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特開2023-41628耐火被覆構造、その被覆方法及び仕上げ用発泡耐火シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041628
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】耐火被覆構造、その被覆方法及び仕上げ用発泡耐火シート
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230316BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230316BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230316BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E04B1/94 R
B32B7/027
B32B7/12
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134696
(22)【出願日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2021148394
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 泰士
(72)【発明者】
【氏名】関 正明
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001FA03
2E001FA11
2E001GA24
2E001HD01
2E001JA18
2E001LA04
4F100AA21
4F100AG00
4F100AK01
4F100AK41
4F100AK68
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AS00A
4F100AS00E
4F100AT00C
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DG01
4F100DG15
4F100DJ01E
4F100GB07
4F100JJ03
4F100JJ03E
4F100JJ07
4F100JJ07E
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JL14E
(57)【要約】
【課題】仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火シートの貼付け後の修正も容易である耐火被覆構造であり、その耐火被覆面は、塗装を行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良いものとなる耐火被覆構造を提供する。
【解決手段】被覆物の表面に、粘着層と基材と粘着層と仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層が積層されたものであることにより、仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火層の修正も容易である耐火被覆構造であり、その耐火被覆面は、仕上げを行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良好なものとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物の表面に、粘着層と基材と粘着層と仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層が積層された耐火被覆構造。
【請求項2】
さらに、前記発泡耐火層の表面に仕上げ層が積層された請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
被覆物に対して、
粘着層と基材と粘着層と発泡耐火シートが積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付けた後に、その表面に仕上げ材を施工する耐火被覆方法。
【請求項4】
被覆物に対して、
粘着層と基材と粘着層が積層されている粘着シートを貼り付けた後に、発泡耐火シートを貼り付け、その表面に仕上げ材を施工する耐火被覆方法。
【請求項5】
発泡耐火シートの裏面側に、
粘着層と、基材層と、粘着層と、及び離型紙が積層された仕上げ用発泡耐火シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄骨造の柱、梁に使用される鋼材を火災から保護するための耐火被覆構造の中でも、火災にさらされたときに発泡して、断熱層を形成する発泡型の耐火被覆構造で、その耐火被覆構造の表面に仕上げを行うための耐火被覆構造、その被覆方法及び仕上げ用発泡耐火シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、火災時の熱から構造物に使われている鋼構造の温度上昇を遅延させることを目的として様々な耐火被覆材が使用されてきた。
例えば、ロックウールなどの無機繊維によって空気の断熱層を形成させるものや軽量セメントモルタルなどの被覆材が含有する結晶水及び水分によって吸熱するものやその両方の効果を持つものなどがある。
【0003】
しかし、これらの被覆材はいずれも15~30mm程度以上の被覆が必要であり、作業工程上や美観上好ましくないことや施工時に粉塵が発生するなどの問題がある。
このため、火災など高温時に塗膜を発泡させ、気相含有断熱層を形成する発泡耐火塗料やそれをシート状にした発泡耐火シートが多く提案され、その被覆構造やその方法なども提案されている。この発泡耐火シートを使った積層体の形成方法には、特許文献1に記載したようなものがある。
【0004】
これは、基材面に対し、接着材層及び熱発泡性被覆材が積層された積層構造体の形成方法であって、前記基材面上に第1接着材層を設ける工程、前記第1接着材層と、前記熱発泡性被覆材の裏面に設けられた第2接着材層とを圧着する工程を有し、前記第1接着材層は、水酸基含有合成樹脂を含む(I)液とポリイソシアネート化合物を含む(II)液を、NCO/OH当量比10/100~120/100で含む接着材(M)より形成されるものであり、前記第2接着材層は、水酸基含有合成樹脂を含む接着材(N)より形成されるものであり、前記接着材(M)により形成される接着材層の硬化前に、前記第1接着材層と前記第2接着材層とを圧着するものである。
【0005】
これによれば、安定した接着力を有する積層構造体を効率良く得ること、そして当該積層構造体により優れた耐熱保護性を発揮させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-049948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にあるような方法では、基材面上に接着材層を設ける必要があり、その工程により工期が長くなる。又、接着材層を形成過程で、その表面にごみや埃を付着し、想定された付着性を得ることができないこともある。
また、粘着面同士の接着により強固な接着となるため、貼り直しが難しく、貼り直しを行う場合、一度接着した熱発泡性被覆材を除去することが困難な場合がある。
【0008】
接着材層の養生期間が不十分な場合では、その接着材に含まれる揮発分が残存することがあり、被覆された被覆材が膨れる原因になることもある。
その揮発分の中でも有機溶剤である場合には、被覆材を侵すこともあり、場合によっては、可塑剤としての高沸点溶剤が樹脂製の被覆材を伝って、仕上げ面まで移行し、仕上げ面に汚れが付き易いこともある。
【0009】
本開示は、仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火シートの貼付け後の修正も容易である耐火被覆構造であり、その耐火被覆面は、塗装を行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良いものとなる耐火被覆構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被覆物の表面に、粘着層と基材と粘着層と仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層が積層されたものである。
このことにより、仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火層の修正も容易である耐火被覆構造であり、その耐火被覆面は、仕上げを行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良好なものとなる。
【0011】
さらに、前記発泡耐火層の表面に仕上げ層が積層されたものであることにより、良好な仕上がりになり耐火被覆構造を保護することができるものである。
【0012】
被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層と発泡耐火シートが積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付けた後に、その表面に仕上げ材を施工することである。
このことにより、容易に耐火被覆構造を得ることができ、その仕上がりも良好なものとすることができる。
【0013】
被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層が積層されている粘着シートを貼り付けた後に、発泡耐火シートを貼り付け、その表面に仕上げ材を施工することである。
このことにより、容易に耐火被覆構造を得ることができ、発泡耐火シートの貼付け後の修正も比較的容易で、その仕上がりも良好なものとすることができる。
【0014】
発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層と、粘着層と、及び離型紙が積層されたものである。
このことにより、耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火シートの貼付け後の修正も容易で、塗装を行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良いものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態を説明する。
本開示は、被覆物の表面に、粘着層と基材と粘着層と仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層が積層されたものである。
【0016】
まず、本開示の仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層とは、建築物の鋼材などに用いられる耐火被覆材の一つで、火災などで高温になった場合に発泡し、発泡した層が断熱層となり鋼材の温度上昇を抑えることができるものである。
つまり、この発泡耐火層は、多くの場合、建築構造物の柱、梁、床、壁等を構成する材料であり、金属で形成されているH鋼、鉄骨丸柱、鉄骨角柱などの部材に形成されるものである。
【0017】
また、これらの金属部材の表面は、錆止め剤や防錆塗料など防錆処理が施されていても良く、好ましく行われている。
他にも、耐火性を必要とされる部位であれば、モルタル、コンクリート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、炭酸カルシウム発泡板、不燃火山性ガラス質複層板、繊維強化セメント板、軽量セメント板などにも用いることができ、その表面を下地調整などが施されていても良い。
【0018】
この仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層は、発泡耐火層を形成させた後に、その表面に塗料や壁紙などの表装材など仕上げ材により仕上げを行うものであり、その仕上げ材に好適なものである。
この発泡耐火層は、建物などが火災に晒された場合など、温度上昇が起きた時に発泡し、炭化して断熱層を形成するものである。
【0019】
その発泡耐火層は、合成樹脂,ポリリン酸アンモニウムやメラミンなどの発泡剤,多価アルコールなどの炭化剤,酸化チタン,無機繊維,着色顔料や難燃剤などを主な成分とし、必要に応じ各種添加剤などを加えたもので構成されたものが多い。
その発泡耐火層としては、上記成分を塗料化し、それを塗布することで、発泡耐火層を形成するものや、これら成分を混錬し、流動性のある状態にし、発泡耐火層をシート状にしたものである。この発泡耐火層を形成させた後に、その表面に仕上げを行うものである。
【0020】
その他にも黒鉛酸性硫酸塩などの膨張性黒鉛や炭酸カルシウム,クレー,珪砂,水酸化アルミニウム,アルミナ,シリカなどの充填材や体質顔料,ハロゲン系,リン系,三酸化アンチモン系などの難燃剤などの成分を加えることもある。
この充填材を加えることで、炭化断熱層の強度や耐熱性などを向上させることができるものであり、好ましく含有させるものである。
【0021】
合成樹脂とは、発泡耐火層の主要成分であり、酸化チタンや難燃性発泡剤など各成分を結合させ層を成型するためのもので、発泡層の形状維持や強度にかかわる重要な要素である。
この合成樹脂は、熱可塑性樹脂のものが用いられ、アクリル樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,シリコーン樹脂,ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0022】
これらの樹脂は単独にて用いても良く、あるいは共重合したものでも良く、さらにそれらを混合して用いることもできる。
これら合成樹脂の分解開始温度は250℃以下であって、300℃までに全固形分の50重量%以上90重量%以下が分解するものが好ましい。
【0023】
分解開始温度が250℃以上のもの及び300℃までに全固形分の50重量%以下しか分解しないものは、発泡剤のポリリン酸アンモニウム,メラミン、炭化剤の多価アルコールの脱水縮合を妨げ、十分な発泡層が形成できない。
この合成樹脂のガラス転移温度(以下、Tg)は、-20℃~20℃の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、仕上げ用発泡耐火層により被覆された鉄骨などの被覆物の動きに追従し易く、割れなどの少ないものとなる。
【0024】
また、この発泡耐火層がシート状の場合では、十分な可撓性と高温時の発泡性を阻害しないものである。また、Tgが-10~10℃の範囲であれば、よりシートの可撓性と寸法安定性のバランスが取れたものとなり、シートの可撓性があり、その耐火性能は十分なものとなる。
この発泡耐火層に含有する合成樹脂は15.0~60.0重量%の範囲で含有することが好ましい。この範囲内であれば、発泡耐火層を形成させた後に塗装を行い易く、その仕上がりを良好なものとすることができる。
【0025】
発泡剤は、加熱することによって、アンモニアガスなどの不燃性ガスを発生して発泡し、炭化する合成樹脂や炭化剤を発泡させ断熱層を形成し、それと同時に発泡の際の吸熱反応によって鋼材などの温度を引き下げるものである。
この発泡剤には、ポリリン酸アンモニウムやリン酸アンモニウムなどのリン酸塩,リン,その他のリン化合物などの難燃性であるリン酸系の発泡剤やメラミンやアミドや尿素などの含窒素発泡剤があり、リン酸塩の発泡剤と併用して用いることができる。
【0026】
炭化剤は、加熱することによって、合成樹脂の炭化とともに脱水炭化することで、断熱性により優れた厚みのある炭化断熱層を形成する。又、リン酸塩系の発泡剤と脱水、縮合反応を起こし、分解ガスにより発泡した発泡耐火層が炭化層になり、その炭化層によって、更に断熱効果を得るものである。
炭化剤には、多価アルコールのペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトール,トリペンタエリスリトール,ポリペンタエリスリトールなどがあり、多価アルコール以外には、メラミンなどを挙げることができ、多価アルコールと併用して用いることができる。
【0027】
リン酸塩の発泡剤とペンタエリスリトールなどの多価アルコールの炭化剤は、250~300℃で脱水、縮合反応を生じる。
メラミンは300~400℃の間で分解して、分解ガスにより発泡し、断熱層を形成し、その発泡断熱層が炭化層となるため、メラミンを併用した場合には2段階で断熱層を形成することができ、より断熱効果を得ることができる。
【0028】
さらに、酸化チタンを含ませることにより、その酸化チタンの触媒効果によって発泡層の結合が促進され、形状維持性の高い発泡断熱層が安定して形成され、その強度も十分なものになる。この発泡層は、触媒効果のある酸化チタンの周りで促進される傾向があるためである。
この酸化チタンの他に、顔料の一つである着色顔料を含ませることも可能であり、発泡耐火層を構成している各成分が均一に分散しているかを目視で容易に確認することができる。
【0029】
各成分を混合する際に均一になっていないと発泡耐火層の性能にバラツキがあることがある。そのため、発泡層の発泡状態にバラツキが出てしまい、発泡層に割れなどが生じることや、均一な発泡層を形成することができなくなり、十分な耐火性能を得ることができないことがある。
また、この酸化チタンや着色顔料により着色された発泡耐火層は、被覆後の仕上げに用いられる仕上げ材と異色のものが好ましく、仕上げを行った場所と行っていない場所との区別が容易になる。
【0030】
この仕上げ材が塗料の場合では、塗り残しや塗料の隠ぺいの程度により塗布量不足の部分などを容易に識別することができる。
着色顔料としては、有機顔料及び無機顔料の何れを用いてもよく、その添加量は、仕上げ用耐火被覆材の発泡などの耐火性を損なわない範囲内で行う。
【0031】
この着色顔料には、複合酸化物系顔料,カーボンブラック,酸化鉄系顔料,鉛丹,朱,群青,酸化クロム、クロムイエロー,カドミウムイエロー,ジンククロメート,カドミウムレッド,アゾ系顔料,ジケトピロロピロール系顔料,ペリレン系顔料,ペリノン系顔料,キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料,イソインドリン系顔料,金属キレートアゾ系顔料,インダンスロン系顔料,ジオキサジン系顔料,スレン系顔料,インジゴ系顔料,紺青なども挙げることができる。
【0032】
難燃剤は、火災時に脱水冷却、不燃性ガス発生、バインダー炭化促進などの効果を得るもので、樹脂成分の燃焼を防止,抑制するものである。
さらに、この発泡耐火層には、ロックウール,スラグウール,ガラス繊維,セラミックファイバーなどの無機繊維を含ませることがある。
【0033】
無機繊維を添加することにより、発泡耐火層のひび割れが発生し難く、発泡耐火層が加熱された場合に発泡して形成される断熱層も、ひび割れが発生し難く、断熱層が剥落し難いものとなる。
無機繊維を添加しない発泡耐火層は、施工部位の違いや加熱されたときの温度の違い、発泡耐火層の微妙な厚みの違いによって発泡のばらつきが生じ易く、この発泡のバラツキが断熱層のひび割れや剥落の原因になる場合がある。
【0034】
この発泡耐火層がシート状の発泡耐火シートの場合では、そのシートが製造されてから被覆物に貼付けるまでの間に、積まれることがある。その場合にシート同士が引っ付き、ブロッキングすることがある。
そのため、この発泡耐火シートに必要に応じブロッキング防止剤を添加することがある。このブロッキング防止剤は、一般的な合成樹脂製シートに使用されるものであれば特に限定されるものではない。
【0035】
このブロッキング防止剤には、シリカ,アルミナ,水酸化アルミニウム,硫酸バリウム,タルク,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,リン酸カルシウム,カオリン,酸化チタン,フッ化カルシウム,ゼオライト,硫化モリブデン等の無機微粒子などがある。
また、ポリスチレン,ポリエーテル,ポリアクリル,ポリアミド,エポキシ樹脂,ポリフェニレンスルフィド,熱可塑性エラストマー等の有機微粒子がある。
【0036】
さらに、不飽和脂肪酸アマイド,飽和脂肪酸アマイド,ポリエチレンワックス,ステアリン酸,ステアリルアルコール,ステアリルステアレート,ステアリン酸モノグリセリド等の滑剤なども挙げられる。
これらの中でも発泡耐火シートと施工対象との密着を考慮すると無機微粒子や有機微粒子などの粒子形状のものが好ましい。
【0037】
上記成分により構成される耐火被覆層は、これらの成分により構成された塗料を被覆物に対して塗装し形成されることができる。他にこれら成分をシート状にしたものもあり好適に用いられる。
このシート状の発泡耐火シートでの発泡耐火層では、塗料により形成される発泡耐火被覆層に比べ、施工現場での取り扱いが容易で、施工後の仕上げを行うまでの養生期間を短縮することが可能となり、耐火被覆層の膜厚のバラつきも少ないものとなる。
【0038】
この発泡耐火シートは、可撓性があるものが好ましく、可撓性がないと、発泡耐火シートを貼り付ける際に作業性が悪く、曲面に貼り付けると割れてしまうことがある。
この可撓性としては、角形鋼材の角に沿って発泡耐火シートを曲げ、その時にシートの表面にクラックや割れなどの発生がない程度のものである。
【0039】
この発泡耐火シートは、上記記載の成分を均一に混練した混練物を、シート化して発泡耐火シートを製造する場合が多い。混練は、常温で行っても加熱して行っても良く、混練する方法としては、ニーダーやバンバリーミキサー、ミキシングロールなどの混練機などの公知の方法が使用できる。
混練された混合物をそのまま又はペレット状にしたものを押し出し成型機によりシート状にすることや混合物を複数のロールの間に挟んで成型する方法,熱ローラーにより圧延する方法などがあり、特に制限されるものではない。
【0040】
混練物のシート化の方法は、特に限定はされないが、プレス成型や圧延ローラーを用いてシート状にすることが行われ、均一な膜厚のシートを効率よく成型することができ、施工後の膜厚の管理もやりやすくなる。
発泡耐火シートなどの発泡耐火層の厚みは、1~3mmであることが好ましい。この範囲であれば、可撓性があり、耐火性能が十分で、施工時の作業性が良いものとなる。また、シートを重ねて貼る場合も、容易に施工する事ができる。
【0041】
発泡耐火層の厚みが1mm以下の場合は、耐火性能が劣る。3mm以上の場合には、十分な可撓性が得られず、施工時の作業性も悪くなる。
この発泡耐火層の比重は、1.2~1.8の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、可撓性があり、その耐火性能は十分なものとなる。
【0042】
比重を1.2より小さくするためには、比重が大きい酸化チタンの含有比率を小さくする必要があり、その場合、発泡耐火シートの発泡が不十分で、形状のしっかりとした断熱層を形成することができない。
比重を1.8より大きくするためには、比重が小さい合成樹脂の含有比率を小さくする必要があり、その場合、合成樹脂が酸化チタンや難燃性発泡剤などの各成分を覆うことができず結合が弱くなるため成型し難い。
【0043】
より好ましくは、比重が1.3~1.6の範囲である。この範囲内であれば、可撓性があり、その耐火性能は十分なものとなる。
本開示は、被覆物の表面に、粘着層と基材と粘着層と上記記載の仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層が積層されたものである。
【0044】
これにより、仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火層の修正も容易である耐火被覆構造を得ることができ、仕上げを行う場合には良好なものとなる。
さらに、発泡耐火層の表面に良好な仕上げ層が積層されることで、耐火被覆構造を保護することができるものである。
【0045】
この粘着層は、被覆物の表面と基材との付着、基材と仕上げ用下地を兼ねた発泡耐火層との付着に必要なもので、基材は、発泡耐火層の補強のために必要なものである。
被覆物に対して、粘着剤を塗布し、乾燥させて粘着層を形成させた後に、基材を貼付けることになり、その貼付けられた基材表面に更に粘着剤を塗布し、粘着層を形成させた後に、発泡耐火層を形成させる場合がある。
【0046】
また、発泡耐火層がシート状の発泡耐火シートの場合であれば、シート裏面に、粘着層を形成させ、基材を貼付け、基材裏面に粘着層を形成することも可能である。
より容易に行うためには、粘着層と基材と粘着層が積層している両面テープを用いることになる。
【0047】
この場合では、被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層が積層されている粘着シートを貼り付けた後に、発泡耐火シートなどの発泡耐火層を形成し、その表面に仕上げ材を施工することがある。
また、被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層と発泡耐火シートが積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付けた後に、その表面に仕上げ材を施工する場合もある。
【0048】
これらにより、容易に耐火被覆構造を得ることができ、発泡耐火シートなどの発泡耐火層を形成した後の修正も比較的容易で、その仕上がりも良好なものとすることができる。
この粘着層は、タックが残る状態が良く、0℃以上で塗布し指で触った時に、その膜に指紋が付く程度以上あれば良い。
【0049】
この粘着層は、基材に発泡耐火層を接着させるものであり、発泡耐火層が被覆されている状態の雰囲気温度が通常の状態であったとき、その発泡耐火層が脱落しないものであれば良い。
より好ましくは、発泡耐火層が発泡前の200℃程度の高温時であっても脱落しないものであることが好ましい。
【0050】
この発泡耐火層は、発泡を開始すれば、その発泡圧により脱落しづらい状態となるためである。
この粘着層を形成する粘着剤は、特に制限されるものではないが、合成ゴム系,酢酸ビニル系,ポリマーセメント系,アクリルゴム系,変性シリコーン系など各種の粘着剤が使用できる。
【0051】
これらの形態としては、溶媒に有機溶剤を用いた溶剤型のものや、水を用いた水系型の合成樹脂エマルションを使用したもの、それらを用いない無溶剤型のものがあるが、水系型や無溶剤型のものが好ましく使用される。
より好ましくは合成樹脂エマルションを主成分としたもので、扱いが容易であり、十分な接着力を得ることができ、粘着層の粘着力も十分なものとなる。
【0052】
さらに、合成樹脂エマルションを主成分としたものは、粘着剤が乾燥硬化した後のタックの調整が、合成樹脂エマルションの樹脂の柔らかさや可塑剤などの高沸点溶剤を添加することで容易にでき、タックの持続性についても、高沸点溶剤の沸点などにより調整することが可能である。
この基材は、レーヨン,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維,ポリエチレン繊維,ビニロン繊維,アクリル繊維,ナイロン繊維などの合成樹脂繊維からなる不織布や織布、ガラス繊維などの無機物からなるガラス不織布,ガラスクロスがある。
【0053】
また、セラミックペーパー,合成紙,メッシュ,クロスなどもあり、比較的薄いものから選択されるものが使われる。
これらの中でも柔軟性などの点から、ガラス繊維や合成樹脂繊維からなる不織布を用いるのが好ましく、これらを積層して、基材として用いることも好ましく行われている。
【0054】
この不織布は、繊維を合成樹脂その他の接着剤で接合したり、熱によって接合したり、刺のある針で刺し絡めたり、高圧細水流で繊維を絡めたり、又は編むような操作を加えたりして布状にしたものなどがある。
他にも原料樹脂チップを押出機に入れて加熱溶融し、細孔から押出して繊維を形成させながらシートにするものや、湿式不織布のように数ミリメートル程度の長さの繊維を水に懸濁し、金網で抄くことによりシートを作成し、接着剤又は熱を用いて接合したものもある。
【0055】
これら不織布は、織布に比べ方向による強度の違いが少なく、強度に異方性のない安定した強度を持ち、型くずれが少なく、糸のほつれが無く、寸法安定性が良いものである。厚みに斑が少ないため、より薄く仕上げを行うことができる。
また、プラスチックフィルムなどと異なり、引張り強度があり、伸び難いものである。更に網状のものを含む織布の場合と異なり、穴を空けた場合に、その穴からの糸のほつれがない。
【0056】
この不織布の中でもポリエステル繊維やガラス繊維により形成された不織布を用いることが好ましい。これらの不織布は、他の繊維のものに比べ、水分に対する影響が少なく、寸法安定性に優れたものである。
また、ガラス繊維を用いた場合では、繊維が燃え難いため好ましく用いられる。
【0057】
この基材の目付量は、10~550g/m2の範囲が好ましい。10g/m2より軽い場合では、強度が小さく、被覆物の動きにより亀裂を起こし、仕上げ層にひび割れを起こすことがある。
一方、550g/m2より重い場合では、繊維の量が多くなり、被覆物や粘着層に負荷をかけることがある。
【0058】
好ましくは、20~100g/m2の範囲であり、この範囲であれば、貼付けがなどの作業性の良好なものを得ることができる。
基材の厚みは、0.1~1.0mmの範囲が好ましい。0.1より薄い場合では、十分な強度が得られないことがある。1.0mmより厚い場合では、可撓性が少なくなり、貼りづらくなることがある。
【0059】
これら粘着層と基材と粘着層が積層された、両面テープが好ましく、上記記載の粘着層及び基材と同様なもので構成され、場合により、粘着層が離型紙により保護されているものがある。
この離型紙は、発泡耐火シートを被覆物に貼付けるまでの間、粘着層を保護するためのもので、特に制限されるものではなく、一般的に市販されているものが使われる。
【0060】
これらには、シリコン、ワックス、弗素樹脂等の離型剤を紙やフィルムに加工したものやポリプロピレン,ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムがある。
この両面テープを用いた場合では、被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層と発泡耐火シートが積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付けた後に、その表面に仕上げ材を施工することがある。
【0061】
これは、つまり、発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層と、粘着層と、及び離型紙が積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを用いることになる。
この粘着加工済みの発泡耐火シートを用いることで、耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火シートの貼付け後の修正も容易で、塗装を行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良いものとなる。
【0062】
さらに、基材として好ましく用いられる不織布を複数種のものを積層して基材層として用いることも可能であり、これにより、基材の寸法もより安定し、強度もより向上し、発泡耐火シートに腰があるものとなり、施工が行い易いものとなる。
この基材層には、ポリエステル繊維やガラス繊維の不織布を複合することがより好ましく、それぞれの利点である耐水性や難燃性が良好なものとなり、寸法安定性の優れたものとなる。
【0063】
この基材層では、例えば、ポリエステル繊維不織布とガラス繊維不織布,ポリエステル繊維不織布とガラス繊維不織布とポリエステル繊維不織布,ガラス繊維不織布とポリエステル繊維不織布とガラス繊維不織布などがあり、それぞれの不織布の層間には、粘着剤などにより貼り付けられることになる。
このような場合では、発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層であるポリエステル繊維不織布と粘着層とガラス繊維不織布と、粘着層と、及び離型紙が積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを用いることになる。
【0064】
また、発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層であるポリエステル繊維不織布と粘着層とガラス繊維不織布と粘着層とポリエステル繊維不織布と、粘着層と、及び離型紙が積層されることになる。
次に、上記発泡耐火シートを用いた被覆などの施工方法について説明する。
【0065】
この施工を行う前に、被覆物に対して、脱脂や錆び止めなど適切な前処理を行うことが好ましい。この前処理を行った後に、その表面に、粘着層と基材と粘着層と発泡耐火シートが積層された粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付ける。
この貼り付けを行う場合には、粘着加工済みの発泡耐火シートを適切な大きさに切断されたものを使用する。
【0066】
この粘着加工済みの発泡耐火シートの大きさとしては、被覆物の被覆箇所の大きさや作業者が適切な作業を行うことができる大きさであれば良く、600×900mm程度の矩形なもの以下が使い易い。
また、被覆箇所によっては、その箇所の採寸を行い、シートを切断して、被覆箇所に適した大きさにし、貼付ける。
【0067】
この粘着加工済みの発泡耐火シートを被覆箇所に隣り合うシートに突き付けた状態で、貼付け、被覆物に対して、発泡耐火シートにより被覆する。
粘着加工済みの発泡耐火シートにより被覆を行った後に、突き付けた部分の処理を行うことが好ましい。この突き付けた部分であるシートの継ぎ目の処理は、仕上げ材を積層する場合に、その粘着加工済みの発泡耐火シートの継ぎ目部分がわかり難くすることができる。さらに、継ぎ目部分の強度を向上させることもできる。
【0068】
この継ぎ目部分の処理方法としては、パテ材などの充填材により、シート継ぎ目の隙間を埋めることが行われる。好ましくは、この充填剤の成分が発泡耐火シートと同じ成分により構成される発泡耐火型の充填材を用いることである。
これにより、熱の入りやすいシートの突き付け部も同様な耐火性能を得るものとなる。
【0069】
また、突き付け部の表面にメッシュテープを貼り、その後に充填材により処理を行うこともある。このようにすることで、突き付け部の強度を向上させることができる。
このメッシュテープは、特に制限されるものではなく、一般的なものを用いることができる。
【0070】
この幅は、突き付け部が十分に覆われるものであれば良く、10~50mm程度のものが用いられる。又、そのメッシュは、35mm程度のものが使われ、目開きが1~5mm程度のものが好ましく使われる。又その素材は、ガラス繊維が用いられることが多い。
硬化した充填材の表面をサンドペーパーや鑢などで平滑に研磨することもある。このようにして、発泡耐火シートの継ぎ目をわかり難くし、仕上げ材によ
る仕上げを行うことが好ましく行われる。
【0071】
これに用いられる仕上げ用の仕上げ材は、壁紙などのシート状の表装材や塗料により塗装し、塗膜を形成させることなどがある。このように施工することで、容易に耐火被覆構造を得ることができ、その仕上がりも良好なものとすることができる。
さらに、もう一つの方法として、被覆物に対して、粘着層と基材と粘着層が積層されている粘着シートを貼り付けた後に、発泡耐火シートを貼り付け、その表面に仕上げ材を施工することである。
【0072】
この方法であっても、前記同様で、容易に耐火被覆構造を得ることができ、発泡耐火シートの貼付け後の修正も比較的容易で、その仕上がりも良好なものとすることができる。
さらに、不要となった発泡耐火シートの切れ端などを集めて、再度加熱成形することや新規で発泡耐火シートを成型する際に、混ぜることなど再利用し易いこともある。
【0073】
この方法であっても、前記同様で、施工を行う前に、被覆物に対して、適切な前処理を行うことが好ましい。
この前処理を行った後に、その表面に、粘着層と基材と粘着層が積層されている粘着シートを貼り付ける。この粘着シートは、上記記載のような両面テープを用いることが行われる。
【0074】
この粘着シートに積層されている離型紙が被覆物の表面になるように貼付け、その後、発泡耐火シートを貼る時に、離型紙を剥がしながら貼ることになる。これにより、発泡耐火シートを貼る直前まで、粘着層を保護することができ、十分な貼付けが行うことができる。
この粘着シートは、ロール状のものを使うことが多く、その幅は、特に制限されるものではないが、300mm以下のものを用いることが多い。
【0075】
その後、発泡耐火シートを貼り付ける。この場合でも上記同様で、発泡耐火シートを適切な大きさに切断されたものを使用し、被覆箇所によっては、その箇所の採寸を行い、シートを切断して、被覆箇所に適した大きさにし、貼付ける。
この発泡耐火シートを被覆箇所に隣り合うシートに突き付けた状態で、貼付け、被覆物に対して、発泡耐火シートにより被覆する。
【0076】
発泡耐火シートにより被覆を行った後に、突き付けた部分の処理を上記同様に行うことができる。その後に、壁紙などのシート状の表装材や塗料により塗装し、塗膜を形成させることなどがある。
このように施工することで、容易に耐火被覆構造を得ることができ、その仕上がりも良好なものとすることができる。
【0077】
以下、前記実施形態をさらに詳細に説明する。
被覆物としては、建築構造物の鉄骨柱であり、そのサイズは、1辺が300mm角で、長さが3mの角形鋼材に被覆を行った。
【0078】
被覆を行う前の前処理に脱脂を行い、エポキシ系の2液タイプの防錆塗料を塗装用ローラーを用いて塗装を行った。
これに用いられる発泡耐火シートは、合成樹脂,リン酸アンモニウムを発泡剤とし、ペンタエリスリトールを炭化剤としたものであった。他に、酸化チタンと無機繊維としてガラス繊維を加え、各種添加剤を少量添加したものであった。
【0079】
その配合は、
合成樹脂 29.0重量%
リン酸アンモニウム 46.0重量%
ペンタエリスリトール 11.0重量%
酸化チタン 11.0重量%
ガラス繊維 2.0重量%
添加剤 1.0重量%
合計 100.0重量%
【0080】
この合成樹脂は、エチレン酢酸ビニル系樹脂で、分解開始温度は250℃以下で、300℃までに全固形分の50重量%以上90重要%以下が分解するもので、そのTgが-5℃であった。
この発泡耐火シートは、上記記載の成分をニーダーにより均一に混練した混練物をペレット状にし、そのペレット状のものを熱ローラーにより圧延し、厚みが2mmのシートとしたものであった。また、その比重は、1.5であった。
【0081】
この発泡耐火シートは、可撓性があり、角形鋼材の角に沿って発泡耐火シートを曲げ、その時にシートの表面にクラックや割れなどの発生がないものであった。
この発泡耐火シートを使って、JIS A1304の標準加熱曲線に従って60分加熱試験を行い、K熱電対によって鋼材の裏面温度を測定した。評価は、発泡層に割れがなく、鋼材温度が550℃以下で、耐火性能があると判断できるものであった。
【0082】
この発泡耐火シートを300×600mmに裁断し、裏面に粘着層と基材と粘着層が積層している両面テープを貼付けた。この両面テープは、菊水化学工業株式会社製のMAタックを用いた。
この粘着層は、粘着層を0℃程度にした場合でも指で触った時に、その粘着層に指紋が付き、剥がれづらい程度のものであった。この基材には、ポリエステル繊維の不織布が使用されていた。また、その片側の粘着層には、離型紙により粘着層が保護されていた。
【0083】
この粘着加工済みの発泡耐火シートを20枚用意し上記記載の被覆物に貼付けを行った。
この貼付けは、粘着層を保護している離型紙を剥がしながら被覆箇所に貼付けた。この粘着加工済みの発泡耐火シートを被覆箇所に隣り合うシートに突き付けた状態で、貼付け、被覆物に対して、発泡耐火シートにより被覆を行った。
【0084】
また、今回の被覆では、鉄骨柱の大きさが用意した300×600mmの発泡耐火シート20枚で収まることになった。被覆箇所により任意のサイズに切断加工する必要があり、ハサミやカッターナイフなどにより容易に行うことができるものであった。
発泡耐火シートの突き付けた部分の処理を行った。この処理では、エマルションパテを充填し、それが硬化した後に#180のサンドペーパーを用いて平滑に仕上げた。
【0085】
さらに、突き付け部の表面にメッシュテープを貼り、そのメッシュテープを覆うようにエマルションパテを充填し、それが硬化した後に#180のサンドペーパーを用いて平滑に仕上げた。
このメッシュテープは、幅が10~50mmで、そのメッシュが5mmピッチで、その素材がガラス繊維であった。
【0086】
このように粘着加工済みの発泡耐火シートにより被覆物の被覆を行い、塗料による塗装を行った。この塗装には、アクリル系のエマルションペイントを用いた。この塗料を塗装ローラーにより塗装を行い、仕上げを行った。
このような耐火被覆方法により、仕上げ用の耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火層の修正も容易である耐火被覆構造であり、その耐火被覆面は、仕上げを行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良好なものであった。
【0087】
さらに、前記発泡耐火層の表面に仕上げ層が積層されたものであることにより、良好な仕上がりにより耐火被覆構造を保護することができた。
上記実施形態によれば、さらに以下の効果を得ることができる。
【0088】
発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層と、粘着層と、及び離型紙が積層された粘着加工済み発泡耐火シートである。
これにより、耐火被覆構造を比較的容易に得ることができ、その発泡耐火シートの貼付け後の修正も容易で、塗装を行う場合には良好なものであり、その仕上がりも良いものとなる。
【0089】
基材に不織布を用いた粘着加工済み発泡耐火シートであることにより、安定した強度を持ち、型くずれが少なく、糸のほつれが無く、寸法安定性が良く、厚みに斑が少ないため、より薄く仕上げを行うことができるものとなる。
また、不織布を複数種のものを積層したものを基材層として用いることにより、基材の寸法もより安定し、強度もより向上し、発泡耐火シートに腰があるものとなり、施工が行い易いものとなる。
【0090】
さらに、ポリエステル繊維やガラス繊維の不織布を複合した粘着加工済み発泡耐火シートである。
このことにより、それぞれの利点である耐水性や難燃性が良好なものとなり、寸法安定性の優れたものとなる。
【0091】
発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層であるポリエステル繊維不織布と粘着層とガラス繊維不織布と、粘着層と、及び離型紙が積層された粘着加工済みの発泡耐火シートである。
このことにより、粘着加工済みの発泡耐火シートに腰があり、施工が行い易いものとなり、強度もより向上したものである。又、それぞれの利点である耐水性や難燃性が良好なものとなり、寸法安定性の優れたものとなる。
【0092】
発泡耐火シートの裏面側に、粘着層と、基材層であるポリエステル繊維不織布と粘着層とガラス繊維不織布と粘着層とポリエステル繊維不織布と、粘着層と、及び離型紙が積層された粘着加工済みの発泡耐火シートである。
このことにより、粘着加工済みの発泡耐火シートに腰があり、施工がより行い易いものとなり、より強度も向上したものである。又、それぞれの利点である耐水性や難燃性が良好なものとなり、寸法安定性の優れたものとなる。
【0093】
被覆物に対して、粘着加工済みの発泡耐火シートを貼り付けた後に、その表面に仕上げ材を施工することにより、容易に耐火被覆構造を得ることができ、その仕上がりも良好なものとすることができる。
この発泡耐火シートにブロッキング防止剤が含まれ、そのブロッキング防止剤が無機微粒子や有機微粒子などの粒子形状のものであることにより、そのシートが製造されてから被覆物に貼付けるまでの間に、シート同士の引っ付きを軽減することができる。
【0094】
この発泡耐火シートに可撓性があり、その可撓性が角形鋼材の角に沿って発泡耐火シートを曲げ、その時にシートの表面にクラックや割れなどの発生がないものであることにより、発泡耐火シートを貼り付ける際に作業性が良好で、曲面に貼り付けることが可能なものとなる。
可撓性のある粘着加工済み発泡耐火シートの厚みが1~3mmの範囲で、その比重が1.2~1.8の範囲であることにより、耐火性能が十分で、施工時の作業性が良いものとなる。また、シートを重ねて貼る場合も、容易に施工する事ができる。
【0095】
粘着加工済み発泡耐火シートの粘着層が0℃以上で塗布し指で触った時に、その粘着層に指紋が付く程度以上であることにより、十分な接着効果を得ることができる。
粘着加工済み発泡耐火シートの基材がガラス繊維や合成樹脂繊維からなる不織布であることにより、柔軟性のある強度に異方性のない安定した強度を持ち、型くずれが少なく、寸法安定性が良いものとなる。
【0096】
この基材の目付量が20~100g/m2の範囲であることにより、強度があり、シートの可撓性を損なうことなく、被覆物の動きによる仕上げ層のひび割れを減少させることができる。
粘着加工済み発泡耐火シートを被覆箇所に隣り合うシートに突き付けた状態で、貼付け、発泡耐火シートにより被覆し、突き付けた部分であるシートの継ぎ目に充填材を充填するものである。
【0097】
これにより、粘着加工済み発泡耐火シートの継ぎ目部分がわかり難くすることができ、継ぎ目部分の強度を向上させることもできる。
更に、突き付け部の表面にメッシュテープを貼り、その後に充填材により処理を行うことにより、突き付け部の強度をより向上させることができる。