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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041627
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】可搬型溶接ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/00 20060101AFI20230316BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20230316BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B23K9/00 501B
B23K9/12 331C
B23K9/12 331H
B23K37/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134299
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2021148562の分割
【原出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岸口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】片山 翼
(72)【発明者】
【氏名】木村 文映
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩良
(72)【発明者】
【氏名】松本 知史
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YB03
4E081YY02
4E081YY03
(57)【要約】
【課題】溶接ロボットを容易且つ精度良く制御することが可能で、且つ小型化が可能な可搬型溶接ロボットシステムを提供する。
【解決手段】可搬型溶接ロボットシステム100は、エレクションピース5が設けられた鋼管6の外周に沿って配置されるガイドレール7上を移動しつつ前記鋼管6を溶接する。可搬型溶接ロボットシステム100は、本体8と、溶接ロボット20と、を有し、前記溶接ロボット20は、溶接トーチ1と、前記移動の方向に沿った軸であるB軸X回りに前記溶接トーチ1を回動させることができるB軸回動部2と、B軸Xと垂直な軸であるT軸X回りに溶接トーチ1を回動させることができるT軸回動部12と、を備え、本体8と溶接ロボット20との間には、収納スペース9が設けられ、収納スペース9により、溶接トーチ1が退避位置まで退避させられた場合でも本体8と溶接ロボット20とが干渉しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクションピースが設けられた鋼管の外周に沿って配置されるガイドレール上を移動しつつ前記鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットシステムであって、
本体と、
溶接ロボットと、
を有し、
前記溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記移動の方向に沿った軸であるB軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるB軸回動部と、
前記B軸と垂直な軸であるT軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるT軸回動部と、
を備え、
前記T軸回動部は、前記B軸回動部によって前記B軸回りに回動させられ、
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記ガイドレールとの間に設けられ、
前記B軸回動部及び前記T軸回動部は、前記本体側から、前記B軸回動部、前記T軸回動部の順に並んでおり、
前記B軸回動部は、前記溶接トーチを、溶接位置から、前記溶接トーチが前記エレクションピースと干渉しない退避位置まで、退避させることができ、
前記本体と前記溶接ロボットとの間には、前記B軸回動部により回動させられる前記溶接トーチの後端が収納される収納スペースが設けられ、
前記収納スペースにより、前記溶接トーチが前記退避位置まで退避させられた場合でも前記本体と前記溶接ロボットとが干渉しない、
ことを特徴とする可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項2】
前記B軸回動部は、B軸モータユニット及びB軸減速ユニットを含み、
前記B軸モータユニット及び前記B軸減速ユニットは、前記鋼管の長手方向に沿って配置され、
且つ、前記長手方向に沿って見て前記本体と重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項3】
第1制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
を更に備え、
前記第1制御部は、前記B軸判定部の判定結果を用い、前記溶接トーチを鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項4】
前記可搬型溶接ロボットシステムによる溶接の垂れ落ちを防止するための部分を垂れ落ち防止溶接部とし、前記垂れ落ち防止溶接部を前記溶接トーチの溶接により形成可能な位置に前記溶接トーチを回動させるよう、前記B軸回動部を制御する第3制御部、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項5】
エレクションピースが設けられた鋼管の外周に沿って配置されるガイドレール上を移動しつつ前記鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットシステムであって、
本体と、
溶接ロボットと、
を有し、
前記溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記移動の方向に沿った軸であるB軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるB軸回動部と、
前記B軸と垂直な軸であるT軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるT軸回動部と、
を備え、
前記T軸回動部は、前記B軸回動部によって前記B軸回りに回動させられ、
前記B軸回動部、前記T軸回動部、前記溶接トーチは、前記本体側から、前記B軸回動部、前記T軸回動部、前記溶接トーチ、の順に並ぶ
ことを特徴とする可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項6】
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記鋼管との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項7】
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記ガイドレールとの間に設けられている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項8】
前記T軸回動部は、前記溶接トーチと前記B軸回動部との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項9】
前記T軸回動部は、前記溶接トーチに沿って設けられたT軸モータユニット及びT軸減速ユニットを含む、
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項10】
前記T軸モータユニット及び前記T軸減速ユニットは、前記T軸に沿って配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項11】
第1制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
前記T軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するT軸判定部と、
を更に備え、
前記第1制御部は、前記B軸判定部の判定結果を用い、前記溶接トーチを鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御し、
前記第1制御部は、前記B軸判定部及び前記T軸判定部それぞれの判定結果を用い、前記溶接トーチを前記鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御する、
ことを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項12】
第2制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
前記T軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するT軸判定部と
前記本体を前記鋼管に垂直な方向に移動させ、且つ、前記鋼管に平行な方向に沿って移動させる本体移動部と、
を更に備え、
前記第2制御部は、前記B軸判定部及び前記T軸判定部それぞれの判定結果を用い、前記本体を鉛直方向上向き且つ前記鋼管に近づく方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【請求項13】
前記本体及び前記溶接ロボットの重量は、25kg以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の可搬型溶接ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型溶接ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなどの大型建築物には、角形の鋼管を溶接により継ぎ足して形成された鋼管柱が用いられている。角形の鋼管の継ぎ足しには、ガイドレールに沿って鋼管の周囲を巡回可能な溶接ロボットが利用される。具体的には、まず、鋼管同士を建方治具によって仮止めした状態で、溶接ロボットにより鋼管の初期溶接を行う。その後、建方治具を鋼管から取り外し、溶接ロボットにより鋼管の本溶接を行う。
【0003】
初期溶接の際には、溶接ロボットと建方治具との接触を防止する必要がある。特許文献1には、角柱状の被溶接物の角部に拘束治具を差渡して接合し、溶接トーチを接近離間させる接近離間装置で被溶接部の継手部どうしを溶接する溶接設備が開示されている。角部では、拘束治具の開口の一方から角部を溶接し、続いて溶接トーチを拘束治具から回避した状態で角部を通過し、拘束治具の開口の他方から角部の溶接を行う。
特許文献2には、2台の溶接ロボットを使用する建築用角形鋼管柱の溶接方法が開示されている。建て入れ治具で区切られた四半部の内、対向する四半部を溶接ロボットで溶接し、次いで他の溶接ロボットで残りの2つの四半部を溶接する。その後、建て入れ治具を撤去して、2台の溶接ロボットで残りの溶接を行う。
特許文献3は溶接システムに関する。特許文献3では、3次元作業座標空間内のx軸方向、y軸方向及びz軸方向を含む3軸と溶接トーチを回転させる軸を駆動機構とする駆動体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-229676号公報
【特許文献2】特開2018-53626号公報
【特許文献3】特許第5948521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る溶接設備は、水平方向に旋回するための旋回手段と、鉛直面内に回転するアームと、を備える。溶接設備の土台側に旋回手段が設けられ、該旋回手段より先端側にアームが設けられている。該アームの先端に溶接トーチを備える。すなわち、特許文献1の溶接設備は、溶接設備の土台側から、旋回手段、アーム、溶接トーチ、の順に配置される構成である。このような構成では、水平方向に旋回手段が回転すると溶接トーチ及びアームが旋回するので、設備が大型化、重量化する傾向にある。このため、溶接設備の搬送時や設置時に多くの作業者が必要となったり、また重機が必要になったりする場合がある。また、特許文献1の溶接設備は、被溶接物の角部において、スリットを設けた裏当金を使用するため、角部でのつなぎ溶接時に溶け落ち等の溶接欠陥が発生する場合があり、角部において溶接の品質を低下させる虞がある。
特許文献2に係る溶接方法では、角形鋼管柱の溶接部1箇所当たり2台の溶接ロボットが必要となり、作業時間全体に占める溶接ロボットの取付作業の比率が高くなるため、作業能率が低下する虞がある。また、ティーチングと溶接を複数繰り返すので、作業者が1組の角形鋼管柱の溶接作業に従事する必要がある。また、特許文献1の溶接設備と同様に、溶接ロボットの土台側で水平方向に旋回する構成である。
特許文献3に係る溶接システムでは、溶接毎に最適な狙い角で溶接することが容易ではないため、溶接品質が低下する虞がある。また、最終層の溶接時に垂れ落ちを防止するための部材(例えば、セラミックタブ)を使用する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、溶接ロボットを容易且つ精度良く制御することが可能で、エレクションピースを回避することが容易となり、且つ小型化が可能な可搬型溶接ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の知見に鑑みてなされた。本発明の要旨は以下の手段を採用する。
(1)本発明の一実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムは、
エレクションピースが設けられた鋼管の外周に沿って配置されるガイドレール上を移動しつつ前記鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットシステムであって、
本体と、
溶接ロボットと、
を有し、
前記溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記移動の方向に沿った軸であるB軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるB軸回動部と、
前記B軸と垂直な軸であるT軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるT軸回動部と、
を備え、
前記T軸回動部は、前記B軸回動部によって前記B軸回りに回動させられ、
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記ガイドレールとの間に設けられ、
前記B軸回動部及び前記T軸回動部は、前記本体側から、前記B軸回動部、前記T軸回動部の順に並んでおり、
前記B軸回動部は、前記溶接トーチを、溶接位置から、前記溶接トーチが前記エレクションピースと干渉しない退避位置まで、退避させることができ、
前記本体と前記溶接ロボットとの間には、前記B軸回動部により回動させられる前記溶接トーチの後端が収納される収納スペースが設けられ、
前記収納スペースにより、前記溶接トーチが前記退避位置まで退避させられた場合でも前記本体と前記溶接ロボットとが干渉しないことを特徴とする可搬型溶接ロボットシステム。
(2)上記(1)において、
前記B軸回動部は、B軸モータユニット及びB軸減速ユニットを含み、
前記B軸モータユニット及び前記B軸減速ユニットは、前記鋼管の長手方向に沿って配置され、
且つ、前記長手方向に沿って見て前記本体と重なってもよい。
(3)上記(1)又は(2)において、
第1制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
を更に備え、
前記第1制御部は、前記B軸判定部の判定結果を用い、前記溶接トーチを鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御してもよい。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項において、
前記可搬型溶接ロボットシステムによる溶接の垂れ落ちを防止するための部分を垂れ落ち防止溶接部とし、前記垂れ落ち防止溶接部を前記溶接トーチの溶接により形成可能な位置に前記溶接トーチを回動させるよう、前記B軸回動部を制御する第3制御部、を更に備えてもよい。
(5)本発明の一実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムは、
エレクションピースが設けられた鋼管の外周に沿って配置されるガイドレール上を移動しつつ前記鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットシステムであって、
本体と、
溶接ロボットと、
を有し、
前記溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記移動の方向に沿った軸であるB軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるB軸回動部と、
前記B軸と垂直な軸であるT軸回りに前記溶接トーチを回動させることができるT軸回動部と、
を備え、
前記T軸回動部は、前記B軸回動部によって前記B軸回りに回動させられ、
前記B軸回動部、前記T軸回動部、前記溶接トーチは、前記本体側から、前記B軸回動部、前記T軸回動部、前記溶接トーチ、の順に並ぶ。
(6)上記(5)において、
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記鋼管との間に設けられていてもよい。
(7)上記(5)又は(6)において、
前記B軸回動部は、前記T軸回動部と前記ガイドレールとの間に設けられていてもよい。
(8)上記(5)乃至(7)のいずれか1項において、
前記T軸回動部は、前記溶接トーチと前記B軸回動部との間に設けられていてもよい。
(9)上記(5)乃至(8)のいずれか1項において、
前記T軸回動部は、前記溶接トーチに沿って設けられたT軸モータユニット及びT軸減速ユニットを含んでもよい。
(10)上記(9)において、
前記T軸モータユニット及び前記T軸減速ユニットは、前記T軸に沿って配置されてもよい。
(11)上記(5)乃至(10)のいずれか1項において、
第1制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
前記T軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するT軸判定部と、
を更に備え、
前記第1制御部は、前記B軸判定部の判定結果を用い、前記溶接トーチを鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御し、
前記第1制御部は、前記B軸判定部及び前記T軸判定部それぞれの判定結果を用い、前記溶接トーチを前記鉛直方向上向きに回動させるように前記B軸回動部を制御してもよい。
(12)上記(5)乃至(11)のいずれか1項において、
第2制御部と、
前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部と、
前記T軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するT軸判定部と
前記本体を前記鋼管に垂直な方向に移動させ、且つ、前記鋼管に平行な方向に沿って移動させる本体移動部と、
を更に備え、
前記第2制御部は、前記B軸判定部及び前記T軸判定部それぞれの判定結果を用い、前記本体を鉛直方向上向き且つ前記鋼管に近づく方向に移動させてもよい。
(13)上記(1)乃至(12)のいずれか1項において、
前記本体及び前記溶接ロボットの重量は、25kg以下であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶接ロボットを容易且つ精度良く制御することが可能で、エレクションピースを回避することが容易となり、且つ小型化が可能な可搬型溶接ロボットシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムの一例を示す斜視図である。
図2図1の側面図を一部抜粋した図である。
図3】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムにおいて、溶接トーチが溶接位置にある状態を説明する側面図である。
図4】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムにおいて、溶接トーチが退避位置にある状態を説明する側面図である。
図5】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムにおいて、溶接トーチが正立溶接位置にある状態を説明する平面図である。
図6】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムにおいて、溶接トーチが傾斜溶接位置にある状態を説明する平面図である。
図7】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムの制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図8】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムの制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図9】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムの制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図10】本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステムの制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0011】
以下の説明では、鉛直方向をDv、溶接ロボット20がガイドレール7に沿って移動する方向を走行方向Dr、鉛直方向Dv及び走行方向Drに直交する方向を近接隔離方向Dhとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100の一例を示す斜視図である。図1に示されるように、可搬型溶接ロボットシステム100は、鉛直方向Dvに並べて配置された鋼管6の端部同士を溶接するために用いられる。図2は、図1の側面図を一部抜粋した図であり、便宜上、半分側のみを示す。
鋼管6は、4つの円弧状の角部と、角部同士をそれぞれ接続する4つの直線部とを有する角形鋼管である。鋼管6は鉛直方向Dvに延びる。鋼管6が溶接される前は、鋼管6は、エレクションピース(建方治具)5により仮止めされている。鋼管6の端部同士を突き合わせて、4つのエレクションピース5が鋼管6の4つの直線部にそれぞれ取り付けられて仮止めされている。
【0013】
可搬型溶接ロボットシステム100は、エレクションピース5が設けられた鋼管6の外周に沿って配置されるガイドレール7上を移動しつつ鋼管6を溶接する。
図1に示されるように、ガイドレール7は、鋼管6の外周に沿って配置される。ガイドレール7は、鋼管6の周方向に環状に鋼管6を囲むように配置される。
【0014】
可搬型溶接ロボットシステム100は、本体8と、溶接ロボット20と、を有する。本体8は、可搬型溶接ロボットシステム100の基台である。本体8は、ケース23、プレート22、及び本体移動部604と、を備える。ケース23は、本体8の外側を覆うように設けられ、本体移動部604に接続される。本体移動部604の詳細については後述する。プレート22はケース23に接続される。プレート22はケース23から鉛直方向Dvの下方へ延びる。プレート22はケース23と溶接ロボット20とを接続する。本体8の下側に溶接ロボット20が設けられる。
【0015】
本体8および溶接ロボット20は、スライド部21がガイドレール7上を摺動することで、走行方向Drに移動する。スライド部21は、モータ(サーボモータ)(不図示)が駆動することでガイドレール7上を摺動する。本体8および溶接ロボット20は走行方向Drの双方向に移動することができる。本体8がプレート22を鉛直方向Dvに沿ってスライドさせることで、溶接ロボット20を鉛直方向Dvに沿って移動させることができる。本体8が本体移動部604を近接隔離方向Dhにスライドさせることで、溶接ロボット20を近接隔離方向Dhに移動させることができる。
【0016】
溶接ロボット20は、溶接トーチ1と、前記移動の方向(走行方向)Drに沿った軸であるB軸X回りに溶接トーチ1を駆動源により回動させることができるB軸回動部2と、を備える。
溶接トーチ1は、鋼管6の端部同士の溶接に用いられる。溶接トーチ1による溶接は、例えばアーク溶接によって行われる。溶接トーチ1内には、溶接ワイヤ110が配置される。
【0017】
図3及び図4を参照して、B軸回動部2について詳述する。図3及び図4では、便宜上、半分側のみを示す。
B軸回動部2は、本体8と溶接ロボット20との間に設けられる。B軸回動部2は、本体8に接続する。B軸回動部2は、B軸X回りに溶接トーチ1を回動させることができる。B軸Xは走行方向Drに延びる。B軸Xは、図2から図4においては、紙面奥行き方向に延びる。
図3に示されるように、B軸回動部2をB軸X回りに回動させることで、溶接トーチ1の溶接角度を調整することができる。これにより、溶接トーチ1のねらい角Awを調整することができる。ねらい角Awは、溶接トーチ1の先端に支持された溶接ワイヤ110の鉛直方向Dvの向きである。ねらい角Awは、鋼管6の溶接部位の状態に応じて適切に調整される。
なお、図3においては、溶接トーチ1のねらい角Awは調整されるものの、溶接トーチ1の先端の溶接ワイヤ110は鋼管6の溶接部位に接触又は近接しており、溶接トーチ1による鋼管6の溶接が可能となっている。溶接トーチ1による溶接が可能な範囲内における溶接トーチ1の位置を、溶接位置Pwと称する。
【0018】
また、B軸回動部2は、図4に示されるように、溶接トーチ1を溶接位置Pwから、溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しない退避位置Prまで退避させる退避機能を兼ねている。すなわち、B軸回動部2は、溶接トーチ1をB軸X回りに大きく回動させることにより、溶接ワイヤ110を鋼管6の溶接部位から離間させ、退避位置Prまで移動させる。退避位置Prは、溶接ワイヤ110及びこれを支持する溶接トーチ1の先端部がエレクションピース5と干渉しないときの溶接トーチ1の位置である。
【0019】
このように、溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しない退避位置Prまで退避させることにより、溶接ロボット20を、エレクションピース5との接触を防止しつつエレクションピース5を走行方向Drに跨いで通過させることができる。したがって、エレクションピース5を跨いだ連続的な溶接を行うことができる。
【0020】
本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100によれば、溶接トーチ1が駆動源により可搬型溶接ロボットシステム100の走行方向Drに沿ったB軸X回りに回動するので、溶接ロボット20を容易且つ精度良く制御することが可能で、且つ、小型化が可能な可搬型溶接ロボットシステムを提供することができる。
【0021】
本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100は、図2に示されるように、本体8と溶接ロボット20との間には、B軸回動部2により回動させられる溶接トーチ1の後端が収納される収納スペース9が設けられてもよい。すなわち、溶接トーチ1がB軸X回りに回動しても、溶接ロボット20が本体8と接触しない。溶接トーチ1が最も本体8に近づく場合、すなわち溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しない退避位置Prまで退避させた場合においても、溶接トーチ1および溶接ロボット20の後端が収納スペース9に収納されて本体8と溶接ロボット20とが干渉しない。
なお、溶接トーチ1および溶接ロボット20の後端とは、溶接トーチ1における溶接ワイヤ110が支持される側とは反対側の端部である。
【0022】
本体8と溶接ロボット20との間に収納スペース9を設けることにより、収納スペース9を有効利用することができる。すなわち、溶接トーチ1および溶接ロボット20の後端を収納スペース9に収納させることでエレクションピース5との干渉を効率的に避けることができ、システム全体を小型化することができる。
【0023】
B軸回動部2は、B軸モータユニット10及びB軸減速ユニット11を含んでもよい。この場合、図2に示されるように、B軸モータユニット10及びB軸減速ユニット11は、鋼管6の長手方向(鉛直方向Dv)に沿って配置され、且つ、長手方向に沿って見て本体8と重なる。図2においては、鉛直方向Dvの上側から、B軸モータユニット10、B軸減速ユニット11、の順に並んでいる。B軸回動部2は、溶接トーチ1の本体8側に設けられる。
B軸モータユニット10は、B軸Xを回転させるためのモータである。
B軸モータユニット10はB軸減速ユニット11に接続し、B軸モータユニット10の駆動をB軸減速ユニット11に伝達する。B軸減速ユニット11はB軸回動部2に接続し、B軸回動部2を動作する。これにより、B軸回動部2をB軸X回りに回動させることで、溶接トーチ1の溶接角度を調整する。
【0024】
B軸モータユニット10及びB軸減速ユニット11が、鋼管6の長手方向に沿って配置され、且つ、長手方向に沿って見て本体8と重なるような配置とすることで、エレクションピース5を効率的に避けることができ、溶接ロボット20を小型化することができる。
【0025】
溶接ロボット20は、B軸Xと垂直な軸であるT軸X回りに溶接トーチ1を回動させることができるT軸回動部12を更に備えてもよい。この場合、T軸回動部12は、B軸回動部2によってB軸X回りに回動させられる。T軸回動部12は、溶接トーチ1の本体8側に設けられる。T軸回動部12は、B軸回動部2と溶接トーチ1との間に設けられている。B軸回動部2が溶接トーチ1をB軸X回りに回動させると、必然的にT軸回動部12もB軸X回りに回動する。
【0026】
図5及び図6を参照して、T軸回動部12について詳述する。図5は、溶接トーチ1が正立溶接位置にある状態を説明する平面図であり、溶接トーチ1を鉛直方向Dvの下側から見た図である。図6は、溶接トーチ1が傾斜溶接位置にある状態を説明する平面図であり、溶接トーチ1を鉛直方向Dvの下側から見た図である。
T軸回動部12は、T軸X回りに溶接トーチ1を回動させることができる。T軸Xは、B軸Xと垂直な方向に延びる。T軸Xは、図5及び図6においては、紙面奥行き方向に延びる。T軸Xは、図3及び図4においては、Dv-Dh平面に延びる。なお、溶接トーチ1の長手方向が近接隔離方向Dhと平行である場合、T軸Xの長手方向は鉛直方向Dvと平行になる。
図5に示されるように、T軸回動部12をT軸X回りに回動させることで、溶接トーチ1の溶接角度を調整することができる。これにより、溶接トーチ1のトーチ角Atを調整することができる。トーチ角Atは、溶接トーチ1の先端に支持された溶接ワイヤ110の走行方向Drの向きである。トーチ角Atは、鋼管6の溶接部位の状態、及び溶接ロボット20とエレクションピース5との相対位置に応じて適切に調整される。
図5において、溶接トーチ1のトーチ角Atは0である。このときの溶接トーチ1の位置を、正立溶接位置Pw0とする。正立溶接位置Pw0とは、溶接トーチ1が鋼管6に対して正対する位置である。溶接トーチ1が正立溶接位置Pw0に位置するとき、溶接トーチ1は、溶接方向(走行方向Dr)に対して直角に正立し、溶接方向が双方向いずれであっても同条件で溶接を行うことができる。なお、正立溶接位置Pw0では、溶接トーチ1の長手方向に沿って延びる直線が、鋼管6の平面のうち溶接トーチ1が対向する平面に垂直な直線となる。
【0027】
図6に示されるように、T軸回動部12は、溶接トーチ1のトーチ角Atを変更し、溶接トーチ1を傾斜させて、溶接トーチ1の先端を鋼管6とエレクションピース5との間に潜り込ませる。これにより、鋼管6のうちエレクションピース5に覆われる部分の溶接を行うことができる。このときの溶接トーチ1の位置を、傾斜溶接位置Pw1とする。
【0028】
T軸回動部12を備えることで、溶接トーチ1を小さいトルクでT軸X回りに回動させることができる。また、B軸X回りの回動が小さくても鋼管6に設置されたエレクションピース5を確実に避けることができ、T軸X回りの回動による溶接トーチ1の回動半径が小さく、且つ、B軸X回りの回動を小さくすることができる。よって、溶接ロボット20を小型化することができる。なお、溶接トーチ1の位置を次のように制御しても良い。即ち、エレクションピース5の手前でT軸X回りの回動により傾斜溶接位置Pw1に溶接トーチ1を位置させ、その位置のまま、B軸X回りの回動により退避位置Prに溶接トーチ1を位置させ、その位置のまま、走行方向Drに沿って溶接トーチ1を移動させ、溶接トーチ1がエレクションピース5を跨いで通過した後、溶接トーチ1を溶接位置Pwに位置させてもよい。これにより、溶接能率を低下させることなく、エレクションピース5を効率的に回避することができる。
【0029】
B軸回動部2は、T軸回動部12と鋼管6との間に設けられてもよい。T軸回動部12は、溶接トーチ1とB軸回動部2との間に設けられてもよい。すなわち、T軸回動部12及びB軸回動部2が接続される順番は、溶接トーチ1側から、T軸回動部12、B軸回動部2、鋼管6、の順に並んでいる。換言すると、本体8側から、B軸回動部2、T軸回動部12、溶接トーチ1、の順に並んでいる。また、B軸回動部2は本体8に接続している。
また、鉛直方向Dvにおいて上方から順に、B軸回動部2、T軸回動部12の順に並んでいる。また、近接隔離方向Dhにおいて鋼管6側から順に、T軸回動部12、B軸回動部2、の順に並んでいる。
【0030】
このように、B軸回動部2とT軸回動部12が、本体8側から、B軸回動部2、T軸回動部12、の順に並んでいることにより、エレクションピース5を確実に避けることができ、且つ、溶接ロボット20を小型化することができる。
【0031】
B軸回動部2は、T軸回動部12とガイドレール7との間に設けられてもよい。図2に示されるように、側面視において、B軸回動部2はT軸回動部12とガイドレール7との間に設けられる。すなわち、T軸回動部12及びB軸回動部2が接続される順番は、ガイドレール7側から、B軸回動部2、T軸回動部12の順に並んでいる。
【0032】
このような構成とすることで、エレクションピース5を確実に避けることができ、且つ、溶接ロボット20を小型化することができる。
【0033】
T軸回動部12は、駆動源により回動する。T軸回動部12は、溶接トーチ1に沿って設けられたT軸モータユニット13及びT軸減速ユニット14を含んでもよい。図2においては、鉛直方向Dvの上側から、T軸モータユニット13、T軸減速ユニット14、の順に並んでいる。T軸回動部12は、溶接トーチ1の本体8側に設けられる。
T軸モータユニット13は、T軸Xを回転させるためのモータである。
T軸モータユニット13はT軸減速ユニット14に接続し、T軸モータユニット13の駆動力をT軸減速ユニット14に伝達する。T軸減速ユニット14はT軸回動部12に接続し、T軸回動部12を動作する。これにより、T軸回動部12をT軸X回りに回動させることで、溶接トーチ1のトーチ角Atを調整する。
【0034】
T軸モータユニット13及びT軸減速ユニット14が溶接トーチ1に沿って設けられることで、溶接ロボット20を小型化することができる。
【0035】
T軸モータユニット13及びT軸減速ユニット14は、T軸Xに沿って配置されてもよい。
【0036】
この場合、エレクションピース5を避けやすく、且つ、溶接ロボット20を小型化することができる。
【0037】
次に、図7から図10を参照して、可搬型溶接ロボットシステム100の制御系について説明する。図7から図10は、可搬型溶接ロボットシステム100の制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
図7に示されるように、本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100は、第1制御部600と、B軸回動部2による溶接トーチ1の回動量を判定するB軸判定部601と、を更に備える。B軸回動部2による溶接トーチ1の回動量は、溶接トーチ1のねらい角AwがB軸X回りに回動する角度である。第1制御部600は、例えば、本体8に収容された演算処理装置およびメモリによって構成することができる。B軸判定部601は、例えば、B軸モータユニット10のサーボモータのエンコーダによって構成することができる。
第1制御部600は、B軸判定部601の判定結果を用い、溶接トーチ1を鉛直方向上向きに回動させるようにB軸回動部2を制御する。より詳細には、第1制御部600は、B軸回動部2による溶接トーチ1の(鋼管6から離れる方向への)回動量(例えば、B軸回動部2に対する回動量の指令値)が大きくなるに連れて溶接トーチ1を鉛直方向上向きに回動させる量が大きくなるよう、B軸回動部2を制御する。
第1制御部600は、鋼管6の溶接部位の状態に応じて適切に制御することができる。具体的には、B軸X回りに回動して傾斜した溶接トーチ1をT軸X回りに回動すると溶接トーチ1の先端が浮かび上がって溶接部位から離れてしまうことを防止することができる。
また、溶接トーチ1がエレクションピース5に近づいたとき、溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しないように、第1制御部600はB軸回動部2を制御して溶接トーチ1を退避位置Prまで移動させることができる。
【0038】
図8に示されるように、本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100は、T軸回動部12による溶接トーチ1の回動量を判定するT軸判定部602を更に備える。T軸回動部12による溶接トーチ1の回動量は、溶接トーチ1のトーチ角AtがT軸X回りに回動する角度である。第1制御部600は、例えば、本体8に収容された演算処理装置およびメモリによって構成することができる。T軸判定部602は、例えば、T軸モータユニット13のサーボモータのエンコーダによって構成することができる。
第1制御部600は、B軸判定部601及びT軸判定部602それぞれの判定結果を用い、溶接トーチ1を鉛直方向上向きに回動させるようにB軸回動部2を制御する。例えば、第1制御部600は、B軸回動部2による溶接トーチ1の(鋼管6から離れる方向への)回動量及びT軸回動部12による溶接トーチ1の(正立溶接位置Pw0から離れる方向への)回動量(例えば、T軸回動部12に対する回動量の指令値)のそれぞれが大きくなるに連れて溶接トーチ1を鉛直方向上向きに回動させる量が大きくなるよう、B軸回動部2を制御する。
第1制御部600は、鋼管6の溶接部位の状態に応じて適切に制御することができる。具体的には、B軸X回りに回動して傾斜した溶接トーチ1をT軸X回りに回動すると溶接トーチ1の先端が浮かび上がって溶接部位から離れてしまうことを防止することができる。
また、溶接トーチ1がエレクションピース5に近づいたとき、溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しないように、第1制御部600はB軸回動部2及びT軸回動部12を制御して溶接トーチ1を退避位置Prまで移動させることができる。
【0039】
図9に示されるように、本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100は、第2制御部603と、前記B軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するB軸判定部601と、前記T軸回動部による前記溶接トーチの回動量を判定するT軸判定部602と、本体8を鋼管6に垂直な方向に移動させ、且つ、鋼管6に平行な方向に沿って移動させる本体移動部604と、を更に備える。鋼管6に垂直な方向とは、近接隔離方向Dhである。鋼管6に平行な方向とは、鉛直方向Dvである。
第2制御部603は、B軸判定部601及びT軸判定部602それぞれの判定結果を用い、本体移動部604により本体8を鉛直方向上向き且つ鋼管6に近づく方向に移動させる。例えば、第2制御部603は、B軸回動部2による溶接トーチ1の(鋼管6から離れる方向への)回動量及びT軸回動部12による溶接トーチ1の(正立溶接位置Pw0から離れる方向への)回動量のそれぞれが大きくなるに連れて本体8が移動する量が大きくなるよう、本体移動部604を制御する。
第2制御部603は、鋼管6の溶接部位の状態に応じて適切に制御することができる。具体的には、B軸X回りに回動して傾斜した溶接トーチ1をT軸X回りに回動すると溶接トーチ1の先端が浮かび上がって溶接部位から離れてしまうことを防止することができる。
また、溶接トーチ1がエレクションピース5に近づいたとき、溶接トーチ1がエレクションピース5と干渉しないように、第1制御部600はB軸回動部2及びT軸回動部12を制御して溶接トーチ1を退避位置Prまで移動させることができる。
【0040】
図10に示されるように、本実施形態に係る可搬型溶接ロボットシステム100は、可搬型溶接ロボットシステム100による溶接の垂れ落ちを防止するための部分を垂れ落ち防止溶接部とし、垂れ落ち防止溶接部を溶接トーチ1の溶接により形成可能な位置に溶接トーチ1を回動させるよう、B軸回動部2を制御する第3制御部605、を更に備える。 鋼管6の端部同士の溶接は、基本的に、複数回繰り返される。例えば、鋼管6の溶接部位の一周分の溶接を連続して行った後、溶接ロボット20の走行方向Drを反転させて鋼管6の溶接部位の一周分の溶接を連続して行う。複数回の溶接を行うことで、溶接部位から余分な溶接が垂れ落ちる場合がある。このため、余分な溶接が垂れ落ちる部分に垂れ落ち防止部材(例えば、セラミックタブ)を設ける場合がある。垂れ落ち防止部材は、下側に配置される鋼管6の端部の側面に設けられる。
可搬型溶接ロボットシステム100は、溶接部の鉛直方向Dv下側に適切な狙い角での溶接により垂れ落ち防止溶接部を設ける。可搬型溶接ロボットシステム100は、第3制御部605により、垂れ落ち防止部材を形成する位置に溶接トーチ1を回動させるようB軸回動部2を制御する。すなわち、第3制御部605は、下側に配置される鋼管6の端部の側面(溶接部の鉛直方向Dv下側)に溶接トーチ1を回動させるようB軸回動部2を制御する。これにより、可搬型溶接ロボットシステム100は、垂れ落ち防止溶接部の溶接ビードが垂れ落ち防止部材の役割を果たすようになり、垂れ落ち防止部材を設けなくても、溶接の垂れ落ちを防止することができる。
【0041】
本体8及び溶接ロボット20の重量は、25kg以下である。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、本発明の実施形態では、鋼管6を溶接対象物とした具体例について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、鋼材を溶接対象物とてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 溶接トーチ
2 B軸回動部
5 エレクションピース
6 鋼管
7 ガイドレール
8 本体
9 収納スペース
10 B軸モータユニット
11 B軸減速ユニット
12 T軸回動部
13 T軸モータユニット
14 T軸減速ユニット
20 溶接ロボット
21 スライド部
22 プレート
23 ケース
100 可搬型溶接ロボットシステム
110 溶接ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10