、全て1.0pFとした。異物が付着した状態においては、C1、C3が1.05pFになる前提とした。この状態のブリッジ回路25に電圧のパルス波を印加し、OUT1、OUT2の出力を確認した。図11(a)はパルス入力した場合の、OUT1、OUT2及び、OUT1-OUT2の変化である。図11(b)は、OUT1-OUT2を拡大した図である。C1とC3における静電容量の変化に起因して、OUT1とOUT2に差が生じ、異物の存在を検出可能であることが分かる。
【0079】
<異物検出素子と参照電極の配置態様1>
図12には、異物検出チップ10に、2つの異物検出素子1a、1bと、2つの参照電極11a、11bの4つの電極が形成されている例について示す。参照電極11a、11bは、表面が太線の矩形で示す誘電体膜で覆われている。図12の例では、異物検出素子の一極と、参照電極の一極は共有されている。これにより、異物検出チップ10の小型化を図ることができる。この場合は、異物検出チップ10が、異物検出素子1a、1bの機能をも含んだ複合的な異物検出素子に相当する。
【0080】
<異物検出素子と参照電極の配置態様2>
図13には、異物検出素子と参照電極の配置態様2について示す。図13に示すように、参照電極11a、11bは、異物検出素子1a、1bと比較して、歯数を少なくする等
の方法により、小型化されている。ここで、参照電極11a、11bを覆う誘電体膜は、参照電極11a、11bの静電容量を相対的に増大させる。このため、参照電極11a、11bにおいては異物検出素子1a、1bと比較して小さい静電容量を有するような構成にすることが可能である。
【0081】
参照電極11a、11bの静電容量を相対的に小さくする構成の例としては、(1)参照電極11a、11bの電極の歯数を減らす、あるいは長さを短くすることが考えられる。この場合には、参照電極11a、11bの面積を低減することができるため、異物検出チップ10全体のサイズを小さくすることができる。また、(2)参照電極11a、11bの櫛歯の歯間距離を大きくすることが考えられる。この場合には、歯間距離が大きいため、異物が電極間に付着したとしても容量変化が生じ難くなる。このため、参照電極として求められる、静電容量の安定性が強化される。
【0082】
参照電極11a、11bを含めてブリッジ回路を構成し、1つのチップ上に配置する場合、異物検出素子1a、1bの1つの大きさは400μm×400μm程度、参照電極11a、11bの1つの大きさは200μm×400μm程度程度であり、チップサイズは1000μm×700μm×400μm程度とすることができ、小型化が可能である。
【0083】
<異物検出素子と参照電極の配置態様3>
図14には、異物検出素子と参照電極の配置態様3について示す。図14に示すように、この態様においては、参照電極11a、11bを異物検出素子1a、1bに対して90度回転させて配置している。これにより、異物検出素子1a、1bの櫛歯構造における歯の方向が流体の流れる方向に垂直とした場合に、参照電極11a、11bにおける歯の方向が流体の流れる方向に平行とすることができる。その結果、参照電極11a、11bに異物が付着する可能性をさらに低減させることができる。
【0084】
<異物検出素子と参照電極の配置態様4>
図15には、異物検出素子と参照電極の配置態様4について示す。図15に示すように、この態様においては、異物検出素子1a、1bと参照電極11a、11bを1列に並べて配置している。図15(a)は、異物検出素子1a、1bと参照電極11a、11bを流体の流れ方向に平行に1列に並べて配置した態様である。図15(b)は、異物検出素子1a、1bと参照電極11a、11bを流体の流れ方向に垂直に1列に並べて配置した態様である。この配置によれば、異物検出チップ10を細長いチップとすることができるので、流路への組み込みやすくなる。図15(b)では、電極端子7は異物検出チップ10における、流体の流れ方向の端部に配置されているが、異物検出素子1a、1b、参照電極11a、11bよりも下流側にあることで異物の検出を阻害しない構成となっている。
【0085】
次に、図16には、異物検出素子1と参照電極11とが並べて配置されている場合の異物検出チップ10の断面図の詳細を示す。先述のように、異物検出素子1における各電極の歯は、庇構造を有しているとともに、保護膜6が形成されている。また、参照電極11においては、各電極の歯が誘電体膜9で覆われている。
【0086】
〔異物検出素子の作製プロセス〕
以下、図17図19を用いて、異物検出素子1と参照電極11が配置された異物検出チップ10についての半導体製造工程による作成プロセスについて説明する。
【0087】
(1)工程1
図17に示すように、基板2となるべき単結晶シリコン基板12に、土台膜5となる誘電体膜(SiO)15を厚さ1μmで成膜する。同様に、単結晶シリコン基板12の底
面にも絶縁層としての誘電体膜(SiO)15を成膜する。
【0088】
(2)工程2
図17に示すように、電極3、4となる導電膜13を形成する。例えば、多結晶シリコン(Poly-Si)膜を厚さ2μmで成膜する。そして、成膜後に適宜、不純物を導入し抵抗値を低減する。成膜後、パターニング工程(フォトマスクによるフォトリソグラフィー、エッチング)にて、電極3、4(歯3a、4a)のパターンを形成する。その際、例えば上述のように、歯幅が2μmで、歯間距離が2μmとする。各々の歯の長さ400μmとしてもよい。
【0089】
(3)工程3
図18(a)に示すように、パターニング工程にて、各電極3、4及び電極端子7の周囲の誘電体膜15を除去する。その際、Poly-Siの導電膜13のうち、電極3、4となる部分にマスクしてSiOの誘電体膜15を等方性エッチングすると、図18(a)に示すような庇構造とすることができる。例えば、1μm厚の誘電体膜15を等方性エッチングすることで片側1μmのアンダーカットをいれることができる。
【0090】
(4)工程4
図18(b)に示すように、電極3、4の保護膜6とすべく、全体にSiN膜16を0.1μmの厚さで成膜する。同様に、単結晶シリコン基板12の底面にも保護膜6としてのSiN膜16を成膜する。その際、成膜にLPCVD法を用いることで、庇構造を良好に被膜することができる。その後、電極3、4の周囲におけるSiN膜16、電極端子7のSiN膜16を除去する。
【0091】
(5)工程5
図19(a)に示すように、櫛歯電極が埋まるほどの厚さで、誘電体膜9となるべきSiO膜19を3μm厚で成膜する。この工程は、本実施例において誘電体層形成工程に相当する。成膜後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などを適用することにより、表面が平坦化され、参照電極としてより望ましい形となる。この工程は、本実施例において平坦化工程に相当する。
【0092】
(6)工程6
図19(b)に示すように、異物検出素子1の電極3、4の歯3a、4aの間に充填された部分、および電極端子7の上面のSiO膜19をフォトリソグラフィにより除去する。なお、電極の保護膜6をSiNとし、充填させる誘電体膜9をSiOとしたのは、この工程において、SiN膜とSiO膜とのエッチング選択性を得るためである。すなわち、SiO膜19のみを除去し、SiN膜16を残させるためである。
【0093】
(7)工程7
図19(c)に示すように、電極端子部に金属膜8となるAu/Ti膜18を0.5μm/0.1μm厚で成膜し、パターニングを行う。
【0094】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3においては、実施例1で説明した異物検出素子1と、流量測定素子21とを1チップ上に混載した例について説明する。
【0095】
図20には、本実施例における異物検出チップ20の概略図を示す。図20(a)は平面図、図20(b)は、断面A-Aにおける断面図である。図20(a)に示すように、異物検出チップ20の図中左側には異物検出素子1が配置され、右側には流量測定素子21が配置されている。
【0096】
流量測定素子21は、マイクロヒータ(加熱部ともいう)22と、マイクロヒータ22を挟んで対称に設けられた二つのサーモパイル(温度検出部ともいう)23a、23bとを備える。すなわち、マイクロヒータ22と二つのサーモパイル23a、23bとは、所定の方向に並ぶように配置されている。これらは、図20(b)に示すように絶縁薄膜24に形成され、マイクロヒータ22、サーモパイル23a、23b及び絶縁薄膜24は基板2上に設けられている。また、マイクロヒータ22及びサーモパイル23a、23bの下方の基板2には、エッチング等により形成されるキャビティ(空洞)2aが設けられている。
【0097】
マイクロヒータ22は、例えばポリシリコンで形成された抵抗である。流体の流れがない場合、マイクロヒータ22の周囲の温度分布はほぼ均等になる。一方、流体が流れた場合、周囲の空気が移動するため、マイクロヒータ22の上流側よりも下流側の方が温度は高くなる。流量測定素子21は、このようなヒータ熱の分布の偏りを利用して、流量を示す値を出力する。
【0098】
センサ素子の出力電圧ΔVは、例えば次のような式(1)で表される。
【数1】

なお、Thはマイクロヒータ22の温度(サーモパイル23a、23bにおけるマイクロヒータ22側の端部の温度)、Taはサーモパイル23a、23bにおけるマイクロヒータ22から遠い側の端部の温度のうち低い方の温度、Vfは流速の平均値、A及びbは所定の定数である。
【0099】
ここで、流量測定素子21と異物検出素子1とが1チップ上に配置されていると、下記のようなメリットが得られる。(2チップである場合と比べて)(1)異物検出素子1自身も小型となり、2チップである場合に比べて実装(アセンブリ)するエリアも小さくなるので、大幅な小型化が図れる。(2)図20(a)に示すように、櫛歯構造の電極をサーモパイル23a、23bの幅全体に設けることで、流量測定素子21への影響度が大きいエリアについて異物検出ができる。(3)流量測定素子21のすぐ近傍に異物検出素子1があるため、検出効率がよい。また2チップの場合では、流量測定チップと異物検出チップとで気流の状態が変わってしまう可能性があるが、1チップでは素子間で気流の状態が変わらないので、測定精度を向上できる。(4)流量測定素子21と異物検出素子1は、同一の作製工程で作製できるため、別々に作製するよりも製造コストが抑えられる。(5)異物検出素子1における電極3、4は、マイクロヒータ22もしくはサーモパイル23a、23bと同じ膜から作製することが可能である。これにより、作製プロセスが簡易にできるため、生産性向上、低コスト化につながる。(6)異物検出素子1は、流量測定素子21の上流側に配置されている。これにより、異物検出の感度を相対的に高めることができる。ただし、下流に配置する場合も、異物検出感度を落としたい(鈍感にしたい)時に有意である。流量測定素子21の方が先に異物が付着し易くなるが、異物の許容量が大きい場合などには、下流側に配置するのもよい。
【0100】
図21には、本実施例における異物検出チップ20の別態様の概略図を示す。図21(a)は平面図、図21(b)は、断面A-Aにおける断面図である。この態様では、図21(a)に示すように、異物検出チップ20の図中左側には、異物検出素子1a、1bと、参照電極11a、11bが配置されており、右側には流量測定素子21が配置されている。
【0101】
このように、異物検出素子1a、1b、参照電極11a、11b、流量測定素子21を半導体製造工程によって1チップ上に形成することで、より顕著な測定精度向上の効果やコストメリットを得ることが可能である。
【0102】
次に、図22には、異物検出素子1と流量測定素子21とが並べて配置されている場合の異物検出チップ20の断面図の詳細を示す。先述のように、異物検出素子1における各電極の歯は、庇構造を有しているとともに、保護膜6が形成されている。また、流量測定素子21においては、マイクロヒータ22と二つのサーモパイル23a、23bが誘電体膜で覆われることで絶縁薄膜24が形成されている。
【0103】
〔異物検出素子の作製プロセス〕
以下、図23~25を用いて、異物検出素子1と流量測定素子21とが配置された異物検出チップ20についての半導体製造工程による作成プロセスについて説明する。
【0104】
(1)工程1
図23(a)に示すように、基板2となるべき単結晶シリコン基板12に、土台膜5となる誘電体膜(SiO)15を厚さ1μmで成膜する。同様に、単結晶シリコン基板12の底面にも絶縁層としての誘電体膜(SiO)15を成膜する。
【0105】
(2)工程2
図23(b)に示すように、電極3、4及び、マイクロヒータ22、サーモパイル23a、23bとなる導電膜13を形成する。例えば、多結晶シリコン(Poly-Si)膜を厚さ2μmで成膜する。成膜後に適宜、不純物を導入し抵抗値を低減する。成膜後、パターニング工程(フォトマスクによるフォトリソグラフィー、エッチング)にて、電極3、4(歯3a、4a)及び、マイクロヒータ22、サーモパイル23a、23bのパターンを形成する。
【0106】
(3)工程3
図24(a)に示すように、パターニング工程にて、各電極3、4の周囲の誘電体膜15を除去する。その際、Poly-Siの導電膜13のうち、電極3、4となる部分にマスクしてSiOの誘電体膜15を等方性エッチングすると、図24(a)に示すような庇構造とすることができる。例えば、1μm厚の誘電体膜15を等方性エッチングすることで片側1μmのアンダーカットをいれることができる。
【0107】
(4)工程4
図24(b)に示すように、電極3、4及び、マイクロヒータ22、サーモパイル23a、23bの保護膜6とすべく、全体にSiN膜16を0.1μmの厚さで成膜する。その際、成膜にLPCVD法を用いることで、庇構造を良好に被膜することができる。その後、電極3、4の周囲におけるSiN膜16のSiN膜16を除去する。また、その際、サーモパイルのAl膜とコンタクトする部分のSiN膜16を開口する。サーモパイル用のAl膜26を0.2μm厚で成膜し、その後、パターンを形成する。なお、図示はしていないが、外部端子をAl膜から形成する場合には、同時にAl膜から外部端子を形成する。
【0108】
(5)工程5
図24(c)に示すように、図19(a)に示すように、櫛歯電極が埋まるほどの厚さで、絶縁薄膜24の上側部分となるべきSiO膜19を3μm厚で成膜する。成膜後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などを適用することにより、表面が平坦化され、参照電極としてより望ましい形となる。
【0109】
(6)工程6
図25(a)に示すように、異物検出素子1の電極3、4の歯3a、4aの間に充填された部分のSiO膜19をフォトリソグラフィにより除去する。なお、電極の保護膜6をSiNとし、充填させる誘電体膜9をSiOとしたのは、この工程において、SiN膜とSiO膜とのエッチング選択性を得るためである。すなわち、SiO膜19のみを除去し、SiN膜16を残させるためである。また、この際、絶縁薄膜24の上側部分となるべきSiO膜19は残す。
【0110】
(7)工程7
図25(b)に示すように、チップ全体の最表層にSiN膜の保護膜27を0.1μm厚で形成する。これは、SiN膜は防湿性に優れるため、絶縁薄膜14のSiOを湿度から保護するためである。に形成する。この際、電極3、4については、SiN膜が追加で付与されることになる。
【0111】
(8)工程8
図25(c)に示すように、シリコンエッチングによりキャビティ2aを形成する。絶縁薄膜24に空けたエッチングホール(図示なし)で表側からエッチングする。
【0112】
(9)工程9(不図示)
電極端子に金属膜8となるAu/Ti膜18を0.5μm/0.1μm厚で成膜し、パターニングを行う。
【0113】
上述したように、異物検出素子1における電極3、4は、流量測定素子21のマイクロヒータ22やサーモパイル23a、23bと同じ材料とすることで、製造工程が簡易になる。同時に使用できる材料としては、必ずしも多結晶シリコン(Poly-Si)膜である必要はないが、金属膜やシリコン膜が半導体プロセスと相性がよく使い易い。金属膜としては、半導体製造工程で使用される、Al、Cu、Pt、Au、W、Mo等を用いることが可能である。
【0114】
シリコン膜を使用する場合には、異物検出素子1の電極3、4の厚みを厚くし易いメリットがある。異物検出素子1における電極3、4と流量測定素子21のマイクロヒータ22を同じシリコン膜とした場合は、膜厚を大きくしたとしてもヒータ抵抗がそれほど小さくならないからである。金属膜でマイクロヒータ22を形成する場合は、抵抗値が小さくなりすぎるのを避けるため、マイクロヒータ22を細く、薄く形成する必要がある。シリコン膜は抵抗が金属膜と比較して高いため、膜厚を厚くすることが可能である。異物検出素子1における電極3、4を厚くすることができると、異物の検出感度を上げることが可能である。また、シリコン膜は、表層に非導電膜としてSiN膜やSiO膜を成膜することが容易である。材料としては、半導体製造工程で使用される、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどが候補である。
【0115】
異物検出素子1の電極3、4の厚みを厚くし易いメリットがある。異物検出素子1における電極3、4と流量測定素子21のマイクロヒータ22を同じ薄膜層から形成するとすると、電極3、4の膜厚は0.1μm~5μmが好適である。膜厚が薄い場合は。生産性が良くなる。成膜やエッチングの時間が短くなる。(なお、フローセンサとヒータと共通の膜厚である場合には、金属膜とすると、抵抗値を確保するためには膜厚が小さくなる傾向にある。)一方で、膜厚が薄いと電極3、4の歯3a、4aにおける段差が小さくなり、異物検出に係る感度が低下する虞がある。
【0116】
これらより、異物検出素子1の電極3、4の厚みは0.1μm以上が望ましい。0.1
μmより小さいと、異物の検出感度が過度に小さくなる。膜厚が大きい場合は、異物検出感度が大きくなる。なお、上述のとおり、異物検出素子1の電極3、4と流量測定素子21のマイクロヒータ22の膜厚を共通とする合には、材質としてシリコン膜とすることで、膜厚を大きくすることが可能となる。一方で、この場合には、生産性が悪くなる。これらより、異物検出素子1の電極3、4の厚みは5μm以下が望ましい。5μmより大きいと、半導体製造工程における作成が困難となる。
【0117】
異物検出素子1は異物を検出し、流量測定素子21の故障を発見することが目的である。実際には、故障検出のみならず、流量測定素子21における測定結果を補正することでのセンサの高寿命化、高精度化にも使用することができる。異物検出素子1によって異物の付着の度合いを検出し、流量測定素子21の制御回路にフィードバックさせる。異物の付着量が多い場合には、流量測定素子21のマイクロヒータ22の発熱温度を上げるために印加電力を増加させたり、流量測定素子21のサーモパイル23a、23bの感度(流量の出力)の増幅率を増加させたりすることで、測定性能の劣化を抑制することができる。
【0118】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで付記しておく。
<付記1>
流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子であって、
シリコン基板(2)と、
前記シリコン基板(2)上に形成された第1の絶縁膜(5)と、
前記第1の絶縁膜(5)上に形成され、櫛歯状の電極パターン有する複数の検出用電極(3、4)と、
を備え、
前記複数の検出用電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯(3a、4a)が所定間隔で交互に平行に並ぶように配置されたことを特徴とする、MEMS異物検出素子(1)。
<付記12>
流体に含まれる異物を検出するMEMS異物検出素子を半導体製造工程によって製造する、MEMS異物検出素子(1)の製造方法であって、
シリコン基板(12)に、該シリコン基板を覆う第1の絶縁膜(15)を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1の絶縁膜(15)の上に、導電体膜(13)を形成する導電体膜形成工程と、
前記導電体膜(13)から、複数の櫛歯状の電極(3、4)を形成する電極形成工程と、
を有し、
前記導電体膜形成工程においては、前記複数の櫛歯状の電極における特定の二つが、互いの櫛歯における歯(3a、4a)が所定間隔で交互に平行に並ぶように形成されることを特徴とする、MEMS異物検出素子(1)の製造方法。
【符号の説明】
【0119】
1 :異物検出素子
2 :シリコン基板
3 :電極
3a :歯
4 :電極
4a :歯
5 :土台膜
6 :保護膜
7 :電極端子
9 :誘電体膜
10 :異物検出チップ
11 :参照電極
21 :流量測定素子
図1
図2
図3
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図5
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