IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三恵技研工業株式会社の特許一覧

特開2023-41553車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法
<>
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図1
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図2
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図3
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図4
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図5
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図6
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図7
  • 特開-車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041553
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20230316BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20230316BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230316BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20230316BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230316BHJP
【FI】
G01S7/03 246
B29C65/70
B29C45/14
H01Q1/42
G01S13/931
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148991
(22)【出願日】2021-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】古林 宏之
【テーマコード(参考)】
4F206
4F211
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
4F206AA13
4F206AA21
4F206AA28
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD27
4F206AD35
4F206AE03
4F206AF14
4F206AG03
4F206AH33
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F211AD03
4F211AD08
4F211AD24
4F211AG03
4F211AH17
4F211AH41
4F211TA08
4F211TC03
4F211TD18
4F211TN82
5J046AA13
5J046RA03
5J046RA14
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】一方の樹脂基材のヒーター線配線側の面に他方の樹脂基材が積層固着されるレドームで、一方の樹脂基材に配線したヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子とを導通接続する際に発生する熱が一方の樹脂基材を溶かし、損傷させることを防止できる。
【解決手段】第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に溝31に沿うように配線されるヒーター線5が埋設され、電磁波透過領域R以外の領域における第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に第1金属板61と第2金属板62とが相互に隔絶されるように埋設され、第1金属板61の載置面611にヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが載置されて固着され、第2金属板62の載置面621にヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが載置されて固着される車載レーダー装置用レドーム1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過性の基体の面方向に配線されるヒーター線を備え、
第1の樹脂基材と第2の樹脂基材を積層配置して固着されることにより前記基体が構成され、
前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に溝に沿うように配線される前記ヒーター線が埋設され、
前記基体の電磁波透過領域以外の領域における前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に第1金属板と第2金属板とが相互に隔絶されるように埋設され、
前記第1金属板の載置面に前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子とが載置され、前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とが固着され且つ前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが固着されるようにして、前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子とが導通されていると共に、
前記第2金属板の載置面に前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子とが載置され、前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とが固着され且つ前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが固着されるようにして、前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子とが導通されていることを特徴とする車載レーダー装置用レドーム。
【請求項2】
前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子が接触するようにして、前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子と前記第1金属板とが接合され、
前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子が接触するようにして、前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子と前記第2金属板とが接合されていることを特徴とする請求項1記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項3】
前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とが第1ヒーター線接合部で接合されると共に、前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが前記第1ヒーター線接合部と離間配置された第1接続端子接合部で接合され、
前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とが第2ヒーター線接合部で接合されると共に、前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが前記第2ヒーター線接合部と離間配置された第2接続端子接合部で接合されていることを特徴とする請求項1記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項4】
前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の固着面に沿うように前記ヒーター線が配線され、
前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向に折り曲げられていない前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが導通接続され、
前記積層方向に折り曲げられていない前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが導通接続されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項5】
前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向に折り曲げられた屈曲板で前記第1金属板と前記第2金属板とが形成され、
前記第1ヒーター線接合部と前記第1接続端子接合部とが前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向における異なる位置に配置され、
前記第2ヒーター線接合部と前記第2接続端子接合部とが前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項3記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項6】
前記第1金属板の載置面における固着箇所を覆うように第1被覆樹脂が形成され、
前記第2金属板の載置面における固着箇所を覆うように第2被覆樹脂が形成され、
前記第1被覆樹脂と前記第2被覆樹脂が前記基体に埋設されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の車載レーダー装置用レドーム。
【請求項7】
請求項1記載の車載レーダー装置用レドームの製造方法であって、
第1の樹脂基材に隔絶するように形成された第1凹部と第2凹部とに、それぞれ第1金属板と第2金属板を嵌合して配置する第1工程と、
前記第1の樹脂基材に形成された溝に沿うように所定パターンでヒーター線を配線し、前記第1金属板の露出する載置面に、前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子を載置し、前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とを固着し且つ前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とを固着すると共に、前記第2金属板の露出する載置面に、前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子を載置し、前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とを固着し且つ前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とを固着する第2工程と、
前記第1金属板の載置面及び前記第2金属板の載置面の側に射出成形して第2の樹脂基材を形成し、前記第2の樹脂基材を前記第1の樹脂基材に固着すると共に、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に、前記ヒーター線、前記第1金属板、前記一のワイヤーハーネス接続端子、前記第2金属板、前記他のワイヤーハーネス接続端子を埋設する第3工程を備えることを特徴とする車載レーダー装置用レドームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載レーダー装置の前側に設けられる車載レーダー装置用レドームに係り、特に融雪機能を有する車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、融雪機能を有する車載レーダー装置用レドームとして、ミリ波の透過性能低下を抑制するようにヒーター線が配置されるレドームが知られており、このようなレドームとして特許文献1に開示されているレドームがある。
【0003】
このレドームは、樹脂製の前基材と樹脂製の後基材とから構成され、前基材の表面に溝が形成され、この溝にヒーター線が嵌めこまれてヒーター線の全体が溝に収納されるように配線されているものである。そして、溝に収納されたヒーター線を覆うようにして前基材の表面に透明フィルムが設けられ、前基材に圧着されており、この透明フィルムでヒーター線を覆うことにより、ヒーター線の耐候性、耐食性、耐傷性が高められている(特許文献1の図6、段落[0042]、[0044]~[0046]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-139860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車載レーダー装置用レドームの樹脂基材に形成した溝に沿うようにヒーター線を配線し、ヒーター線の耐候性、耐食性、耐傷性を確保する別の構造として、一方の樹脂基材に形成した溝に沿うようにヒーター線を配線し、一方の樹脂基材のヒーター線配線側の面に他方の樹脂基材を積層して固着し、ヒーター線を一方の樹脂基材と他方の樹脂基材との間に埋設する構造が考えられる。
【0006】
この構造のレドームとする場合、他方の樹脂基材を固着する前に、一方の樹脂基材に配線したヒーター線の端部をワイヤーハーネス接続端子と接合して導通接続することが必要となるが、ヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子とを半田付け或いはレーザー溶接等で接合して導通接続する際に発生する熱が、ヒーター線が配線されている一方の樹脂基材を溶かし、損傷させてしまうという問題を生ずる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、一方の樹脂基材のヒーター線配線側の面に他方の樹脂基材が積層されて固着されるレドーム構造において、他方の樹脂基材を固着する前に、一方の樹脂基材に配線したヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子とを導通接続する際に発生する熱が一方の樹脂基材を溶かし、損傷させることを防止することができる車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、電磁波透過性の基体の面方向に配線されるヒーター線を備え、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材を積層配置して固着されることにより前記基体が構成され、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に溝に沿うように配線される前記ヒーター線が埋設され、前記基体の電磁波透過領域以外の領域における前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に第1金属板と第2金属板とが相互に隔絶されるように埋設され、前記第1金属板の載置面に前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子とが載置され、前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とが固着され且つ前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが固着されるようにして、前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子とが導通されていると共に、前記第2金属板の載置面に前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子とが載置され、前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とが固着され且つ前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが固着されるようにして、前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子とが導通されていることを特徴とする。
これによれば、第2の樹脂基材又は第1の樹脂基材を固着する前に、第1の樹脂基材又は第2の樹脂基材に配線したヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子とを導通接続する際、発生する熱が第1の樹脂基材又は第2の樹脂基材に熱伝導されることを第1金属板と第2金属板で抑制し、第1の樹脂基材又は第2の樹脂基材が溶かされて損傷することを防止することができる。従って、車載レーダー装置用レドームの製品品質の安定化、及び製造する際の歩留まりの向上を図ることができる。また、配線されるヒーター線、ヒーター線の両方の端部、ワイヤーハーネス接続端子が第1の樹脂基材と第2の樹脂基材で構成される基体の内部に封止されることになるから、配線されたヒーター線や、ヒーター線の接続部分の防水性、耐候性、耐食性、耐傷性を確保することができる。
【0009】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子が接触するようにして、前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子と前記第1金属板とが接合され、前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子が接触するようにして、前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子と前記第2金属板とが接合されていることを特徴とする。
これによれば、ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子との導通接続をヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子と第1金属板を接合する1回の接合工程で行うことができると共に、ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子との導通接続をヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子と第2金属板を接合する1回の接合工程で行うことができ、車載レーダー装置用レドームの製造工程における接合工程を減らして製造効率を高めることができる。
【0010】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とが第1ヒーター線接合部で接合されると共に、前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが前記第1ヒーター線接合部と離間配置された第1接続端子接合部で接合され、前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とが第2ヒーター線接合部で接合されると共に、前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが前記第2ヒーター線接合部と離間配置された第2接続端子接合部で接合されていることを特徴とする。
これによれば、金属板とヒーター線の端部をヒーター線接合部で接合し、金属板とワイヤーハーネス接続端子をヒーター線接合部と離間配置された接続端子接合部で別に接合することにより、例えば金属板とヒーター線の端部を半田付けやろう接で接合し、金属板とワイヤーハーネス接続端子をレーザー溶接で接合する等、設計条件や製造環境に合わせて適切な接合方法を用い、金属板とヒーター線の端部との接合、金属板とワイヤーハーネス接続端子との接合を行うことができ、接合方法の自由度、多様性を高めることができる。また、金属板を介してヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子が導通接続されることから、使用するヒーター線の長さ、使用量を小さくし、部品コスト、製造コストを低減することができる。
【0011】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の固着面に沿うように前記ヒーター線が配線され、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向に折り曲げられていない前記ヒーター線の一方の端部と前記一のワイヤーハーネス接続端子とが導通接続され、前記積層方向に折り曲げられていない前記ヒーター線の他方の端部と前記他のワイヤーハーネス接続端子とが導通接続されることを特徴とする。
これによれば、配線されたヒーター線の端部周辺を第1の樹脂基材と第2の樹脂基材の積層方向に折り曲げずに、そのまま金属板の載置面に載置するように配置し、ワイヤーハーネス接続端子と導通接続することができることから、製造作業の容易化を図ることができる。
【0012】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向に折り曲げられた屈曲板で前記第1金属板と前記第2金属板とが形成され、前記第1ヒーター線接合部と前記第1接続端子接合部とが前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向における異なる位置に配置され、前記第2ヒーター線接合部と前記第2接続端子接合部とが前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材の積層方向における異なる位置に配置されていることを特徴とする。
これによれば、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材における側端周辺に積層方向に突き出した形状や凹んだ形状等の異形形状が形成されている場合にも、屈曲板の金属板を介してヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子を確実に導通接続することができる。また、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材の形状が複雑化してもヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子との導通接続を確保することができることから、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材の形状の自由度、レドームの基体の形状の自由度を高めることができる。
【0013】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第1金属板の載置面における固着箇所を覆うように第1被覆樹脂が形成され、前記第2金属板の載置面における固着箇所を覆うように第2被覆樹脂が形成され、前記第1被覆樹脂と前記第2被覆樹脂が前記基体に埋設されていることを特徴とする。
これによれば、ヒーター線が配線された第1の樹脂基材又は第2の樹脂基材に対して、第2の樹脂基材又は第1の樹脂基材を例えば射出成形して形成する際に、被覆樹脂で固着箇所を保護することができ、射出成形時の樹脂圧で固着箇所に剥離が生ずることを防止することができる。
【0014】
本発明の車載レーダー装置用レドームの製造方法は、本発明の車載レーダー装置用レドームを製造する方法であって、第1の樹脂基材に隔絶するように形成された第1凹部と第2凹部とに、それぞれ第1金属板と第2金属板を嵌合して配置する第1工程と、前記第1の樹脂基材に形成された溝に沿うように所定パターンでヒーター線を配線し、前記第1金属板の露出する載置面に、前記ヒーター線の一方の端部と一のワイヤーハーネス接続端子を載置し、前記第1金属板と前記ヒーター線の一方の端部とを固着し且つ前記第1金属板と前記一のワイヤーハーネス接続端子とを固着すると共に、前記第2金属板の露出する載置面に、前記ヒーター線の他方の端部と他のワイヤーハーネス接続端子を載置し、前記第2金属板と前記ヒーター線の他方の端部とを固着し且つ前記第2金属板と前記他のワイヤーハーネス接続端子とを固着する第2工程と、前記第1金属板の載置面及び前記第2金属板の載置面の側に射出成形して第2の樹脂基材を形成し、前記第2の樹脂基材を前記第1の樹脂基材に固着すると共に、前記第1の樹脂基材と前記第2の樹脂基材との間に、前記ヒーター線、前記第1金属板、前記一のワイヤーハーネス接続端子、前記第2金属板、前記他のワイヤーハーネス接続端子を埋設する第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、第1の樹脂基材の所定位置に第1金属板と第2金属板をそれぞれ確実に位置決めして定置することができ、製造作業の確実性と効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一方の樹脂基材のヒーター線配線側の面に他方の樹脂基材が積層されて固着される車載レーダー装置用レドームにおいて、他方の樹脂基材を固着する前に、一方の樹脂基材に配線したヒーター線の端部とワイヤーハーネス接続端子とを導通接続する際に発生する熱が一方の樹脂基材を溶かし、損傷させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明による第1実施形態の車載レーダー装置用レドームの正面図、(b)は同図(a)の部分拡大正面図。
図2】第1実施形態の車載レーダー装置用レドームの縦断面図。
図3】(a)~(d)は第1実施形態の車載レーダー装置用レドームの製造工程の工程説明図。
図4】第1実施形態の車載レーダー装置用レドームにおける第1の樹脂基材、金属板、ヒーター線、ワイヤーハーネス接続端子を金型の内部に配置した状態を示す説明図。
図5】第2実施形態の車載レーダー装置用レドームの縦断面図。
図6】(a)~(c)は第2実施形態の車載レーダー装置用レドームの製造工程の工程説明図。
図7】(a)は被覆樹脂を有する第1実施形態の第1変形例の車載レーダー装置用レドームの部分縦断面図、(b)はレーザー溶接部を有する第1実施形態の第2変形例の車載レーダー装置用レドームの部分縦断面図。
図8】(a)はヒータ線の端部が基材積層方向に折り曲げられた第1実施形態の第3変形例の車載レーダー装置用レドームの部分縦断面図、(b)は屈曲板を介してヒータ線が導通接続される第2実施形態の変形例の車載レーダー装置用レドームの部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム〕
本発明による第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1は、例えば車両のバンパーに取り付けられるバンパーカバー等として用いられるものであり、図1及び図2に示すように、電磁波透過性の基体2を備える。基体2は、例えば視認側と逆側に配置される第1の樹脂基材3と、第1の樹脂基材3の前側である視認側に配置される第2の樹脂基材4とから構成され、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4は積層配置して固着されている。尚、必要に応じて、第2の樹脂基材4を視認側と逆側に配置し、第1の樹脂基材3を視認側に配置する構成としてもよい。第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4はそれぞれ絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂で形成されている。
【0018】
第1の樹脂基材3と、第2の樹脂基材4には、異種の合成樹脂又は同種の合成樹脂を用いることができ、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接する材料で第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4を形成すると、電磁波の透過性能向上の観点から好適である。第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の近接する屈折率の数値範囲としては、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の屈折率の相違が0~10%の範囲内とすると良好である。
【0019】
ここでの屈折率nは比誘電率実数部εr'と比誘電率虚数部εr"から数式1として定義される量である。 透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさは0.1以下とすると好適である。また比誘電率実部の大きさは3以下とすると好適である。誘電正接と非誘電率実部の大きさをこれらの数値以下とすることにより、レドームに必要とされる反射率と内部損失の低減を確実にすることが可能となる。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
第1の樹脂基材3の合成樹脂と、第2の樹脂基材4の合成樹脂には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の合成樹脂を用いることが可能であり、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)、アクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いると良好であり、又、添加剤を含有させてもよい。又、これらの合成樹脂には発泡体を用いても良い。また、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の電磁波透過方向における厚さに関し、第1の樹脂基材3の厚さと第2の樹脂基材4の厚さの比や、第1の基材樹脂3の厚さや、第2の樹脂基材4の厚さや、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4で構成される基体2の総厚は、車載レーダー装置用レドーム1として所要の電磁波透過性を確保できる範囲で適宜である。
【0023】
車載レーダー装置用レドーム1には、ヒーター線5が電磁波透過性の基体2の面方向に配線されている。ヒーター線3を構成する導電性材料には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の導電性材料を用いることが可能であり、例えば銅、銀、銀メッキ銅、銅銀合金、銅ニッケル合金、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金、ITO膜のような透明導電膜、又はカーボン繊維等とすると良好である。又、ヒーター線の形態は問わず、線材、導電インク、導電フィラー等を利用することができる。
【0024】
図示例のヒーター線5は、板状の基体2が拡がる方向に沿って蛇行し、折り返すように配線されて一連で延びて形成されており、基体2の車載レーダー装置による電磁波照射領域Rとその外側においてヒーター線5の直線部が基体2の面方向に沿って間隔を開けて並設されていると共に、隣り合うヒーター線5の直線部に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定されている。
【0025】
また、ヒーター線5は、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に埋設されており、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4とで挟持されるようにして、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4とで構成される基体2に内設されて封止されている。本実施形態では、第1の樹脂基材3の第2の樹脂基材4との固着面側に溝31が形成され、第2の樹脂基材4の第1の樹脂基材3との固着面側に溝31と対向するように別の溝41が形成されており、ヒーター線5は、第1の樹脂基材3の溝31と第2の樹脂基材4の別の溝41とに嵌められて溝31及び溝41に沿って配線されている(図2参照)。尚、ヒーター線5は、第1の樹脂基材3の溝31又は第2の樹脂基材4の溝41だけに沿うように配線し、第2の樹脂基材4又は第1の樹脂基材3にはヒーター線を配線する溝を形成しない構成としてもよい。
【0026】
基体2の電磁波透過領域R以外の領域、本実施形態では側方に突出形成されているタブ21の領域に、第1の樹脂基材3の固着面側に第1凹部32と第2凹部33が相互に隔絶して形成されている。第1凹部32と第2凹部33にはそれぞれ導電性を有する第1金属板61と第2金属板62が嵌合して配置されている。即ち、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に第1金属板61と第2金属板62とが相互に隔絶されるように埋設されており、第1金属板61と第2金属板62は互いに絶縁状態で設けられている。
【0027】
第1金属板61の載置面611にはヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが載置され、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71は接触するように配置されている(図2図3参照)。そして、第1金属板61とヒーター線5の一方の端部51とが固着され且つ第1金属板61と一のワイヤーハーネス接続端子71とが固着されるようにして、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが導通されている。第1実施形態では、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とが一体化するように接合されており、はんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される接合部8によって接合されている(図2図3(d)、図4参照)。
【0028】
第2金属板62の載置面621にはヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが載置され、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72は接触するように配置されている(図2図3参照)。そして、第2金属板62とヒーター線5の一方の端部52とが固着され且つ第2金属板62と他のワイヤーハーネス接続端子72とが固着されるようにして、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが導通されている。第1実施形態では、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とが一体化するように接合されており、はんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される接合部8によって接合されている(図2図3(d)、図4参照)。
【0029】
更に、第1実施形態では、ヒーター線5が第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の固着面に沿うように配線されており、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に折り曲げられていないヒーター線5の一方の端部51と、ヒーター線5の一方の端部51と重なって接触するように配置される一のワイヤーハーネス接続端子71とが導通接続されている。また、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に折り曲げられていないヒーター線5の他方の端部52と、ヒーター線5の他方の端部52と重なって接触するように配置される他のワイヤーハーネス接続端子72とが導通接続されている(図2図3(d)参照)。
【0030】
第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1を製造する際には、樹脂基材の片面に第1凹部32と第2凹部33を隔絶するように形成すると共に、蛇行状等の所定のヒーター線配線パターンに従って溝31を形成して第1の樹脂基材3を構成する。第1凹部32、第2凹部33、溝31は、第1の樹脂基材3を射出形成で形成する際に、金型内における対応する形状の凸部や突条によって形成するとよく、又は、樹脂基材の片面に切削加工等で形成してもよい。更に、第1の樹脂基材3に隔絶するように形成された第1凹部32と第2凹部33とに、それぞれ第1金属板61と第2金属板62を嵌合して配置する(図3(a)参照)。
【0031】
そして、第1の樹脂基材3に形成された溝31に沿うように所定パターンでヒーター線5を配線する。第1実施形態におけるヒーター線5は、溝31の外側に一部が突出するようにして溝31に嵌め、溶着或いは接着で第1の樹脂基材3に固着する。更に、第1金属板61の露出する載置面611に、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71を載置し、露出する載置面611側から、接触するヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とを接合部8で接合して導通接続することにより、第1金属板61とヒーター線5の一方の端部51とを固着し且つ第1金属板61と一のワイヤーハーネス接続端子71とを固着する。同様に、第2金属板62の露出する載置面621に、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72を載置し、露出する載置面621側から、接触するヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とを接合部8で接合して導通接続することにより、第2金属板62とヒーター線5の他方の端部52とを固着し且つ第2金属板62と他のワイヤーハーネス接続端子72とを固着する(図3(b)~(d)参照)。
【0032】
その後、図4に示すように、ヒーター線5、第1金属板61と第2金属板62、及びワイヤーハーネス接続端子71、72が取り付けられた第1の樹脂基材3を割型で構成される金型100の内部に配置する。この際、ワイヤーハーネス接続端子71、72が引き出されるワイヤーハーネス接続部7は、金型100の一部に形成された導出口102から金型100の外部に導出される。
【0033】
そして、金型100の注入口101から金型100の内部に溶融樹脂MRを流し込んで射出成形を行い、第1金属板61の載置面611及び第2金属板62の載置面621の側に射出成形して第2の樹脂基材4を形成し、第2の樹脂基材4を第1の樹脂基材3に固着する。第2の樹脂基材4は射出成形によって積層される界面が第1の樹脂基材3、ヒーター線5、第1金属板61、一のワイヤーハーネス接続端子71、第2金属板62、他のワイヤーハーネス接続端子72に成形溶着され、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に、ヒーター線5、第1金属板61、一のワイヤーハーネス接続端子71、第2金属板62、他のワイヤーハーネス接続端子72が埋設される。
【0034】
また、第2の樹脂基材4は、ヒーター線5の溝31の外側に突出する部分を覆うように形成されることから、ヒーター線5の溝31の外側に突出する部分が第2の樹脂基材4にインサート成形されるようにして成形固着され、第2の樹脂基材4の別の溝41にヒーター線5が嵌まった状態となる。尚、第2の樹脂基材4は、射出成形で形成される構成に限定されず、必要に応じて第1の樹脂基材3に接着等で固着しても良好である。第2の樹脂基材4の形成後には、金型100を脱型して第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1が得られる。
【0035】
第1実施形態によれば、第2の樹脂基材4を第1の樹脂基材3に固着する前、又は第1の樹脂基材3を第2の樹脂基材4に固着する前に、第1の樹脂基材3又は第2の樹脂基材4に配線したヒーター線5の端部51、52とワイヤーハーネス接続端子71、72とを導通接続する際、発生する熱が第1の樹脂基材3又は第2の樹脂基材4に熱伝導されることを第1金属板61と第2金属板62で抑制し、第1の樹脂基材3又は第2の樹脂基材4が溶かされて損傷することを防止することができる。従って、車載レーダー装置用レドーム1の製品品質の安定化、及び製造する際の歩留まりの向上を図ることができる。また、配線されるヒーター線5、ヒーター線5の両方の端部51、52、ワイヤーハーネス接続端子71、72が第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4で構成される基体2の内部に封止されることになるから、配線されたヒーター線5や、ヒーター線5の接続部分の防水性、耐候性、耐食性、耐傷性を確保することができる。
【0036】
また、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71との導通接続をヒーター線の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61を接合部8で接合する1回の接合工程で行うことができると共に、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72との導通接続をヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62を接合部8で接合する1回の接合工程で行うことができ、車載レーダー装置用レドーム1の製造工程における接合工程を減らして製造効率を高めることができる。
【0037】
また、配線されたヒーター線5の端部51、52周辺を第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に折り曲げずに、そのまま金属板61、62の載置面611、621に載置するように配置し、ワイヤーハーネス接続端子71、72と導通接続することができることから、製造作業の容易化を図ることができる。
【0038】
また、第1の樹脂基材3に隔絶するように形成された第1凹部32と第2凹部33とに、それぞれ第1金属板61と第2金属板62を嵌合して配置することにより、第1の樹脂基材3の所定位置に第1金属板61と第2金属板62をそれぞれ確実に位置決めして定置することができ、製造作業の確実性と効率を高めることができる。
【0039】
〔第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム〕
本発明による第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aは、図5に示すように、第1実施形態と同一構成の第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4を有し、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4が積層配置されて固着されることにより基体2が構成されている。更に、車載レーダー装置用レドーム1aは、第1実施形態と同一構成のヒーター線5、第1金属板61及び第2金属板62、一のワイヤーハーネス接続端子71及び他のワイヤーハーネス接続端子72を有する。
【0040】
そして、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、第1金属板61の載置面611にヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが相互に離間して載置されており、第1金属板61とヒーター線5の一方の端部51とが第1ヒーター線接合部81aで接合されて固着されていると共に、第1金属板61と一のワイヤーハーネス接続端子71とが第1ヒーター線接合部81aと離間配置された第1接続端子接合部83aで接合されて固着され、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが第1金属板61を介して導通接続されている。
【0041】
同様に、第2金属板62の載置面621にヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが相互に離間して載置されており、第2金属板62とヒーター線5の他方の端部52とが第2ヒーター線接合部82aで接合されて固着されていると共に、第2金属板62と他のワイヤーハーネス接続端子72とが第2ヒーター線接合部82aと離間配置された第2接続端子接合部84aで接合されて固着され、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが第2金属板62を介して導通接続されている。
【0042】
第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1を製造する際には、第1実施形態と同様に、第1の樹脂基材3に隔絶するように形成された第1凹部32と第2凹部33とに、それぞれ第1金属板61と第2金属板62を嵌合して配置する(図6(a)参照)。そして、第1の樹脂基材3に形成された溝31に沿うように所定パターンでヒーター線5を配線して固着すると共に、第1金属板61の露出する載置面611に、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とを載置し、且つヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とを基体2の中央から周縁に向かう方向で相互に離間するように配置する。同様に、第2金属板61の露出する載置面621に、ヒーター線5の他方の端部52と一のワイヤーハーネス接続端子71を載置し、ヒーター線5の他方の端部52と一のワイヤーハーネス接続端子71とを基体2の中央から周縁に向かう方向で相互に離間するように配置する(図6(b)参照)。
【0043】
更に、露出する第1金属板61の載置面611側から、第1金属板61とヒーター線5の一方の端部51とをはんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される第1ヒーター線接合部81aで接合すると共に、第1金属板61と一のワイヤーハーネス接続端子71とをはんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される第1接続端子接合部83aで接合する。同様に、露出する第2金属板62の載置面621側から、第2金属板61とヒーター線5の他方の端部52とをはんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される第2ヒーター線接合部82aで接合すると共に、第2金属板61と他のワイヤーハーネス接続端子72とをはんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される第2接続端子接合部84aで接合する(図6(c)参照)。
【0044】
その後は、第1実施形態と同様に、ヒーター線5、第1金属板61と第2金属板62、及びワイヤーハーネス接続端子71、72が取り付けられた第1の樹脂基材3を割型で構成される金型100の内部に配置し、第1金属板61の載置面611及び第2金属板62の載置面621の側に射出成形して第2の樹脂基材4を形成し、第2の樹脂基材4を第1の樹脂基材3に固着する(図4参照)。この射出成形により、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4との間に、ヒーター線5、第1金属板61、一のワイヤーハーネス接続端子71、第2金属板62、他のワイヤーハーネス接続端子72が埋設され、且つヒーター線接合部81a、82a、接続端子接合部83a、84aが埋設される。尚、第2実施形態における第2の樹脂基材4も、射出成形で形成される構成に限定されず、必要に応じて第1の樹脂基材3に接着等で固着しても良好である。第2の樹脂基材4の形成後には、金型100を脱型して第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aが得られる。
【0045】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。更に、金属板61、62とヒーター線5の端部51、52をヒーター線接合部81a、82aで接合し、金属板61、62とワイヤーハーネス接続端子71、72をヒーター線接合部81a、82aと離間配置された接続端子接合部83a、84aで別に接合することにより、例えば金属板61、62とヒーター線5の端部51、52を半田付けで接合し、金属板61、62とワイヤーハーネス接続端子71、72をろう接で接合する等、設計条件や製造環境に合わせて適切な接合方法を用い、金属板61、62とヒーター線5の端部51、52との接合、金属板61、62とワイヤーハーネス接続端子71、72との接合を行うことができ、接合方法の自由度、多様性を高めることができる。また、金属板61、62を介してヒーター線5の端部51、52とワイヤーハーネス接続端子71、72が導通接続されることから、使用するヒーター線5の長さ、使用量を小さくし、部品コスト、製造コストを低減することができる。
【0046】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0047】
例えば図7(a)に示す第1実施形態の第1変形例の車載レーダー装置用レドーム1bのように、第1金属板61の載置面611における固着箇所であるヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71を接合する接合部8を覆うように保護する第1被覆樹脂91bを形成し、第2金属板62の載置面621における固着箇所であるヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72を接合する接合部8を覆うように保護する第2被覆樹脂92bを形成し、第1被覆樹脂91bと第2被覆樹脂92bを基体2に埋設する構成としても良好である。この構成とする場合、第1の樹脂基材3に形成された接合部8・8を第1被覆樹脂91bと第2被覆樹脂92bで被覆した後に、第2の樹脂基材4を射出成形或いは接着等の固着によって設けるとよい。第1被覆樹脂91bと第2被覆樹脂92bを設ける構成によれば、例えばヒーター線5が配線された第1の樹脂基材3に対して、第2の樹脂基材4を射出成形して形成する際に、被覆樹脂91b、92bで固着箇所を保護することができ、射出成形時の樹脂圧で固着箇所に剥離が生ずることを防止することができる。
【0048】
この被覆樹脂で固着箇所を覆う構成は第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aに適用しても好適であり、第1金属板61の載置面611における固着箇所である第1ヒーター線接合部81aと第1接続端子接合部83aをそれぞれ覆うように保護する被覆樹脂を形成し、第2金属板62の載置面621における固着箇所である第2ヒーター線接合部82aと第2接続端子接合部84aをそれぞれ覆うように保護する被覆樹脂を形成し、これら4箇所の被覆樹脂を基体2に埋設する構成としてよい。この第2実施形態の変形例でも、上記第1実施形態の第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、図7(b)に示す第1実施形態の第2変形例の車載レーダー装置用レドーム1cのように、はんだ、ろう材等の添加した接合材で構成される接合部8に代え、レーザー溶接等の溶接による接合部8cで接合し、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とを一体的に接合すると共に、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とを一体的に接合するようにしても好適である。即ち、接合部8cの接合により、第1金属板61とヒーター線5の一方の端部51とが固着され且つ第1金属板61と一のワイヤーハーネス接続端子71とが固着されるようにして、ヒーター線5の一方の端部51と一のワイヤーハーネス接続端子71とが導通され、第2金属板62とヒーター線5の一方の端部52とが固着され且つ第2金属板62と他のワイヤーハーネス接続端子72とが固着されるようにして、ヒーター線5の他方の端部52と他のワイヤーハーネス接続端子72とが導通される。
【0050】
このレーザー溶接等の溶接による接合部で接合する構成は第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aに適用しても好適であり、第1ヒーター線接合部81aと第1接続端子接合部83aのいずれか一方又は双方をレーザー溶接等の溶接による接合部で接合して第1金属板61と一体化するように固着し、第2ヒーター線接合部82aと第2接続端子接合部84aのいずれか一方又は双方をレーザー溶接等の溶接による接合部で接合して第2金属板62と一体化するように固着してもよい。
【0051】
また、図8(a)に示す第1実施形態の第3変形例の車載レーダー装置用レドーム1dのように、ヒーター線5の一方の端部51dを、第1の樹脂基材3及び第1金属板61と第2の樹脂基材4の形状に倣うようにして、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に断面視略S字状となるように折り曲げて形成し、ヒーター線5の一方の端部51dの先端折曲片511dと一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とを接合部8或いは溶接による接合部で接合すると共に、ヒーター線5の他方の端部52dを、第1の樹脂基材3及び第2金属板62と第2の樹脂基材4の形状に倣うようにして、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に断面視略S字状に折り曲げて形成し、ヒーター線5の他方の端部52dの先端折曲片521dと他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とを接合部8或いは溶接による接合部で接合する構成としても良好である。
【0052】
この変形例では、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4における側端周辺に積層方向に突き出した形状や凹んだ形状等の異形形状が形成されている場合にも、ヒーター線5の端部51d、52dとワイヤーハーネス接続端子71、72を確実に導通接続することができる。また、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の形状が複雑化しても導通接続を確保することができることから、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の形状の自由度、レドーム1dの基体の形状の自由度を高めることができる。
【0053】
このヒーター線5の端部51d、52dを折り曲げる変形例では、ヒーター線5の端部51d、52dが折り曲げで突出する側と逆側に位置する第1の樹脂基材3において、第2の樹脂基材4との固着面と逆側の第1の樹脂基材3の面の側端周辺に切欠凹部34dを設け、切欠凹部34dに周辺部品200の一部又は全部を収容すると好適である。これにより、例えば第2の樹脂基材4が視認側である場合、周辺部品200の一部を隠すことが可能となると共に、周辺部品200の収容で周辺部品200をより省スペースで車両に設置することが可能となる。
【0054】
また、図8(b)に示す第2実施形態の変形例の車載レーダー装置用レドーム1eのように、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向に折り曲げられた断面視略S字状の屈曲板で第1金属板63eと第2金属板64eとを形成し、第1金属板63eの形状と第2金属板64eの形状にそれぞれ倣うように形成された第1の樹脂基材3の隔絶された第1凹部32eと第2凹部33eとに第1金属板63eと第2金属板64eとを嵌合して配置し、第1ヒーター線接合部81aと第1接続端子接合部83aとを第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向における異なる位置に配置し、第2ヒーター線接合部82aと第2接続端子接合部84aとを第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の積層方向における異なる位置に配置する構成としても良好である。
【0055】
図示例では、第1金属板63eの内端折曲片の載置面631eにヒーター線5の一方の端部51が載置され、第1金属板63eとヒーター線5の一方の端部51とが第1ヒーター線接合部81aで接合して固着されていると共に、第1金属板63eの外端折曲片の載置面632eに一のワイヤーハーネス接続端子71が載置され、第1金属板63eと一のワイヤーハーネス接続端子71とが第1接続端子接合部83aで接合して固着されている。同様に、第2金属板64eの内端折曲片の載置面641eにヒーター線5の他方の端部52が載置され、第2金属板64eとヒーター線5の他方の端部52とが第2ヒーター線接合部82aで接合して固着されていると共に、第2金属板64eの外端折曲片の載置面642eに他のワイヤーハーネス接続端子72が載置され、第2金属板64eと他のワイヤーハーネス接続端子72とが第2接続端子接合部84aで接合して固着されている。
【0056】
この屈曲板の第1金属板63eと第2金属板64eを用いる変形例でも、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4における側端周辺に積層方向に突き出した形状や凹んだ形状等の異形形状が形成されている場合にも、ヒーター線5の端部51、52とワイヤーハーネス接続端子71、72を確実に導通接続することができる。また、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の形状が複雑化しても導通接続を確保することができることから、第1の樹脂基材3と第2の樹脂基材4の形状の自由度、レドーム1eの基体の形状の自由度を高めることができる。
【0057】
更に、この屈曲板の第1金属板63eと第2金属板64eを用いる変形例でも、第1金属板63eと第2金属板64eが折り曲げで突出する側と逆側に位置する第1の樹脂基材3において、第2の樹脂基材4との固着面と逆側の第1の樹脂基材3の面の側端周辺に切欠凹部34eを設け、切欠凹部34eに周辺部品200の一部又は全部を収容すると好適である。これにより、例えば第2の樹脂基材4が視認側である場合、周辺部品200の一部を隠すことが可能となると共に、周辺部品200の収容で周辺部品200をより省スペースで車両に設置することが可能となる。
【0058】
また、上記実施形態では、レドーム正面視で側方に突出形成されているタブ21の領域に、第1凹部32及び第2凹部33等と、嵌合される第1金属板61と第2金属板62等を設け、第1金属板61と第2金属板62等の正面視領域内でヒーター線5の端部51、52等とワイヤーハーネス接続端子71、72との導通接続を行う構成としたが、例えばタブ21を有しないレドームの場合など、タブ21の領域以外でも、電磁波透過領域R以外の所要の領域にこの構成を設置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、車載レーダー装置用レドームに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1、1a、1b、1c、1d、1e…車載レーダー装置用レドーム 2…基体 21…タブ 3…第1の樹脂基材 31…溝 32、32e…第1凹部 33、33e…第2凹部 34d、34e…切欠凹部 4…第2の樹脂基材 41…溝 5…ヒーター線 51、51d…一方の端部 511d…先端折曲片 52、52d…他方の端部 521d…先端折曲片 61…第1金属板 611…載置面 62…第2金属板 621…載置面 63e…第1金属板 631e…内側折曲片の載置面 632e…外側折曲片の載置面 64e…第2金属板 641e…内側折曲片の載置面 642e…外側折曲片の載置面 71…一のワイヤーハーネス接続端子 72…他のワイヤーハーネス接続端子 8、8c…接合部 81a…第1ヒーター線接合部 82a…第2ヒーター線接合部 83a…第1接続端子接合部 84a…第2接続端子接合部 91b…第1被覆樹脂 92b…第2被覆樹脂 100…金型 101…注入口 102…導出口 200…周辺部品 R…電磁波照射領域 MR…溶融樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8