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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041584
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ジャイロミル型風車の過回転抑制構造
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/06 20060101AFI20230316BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
F03D7/06 C
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022011478
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021148404
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝重
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB08
3H178CC05
3H178DD12Z
3H178DD32X
3H178EE05
3H178EE13
(57)【要約】
【課題】電動機を用いずに機械的に制御でき且つ揚力ブレードのピッチ角を直接変更するジャイロミル型風車の過回転抑制構造を提供する。
【解決手段】風車1の回転数が定格回転数を超えたら、リンクバー10の錘部12に生じる遠心力によりリンクバー10が回転し、リンクバー10と剛性シャフト15で連結されている可動式揚力ブレード8が大きなピッチ角P2となる。そうすると、風車1の回転トルクが低下して、風車1の回転数の上限が定格回転数に抑えられるため、風車1の故障・破損を回避することができる。電動機式でなく機械的に可動式揚力ブレード8のピッチ角を直接変化させるため、電気系トラブルの影響を受けずに回転数を確実に抑制することができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸の上下に垂直回転軸を中心にして所定の回転方向に回転する回転フレームをそれぞれ設け、該上下回転フレーム間の等角度間隔位置に垂直方向に沿う直線翼式の揚力ブレードを複数取付け、垂直回転軸の回転力により発電するジャイロミル型風車の過回転抑制構造であって、
前記複数の揚力ブレードは、回転フレームに対して所定のピッチ角で固定された固定式揚力ブレードと、回転フレームに対して支軸を中心にピッチ角が変更自在な可動式揚力ブレードとから構成され、
上下固定フレームの少なくとも一方における垂直回転軸と可動式揚力ブレードとの間には、垂直回転軸側の一端が回転軸として固定フレームに軸支され且つ可動式揚力ブレード側の他端が錘部として一端よりも固定フレームの反回転方向側に位置するリンクバーが設けられ、
該リンクバーは付勢手段による付勢力で一端よりも反回転方向側に位置するストッパに当接した状態になっていると共にリンクバーと可動式揚力ブレードの支軸以外の部分が剛性シャフトにて連結され、
垂直回転軸の回転数が定格出力で発電できる定格回転数を超えた際に、リンクバーの回転軸を中心とした遠心力による回転力が付勢手段の付勢力を上回って、リンクバーが一端を中心に回転し始めることを特徴とするジャイロミル型風車の過回転抑制構造。
【請求項2】
揚力ブレードが偶数枚設けられ、固定式揚力ブレードと可動式揚力ブレードとが、互いに同数で且つ交互に設けられていることを特徴とする請求項1記載のジャイロミル型風車の過回転抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジャイロミル型風車の過回転抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車の形式としては、揚力式の垂直軸風車としてジャイロミル型風車が知られている。垂直回転軸の周囲に放射方向に延びる水平シャフトを上下に設け、その上下の水平シャフトの先端間に直線翼式の揚力ブレードを取付けた構造である。揚力ブレードに働く揚力の回転方向成分を回転力とし、エネルギー変換効率が良いという利点がある。
【0003】
しかしこのタイプの風車は、ひとたび回転を始めると、風を受けている限り回転トルクを発生し続け、回転が加速度的に上昇し、そのまま過回転状態となって、風車の故障・破壊を招いてしまうおそれがある。そのため過回転を抑制するための手段が必要とされる。
【0004】
そのため従来は過回転抑制手段として、揚力ブレードを支持する水平シャフトを断面翼形状にして、その水平シャフトの角度を電動機で変更することにより空気抵抗を発生させ、風車の過回転を抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-61319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような関連技術にあっては、風車の過回転を抑制するために、電動機で翼形の水平シャフトの角度を変更しているため、何らかの原因で電気系トラブルが生じた場合に風車の回転抑制が困難となる。また揚力ブレード自体でなく、それを支持する水平シャフトの角度を変更する方式のため、過回転抑制効果には限界がある。
【0007】
本発明は、このような関連技術に着目してなされたものであり、電動機を用いずに機械的に制御でき且つ揚力ブレードの角度を直接変更するジャイロミル型風車の過回転抑制構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術的側面によれば、垂直回転軸の上下に垂直回転軸を中心にして所定の回転方向に回転する回転フレームをそれぞれ設け、該上下回転フレーム間の等角度間隔位置に垂直方向に沿う直線翼式の揚力ブレードを複数取付け、垂直回転軸の回転力により発電するジャイロミル型風車の過回転抑制構造であって、前記複数の揚力ブレードは、回転フレームに対して所定のピッチ角で固定された固定式揚力ブレードと、回転フレームに対して支軸を中心にピッチ角が変更自在な可動式揚力ブレードとから構成され、上下固定フレームの少なくとも一方における垂直回転軸と可動式揚力ブレードとの間には、垂直回転軸側の一端が回転軸として固定フレームに軸支され且つ可動式揚力ブレード側の他端が錘部として一端よりも固定フレームの反回転方向側に位置するリンクバーが設けられ、該リンクバーは付勢手段による付勢力で一端よりも反回転方向側に位置するストッパに当接した状態になっていると共にリンクバーと可動式揚力ブレードの支軸以外の部分が剛性シャフトにて連結され、垂直回転軸の回転数が定格出力で発電できる定格回転数を超えた際に、リンクバーの回転軸を中心とした遠心力による回転力が付勢手段の付勢力を上回って、リンクバーが一端を中心に回転し始めることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術的側面によれば、揚力ブレードが偶数枚設けられ、固定式揚力ブレードと可動式揚力ブレードとが、互いに同数で且つ交互に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の技術的側面によれば、台風などの大きな風力により風車の回転数が高まって、垂直回転軸の回転数が定格出力で発電できる定格回転数を超えると、リンクバーの回転軸を中心とした遠心力による回転力が付勢手段の付勢力を上回って、リンクバーが一端を中心に回転し始める。リンクバーが回転すると、リンクバーと剛性シャフトで連結されている可動式揚力ブレードのピッチ角が変化する。可動式揚力ブレードのピッチ角が変化すると、風車の回転トルクが低下して風車の回転数が抑えられる。風車の回転数は上限が定格回転数に抑えられるため、風車の故障・破損を回避することができる。電動機式でなく機械的に可動式揚力ブレードのピッチ角を直接変化させるため、電気系トラブルの影響を受けずに回転数を確実に抑制することができる。大きな風力を受ける場合も、風車は回転が停止するのではなく、上限の定格回転数で回転し続けるため、定格出力で発電し続けることができる。
【0011】
本発明の第2の技術的側面によれば、固定式揚力ブレードと可動式揚力ブレードとが、互いに同数で且つ交互に設けられているため、可動式揚力ブレードのピッチ角が変化して、回転数が定格回転数に抑制される場合も、垂直回転軸を中心としたバランスの良い安定した回転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】架台に収納されたジャイロミル型風車の全体図。
図2】ジャイロミル型風車の全体図。
図3】ジャイロミル型風車の平面図。
図4】リンクバーが回転した状態を示す図3相当の断面図。
図5図3中矢示SA-SA線に沿う断面図。
図6】リンクバーを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図6は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0014】
本実施形態のジャイロミル型の風車1は長方体をした架台2の内部に収納されている。風車1は中心に垂直回転軸4を有し、その上下端が架台2の中央に回転自在に支持されている。垂直回転軸4の上部には垂直回転軸4の回転力により発電する発電機5が設けられている。この発電機5は垂直回転軸4が定格回転数で回転する時に安定した定格出力で発電することができる。
【0015】
垂直回転軸4の上下には、垂直回転軸4を中心に垂直回転軸4と一体的に所定の回転方向Rへ向けて回転する回転フレーム6が固定されている。上下回転フレーム6における90度ごとの角度位置には2枚ずつの固定式揚力ブレード7と可動式揚力ブレード8が交互に取付けられている。
【0016】
固定式揚力ブレード7は風車効率を最大にする最適なピッチ角P1で固定されている。可動式揚力ブレード8も垂直回転軸4が定格回転数を超えるまでは最適なピッチ角P1が維持される。これら固定式揚力ブレード7及び可動式揚力ブレード8が風Fを受けることにより、それぞれに揚力の回転方向成分が生じ、この揚力の回転方向成分により風車1は回転方向Rへ回転する。
【0017】
可動式揚力ブレード8は構造的には支軸9により回転フレーム6に軸支され、ピッチ角P1を変更することができる。上側の固定フレーム6における垂直回転軸4と可動式揚力ブレード8との間にはそれぞれリンクバー10が設けられている。リンクバー10の垂直回転軸4側の一端は回転軸11として固定フレーム6に軸支され、可動式揚力ブレード8側の他端は錘部12として一端よりも固定フレーム6の反回転方向側に位置している。
【0018】
リンクバー10はバネ(付勢手段)13による付勢力(引張力)で回転軸11よりも反回転方向側に位置するストッパ14に当接した状態になっている。リンクバー10はストッパ14に当接した状態で可動式揚力ブレード8と平行な状態が維持される。そして可動式揚力ブレード8の支軸9よりも反回転方向側の部分と、リンクバー10の途中部分とが金属製の剛性シャフト15で連結されている。
【0019】
垂直回転軸4が定格回転数を超えるまでは可動式揚力ブレード8は固定式揚力ブレード7と同じ最適なピッチ角P1となっている。そのため風車による発電効率を最大限に引き出すことができる。
【0020】
そして強風により風車1の回転数が定格回転数を超えると、リンクバー10の錘部12に生じる遠心力によりリンクバー10が回転し、リンクバー10と剛性シャフト15で連結された可動式揚力ブレード8が大きなピッチ角P2になる。
【0021】
可動式揚力ブレード8が大きなピッチ角P2になると、風車1の回転トルクが低下して回転数が抑えられる。そして風車1の回転数は上限が定格回転数に抑えられる。従って強風が吹いても風車1が定格回転数を超えて過回転になることはなく、風車1の故障や破損は回避される。このように電動機式でなく機械的に可動式揚力ブレード8のピッチ角を直接変化させるため、電気系トラブルの影響を受けずに回転数を確実に抑制することができる。大きな風力を受ける場合も、風車1は回転が停止するのではなく、上限の定格回転数で回転し続けるため、定格出力で発電し続けることができる。
【0022】
更に、固定式揚力ブレード7と可動式揚力ブレード8とが、互いに同数で且つ交互に設けられているため、可動式揚力ブレード8のピッチ角が変化して、風車1の回転数が定格回転数に抑制される場合も、垂直回転軸4を中心としたバランスの良い安定した回転を実現することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ジャイロミル型風車
4 垂直回転軸
6 回転フレーム
7 固定式揚力ブレード
8 可動式揚力ブレード
9 支軸
10 リンクバー
11 回転軸(一端)
12 錘部(他端)
13 バネ(付勢手段)
14 ストッパ
15 剛性シャフト
F 風
R 回転方向
P1、P2 ピッチ角
図1
図2
図3
図4
図5
図6