(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004177
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】窒化ガリウム層製造装置および窒化ガリウム層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20230110BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20230110BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20230110BHJP
C30B 25/16 20060101ALI20230110BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/52
C30B29/38 D
C30B25/16
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105722
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】小沢 基
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄蔵
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB05
4G077EG16
4G077EG23
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4K030LA14
5F045AA03
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5F045GB02
(57)【要約】
【課題】GaN層の品質が低下することを抑制する。
【解決手段】成長用容器100内の状態を判定する状態判定部400を備える。そして、状態判定部400が成長用容器100内に所定量未満の異物のみが存在すると判定するまで加熱装置140にてGaN層122を成長させる温度よりも高い温度に成長用容器100内を加熱する。状態判定部400が成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定すると、加熱装置140を調整して成長用容器100内がGaN層122を成長させる温度となるようにする。その後に第1原料ガスおよび第2原料ガスを種基板121上に供給してGaN層122を成長させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層製造装置であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、
前記成長用容器内を加熱する加熱装置(140)と、
前記成長用容器内の状態を判定する状態判定部(400)と、を備え、
前記状態判定部が前記成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定するまで前記加熱装置にて前記窒化ガリウム層を成長させる温度よりも高い温度に前記成長用容器内を加熱し、前記状態判定部が前記成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定すると、前記加熱装置にて前記成長用容器内が前記窒化ガリウム層を成長させる温度となるように調整され、その後に前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスを前記種基板上に供給して前記窒化ガリウム層を成長させる窒化ガリウム層製造装置。
【請求項2】
前記状態判定部は、前記成長用容器内に照射光(La)を照射する照射部(410)を備え、前記照射光に基づいて前記成長用容器内の状態を判定する請求項1に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記照射光が前記成長用容器内にて反射した反射光(Lb)を受光する受光部(421)を有し、受光した前記反射光の成分に基づいて前記成長用容器内の状態を判定する請求項2に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、前記成長用容器内の照射光および前記照射光が前記成長用容器内にて反射した反射した反射光(Lb)の少なくとも一方を撮像する撮像部(422)を有し、撮像した結果の成分に基づいて前記成長用容器内の状態を判定する請求項2または3に記載の窒化ガリウム層製造装置。
【請求項5】
前記成長用容器には、前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスの未反応ガスを排出する排出口(104)が備えられ、
前記状態判定部は、前記排出口から排出される未反応ガスのうちの前記アンモニア系ガスの濃度を測定する濃度測定部(424)を有し、前記アンモニア系ガスの濃度に基づいて前記成長用容器内の状態を判定する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の窒化ガリウム層製造措置。
【請求項6】
種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することで窒化ガリウム層(122)を成長させる窒化ガリウム層の製造方法であって、
反応室を構成する中空部(101a)で前記窒化ガリウム層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、
前記成長用容器の前記中空部内に配置され、前記窒化ガリウム層が成長させられる前記種基板が配置される台座(120)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、
前記成長装置へ前記窒化ガリウム層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、
前記成長用容器内を加熱する加熱装置(140)と、
前記成長用容器内の状態を判定する状態判定部(400)と、を備える窒化ガリウム層製造装置を用意することと、
前記状態判定部が前記成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定するまで前記加熱装置にて前記窒化ガリウム層を成長させる温度よりも高い温度に前記成長用容器内を加熱することと、
前記状態判定部が前記成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定した後に前記成長用容器内が前記窒化ガリウム層を成長させる温度となるように前記加熱装置を調整することと、
前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスを前記種基板上に供給して前記窒化ガリウム層を成長させることと、を行う窒化ガリウム層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)で構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイドライド気層成長法を用い、GaNで構成される種基板上にGaN層を成長させるGaN層製造装置およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造装置では、種基板が配置されてGaN層を成長させる成長装置と、GaN層を成長させるための原料ガスとなる三塩化ガリウムガスを生成する生成装置とを備えている。また、この製造装置では、成長装置と生成装置とを繋いで生成装置で生成されたガスを成長装置へ供給する第1供給配管と、GaN層を成長させるための原料ガスとなるアンモニアガスを成長装置へ供給する第2供給配管とを備えている。
【0003】
成長装置は、種基板が配置される成長用容器を有し、生成装置で生成された三塩化ガリウムガスが第1供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。また、成長装置は、アンモニアガスが第2供給配管を介して成長用容器内に供給されるように構成されている。
【0004】
生成装置は、金属ガリウムが配置される生成用容器を備えている。生成用容器は、金属ガリウムが配置される第1空間と、第1空間と連通した第2空間とを備える構成とされている。また、生成用容器は、第1空間に塩素ガスを誘導するための第1誘導配管、および第2空間に塩素ガスを誘導するための第2誘導配管が備えられている。
【0005】
そして、生成装置では、第1誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式1の反応のように、金属ガリウムと塩素ガスとが反応して一塩化ガリウムガスが生成される。
【0006】
(化1)Ga+1/2Cl2→GaCl
また、生成装置では、生成用容器に第2誘導配管から塩素ガスが誘導されると、下記化学式2のように、一塩化ガリウムガスと塩素ガスとが反応して三塩化ガリウムガスが生成される。
【0007】
(化2)GaCl+Cl2→GaCl3
そして、このようなGaN層製造装置では、種基板上に、三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることにより、下記化学式3の反応によってGaN層が成長させられる。
【0008】
(化3)GaCl3+NH3→GaN+3HCl
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のようなGaN層製造装置では、GaN層を繰り返し成長させた際等、成長用容器内の空間に異物が滞留したり成長用容器の壁面に異物が付着した異常状態となる可能性がある。なお、ここでの異物とは、ガリウムを含んで構成されるものが挙げられる。この場合、そのままGaN層を成長させると、GaN層の品質が低下する可能性がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑み、GaN層の品質が低下することを抑制できるGaN層製造装置およびGaN層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1では、種基板(121)上にガリウム系ガスおよびアンモニア系ガスを供給することでGaN層(122)を成長させるGaN層製造装置であって、反応室を構成する中空部(101a)でGaN層が成長させられる筒状の成長用容器(100)を有する成長装置(10)と、成長用容器の中空部内に配置され、GaN層が成長させられる種基板が配置される台座(120)と、成長装置へGaN層を成長させるためのガリウム系ガスとしての三塩化ガリウムガスを含む第1原料ガスを供給する第1供給配管(310)と、成長装置へGaN層を成長させるためのアンモニア系ガスを含む第2原料ガスを供給する第2供給配管(320)と、成長用容器内を加熱する加熱装置(140)と、成長用容器内の状態を判定する状態判定部(400)と、を備え、状態判定部が成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定するまで加熱装置にてGaN層を成長させる温度よりも高い温度に成長用容器内を加熱し、状態判定部が成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定すると、加熱装置にて成長用容器内がGaN層を成長させる温度となるように調整され、その後に第1原料ガスおよび第2原料ガスを種基板上に供給してGaN層を成長させる。
【0013】
これによれば、GaN層を成長させる前に、成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定されるまで、成長用容器がGaN層122を成長させる温度よりも高い温度に加熱される(すなわち、高温クリーニングされる)。このため、GaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0014】
また、請求項6は、請求項1のGaN層製造装置を用いたGaN層の製造方法であり、状態判定部が成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定するまで加熱装置にてGaN層を成長させる温度よりも高い温度に成長用容器内を加熱することと、状態判定部が成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定した後に成長用容器内がGaN層を成長させる温度となるように加熱装置を調整することと、第1原料ガスおよび第2原料ガスを種基板上に供給してGaN層を成長させることと、を行う。
【0015】
これによれば、GaN層を成長させる前に、成長用容器内に所定量未満の異物のみが存在すると判定されるまで、成長用容器がGaN層122を成長させる温度よりも高い温度に加熱される(すなわち、高温クリーニングされる)。このため、GaN層の品質が低下することを抑制できる。
【0016】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【
図2】第2実施形態におけるGaN層製造装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、GaN層製造装置の構成について、
図1を参照しつつ説明する。なお、
図1に示されるGaN層製造装置は、
図1の紙面上下方向を天地方向として設置され、種基板121上にGaN層122を成長させるものである。
【0020】
図1に示されるように、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させる成長装置10、およびGaN層122を成長させるための原料ガスとしての三塩化ガリウムガスを生成する生成装置20を備えている。また、GaN層製造装置は、GaN層122を成長させるための各種のガスを成長装置10へ供給する第1~第3供給配管310~330等を備えている。さらに、GaN層製造装置は、後述する成長用容器100の状態を判定する状態判定部400を備えている。
【0021】
成長装置10は、成長用容器100、加熱容器110、台座120、シャフト131、回転変位機構132、加熱装置140等を有している。
【0022】
成長用容器100は、反応室を構成する中空部101aを備えた筒状の筒部101と、筒部101に備えられて中空部101aを閉塞する第1蓋部102および第2蓋部103とを有している。筒部101は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部102および第2蓋部103は、SUS等で構成されており、第1蓋部102が筒部101のうちの天側となる端部に備えられ、第2蓋部103が筒部101のうちの地側となる端部に備えられている。そして、成長用容器100は、GaN層122を成長させるための他の構成要素が中空部101a内に配置され、この中空部101aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0023】
なお、本実施形態の第1蓋部102は、当該第1蓋部102の大部分を構成する主部102aと、主部102aの略中央部に形成された貫通孔102bを閉塞する窓部102cとを有する構成とされている。窓部102cは、後述する照射部410から照射される照射光Laおよび反射光Lbを透過可能な材料で構成され、例えば、SiO2等で構成されている。
【0024】
また、成長用容器100には、GaN層122を成長させるための各種のガスを供給する第1~第3供給配管310~330が備えられている。本実施形態では、第1蓋部102に第1~第3供給配管310~330が備えられている。具体的には、第1蓋部102には、生成装置20で生成されたGaN層122を成長させるためのガリウム系ガスとして、三塩化ガリウムガスを成長用容器100内に供給する第1供給配管310が備えられている。第1蓋部102には、三塩化ガリウムガスと共にGaN層122を成長させるためのアンモニア系ガスとして、アンモニアガスを成長用容器100内に供給する第2供給配管320が備えられている。第1蓋部102には、キャリアガスとしての窒素ガスを成長用容器100内に供給する第3供給配管330が備えられている。
【0025】
そして、本実施形態の第1供給配管310および第2供給配管320は、一端部が後述の加熱容器110内に位置するように配置されている。一方、第3供給配管330は、一端部が第1供給配管310および第2供給配管320の一端部よりも第1蓋部102側に位置するように配置されている。言い換えると、第1~第3供給配管310~330は、第1、第2供給配管310、320から供給されたガスが、第3供給配管330から供給されたガスによって下方(すなわち、後述の種基板121側)に流動し易くなるように、配置されている。
【0026】
なお、第1供給配管310は、成長装置10側の一端部と反対側の他端部側が生成装置20に備えられている。つまり、第1供給配管310は、成長装置10と生成装置20とを繋ぐように配置されている。また、第1供給配管310は、後述する生成用容器200よりもガスの流れ方向を法線方向とする断面積が小さくされている。そして、第2供給配管320および第3供給配管330は、特に図示しないが、成長装置10の一端部と反対側の他端部がそれぞれのガス供給源と接続されている。
【0027】
さらに、成長用容器100には、GaN層122の成長に寄与しなかった未反応ガス等を排出する排出口104が備えられている。本実施形態では、成長用容器100のうちの第2蓋部103側の部分に排出口104が備えられている。
【0028】
加熱容器110は、例えば、アルミナ、ジルコニア、熱分解炭素、黒鉛(グラファイト)等で構成されており、中空部110aを有する円筒状に形成されている。そして、加熱容器110は、第1~第3供給配管310~330からの各種のガスが中空部110a内に供給されるように、第1蓋部102に備えられている。
【0029】
台座120は、GaN層122を成長させるためのGaNで構成される種基板121が配置される部材であり、加熱容器110よりも下方に配置されている。台座120は、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。そして、この台座120のうち第1~第3供給配管310~330側に位置する一面120aに種基板121が貼り付けられ、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0030】
なお、本実施形態では、後述するように、種基板121上に三塩化ガリウムガスおよびアンモニアガスが供給されることでGaN層122が成長させられる。ここで、GaN層122を成長させる際に三塩化ガリウムガスを適用した場合、GaN層122は、種基板121の成長面が窒素面であると成長し易く、種基板121の成長面がガリウム面であると成長し難いことが報告されている。したがって、本実施形態では、種基板121は、GaN層122の成長面が窒素面となるようにして配置される。言い換えると、種基板121は、台座120と反対側の面が窒素面となるようにして配置される。
【0031】
また、台座120は、種基板121が配置される面と反対側の面にシャフト131が連結されている。そして、台座120は、シャフト131の回転に伴って回転させられると共に、シャフト131が成長用容器100の軸方向(すなわち、
図1中紙面上下方向)に沿って変位することで共に変位する構成とされている。なお、シャフト131は、台座120と同様に、熱エッチングされ難い材料で構成され、例えば、表面をPbN、SiC、TaCやNbC等の高融点金属炭化物にてコーティングした黒鉛等で構成されている。
【0032】
回転変位機構132は、シャフト131と接続されており、シャフト131を回転させたり、シャフト131を変位させる部材である。そして、回転変位機構132は、GaN層122の成長に伴って当該GaN層122における成長表面の温度を成長に適した温度に調整できるように、シャフト131(すなわち、種基板121)の位置を調整する。特に限定されるものではないが、本実施形態の回転変位機構132は、台座120が1分間に200回転以上の回転となるようにシャフト131を回転させる。
【0033】
加熱装置140は、加熱容器110や成長用容器100内を加熱するものであり、例えば、誘導加熱用コイルや直接加熱用コイル等の加熱コイルによって構成され、成長用容器100の周囲を囲むように配置されている。そして、本実施形態の加熱装置140は、GaN層122を成長させる際には、種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように駆動される。なお、本実施形態では、加熱装置140は、後述する制御部423によって駆動が調整されるようになっている。
【0034】
生成装置20は、生成用容器200および加熱装置240等を有している。生成用容器200は、中空部201aを有する筒状の筒部201と、筒部201に備えられて中空部201aを閉塞する第1蓋部202および第2蓋部203とを有している。筒部201は、石英ガラス等で構成され、本実施形態では、円筒状とされている。第1蓋部202および第2蓋部203は、SUS等で構成されている。第1蓋部202は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側と反対側の端部に備えられ、第2蓋部203は、筒部201のうちの第1供給配管310が接続される側の端部に備えられている。なお、生成用容器200は、成長用容器100と同様に、中空部201aの圧力を真空引きすることによって減圧できる構造とされている。
【0035】
生成用容器200には、中空部201aを、第1蓋部202側の第1空間211と、第2蓋部203側の第2空間212とに区画する区画壁213が備えられている。但し、この区画壁213は、第1空間211と第2空間212との連通が維持されるように形成されている。言い換えると、区画壁213は、第1空間211と第2空間212とを完全に区画しないように備えられている。
【0036】
そして、第1空間211には、金属ガリウム220が配置されている。第2空間212には、本実施形態では、後述するように第1空間211で生成された一塩化ガリウムガスおよび塩素ガスと接触する壁面を増加させるための仕切壁214が備えられている。
【0037】
また、生成用容器200には、塩素ガスを生成用容器200内に誘導する第1誘導配管231および第2誘導配管232が備えられている。本実施形態では、第1誘導配管231は、第1空間211に塩素ガスを誘導できるように、第1蓋部202に備えられている。第2誘導配管232は、第2空間212に塩素ガスを誘導できるように、筒部201に備えられている。
【0038】
加熱装置240は、生成用容器200内を加熱するものであり、例えば、抵抗加熱式ヒータ等で構成され、生成用容器200の周囲に配置されている。なお、本実施形態の加熱装置240は、第1空間211の方が第2空間212よりも高温となるように、配置される場所や密度等が適宜調整されて駆動される。例えば、本実施形態の加熱装置240は、GaN層122を成長させる際には、第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の温度が150℃程度となるように配置されて駆動される。なお、加熱装置240のうちの第2空間212を加熱する部分は、第1空間211側の部分から第2蓋部203側に向かって温度が徐々に低くなる温度勾配となるように配置されて駆動される。また、第2空間212は、より詳しくは、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。本実施形態では、第2空間212は、後述するように、第1供給配管310が備えられる第2蓋部203側の部分が当該温度となるように加熱される。
【0039】
そして、生成装置20には、第2蓋部203に第1供給配管310の他端部が備えられている。なお、特に図示しないが、第1供給配管310の周囲にも加熱装置が配置される。そして、第1供給配管310は、GaN層122を成長させる際には、例えば、150℃程度に加熱されるようになっている。
【0040】
状態判定部400は、本実施形態では、照射部410および判定部420等を含んで構成されている。照射部410は、本実施形態では可視光である照射光Laを照射できるように構成されており、例えば、400~760nm程度の波長を有するレーザ光を照射する。そして、照射部410は、窓部102cを通じて照射光Laを成長用容器100内に照射できると共に、成長用容器100内で反射した反射光Lbが窓部102cを通過できる位置に配置されている。
【0041】
判定部420は、受光部421、撮像部422、制御部423等を含んで構成されている。受光部421は、フォトダイオード等で構成されており、照射部410から照射された照射光Laが反射した反射光Lbを受光可能な位置に配置されている。
【0042】
撮像部422は、CCDカメラ等で構成されており、照射光Laおよび反射光Lbの少なくとも一方を撮像する。
【0043】
制御部423は、加熱装置140、照射部410、受光部421、撮像部422等と接続され、図示しないCPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM等の記憶部を有する構成とされている。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【0044】
そして、制御部423は、CPUがROM、または不揮発性RAMからプログラム(すなわち、後述の各ルーチン)を読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM、または不揮発性RAM等の記憶部には、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0045】
本実施形態では、制御部423は、加熱装置140の駆動を制御すると共に、成長用容器100内の状態判定を行う。すなわち、成長用容器100内に多量の異物が滞留したり付着した異常状態である場合(以下では、単に成長用容器100内の異常状態ともいう)には、成長用容器100内で照射光Laや反射光Lbの幅(すなわち、太さ)が変化したり、反射光Lbの強度等(すなわち、成分)が変化したりする。
【0046】
このため、制御部423は、加熱装置140の駆動を調整して成長用容器100をGaN層122の成長温度以上(例えば、1350℃)に加熱することにより、成長用容器100内を高温クリーニングする。そして、制御部423は、照射部410から照射光Laが成長用容器100内に照射されるようにする。その後、制御部423は、受光部421で受光した反射光Lbの測定強度と強度閾値範囲とを比較し、測定強度が強度閾値範囲内にないと判定した場合に、成長用容器100内が異常状態であると判定する。また、制御部423は、撮像部422で撮像した撮像結果から照射光Laおよび反射光Lbの少なくとも一方の幅を測定して測定幅と幅閾値範囲とを比較し、測定幅が幅閾値範囲内にないと判定した場合に、成長用容器100内が異常状態であると判定する。
【0047】
なお、
図1では、GaN層122を理解し易くするため、種基板121に成長させられるGaN層122を図示しているが、実際には、成長用容器100内の状態判定を行う場合には未だGaN層122が成長させられていない。そして、本実施形態では、照射光Laが種基板121で反射するように、照射光Laが成長用容器100内に照射される。但し、照射光Laは、例えば、加熱容器110や台座120等で反射されるように成長用容器100内に照射されるようにしてもよい。
【0048】
そして、制御部423は、成長用容器100内が異常状態であると判定した場合には、成長用容器100内の異物が所定量未満となる正常状態となるまで、加熱装置140の加熱時間を延長したり加熱温度を高くする等して高温クリーニングを継続する。なお、制御部423は、所定期間に渡って成長用容器100内が異常状態であると判定した場合、図示しない警報装置等から作業者にその旨を報知するようにしてもよい。
【0049】
以上が本実施形態におけるGaN層製造装置の構成である。次に、上記GaN層製造装置を用いたGaN層122の製造方法について説明する。
【0050】
まず、上記GaN層製造装置を用意し、台座120の一面120aに種基板121を配置する。なお、本実施形態では、上記のように、GaN層122の成長面が窒素面となる種基板121を配置する。そして、回転変位機構132により、シャフト131を介して台座120を回転させると共に、台座120の位置を調整する。また、GaN層122を成長させている際には、GaN層122の成長レートに合せて台座の高さを調整する。これにより、GaN層の成長表面の高さがほぼ一定に保たれ、成長表面温度の温度分布を効果的に制御することが可能となる。
【0051】
続いて、本実施形態では、状態判定部400を用いて成長用容器100内の状態を判定する。本実施形態では、上記のように、照射部410から照射光Laを成長用容器100内に照射し、受光部421および撮像部422の測定結果に基づいて成長用容器100内の状態を判定する。
【0052】
なお、本実施形態では、第1~第3供給配管310~330からのガスの供給を停止した状態で成長用容器100内の状態判定を行う。また、成長用容器100内の異常判定は、GaN層122を成長させる度に行うようにしてもよいし、所定回数のGaN層122の成長を行う毎に行うようにしてもよい。
【0053】
次に、成長用容器100内に配置された種基板121の周囲が1000~1300℃程度となるように、加熱装置140の駆動を調整する。また、生成用容器200における第1空間211が800~900℃程度となり、第2空間212のうちの第2蓋部203側の部分が150℃程度となるように加熱装置240を駆動する。さらに、図示を省略しているが、第1供給配管310も150℃程度なるように、これらの周囲に配置される加熱装置を駆動する。
【0054】
続いて、生成装置20内に、第1誘導配管231および第2誘導配管232から塩素ガスを誘導する。これにより、第1空間211では、金属ガリウム220と塩素ガスとが反応し、一塩化ガリウムガスが生成される。また、この一塩化ガリウムガスが第2空間212に流動することにより、一塩化ガリウムガスが第2空間212に誘導されている塩素ガスと反応して三塩化ガリウムガスが生成される。そして、三塩化ガリウムガスが第1供給配管310を介して成長装置10に供給される。この場合、本実施形態の第2空間212には、仕切壁214が備えられている。このため、第2空間212に誘導されたガスは、高温部分としての仕切壁214に衝突し易くなると共に流動距離が長くなる。したがって、一塩化ガリウムガスが塩素ガスと反応されずに残存することを抑制できる。
【0055】
また、第2供給配管320からアンモニアガスを成長用容器100に供給すると共に、第3供給配管330からキャリアガスを成長用容器100に供給する。なお、アンモニアガスの供給は、加熱装置140を駆動した後であって、窒素抜けを防止するために、種基板121の周囲の温度が500℃以下である状態で開始することが好ましい。これにより、アンモニアガスおよび三塩化ガリウムガスが流動して種基板121に供給され、種基板121の表面にGaN層122が成長させられる。
【0056】
また、本実施形態の第2空間212は、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、GaN層122を成長させる前に、成長用容器100内に所定量未満の異物のみが存在すると判定されるまで高温クリーニングが行われる。このため、GaN層122の品質が低下することを抑制できる。
【0058】
(1)本実施形態では、第2空間212は、GaN層122を成長させる際、三塩化ガリウムガスが気体として存在しつつ、一塩化ガリウムガスが固化する温度となる部分を有するように加熱される。このため、仮に、第2空間212に一塩化ガリウムガスが残存している場合には、一塩化ガリウムガスが生成用容器200内で固化し易くなる。したがって、断面積が小さい第1供給配管310に一塩化ガリウムガスが入り込んで固化することにより、第1供給配管310が詰まることを抑制できる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、排出口104の近傍に濃度測定部を備えたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態のGaN層製造装置は、
図2に示されるように、判定部420は、排出口104から排出されるアンモニアガス濃度を測定する濃度測定部424を含んで構成されている。また、制御部423は、濃度測定部424とも接続されている。
【0061】
そして、制御部423は、成長用容器100内の異常判定を行う際、第2供給配管320からアンモニアガスを成長用容器100内に供給しながら行う。すなわち、成長用容器100にガリウムを含む異物が付着している場合、アンモニアガスが供給されると当該アンモニアガスと異物とが反応するため、排出口104から排出されるアンモニアガスの濃度が低下する。
【0062】
したがって、本実施形態の制御部423は、濃度測定部424で測定された測定結果が濃度閾値未満である場合、成長用容器100内が異常であると判定する。そして、制御部423は、上記第1実施形態の測定結果、および濃度測定部424で測定された測定結果の全てにおいて成長用容器100が正常状態であると判定した後、GaN層122の成長が開始されるようにする。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、アンモニアガス濃度も用いて成長用容器100内の異常判定を行っている。このため、さらに高精度な異常判定を行うことができる。
【0064】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0065】
例えば、上記各実施形態において、成長装置10の構成は適宜変更である。例えば、上記各実施形態では、台座120の回転および変位を行う回転変位機構132を備える例を説明したが、台座120の回転のみを行って変位を行わないようにしてもよい。また、排出口104は、成長用容器100における第1蓋部102側に配置されていてもよい。
【0066】
また、上記各実施形態において、第2空間212に仕切壁214が備えられていなくてもよい。
【0067】
さらに、上記各実施形態では、高温クリーニングを先に行いながら成長用容器100内の異常判定を行う例について説明した。しかしながら、高温クリーニングは、成長用容器100内が異常状態であると判定された後から開始されるようにしてもよい。つまり、高温クリーニングは、成長用容器100内が正常状態であると判定されるまで行われるのであれば、開始される時点は、成長用容器100内の異常判定を行う前であってもよいし、成長用容器100内の異常判定を行った後でもよい。
【0068】
そして、上記各実施形態では、台座120に種基板121を配置した後に成長用容器100内の異常判定を行う例について説明したが、成長用容器100内の異常判定は、台座120に種基板121を配置する前に行ってもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、制御部423が加熱装置140の駆動を調整する例について説明したが、例えば、制御部423が測定結果や判定結果を表示装置等に表示し、作業者が加熱装置140の駆動を調整するようにしてもよい。
【0070】
さらに、上記各実施形態では、制御部423は、反射光Lbを用いる場合、反射光Lbの強度に基づいて成長用容器100内の異常判定を行う例について説明したが、反射光Lbのスポット等に基づいて成長用容器100内の異常判定を行うようにしてもよい。
【0071】
そして、上記第1実施形態において、判定部420は、受光部421および撮像部422のうちの一方のみを備えていてもよい。同様に、上記第2実施形態において、判定部420は、濃度測定部424に加え、受光部421および撮像部422のうちの一方のみを備えていてもよい。また、上記第2実施形態において、判定部420は、受光部421および撮像部422を備えない構成とされていてもよい。
【0072】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 成長装置
20 生成装置
100 成長用容器
101a 中空部
120 台座
120a 一面
121 種基板
122 GaN層
140 加熱装置
310 供給配管