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特開2023-41778光学導波管上の反射防止性コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041778
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】光学導波管上の反射防止性コーティング
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/113 20150101AFI20230316BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230316BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20230316BHJP
   G02B 6/00 20060101ALN20230316BHJP
   G02B 6/26 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
G02B1/113
G02B5/18
G02B27/02 Z
G02B6/00 301
G02B6/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010887
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2020531452の分割
【原出願日】2018-12-10
(31)【優先権主張番号】62/596,904
(32)【優先日】2017-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/751,240
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514108838
【氏名又は名称】マジック リープ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Magic Leap,Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 W SUNRISE BLVD,PLANTATION,FL 33322 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ペロズ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン メッサー
(57)【要約】
【課題】光学導波管上の反射防止性コーティングの提供。
【解決手段】第1の屈折率を有する導波管基板と、導波管の第1の表面上に配置される複数の回折光学要素と、導波管の第2の表面上に配置される反射防止性コーティングとを備える反射防止性導波管アセンブリ。反射防止性コーティングは、好ましくは、光の少なくとも97パーセントが透過されるように、それが導波管の中に適用される表面を通した光の吸光を増加させる。反射防止性コーティングは、第1の屈折率および仮想的な屈折率が1×10-3未満であるが好ましくは5×10-4未満である異なる屈折率を有する材料の4つの層から成る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/596,904号、および、2018年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/751,240号の優先権を主張し、各々、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
窓または光起電デバイス(例えば、太陽エネルギーパネル)等の基板の表面処理は、層状反射防止性材料のコーティングから利点を享受する。ガラスに衝突する光からのグレアの低減、エネルギーコストのための自然光の改良された留保、または光起電セルに衝突する増加された光の吸光は、反射防止性コーティングが使用される方法のうちのいくつかである。従来の反射防止性コーティングは、基板の表面の法線に対して略直交する光経路であって、概して、基板の完全に外部における光の発生を予期するそのような自由空間光のための反射防止を最大限にするように指向される光経路のための利点を提供する。従来のコーティングはまた、透過率を増加させることを模索する。ある光学媒体は、自由空間発生以外の光経路を操作し、そのような媒体の性能を最適化するための反射防止コーティングが、必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
本発明の実施形態は、概して、光学導波管内の反射防止性コーティングのための層の具体的な材料および厚さを対象とする。より具体的には、本明細書に説明される実施形態および技法は、全内部反射(TIR)のための光伝搬を促進し、同時に、直交角度における光反射または他の自由空間光を最小限にするはずである反射防止性コーティングに関する。本明細書に説明される実施形態は、光の完全透過を模索することから外れる。
【0004】
いくつかの実施形態は、第1の屈折率を有する導波管基板(例えば、ガラス)を対象とする。基板は、平面または円筒形(例えば、光ファイバ)であってもよい。平面基板に関して、複数の回折光学要素(例えば、格子)が、第1の表面上に配置され、反射防止性コーティングが、反対表面上に配置される。円筒形導波管に関して、反射防止性コーティングは、外側表面に適用される。
【0005】
いくつかの実施形態では、導波管は、光を受け取り、全内部反射によって、軸に沿ってそれを伝搬させるように構成される。平面導波管では、光は、そのような軸に沿って第1の方向に進行し、光がその対応する表面の回折光学要素から反射すると、略直交方向に光を外部結合する。円筒形導波管では、光は、導波管の長さと略平行な軸に沿って、導波管に沿って反射し、遠位端において外部結合する。
【0006】
そのような実施形態上の反射防止性コーティングは、光の偏光成分毎のTIRによるバウンスの角度が実質的に類似するように、受け取られた光のsおよびp偏光状態間の位相遅延を最小限にするように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、反射防止性コーティングは、75~125ナノメートル(nm)の厚さを有するフッ化マグネシウム(MgF)の単一の層である。いくつかの実施形態では、シリカ(SiO)の層が、外側層として、コーティングに適用される。
【0008】
いくつかの実施形態では、反射防止性コーティングは、5×10-4未満の(代替として、本明細書では、吸光係数と称される)仮想的な屈折率値kを有する。いくつかの実施形態では、完全コーティングのk値は、コーティングを含む層の数にかかわらず、5×10-4~1×10-3である。いくつかの実施形態では、コーティングは、材料の単一層である。いくつかの実施形態では、コーティングは、2つの材料間で交互し、1つの材料は、第2の材料より比較的に高い屈折率を有する。いくつかの実施形態では、8つ未満の総層が、利用される。
【0009】
いくつかの実施形態では、2より大きい屈折率を伴うチタニア(TiO)が、コーティング層材料として利用され、いくつかの実施形態では、1.45~1.58の屈折率を伴うSiOが、チタニアと層を交互する。
【0010】
これらの材料および層の選択は、光学導波管によって出力された光の効率を最適化し、位相遅延を最小限にし、光学欠陥(例えば、そのような導波管によって出力された画像内の条痕)を低減させ、従来の層の労力および材料コストを最小限にする。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
反射防止性導波管であって、
第1の屈折率を有する平面導波管基板と、
前記導波管の第1の表面上に配置される複数の回折光学要素と、
前記導波管の第2の表面上に配置される反射防止性コーティングと
を備える、反射防止性導波管。
(項目2)
前記導波管は、平面であり、前記複数の回折光学要素と前記反射防止性コーティングとの間の全内部反射によって光を略第1の方向に伝搬し、前記第1の方向に略直交する第2の方向に光を外部結合するように構成される、項目1に記載の反射防止性導波管。
(項目3)
前記全内部反射によって伝搬する光は、s偏光成分と、p偏光成分とを備える、項目2に記載の反射防止性導波管。
(項目4)
前記反射防止性コーティングは、前記s成分の入射角が、前記導波管を通した前記p成分のものに実質的に類似するように、前記2つの成分間の位相遅延を低減させるように構成される、項目3に記載の反射防止性導波管。
(項目5)
前記反射防止性コーティングは、前記導波管からの反射を低減させ、前記第2の表面を通して前記導波管の中への光の透過を増加させる、項目4に記載の反射防止性導波管。
(項目6)
前記光の少なくとも97パーセントは、前記第2の表面を通して透過される、項目5に記載の反射防止性導波管。
(項目7)
前記導波管基板は、ガラスであり、前記反射防止性コーティングは、MgFの層を備える、項目3に記載の反射防止性導波管。
(項目8)
前記MgFの層は、75~125nmの厚さを有する、項目7に記載の反射防止性導波管。
(項目9)
前記反射防止性コーティングは、SiOの層を備える、項目7に記載の反射防止性導波管。
(項目10)
前記MgFの層は、前記第2の表面に直隣接するように配置される、項目8に記載の反射防止性導波管。
(項目11)
SiOの層が、前記MgFの層上に配置される、項目10に記載の反射防止性導波管。
(項目12)
前記反射防止性コーティングの累積屈折率は、5×10-4未満の仮想的な屈折率成分値を有する、項目11に記載の反射防止性導波管。
(項目13)
前記反射防止性コーティングの累積屈折率は、5×10-4~1×10-3の仮想的な屈折率成分値を有する、項目11に記載の反射防止性導波管。
(項目14)
前記反射防止性コーティングは、第1の材料と第2の材料との間で交互する8つ未満の層から成る、項目3に記載の反射防止性導波管。
(項目15)
前記反射防止性コーティングは、4つの層から成る、項目14に記載の反射防止性導波管。
(項目16)
前記第1の材料は、前記第2の材料より比較的に高い屈折率を有する、項目14に記載の反射防止性導波管。
(項目17)
前記第1の材料は、TiOである、項目14に記載の反射防止性導波管。
(項目18)
TiOの各層は、2より大きい屈折率を有する、項目14に記載の反射防止性導波管。
(項目19)
前記第2の材料は、SiOである、項目14に記載の反射防止性導波管。
(項目20)
SiOの各層は、1.45~1.58の屈折率を有する、項目19に記載の反射防止性導波管。
(項目21)
前記反射防止性コーティングの累積屈折率は、5×10-4未満の仮想的な屈折率成分値を有する、項目20に記載の反射防止性導波管。
(項目22)
前記反射防止性コーティングの累積屈折率は、5×10-4~1×10-3の仮想的な屈折率成分値を有する、項目20に記載の反射防止性導波管。
(項目23)
前記反射防止性コーティングの累積屈折率は、5×10-4未満の仮想的な屈折率成分値を有する、項目1に記載の反射防止性導波管。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、反射される光を最小限にしかつ導波管の中への光の吸光を最大限にするその機能に関して理解されるような反射防止性コーティングを示す上下図である。
【0012】
図2図2は、いくつかの実施形態による、全内部反射によって導波管を通して伝搬する複数のビームを外部結合する平面導波管を示す上下図である。
【0013】
図3図3は、いくつかの実施形態による、複数のビームを光束として外部結合する多導波管スタックを示す上下図である。
【0014】
図4図4は、いくつかの実施形態による、3つの回折光学要素領域を有する平面導波管の正面図である。
【0015】
図5図5は、いくつかの実施形態による、その径間を横断して光を回折する直交瞳エクスパンダを示す正面図である。
【0016】
図6A図6Aは、いくつかの実施形態による、導波管を通した複数の光バウンスを示す上下図である。
【0017】
図6B図6Bは、いくつかの実施形態による、全内部反射を支援するように構成される導波管を通して透過されるエネルギーのインフェロメータネットワークの正面図である。
【0018】
図7図7は、いくつかの実施形態による、反射防止性コーティング内の層の関数として位相遅延関係を図示するグラフである。
【0019】
図8A図8Aは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、青色(455nm)光のための接眼レンズ設計の捕捉された画像を示す。
【0020】
図8B図8Bは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、青色(455nm)光のための接眼レンズ設計のシミュレートされた画像を示す。
【0021】
図8C図8Cは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、赤色(625nm)光のための接眼レンズ設計の捕捉された画像を示す。
【0022】
図8D図8Dは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、赤色(625nm)光のための接眼レンズ設計のシミュレートされた画像を示す。
【0023】
図9A図9A図9Dは、いくつかの実施形態による、反射防止性コーティングの層の数およびk値の関数として、導波管によって出力された光エネルギーの効率減衰を図示するグラフである。
図9B図9A図9Dは、いくつかの実施形態による、反射防止性コーティングの層の数およびk値の関数として、導波管によって出力された光エネルギーの効率減衰を図示するグラフである。
図9C図9A図9Dは、いくつかの実施形態による、反射防止性コーティングの層の数およびk値の関数として、導波管によって出力された光エネルギーの効率減衰を図示するグラフである。
図9D図9A図9Dは、いくつかの実施形態による、反射防止性コーティングの層の数およびk値の関数として、導波管によって出力された光エネルギーの効率減衰を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
反射防止コーティングは、概して、異なる屈折率を伴う材料の層を横断して異相反射を作成するように構成される。従来、単層反射防止性コーティングは、コーティングされた基板の屈折率の平方根と等しい屈折率n、および、反射防止性コーティングによって標的化される光の波長λの1/4と等しい厚さtを模索する。
【数1】

【数2】
【0025】
図1は、反射防止材を描写し、光L100は、媒体110に衝突し、光R101を反射させる一方、同時に、媒体120へ透過し、光R101との建設的干渉をもたらす光R103を反射させ、残りの光L105は、媒体103の中に透過する。透過される光L105の総量を改良するための多くの変形例が、公知である。例えば、単一コーティングを用いて複数の波長の透過を改良するための広帯域反射防止材が、付加的および/または可変厚層を用いて達成される。
【0026】
図1に示されるコーティング配列は、自由空間光のために意図されるように作用し得るが、いくつかの光学システムは、導波管技術を採用する。拡張または複合現実システムは、特に、射出瞳エクスパンダシステムにおいて、この技術を最大限にし、源からの光を送達し、TIRによってその光を導波管を通して伝搬させ、次いで、ユーザの眼に向かって外部結合する。
【0027】
図2は、そのようなシステムの簡略化されたバージョンを示す。1つの導波管が、図示されるが、(図3を参照して下記にさらに説明されるように)ともにスタックされた他の導波管も、同様に機能し得ることを理解されたい。光400は、導波管1182の入力表面1382において、導波管1182の中に投入され、TIRによって、導波管1182内を伝搬する。入力表面1382は、内部結合格子であり得、内部結合格子は、回折光学要素によって形成され、TIRを支援する角度で光400を導波管1382の中に回折する。光400が外部結合回折光学要素1282上に衝突する点において、サンプリングされる部分は、導波管から複数の出射ビーム402として出射する。
【0028】
各出射ビームは、光400のサンプリングされるビームレットであり、任意の1つのサンプリングされるビームレットが視認者の眼4によって視認される尤度を増加させる。したがって、導波管1182が、TIRを維持し、その径間を横断して複数の出射ビームを作成することが重要であり、そうでなければ、出射ビーム402は、分散されず、結果として生じる射出瞳は、眼4のある位置においてのみ視認可能であり、システムの適用性および柔軟性を限定する。
【0029】
図2は、単一の導波管システムを描写するが、当業者は、単一の導波管1182が、光400のサンプリングされる部分を与える場合、類似機能を実施する付加的な導波管が、付加的なサンプリングされる部分を付与し、豊かな光効果(例えば、多色成分画像または深度知覚)を作成し得ることを理解される。図3は、光をTIRによって伝搬させる3つの導波管1210、1220、および1230を伴うそのような多層状システムを図示する。場所1212、1222、および1232においてそれぞれ内部結合される各光経路1240、1242、および1244が、導波管1210、1220、および1230上に配置される個別の外部結合回折光学要素1214、1224、または1234に衝突するにつれて(経路1222および1232からの外部結合された光は、描写されない)、それは、複数のビームレットを2つの方向(すなわち、光束3010によって表される(図2の眼4におけるような)視認者に向かう方向、および、光束3020によって表される視認者から離れるような方向)に回折する。
【0030】
光束3020は、それが後続の導波管1220から反射する場合、望ましくない効果(例えば、光束3010との干渉、反射から生じ得る角度の任意の変化に起因する増加されたぼけ等)を生じさせ得る。ここでは、導波管のその外部結合回折光学要素と反対の表面に適用される反射防止性コーティングが、これらの効果を低減させるために有益である。しかしながら、透過を増加させるように試みる従来のコーティングは、概して、それらがTIRによって導波管1210、1220、および1230を横断して進行するにつれて、光経路1240、1242、および1244を劣化させる。この劣化は、外部結合時に均一性の複雑化を導入し、不良画質をもたらす。
【0031】
瞳エクスパンダ技術を採用する導波管光学システムは、この問題を悪化させる。図2に描写されるような瞳エクスパンダシステムでは、光は、出射ビーム経路に対して、略垂直方向だけではなく、直交方向にも分散される。図4は、導波管3704上に配置される直交瞳エクスパンダ(OPE)3706を描写する。図4はまた、図2に描写される外部結合回折光学要素1282に類似する、TIR光の漸次的出射ビームを外部結合するための射出瞳エクスパンダ(EPE)3708と、図2の入力表面1382に類似する内部結合格子(ICG)3702とを描写する。図4の導波管システムでは、光は、内部結合格子を通して導波管に内部結合し、直交瞳エクスパンダに向かって回折する。
【0032】
図5は、直交瞳エクスパンダを横断した光サンプリングを描写する。図4の内部結合格子からの光4410Bは、光のサンプルを第1の方向に、および、その同一の光のサンプル4430Bを第2の方向に回折する格子4420B(例えば、一連の回折光学要素)に遭遇する。回折される特定の方向は、回折光学要素の特定の幾何学形状の関数である。
【0033】
図6Aは、この光経路の断面図を描写し、1つの導波管は、格子662を1つの表面上に、反射防止性コーティング664を反対表面上に備える。光がTIRによって導波管を通して伝搬するにつれて、それは、直交瞳エクスパンダと、直交瞳エクスパンダと反対の表面とに対して交互に反射する。当業者は、類似の機能性が導波管の射出瞳エクスパンダ領域を用いて生じることを理解する。図3を参照した光束3020によって説明される反射を低減させるために、反射防止性コーティングが、この反対表面に適用される。累積光インフェロメータ(例えば図6Bによって描写されるユニットセルインフェロメータ)が、この相互作用から導出され得る。図6Bでは、直交瞳エクスパンダとの各相互作用は、直交瞳エクスパンダに対する各連続反射間の反射防止性コーティング側に対する反射を伴って、光を2つの経路の中にサンプリングする。直交瞳エクスパンダ側または反射防止側からの各反射は、各連続バウンスが、偏光状態を擾乱させ、各出力ノードにおけるエネルギーを変化させるように、偏光変化を光にさらに導入し得る。
【0034】
偏光を成分sおよびp状態に分割することによって、結果として生じる電場Eは、光の振幅Aおよび位相φの関数であって、以下のように、sおよびp経路毎に描写される。
【数3】

【数4】

式中、iは、入力における変数の値を示す。
【0035】
図6Bの出力ノードにおける光の経路との相関とともに、指向性矢印によって下記に示される)各相互作用は、以下のように、方程式3および方程式4のsおよびp要素のエネルギーによって乗算される2×2行列として説明され得る。
【数5】

式中、左および下向き矢印は、図6Bの出力ノード662におけるように、左および下に回折する光を示し、ηは、遷移の回折効率であり、φは、遷移の位相偏移である。
【0036】
加えて、ARコーティングからの各バウンスが、2×2行列によって説明されることができる。平面コーティングでは、この行列の非対角線要素は、0であり、対角線要素の大きさは、平面コーティングでは層が平行であるという事実に起因して、1でなければならない。ARコーティングからの回折が存在しないため、これらの行列のうちの2つ、すなわち、
【化1】

のみが存在する。
【数6】

【数7】
【0037】
出力ノードから退出し、下向きに(射出瞳エクスパンダに向かって)伝搬する電場状態は、ここでは、電場入力状態に関連させられることができる。
【数8】
【0038】
しかしながら、これは、位相遅延(各バウンスにおけるsおよびp光経路の各々の位相偏移間の差異)が、
【化2】

であるように0である場合、簡略化され得る。この場合、反射防止性コーティングは、もはやエネルギー出力に影響を及ぼさない。言い換えると、方程式6および方程式7は、それぞれ、以下によって置換され得る。
【数9】

【数10】

また、出力も、以下に簡略化される。
【数11】
【0039】
したがって、ARコーティングが、位相遅延を有していない場合、それは、位相偏移のみを出力に与え、偏光状態または大きさの変化を伴わない。ARコーティングが、位相遅延を有する場合、それは、出力偏光状態および大きさを変化させ、負の光学効果を導入する。これは、TIR導波管ディスプレイデバイス上で使用される反射防止性コーティングの層の数を判定するときに重要である。図7は、種々の入射角におけるTIR光に関する位相遅延を描写する。図8Aは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、青色(455nm)光のための接眼レンズ設計の捕捉された画像を示す。図8Bは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、青色(455nm)光のための接眼レンズ設計のシミュレートされた画像を示す。図8Cは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、赤色(625nm)光のための接眼レンズ設計の捕捉された画像を示す。図8Dは、異なるn値の層の反射防止性コーティングを伴う基板上における、赤色(625nm)光のための接眼レンズ設計のシミュレートされた画像を示す。位相差における大変動は、出射ビームに、図8A-8Dに描写される「条痕」または均一性途絶として観察可能な影響を及ぼす。4層反射防止性コーティングが、最も均一性を有することが見出され、したがって、図7および8A~図8Dにおいて表される他のコーティングよりも好ましい。反射防止性層の数を調節する効果は、各波長を横断して一貫している(すなわち、図8A図8Dは、特定の波長の光に関する接眼レンズを描写するが、効果は、示されない他の波長(例えば、緑色)に関しても同様である)ことを理解されたい。
【0040】
この劣化を最小限にし、導波管間反射の量を低減させる一方で、それにもかかわらず、導波管内反射を維持するために、本発明の実施形態は、最適化された反射防止性コーティングを対象とする。そのような最適化は、反射防止性材料の屈折率とコーティング内に適用される層の数および厚さを平衡させる。これは、θと実質的に等しいθをもたらすことによって、位相遅延効果を最小限にする。
【0041】
いくつかの実施形態では、反射防止性コーティングは、拡張または複合もしくは仮想現実デバイスの接眼レンズを構成する導波管スタック内の導波管基板の片側に適用される。好ましくは、コーティングされた側は、視認者の眼が設置されることが予期される側と反対側にあるが、視認者の眼と同一側のコーティングされた側も、同様に機能し得る。いくつかの実施形態では、格子が、導波管のコーティングされた側と反対表面に適用される。反射防止性コーティングは、好ましくは、反射防止性コーティングが適用される表面からの反射を低減させ、その表面を通した透過を増加させる。反射防止性コーティングは、好ましくは、光の透過を少なくとも97パーセントまで増加させる。
【0042】
反射防止コーティングは、少なくとも1つの層を備えるが、好ましい実施形態では、8つ未満であり、比較的に高屈折率および比較的に低屈折率の2つの交互構成材料の層を交互させる。いくつかの実施形態では、成分層のうちの1つは、チタニア(TiO)である。いくつかの実施形態では、成分層のうちの1つは、シリカ(SiO)である。
【0043】
当業者は、他の候補材料(例えば、SiN、ZrO、ZnO、Ta、またはNB、もしくは可視波長範囲内で低吸光率を伴う他の金属酸化物)も理解する。そのような材料は、TiOおよびSiOと同様に、反射防止のための光起電またはガラス処理におけるその使用に関して、当技術分野において周知である。
【0044】
いくつかの実施形態では、SiOは、導波管清掃、処理、またはパターン化から起こる任意の湿潤化学的性質(硫酸、過酸化水素等)に対する保護層としての多層コーティングの最終(すなわち、上部)層である。
【0045】
材料の屈折率nは、n=n+ikであるように、2つの要素(すなわち、既知の屈折率、および、吸光係数k(または材料を通した光の減衰に関連する仮想的な屈折率))から構成される。異なる材料は、広く種々の結果を生産することができる異なる吸光係数を有し、これは、特に、複数の材料が、ともに層化され、コーティングのための正味k値を作成するとき、可変である。例えば、周知の反射防止性材料であるチタニアと、窒化ケイ素SiNとは、法線入射のための類似の反射率スペクトルを有するが、若干異なるk値を有する。これらは、法線/直交光方向において無視可能であり得るが、TIRを支援する角度では、表面における光の全てのバウンスは、2つの材料間で比較して、若干異なる吸光率を伴って減衰される。TIRシステム内の複数のバウンスを横断して光を操作するコーティング内の吸光係数のこの若干の差異の累積効果は、全体的画質(特に、均一性および効率)に著しい影響を及ぼし得る。
【0046】
種々の材料の可変吸光係数kの材料によって出力されたエネルギーを使用して、光の損失が、出力のパーセンテージとして、図9A図9Dに描写される。図9Aは、層の増加およびk値の増加の関数として、EPEによって出力された光のエネルギーの損失を描写する。描写されるような5パーセントの例示的なEPE効率では、大部分の単一層反射防止性コーティングは、正味k値が約5×10-4未満であるとき、TIRシステム(例えば、光学導波管)内でこの効率を保つ。各付加的な層または正味k値の増加は、EPEにおけるエネルギー出力の効率を指数関数的に減衰させる。これは、層の材料または数にかかわらず、真であるが、図9Bおよび図9Cによって示されるように、減衰の程度は、変化する。
【0047】
図9Dは、EPE効率略図を描写し、EPE効率略図は、増加された層が、当技術分野において公知の反射防止の任意の利点にもかかわらず、増加された損失を通して、システム性能に有害であることを実証する。
【0048】
いくつかの実施形態では、8つより少ない層を伴う反射防止性コーティングが、利用される。いくつかの実施形態では、MgFコーティング等、単一層のみが、利用される。
【0049】
方程式1に従って、標的屈折率は、単純数学によって解決され得るが、特定のk値の累積効果は、それほど容易に導出されず、交互層コーティングでは、累積標的nも、それほど簡単ではないかもしれない。例えば、チタニアのような従来の反射防止性コーティング材料が、ガラス基板に適用される場合、方程式1は、満たされない。ガラスは、概して、1.5~1.6の屈折率を有し、ガラス上の反射防止性コーティングは、したがって、1.22~1.27の屈折率を有するはずである。本発明のいくつかの実施形態では、MgF(MgFの屈折率は、1.38である)の反射防止コーティングが、ガラス基板に適用される。
【0050】
図3を参照すると、複数の導波管が、各導波管が特定の波長の光を伝搬するように構成されるように、使用されてもよい。導波管毎の反射防止性コーティングのための明確に異なる厚さが、その導波管の構成される波長に基づいて作成されてもよい。例えば、緑色光(約520nm)を伝搬するように構成されるガラス上のMgFコーティングでは、94nmの厚さが、所望される。代替として、選択される正確な厚さが、方程式2によって決定付けられる特定の波長の光のためにより有益であるという理解の下、75nm~125nmの任意の導波管のための共通厚(製造上の適用複雑性を省くため)が、単一層状コーティングが可視スペクトル全般を反射させるために適用されることができる。
【0051】
本書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「実施形態」、または同様の用語の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した種々の場所におけるそのような語句の表出は、必ずしも、全て同一の実施形態を参照するわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態に関して、限定なしに、任意の適した様式において組み合わせられてもよい。
【0052】
本明細書に示される詳細は、一例であり、かつ、本発明の好ましい実施形態の例証的議論のためだけのものであり、本発明の種々の実施形態の原理および概念側面の最も有用かつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点において、本発明の基本的な理解のために必要なものより詳細に本発明の構造の詳細を示すことを試みてはおらず、説明は、本発明のいくつかの形態が実際に具現化され得る方法が当業者に明白となるように、図面および/または実施例とともに検討される。
【0053】
本明細書で使用されるように、別様に示されない限り、用語「a」および「an」は、「1つ」、「少なくとも1つ」、または「1つまたは複数」を意味するように捉えられる。文脈によって他の態様で要求されない限り、本明細書で使用される単数形用語は、複数形を含むものとし、複数形用語は、単数形を含むものとする。
【0054】
文脈によって他の態様で要求されない限り、説明および請求項全体を通して、単語「comprises(~を備える)」、「comprising(~を備える)」、および同等物は、排他的または包括的意味とは対照的に、包含的意味において(すなわち、「~を含むが、これに限定されない」の意味において)解釈されるべきである。用語「または」は、本明細書で使用されるように、包含的または任意の1つもしくは任意の組み合わせの意味として解釈されるべきである。したがって、「A、B、またはC」は、A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、AおよびBおよびCのいずれかを意味する。この定義の例外は、要素、機能、ステップ、または行為の組み合わせが、ある点において、本質的に相互に排他的であるときのみ、生じる。
【0055】
単数または複数を使用する単語はまた、それぞれ、複数および単数を含む。加えて、単語「本明細書」、「上記」、および「下記」、ならびに類似の含意の単語は、本開示で使用されるとき、本開示の任意の特定の部分ではなく、本開示全体を指すものとする。
【0056】
本開示の実施形態の説明は、包括的であること、または、開示される精密な形態に本開示を限定することを意図するものではない。本開示のための具体的な実施形態および実施例は、例証的目的のために本明細書に説明されるが、種々の均等的な修正が、当業者が認識するように、本開示の範囲内で可能性として考えられる。そのような修正は、開示される実施形態に示される寸法および/または材料の変更を含み得るが、これに限定されない。
【0057】
本明細書に引用される参考文献は全て、参照することによって援用される。本開示の側面は、必要に応じて、上記の参考文献のシステム、機能、および概念を採用するように修正され、本開示のなおもさらなる実施形態を提供することができる。これらおよび他の変更は、詳細な説明に照らして、本開示に行われることができる。
【0058】
任意の前述の実施形態の具体的な要素は、他の実施形態における要素と組み合わせられる、または、代用されることができる。さらに、本開示のある実施形態と関連付けられた利点は、これらの実施形態の文脈において説明されたが、他の実施形態もまた、そのような利点を呈し得、全ての実施形態は、本開示の範囲内であるために、必ずしも、そのような利点を呈する必要はない。
【0059】
したがって、本発明は、添付の請求項の精神および範囲内の修正および改変とともに実践されることができることを理解されたい。説明は、包括的であること、または、本発明を開示される精密な形態に限定することを意図するものではない。本発明は、修正および改変とともに実践されることができ、本発明は、請求項およびその均等物によってのみ限定されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
【外国語明細書】