(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041619
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】流体分注システム、吐出ヘッド及びそのシステムによる流体分注方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230316BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20230316BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B41J2/175 167
G01N27/06 B
B41J2/14 611
B41J2/175 141
B41J2/175 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126221
(22)【出願日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】17/447,478
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】ベルグステッド・スティーブン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】クロール・パトリシア エー.
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2G060
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EA29
2C056EB07
2C056EB20
2C056EB39
2C056EB45
2C056EB53
2C056EC67
2C056FA03
2C056HA05
2C056KC13
2C056KC21
2C057AF61
2C057AG14
2C057AG70
2C057AL14
2C057AL17
2C057AM30
2C057BA04
2C057BA13
2G060AA05
2G060AF08
2G060AG03
2G060FA01
2G060FA09
2G060HC06
2G060KA05
(57)【要約】
【課題】流体リザーバおよび吐出ヘッドを有する流体カートリッジを備えた流体分注システムを提供する。
【解決手段】吐出ヘッドは、流体リザーバに流体流連通する複数の流体イジェクタを有する。流体導電率検出回路は、複数の流体イジェクタのうちの少なくとも1つに電気接続される。流体導電率検出回路は、流体イジェクタ内の流体を検出して特徴化するよう構成され、流体導電率検出回路は、複数の流体イジェクタのうちの少なくとも1つのイジェクタ電圧を調整することによって、流体の抵抗率を特徴化する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体リザーバおよび前記流体リザーバに流体流連通する複数の流体イジェクタを有する吐出ヘッドを有する流体カートリッジと、
前記複数の流体イジェクタのうちの少なくとも1つに電気接続され、前記流体イジェクタ内の流体を検出して特徴化するよう構成された流体導電率検出回路と、
を含み、前記流体導電率検出回路が、前記流体導電率検出回路への印加電圧を調整して、基準電流を変更することによって制御され、それにより、前記流体導電率検出回路が異なる特性抵抗率の流体を検出できるようにする流体分注システム。
【請求項2】
前記流体導電率検出回路が、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項3】
前記流体導電率検出回路が、前記吐出ヘッドに配置された請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項4】
前記流体導電率検出回路が、前記複数の流体イジェクタのうちの前記少なくとも1つの中に配置された第1電極、および前記複数の流体イジェクタのうちの前記少なくとも1つと関連する流体流路の中に配置された第2電極を含む請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項5】
前記流体カートリッジが、1つ以上の分離した流体リザーバを含む請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項6】
前記吐出ヘッドが、1つ以上の流体イジェクタのアレイを含み、前記流体イジェクタのアレイのそれぞれからの少なくとも1つの流体イジェクタが、前記流体導電率検出回路と関連する請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項7】
分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれが、前記複数の流体イジェクタのそれぞれと関連する請求項1に記載の流体分注システム。
【請求項8】
複数の流体イジェクタと、
前記複数の流体イジェクタのうちの少なくとも1つに電気接続され、前記流体イジェクタ内の流体を検出して特徴化するよう構成された流体導電率検出回路と、
を含み、前記流体導電率検出回路の感度が、前記流体導電率検出回路への印加電圧を調整して、基準電流を変更することによって制御され、それにより、前記流体導電率検出回路が異なる特性抵抗率の流体を検出できるようにする吐出ヘッド。
【請求項9】
前記流体導電率検出回路が、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す請求項8に記載の吐出ヘッド。
【請求項10】
前記流体導電率検出回路が、前記複数の流体イジェクタのうちの前記少なくとも1つの中に配置された第1電極、および前記複数の流体イジェクタのうちの前記少なくとも1つと関連する流体流路の中に配置された第2電極を含む請求項8に記載の吐出ヘッド。
【請求項11】
前記吐出ヘッドが、1つ以上の流体イジェクタのアレイを含み、前記流体イジェクタのアレイのそれぞれからの少なくとも1つの流体イジェクタが、前記流体導電率検出回路と関連する請求項8に記載の吐出ヘッド。
【請求項12】
分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれが、前記流体イジェクタのそれぞれと関連する請求項8に記載の吐出ヘッド。
【請求項13】
流体分注システムを用いて流体を分注する方法であって、
流体を流体リザーバに提供するステップと、
流路を用いて前記流体リザーバから前記流体を受け取るステップと、
吐出チャンバを用いて前記流体を前記流路から受け取るステップと、
流体導電率検出回路を使用して、前記流路と前記吐出チャンバの間に配置された任意の前記流体を検出して特徴化し、前記流体導電率検出回路の感度が、前記流体導電率検出回路への印加電圧を調整して、基準電流を変更することによって制御され、それにより、前記流体導電率検出回路が異なる特性抵抗率の流体を検出できるようにするステップと、
前記流体導電率検出回路が前記流路と前記吐出チャンバの間に前記流体が存在することを検出した時、流体分注シーケンスを開始するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
予期しない抵抗率を有する流体が前記吐出チャンバ内で検出された時、前記流体分注シーケンスを変更するステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記吐出チャンバ内で流体が検出されなかった時、前記流体分注シーケンスを変更するステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記吐出チャンバ内で流体が検出されなかった時、前記流体分注シーケンスを終了するステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記流体導電率検出回路が、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記流体導電率検出回路が、前記流路の中に配置された第1電極、および前記吐出チャンバの中に配置された第2電極を含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記吐出ヘッドが、1つ以上の吐出チャンバのアレイを含み、各アレイからの少なくとも1つの吐出チャンバが、前記流体導電率検出回路と関連する請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記吐出ヘッドが、複数の吐出チャンバを含み、分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれが、前記複数の吐出チャンバのそれぞれと関連する請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップに実装される流体感知回路に関するものであり、特に、チップ供給電圧の機能として回路の感度を調整する能力を有する流体感知回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルインクジェット技術は、印刷分野において伝統的に使用されてきたが、現在、薬物送達、マイクロドージング(micro-dosing)、ウェルプレートへの分注等の領域においても幅広く使用されるようになった。試料流体が使用者によってマイクロ流体チップに追加される場合、起動前に吐出チャンバが適切に準備されたかどうかを検出できることが重要である。
【0003】
流体チャンバが充填されたかどうかを判断する1つの方法は、チャンバの状態を表すデジタル値を出力する流体感知セルを使用して、チャンバ内の流体の有無を検出する方法である。
【0004】
しかしながら、このような回路は、チャンバ内の流体の種類を判断する能力がなく、高電気抵抗流体の場合、抵抗率が空のチャンバと酷似しているため、流体がチャンバ内に存在するかどうかを判断することさえできないこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、上述した課題を少なくともある程度克服することのできる吐出ヘッド設計が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、刺激の印加に比べて、基準電流を非直線状に調整することによって流体感知セルにおける試料の抵抗率を判断するための回路について説明する。
【0007】
上記および他の必要性は、流体リザーバおよび吐出ヘッドを有する流体カートリッジを備えた流体分注システムによって満たされる。吐出ヘッドは、流体リザーバに流体流連通する流体イジェクタを有する。流体導電率検出回路は、流体イジェクタのうちの少なくとも1つに電気接続される。流体導電率検出回路は、流体イジェクタ内の流体を検出して特徴化するよう構成され、流体導電率検出回路は、流体イジェクタのうちの少なくとも1つのイジェクタ電圧を調整することによって、流体の抵抗率を特徴化する。
【0008】
本発明の本態様に係るいくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す。いくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、吐出ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、流体イジェクタのうちの少なくとも1つの中に配置された第1電極、および流体イジェクタのうちの少なくとも1つと関連する流体流路の中に配置された第2電極を含む。いくつかの実施形態において、流体カートリッジは、1つ以上の分離した流体リザーバを含む。いくつかの実施形態において、吐出ヘッドは、1つ以上の流体イジェクタのアレイを含み、流体イジェクタのアレイのそれぞれからの少なくとも1つの流体イジェクタは、流体導電率検出回路と関連する。いくつかの実施形態において、分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれは、流体イジェクタのそれぞれと関連する。
【0009】
本発明の別の態様に基づき、流体イジェクタおよび流体イジェクタのうちの少なくとも1つに電気接続された流体導電率検出回路を有する吐出ヘッドについて説明する。流体導電率検出回路は、流体イジェクタ内の流体を検出して特徴化するよう構成され、流体導電率検出回路は、流体イジェクタのうちの少なくとも1つのイジェクタ電圧を調整することによって、流体の抵抗率を特徴化する。
【0010】
本発明の本態様に係る様々な実施形態において、流体導電率検出回路は、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す。いくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、流体イジェクタのうちの少なくとも1つの中に配置された第1電極、および流体イジェクタのうちの少なくとも1つと関連する流体流路の中に配置された第2電極を含む。いくつかの実施形態において、吐出ヘッドは、1つ以上の流体イジェクタのアレイを含み、流体イジェクタのアレイのそれぞれからの少なくとも1つの流体イジェクタは、流体導電率検出回路と関連する。いくつかの実施形態において、分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれは、流体イジェクタのそれぞれと関連する。
【0011】
本発明のさらに別の態様に基づき、流体分注システムを用いて流体を分注する方法について説明する。流体を流体リザーバに提供し、流路を用いて流体リザーバから受け取る。吐出チャンバを用いて流体を流路から受け取る。流体導電率検出回路を使用して、流路と吐出チャンバの間に配置された任意の流体を検出して特徴化する。流体導電率検出回路は、吐出チャンバ内に配置された流体イジェクタのイジェクタ電圧を調整することによって、流路と吐出チャンバの間に配置された流体の有無を検出し、その抵抗率を特徴化する。流体導電率検出回路が流路と吐出チャンバの間に流体が存在することを検出した時、流体分注シーケンスを開始する。
【0012】
本発明の本態様に係るいくつかの実施形態において、予期しない抵抗率を有する流体が吐出チャンバ内で検出された時、流体分注シーケンスを変更する。いくつかの実施形態において、吐出チャンバ内で流体が検出されなかった時、流体分注シーケンスを終了する。いくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、不均衡なバイアス電圧と基準電流を示す。いくつかの実施形態において、流体導電率検出回路は、流路の中に配置された第1電極、および吐出チャンバの中に配置された第2電極を含む。いくつかの実施形態において、吐出ヘッドは、1つ以上の吐出チャンバのアレイを含み、各アレイからの少なくとも1つの吐出チャンバは、流体導電率検出回路と関連する。いくつかの実施形態において、吐出ヘッドは、複数の吐出チャンバを含み、分離および独立した流体導電率検出回路のそれぞれは、吐出チャンバのそれぞれと関連する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る流体カートリッジの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る流体吐出ヘッドの平面および斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る吐出ヘッドの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態に係るヒーターチップの平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施形態に係るチャネル層の平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の1つの実施形態に係るノズル層の平面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の1つの実施形態に係る流体感知回路の概略図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の1つの実施形態に係る流体感知回路の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の1つの実施形態に係る印加した電圧とイジェクタ電圧の間の関係を示すチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の1つの実施形態に係るVPWR電圧の減少に伴うバイアス電圧と基準電流の間の関係を示すチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の1つの実施形態に係るVPWR設定と流体抵抗検出範囲の間の関係を示すチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の1つの実施形態に係る流体感知回路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、図面を参照すると、
図1において、本発明の1つの実施形態に係る流体カートリッジ100の斜視図が示されている。本実施形態において、カートリッジ100は、6個の流体リザーバ102を有するリザーバ本体104を有するが、別の実施形態において、リザーバ本体104が別の数量のリザーバ102を有し、リザーバ102が異なる形態で構成されてもよいことを理解されたい。吐出ヘッド200(
図1において明白に示していない)は、本実施形態において、位置106に取り付けられるが、別の実施形態において、吐出ヘッド200は、別の位置に取り付けられるか、あるいはリザーバ本体104から切り離されて、流体連通している。
【0015】
図3を参照すると、本発明の1つの実施形態に係る吐出ヘッド200の断面図が示されている。本実施形態において、吐出ヘッド200は、ヒーターチップ302、流路層304、およびノズルプレート層306の3つの層を含む。
図3に示すように、チップ302は、リザーバ本体104(
図3に図示していない)のリザーバ102に流体連通しているビア202を含む。そのため、ビア202は、吐出ヘッド200の別の部分に流体を提供する。流路層304は、ビア202からヒートチップ302のヒーター402を取り囲む吐出チャンバ312に流体を連通させる流路310を含む。ノズル層306は、流路層304内の吐出チャンバ312およびチップ302上のヒーター402の上方に配置されたノズル308を含み、ヒーター402が通電した時に、流体を外に出す。
【0016】
この吐出ヘッド200の説明は、非常に基本的なものであるが、吐出ヘッド200の製造に使用される工法および材料のより詳しい説明を容易に入手できることを理解されたい。
【0017】
ここで、
図4を参照すると、本発明の1つの実施形態に係るヒーター402、トレース404、およびビア領域202を含むヒーターチップ302の平面図が示されている。導電性トレース404は、ヒーター402に電荷を伝導する。しかしながら、図面を必要以上に妨げないように、
図4では、これらの電気トレース404のいくつかのみを示し、同様に理由により、他の図面においては、全く図示しない。図面において、ビア領域202、ヒーター402、およびトレース404の数および位置が示されているが、別の実施形態において、異なる数、位置、および配置のビア領域202、ヒーター402、およびトレース404が存在することを理解されたい。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る流体吐出ヘッド200の平面および斜視図である。
図5は、
図4のチップ302と一緒に使用される流路層304の流路310および吐出チャンバ312を示したものである。
図6は、
図4のチップ302と一緒に使用されるノズル層306のノズル308を示したものである。
【0019】
図4に示すように、位置408は、
図7Aおよび
図7Bに示した流体導電率検出回路700の位置の1つの実施形態を示したものであり、後で詳しく説明するように、流路310および吐出チャンバ312に流体が充填されたかどうかを判断するのに適している。様々な実施形態において、流体導電率検出回路700の複数のコピーを各ヒーター402と、またはヒーター402のいくつかと関連して配置してもよい。
【0020】
吐出チャンバ312が流体を収容しているかどうかを判断するために、1つの実施形態において、
図11で詳しく説明するように、位置408に流体導電率検出回路700を配置してもよい。電極1104および1106を含む導電率検出装置1102を簡素化した平面図に示す。電極1104は、ヒーター402上に配置することができる。第2電極1106は、流路310を跨ぐように配置される。これらの2つの電極1104および1106は、それぞれリード1110および1108に電気接続される。これらのリード1110および1108は、
図7Aにおいても示されている。電極1104および1106のそれぞれは、デジタル分注装置200によって分注された流体に対して抵抗力のある金属、例えば、タンタル等で作ることができる。
【0021】
第1電極1104および第2電極1106は、流路310内に導電性流体が存在する時に、互いに電気接続される。流路310内に導電性液体が存在しない時、2つの電極1104と1106の間に開回路が存在する。様々なバイアス電圧を電極1104および1106に印加し、感知した電圧と電流を比較することによって、流路310内の液体の有無を検出することができ、流体の特性のいくつかを判断することができる。
【0022】
図7Aおよび
図7Bを参照すると、基準電流回路706および714、バイアス電圧基準702、感知素子およびバイアス電圧リミッタ704、708、および710、クロック信号生成器718、電流比較器712、および出力ラッチおよびレジスタ716を含む流体導電率検出回路700の6つの主要部分が示されている。以下、これらの回路のそれぞれについてさらに詳しく説明する。線720、722、および724は、
図7Aおよび
図7Bの回路の任意に分割された描写間の電気接続を示す。
【0023】
基準電流回路706および714は、VPWR電圧を追跡する基準電流を生成し、幅広く調整することができる。これにより、異なる等価抵抗を有する流体の感度調整が行えるようになり、耐ノイズ性と感度の間のバランスを提供することができる。
【0024】
バイアス電圧回路702は、感知素子(バイアス電圧リミッタ)704、708、および710に用いる電圧基準を生成し、変化するVPWR電圧によらずバイアス電圧をより一定にする制限動作を有する。大きなバイアス電圧は、感知素子704、708、および710を損傷し、液体の正確な検出を妨げる可能性があるため、これにより、所望の制限を超えずに感知素子704、708、および710の電圧を最大化できるようになる。
【0025】
感知素子704、708、および710およびバイアスリミッタは、基準位相と比較位相の切換位相を制御する。基準位相において、パッドは、バイアス電圧に制限されるが、比較位相において、パッドは、LGNDに接続される。感知パッドは、
図7Aに示すように、比較位相および基準位相の両方において、リード1108によってバイアス電圧に接続され、制限される。
【0026】
クロック信号生成器718は、非オーバーラップ(non-overlapping)のクロック信号を生成する。基準位相信号および比較位相信号は、ブレークビフォメーク(break-before-make)型の信号である。これは、比較前にセンサ素子704、708、および710を安定させることによって、センサの充電を制御するのに役立つ。
【0027】
電流比較器712は、比較位相の流体感知電流から基準電流を引くことによって検出する。比較電圧がゼロよりも大きい場合、流体が検出されている。
【0028】
出力ラッチおよびレジスタ716は、検出した比較をラッチして、次の比較操作のためにリセット可能になる。出力レジスタは、新しい比較が完了するまで、検出結果を保持する。
【0029】
図8は、マイクロ流体チップイジェクタ電圧と流体感知回路のVDDに印加された内部発生電圧の間の関係のチャート800を示したものである。図のように、イジェクタ電圧(VPWR)を調整することによって、回路電圧(LPWR)を略直線状に変化させることができる。
【0030】
図9は、VPWR電圧(横座標に示す)の減少に伴うトレース902で示した感知出力電圧(左側の縦軸で測定された電圧)、トレース906で示したバイアス電圧、および基準電流904(右側の縦軸で測定されたアンペア数)の間の関係のチャート900を示したものである。回路にとっての重要なメリットは、VPWRが約12Vから約9Vに減少した時、バイアス電圧906は約980mVから約765mVにおよそ直線状に進むが、基準電流904は約2420nAから約319nAに非直線状に減少することである。これは、本例において、基準電流904が約87%減少したのに対し、バイアス電圧906が約22%減少したことを示す。バイアス電圧と基準電流が不均衡になると、流体導電率検出回路700において大きな信号が生成され、その一方で感知点が減少する。
【0031】
図10は、吐出ヘッド200に使用される可能性のあるいくつかの異なる流体1002~1012に用いる流体導電率検出回路700の試験能力のチャート1000を示したものである。流体1002~1012は、異なる抵抗率を有し、流体1002の抵抗率が最も高く、流体1012の抵抗率が最も低い。各流体1002~1012の抵抗率をVPWRの関数として約6V~約14Vまで描画する。
【0032】
また、チャート1000において、基準電流1014および様々なVPWR設定を描画する。VPWRスケールに沿った任意の点において、流体導電率検出回路700は、描画された基準電流1014を上回る抵抗率を有する流体1002~1012の抵抗率を検出して特徴化することができる。そのため、約12Vでは、本実施形態に関し、流体導電率検出回路700は、流体1002~1006を検出して特徴化することができる。約7Vでは、流体導電率検出回路700は、流体1002~1012を検出して特徴化することができる。
【0033】
引用した先行文献を超える本発明の新規の態様は、不均衡なバイアス電圧と基準電流を有する流体検出回路を含み、マイクロ流体チップイジェクタ電圧を下げることによって、流体の抵抗率を判断する能力を有する。
【0034】
前述した本発明の実施形態の説明は、例示および説明を目的として示されてきた。本発明を、網羅的とする、または開示された形態に限定する意図はない。上記の教示を考慮すると、自明の修正または変更が可能となろう。実施形態は、本発明の原理およびそのこれの実用的な用途を最も良く表わすために、また、それによって、考えられる特定の用途に適するように、様々な実施形態で、および様々な修正とともに、当業者が本発明を用いることが可能となるよう、選択され、説明された。公正に、合法的に、かつ公平に権限を与えられた広がりに従って解釈される場合に、このような修正および変更の全てが添付の特許請求の範囲により決定された本発明の範囲内にある。