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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041755
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 19/04 20060101AFI20230316BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20230316BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H01T19/04
H01T23/00
B05B5/025 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007589
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2019173517の分割
【原出願日】2019-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
(72)【発明者】
【氏名】青野 哲典
(72)【発明者】
【氏名】若葉 貞彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 隆行
(57)【要約】
【課題】有効成分の生成効率の更なる向上を図ることができる放電装置を提供する。
【解決手段】放電装置10は、放電電極1と、対向電極2と、電圧印加回路と、液体供給部と、を備える。液体供給部は、放電電極1に液体を供給する。液体は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って伸縮する。対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有する。周辺電極部21は、放電電極1とは反対側に凸となり、先端面に開口部23が形成される。突出電極部22は、周辺電極部21から開口部23内に突出する。周辺電極部21は、扁平な半球殻状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の放電電極と、
前記放電電極と対向する対向電極と、
前記放電電極と前記対向電極との間に印加電圧を印加することにより放電を生じさせる電圧印加回路と、
前記放電電極に液体を供給する液体供給部と、を備え、
前記液体は、放電によって前記放電電極の中心軸に沿って伸縮し、
前記対向電極は、
前記放電電極とは反対側に凸となり、先端面に開口部が形成された周辺電極部と、
前記周辺電極部から前記開口部内に突出する突出電極部と、を有し、
前記周辺電極部は、扁平な半球殻状に形成されている、
放電装置。
【請求項2】
前記放電電極の前記中心軸の一方から見て、前記突出電極部の外周縁の全体は円弧状である、
請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記液体から前記突出電極部までの距離は、前記液体から前記周辺電極部までの距離以下である、
請求項1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記液体から前記突出電極部までの距離は、前記液体から前記周辺電極部までの距離の9/10以下である、
請求項3に記載の放電装置。
【請求項5】
前記対向電極は、前記放電電極の前記中心軸の一方から見た前記突出電極部の先端面と、前記放電電極の前記中心軸及び前記突出電極部の先端を含む仮想平面内における、前記突出電極部の前記放電電極側の角部と、前記周辺電極部の前記放電電極側の角部と、前記周辺電極部の内面と、の少なくとも1つが湾曲形状を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項6】
前記突出電極部の先端面の湾曲形状は、前記突出電極部の前記放電電極側の角部の湾曲形状よりも曲率半径が大きい、
請求項5に記載の放電装置。
【請求項7】
前記突出電極部の先端面の湾曲形状は、前記周辺電極部の内面の湾曲形状よりも曲率半径が小さい、
請求項5又は6に記載の放電装置。
【請求項8】
前記電圧印加回路は、前記液体の固有振動数に応じた駆動周波数で前記印加電圧を変動させる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の放電装置。
【請求項9】
前記駆動周波数は、前記液体の固有振動数以上の周波数である、
請求項8に記載の放電装置。
【請求項10】
前記放電電極の中心軸に沿う方向において、前記放電電極の先端は、前記周辺電極部における外周縁よりも前記放電電極側に位置する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に放電装置に関し、より詳細には、放電電極と対向電極とを備える放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放電電極と対向電極とを備え、放電電極と対向電極との間に電圧を印加し、コロナ放電から更に進展した放電を生じさせる放電装置が記載されている。この放電装置で生じる放電は、放電電極から周囲に伸びるように絶縁破壊された放電経路を、断続的に発生させる放電である。特許文献1に記載の放電装置では、高エネルギーの放電を生じさせることによって、コロナ放電に比べて有効成分の生成量を増大させることができる。
【0003】
さらに、特許文献1には、対向電極が、放電電極に対向する針状電極部を備えることが記載されている。これにより、放電装置は、放電経路を断続的に発生させる放電を、放電電極と針状電極部との間で安定的に生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-22574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、有効成分の生成効率の更なる向上を図ることができる放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る放電装置は、放電電極と、対向電極と、電圧印加回路と、液体供給部と、を備える。前記放電電極は、柱状の電極である。前記対向電極は、前記放電電極と対向する。前記電圧印加回路は、前記放電電極と前記対向電極との間に印加電圧を印加することにより放電を生じさせる。前記液体供給部は、前記放電電極に液体を供給する。前記液体は、放電によって前記放電電極の中心軸に沿って伸縮する。前記対向電極は、周辺電極部と、突出電極部と、を有する。前記周辺電極部は、前記放電電極とは反対側に凸となり、先端面に開口部が形成される。前記突出電極部は、前記周辺電極部から前記開口部内に突出する。前記周辺電極部は、扁平な半球殻状に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、有効成分の生成効率の更なる向上を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、実施形態1に係る放電装置における電極装置の要部を模式的に示す一部破断した斜視図である。図1Bは、同上の電極装置の要部を模式的に示す断面図である。
図2図2は、同上の放電装置のブロック図である。
図3図3は、同上の放電装置の要部を示す概略斜視図である。
図4図4は、同上の放電装置の要部を示す概略平面図である。
図5図5は、同上の放電装置の要部を示し、図4のA1-A1線断面図である。
図6図6Aは、同上の放電装置の対向電極の平面図である。図6Bは、同上の対向電極の下面図である。
図7図7Aは、同上の電極装置の対向電極の要部を示す平面図である。図7Bは、図7AのA1-A1線断面図である。図7Cは、図7AのB1-B1線断面図である。
図8図8Aは、同上の電極装置の要部を模式的に示し、液体が伸びた状態の断面図である。図8Bは、同上の電極装置の要部を模式的に示し、液体が縮んだ状態の断面図である。
図9図9Aは、コロナ放電の放電形態を示す模式図である。図9Bは、全路破壊放電の放電形態を示す模式図である。図9Cは、部分破壊放電の放電形態を示す模式図である。
図10図10A図10Dは、実施形態2に係る電極装置の対向電極を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
(1)概要
以下、本実施形態に係る放電装置10及び電極装置3の概要について、図1A図1B、及び図2を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る電極装置3は、図1A及び図1Bに示すように、放電電極1と、対向電極2と、を備えている。この電極装置3は、放電電極1と対向電極2との間に印加電圧V1(図2参照)が印加されることにより放電を生じさせるように構成されている。
【0011】
また、電極装置3は、図2に示すように、電圧印加回路4及び液体供給部5と共に放電装置10を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る放電装置10は、電極装置3と、電圧印加回路4と、液体供給部5と、を備えている。電圧印加回路4は、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電を生じさせる。液体供給部5は、放電電極1に液体50(図8A参照)を供給する。放電装置10は、電極装置3で放電を生じさせることにより、有効成分を生成する。本開示でいう「有効成分」は、電極装置3での放電により生成される成分であって、一例として、OHラジカルを含んだ帯電微粒子液、OHラジカル、O2ラジカル、マイナスイオン、プラスイオン、オゾン又は硝酸イオン等を意味する。これらの有効成分は、除菌、脱臭、保湿、保鮮又はウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。
【0012】
この放電装置10では、放電装置10で生じる放電によって液体50を静電霧化する。すなわち、放電装置10は、例えば、液体供給部5から供給される液体50が放電電極1の表面に付着することで放電電極1に液体50が保持されている状態において、放電電極1と対向電極2との間に電圧印加回路4から電圧を印加する。これにより、放電電極1と対向電極2との間で放電が生じると、放電電極1に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。このように、本実施形態に係る放電装置10は、放電によって液体50を静電霧化し、有効成分としての帯電微粒子液を生成する、静電霧化装置(有効成分生成システム)を構成する。本開示において、放電電極1に保持されている液体50、つまり静電霧化の対象となる液体50を、単に「液体50」とも呼ぶ。
【0013】
特に、本実施形態では、電圧印加回路4は、印加電圧V1の大きさが周期的に変動することにより、放電を間欠的に生じさせる。印加電圧V1が周期的に変動することで、液体50には機械的な振動が生じる。本開示でいう「印加電圧」は、放電を生じさせるために、電圧印加回路4が放電電極1と対向電極2との間に印加する電圧を意味する。
【0014】
詳しくは後述するが、放電電極1と対向電極2との間に電圧(印加電圧V1)が印加されることにより、放電電極1に保持されている液体50は、電界による力を受けてテイラーコーン(Taylorcone)と呼ばれる円錐状の形状を成す(図8A参照)。そして、テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで、放電が発生する。このとき、テイラーコーンの先端部が尖っている程、つまり円錐の頂角が小さく(鋭角に)なる程に、絶縁破壊に必要な電界強度が小さくなり、放電が生じやすくなる。
【0015】
放電電極1に保持されている液体50は、機械的な振動に伴って、放電電極1の中心軸P1(図8B参照)に沿って伸縮し、これにより、第1形状と第2形状とに交互に変形する。第1形状は、放電電極1の中心軸P1に沿って液体50が伸びた状態、つまりテイラーコーンの形状である(図8A参照)。第2形状は、液体50が縮んだ状態、つまりテイラーコーンの先端部がつぶれた形状である(図8B参照)。その結果、上述したようなテイラーコーンが周期的に形成されるため、テイラーコーンが形成されるタイミングに合わせて、放電が間欠的に発生することになる。
【0016】
ところで、本実施形態に係る放電装置10は、上述したように放電電極1と、対向電極2と、電圧印加回路4と、液体供給部5と、を備えている。図1A及び図1Bに示すように、放電電極1は、柱状の電極である。対向電極2は、放電電極1と対向する。電圧印加回路4は、放電電極1と対向電極2との間に印加電圧V1を印加することにより放電を生じさせる。液体供給部5は、放電電極1に液体50を供給する。液体50は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って伸縮する。対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有する。周辺電極部21は、放電電極1とは反対側に凸となる。周辺電極部21は、先端面に開口部23が形成されている。突出電極部22は、周辺電極部21から開口部23内に突出する。放電電極1の中心軸P1に沿う方向において、液体50が伸びた状態における液体50の先端は、周辺電極部21における外周縁210と同一位置、又は外周縁210よりも放電電極1側に位置する(図8A参照)。
【0017】
上述した構成によれば、放電電極1と対向電極2との間に電圧(印加電圧V1)が印加されると、放電電極1と対向する対向電極2のうち、周辺電極部21と突出電極部22とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部22は周辺電極部21から開口部23内に突出するので、電界集中の度合いは、周辺電極部21に比べて、突出電極部22の方が高くなる。そのため、放電電極1に保持されている液体50が電界による力を受けてテイラーコーンを形成すると、例えば、テイラーコーンの先端部(頂点部)と突出電極部22との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体50と突出電極部22との間においては、比較的に高いエネルギーの放電が生じ、放電電極1に保持された液体50に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させることができる。その結果、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1(図9B参照)が断続的に形成されやすく、有効成分の生成効率が低下しにくい。
【0018】
しかも、周辺電極部21は、放電電極1とは反対側に凸となり、その先端面に開口部23が形成されているので、放電電極1に保持されている液体50に対しては、電界により、液体50を周辺電極部21側に引き付けるような力が作用する。そして、放電電極1の中心軸P1に沿う方向において、液体50が伸びた状態における液体50の先端は、周辺電極部21における外周縁210と同一位置、又は外周縁210よりも放電電極1側に位置する。これにより、放電電極1に保持されている液体50が機械的な振動をするに際して、例えば、液体50に対して、周辺電極部21に引き付ける向きの力を作用させ続けることで、液体50の振幅を小さく抑えることができる。つまり、液体50が縮んだ状態においても、液体50を周辺電極部21に引き付ける向きのバイアスが液体50にかかることで、液体50が完全にはつぶれた形状とならず、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量が小さく抑えられる。その結果、液体50の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0019】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る放電装置10及び電極装置3の詳細について、図1A図9Cを参照して説明する。
【0020】
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、放電電極1の中心軸P1に沿った軸を「Z軸」とする。さらに、放電電極1から見た対向電極2側を、Z軸の正の向きと規定する。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は電極装置3の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
【0021】
(2.1)全体構成
上述した通り、本実施形態に係る放電装置10は、図2に示すように、電極装置3と、電圧印加回路4と、液体供給部5と、を備えている。本実施形態に係る放電装置10は、電極装置3と、電圧印加回路4と、を備えている。
【0022】
電極装置3は、放電電極1と、対向電極2と、を備えている。図2では、放電電極1及び対向電極2の形状を模式的に表している。電極装置3は、上述したように、これら放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されることにより、放電を生じさせる。
【0023】
放電電極1は、図1A及び図1Bに示すように、Z軸に沿って延びる柱状の電極である。放電電極1は、長手方向(Z軸方向)の一端部(先端部)に放電部11を有し、長手方向の他端部(先端部とは反対側の端部)に基端部12(図5参照)を有している。放電電極1は、少なくとも放電部11が先細り形状に形成された針電極である。ここでいう「先細り形状」とは、先端が鋭く尖っている形状に限らず、図1A等に示すように、先端が丸みを帯びた形状を含む。
【0024】
対向電極2は、放電電極1の放電部11に対向するように配置されている。そして、上述したように、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方(Z軸の正の側)から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。
【0025】
本実施形態では、対向電極2は、図3図5に示すように、X軸方向に長い板状の平板部24を有している。そして、図5に示すように、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電電極1と対向電極2とは離間している。言い換えれば、図5に示すように、放電電極1と対向電極2とは、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、互いに離れた位置関係にある。
【0026】
ここで、平板部24の一部には、平板部24を平板部24の厚み方向(Z軸方向)に貫通する開口部23が形成されている。対向電極2において、この開口部23の周辺に位置する部分が、周辺電極部21となる。そして、周辺電極部21から開口部23内に突出した部分が、突出電極部22となる。
【0027】
放電電極1及び対向電極2は、電気絶縁性を有する合成樹脂製のハウジング6に保持されている。平板部24は、一例として、ハウジング6に設けられた複数(ここでは4つ)のかしめ突起61(図3参照)にて、熱かしめ等により、ハウジング6にかしめ結合される。これにより、対向電極2は、ハウジング6に保持される。
【0028】
ここで、対向電極2の厚み方向(開口部23の貫通方向)が放電電極1の長手方向(Z軸方向)に一致し、かつ放電電極1の放電部11が対向電極2の開口部23の中心付近に位置するように、対向電極2と放電電極1との位置関係が決められている。つまり、放電電極1の中心軸P1の一方(Z軸の正の側)から見て、開口部23の中心は、放電電極1の中心軸P1上に位置する。つまり、対向電極2と放電電極1との間には、少なくとも対向電極2の開口部23によって隙間(空間)が確保される。言い換えれば、対向電極2は、放電電極1に対して隙間を介して対向するように配置され、放電電極1とは電気的に絶縁されている。
【0029】
電極装置3における放電電極1及び対向電極2のより詳細な形状については、「(2.3)電極装置」の欄で説明する。
【0030】
液体供給部5は、放電電極1に対して静電霧化用の液体50を供給する。液体供給部5は、一例として、放電電極1を冷却して、放電電極1に結露水を発生させる冷却装置51を用いて実現される。具体的には、冷却装置51は、一例として、図5に示すように、複数(図示例では2つ)のペルチェ素子511と、放熱板512と、を有している。複数のペルチェ素子511は、例えば、半田にて、放熱板512に対して機械的かつ電気的に接続され、放熱板512に保持されている。複数のペルチェ素子511の各々は、一端部(放熱板512側)を放熱端とし、他端部(放熱板512とは反対側)を吸熱端とする。
【0031】
また、複数のペルチェ素子511は、放電電極1に機械的に接続されている。ここでは、放電電極1は、基端部12にて冷却装置51に機械的に接続され、複数のペルチェ素子511は、吸熱端にて放電電極1に機械的に接続されている。つまり、放電電極1と冷却装置51(複数のペルチェ素子511)とは、熱的に結合されている。
【0032】
この冷却装置51では、複数のペルチェ素子511に通電することによって、ペルチェ素子511と熱的に結合されている放電電極1を冷却することができる。このとき、冷却装置51は、基端部12を通じて放電電極1の全体を冷却する。これにより、空気中の水分が凝結して放電電極1の表面に結露水として付着する。すなわち、液体供給部5は、放電電極1を冷却して放電電極1の表面に液体50としての結露水を生成するように構成されている。この構成では、液体供給部5は、空気中の水分を利用して、放電電極1に液体50(結露水)を供給できるため、放電装置10への液体の供給、及び補給が不要になる。
【0033】
電圧印加回路4は、電極装置3及び液体供給部5と共に放電装置10を構成し、上述したように、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電を生じさせる回路である。
【0034】
電圧印加回路4は、図2に示すように、電圧発生回路41と、駆動回路42と、制御回路43と、を有している。また、電圧印加回路4は、制限抵抗R1を更に有している。電圧発生回路41は、電源から電力供給を受けて、電極装置3に印加する電圧(印加電圧V1)を生成する回路である。ここでいう「電源」は、電圧発生回路41等に動作用の電力を供給する電源であって、一例として、数V~十数V程度の直流電圧を発生する電源回路である。駆動回路42は、電圧発生回路41を駆動する回路である。制御回路43は、例えば、監視対象に基づいて駆動回路42を制御する。ここでいう「監視対象」は、電圧印加回路4の出力電流及び出力電圧の少なくとも一方からなる。
【0035】
電圧発生回路41は、例えば、DC/DCコンバータであって、電源からの入力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧を印加電圧V1として出力する。電圧発生回路41の出力電圧は、印加電圧V1として電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される。
【0036】
電圧発生回路41は、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に対して電気的に接続されている。電圧発生回路41は、電極装置3に対して高電圧を印加する。ここでは、電圧発生回路41は、放電電極1を負極(グランド)、対向電極2を正極(プラス)として、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加するように構成されている。言い換えれば、電圧印加回路4から電極装置3に高電圧が印加された状態では、放電電極1と対向電極2との間に、放電電極1側を低電位、対向電極2側を高電位とする電位差が生じることになる。ここでいう「高電圧」とは、電極装置3において、後述する全路破壊放電又は部分破壊放電が生じるように設定される電圧であればよく、一例として、ピークが6.0kV程度となる電圧である。全路破壊放電及び部分破壊放電について詳しくは「(2.4)放電の態様」の欄で説明する。ただし、電圧印加回路4から電極装置3に印加される高電圧は、6.0kV程度に限らず、例えば、放電電極1及び対向電極2の形状、又は放電電極1及び対向電極2間の距離等に応じて適宜設定される。
【0037】
また、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と電極装置3との間に挿入されている。言い換えれば、電圧印加回路4は、印加電圧V1を発生する電圧発生回路41と、電圧発生回路41の一方の出力端と電極装置3との間に挿入された制限抵抗R1と、を有している。制限抵抗R1は、絶縁破壊後に流れる放電電流のピーク値を制限するための抵抗器である。つまり、制限抵抗R1は、放電時に電極装置3に流れる電流を制限することで、電極装置3及び電圧印加回路4を過電流から保護する機能を有している。
【0038】
本実施形態では、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と対向電極2との間に挿入されている。上述したように、対向電極2は正極(プラス)となるので、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の高電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されることになる。
【0039】
ここで、電圧印加回路4の動作モードには、第1モードと、第2モードとの2つのモードが含まれている。第1モードは、印加電圧V1を時間経過に伴って上昇させ、コロナ放電から進展して、放電電極1と対向電極2との間に、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を形成して放電電流を生じさせるためのモードである。第2モードは、電極装置3を過電流状態として、制御回路43等により放電電流を遮断するためのモードである。本開示でいう「放電電流」は、放電経路L1を通して流れる比較的大きな電流を意味しており、放電経路L1が形成される前のコロナ放電において生じる数μA程度の微小電流を含まない。本開示でいう「過電流状態」とは、放電により負荷が低下し、想定値以上の電流が電極装置3に流れる状態を意味する。
【0040】
本実施形態では、制御回路43は、駆動回路42の制御を行うことで、電圧印加回路4の制御を行う。制御回路43は、電圧印加回路4が駆動される駆動期間において、電圧印加回路4が第1モードと第2モードとを交互に繰り返すように、駆動回路42を制御する。ここで、制御回路43は、電圧印加回路4から電極装置3に印加される印加電圧V1の大きさを、駆動周波数にて周期的に変動させるように、駆動周波数にて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。本開示でいう「駆動期間」は、電極装置3に放電を生じさせるように電圧印加回路4が駆動される期間である。
【0041】
すなわち、電圧印加回路4は、放電電極1を含む電極装置3に印加する電圧の大きさを一定値に保つのではなく、所定範囲内の駆動周波数にて、周期的に変動させる。電圧印加回路4は、印加電圧V1の大きさを周期的に変動させることにより、放電を間欠的に生じさせる。つまり、印加電圧V1の変動周期に合わせて、放電経路L1が周期的に形成され、放電が周期的に発生する。以下では、放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じる周期を「放電周期」ともいう。これにより、放電電極1に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、結果的に、放電電極1に保持されている液体50が駆動周波数にて機械的に振動する。
【0042】
ここで、液体50の変形量を大きくするには、印加電圧V1の変動の周波数である駆動周波数は、放電電極1に保持されている液体50の共振周波数(固有振動数)を含む所定範囲内、つまり液体50の共振周波数付近の値に設定されることが好ましい。本開示でいう「所定範囲」は、その周波数で液体50に加わる力(エネルギー)を振動させたときに、液体50の機械的な振動が増幅されるような周波数の範囲であって、液体50の共振周波数を基準として下限値及び上限値が規定された範囲である。つまり、駆動周波数は、液体50の共振周波数付近の値に設定される。この場合、印加電圧V1の大きさが変動することに伴う液体50の機械的な振動の振幅は、比較的大きくなり、結果的に、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量が大きくなる。液体50の共振周波数は、例えば、液体50の体積(量)、表面張力及び粘度等に依存する。
【0043】
すなわち、本実施形態に係る放電装置10では、液体50は、その共振周波数付近の駆動周波数で機械的に振動することにより比較的大きな振幅で振動する。そのため、液体50は、電界が作用した際に生じるテイラーコーンの先端部(頂点部)がより尖った(鋭角な)形状となる。したがって、液体50が、その共振周波数から離れた周波数で機械的に振動する場合に比べて、テイラーコーンが形成された状態において絶縁破壊に必要な電界強度が小さくなり、放電が生じやすくなる。よって、例えば、電圧印加回路4から電極装置3に印加される電圧(印加電圧V1)の大きさのばらつき、放電電極1の形状のばらつき、又は放電電極1に供給される液体50の量(体積)のばらつき等があっても、放電が安定的に発生可能となる。また、電圧印加回路4は、放電電極1を含む電極装置3に印加する電圧の大きさを比較的低く抑えることができる。そのため、電極装置3周辺における絶縁対策のための構造を簡略化したり、電圧印加回路4等に用いる部品の耐圧を下げたりすることができる。
【0044】
ただし、本実施形態では、液体50が縮んだ状態においても、液体50を周辺電極部21に引き付ける向きのバイアスを液体50にかけることで、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量をやや小さく抑えている。これにより、本実施形態に係る放電装置10は、液体50の振動数を引き上げ、有効成分の生成効率の向上を図っている。液体50の振動数を引き上げる原理については、「(2.5)液体の振動数」の欄で詳しく説明する。
【0045】
(2.2)動作
以上説明した構成の放電装置10は、電圧印加回路4が以下のように動作することで、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に放電を生じさせる。
【0046】
すなわち、制御回路43は、放電経路L1が形成されるまでの期間においては、電圧印加回路4の出力電圧を監視対象とし、監視対象(出力電圧)が最大値α以上になると、電圧発生回路41から出力されるエネルギーを減少させる。一方、放電経路L1の形成後においては、制御回路43は、電圧印加回路4の出力電流を監視対象とし、監視対象(出力電流)が閾値以上になると、電圧発生回路41から出力されるエネルギーを減少させる。これにより、電極装置3に印加される電圧を低下させ、電極装置3を過電流状態として放電電流を遮断する第2モードにて、電圧印加回路4が動作する。つまり、電圧印加回路4の動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わることになる。
【0047】
このとき、電圧印加回路4の出力電圧及び出力電流が共に低下するため、制御回路43は、駆動回路42の動作を再開させる。これにより、電極装置3に印加される電圧が時間経過に伴って上昇し、コロナ放電から進展して、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
【0048】
駆動期間においては、制御回路43が上述した動作を繰り返すことにより、電圧印加回路4は、第1モードと、第2モードと、を交互に繰り返すように動作する。これにより、放電電極1に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、液体50は駆動周波数にて機械的に振動する。
【0049】
要するに、電圧印加回路4から、放電電極1を含む電極装置3に電圧が印加されることにより、放電電極1に保持されている液体50には、電界による力が作用して液体50が変形する。このとき、放電電極1に保持されている液体50に作用する力F1は、液体50に含まれる電荷量q1と電界E1との積によって表される(F1=q1×E1)。特に、本実施形態では、放電電極1の放電部11と対向する対向電極2と放電電極1との間に電圧が印加されるので、液体50には、電界によって対向電極2側に引っ張られる向きの力が作用する。その結果、図8Aに示すように、放電電極1の放電部11に保持されている液体50は、電界による力を受けて、放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)対向電極2側に伸び、テイラーコーンと呼ばれる円錐状の形状を成す。図8Aに示す状態から、電極装置3に印加される電圧が小さくなれば、電界の影響によって液体50に作用する力も小さくなり、液体50が変形する。その結果、図8Bに示すように、放電電極1の放電部11に保持されている液体50は、縮むことになる。
【0050】
そして、電極装置3に印加される電圧の大きさが駆動周波数にて周期的に変動することにより、放電電極1に保持されている液体50は、図8Aに示す形状と図8Bに示す形状とに、交互に変形する。すなわち、本実施形態では、放電電極1は、放電部11が液体50にて覆われるように、液体50を保持している。液体50は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)伸縮する。テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで放電が発生するので、図8Aに示すようにテイラーコーンの先端部が尖っている状態で絶縁破壊が生じる。したがって、駆動周波数に合わせて放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が間欠的に発生する。
【0051】
これにより、放電電極1に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。その結果、放電装置10では、ラジカルを含有するナノメータサイズの帯電微粒子液からなる有効成分が生成される。生成された有効成分(帯電微粒子液)は、例えば、対向電極2の開口部23を通して、放電装置10の周囲に放出される。
【0052】
(2.3)電極装置
次に、本実施形態に係る放電装置10で用いている電極装置3(放電電極1及び対向電極2)のより詳細な形状について、図1A図1B及び図6A図8Bを参照して説明する。図1A図1B図8A及び図8Bでは、電極装置3を構成する放電電極1及び対向電極2の要部を模式的に示しており、放電電極1及び対向電極2以外の構成については適宜図示を省略する。図1Aは、図4のB1-B1線で破断した模式的な斜視図、図1B図4のB1-B1線で破断した模式的な断面図である。図6A図7Cは、対向電極2のみを示す図である。
【0053】
すなわち、本実施形態では、上述したように、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている(図7A参照)。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する(図7A参照)。
【0054】
放電電極1は、一例として、チタン合金(Ti合金)等の導電性の金属材からなる。放電電極1は、図1A及び図1Bに示すように、Z軸に沿って延びる円柱状の電極である。放電電極1は、長手方向(Z軸方向)の一端部(先端部)に放電部11を有している。
【0055】
本実施形態では、放電電極1は、その先端部(放電部11)が、全体として略半球状に形成されている。言い換えれば、放電電極1の先端面、つまりZ軸方向において対向電極2側に向いた面は、曲面を含んでいる。本実施形態では、放電電極1のうち、Z軸方向において対向電極2側(Z軸の正の向き)を向いた面を、放電部11とする。液体供給部5により放電電極1に液体50が供給されると、液体50は、少なくとも放電部11を覆うように放電電極1に保持される(図8A及び図8B参照)。
【0056】
一方、対向電極2は、一例として、チタン合金(Ti合金)等の導電性の金属材からなる。本実施形態では、対向電極2は、上述したように、板状の平板部24を有している。そして、平板部24の一部には、図6A図7Cに示すように、平板部24を平板部24の厚み方向(Z軸方向)に貫通する開口部23が形成されている。対向電極2において、この開口部23の周辺に位置する部分が、周辺電極部21となる。そして、周辺電極部21から開口部23内に突出した部分が、突出電極部22となる。
【0057】
さらに、対向電極2には、周辺電極部21から外側に延びる外延部25が設けられている。すなわち、本実施形態に係る放電装置10では、対向電極2は、周辺電極部21、突出電極部22及び平板部24に加えて、外延部25を更に有している。
【0058】
より詳細には、平板部24の一部には、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電電極1から離れる向き(Z軸の正の向き)に突出する、ドーム状の周辺電極部21が形成されている。つまり、周辺電極部21は、放電電極1とは反対側(Z軸の正の側)に凸となる。周辺電極部21は、一例として、絞り加工によって、平板部24の一部を凹ませることで、Z軸方向に扁平な半球殻状(ドーム状)に形成されている。周辺電極部21は、図7B及び図7Cに示すように、放電電極1とは反対側に凹む内面212を有している。内面212は、Z軸方向における放電電極1側の端縁の内径が、放電電極1とは反対側の端縁の内径よりも大きくなるように、放電電極1の中心軸P1に対して傾斜するテーパ面である。
【0059】
また、周辺電極部21の中央部には、開口部23が形成されている。放電電極1とは反対側(Z軸の正の側)に凸となる周辺電極部21の先端面には、開口部23が形成されている。開口部23は、円形状に開口し、対向電極2を対向電極2の厚み方向(Z軸方向)に貫通する。つまり、周辺電極部21は、円形状に開口する開口部23を有している。図7Aでは、周辺電極部21の内周縁231(つまり開口部23の周縁)及び外周縁210を、それぞれ想像線(二点鎖線)で示している。言い換えれば、図7Aにおいて、同心円となる2つの想像線(二点鎖線)の間の領域が、周辺電極部21である。開口部23の中心は、放電電極1の中心軸P1上に位置する。
【0060】
また、突出電極部22は、周辺電極部21から開口部23内に突出する。ここで、突出電極部22は、周辺電極部21の内周縁231(つまり開口部23の周縁)から、開口部23の中心に向けて突出する。本実施形態では、突出電極部22は複数設けられている。つまり、本実施形態では、対向電極2は、突出電極部22を複数有している。
【0061】
対向電極2は、突出電極部22を3つ以上有することが好ましい。本実施形態では一例として、対向電極2は4つの突出電極部22を有している。このように対向電極2が突出電極部22を3つ以上有することで、突出電極部22が2つ以下の場合に比べて、突出電極部22での電界の集中を緩和できる。複数の突出電極部22の各々は、周辺電極部21の周方向の一部から、放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。
【0062】
ここで、複数(ここでは4つ)の突出電極部22は、周辺電極部21の周方向において等間隔に配置されている。つまり、複数の突出電極部22は、開口部23の周方向において等間隔に配置されている。本実施形態では、対向電極2は、4つの突出電極部22を有するので、これら4つの突出電極部22は、周辺電極部21の周方向(開口部23の周方向)において90度回転対称となる位置に設けられている。つまり、複数の突出電極部22は、開口部23の中心を対称点(対称中心)とする点対称な位置に設けられている。図7Aにおいて、X軸の正の方向(右方)を「0度」、Y軸の正の方向(上方)を「90度」と規定した場合、4つの突出電極部22は、45度、135度、225度、315度の位置にそれぞれ設けられている。このような開口部23及び複数の突出電極部22は、一例として、打ち抜き加工によって形成される。
【0063】
また、複数(ここでは4つ)の突出電極部22は、共通の形状を有している。言い換えれば、複数の突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1に対して90度回転対称となる形状を有している。そのため、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から突出電極部22までの距離は、複数の突出電極部22において略均一となる。
【0064】
ところで、本実施形態に係る電極装置3は、有効成分の生成量を増加させることを目的として、放電電極1の放電部11と対向電極2の突出電極部22との間に、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を断続的に形成されるように構成されている。この場合において、オゾンの発生量を低減するためには、突出電極部22の先端部分に電界を集中させることが好ましい。
【0065】
そのため、例えば、図7Aに示すように、突出電極部22は平面視において、全体的に円弧状であることが好ましい。言い換えれば、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、突出電極部22は、その外周縁の全体が円弧状であることが好ましい。本開示でいう「円弧状」とは、真円の一部となる形状に限らず、先端が略同一の曲率半径となるアール面(曲面)であるような形状全般を含む。つまり、突出電極部22の先端面221は、図7Aに示すように、平面視において円弧状である。このような形状であれば、平面視における突出電極部22の先端面221の全体に一様に電界がかかるのではなく、突出電極部22の先端面221のうち、平面視において放電電極1(特に放電部11)との距離が最短となる頂点に電界が集中しやすくなる。その結果、放電部11と突出電極部22との間の放電が安定しやすい、という利点がある。
【0066】
また、突出電極部22の平面視における先端面221(頂点)が尖っている場合には、この部分に電界が集中することで電食が生じやすく、放電状態が経時的に変化する可能性がある。そのため、放電状態が経時的に変化しないように、突出電極部22の平面視における先端面221が曲面を含んでいることが好ましい。
【0067】
さらに、対向電極2における電界集中の度合いは、対向電極2における放電電極1(特に放電部11)との対向面の形状によって変化する。本実施形態では、対向電極2における放電電極1(特に放電部11)との対向面をアール面(曲面)とすることで、対向電極2における電界集中をやや緩和する。具体的には、対向電極2は、以下の4つの部位のうちの少なくとも1つがアール面を含む。1つ目の部位は、図7Aに示すように、放電電極1の中心軸P1の一方から見た突出電極部22の先端面221である。2つ目の部位は、図7Cに示すように、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1(図8A参照)内における、突出電極部22の放電電極1側の角部222である。3つ目の部位は、図7Cに示すように、仮想平面VP1内における、周辺電極部21の放電電極1側の角部211である。4つ目の部位は、図7Cに示すように、仮想平面VP1内における、周辺電極部21の内面212である。図8A及び図8Bは、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1で切った断面図である。
【0068】
本実施形態では、これら4つの部位の全てが湾曲形状を含んでいる。つまり、平面視における突出電極部22の先端面221、並びに、仮想平面VP1内における、角部222、角部211及び内面212は、いずれも湾曲形状を含んでいる。さらに、本実施形態では、これら4つの部位に加えて、放電電極1の中心軸P1の一方から見た(平面視における)、周辺電極部21の内周縁231(開口部23の周縁)についても、湾曲形状を含んでいる。
【0069】
周辺電極部21の角部211は、周辺電極部21のうち、放電部11に最も近い位置にある角部からなる。本実施形態では、角部211は、ドーム状に形成された周辺電極部21の内面212のうち、Z軸方向における放電電極1側の縁部である。言い換えれば、角部211は、周辺電極部21のうち、放電電極1の中心軸P1側を向いた面(内面212)と、Z軸の負の向きを向いた面との間の角部である。角部211は、周辺電極部21の周方向の全周にわたって形成されている。そのため、角部211は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、中心軸P1を中心とする円形状となる。これにより、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から、角部211までの距離は、角部211の全周にわたって略均一となる。
【0070】
突出電極部22の角部222は、突出電極部22のうち、放電部11に最も近い位置にある角部からなる。本実施形態では、角部222は、平面視において、円弧状に形成された突出電極部22の頂点のうち、Z軸方向における放電電極1側の縁部である。言い換えれば、角部222は、突出電極部22のうち、放電電極1の中心軸P1側を向いた面と、Z軸の負の向きを向いた面との間の角部である。ここで、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から、角部222までの距離は、複数(ここでは4つ)の突出電極部22で略均一となる。
【0071】
より詳細には、これら5つの部位は、いずれも円弧状に形成されている。また、これら5つの部位のうち、周辺電極部21の内面212及び周辺電極部21の内周縁231は、放電部11とは反対側に凸となる、つまり放電部11側を凹面とする円弧状である。一方、突出電極部22の先端面221、周辺電極部21の角部211及び突出電極部22の角部222は、放電部11側に凸となる円弧状である。そして、これら5つの部位の湾曲形状の曲率半径は、以下の大小関係を満たすことが好ましい。すなわち、これら5つの部位は、曲率半径が大きい側から、周辺電極部21の内面212、周辺電極部21の内周縁231、突出電極部22の先端面221、周辺電極部21の角部211、突出電極部22の角部222の順となる。
【0072】
要するに、周辺電極部21の内面212の曲率半径が最も大きい。そして、突出電極部22の先端面221の湾曲形状は、突出電極部22の放電電極1側の角部222の湾曲形状よりも曲率半径が大きい。つまり、平面視における突出電極部22の先端面221に比べて、仮想平面VP1内における、突出電極部22の放電電極1側の角部222の曲率半径は小さい。また、突出電極部22の先端面221の湾曲形状は、周辺電極部21の内面212の湾曲形状よりも曲率半径が小さい。つまり、平面視における突出電極部22の先端面221に比べて、仮想平面VP1内における、周辺電極部21の内面212の曲率半径は大きい。一例として、周辺電極部21の内周縁231の曲率半径は、2.0mm以上、5.0mm以下であることが好ましい。より詳細には、周辺電極部21の内周縁231の曲率半径は、3.5mm以下であることが好ましい。
【0073】
外延部25は、周辺電極部21から外側に延びる部分である。外延部25は、図7B及び図7Cに示すように、周辺電極部21から離れるほどに、放電電極1の中心軸P1に沿う方向において放電電極1から離れるように形成されている。本実施形態では、外延部25は、周辺電極部21の周辺に位置し、平板部24と周辺電極部21とを連結する。すなわち、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(平面視において)、周辺電極部21及び外延部25は、中心軸P1を中心とする同心円状に形成されている。そして、外延部25は、周辺電極部21につながる内周部を基準として、平板部24につながる外周部が、放電電極1の中心軸P1に沿う方向において放電電極1とは反対側に、つまりZ軸の正の側に位置する。言い換えれば、外延部25は、Z軸方向における放電電極1側の端縁の内径が、放電電極1とは反対側(平板部24側)の端縁の内径よりも小さくなるように、放電電極1の中心軸P1に対して傾斜する。
【0074】
そのため、対向電極2は、図7B及び図7Cに示すように、開口部23から外周側(平板部24側)に向けて、Z軸の負の向きに延び、更にその先端からZ軸の正の向きに延びた形状に形成される。これにより、対向電極2において、開口部23の周囲には、開口部23の全周にわたって、Z軸の負の向きに凹んだ断面略V字状の窪み(溝)が形成されることになる。外延部25は、一例として、絞り加工によって、平板部24の一部を凹ませることで、周辺電極部21と共に形成される。
【0075】
対向電極2が、このような外延部25を有することで、対向電極2の周辺電極部21及び突出電極部22以外の部位を、放電電極1(特に放電部11)から遠ざけることができる。要するに、対向電極2のうち、周辺電極部21の外周縁210の外側の部位を、Z軸方向において放電電極1から遠ざけることで、外延部25又は平板部24と放電電極1との間に不要な電界が生じることを抑制できる。結果的に、対向電極2のうち周辺電極部21及び突出電極部22と、放電電極1との間で、効率的に電界を生じさせることができる。
【0076】
ところで、周辺電極部21から放電電極1までの距離D1は、図1A及び図1Bに示すように、突出電極部22から放電電極1までの距離D2以上である(D1≧D2)。好ましくは、周辺電極部21から放電電極1までの距離D1は、突出電極部22から放電電極1までの距離D2より長い。
【0077】
本開示でいう「距離D1」は、周辺電極部21から放電電極1までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の角部211の一点と、放電部11の一点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D2」は、突出電極部22から放電電極1までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の角部222の一点と、放電部11の一点とを結ぶ線分の長さである。つまり、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、角部211から放電部11までの距離である。突出電極部22から放電部11までの距離D2は、角部222から放電部11までの距離である。
【0078】
また、本実施形態では、上述した通り、放電電極1は放電部11を覆うように液体50を保持し、液体50は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)伸縮する。ここで、放電電極1の中心軸P1に沿って液体50が伸びた状態では、図8Aに示すように、液体50がテイラーコーンの形状(第1形状)となる。一方、液体50が縮んだ状態では、図8Bに示すように、液体50はテイラーコーンの先端部がつぶれた形状(第2形状)となる。
【0079】
そして、図8Aに示すように、液体50が伸びた状態(第1形状)にあれば、周辺電極部21及び突出電極部22からの距離は、放電部11に代えて液体50を基準として以下のように規定されることが好ましい。すなわち、図8Aに示すように、液体50が伸びた状態における、液体50から周辺電極部21までの距離D3は、液体50から突出電極部22までの距離D4以上である(D3≧D4)。
【0080】
本開示でいう「距離D3」は、伸びた状態にある液体50から周辺電極部21までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の角部211の一点と、第1形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D4」は、伸びた状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の角部222の一点と、第1形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。つまり、液体50から周辺電極部21までの距離D3は、角部211から、第1形状(テイラーコーン)の液体50までの距離である。液体50から突出電極部22までの距離D4は、角部222から、第1形状(テイラーコーン)の液体50までの距離である。
【0081】
ここで、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1内において、液体50と突出電極部22の先端とを結ぶ仮想線の、放電電極1の中心軸P1に対する傾斜角度θ1は67度以下である。ここでいう「液体50と突出電極部22の先端とを結ぶ仮想線」は、伸びた状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、突出電極部22の角部222の一点と、第1形状の液体50の頂点とを結ぶ線分(図8Aの距離D4を示す矢印)である。
【0082】
さらに、図8Bに示すように、液体50が縮んだ状態(第2形状)にあれば、周辺電極部21及び突出電極部22からの距離は、放電部11に代えて液体50を基準として以下のように規定されることが好ましい。すなわち、図8Bに示すように、液体50が縮んだ状態における、液体50から周辺電極部21までの距離D5は、液体50から突出電極部22までの距離D6以上である(D5≧D6)。
【0083】
本開示でいう「距離D5」は、縮んだ状態にある液体50から周辺電極部21までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の角部211の一点と、第2形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D6」は、縮んだ状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の角部222の一点と、第2形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。つまり、液体50から周辺電極部21までの距離D5は、角部211から、第2形状(テイラーコーンの先端部がつぶれた形状)の液体50までの距離である。液体50から突出電極部22までの距離D6は、角部222から、第2形状(テイラーコーンの先端部がつぶれた形状)の液体50までの距離である。
【0084】
ここで、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1内において、液体50と突出電極部22の先端とを結ぶ仮想線の、放電電極1の中心軸P1に対する傾斜角度θ2は67度以下である。ここでいう「液体50と突出電極部22の先端とを結ぶ仮想線」は、縮んだ状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、突出電極部22の角部222の一点と、第2形状の液体50の頂点とを結ぶ線分(図8Bの距離D6を示す矢印)である。
【0085】
このように、本実施形態では、液体50から突出電極部22までの距離(D4又はD6)は、液体50から周辺電極部21までの距離(D3又はD5)以下である。さらに、本実施形態では、液体50から突出電極部22までの距離は、液体50から周辺電極部21までの距離よりも短い(D4<D3、又は、D6<D5)。より詳細には、液体50から突出電極部22までの距離(D4又はD6)は、液体50から周辺電極部21までの距離(D3又はD5)の9/10以下であることが好ましい。
【0086】
さらに、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1内において、液体50と突出電極部22の先端とを結ぶ仮想線の、放電電極1の中心軸P1に対する傾斜角度θ1,θ2は67度以下である。仮想線の、放電電極1の中心軸P1に対する傾斜角度θ1,θ2は、65度以下であることがより好ましく、62度以下であることがより好ましい。
【0087】
ここで、上述した距離D3~D6の大小関係、及び傾斜角度θ1,θ2は、図8Aに示すように液体50が伸びた状態(第1形状)、及び図8Bに示すように、液体50が縮んだ状態(第2形状)のいずれにおいても、成立することが好ましい。
【0088】
本実施形態に係る電極装置3は、上述したような距離D1~D6の関係を採用することにより、以下のような利点がある。すなわち、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、突出電極部22から放電部11までの距離D2以上であるので、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されると、まずは突出電極部22と放電部11との間に作用する電界が支配的となる。このとき、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電による有効成分の生成効率の低下が生じにくくなる。
【0089】
また、放電電極1に保持されている液体50が電界による力を受けてテイラーコーンを形成すると、このときの(伸びた状態の)液体50から周辺電極部21までの距離D3は、液体50から突出電極部22までの距離D4よりも長くなる。そのため、テイラーコーンの先端部(頂点部)と突出電極部22との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体50と突出電極部22との間においては、比較的に高いエネルギーの放電が生じ、放電電極1に保持された液体50に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させることができる。その結果、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
【0090】
ただし、図8A及び図8Bでは、放電装置10の安定状態での液体50を意図している。本開示でいう「安定状態」とは、放電電極1に保持されている液体50の量が、略一定に維持されている状態を意味する。つまり、放電電極1に対して液体供給部5から供給される液体50の量と、静電霧化されて放電装置10から放出される液体50の量と、が概ね均衡することで、液体50の量が略一定の安定状態となる。上述した距離D3~D6のいずれについても、このような安定状態にある液体50を基準に規定される。
【0091】
また、本実施形態では、上述したように、放電電極1の中心軸P1に沿う方向において、液体50が伸びた状態における液体50の先端は、周辺電極部21における外周縁210と同一位置、又は外周縁210よりも放電電極1側に位置する(図8A参照)。すなわち、図8Aに示すように液体50が伸びた状態(第1形状)にある液体50の頂点(先端)は、Z軸方向において、周辺電極部21の外周縁210と同一か、又は外周縁210よりも放電電極1側(Z軸の負の側)に位置する。つまり、Z軸に直交する平面であって周辺電極部21の外周縁210を含む平面を想定すると、第1形状の液体50の頂点(先端)は、この平面内か、又はこの平面よりもZ軸の負の側に位置する。
【0092】
この構成によれば、放電電極1に保持されている液体50に対しては、電界により、液体50を周辺電極部21側に引き付けるような力を、常に作用させることができる。要するに、液体50との間に電界が作用する対向電極2の周辺電極部21及び突出電極部22は、液体50から見て常にZ軸の正の側に位置することになり、液体50に対しては、Z軸の正の向きに引き付ける力を常時作用させることができる。そのため、放電電極1に保持されている液体50が機械的な振動をするに際して、例えば、液体50に対して、周辺電極部21に引き付ける向きの力を作用させ続けることで、液体50の振幅を小さく抑えることができる。つまり、液体50が縮んだ状態においても、液体50を周辺電極部21に引き付ける向きのバイアスが液体50にかかることで、液体50が完全にはつぶれた形状とならず、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量が小さく抑えられる。その結果、液体50の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0093】
また、図1A及び図1Bに示すように、液体50が無い状態では、本実施形態に係る放電装置10の構成は以下のように表される。すなわち、本実施形態に係る放電装置10は、放電電極1と、対向電極2と、電圧印加回路4と、を備えている。放電電極1は、柱状の電極である。対向電極2は、放電電極1と対向する。電圧印加回路4は、放電電極1と対向電極2との間に印加電圧V1を印加することにより放電を生じさせる。対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有する。周辺電極部21は、放電電極1とは反対側に凸となる。周辺電極部21は、先端面に開口部23が形成されている。突出電極部22は、周辺電極部21から開口部23内に突出する。放電電極1の中心軸P1に沿う方向において、放電電極1の先端は、周辺電極部21における外周縁210よりも放電電極1側に位置する。
【0094】
このように、放電電極1の中心軸P1に沿う方向において、放電電極1の先端は、周辺電極部21における外周縁210よりも放電電極1側に位置する場合でも、上記と同様の効果が期待できる。すなわち、放電電極1に保持されている液体50に対しては、電界により、液体50を周辺電極部21側に引き付けるような力を、常に作用させることができる。その結果、液体50の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0095】
(2.4)放電の態様
以下、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加した場合に発生する放電形態の詳細について、図9A図9Cを参照して説明する。図9A図9Cは、放電形態を説明するための概念図であって、図9A図9Cでは、放電電極1及び対向電極2を模式的に表している。また、本実施形態に係る放電装置10では、実際には、放電電極1には液体50が保持されており、この液体50と対向電極2との間で放電が生じるが、図9A図9Cでは、液体50の図示を省略する。また、以下では、放電電極1の放電部11に液体50が無い場合を想定して説明するが、液体50が有る場合には、放電の発生箇所等について「放電電極1の放電部11」を「放電電極1に保持された液体50」に読み替えればよい。
【0096】
ここではまず、コロナ放電について、図9Aを参照して説明する。
【0097】
一般的には、一対の電極間にエネルギーを投入して放電を生じさせると、投入したエネルギーの量に応じて、放電形態がコロナ放電から、グロー放電、又はアーク放電へと進展する。
【0098】
グロー放電及びアーク放電は、一対の電極間での絶縁破壊を伴う放電である。グロー放電及びアーク放電においては、一対の電極間にエネルギーが投入されている間は、絶縁破壊によって形成される放電経路が維持され、一対の電極間に放電電流が継続的に発生する。これに対して、コロナ放電は、図9Aに示すように、一方の電極(放電電極1)で局所的に発生する放電であり、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間の絶縁破壊を伴わない放電である。要するに、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1が印加されることで、放電電極1の放電部11で局所的なコロナ放電が発生する。ここで、放電電極1は負極(グランド)側であるから、放電電極1の放電部11に生じるコロナ放電は負極性コロナである。このとき、放電電極1の放電部11の周囲には、局所的に絶縁破壊された領域A1が生じ得る。この領域A1は、後述する部分破壊放電における第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4の各々のように、特定の方向に長く延びた形状ではなく、点状(又は球状)となる。
【0099】
ここで、電源(電圧印加回路4)から一対の電極間に対して単位時間当たりに放出可能な電流容量が十分に大きければ、一度形成された放電経路は途切れることなく維持され、上述のようにコロナ放電から、グロー放電又はアーク放電へと進展する。
【0100】
次に、全路破壊放電について、図9Bを参照して説明する。
【0101】
全路破壊放電は、図9Bに示すように、コロナ放電から進展して一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間の全路破壊に至る、という現象が間欠的に繰り返される放電形態である。つまり、全路破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間には、放電電極1と対向電極2との間において、全体的に絶縁破壊された放電経路L1が生じる。このとき、放電電極1の放電部11と、対向電極2(いずれかの突出電極部22の角部222)との間には、全体的に絶縁破壊された領域A2が生じ得る。この領域A2は、後述する部分破壊放電における第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4の各々のように、部分的に生じるのではなく、放電電極1の放電部11と対向電極2との間をつなぐように生じる。
【0102】
本開示でいう「絶縁破壊」は、導体間を隔離している絶縁体(気体を含む)の電気絶縁性が破壊され、絶縁状態が保てなくなることを意味する。気体の絶縁破壊は、例えば、イオン化された分子が電場により加速されて他の気体分子に衝突してイオン化し、イオン濃度が急増して気体放電を起こすために生じる。
【0103】
また、全路破壊放電は、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間での絶縁破壊(全路破壊)を伴うものの、絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する放電である。そのため、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間に生じる放電電流についても、間欠的に発生する。すなわち、上述したように放電経路L1を維持するのに必要な電流容量を電源(電圧印加回路4)が有さない場合等においては、コロナ放電から全路破壊に進展した途端に一対の電極間に印加される電圧が低下し、放電経路L1が途切れて放電が停止する。ここでいう「電流容量」は、単位時間に放出可能な電流の容量である。このような放電の発生、及び停止が繰り返されることにより、放電電流が間欠的に流れることになる。このように、全路破壊放電は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電及びアーク放電とは相違する。
【0104】
次に、部分破壊放電について、図9Cを参照して説明する。
【0105】
部分破壊放電に際して、放電装置10は、まず放電電極1の放電部11で局所的なコロナ放電を生じさせる。本実施形態では、放電電極1は負極(グランド)側であるから、放電電極1の放電部11に生じるコロナ放電は負極性コロナである。放電装置10は、放電電極1の放電部11に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させる。この高エネルギーの放電により、放電電極1と対向電極2との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
【0106】
また、部分破壊放電は、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間での部分的な絶縁破壊を伴うものの、絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する放電である。そのため、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間に生じる放電電流についても、間欠的に発生する。すなわち、放電経路L1を維持するのに必要な電流容量を電源(電圧印加回路4)が有さない場合等においては、コロナ放電から部分破壊放電に進展した途端に一対の電極間に印加される電圧が低下し、放電経路L1が途切れて放電が停止する。このような放電の発生、及び停止が繰り返されることにより、放電電流が間欠的に流れることになる。このように、部分破壊放電は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電及びアーク放電とは相違する。
【0107】
より詳細には、放電装置10は、互いに隙間を介して対向するように配置される放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電電極1と対向電極2との間に放電を生じさせる。そして、放電の発生時には、放電電極1と対向電極2との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路L1が形成される。このとき形成される放電経路L1には、図9Cに示すように、放電電極1の周囲に生成される第1絶縁破壊領域A3と、対向電極2の周囲に生成される第2絶縁破壊領域A4と、が含まれている。
【0108】
すなわち、放電電極1と対向電極2との間には、全体的にではなく部分的(局所的)に、絶縁破壊された放電経路L1が形成される。このように、部分破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間に形成される放電経路L1は、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された経路である。
【0109】
ここで、第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4は、互いに接触しないように離れて存在している。言い換えれば、放電経路L1は、少なくとも第1絶縁破壊領域A3と第2絶縁破壊領域A4との間において、絶縁破壊されていない領域(絶縁領域)を含んでいる。そのため、部分破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間の空間について、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された状態で、放電経路L1を通して放電電流が流れることになる。要するに、部分的な絶縁破壊が生じた放電経路L1、言い換えれば、一部は絶縁破壊されていない放電経路L1であっても、放電電極1と対向電極2との間には、放電経路L1を通して放電電流が流れ、放電が生じる。
【0110】
ここにおいて、第2絶縁破壊領域A4は、基本的には、対向電極2のうち、放電部11までの距離(空間距離)が最短となる部位の周囲に生じる。本実施形態では、対向電極2は、突出電極部22の角部222において、放電部11までの距離D2(図1B参照)が最短となるので、第2絶縁破壊領域A4は角部222の周囲に生成される。つまり、図9Cに示す突出電極部22は、実際には角部222に相当する。
【0111】
そして、全路破壊放電(図9B参照)又は部分破壊放電(図9C参照)においては、コロナ放電(図9A参照)と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~20倍程度の大量のラジカルが生成される。このようにして生成されるラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。ここで、全路破壊放電又は部分破壊放電によってラジカルが生成される際には、オゾンも発生する。ただし、全路破壊放電又は部分破壊放電では、コロナ放電と比較して2~20倍程度のラジカルが生成されるのに対して、オゾンの発生量はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。
【0112】
また、部分破壊放電(図9C参照)においては、全路破壊放電(図9B参照)と比較しても、過大なエネルギーによるラジカルの消失を抑制でき、全路破壊放電と比較してもラジカルの生成効率の向上を図ることができる。すなわち、全路破壊放電では、その放電に係るエネルギーが高すぎるが故に、生成されたラジカルの一部が消失して、有効成分の生成効率の低下につながる可能性がある。これに対して、部分破壊放電では、全路破壊放電と比較して放電に係るエネルギーが小さく抑えられるため、過大なエネルギーに晒されることによるラジカルの消失量を低減し、ラジカルの生成効率の向上を図ることができる。
【0113】
さらに、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して電界の集中が緩められる。そのため、全路破壊放電では、全路破壊された放電経路を通じて放電電極1及び対向電極2間には、瞬間的に大きな放電電流が流れ、その際の電気抵抗は非常に小さくなっている。これに対して、部分破壊放電では、電界の集中が緩められることで、部分的に絶縁破壊された放電経路L1の形成時に、放電電極1及び対向電極2間に瞬間的に流れる電流の最大値が、全路破壊放電に比べて小さく抑えられる。これにより、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して、窒化酸化物(NOx)の発生が抑制され、さらに電気ノイズが小さく抑えられる。
【0114】
また、本実施形態では、上述したように、対向電極2は、複数(ここでは4つ)の突出電極部22を有しており、各突出電極部22から放電電極1までの距離D2(図1B参照)は、複数の突出電極部22において均等である。そのため、絶縁破壊された領域A2又は第2絶縁破壊領域A4は、複数の突出電極部22のうち、いずれか1つの突出電極部22の角部222の周囲に生成されることになる。ここで、絶縁破壊された領域A2又は第2絶縁破壊領域A4が生成される突出電極部22は、特定の突出電極部22には限定されず、複数の突出電極部22の中でランダムに決まることになる。
【0115】
(2.5)液体の振動数
次に、液体50の振動数を引き上げる原理について説明する。
【0116】
本実施形態では、放電電極1の放電部11に保持されている液体50は、上述したように、電界による力を受けて、放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)伸縮する。そして、液体50が縮んだ状態においても、液体50を周辺電極部21に引き付ける向きのバイアスを液体50にかけることで、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量をやや小さく抑えている。これにより、本実施形態に係る放電装置10は、液体50の振動数を引き上げ、有効成分の生成効率の向上を図っている。
【0117】
すなわち、液体50との間に電界が作用する対向電極2の周辺電極部21及び突出電極部22は、液体50から見て常にZ軸の正の側に位置することになり、液体50に対しては、Z軸の正の向きに引き付ける力を常時作用させることができる。このように、放電装置10によれば、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(つまりZ軸方向)において、液体50を対向電極2側に引っ張るようなバイアスを、常に液体50に与えることが可能である。よって、放電装置10によれば、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量が小さく抑えられ、結果的に、液体50の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0118】
ところで、本実施形態に係る放電装置10では、電圧印加回路4は、液体50の固有振動数に応じた駆動周波数で印加電圧V1を変動させる。すなわち、上述したように、印加電圧V1の変動の周波数である駆動周波数は、放電電極1に保持されている液体50の共振周波数(固有振動数)を含む所定範囲内、つまり液体50の共振周波数付近の値に設定される。これにより、液体50の変形量が比較的大きくなり、液体50は、電界が作用した際に生じるテイラーコーンの先端部(頂点部)がより尖った(鋭角な)形状となり、放電装置10では、放電が生じやすくなる。
【0119】
その上で、本実施形態では、駆動周波数は、液体50の固有振動数以上の周波数である。要するに、本実施形態に係る放電装置10は、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量をやや小さく抑え、液体50の振動数を引き上げることを可能としている。そこで、印加電圧V1の変動の周波数である駆動周波数については、液体50の固有振動数以上に設定することで、極力、液体50の振動数を引き上げる。具体的には、液体50の固有振動数(共振周波数)を基準として下限値及び上限値が規定された所定範囲内における、中心周波数以上の値に、駆動周波数が設定されることが好ましい。より好ましくは、所定範囲の上限値付近に駆動周波数が設定されることが好ましい。これにより、液体50を周辺電極部21に引き付ける向きのバイアスを液体50にかけることで、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量をやや小さく抑えていることと相まって、液体50の振動数を向上させることができる。結果的に、本実施形態に係る放電装置10では、液体50の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0120】
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0121】
対向電極2は、4つに限らず、適当な個数の突出電極部22を有していてもよい。例えば、対向電極2は、奇数個の突出電極部22を有していてもよい。対向電極2が有する突出電極部22の個数は4つに限らず、例えば、1つ、2つ、3つ、又は5つ以上であってもよい。さらに、複数の突出電極部22が開口部23の周方向において等間隔で配置されることは必須の構成ではなく、複数の突出電極部22は開口部23の周方向において適宜の間隔で配置されてもよい。
【0122】
また、放電装置10は、帯電微粒子液を生成するための液体供給部5が省略されていてもよい。この場合、放電装置10は、放電電極1、及び対向電極2間に生じる放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)によって、空気イオンを生成する。
【0123】
また、液体供給部5は、実施形態1のように放電電極1を冷却して放電電極1に結露水を発生させる構成に限らない。液体供給部5は、例えば、毛細管現象、又はポンプ等の供給機構を用いて、タンクから放電電極1に液体50を供給する構成であってもよい。さらに、液体50は、水(結露水を含む)に限らず、水以外の液体であってもよい。
【0124】
また、電圧印加回路4は、放電電極1を正極(プラス)、対向電極2を負極(グランド)として、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加するように構成されていてもよい。さらに、放電電極1と対向電極2との間に電位差(電圧)が生じればよいので、電圧印加回路4は、高電位側の電極(正極)をグランドとし、低電位側の電極(負極)をマイナス電位とすることで、電極装置3にマイナスの電圧を印加してもよい。すなわち、電圧印加回路4は、放電電極1をグランドとし、対向電極2をマイナス電位としてもよいし、又は放電電極1をマイナス電位とし、対向電極2をグランドとしてもよい。
【0125】
また、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と放電電極1との間に挿入されていてもよい。この場合、放電電極1は負極(グランド)となるので、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の低電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されることになる。あるいは、放電電極1を正極(プラス)、対向電極2を負極(グランド)とする場合において、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の高電位側又は低電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されてもよい。さらに、制限抵抗R1は、必須の構成ではなく、適宜省略されていてもよい。
【0126】
また、放電電極1及び対向電極2は、チタン合金(Ti合金)に限らず、一例として、銅タングステン合金(Cu-W合金)等の銅合金であってもよい。また、放電電極1は、先細り形状に限らず、例えば、先端が膨らんだ形状であってもよい。
【0127】
また、電圧印加回路4から電極装置3に印加される高電圧は、6.0kV程度に限らず、例えば、放電電極1及び対向電極2の形状、又は放電電極1及び対向電極2間の距離等に応じて適宜設定される。
【0128】
また、実施形態1に係る電圧印加回路4と同様の機能は、電圧印加回路4の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。すなわち、制御回路43に対応する機能を、電圧印加回路4の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化してもよい。
【0129】
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0130】
(実施形態2)
本実施形態に係る放電装置10は、図10A図10Dに示すように、対向電極2A~2Dの形状が、実施形態1に係る放電装置10とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。図10A図10Dは、実施形態2に係る対向電極2A~2Dを示す模式的な平面図である。
【0131】
図10Aに示す対向電極2Aは、複数(ここでは2つ)の突出電極部22がY軸方向に並ぶように配置されている。図10Aの例では、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、つまり平面視において、突出電極部22は三角形状である。本開示でいう「三角形状」とは、3つの頂点を有する三角形に限らず、図10Aに示す、突出電極部22のように、先端がR面(曲面)であるような形状も含む。
【0132】
図10Bに示す対向電極2Bは、平面視において三角形状の突出電極部22を4つ有している。図10Bにおいて、X軸の正の方向(右方)を「0度」、Y軸の正の方向(上方)を「90度」と規定した場合、4つの突出電極部22は、0度、90度、180度、270度の位置にそれぞれ設けられている。
【0133】
図10Cに示す対向電極2Cは、平面視において三角形状の突出電極部22を4つ有している。図10Cにおいて、X軸の正の方向(右方)を「0度」、Y軸の正の方向(上方)を「90度」と規定した場合、4つの突出電極部22は、45度、135度、225度、315度の位置にそれぞれ設けられている。
【0134】
図10Dに示す対向電極2Dでは、周辺電極部21と突出電極部22とは別体である。この場合でも、突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。この場合、突出電極部22は、適宜の接合方法(溶着、ねじ固定、かしめ固定等)によって周辺電極部21に固定される。
【0135】
また、本実施形態では、周辺電極部21から外側に延びる外延部25が省略されているが、この構成に限らず、対向電極2A~2Dは、外延部25を有していてもよい。
【0136】
さらに、図10A図10Dの例に限らず、電極装置3における放電電極1及び対向電極2は、適宜の形状を採用可能である。一例として、対向電極2における周辺電極部21は、平面視において、円形状、楕円形状、三角形状、四角形状、又はその他の多角形状等の適宜の形状を採用し得る。周辺電極部21の外径、内径及び厚みは、任意の数値を採用し得る。同様に、対向電極2における突出電極部22は、平面視において、針状、三角形、四角形状、又はその他の多角形状等の適宜の形状を採用し得る。突出電極部22の突出量、幅及び厚さは、任意の数値を採用し得る。
【0137】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0138】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る放電装置(10)は、放電電極(1)と、対向電極(2,2A~2D)と、電圧印加回路(4)と、液体供給部(5)と、を備える。放電電極(1)は、柱状の電極である。対向電極(2,2A~2D)は、放電電極(1)と対向する。電圧印加回路(4)は、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2D)との間に印加電圧(V1)を印加することにより放電を生じさせる。液体供給部(5)は、放電電極(1)に液体(50)を供給する。液体(50)は、放電によって放電電極(1)の中心軸(P1)に沿って伸縮する。対向電極(2,2A~2D)は、周辺電極部(21)と、突出電極部(22)と、を有する。周辺電極部(21)は、放電電極(1)とは反対側に凸となり、先端面に開口部(23)が形成される。突出電極部(22)は、周辺電極部(21)から開口部(23)内に突出する。放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、液体(50)が伸びた状態における液体(50)の先端は、周辺電極部(21)における外周縁(210)と同一位置、又は外周縁(210)よりも放電電極(1)側に位置する。
【0139】
この態様によれば、周辺電極部(21)は、放電電極(1)とは反対側に凸となり、その先端面に開口部(23)が形成されているので、放電電極(1)に保持されている液体(50)に対し、電界により、周辺電極部(21)側に引き付けるような力が作用する。そして、放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、液体(50)が伸びた状態における液体(50)の先端は、周辺電極部(21)における外周縁(210)と同一位置、又は外周縁(210)よりも放電電極(1)側に位置する。これにより、放電電極(1)に保持されている液体(50)が機械的な振動をするに際して、例えば、液体(50)に対して、周辺電極部(21)に引き付ける向きの力を作用させ続けることで、液体(50)の振幅を小さく抑えることができる。つまり、液体(50)の機械的な振動に伴う液体(50)の変形量が小さく抑えられ、その結果、液体(50)の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0140】
第2の態様に係る放電装置(10)では、第1の態様において、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、突出電極部(22)は円弧状である。
【0141】
この態様によれば、突出電極部(22)における電界の集中を緩和できる。
【0142】
第3の態様に係る放電装置(10)では、第1又は2の態様において、対向電極(2,2A~2D)は、突出電極部(22)を3つ以上有する。
【0143】
この態様によれば、3つ以上の突出電極部(22)で分散的に放電を生じさせることができる。
【0144】
第4の態様に係る放電装置(10)では、第1~3のいずれかの態様において、液体(50)から突出電極部(22)までの距離(D4,D6)は、液体(50)から周辺電極部(21)までの距離(D3,D5)以下である。
【0145】
この態様によれば、液体(50)と突出電極部(22)との間に電界が集中しやすくなり、液体(50)と対向電極(2,2A~2D)との間で放電が生じやすくなる。
【0146】
第5の態様に係る放電装置(10)では、第4の態様において、液体(50)から突出電極部(22)までの距離(D4,D6)は、液体(50)から周辺電極部(21)までの距離(D3,D5)の9/10以下である。
【0147】
この態様によれば、液体(50)と突出電極部(22)との間に電界が集中しやすくなり、液体(50)と対向電極(2,2A~2D)との間で放電が生じやすくなる。
【0148】
第6の態様に係る放電装置(10)では、第1~5のいずれかの態様において、仮想平面(VP1)内において、液体(50)と突出電極部(22)の先端とを結ぶ仮想線の、放電電極(1)の中心軸(P1)に対する傾斜角度(θ1,θ2)が67度以下である。仮想平面(VP1)は、放電電極(1)の中心軸(P1)及び突出電極部(22)の先端を含む。
【0149】
この態様によれば、液体(50)と突出電極部(22)との間に電界が集中しやすくなり、特に、液体(50)に対して、放電電極(1)の中心軸(P1)に沿って、対向電極(2,2A~2D)に液体(50)を引き付ける力が作用しやすくなる。
【0150】
第7の態様に係る放電装置(10)では、第1~6のいずれかの態様において、対向電極(2,2A~2D)は、周辺電極部(21)から外側に延びる外延部(25)を更に有する。外延部(25)は、周辺電極部(21)から離れるほどに、放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において放電電極(1)から離れるように形成されている。
【0151】
この態様によれば、周辺電極部(21)の外側への余計な電界の集中を回避でき、放電に寄与する適切な電界が生じやすくなる。
【0152】
第8の態様に係る放電装置(10)では、第1~7のいずれかの態様において、対向電極(2,2A~2D)は、以下の4つの部位の少なくとも1つが湾曲形状を含む。1つ目の部位は、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見た突出電極部(22)の先端面(221)である。2つ目の部位は、放電電極(1)の中心軸(P1)及び突出電極部(22)の先端を含む仮想平面(VP1)内における、突出電極部(22)の放電電極(1)側の角部(222)である。3つ目の部位は、放電電極(1)の中心軸(P1)及び突出電極部(22)の先端を含む仮想平面(VP1)内における、周辺電極部(21)の放電電極(1)側の角部(211)である。4つ目の部位は、放電電極(1)の中心軸(P1)及び突出電極部(22)の先端を含む仮想平面(VP1)内における、周辺電極部(21)の内面(212)である。
【0153】
この態様によれば、過度の電界の集中を回避でき、放電に寄与する適切な電界が生じやすくなる。
【0154】
第9の態様に係る放電装置(10)では、第8の態様において、突出電極部(22)の先端面(221)の湾曲形状は、突出電極部(22)の放電電極(1)側の角部(222)の湾曲形状よりも曲率半径が大きい。
【0155】
この態様によれば、突出電極部(22)の先端面(221)への過度の電界の集中を回避でき、放電に寄与する適切な電界が生じやすくなる。
【0156】
第10の態様に係る放電装置(10)では、第8又は9の態様において、突出電極部(22)の先端面(221)の湾曲形状は、周辺電極部(21)の内面(212)の湾曲形状よりも曲率半径が小さい。
【0157】
この態様によれば、周辺電極部(21)の内面(212)への過度の電界の集中を回避でき、放電に寄与する適切な電界が生じやすくなる。
【0158】
第11の態様に係る放電装置(10)では、第1~10のいずれかの態様において、電圧印加回路(4)は、液体(50)の固有振動数に応じた駆動周波数で印加電圧(V1)を変動させる。
【0159】
この態様によれば、印加電圧(V1)の変動が、液体(50)の機械的な振動に効率的に寄与しやすい。
【0160】
第12の態様に係る放電装置(10)では、第11の態様において、駆動周波数は、液体(50)の固有振動数以上の周波数である。
【0161】
この態様によれば、液体(50)の振動数を引き上げることができ、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0162】
第13の態様に係る電極装置は、第1~12のいずれかの態様に係る放電装置(10)に用いられる電極装置であって、放電電極(1)及び対向電極(2,2A~2D)を備え、電圧印加回路(4)から印加電圧(V1)が印加される。
【0163】
この態様によれば、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0164】
第14の態様に係る放電装置(10)は、放電電極(1)と、対向電極(2,2A~2D)と、電圧印加回路(4)と、を備える。放電電極(1)は、柱状の電極である。対向電極(2,2A~2D)は、放電電極(1)と対向する。電圧印加回路(4)は、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2D)との間に印加電圧(V1)を印加することにより放電を生じさせる。対向電極(2,2A~2D)は、周辺電極部(21)と、突出電極部(22)と、を有する。周辺電極部(21)は、放電電極(1)とは反対側に凸となり、先端面に開口部(23)が形成される。突出電極部(22)は、周辺電極部(21)から開口部(23)内に突出する。放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、放電電極(1)の先端は、周辺電極部(21)における外周縁(210)よりも放電電極(1)側に位置する。
【0165】
この態様によれば、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0166】
第2~12の態様に係る構成については、放電装置(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0167】
放電装置及び電極装置は、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤー、空気調和機、扇風機、空気清浄機、加湿器、美顔器及び自動車等の多様な用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0168】
1 放電電極
2,2A~2D 対向電極
4 電圧印加回路
5 液体供給部
10 放電装置
21 周辺電極部
22 突出電極部
23 開口部
25 外延部
50 液体
210 外周縁
211 角部
212 内面
221 先端面
222 角部
D3~D6 距離
V1 印加電圧
VP1 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10