(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041724
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】セメントクリンカ製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/38 20060101AFI20230316BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20230316BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20230316BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20230316BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20230316BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
C04B7/38
C04B7/44
C07C9/04
C07C1/12
C10L3/08
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005245
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2020097644の分割
【原出願日】2020-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 佳典
(72)【発明者】
【氏名】川崎 始
(72)【発明者】
【氏名】高馬 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】小松 卓哉
(57)【要約】
【課題】エネルギー起源のCO
2を削減するため、化石燃料由来ではないセメント排ガス中のCO
2をメタン化し有効活用することができるセメント製造排ガス中のCO
2活用方法及びCO
2活用システムを提供する。
【解決手段】セメント製造設備からの排ガス中のCO
2又は該排ガスから分離回収したCO
2に水素を添加してメタンを生成し、該メタンを化石燃料の代替燃料として用いることにより、エネルギー起源のCO
2を削減し、温室効果ガスの削減効果を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造設備と該セメント製造設備に接続された排ガス処理設備とを備えたCO2活用システムでセメント製造排ガス中のCO2を活用する活用方法であって、
前記セメント製造設備で、石炭を燃料供給ラインからセメント焼成キルンのバーナへ供給して燃焼させ、
前記排ガス処理設備で、前記セメント製造設備の排ガスラインにおける集塵機と煙突との間に接続された排ガス収集ラインによって前記セメント製造設備の仮焼炉と前記セメント焼成キルンからの排ガスを収集し、該排ガス中のCO2又は該排ガスから分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成し、該メタンを前記燃料供給ラインに接続されたメタン供給ラインによって前記セメント製造設備の前記セメント焼成キルンの前記バーナへの前記石炭の一部又は全部の代替燃料として供給することを特徴とするセメント製造排ガス中のCO2活用方法。
【請求項2】
前記CO2は、前記セメント製造設備からの排ガスをCO2吸収材に接触させて分離回収したCO2であることを特徴とする請求項1に記載のセメント製造排ガス中のCO2活用方法。
【請求項3】
セメント製造設備と、該セメント製造設備に接続された排ガス処理設備と、を備え、
前記セメント製造設備は、プレヒータによって予熱されたセメント原料を仮焼する仮焼炉と、仮焼された前記セメント原料を焼成するセメント焼成キルンと、を備え、
前記排ガス処理設備は、前記セメント製造設備の排ガスラインにおける集塵機と煙突との間に接続されていて前記セメント製造設備の仮焼炉と前記セメント焼成キルンからの排ガスを収集する排ガス収集ラインと、該排ガス収集ラインから送られてくる排ガス中のCO2又は該排ガスから分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成するメタン化装置と、前記メタンを前記セメント製造設備の前記セメント焼成キルンへの石炭の一部又は全部の代替燃料として供給するメタン供給装置とを備え、
前記セメント焼成キルンのバーナには、前記石炭を供給する燃料供給ラインが接続されており、
前記メタン供給装置は、前記燃料供給ラインに接続されて前記バーナにメタンを供給するメタン供給ラインを備えていることを特徴とするセメント製造排ガス中のCO2活用システム。
【請求項4】
前記セメント製造設備からの排ガスをCO2吸収材に接触させてCO2を分離回収するCO2分離回収装置を備えることを特徴とする請求項3に記載のセメント製造排ガス中のCO2活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造設備の排ガス中に含まれるエネルギー起源のCO2を削減しつつ活用する方法及びCO2活用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電等の各種燃焼設備において、温室効果ガスの削減のため、燃焼で発生、排出されるCO2を削減する努力がなされている。特に、社会活動に必要なエネルギーの大部分は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料から得ていることから、この化石燃料から発生するCO2の量は膨大であり、このエネルギー起源のCO2を削減することが地球温暖化抑制に有効である。
【0003】
燃焼排ガス中のCO2を削減する技術として、従来、例えば、特許文献1に記載の燃焼排ガス中に含まれる二酸化炭素を分離して水素と反応させることによりメタンを得るメタン化方法が知られている。このメタン化方法では、燃焼排ガスを二酸化炭素吸収材に接触させて燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程と、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収材を加熱して二酸化炭素を主成分とするガスを取り出す工程と、二酸化炭素を主成分とするガスに第一の量の水素を添加したガスを、脱硫剤を充填した脱硫器に通じて、ガス中の硫黄化合物を除去する工程と、硫黄化合物を除去する工程を経たガスに第二の量の水素を添加し、メタン化触媒に通じたメタン化反応によりメタンに変換する工程と、を含んでいる。
このメタン化方法を用いることにより、燃焼排ガスからの二酸化炭素の大気への放出を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方法は排出される燃焼ガスをメタン化することで有効利用する一方で、化石燃料由来の燃焼ガスから製造されたメタンを燃焼させれば再びCO2として放出されるため、化石燃料から放出されるCO2量を削減するとはいいがたい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エネルギー起源のCO2を削減するため、化石燃料由来ではないセメント排ガス中のCO2をメタン化し有効活用することができるセメント製造排ガス中のCO2活用方法及びCO2活用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメント製造排ガス中のCO2活用方法は、セメント製造設備と該セメント製造設備に接続された排ガス処理設備とを備えたCO2活用システムでセメント製造排ガス中のCO2を活用する活用方法であって、
前記セメント製造設備で、石炭を燃料供給ラインからセメント焼成キルンのバーナへ供給して燃焼させ、前記排ガス処理設備で、前記セメント製造設備に接続された排ガス処理設備で、セメント製造設備の排ガスラインにおける集塵機と煙突との間に接続された排ガス収集ラインによって前記セメント製造設備の仮焼炉と前記セメント焼成キルンからの排ガスを収集し、該排ガス中のCO2又は該排ガスから分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成し、該メタンを前記燃料供給ラインに接続されたメタン供給ラインによって前記セメント製造設備の前記セメント焼成キルンの前記バーナへの前記石炭の一部又は全部の代替燃料として供給する。
【0008】
本発明では、セメント製造設備からの排ガス中のCO2や排ガスから分離回収したCO2をメタンに変換することにより、セメント製造設備から排出されるCO2を削減できるとともに、このメタンを石炭の代替燃料として使用することでメタンを有効活用できる。特に、石炭を石灰石由来のメタンで代替するので、石炭の使用を削減してエネルギー起源のCO2を低減でき、温室効果ガスの削減効果を高めることができる。
【0009】
このセメント製造排ガス中のCO2活用方法において、前記CO2は、前記セメント製造設備からの排ガスをCO2吸収材に接触させて分離回収したCO2であるとよい。
排ガスから分離回収したCO2を用いることにより、その濃度を高めて高濃度のメタンが製造でき、より効果的にメタンを利用することができる。CO2吸収材としてはアミン等を利用したものを用いることができる。
【0010】
本発明のセメント製造排ガス中のCO2活用システムは、セメント製造設備と、該セメント製造設備に接続された排ガス処理設備と、を備え、前記セメント製造設備は、プレヒータによって予熱されたセメント原料を仮焼する仮焼炉と、仮焼された前記セメント原料を焼成するセメント焼成キルンと、を備え、前記排ガス処理設備は、前記セメント製造設備の排ガスラインにおける集塵機と煙突との間に接続されていて前記セメント製造設備の仮焼炉と前記セメント焼成キルンからの排ガスを収集する排ガス収集ラインと、該排ガス収集ラインから送られてくる排ガス中のCO2又は該排ガスから分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成するメタン化装置と、前記メタンを前記セメント製造設備の前記セメント焼成キルンへの石炭の一部又は全部の代替燃料として供給するメタン供給装置とを備え、前記セメント焼成キルンのバーナには、前記石炭を供給する燃料供給ラインが接続されており、前記メタン供給装置は、前記燃料供給ラインに接続されて前記バーナにメタンを供給するメタン供給ラインを備えている。
【0011】
このセメント製造排ガス中のCO2活用システムにおいて、前記セメント製造設備からの排ガスをCO2吸収材に接触させてCO2を分離回収するCO2分離回収装置を備えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメント製造設備の排ガスから生成したメタンを石炭の代替燃料として利用しているので、メタンを有効活用して、エネルギー起源のCO2を削減し、温室効果ガスの削減効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセメント製造排ガス中のCO
2活用方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】上記実施形態のセメント製造排ガス中のCO
2活用システムを簡略化して示す図である。
【
図3】上記実施形態のセメント製造排ガス中のCO
2活用システムを構成するメタン化装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のセメント製造排ガス中のCO2活用方法及びセメント製造排ガス中のCO2活用システムの、一実施形態について図面を用いて説明する。
この実施形態は、セメント製造排ガス中のCO2からメタンを生成して、そのメタンをセメント焼成キルン及び仮焼炉への化石燃料の一部の代替燃料として利用するようにした例である。
【0015】
[CO
2活用システムの構成]
CO
2活用システム100は、
図2に示すように、セメント製造設備50と、セメント製造設備50に接続されて用いられる排ガス処理設備30と、を備えている。本実施形態では、排ガス処理設備30がセメント製造設備50からの排ガス又は該排ガスから分離回収したCO
2に水素を添加してメタンを生成し、生成したメタンをセメント製造設備50への化石燃料の一部又は全部の代替燃料として供給する。
【0016】
[セメント製造設備の構成]
セメント製造設備50は、
図2に全体を示したように、セメント原料として石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を個別に貯蔵する原料貯蔵庫1と、これらセメント原料を粉砕、乾燥する原料ミル及びドライヤ2と、原料供給管22を介して供給され、この原料ミルで得られた粉体状のセメント原料を予熱するプレヒータ3と、プレヒータ3によって予熱されたセメント原料を仮焼する仮焼炉4と、仮焼されたセメント原料を焼成するセメント焼成キルン5と、セメント焼成キルン5で焼成された後のセメントクリンカを冷却するためのクーラ6等とを備えている。
【0017】
セメント焼成キルン5は、横向きで若干傾斜した円筒状のロータリーキルンであり、軸芯回りに回転することにより、その窯尻部5aにプレヒータ3から供給されるセメント原
料を窯前部5bに送りながら、その送る過程で窯前部5bのバーナ8によって1450℃程度に加熱焼成してセメントクリンカを生成し、このセメントクリンカを窯前部5bからクーラ6に送り出すようになっている。バーナ8には、石炭、石油等の化石燃料を供給する燃料供給ライン15が接続されている。また、燃料供給ライン15とは別に、熱エネルギーを補うために、廃プラスチックや廃タイヤなどの代替熱源の供給系(図示略)も備えられている。セメントクリンカは、クーラ6で所定温度まで冷却された後、仕上げ工程へ送られることになる。
【0018】
プレヒータ3は、
図2に示すように、セメント焼成キルン5で発生した排ガスを流通させる複数(4つ)のサイクロン13が上下方向に連結状態とされて構築されたものであり、最下段のサイクロン13とその上のサイクロン13との間に仮焼炉4が接続されているとともに、仮焼炉4の燃焼ガスによって仮焼されたセメント原料を最下段のサイクロン13からセメント焼成キルン5の窯尻部5aに供給するようになっている。
【0019】
仮焼炉4は、内部にバーナ41を有しており、燃料供給ライン42から供給される石炭等の燃料を燃焼させることで、上段のサイクロン13から送られてくるセメント原料を仮焼し、その仮焼により生じた排ガスとともにライジングダクト25を介して最下段のサイクロン13に供給する。そのセメント原料は、最下段のサイクロン13からセメント焼成キルン5の窯尻部5aに供給される。一方、ライジングダクト25はセメント焼成キルン5の窯尻部5aから排ガスを最下段のサイクロン13に送り出しており、仮焼炉4で生じた排ガスも、このライジングダクト25を介してサイクロン13に供給される。このため、セメント焼成キルン5の排ガス及び仮焼炉4からの排ガスが一体となってプレヒータ3を下方から上方に経由した後、排気管9を通って原料ミル及びドライヤ2に導入される。
【0020】
原料ミル及びドライヤ2は、仮焼炉4及びセメント焼成キルン5からの排ガスが導入されることにより、セメント原料の粉砕と乾燥を同時に行うようになっている。この原料ミル及びドライヤ2には、集塵機10、煙突11等を備える排ガスライン12が接続されている。
【0021】
[排ガス処理設備の構成]
排ガス処理設備30は、セメント焼成キルン5及び仮焼炉4で発生し、煙突11から排出される前の排ガスを収集する排ガス収集ライン311と、該排ガス収集ライン311から送られてくる排ガスからCO2を分離回収し、分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成するメタン化装置31と、生成したメタンをセメント製造設備50へ供給するメタン供給装置32とを備えている。
排ガス収集ライン311は、セメント製造設備50の排ガスライン12における集塵機10と煙突11との間に接続され、セメント焼成時に生じた排ガスの一部を収集する。セメント焼成により生じた排ガスであるので、石炭等の燃料の燃焼による排ガスも一部含まれるが、石灰石由来の排ガスを多く含んでいる。
【0022】
(メタン化装置の構成)
メタン化装置31は、排ガスからCO2を分離回収するCO2分離回収装置310と、CO2分離回収装置310で分離回収されたCO2に水素ガスを供給して混合する水素混合部316と、水素が混合されたCO2からメタンを生成するメタン製造部317と、を備えている。
【0023】
CO
2分離回収装置310は、
図3に示すように、排ガス収集ライン311で収集された排ガスからSOxやNOx等の有害成分を除去する有害成分除去部312と、有害成分が除去された排ガスからCO
2を分離して回収するCO
2分離回収部313と、回収されたCO
2を圧縮する圧縮部314と、圧縮されたCO
2から水分を除去する除湿部315と、を備えている。
【0024】
排ガス収集ライン311から送られてくる排ガスは、石炭、石油コークス、重油などの化石燃料や廃プラスチックや廃タイヤなどの燃焼排ガスであるため、CO2が例えば、20数%程度含まれるとともに、CO2以外のガスや有害成分が含まれている。このため、有害成分除去部312は、排ガスから有害成分(例えば、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)等の酸化性ガス)を除去するものであり、NaOH水溶液などを充填したスクラバーを備える。この有害成分の除去により、NOxとともにハロゲンも除去されるので、次のCO2分離回収で用いられるアミン化合物の吸収材の劣化を防止する。
【0025】
CO2分離回収部313は、一般的なCO2回収装置からなり、この内部にはCO2を吸収するCO2吸収材(アミン化合物を水に溶解した液体吸収材、アミン化合物を多孔質材に担持させた固体吸収材等)が設けられ、有害物質が除去された後の排ガスがこれに接触することにより、排ガス中のCO2がCO2吸収材に吸収される。そして、CO2を吸収したCO2吸収材を加熱する等により、CO2吸収材からCO2を取り出して回収する。なお、CO2分離回収部313は、CO2が除去された後の排ガスを外部に排出する。圧縮部314は、回収されたCO2を0.1MPa以上好ましくは0.5~1.0MPaの圧力をかけて圧縮する。除湿部315は、圧縮されたCO2を冷却することにより、CO2内に含まれる水分を除去する。この除湿は、水分がメタン化装置内のNi系触媒の酸化に影響するので、これをメタン化の前に除去するものである。
【0026】
水素混合部316は、除湿されたCO2に水素ガスを供給して混合し、加圧する。水素ガスは、再生可能エネルギーを利用した人工光合成、水の分解等によって生成したものを利用することができる。この水素混合部316による水素の添加は、水素が混合されたCO2からメタンを製造しやすい濃度に適宜設定される。
メタン製造部317は、水素が混合されたCO2からメタンを生成する。このメタン製造部317は、一般的なメタン製造装置からなり、メタン化に活性を示す触媒(例えば、水素化触媒としてNi、Pt、Pd、Cuが利用されるが、メタン化においては特に、Al2O3、Cr2O3、SiO2、MgAl2O4、TiO2、ZrO2など担持されたNi及びNi合金が触媒として利用される)が充填された反応器(図示省略)を複数備えており、これら反応器に水素が混合されたCO2を供給して反応させることによりメタンを製造する。
【0027】
(メタン供給装置の構成)
メタン供給装置32は、
図2に示すように、メタン化装置31により製造されたメタンを貯留するタンク(図示省略)と、タンクに接続され、メタンを窯前部7のバーナ8及び仮焼炉4のバーナ41のそれぞれに送るメタン供給ライン321及びポンプ322,323を備えている。このメタン供給ライン321は、セメント焼成キルン5のバーナ8に石炭や石油等の燃料を供給する燃料供給ライン15及び仮焼炉4のバーナ41に石炭等の燃料を供給する燃料供給ライン42のそれぞれに接続されている。これにより、各バーナ8,41には、燃料とともにメタンが供給される。
【0028】
[CO
2活用方法]
上述したCO
2活用システム100を用いてセメント製造設備50の排ガス中のCO
2を削減して有効活用する方法について、
図1に示すフローチャートに沿って説明する。
【0029】
セメント製造設備50では、セメント原料としての石灰石、粘土、珪石、鉄原料等を粉砕、乾燥させることにより得られた粉体状のセメント原料を予熱し、予熱されたセメント原料を仮焼した後焼成し、これを冷却することによりセメントクリンカが製造される。このセメントクリンカの製造に伴いセメント焼成キルン5及び仮焼炉4で発生する排ガスは、プレヒータ3を下方から上方に経由した後、排気管9を通って原料ミル及びドライヤ2に導入され、セメント原料の乾燥に用いられた後、集塵機10を介して煙突11から排出される。
【0030】
このセメント製造プロセスにおいて、メタン化装置31の排ガス収集部311により、セメント焼成時に生じた排ガスの一部を排ガス処理ライン12の集塵機10と煙突11との間から収集する。次に、有害成分除去部312は、排ガスから有害成分を除去する。この有害成分除去部312において、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)、ハロゲンなどが除去される。そして、CO2分離回収部313により、排ガスからCO2が取り出されて分離回収される。このとき、CO2が除去された排ガスを外部に排出する。
【0031】
次に、圧縮部314により、回収されたCO2を0.1MPa以上好ましくは0.5~1.0MPaの圧力をかけて圧縮し、除湿部315によりCO2内に含まれる水分を除去する。そして、水素混合部316により、除湿されたCO2に水素ガスを供給して混合し、加圧する。そして、メタン製造部317により、水素が混合されたCO2からメタンを生成する。
【0032】
このようにして生成されたメタンは、メタン供給装置32のタンクに貯蔵される。そして、このタンクに貯蔵されたメタンを、メタン供給ライン321を介してセメント焼成キルン5及び仮焼炉4に供給する。セメント焼成キルン5には、燃料供給ライン15から石油や石炭等の化石燃料が供給されるが、メタンを供給することにより、その化石燃料の一部をメタンで代替することができ、その分、化石燃料を削減することができる。同様に、仮焼炉4においても石炭等の燃料の一部又は全部をメタンで代替するため、化石燃料を削減することができる。
【0033】
本実施形態では、セメント製造設備50からの排ガスから分離回収したCO2をメタンに変換することにより、セメント製造設備50から排出されるCO2を削減できるとともに、このメタンをセメント焼成用キルン5及び仮焼炉4の代替燃料として使用することでメタンを有効活用できる。特に、地球温暖化の大きな原因となっている石炭や石油の化石燃料を石灰石由来のメタンで代替するので、化石燃料の使用を削減してエネルギー起源のCO2を低減でき、温室効果ガスの削減効果を高めることができる。
また、排ガスから分離回収したCO2を用いることにより、その濃度を高めて高濃度のメタンが製造でき、より効果的にメタンを利用することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態ではセメント製造設備50の排ガスからCO2を分離回収したが、セメント製造設備50の排ガスにはCO2が20数%濃度で含まれているので、その排ガスに直接水素を添加してメタンを生成してもよい。
また、生成したメタンをセメント焼成キルン5及び仮焼炉4の両方に供給するようにしたが、いずれか一方に供給するようにしてもよい。
さらに、セメント焼成キルン5及び仮焼炉4の両方の排ガスを利用してメタンを生成したが、仮焼炉を有しないセメント製造設備への適用も可能であり、その場合は、セメント焼成キルンからの排ガスからメタンを生成する。
【0035】
また、本実施形態では、セメント製造設備50からの排ガスから生成したメタンをセメント製造設備50のセメント焼成キルン5及び仮焼炉4に供給することにより、このセメント製造設備50で用いられている化石燃料の代替燃料として利用することにしたが、本発明は、これに留まらず、他の各種設備や施設等に化石燃料の代替燃料として用いてもよい。例えば、火力発電所、石油精製施設、天然ガス精製施設、ゴミ等の廃棄物焼却施設、燃料電池、各種工業設備等で用いられる石炭、石油、LNG等の化石燃料の代替燃料、及び都市ガス代替として一般家庭で用いられる代替燃料として、多種多様な用途で用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1 原料貯蔵庫
2 原料ミル及びドライヤ
3 プレヒータ
4 仮焼炉
5 セメント焼成キルン
5a 窯尻部
5b 窯前部
6 クーラ
8 バーナ
9 排気管
10 集塵機
11 煙突12 排ガス処理ライン
13 サイクロン
15 燃料供給ライン
22 原料供給管
25 ライジングダクト
30 排ガス処理設備
31 メタン化装置
310 CO2分離回収装置
311 排ガス収集ライン
312 有害成分除去部
313 CO2分離回収部
314 圧縮部
315 除湿部
316 水素混合部
317 メタン製造部
32 メタン供給装置
321 メタン供給ライン
322 ポンプ
323 ポンプ
41 バーナ
42 燃料供給ライン
50 セメント製造設備
100 CO2活用システム
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造設備と該セメント製造設備に接続された排ガス処理設備とを備え、
前記セメント製造設備で、石炭を燃料供給ラインからセメント焼成キルンのバーナへ供給して燃焼させ、該セメント焼成キルンによりセメントクリンカを製造する方法であって、
前記排ガス処理設備で、前記セメント製造設備の排ガスラインにおける集塵機と煙突との間に接続された排ガス収集ラインによって前記セメント製造設備の仮焼炉と前記セメント焼成キルンからの排ガスを収集し、該排ガス中のCO2又は該排ガスから分離回収したCO2に水素を添加してメタンを生成し、該メタンを前記燃料供給ラインに接続されたメタン供給ラインによって前記セメント製造設備の前記セメント焼成キルンの前記バーナ又は前記仮焼炉のバーナへの前記石炭の一部又は全部の代替燃料として供給することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
【請求項2】
前記CO2は、前記セメント製造設備からの排ガスをCO2吸収材に接触させて分離回収したCO2であることを特徴とする請求項1に記載のセメントクリンカ製造方法。
【請求項3】
前記メタンを前記セメント焼成キルン及び前記仮焼炉の両方のバーナに供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、セメント製造設備の排ガス中に含まれるエネルギー起源のCO2を削減しつつセメントクリンカを製造する方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エネルギー起源のCO2を削減するため、化石燃料由来ではないセメント排ガス中のCO2をメタン化し有効活用しながらセメントクリンカを製造することを目的とする。