(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004176
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20230110BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230110BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20230110BHJP
C30B 25/14 20060101ALI20230110BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/455
C30B29/38 D
C30B25/14
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105721
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】小沢 基
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄蔵
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB05
4G077EC09
4G077EG24
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA12
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4K030AA03
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4K030GA02
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4K030LA14
5F045AA03
5F045AB14
5F045AC00
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5F045AC15
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5F045DQ05
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5F045EF08
5F045EF14
5F045EK03
5F045EK06
(57)【要約】
【課題】GaN層の品質が低下することを抑制する。
【解決手段】反応室を構成する中空部101aでGaN層122が成長させられる筒状の成長用容器100を有する成長装置10と、成長用容器100の中空部101a内に配置され、GaN層122が成長させられる種基板121が配置される台座120と、成長装置10へGaN層122を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管310と、成長装置10へGaN層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管320と、を備える。そして、成長用容器10に、加熱されると共に第1原料ガスが衝突させられる衝突部111を備え、第1原料ガスが衝突部111に衝突した後に第2原料ガスと反応してGaN層122が成長させられるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層製造装置であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、を備え、
前記成長用容器には、加熱されると共に前記第1原料ガスが衝突させられる衝突部(111)が備えられ、
前記第1原料ガスを前記衝突部に衝突させた後に前記第2原料ガスと反応させて前記窒化ガリウム層を成長させる窒化ガリウム層製造装置。
【請求項2】
前記成長用容器には、前記第1原料ガスと共に前記衝突部に衝突する水素ガスが供給されるようになっており、
前記第1原料ガスと前記水素ガスとを反応させて一塩化ガリウムガスを生成した後、前記一塩化ガリウムガスを前記第2原料ガスと反応させて前記窒化ガリウム層を成長させる請求項1に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項3】
前記成長用容器には、前記第1供給配管から前記第1原料ガスが供給されると共に前記衝突部(111)を有し、前記第1原料ガスが供給される部分よりも断面積が小さい貫通孔(112)が形成された加熱容器(110)が備えられ、
前記第1原料ガスを前記衝突部で衝突させた後に前記貫通孔を通じて前記種基板上に供給させる請求項1または2に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項4】
前記第2供給配管は、前記第2原料ガスが前記第1原料ガスよりも前記衝突部に衝突し難くなる位置に配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項5】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層の製造方法であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、を備え、
前記成長用容器には、加熱されると共に前記第1原料ガスが衝突させられる衝突部(111)が備えられている窒化ガリウム層製造装置を用意することと、
前記第1供給配管から前記第1原料ガスを前記成長用容器に供給すると共に前記第2供給配管から前記第2原料ガスを前記成長用容器に供給し、前記第1原料ガスを前記衝突部に衝突させた後に前記第2原料ガスと反応させて前記窒化ガリウム層を成長させることと、を行う窒化ガリウム層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)で構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイドライド気層成長法を用い、GaNで構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造装置では、種基板が配置されてGaN層を成長させる成長装置と、GaN層を成長させるための原料ガスとなる三塩化ガリウムガスを生成する生成装置とを備えている。また、この製造装置では、成長装置と生成装置とを繋いで生成装置で生成されたガスを成長装置へ供給する第1供給配管と、GaN層を成長させるための原料ガスとなるアンモニアガスを成長装置へ供給する第2供給配管とを備えている。
【0003】
成長装置は、種基板が配置される成長用容器を有し、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスが第1供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。また、成長装置は、アンモニアガスが第2供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。
【0004】
生成装置は、金属ガリウムが配置される生成用容器を備えている。生成用容器は、金属ガリウムが配置される第1空間と、第1空間と連通した第2空間とを備える構成とされている。また、生成用容器は、第1空間に塩素ガスを誘導するための第1誘導配管、および第2空間に塩素ガスを誘導するための第2誘導配管が備えられている。
【0005】
そして、生成装置では、第1誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式1の反応のように、金属ガリウムと塩素ガスとが反応して一塩化ガリウムガスが生成される。
【0006】
(化1)Ga+1/2Cl2→GaCl
また、生成装置では、生成用容器に第2誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式2のように、一塩化ガリウムガスと塩素ガスとが反応して三塩化ガリウムガスが生成される。
【0007】
(化2)GaCl+Cl2→GaCl3
そして、このようなGaN層製造装置では、種基板上に、三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることにより、下記化学式3の反応によってGaN層が成長させられる。
【0008】
(化3)GaCl3+NH3→GaN+3HCl
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らの検討によると、三塩化ガリウムガスとアンモニアガスとが低温で合流するとポリマーが発生する可能性があることが確認された。そして、ポリマーが存在する状態でGaN層を成長させると、GaN層の品質が低下する可能性がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑み、GaN層の品質が低下することを抑制できるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1では、種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでGaN層(122)を成長させるGaN層製造装置であって、反応室を構成する中空部(101a)でGaN層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、成長用容器の中空部内に配置され、GaN層が成長させられる種基板が配置される台座(120)と、成長装置へGaN層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、成長装置へGaN層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、を備え、成長用容器には、加熱されると共に第1原料ガスが衝突させられる衝突部(111)が備えられ、第1原料ガスを衝突部に衝突させた後に第2原料ガスと反応させてGaN層を成長させる。
【0013】
これによれば、三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスは、加熱された衝突部と衝突した後に第2原料ガスと反応する。このため、第1原料ガスと第2原料ガスとが低温状態で合流することが抑制され、ポリマーが形成されることでGaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0014】
また、請求項5は、請求項1のGaN層製造装置を用いたGaN層の製造方法であり、第1供給配管から第1原料ガスを成長用容器に供給すると共に第2供給配管から第2原料ガスを成長用容器に供給し、第1原料ガスを衝突部に衝突させた後に第2原料ガスと反応させてGaN層を成長させることと、を行う。
【0015】
これによれば、三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスは、加熱された衝突部と衝突した後に第2原料ガスと反応する。このため、第1原料ガスと第2原料ガスとが低温状態で合流することが抑制され、ポリマーが形成されることでGaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0016】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【
図2】第2実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、GaN層製造装置の構成について、
図1を参照しつつ説明する。なお、
図1に示されるGaN層製造装置は、
図1の紙面上下方向を天地方向として設置され、種基板121上にGaN層122を成長させるものである。
【0020】
図1に示されるように、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させる成長装置10、およびGaN層122を成長させるための原料ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置20を備えている。また、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させるための各種のガスを成長装置10へ供給する第1~第3供給配管310~330等を備えている。
【0021】
成長装置10は、成長用容器100、加熱容器110、台座120、シャフト131、回転変位機構132、加熱装置140等を有している。
【0022】
成長用容器100は、反応室を構成する中空部101aを備えた筒状の筒部101と、筒部101に備えられて中空部101aを閉塞する第1蓋部102および第2蓋部103とを有している。筒部101は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部102および第2蓋部103は、SUS等で構成されており、第1蓋部102が筒部101のうちの天側となる端部に備えられ、第2蓋部103が筒部101のうちの地側となる端部に備えられている。そして、成長用容器100は、GaN層122を成長させるための他の構成要素が中空部101a内に配置され、この中空部101aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0023】
また、成長用容器100には、GaN層122を成長させるための各種のガスを供給する第1~第3供給配管310~330が備えられている。本実施形態では、第1蓋部102に第1~第3供給配管310~330が備えられている。具体的には、第1蓋部102には、生成装置20で生成されたGaN層122を成長させるためのガリウム系ガスとして、三塩化ガリウムガスを成長用容器100内に供給する第1供給配管310が備えられている。第1蓋部102には、三塩化ガリウムガスと共にGaN層122を成長させるためのアンモニア系ガスとして、アンモニアガスを成長用容器100内に供給する第2供給配管320が備えられている。第1蓋部102には、キャリアガスとしての窒素ガスを成長用容器100内に供給する第3供給配管330が備えられている。
【0024】
なお、本実施形態では、第1供給配管310から成長用容器100内へ供給されるガスが第1原料ガスに相当し、第2供給配管320から成長用容器100内へ供給されるガスが第2原料ガスに相当する。
【0025】
そして、本実施形態の第1供給配管310は、一端部が後述の加熱容器110内に位置するように配置されている。一方、本実施形態の第2供給配管320は、後述する加熱容器110の底部111から突き出すように配置されている。つまり、第2供給配管320は、加熱容器110の外側にアンモニアガスを供給するように配置されている。また、第3供給配管330は、一端部が第1供給配管310および第2供給配管320の一端部よりも第1蓋部102側に位置するように配置されている。
【0026】
なお、第1供給配管310は、成長装置10側の一端部と反対側の他端部側が生成装置20に備えられている。つまり、第1供給配管310は、成長装置10と生成装置20とを繋ぐように配置されている。また、第1供給配管310は、後述する生成用容器200よりもガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされている。そして、第2供給配管320および第3供給配管330は、特に図示しないが、成長装置10の一端部と反対側の他端部がそれぞれのガス供給源と接続されている。
【0027】
さらに、成長用容器100には、GaN層122の成長に寄与しなかった未反応ガス等を排出する排出口104が備えられている。本実施形態では、成長用容器100のうちの第2蓋部103側の部分に排出口104が備えられている。
【0028】
加熱容器110は、例えば、アルミナ、ジルコニア、熱分解炭素、黒鉛(グラファイト)等で構成されており、中空部110aを有する円筒状に形成されている。そして、加熱容器110は、第1~第3供給配管310~330からの各種のガスが中空部110a内に供給されるように、第1蓋部102に備えられている。
【0029】
ここで、本実施形態の加熱容器110は、底部111を有する有底円筒状とされており、底部111の略中心部に貫通孔112が形成された構成されている。言い換えると、本実施形態の加熱容器110は、第1蓋部102と反対側の先端部に、当該加熱容器110の中心軸側に突出したフランジ部が形成されている。なお、本実施形態では、底部111が衝突部に相当する。
【0030】
そして、第1供給配管310は、一端部が底部111上に位置するように配置されている。言い換えると、第1供給配管310は、第1供給配管310から供給されたガスが底部111に衝突するように配置されている。このため、第1供給配管310から供給されたガスは、底部111に衝突した後に貫通孔112を通じて加熱容器110から排出される。なお、本実施形態の加熱容器110は、中空部110aに第1供給配管310からのガスが供給され、底部111に貫通孔112が形成されている。このため、底部111には、第1供給配管310から供給されるガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされた貫通孔112が形成されているともいえる。
【0031】
一方、第2供給配管320は、上記のように、一端部が底部111から突き出すように配置されている。言い換えると、第2供給配管320は、第2供給配管320から供給されるガスが、第1供給配管310から供給されるガスよりも、後述する加熱容器110の底部111に衝突し難くなるように配置されている。これにより、アンモニアガスが加熱されている部分と衝突して熱分解することで水素ガスが発生することを抑制できる。
【0032】
台座120は、GaN層122を成長させるためのGaNで構成される種基板121が配置される部材であり、加熱容器110よりも下方に配置されている。台座120は、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。そして、この台座120のうち第1~第3供給配管310~330側に位置する一面120aに種基板121が貼り付けられ、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0033】
なお、本実施形態では、後述するように、種基板121上に三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122が成長させられる。ここで、GaN層122を成長させる際に三塩化ガリウムガスを適用した場合、GaN層122は、種基板121の成長面が窒素面であると成長し易く、種基板121の成長面がガリウム面であると成長し難いことが報告されている。したがって、本実施形態では、種基板121は、GaN層122の成長面が窒素面となるようにして配置される。言い換えると、種基板121は、台座120と反対側の面が窒素面となるようにして配置される。
【0034】
また、台座120は、種基板121が配置される面と反対側の面にシャフト131が連結されている。そして、台座120は、シャフト131の回転に伴って回転させられると共に、シャフト131が成長用容器100の軸方向(すなわち、
図1中紙面上下方向)に沿って変位することで共に変位する構成とされている。なお、シャフト131は、台座120と同様に、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。
【0035】
回転変位機構132は、シャフト131と接続されており、シャフト131を回転させたり、シャフト131を変位させる部材である。そして、回転変位機構132は、GaN層122の成長に伴って当該GaN層122における成長表面の温度を成長に適した温度に調整できるように、シャフト131(すなわち、種基板121)の位置を調整する。特に限定されるものではないが、本実施形態の回転変位機構132は、台座120が1分間に200回転以上の回転となるようにシャフト131を回転させる。
【0036】
加熱装置140は、加熱容器110や成長用容器100内を加熱するものであり、例えば、誘導加熱用コイルや直接加熱用コイル等の加熱コイルによって構成され、成長用容器100の周囲を囲むように配置されている。そして、本実施形態の加熱装置140は、GaN層122を成長させる際には、種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように駆動される。
【0037】
生成装置20は、生成用容器200および加熱装置240等を有している。生成用容器200は、中空部201aを有する筒状の筒部201と、筒部201に備えられて中空部201aを閉塞する第1蓋部202および第2蓋部203とを有している。筒部201は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部202および第2蓋部203は、SUS等で構成されている。第1蓋部202は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側と反対側の端部に備えられ、第2蓋部203は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側の端部に備えられている。なお、生成用容器200は、成長用容器100と同様に、中空部201aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0038】
生成用容器200には、中空部201aを、第1蓋部202側の第1空間211と、第2蓋部203側の第2空間212とに区画する区画壁213が備えられている。但し、この区画壁213は、第1空間211と第2空間212との連通が維持されるように形成されている。言い換えると、区画壁213は、第1空間211と第2空間212とを完全に区画しないように備えられている。
【0039】
そして、第1空間211には、金属ガリウム220が配置されている。第2空間212には、本実施形態では、後述するように第1空間211で生成された一塩化ガリウムガスおよび塩素ガスと接触する壁面を増加させるための仕切壁214が備えられている。
【0040】
また、生成用容器200には、塩素ガスを生成用容器200内に誘導する第1誘導配管231および第2誘導配管232が備えられている。本実施形態では、第1誘導配管231は、第1空間211に塩素ガスを誘導できるように、第1蓋部202に備えられている。第2誘導配管232は、第2空間212に塩素ガスを誘導できるように、筒部201に備えられている。
【0041】
加熱装置240は、生成用容器200内を加熱するものであり、例えば、抵抗加熱式ヒータ等で構成され、生成用容器200の周囲に配置されている。なお、本実施形態の加熱装置240は、第1空間211の方が第2空間212よりも高温となるように、配置される場所や密度等が適宜調整されて駆動される。例えば、本実施形態の加熱装置240は、GaN層122を成長させる際、第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の温度が150℃程度となるように配置されて駆動される。なお、加熱装置240のうちの第2空間212を加熱する部分は、第1空間211側の部分から第2蓋部203側に向かって温度が徐々に低くなる温度勾配となるように配置されて駆動される。また、第2空間212は、より詳しくは、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。本実施形態では、第2空間212は、後述するように、第1供給配管310が備えられる第2蓋部203側の部分が当該温度となるように加熱される。
【0042】
そして、生成装置20には、第2蓋部203に第1供給配管310の他端部が備えられている。なお、特に図示しないが、第1供給配管310の周囲にも加熱装置が配置される。そして、第1供給配管310は、GaN層122を成長させる際には、例えば、150℃程度に加熱されるようになっている。
【0043】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0044】
まず、上記GaN層製造装置を用意し、台座120の一面120aに種基板121を配置する。なお、本実施形態では、上記のように、GaN層122の成長面が窒素面となるように種基板121を配置する。そして、回転変位機構132により、シャフト131を介して台座120を回転させると共に、台座120の位置を調整する。また、GaN層122を成長させている際には、GaN層122の成長レートに合せて台座の高さを調整する。これにより、GaN層の成長表面の高さがほぼ一定に保たれ、成長表面温度の温度分布を効果的に制御することが可能となる。
【0045】
次に、各加熱装置140、240を駆動する。具体的には、成長用容器100内に配置された種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように、加熱装置140を駆動する。また、生成用容器200における第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の部分が150℃程度となるように加熱装置240を駆動する。さらに、図示を省略しているが、第1供給配管310も150℃程度なるように、これらの周囲に配置される加熱装置を駆動する。
【0046】
続いて、生成装置20内に、第1誘導配管231および第2誘導配管232から塩素ガスを誘導する。これにより、第1空間211では、金属ガリウム220と塩素ガスとが反応し、一塩化ガリウムガスが生成される。また、この一塩化ガリウムガスが第2空間212に流動することにより、一塩化ガリウムガスが第2空間212に誘導されている塩素ガスと反応して三塩化ガリウムガスが生成される。そして、三塩化ガリウムガスが第1供給配管310を介して成長装置10に供給される。この場合、本実施形態の第2空間212には、仕切壁214が備えられている。このため、第2空間212に誘導されたガスは、高温部分としての仕切壁214に衝突し易くなると共に流動距離が長くなる。したがって、一塩化ガリウムガスが塩素ガスと反応されずに残存することを抑制できる。
【0047】
また、第2供給配管320からアンモニアガスを成長用容器100に供給すると共に、第3供給配管330からキャリアガスを成長用容器100に供給する。なお、アンモニアガスの供給は、加熱装置140を駆動した後であって、窒素抜けを防止するために、種基板121の周囲の温度が500℃以下である状態で開始することが好ましい。これにより、アンモニアガスおよび三塩化ガリウムガスが流動して種基板121に供給され、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0048】
この際、第1供給配管310から供給される三塩化ガリウムガスは、加熱された加熱容器110の底部111と衝突した後、貫通孔112を通じて種基板121上に流動する。このため、三塩化ガリウムガスは、加熱された状態で種基板121上に供給される。したがって、アンモニアガスと三塩化ガリウムガスとが低温状態で合流することが抑制され、ポリマーが形成されることでGaN層122の品質が低下することを抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、加熱容器110内のガスは、貫通孔112を通じて種基板121上に供給される。つまり、加熱容器110内のガスは、ガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされた貫通孔112を通じて種基板121上に供給される。このため、加熱容器110内に供給された三塩化ガリウムガスは、流速が大きくなった状態で種基板121上に供給される。したがって、仮に加熱容器110の外側でポリマーが発生したとしても、当該ポリマーが加熱容器110内へ逆流することが抑制される。これにより、加熱容器110内の三塩化ガリウムガスが貫通孔112を通じて種基板121上に供給され難くなることを抑制できる。
【0050】
さらに、本実施形態の第2空間212は、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、生成装置20で生成された三塩化ガリウムガスは、加熱された加熱容器110の底部111と衝突した後に種基板121上に供給される。このため、アンモニアガスと三塩化ガリウムガスとが低温状態で合流することが抑制され、ポリマーが形成されることでGaN層122の品質が低下することを抑制できる。
【0052】
(1)本実施形態では、加熱容器110には、三塩化ガリウムガスが供給される部分より、ガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされた貫通孔112が形成されている。そして、三塩化ガリウムガスは、貫通孔112を通じて種基板121上に供給される。このため、加熱容器110内に供給された三塩化ガリウムガスは、流速が大きくなった状態で種基板121上に供給される。したがって、仮に加熱容器110の外側でポリマーが発生したとしても、当該ポリマーが加熱容器110内へ逆流することが抑制される。これにより、加熱容器110内の三塩化ガリウムガスが貫通孔112を通じて種基板121上に供給され難くなることを抑制でき、さらにGaN層122の品質が低下することを抑制できる。
【0053】
(2)本実施形態では、第2供給配管320は、アンモニアガスが三塩化ガリウムガスよりも底部111に衝突し難くなるように配置されている。このため、アンモニアガスが三塩化ガリウムガスと同様に底部111と衝突する場合と比較すると、アンモニアガスが三塩化ガリウムガスと反応する前に熱分解することが抑制され、GaN層122の成長が阻害されることを抑制できる。
【0054】
(3)本実施形態では、第2空間212は、GaN層122を成長させる際、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、断面積が小さい第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1供給配管310に水素ガス用供給配管を連結したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
本実施形態のGaN層製造装置は、
図2に示されるように、第1供給配管310に水素ガス用供給配管340が接続されている。なお、水素ガス用供給配管340は、図示しない水素ガス発生源と接続されており、水素ガス発生源から水素ガスが供給されるようになっている。そして、成長装置10内には、第1供給配管310から生成装置20で生成された三塩化ガリウムガスと水素ガスとの混合ガスとが供給される。なお、特に図示しないが、第1供給配管310には、水素ガスが生成装置20側へ逆流することを抑制するため、水素ガス用供給配管340と接続される部分よりも生成装置20側の部分に逆流防止安全弁が設けられている。
【0057】
次に、本実施形態におけるGaN層122の製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態では、GaN層122を成長させる際には、水素ガス用供給配管340に水素ガスを供給する。このため、第1供給配管310から加熱容器110内に供給されるガスは、三塩化ガリウムガスと水素ガスの混合ガスとなる。なお、本実施形態では、水素ガスと三塩化ガリウムガスとが第1供給配管310内で反応することを抑制するため、第1供給配管310は、成長用容器100内より低い温度であって、150~750℃程度に維持される。そして、三塩化ガリウムガスと水素ガスとは、成長装置10内の底部111に衝突すると、下記化学式4の反応によって一塩化ガリウムガスとなる。
【0059】
(化4)GaCl3+H2→GaCl+2HCl
そして、本実施形態では、下記化学式5の反応によってGaN層122が成長させられる。
【0060】
(化5)GaCl+NH3→GaN+HCl+2H2
なお、本実施形態では、上記のように、一塩化ガリウムガスとアンモニアガスによってGaN層122が成長させられる。このため、種基板121におけるガリウム面上にGaN層122を成長させることもでき、種基板121における成長面の選択性の向上を図ることができる。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、三塩化ガリウムガスと共に水素ガスも底部111に衝突させることで一塩化ガリウムガスが生成される。そして、種基板121には、一塩化ガリウムガスとアンモニアガスによってGaN層122が成長させられる。このため、種基板121におけるガリウム面上にGaN層122を成長させることもでき、種基板121における成長面の選択性の向上を図ることができる。
【0062】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0063】
例えば、上記各実施形態において、成長装置10の構成は適宜変更である。例えば、上記各実施形態では、台座120の回転および変位を行う回転変位機構132を備える例を説明したが、台座120の回転のみを行って変位を行わないようにしてもよい。また、排出口104は、成長用容器100における第1蓋部102側に配置されていてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態において、第2空間212に仕切壁214が備えられていなくてもよい。さらに、上記各実施形態において、生成装置20の構成は適宜変更可能である。
【0065】
そして、上記第各実施形態において、加熱容器110に底部111が備えられておらず、三塩化ガリウムガスが加熱容器110の側面と衝突するように第1供給配管310が備えられていてもよい。この場合は、加熱容器110の側面が衝突部に相当する。
【0066】
さらに、上記第2実施形態において、三塩化ガリウムガスおよび水素ガスが衝突部に衝突して一塩化ガリウムガスが生成されるのであれば、成長用容器100には、水素ガス用供給配管340がそのまま備えられていてもよい。つまり、成長用容器100には、三塩化ガリウムガスと水素ガスとが別々に供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 成長装置
20 生成装置
100 成長用容器
101a 中空部
111 衝突部
120 台座
120a 一面
121 種基板
122 GaN層