(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004175
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20230110BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20230110BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20230110BHJP
C30B 25/14 20060101ALI20230110BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/448
C30B29/38 D
C30B25/14
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105720
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】小沢 基
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄蔵
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE15
4G077DB05
4G077DB15
4G077EC09
4G077EG22
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4K030AA18
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4K030FA10
4K030GA02
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4K030KA45
4K030LA14
5F045AA03
5F045AB14
5F045AC00
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5F045AC15
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5F045EF02
5F045EF08
5F045EK03
5F045EK06
(57)【要約】
【課題】GaN層の品質が低下することを抑制する。
【解決手段】切替部400により、生成装置20と成長装置10との連通状態と、生成装置20と排気配管410との連通状態とが切り替えられるようにする。生成装置20は、金属ガリウム200が配置される第1空間211および第1空間200と供給配管310との間に位置する第2空間212と、第1空間212に塩素ガスを誘導する第1誘導配管231と、第2空間212に塩素ガスを誘導する第2誘導配管232とを備える構成とし、第2誘導配管232から塩素ガスが誘導された後に、第1誘導配管231から塩素ガスが誘導されるようにする。切替部400は、第1誘導配管231から塩素ガスが誘導される前は生成装置20と排気配管410とが連通状態となり、第1誘導配管231から塩素ガスが誘導された後に生成装置29と成長装置120とが連通状態となる構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層製造装置であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、
前記生成装置と前記成長装置とを繋ぎ、前記生成装置で生成された前記三塩化ガリウムガスを前記成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、
前記供給配管に切替部(400)を介して排気配管(410)が備えられ、前記切替部により、前記生成装置と前記成長装置との連通状態と、前記生成装置と前記排気配管との連通状態とが切り替えられるようになっており、
前記生成装置は、金属ガリウム(220)が配置される第1空間(211)および前記第1空間と前記供給配管との間に位置する第2空間(212)と、前記第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、前記第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を備え、前記第2誘導配管から前記塩素ガスが誘導された後に、前記第1誘導配管から前記塩素ガスが誘導されるようになっており、
前記切替部は、前記第1誘導配管から前記塩素ガスが誘導される前は、前記生成装置と前記排気配管とが連通状態となるように調整され、前記第1誘導配管から前記塩素ガスが誘導された後に、前記生成装置と前記成長装置とが連通状態となるように切り替えられる窒化ガリウム層製造装置。
【請求項2】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層製造装置であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、
前記生成装置と前記成長装置とを繋ぎ、前記生成装置で生成された前記三塩化ガリウムガスを前記成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、
前記生成装置は、金属ガリウム(200)が配置される第1空間(211)および前記第1空間と前記供給配管との間に位置する第2空間(212)と、前記第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、前記第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を備え、前記第1誘導配管から前記塩素ガスが誘導された後に、前記第2誘導配管から前記塩素ガスが誘導される窒化ガリウム層製造装置。
【請求項3】
前記第2空間は、前記三塩化ガリウムガスが生成される際、前記三塩化ガリウムガスが気体として維持されつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度とされた部分を有するように温度が調整される請求項2に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項4】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層の製造方法であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、
前記生成装置と前記成長装置とを繋ぎ、前記生成装置で生成された前記三塩化ガリウムガスを前記成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、
前記供給配管に切替部(400)を介して排気配管(410)が備えられ、前記切替部により、前記生成装置と前記成長装置との連通状態と、前記生成装置と前記排気配管との連通状態とが切り替えられるようになっており、
前記生成装置は、金属ガリウム(200)が配置される第1空間(211)および前記第1空間と前記供給配管との間に位置する第2空間(212)と、前記第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、前記第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を有している窒化ガリウム層製造装置を用意することと、
前記成長用容器内に前記種基板を配置することと、
前記種基板に、前記生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを供給することにより、前記種基板上に前記窒化ガリウム層を成長させることと、を行い、
前記三塩化ガリウムガスを供給することでは、前記排気配管と前記生成装置とが連通した状態で前記第2誘導配管から前記塩素ガスを誘導することと、前記第2誘導配管から前記塩素ガスを誘導することの後に前記第1誘導配管から前記塩素ガスを誘導することと、前記第1誘導配管から前記塩素ガスを誘導することの後に前記成長装置と前記生成装置とを連通させることと、を行う窒化ガリウム層の製造方法。
【請求項5】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層の製造方法であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、
前記生成装置と前記成長装置とを繋ぎ、前記生成装置で生成された前記三塩化ガリウムガスを前記成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、
前記生成装置は、金属ガリウム(200)が配置される第1空間(211)および前記第1空間と前記供給配管との間に位置する第2空間(212)と、前記第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、前記第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を有している窒化ガリウム層製造装置を用意することと、
前記成長用容器内に前記種基板を配置することと、
前記種基板に、前記生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを供給することにより、前記種基板上に前記窒化ガリウム層を成長させることと、を行い、
前記三塩化ガリウムガスを供給することでは、前記第1誘導配管から前記塩素ガスを誘導した後、前記第2誘導配管から前記塩素ガスを誘導する窒化ガリウム層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)で構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイドライド気層成長法を用い、GaNで構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造装置では、種基板が配置されてGaN層を成長させる成長装置と、GaN層を成長させるための原料ガスとなる三塩化ガリウムガスを生成する生成装置とを備えている。また、この製造装置では、成長装置と生成装置とを繋いで生成装置で生成されたガスを成長装置へ供給する第1供給配管と、GaN層を成長させるための原料ガスとなるアンモニアガスを成長装置へ供給する第2供給配管とを備えている。
【0003】
成長装置は、種基板が配置される成長用容器を有し、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスが第1供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。また、成長装置は、アンモニアガスが第2供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。
【0004】
生成装置は、金属ガリウムが配置される生成用容器を備えている。生成用容器は、金属ガリウムが配置される第1空間と、第1空間と連通した第2空間とを備える構成とされている。また、生成用容器は、第1空間に塩素ガスを誘導するための第1誘導配管、および第2空間に塩素ガスを誘導するための第2誘導配管が備えられている。
【0005】
そして、生成装置では、第1誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式1の反応のように、金属ガリウムと塩素ガスとが反応して一塩化ガリウムガスが生成される。
【0006】
(化1)Ga+1/2Cl2→GaCl
また、生成装置では、生成用容器に第2誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式2のように、一塩化ガリウムガスと塩素ガスとが反応して三塩化ガリウムガスが生成される。
【0007】
(化2)GaCl+Cl2→GaCl3
そして、このようなGaN層製造装置では、種基板上に、三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることにより、下記化学式3の反応によってGaN層が成長させられる。
【0008】
(化3)GaCl3+NH3→GaN+3HCl
なお、このGaN層製造装置では、生成用容器に、第1誘導配管および第2誘導配管から同時に塩素ガスが誘導されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のGaN層製造装置では、第1誘導配管および第2誘導配管から生成用容器内に塩素ガスが同時に誘導される。このため、上記のGaN層製造装置では、未反応の塩素ガスがそのまま成長用容器内に供給される可能性がある。この場合、成長用容器内に配置される種基板が塩素ガスによって削れる可能性があり、GaN層の品質が低下する可能性がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑み、GaN層の品質が低下することを抑制できるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1では、種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでGaN層(122)を成長させるGaN層製造装置であって、反応室を構成する中空部(101a)でGaN層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、成長用容器の中空部内に配置され、GaN層が成長させられる種基板が配置される台座(120)と、ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、生成装置と成長装置とを繋ぎ、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、供給配管に切替部(400)を介して排気配管(410)が備えられ、切替部により、生成装置と成長装置との連通状態と、生成装置と排気配管との連通状態とが切り替えられるようになっており、生成装置は、金属ガリウム(200)が配置される第1空間(211)および第1空間と供給配管との間に位置する第2空間(212)と、第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を備え、第2誘導配管から塩素ガスが誘導された後に、第1誘導配管から塩素ガスが誘導されるようになっており、切替部は、第1誘導配管から塩素ガスが誘導される前は、生成装置と排気配管とが連通状態となるように調整され、第1誘導配管から塩素ガスが誘導された後に、生成装置と成長装置とが連通状態となるように切り替えられる。
【0013】
また、請求項2では、種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでGaN層(122)を成長させるGaN層製造装置であって、反応室を構成する中空部(101a)でGaN層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、成長用容器の中空部内に配置され、GaN層が成長させられる種基板が配置される台座(120)と、ガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置(20)と、生成装置と成長装置とを繋ぎ、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを成長装置へ供給する供給配管(310)と、を備え、生成装置は、金属ガリウム(200)が配置される第1空間(211)および第1空間と供給配管との間に位置する第2空間(212)と、第1空間に塩素ガスを誘導する第1誘導配管(231)と、第2空間に塩素ガスを誘導する第2誘導配管(232)と、を備え、第1誘導配管から塩素ガスが誘導された後に、第2誘導配管から塩素ガスが誘導される。
【0014】
これらのGaN層製造装置によれば、生成装置から塩素ガスがそのまま成長装置へ供給されることを抑制でき、種基板が塩素ガスによって削られること等を抑制できる。したがって、GaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0015】
また、請求項4は、請求項1のGaN層製造装置を用いたGaN層の製造方法であり、成長用容器内に種基板を配置することと、種基板に、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを供給することにより、種基板上にGaN層を成長させることと、を行い、三塩化ガリウムガスを供給することでは、排気配管と生成装置とが連通した状態で第2誘導配管から塩素ガスを誘導することと、第2誘導配管から塩素ガスを誘導することの後に第1誘導配管から塩素ガスを誘導することと、第1誘導配管から塩素ガスを誘導することの後に成長装置と生成装置とを連通させることと、を行う。
【0016】
請求項5は、請求項2のGaN層製造装置を用いたGaN層の製造方法であり、成長用容器内に種基板を配置することと、種基板に、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスを供給することにより、種基板上にGaN層を成長させることと、を行い、三塩化ガリウムガスを供給することでは、第1誘導配管から塩素ガスを誘導した後、第2誘導配管から塩素ガスを誘導する。
【0017】
これらのGaN層の製造方法によれば、生成装置から塩素ガスがそのまま成長装置へ供給されることを抑制でき、種基板が塩素ガスによって削られること等を抑制できる。したがって、GaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0018】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【
図2】第1実施形態におけるGaN層の製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【
図4】第2実施形態におけるGaN層の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、GaN層製造装置の構成について、
図1を参照しつつ説明する。なお、
図1に示されるGaN層製造装置は、
図1の紙面上下方向を天地方向として設置され、種基板121上にGaN層122を成長させるものである。
【0022】
図1に示されるように、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させる成長装置10、およびGaN層122を成長させるための原料ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置20を備えている。また、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させるための各種のガスを成長装置10へ供給する第1~第3供給配管310~330等を備えている。
【0023】
成長装置10は、成長用容器100、加熱容器110、台座120、シャフト131、回転変位機構132、加熱装置140等を有している。
【0024】
成長用容器100は、反応室を構成する中空部101aを備えた筒状の筒部101と、筒部101に備えられて中空部101aを閉塞する第1蓋部102および第2蓋部103とを有している。筒部101は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部102および第2蓋部103は、SUS等で構成されており、第1蓋部102が筒部101のうちの天側となる端部に備えられ、第2蓋部103が筒部101のうちの地側となる端部に備えられている。そして、成長用容器100は、GaN層122を成長させるための他の構成要素が中空部101a内に配置され、この中空部101aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0025】
また、成長用容器100には、GaN層122を成長させるための各種のガスを供給する第1~第3供給配管310~330が備えられている。本実施形態では、第1蓋部102に第1~第3供給配管310~330が備えられている。具体的には、第1蓋部102には、生成装置20で生成されたGaN層122を成長させるためのガリウム系ガスとして、三塩化ガリウムガスを成長用容器100内に供給する第1供給配管310が備えられている。第1蓋部102には、三塩化ガリウムガスと共にGaN層122を成長させるためのアンモニア系ガスとして、アンモニアガスを成長用容器100内に供給する第2供給配管320が備えられている。第1蓋部102には、キャリアガスとしての窒素ガスを成長用容器100内に供給する第3供給配管330が備えられている。
【0026】
そして、本実施形態の第1供給配管310および第2供給配管320は、一端部が後述の加熱容器110内に位置するように配置されている。一方、第3供給配管330は、一端部が第1供給配管310および第2供給配管320の一端部よりも第1蓋部102側に位置するように配置されている。言い換えると、第1~第3供給配管310~330は、第1、第2供給配管310、320から供給されたガスが、第3供給配管330から供給されたガスによって下方(すなわち、後述の種基板121側)に流動し易くなるように、配置されている。
【0027】
なお、第1供給配管310は、成長装置10側の一端部と反対側の他端部側が生成装置20に備えられている。つまり、第1供給配管310は、成長装置10と生成装置20とを繋ぐように配置されている。また、第1供給配管310は、後述する生成用容器200よりもガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされている。そして、第2供給配管320および第3供給配管330は、特に図示しないが、成長装置10の一端部と反対側の他端部がそれぞれのガス供給源と接続されている。
【0028】
さらに、成長用容器100には、GaN層122の成長に寄与しなかった未反応ガス等を排出する排出口104が備えられている。本実施形態では、成長用容器100のうちの第2蓋部103側の部分に排出口104が備えられている。
【0029】
加熱容器110は、例えば、アルミナ、ジルコニア、熱分解炭素、黒鉛(グラファイト)等で構成されており、中空部110aを有する円筒状に形成されている。そして、加熱容器110は、第1~第3供給配管310~330からの各種のガスが中空部110a内に供給されるように、第1蓋部102に備えられている。
【0030】
台座120は、GaN層122を成長させるためのGaNで構成される種基板121が配置される部材であり、加熱容器110よりも下方に配置されている。台座120は、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。そして、この台座120のうち第1~第3供給配管310~330側に位置する一面120aに種基板121が貼り付けられ、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0031】
なお、本実施形態では、後述するように、種基板121上に三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122が成長させられる。ここで、GaN層122を成長させる際に三塩化ガリウムガスを適用した場合、GaN層122は、種基板121の成長面が窒素面であると成長し易く、種基板121の成長面がガリウム面であると成長し難いことが報告されている。したがって、本実施形態では、種基板121は、GaN層122の成長面が窒素面となるようにして配置される。言い換えると、種基板121は、台座120と反対側の面が窒素面となるようにして配置される。
【0032】
また、台座120は、種基板121が配置される面と反対側の面にシャフト131が連結されている。そして、台座120は、シャフト131の回転に伴って回転させられると共に、シャフト131が成長用容器100の軸方向(すなわち、
図1中紙面上下方向)に沿って変位することで共に変位する構成とされている。なお、シャフト131は、台座120と同様に、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。
【0033】
回転変位機構132は、シャフト131と接続されており、シャフト131を回転させたり、シャフト131を変位させる部材である。そして、回転変位機構132は、GaN層122の成長に伴って当該GaN層122における成長表面の温度を成長に適した温度に調整できるように、シャフト131(すなわち、種基板121)の位置を調整する。特に限定されるものではないが、本実施形態の回転変位機構132は、台座120が1分間に200回転以上の回転となるようにシャフト131を回転させる。
【0034】
加熱装置140は、加熱容器110や成長用容器100内を加熱するものであり、例えば、誘導加熱用コイルや直接加熱用コイル等の加熱コイルによって構成され、成長用容器100の周囲を囲むように配置されている。そして、本実施形態の加熱装置140は、GaN層122を成長させる際には、種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように駆動される。
【0035】
生成装置20は、生成用容器200および加熱装置240等を有している。生成用容器200は、中空部201aを有する筒状の筒部201と、筒部201に備えられて中空部201aを閉塞する第1蓋部202および第2蓋部203とを有している。筒部201は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部202および第2蓋部203は、SUS等で構成されている。第1蓋部202は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側と反対側の端部に備えられ、第2蓋部203は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側の端部に備えられている。なお、生成用容器200は、成長用容器100と同様に、中空部201aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0036】
生成用容器200には、中空部201aを、第1蓋部202側の第1空間211と、第2蓋部203側の第2空間212とに区画する区画壁213が備えられている。但し、この区画壁213は、第1空間211と第2空間212との連通が維持されるように形成されている。言い換えると、区画壁213は、第1空間211と第2空間212とを完全に区画しないように備えられている。
【0037】
そして、第1空間211には、金属ガリウム220が配置されている。第2空間212には、本実施形態では、後述するように第1空間211で生成された一塩化ガリウムガスおよび塩素ガスと接触する壁面を増加させるための仕切壁214が備えられている。
【0038】
また、生成用容器200には、塩素ガスを生成用容器200内に誘導する第1誘導配管231および第2誘導配管232が備えられている。本実施形態では、第1誘導配管231は、第1空間211に塩素ガスを誘導できるように、第1蓋部202に備えられている。第2誘導配管232は、第2空間212に塩素ガスを誘導できるように、筒部201に備えられている。
【0039】
加熱装置240は、生成用容器200内を加熱するものであり、例えば、抵抗加熱式ヒータ等で構成され、生成用容器200の周囲に配置されている。なお、本実施形態の加熱装置240は、第1空間211の方が第2空間212よりも高温となるように、配置される場所や密度等が適宜調整されて駆動される。例えば、本実施形態の加熱装置240は、GaN層122を成長させる際、第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の温度が150℃程度となるように配置されて駆動される。なお、加熱装置240のうちの第2空間212を加熱する部分は、第1空間211側の部分から第2蓋部203側に向かって温度が徐々に低くなる温度勾配となるように配置されて駆動される。また、第2空間212は、より詳しくは、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。本実施形態では、第2空間212は、後述するように、第1供給配管310が備えられる第2蓋部203側の部分が当該温度となるように加熱される。
【0040】
そして、生成装置20には、第2蓋部203に第1供給配管310の他端部が備えられている。なお、特に図示しないが、第1供給配管310の周囲にも加熱装置が配置される。そして、第1供給配管310は、GaN層122を成長させる際には、例えば、150℃程度に加熱されるようになっている。
【0041】
また、本実施形態の第1供給配管310には、バルブ等で構成される切替部400を介して排気配管410が備えられている。そして、生成装置20は、切替部400によって成長装置10および排気配管410の一方と連通される。
【0042】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について、
図2を参照しつつ説明する。
【0043】
図2に示されるように、まず、ステップS101にて、台座120の一面120aに種基板121を配置する。なお、本実施形態では、上記のように、GaN層122の成長面が窒素面となるように種基板121を配置する。そして、回転変位機構132により、シャフト131を介して台座120を回転させると共に、台座120の位置を調整する。また、後述のGaN層122を成長させている際には、GaN層122の成長レートに合せて台座の高さを調整する。これにより、GaN層122の成長表面の高さがほぼ一定に保たれ、成長表面温度の温度分布を効果的に制御することが可能となる。
【0044】
次に、ステップS102にて、キャリアガスを成長用容器100に供給する。続いて、ステップS103にて、各加熱装置140、240を駆動する。具体的には、成長用容器100内に配置された種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように、加熱装置140を駆動する。また、生成用容器200における第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の部分が150℃程度となるように加熱装置240を駆動する。さらに、図示を省略しているが、第1供給配管310も150℃程度なるように、これらの周囲に配置される加熱装置を駆動する。
【0045】
その後、ステップS104にて、アンモニアガスを成長用容器100に供給する。なお、アンモニアガスの供給は、加熱装置140を駆動した後であって、窒素抜けを防止するために、種基板121の周囲の温度が500℃以下である状態で開始することが好ましい。
【0046】
続いて、ステップS105にて、切替部400を調整して生成装置20と排気配管410とを連通させ、生成装置20からのガスが排気配管410から排気される状態となるようにする。
【0047】
次に、ステップS106にて、第2誘導配管232から塩素ガスを第2空間212に誘導する。この際、切替部400によって生成装置20からのガスが排気配管410から排気されるため、塩素ガスがそのまま成長装置10内に誘導されることを抑制でき、種基板121が塩素ガスによってエッチングされることを抑制できる。
【0048】
続いて、ステップS107にて、ステップS106から所定期間経過後(例えば、10秒後)に、第1誘導配管231から第1空間211に塩素ガスを誘導する。これにより、第1空間211では、金属ガリウム220と塩素ガスとが反応して一塩化ガリウムガスが生成される。そして、この一塩化ガリウムガスが第2空間212に流動することにより、第2空間212に誘導されている塩素ガスと反応し、三塩化ガリウムガスが生成される。この場合、本実施形態の第2空間212には、仕切壁214が備えられている。このため、第2空間212に誘導されたガスは、高温部分としての仕切壁214に衝突し易くなると共に流動距離が長くなる。したがって、一塩化ガリウムガスが塩素ガスと反応されずに残存することを抑制できる。
【0049】
なお、ステップS107における所定期間は、例えば、実験等により、ステップS106を行って第2空間212に塩素ガスが充満するまでの期間とされる。また、ステップS107における所定期間は、例えば、排気配管410から排気される塩素ガスの濃度が所定閾値以上となるまでの期間とされる。
【0050】
続いて、ステップS108にて、ステップS107から所定期間経過後(例えば、30秒後)に、切替部400を調整して生成装置20と成長装置10とを連通させ、生成装置20からのガスが成長装置10に供給される状態となるようにする。これにより、アンモニアガスおよび三塩化ガリウムガスが流動して種基板121に供給され、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0051】
なお、ステップS108における所定期間は、例えば、実験等により、ステップS107を行って一塩化ガスガリウムガスが三塩化ガリウムガスに完全に反応した後の期間とされる。これにより、第1供給配管310のうちの切替部400より成長装置10側の部分で詰まり等が発生することを抑制できる。すなわち、一塩化ガリウムガスは、三塩化ガリウムガスよりも融点が高い材料であり、三塩化ガリウムガスよりも固化し易い材料である。このため、一塩化ガリウムガスが三塩化ガリウムガスに完全に反応した後に生成装置20と成長装置10とを連通させることにより、第1供給配管310のうちの切替部400より成長装置10側の部分で詰まり等が発生することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態の第2空間212は、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、GaN層122を成長させる際には、次のようにしている。すなわち、まず、生成装置20と排気配管410とを連通した状態とする。次に、第2誘導配管232から生成装置20へ塩素ガスを誘導した後、第1誘導配管231から生成装置20へ塩素ガスを誘導する。その後、生成装置20と成長装置10とを連通させ、生成装置20から成長装置10へ三塩化ガリウムガスが供給されるようにする。このため、生成装置20から塩素ガスがそのまま成長装置10へ供給されることを抑制でき、種基板121が塩素ガスによって削られること等を抑制できる。したがって、GaN層122の品質が低下することを抑制できる。
【0054】
また、第2誘導配管232から先に塩素ガスを誘導することにより、生成装置20から第1供給配管310内に一塩化ガリウムガスが入り込み難むことを抑制できる。したがって、第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0055】
(1)本実施形態では、第2空間212は、GaN層122を成長させる際、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、断面積が小さい第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、排気配管410および切替部400を備えないものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本実施形態のGaN層製造装置は、
図3に示されるように、排気配管410および切替部400が備えられていない。つまり、成長装置10には、生成装置20からのガスがそのまま供給されるようになっている。
【0058】
次に、本実施形態のGaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について、
図4を参照しつつ説明する。
【0059】
本実施形態では、
図4に示されるように、ステップS201~S204において、ステップS101~S104と同様の工程を行う。そして、ステップS205において、第1誘導配管231から第1空間211に塩素ガスを誘導する。これにより、第1空間211では、金属ガリウム220と塩素ガスとが反応し、一塩化ガリウムが生成される。
【0060】
次に、ステップS206にて、ステップS205から所定期間経過後(例えば、10秒後)に、第2誘導配管232から塩素ガスを第2空間212に誘導する。これにより、一塩化ガリウムが塩素ガスと反応し、三塩化ガリウムが生成される。そして、このように第1誘導配管231から塩素ガスを第1空間211に誘導した後に第2誘導配管232から塩素ガスを第1空間211に誘導することにより、塩素ガスがそのまま成長装置10内に誘導されることを抑制できる。このため、種基板121が塩素ガスによって削られること等を抑制できる。そして、三塩化ガリウムガスが成長用容器100内に供給されることにより、種基板121の表面にGaN層122が成長する。なお、ステップS206における所定期間は、例えば、実験等により、ステップS205を行って第2空間212に一塩化ガリウムが十分に流動するまでの時間とされる。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、GaN層122を成長させる際には、第1誘導配管231から塩素ガスを第1空間211に誘導した後に第2誘導配管232から塩素ガスを第1空間211に誘導するようにしている。このため、塩素ガスがそのまま成長装置10内に誘導されることを抑制できる。したがって、種基板121が塩素ガスによって削られること等を抑制できる。
【0062】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0063】
例えば、上記各実施形態において、成長装置10の構成は適宜変更である。例えば、上記各実施形態では、台座120の回転および変位を行う回転変位機構132を備える例を説明したが、台座120の回転のみを行って変位を行わないようにしてもよい。また、排出口104は、成長用容器100における第1蓋部102側に配置されていてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態において、第2空間212に仕切壁214が備えられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 成長装置
20 生成装置
100 成長用容器
101a 中空部
120 台座
120a 一面
121 種基板
122 GaN層
310 供給配管
400 切替部
410 排気配管