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特開2023-41804安定で保存剤非含有の散瞳および抗炎症注射用液剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041804
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】安定で保存剤非含有の散瞳および抗炎症注射用液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K31/407
A61K47/12
A61K47/02
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012804
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2020104619の分割
【原出願日】2013-10-23
(31)【優先権主張番号】61/718,026
(32)【優先日】2012-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/736,179
(32)【優先日】2012-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501472607
【氏名又は名称】オメロス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー エー. デモプーロス
(72)【発明者】
【氏名】フイ-ロン シェン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク イー. テッドフォード
(57)【要約】
【課題】注射用の、フェニレフリンおよびケトロラクの安定で保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体製剤を提供すること
【解決手段】
本発明は、注射用の、フェニレフリンおよびケトロラクの安定で保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体製剤に関する。本発明は、注射用の、散瞳薬であるフェニレフリン、および抗炎症剤であるケトロラクの、滅菌の保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体製剤を提供する。上記製剤は、眼内灌流キャリアへと適切に注入され得、手術の間に眼の組織を灌流するために使用され得る。上記製剤は、保存剤および抗酸化剤と関連し得る潜在的な毒性を回避するが、十分な安定性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予想外に良好な安定性
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は、眼科用の眼内灌流溶液の中の、注射用の、ケトロラクおよびフェニレフリンの安定で保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体薬学的製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
II.発明の背景
眼科手術は、しばしば、眼内組織の生理学的完全性を保護および維持するために、生理学的灌流溶液の使用を必要とする。代表的に灌流溶液を要する眼科手術処置の例としては、白内障摘出とレンズ置換、および屈折レンズ交換処置、角膜移植処置および網膜硝子体手術ならびに緑内障のための線維柱帯切除処置が挙げられる。眼内手術の間中、患者の瞳孔は、明瞭な手術野を可能にし、かつ処置と関連し得る外傷を制限するために十分拡張されなければならない。
【0003】
瞳孔拡張(散瞳)は、代表的には、散瞳薬の局所投与によって術前に眼を拡張することによって達成される。代表的には投与され得る術前に適用される散瞳薬としては、交感神経興奮剤(例えば、α-1アドレナリン作動性レセプターアゴニスト)、および抗コリン作動薬(例えば、抗ムスカリン薬)が挙げられる。抗コリン作動薬は、より長期間の作用が望ましい場合に選択され得る。なぜならそれらは、毛様体筋麻痺(cycloplegia)(毛様体筋の麻痺(paralysis of the ciliary muscle))および散瞳の両方を提供するからである。例えば、トロピカミドは、半減期約4~6時間を示す。しかし、多くの処置に関しては、α-1アドレナリン作動薬が好ましい。なぜならそれらは、散瞳をもたらすが、毛様体筋麻痺をもたらさないからである。α-1アドレナリン作動薬は、従って、より短期間作用性であり、外科処置の間に散瞳を引き起こし、上記処置の完了後まもなく瞳孔をその正常な状態に戻らせる。
【0004】
手術の間に、手術道具の先端を前眼房の中に挿入するにつれて、虹彩括約筋は、収縮し(縮瞳)、瞳孔によって規定される窓を縮小させる傾向にある。瞳孔直径が処置の間中十分に維持されなければ、眼内の構造体を損傷するリスクが増大し、必要とされる手術時間をしばしば長引かせる。臨床的に重大な瞳孔直径の縮小は、処置関連の合併症(後嚢断裂(posterior capsule tears)、レンズ断片の残留(retained lens fragments)および硝子体漏出(vitreous leaks)が挙げられる)の増大と関連する。
【0005】
多くの眼科外科医は、眼内灌流溶液の中にエピネフリンを組みこんで、瞳孔拡張の維持を補助し得る。中毒性前眼部症候群(TASS)は、前眼部の急性の非感染性炎症である。TASSは、前眼部手術(最も一般的には、白内障手術)と関連し得る重篤な合併症である。種々の汚染物質がTASSの原因として影響を及ぼしてきた。眼内灌流溶液中での保存剤を含むエピネフリンの使用は、白内障手術後のTASSの発生率と関連づけられてきた多くの要因のうちの1つである。例えば、http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5625a2.htm(2012年7月9日にアクセスした)を参照のこと。さらに「保存剤非含有」エピネフリン(つまり、抗菌剤を含まないエピネフリン)は、角膜内皮に対する潜在的な毒性と関連するとして眼科医もまたほのめかしてきた抗酸化剤としてメタ重亜硫酸ナトリウムをなお含む(Slack, et al., A bisulfite-free intraocular epinephrine solution, Am J Ophthalmol.;110(1):77-82 (1990))。
【0006】
フェニレフリンは、もう1つのα-1アドレナリン作動薬である。これは、散瞳を促進するためにときおり手術前に局所投与されるが、単回使用注射用に保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有形態では米国で承認されていない。承認されたフェニレフリンHCl液剤の例としては、0.01% 塩化ベンザルコニウム(AkornのAK-DILATETM(2mlおよび5mlのプラスチック製点滴瓶で入手可能;Falcon PharmaceuticalsおよびAlcon Laboratoriesからは、多用途の3mlおよび5mlの点滴瓶で)、および抗菌性保存剤を含まないが、抗酸化剤として2mgのメタ重亜硫酸ナトリウムをなお含む「保存剤非含有」製剤(InterMed Medical Ltd.からスプレーボトルで入手可能なNeo-Synephrine(登録商標))のいずれかが挙げられる。
【0007】
患者の快適さのために術後疼痛および刺激を減少させることはまた、望ましい。このことから、患者は、術前にもしくは術後に、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で処置され得る。白内障手術(例えば)は、代表的には、高度の術後疼痛と関連づけられていないものの、より重篤な術後疼痛を経験する少数派の患者の数を最小限にする必要がある。このことが重要なのは、このような患者は不快感を経験しかつかれらの処置が上手くいかなかったという懸念があり得るという理由、および疼痛をもたらす重篤な合併症がないということを確実にする予防措置として患者を再検査する必要があり得るという両方の理由からである。
【0008】
眼用薬物(例えば、NSAID)の種々の送達法が従来から使用されているが、それらの各々には、制限がある。これらの制限としては、角膜および結膜(conjuctival)毒性、組織損傷、眼球穿孔、視神経外傷、網膜中心動脈および/もしくは静脈の閉塞、直接的な網膜の薬物毒性(direct retinal drug toxicity)、および全身性副作用が挙げられ得る。例えば、滴下して適用される局所的薬物療法は、眼の自然な保護的な表面に起因して、目標とした眼の部位に達することを頻繁に妨げられる。多くの状況において、所望の治療的作用部位に実際に達するのは、眼の表面に適用される薬物療法のかなり小さなパーセンテージである。
【0009】
十分な濃度の薬物を眼の後ろ側に送達するのを達成するために、薬物(例えば、NSAID)は、頻繁に、非常に高用量で全身に投与される。これらのレベルは、血流から来る選択された薬物分子から眼の後ろ側を保護する血液網膜関門を越える必要がある。外科処置のために、ときおり、注射用薬物溶液が眼の後ろ側に直接注射される。結膜下(Subconjuctival)注射および眼球周囲注射(peribulbar periocular injection)は、より高い局所濃度が必要とされる場合、および透過特性が不十分な薬物が送達される必要がある場合に、使用される。前眼房内への直接注射(Intracameral injections directly into the anterior chamber)は、白内障手術で使用される。
【0010】
ケトロラクは、眼科用途に関して保存剤添加形態(preserved form)で市販されているNSAIDである。AllerganのAcular(登録商標)は、保存剤として塩化ベンザルコニウム 0.01%を含むケトロラクトロメタミン液剤(3mlおよび6mlの点滴瓶で入手可能)である。Bedford Laboratoriesはまた、血管内投与もしくは筋肉内投与の注射用に、濃縮形態のケトロラクトロメタミン(1mL中に15mgもしくは30mg、または10mL中に60mgもしくは300mg)を供給している。Allerganは、保存剤非含有0.45% ケトロラクトロメタミン眼用液剤(これは、商品名Acuvail(登録商標)の下で個別使用バイアル(individual use vials)の中に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物(sodium citrat
e dehydrate)とともに製剤化されている)を供給している。
【0011】
房内注射(intracameral injection)は、ある濃度を達成する迅速な方法を提供する一方で、それは角膜毒性と関連し得る。しかし、この方法は、これらの薬物が眼の天然の循環プロセスによって急速に除去されるという事実を欠点として有する。従って、注射用液剤は、これらの治療上の利益を急速に失い、しばしば、毒性のリスクを有し得る頻繁な大用量注射が必要となる。徐放性製剤(例えば、マイクロカプセルを含む粘弾性ゲル)は、より長い作用継続時間にわたって眼内に注射される。しかし、薬物の局所的治療濃度を達成するにあたっては、いくらかの遅れがあり得る。よって、眼科的処置の間に制御された眼科的送達方法が必要である。
【0012】
眼科手術の灌流で使用されてきた溶液は、ノーマルセーライン、乳酸添加リンゲル液およびハルトマン乳酸添加リンゲル液が挙げられるが、これらは、潜在的な不利な角膜効果および内皮効果に起因して最適ではない。電解質、pH調節のための緩衝化剤、グルタチオンおよび/もしくはエネルギー源(例えば、デキストロース)のような作用物質を含む他の水性溶液は、眼の組織をよりよく保護するが、手術と関連する他の生理学的プロセスに対処しない。眼科的灌流のための1つの一般に使用される溶液は、Garabedian et al.への米国特許第4,550,022号(その開示は、本明細書に明示的に参考として援用される)で開示される2要素の緩衝化電解質とグルタチオン溶液である。この溶液の2要素は、安定性を保証するために、投与直前に混合される。これらの溶液は、手術の間に眼の組織の健康状態を維持するという目的で製剤化される。
【0013】
改変溶液の別の例は、発明者らの名前Gan et al.で国際PCT出願WO 94/08602に開示されている(その開示は、本明細書に参考として援用される)。この出願は、眼の灌流溶液の中に散瞳薬(例えば、エピネフリン)を含めることを開示している。さらに別の例は、発明者らの名前Cagle et al.で国際PCT出願WO
95/16435によって提供される(これは、眼科用灌流溶液中に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含めることを開示している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,550,022号明細書
【特許文献2】国際公開94/08602号
【特許文献3】国際公開95/16435号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Slack, et al., A bisulfite-free intraocular epinephrine solution, Am J Ophthalmol.;110(1):77-82 (1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
III.発明の要旨
本発明は、注射用の、散瞳薬であるフェニレフリン、および抗炎症剤であるケトロラクの、滅菌の保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体製剤を提供する。上記製剤は、眼内灌流キャリアへと適切に注入され得、手術の間に眼の組織を灌流するために使用され得る。上記製剤は、保存剤および抗酸化剤と関連し得る潜在的な毒性を回避するが、十分な安定性を有する。
【0017】
本発明の一実施形態は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合に、少なくとも6
ヶ月間安定である、水性キャリア中にフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系を含む、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の滅菌の液体薬学的製剤を提供する。好ましくは、上記製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合に少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である。
【0018】
本発明の一局面において、上記緩衝系は、リン酸ナトリウム緩衝系およびクエン酸ナトリウム緩衝系から選択される。好ましくは、上記緩衝系は、クエン酸ナトリウム緩衝系(例えば、約20mM クエン酸ナトリウム緩衝系)である。本発明の別の局面において、上記製剤は、pH5.8~6.8を有する。
【0019】
本発明の別の局面において、上記製剤は、単回使用容器(例えば、注射物が引き抜かれ得るクロージャーで閉じられたバイアル、およびプレフィルドシリンジ)内に含まれる。
【0020】
本発明の適切な製剤は、46~76mM フェニレフリンおよび8.5~14mM ケトロラクを含み、一例としては、約60.75mM フェニレフリンおよび約11.25mM ケトロラクを含み得る。本発明の製剤は、モル比 1:1~13:1 フェニレフリン:ケトロラクでフェニレフリンおよびケトロラクを含み得、適切には、モル比 3:1~10:1 フェニレフリン:ケトロラクでこれらの薬剤を含み得る。
【0021】
本発明の別の実施形態は、水性キャリア中にフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系、ならびに眼内灌流キャリア(この中に製剤が注入され、その結果、注入後に上記フェニレフリンが濃度30~720μMで存在し、上記ケトロラクが44~134μMの濃度で存在する)を含む、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の滅菌の液体薬学的製剤を提供する。本発明の別の局面において、眼内灌流キャリアへの注入後に、上記フェニレフリンは、濃度240~720μMで存在し、上記ケトロラクは、濃度10~270μMで存在する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、水性キャリア中のフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系から本質的になる滅菌の液体薬学的製剤を提供し、ここで上記製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも6ヶ月間安定である。好ましくは、上記製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である。
【0023】
本発明の一局面において、上記緩衝系は、リン酸ナトリウム緩衝系およびクエン酸ナトリウム緩衝系から選択される。好ましくは、上記緩衝系は、クエン酸ナトリウム緩衝系(例えば、約20mM クエン酸ナトリウム緩衝系)である。本発明の別の局面において、上記製剤は、pH5.8~6.8を有する。
【0024】
本発明の別の局面において、上記製剤は、単回使用容器(例えば、注射物が引き抜かれ得るストッパーで閉じられたバイアル、およびプレフィルドシリンジ)内に含まれる。
【0025】
本発明の別の局面は、注射用の単回使用容器にパッケージされた、フェニレフリン、ケトロラク、緩衝系および水性キャリアを含む、注射用の滅菌の薬学的液体投与形態を提供する。
【0026】
本発明の別の局面において、フェニレフリン、ケトロラク、緩衝系および眼内灌流キャリアを含む、滅菌の液体薬学的製剤が提供され、この中で上記フェニレフリンは、濃度30~720μMで含まれ、上記ケトロラクは、濃度10~270μMで含まれるか、または好ましくは、上記フェニレフリンは、濃度90~720μMで含まれ、上記ケトロラクは、濃度44~134μMで含まれる。この製剤はまた、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含
有であり得る。
【0027】
水性キャリア中にフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系を含み、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも6ヶ月間安定である、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の滅菌の液体薬学的製剤を調製するための方法もまた、開示される。好ましくは、上記製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である。
【0028】
フェニレフリン、ケトロラク、緩衝系および眼内灌流キャリアを含む滅菌の液体薬学的製剤を調製するための方法がさらに開示され、ここで上記フェニレフリンは、濃度30~720μMで含まれ、上記ケトロラクは、濃度10~270μMで含まれるか、または好ましくは、上記フェニレフリンは、濃度90~720μMで含まれ、上記ケトロラクは、濃度44~134μMで含まれる。この製剤はまた、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
IV.図面の簡単な説明
本発明はここで、添付の図面を参照しながら、例証によってさらに詳細に記載される。
【0030】
図1図1は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図2図2は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図3図3は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図4図4は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図5図5は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図6図6は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図7図7は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図8図8は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図9図9は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図10図10は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図11図11は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図12図12は、2~8℃から60℃までの制御された温度で貯蔵した場合に、活性医薬成分濃度、種々の緩衝系、保存剤EDTAの添加および保存剤EDTA+抗酸化剤メタ重亜硫酸ナトリウムの添加という変数を用いて、活性医薬成分の分解に由来する関連物質のパーセンテージを測定することによって決定される場合の、12ヶ月の期間にわたる種々の時点でのフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性研究の結果を提供する。
図13図13は、4℃~60℃の制御された温度で貯蔵した場合に1年の期間にわたる種々の時点で、保存剤EDTAありもしくはなしの2種のフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する窒素重層の効果を評価する研究の結果を提供する。
図14図14は、4℃~60℃の制御された温度で貯蔵した場合に1年の期間にわたる種々の時点で、保存剤EDTAありもしくはなしの2種のフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する窒素重層の効果を評価する研究の結果を提供する。
図15図15は、2~8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵した後1ヶ月の期間にわたる時点で、フェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する種々の抗酸化剤の効果を評価する研究の結果を提供する。
図16図16は、2~8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵した後1ヶ月の期間にわたる時点で、フェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する種々の抗酸化剤の効果を評価する研究の結果を提供する。
図17図17は、2~8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵した後1ヶ月の期間にわたる時点で、フェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する種々の抗酸化剤の効果を評価する研究の結果を提供する。
図18図18は、2~8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵した後1ヶ月の期間にわたる時点で、フェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の安定性に対する種々の抗酸化剤の効果を評価する研究の結果を提供する。
図19図19は、4℃~40℃の温度で貯蔵した場合、4ヶ月の期間にわたって高濃度フェニレフリン製剤の安定性を評価する研究の結果を提供する。
図20図20Aおよび20Bは、2~8℃で30ヶ月間貯蔵した場合、フェニレフリンおよびケトロラク併用製剤中のフェニレフリンおよびケトロラクそれぞれの有効性を示す。
図21図21は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、個々に与えられた場合および眼内灌流によって平衡塩類溶液(BSS)中で併用して与えられた場合に、観察される散瞳(図21および図22)ならびにフレア(図23図25)の測定値(measures)で、フェニレフリンおよびケトロラクを評価する非ヒト霊長類の濃度範囲効力研究の結果を図示する。
図22図22は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、個々に与えられた場合および眼内灌流によって平衡塩類溶液(BSS)中で併用して与えられた場合に、観察される散瞳(図21および図22)ならびにフレア(図23図25)の測定値(measures)で、フェニレフリンおよびケトロラクを評価する非ヒト霊長類の濃度範囲効力研究の結果を図示する。
図23図23は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、個々に与えられた場合および眼内灌流によって平衡塩類溶液(BSS)中で併用して与えられた場合に、観察される散瞳(図21および図22)ならびにフレア(図23図25)の測定値で、フェニレフリンおよびケトロラクを評価する非ヒト霊長類の濃度範囲効力研究の結果を図示する。
図24図24は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、個々に与えられた場合および眼内灌流によって平衡塩類溶液(BSS)中で併用して与えられた場合に、観察される散瞳(図21および図22)ならびにフレア(図23図25)の測定値で、フェニレフリンおよびケトロラクを評価する非ヒト霊長類の濃度範囲効力研究の結果を図示する。
図25図25は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、個々に与えられた場合および眼内灌流によって平衡塩類溶液(BSS)中で併用して与えられた場合に、観察される散瞳(図21および図22)ならびにフレア(図23図25)の測定値で、フェニレフリンおよびケトロラクを評価する非ヒト霊長類の濃度範囲効力研究の結果を図示する。
図26図26は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、BSS中で眼内灌流によって送達された場合、散瞳(図26)およびフレア(図27~28)に対するフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の効果を評価する非ヒト霊長類研究の結果を図示する。
図27図27は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、BSS中で眼内灌流によって送達された場合、散瞳(図26)およびフレア(図27~28)に対するフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の効果を評価する非ヒト霊長類研究の結果を図示する。
図28図28は、超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間に、BSS中で眼内灌流によって送達された場合、散瞳(図26)およびフレア(図27~28)に対するフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の効果を評価する非ヒト霊長類研究の結果を図示する。
図29図29は、非ヒト霊長類における超音波水晶体乳化吸引によるレンズ摘出および交換手術の間にBSS中で送達された場合、散瞳に対するフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤の種々の濃度を評価する用量範囲研究の結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
V.詳細な説明
本発明は、散瞳薬としてフェニレフリンおよび抗炎症剤としてケトロラクを含む、眼の組織への周術期局所適用(眼内適用および局所適用を含む)のための灌流溶液の滅菌製剤を提供する。これらの製剤は、保存剤および抗酸化剤の両方を含まないが、予測外にも良好な安定性を示す。それらは、好ましくは、注射用の単回使用容器にパッケージされ、眼内処置(例えば、白内障摘出およびレンズ置換、ならびに屈折レンズ交換処置)前に、より大きな体積の眼内灌流キャリアへと注入され得、その処置の間に使用され得る。
【0032】
(定義)
「保存剤」とは、本明細書で使用される場合、安定性を維持し、微生物増殖による分解を防止するために薬学的生成物に添加される抗菌剤を意味する。薬学的組成物に含まれ得る一般的な抗菌性保存剤としては、ソルビン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、プロピオン酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム(および「その部位での」亜硝酸ナトリウムへと変換する硝酸ナトリウム)、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)ならびに金属キレート化剤であるエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(エデト酸二ナトリウム、EDTA、もしくはNa EDTAともいわれる)が挙げられる。
【0033】
「抗酸化剤」とは、本明細書で使用される場合、酸素と優先的に反応し、それによって、抗酸化剤が添加される薬学的生成物を、酸化に起因する分解から保護する物質をいう。薬学的組成物に含まれ得る水溶性抗酸化剤もしくは油溶性抗酸化剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム(sodium thiosulphite)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、l-アスコルビン酸およびd-アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ尿素(thieurea)、ジチオスレイトール(dihithreitol)、グルタチオン、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、三級ブチルヒドロキノン、パルミチン酸アスコルビル、ノルジヒドログアイアレチン酸およびα-トコフェロールが挙げられる。
【0034】
「保存剤非含有」溶液とは、塩化ベンザルコニウムも他の抗菌剤も含まない溶液をいう。
【0035】
「抗酸化剤非含有」溶液とは、メタ重亜硫酸ナトリウムも、唯一の機能のために含まれたかもしくは抗酸化剤として働いている他の薬剤も含まない溶液をいうが、抗酸化剤非含有溶液は、pH緩衝系を含み得、そのうちの1成分は、抗酸化剤活性を有し得る。
【0036】
「ケトロラク」とは、塩形態にあるケトロラク(例えば、ケトロラクトロメタミン[(±)-5-ベンゾイル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-1-カルボン酸:2-アミノ-2(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(1:1)]を意味する。
【0037】
「フェニレフリン」とは、塩形態にあるフェニレフリン(例えば、フェニレフリンHCl[(-)-m-ヒドロキシ-a-[(メチルアミノ)メチル]ベンジルアルコールヒドロクロリド]を意味する。
【0038】
所定の薬学的成分に関する「関連物質」とは、上記成分の分解から生じる物質(製剤中の上記薬学的成分の総濃度のパーセンテージとして表される)をいう。本発明に関して本明細書で使用される場合、「全関連物質」とは、上記製剤中の活性な薬学的成分であるケトロラクおよびフェニレフリンの分解から生じる全ての関連物質の合計(上記製剤中の薬学的成分の総濃度のパーセンテージとして表される)をいう。関連物質を測定するために使用されるアッセイに関して定量下限(例えば、0.1%)未満で存在する任意の関連物質は、全関連物質を決定するにあたって合計に含まれない。本明細書中の例に付随する図面では、ある成分に関して0% 関連物質への言及は、アッセイされている物質に関して定量下限(例えば、0.1%)を上回るレベルで存在した成分の関連物質が存在しなかったことを意味する。
【0039】
「安定な」とは、特定の貯蔵期間の最後に、5%未満の全関連物質を含む液体薬学的製剤に言及する。一実施形態において、安定な液体製剤は、5±3℃(すなわち、2~8℃)から25±2℃(すなわち、23~27℃)までの温度で、少なくとも6ヶ月の期間にわたって安定である。好ましい実施形態において、安定な液体製剤は、5±3℃から25±2℃までの温度で、少なくとも1年の期間にわたって安定である。好ましい実施形態において、安定な液体製剤は、5±3℃から25±2℃までの温度で、少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である。好ましい実施形態において、安定な液体製剤は、5±3℃から25±2℃までの温度で、少なくとも30ヶ月の期間にわたって安定である。本発明の好ましい実施形態において、本発明の安定な製剤は、所定の貯蔵期間後に1.0%未満の全関連物質を有する。
【0040】
用語「約」とは、記載される製剤の成分の濃度においてバリエーション(所定の値の5%、10%、15%もしくは最大で20%までであり得、20%を含む)があり得ることを意味することが理解される。例えば、語句「約20mM クエン酸ナトリウムを有する製剤」は、上記製剤が16mM~24mM クエン酸ナトリウムを有し得ることを意味すると理解される。
【0041】
用語「滅菌の(無菌の)」とは、無菌的に加工処理されており、生きている細菌も、真菌も、他の微生物もいない薬学的生成物をいう。
【0042】
(薬学的作用物質)
本発明は、2種の活性な薬学的成分(API)である散瞳薬としてのフェニレフリンおよび抗炎症剤としてのNSAID、ケトロラクを併用する、安定で、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有の液体薬学的製剤を提供する。
【0043】
(ケトロラク)
本発明の好ましい製剤中の「ケトロラク」は、ケトロラクトロメタミン塩[(±)-5-ベンゾイル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-1-カルボン酸:2-アミノ-2(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(1:1)]として含まれる。ケトロラクは、非ステロイド系抗炎症薬の中のピロロ-ピロールグループのメンバーである。ケトロラクHClは、3種の結晶形態(それらの全てが等しく水溶性である)で存在し得るR-(+)およびS-(-)エナンチオマーのラセミ混合物である。この薬剤は、光に長期間露出されると退色し、よって、遮光包装(例えば、箱詰めにする(over-boxing)もしくは琥珀色のバイアルの使用)は、本発明の製剤を包装するために適切に利用され得る。
【0044】
(フェニレフリン)
「フェニレフリン」とは、塩形態にあるフェニレフリン(例えば、フェニレフリンHC
l[(-)-m-ヒドロキシ-a-[(メチルアミノ)メチル]ベンジルアルコールヒドロクロリド]を意味する。フェニレフリンは、αレセプター交感神経作用薬である。フェニレフリンHClは、水およびアルコールに自由に溶ける。
【0045】
(水性キャリア)
キャリアとしての水性溶媒へのAPIの添加では、本発明者らは、可溶化剤を全く必要しないと判定した。上記水性キャリアは、適切には、注射用水(WFI)であり、これは、蒸留水の滅菌溶質非含有調製物である。代わりに、眼内組織に有害でなく上記製剤の安定性に有害な影響を与えない他の水性キャリアが使用され得る(例えば、脱イオン水、または安定性に対する潜在的影響について最初に評価した後には、食塩水もしくは以下に記載されるものなどの平衡塩類溶液)。
【0046】
(緩衝系)
本発明の製剤は、pH5.8~6.8、および好ましくは、約6.3へと調節される。水酸化ナトリウムおよび塩酸は、上記製剤をこのpHへと調節するために必要とされる場合に添加され得る。所望のpHは、緩衝系を使用することによって適切に維持される。1つのこのような適切な系は、クエン酸緩衝液(クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物を含む)であり、別の適切な系は、リン酸ナトリウム緩衝液(二塩基性リン酸ナトリウムおよび一塩基性リン酸ナトリウムを含む)である。いずれの緩衝系も、10mM~100mMの範囲の適切な濃度で使用され得、適切には、20mMであり得る。以下の実施例1で記載されるように、クエン酸ナトリウムは、保存剤非含有製剤での使用に好ましい緩衝化剤である。クエン酸緩衝液中のクエン酸は、二価のカチオンへとキレート化する能力を有するので、酸化もまた防止し得、抗酸化効果および緩衝化効果を提供する。しかし、その存在は、他の抗酸化剤が安定性を低下させるようには低下させない(以下の実施例3)。本明細書で使用される場合、用語「抗酸化剤非含有」とは、他の抗酸化剤の使用を除外するが、緩衝系の一部として含まれる緩衝化剤(例えば、クエン酸)の使用を除外しない。
【0047】
(他の賦形剤はない)
本発明のさらなる局面において、いかなる保存剤も抗酸化剤も非含有であることに加えて、本発明に従う製剤はまた、緩衝系以外のいかなる賦形剤も含まない。例えば、可溶化剤(例えば、エタノールまたはエタノール(ethanol or ethanol)は全く使用されない(すなわち、上記製剤は、可溶化剤非含有である)。本発明の好ましい製剤は、注射用水中の2種のAPIおよび緩衝系から本質的になり、眼内組織への毒性の可能性が低下した非常に純粋な製剤をもたらす。
【0048】
(単回使用容器)
本発明のさらなる局面において、本発明のフェニレフリンおよびケトロラク併用製剤は、眼内手術の間に単回使用に十分な量で、このような単回使用を容易にし、多回使用の投与(multi-use administration)を容易にしない容器中に含まれる。従って、本発明に従って製剤化される薬物組成物の十分な、眼内灌流キャリアの標準的容器に添加されることが望ましい薬物組成物の量に等しいかもしくは僅かに多いだけの(すなわち、25%過剰以下)量は、注射によって上記薬物組成物の投薬を促進する単回使用容器内に含まれる。例えば、フェニレフリンおよびケトロラク併用薬物組成物の望ましい単回使用量は、ストッパーもしくは隔壁(これを貫通して、皮下注射針が薬物組成物を引き抜くために挿入され得る)を含む他のクロージャーで閉じられたガラスバイアルにパッケージされ得るか、またはプレフィルドシリンジ中にパッケージされ得る。適切な容器およびクロージャーシステムの一例は、West 20mm灰色ブチルストッパーおよび20mmフリップオフシール付きの5mL USPタイプ1ホウケイ酸フリントガラスバイアルである。
【0049】
容器を閉じる前に、以下の実施例2に記載される結果に基づいて、本発明に従って製剤化された薬物組成物が窒素重層に曝される(すなわち、バイアルをシールする前に、窒素でバイアル中の上部空間から空気を排除する)ことは、望ましいことであり得る。空気を排出してこれを不活性ガスで置き換える他の方法もまた利用され得る(例えば、上記溶液じゅうに不活性ガスを噴霧する)。
【0050】
(眼内灌流キャリア)
上記フェニレフリンおよびケトロラク併用薬物組成物(すなわち、併用薬物生成物)は、眼内もしくは局所の灌流もしくは洗浄による投与の前に、眼内灌流溶液のバッグ、瓶もしくは他の容器の中に注入によって適切に添加される。適切な眼内灌流溶液としては、食塩水、乳酸添加リンゲル液、平衡塩類溶液、または水性製剤と適合性でありかつ眼の組織に有害でない任意の他の灌流溶液が挙げられる。1つの適切な眼内灌流キャリアは、以下の補助剤のうちの1種以上、および好ましくは全てを含む:生理学的平衡塩類溶液を提供するために十分な電解質;細胞のエネルギー源;緩衝化剤;およびフリーラジカルスカベンジャー。1つの適切な溶液(以下の実施例中では、「平衡塩類溶液」もしくは「BSS」といわれる)は、以下を含む:50~500ミリモル濃度のナトリウムイオン、0.1~50ミリモル濃度のカリウムイオン、0.1~5ミリモル濃度のカルシウムイオン、0.1~5ミリモル濃度のマグネシウムイオン、50~500ミリモル濃度の塩素イオン、および0.1~10ミリモル濃度のリン酸イオンの電解質;10~50ミリモル濃度の緩衝液として重炭酸塩;1~25ミリモル濃度の、デキストロースおよびグルコースから選択される細胞のエネルギー源;ならびに0.05~5ミリモル濃度のフリーラジカルスカベンジャー(すなわち、抗酸化剤)としてのグルタチオン。
【0051】
本発明の併用薬物組成物を希釈および投与するための適切な方法の一例は、以下の表2に処方2(Formula 2)として記載される本発明の製剤を利用する。この溶液のうちの4.5mLのアリコート(単回使用に関して意図された量としての4.0mLおよび過剰充填0.5mLを含む)は、滅菌閉鎖単回使用バイアル内に含まれ、眼内手術の間の投与のために灌流溶液との混合が意図される。上記バイアルから、4mLをシリンジで引き抜き、BSSの500mLバッグもしくはボトルの中に注入することによって500mLのBSSと混合して、眼への局所送達のために灌流溶液中に終濃度483μM フェニレフリンおよび89μM ケトロラクを提供する。
【0052】
本発明の別の局面において、灌流のための滅菌の液体薬学的製剤が提供され得、ここで上記フェニレフリンおよびケトロラクは、手術の間の眼内組織への局所送達が所望される、各活性な薬学的成分の濃度にまで希釈され、滅菌バッグ、瓶もしくは他の単回使用灌流容器内に含まれているように、眼内灌流キャリア内で既に混合されている。例えば、灌流のためのこのような製剤は、濃度30~720μMのフェニレフリンおよび濃度10~270μMのケトロラクを含み得るか、または好ましくは、濃度90~720μMのフェニレフリンおよび濃度44~134μMのケトロラクを含み得る。一実施形態において、上記フェニレフリンおよびケトロラク併用物は、眼内灌流キャリアとしての平衡塩類溶液(例えば、上記で記載されるもの)内で混合される。灌流のためのこの薬学的製剤は、適切なことには、完全に保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有であり得るか、または必要に応じて、薬物を添加してない(non-medicated)眼内灌流キャリア中に代表的には含まれる抗酸化剤のみ(例えば、上記の平衡塩類溶液中のグルタチオン)を含み得るが、保存剤を全く含まない。
【0053】
(例示的製剤)
上記のように、本発明の滅菌の液体薬学的製剤は、緩衝化した水性キャリア中にフェニレフリンおよびケトロラクを含む。本発明の併用薬物組成物中のフェニレフリンの適切な
濃度は、10mM~500mM、および好ましくは、45mM~112mMの範囲に及ぶ。本発明の併用薬物組成物中のケトロラクの適切な濃度は、2mM~75mM、および好ましくは、8.5mM~24mMの範囲に及ぶ。上記緩衝系(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝系)は、適切には、濃度10~100mM、および好ましくは、約20mMで含まれる。本発明に従う2種の例示的製剤は、以下の表1および表2に示される。各場合に、水酸化ナトリウムおよび/もしくは塩酸は、上記製剤を調製する場合、必要であればpHを約6.3に調節するために添加される。
【表1】
【表2】
【0054】
上記製剤中に含まれる薬学的に活性な成分の量は、モル比で表され得る。フェニレフリン 対 ケトロラクのモル比は、1:1~13:1の範囲に及び得、より適切には、3:1~10:1の範囲に及び得る。上記の表1中の処方1(Formula 1)によって表されるとおりのフェニレフリンおよびケトロラクの例示的モル比は、8:1のフェニレフリン:ケトロラクである。上記の表2中の処方2によって表されるとおりのフェニレフリンおよびケトロラクの別の例示的モル比は、5.4:1 フェニレフリン:ケトロラクである。
【0055】
局所送達のため、本発明の製剤を眼内灌流キャリアへと希釈した後、フェニレフリンの投与濃度は、3~7,200μM、より適切には、30~720μM、より好ましくは、90~720μM、さらにより好ましくは、240~720μM、および最も好ましくは、約483μMであり得る。局所送達のため、本発明の製剤を眼内灌流キャリアへと希釈した後、ケトロラクの投与濃度は、3~900μM、より適切には、10~270μM、より好ましくは、44~134μM、さらにより好ましくは、30~90μM、および最も好ましくは、約90μMであり得る。
【0056】
(使用法)
本発明の安定な液体製剤は、眼内灌流キャリアと混合した後に種々の眼科処置において利用され得る。これらとしては、白内障摘出およびレンズ置換処置、ならびに屈折レンズ交換処置、角膜移植処置および網膜硝子体手術ならびに緑内障のための線維柱帯切除処置が挙げられる。
【0057】
本発明の併用薬物組成物を希釈および投与するのに適した方法の一例は、上記の表2の処方2として記載される本発明の製剤を利用する。上記組成物のうちの4.5mLを含む滅菌の単回使用5mLバイアルが提供され、そこから上記組成物のうちの4mLがシリンジで引き抜かれ、BSSの500mLバッグもしくは瓶へと注入することによって500mLのBSSと混合されて、終濃度483μM フェニレフリンおよび89μM ケトロラクを提供する。この溶液は、上記処置の間中一定の濃度で前眼房を通って灌流される。このようにして、この例で薬物生成物は、上記処置の間に房内のみに投与される。
【0058】
上記活性な薬学的作用物質は、眼内灌流キャリア中に希釈濃度で含まれる。上記作用物質の濃度は、外科処置の間の眼の組織への直接的な局所適用に関する本発明の教示に従って決定される。上記溶液の適用は、周術期に、すなわち、術中;術前および術中;術中および術後;または術前、術中および術後に、行われ得る。
【0059】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの、ある)」、「and(および)」および「the(上記、この、その)」は、別段文脈が明確に示さなければ、複数形への言及を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「ある賦形剤」への言及は、当業者に公知の複数のこのような賦形剤およびその均等物を含むなど。
【0060】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日より前にそれらの開示が提供されているに過ぎない。本明細書において、本発明が先行発明によってこのような刊行物に先立つ権利がないという承認として解釈されるべきことは何らない。さらに、提供される刊行日は、独立して確認される必要があり得る実際の刊行日とは異なり得る。全ての引用は、本明細書に参考として援用される。
【実施例0061】
(実施例1~5)
以下の実施例1~5に記載される研究では、関連物質(RS)の存在および有効性は、UV検出器付きの高速液体クラマトグラフィー(HPLC-UV)によって測定し、安定性の指標として、分解生成物の存在を示す、検出される関連物質のパーセンテージの増加を用いた。これらの研究において、上記HPLC-UVは、流速1.2ml/分でZorbax XDB-C8, 5μM, 4.6mm×150mmカラムを利用した。移動相AおよびBは、以下のとおりであった: 移動相A:650mLの1.1mg/mL 1-オクタンスルホン酸(pH3.0):50mLのミリQ(Milli-Q)水:300mL メタノール。ミリQ水:300mL メタノール; 移動相B:300mLの1.
1mg/mL 1-オクタンスルホン酸(pH 3.0):50mLのミリQ水:650mL メタノール。使用した希釈液は、移動相Aであった。40分間で100% Aから100% Bへの勾配を使用した。280nm UV検出器を使用した。
【0062】
(実施例1:保存剤および抗酸化剤の使用に依存した、および種々の緩衝液を使用した、製剤の安定性の比較)
2種の活性薬学的成分(API)であるフェニレフリンHCl(PE)およびケトロラクトロメタミン(KE)(各々、水性溶液中に5mMもしくは1mMのいずれかの等濃度)の併用の種々の製剤を比較する実験を行った。2種の異なる緩衝系を利用して、上記溶液を3種の異なるpHで維持した:pH7.4については20mM リン酸ナトリウム緩衝液(二塩基性リン酸ナトリウムおよび一塩基性リン酸ナトリウム);pH6.5については20mM クエン酸ナトリウム緩衝液(クエン酸一水和物およびクエン酸ナトリウム二水和物);ならびにpH5.5については20mM クエン酸ナトリウム緩衝液。これらのAPIの4種の保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有製剤を開発した(各々、以下のように、貯蔵およびサンプル採取のために複数の1mLバイアルへとアリコートに分けた):
【表3】
【0063】
次いで、さらなる製剤を、保存剤も抗酸化剤も添加せずに(コントロール群)、あるいは以下のように保存剤であるエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(エデト酸二ナトリウムもしくはEDTAともいわれる)、またはEDTA+抗酸化剤であるメタ重亜硫酸ナトリウムを添加することによって、調製した:
【表4】
【0064】
次いで、これらの群の中の各々における種々の製剤のサンプルを、遮光条件下で、2~8℃、25℃、40℃もしくは60℃のいずれかの制御された温度で貯蔵した。各製剤のサンプルを、12ヶ月の期間にわたって種々の時点で引抜き、各APIに関する関連物質を測定することによって決定されるとおり、APIの分解について分析した。この実験結果を、図1~12の表に示し、以下の結論に達した。
【0065】
貯蔵1ヶ月後の安定性評価に基づいて:
1.コントロール群(G1)は、両方のAPIがpH7.4のリン酸Na緩衝液中で、ならびにpH6.5およびpH5.5のクエン酸Na緩衝液中で安定であることが実証された。コントロール群は60℃でいくらかの分解を示し、pH4.5(クエン酸Na)で最大を示した。
2.G2群をG1群と比較すると、EDTAがより高温でPEの分解を阻害することが実証される。
3.G3群は、驚くべきことに、メタ重亜硫酸Naが高温でAPI、特にKEの分解を有意に増大させることを実証する。さらに、1ヶ月では、40℃および60℃で貯蔵したいくつかのG3サンプルが黄みがかった。
【0066】
6ヶ月の貯蔵後の安定性評価に基づいて:
4.EDTAは、驚くべきことに、いずれのAPIの安定性に対しても、特にpH6.5のクエン酸緩衝液中では、有意な効果を有しないようである。
5.6ヶ月での関連物質の%単位での最大増加が、60℃で保持したサンプルで起こる。
6.両方のAPIが4℃および25℃で安定なようである。40℃では、関連物質の%単位での小さな増加が、特にpH6.5のクエン酸緩衝液中で伴う。
7.6ヶ月では、40℃および60℃のサンプルは、明るい黄色に見えるが、目に見える沈殿または結晶化はない。
【0067】
(実施例2:安定性に対する窒素重層の効果)
次いで、窒素重層(すなわち、バイアルをシールする前に、バイアル中の上部空間から空気を窒素で排除する)の効果を決定する研究を行った。実施例1の処方F2(水性溶液中でpH6.5に調節したクエン酸ナトリウム緩衝液中の5mM ケトロラク、5mM フェニレフリン)を、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加しない(群1, G1)、または保存剤として0.05% w/v EDTAを添加する(群2, G2)かのいずれかで評価した。各APIに関する関連物質を、4℃~60℃の範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵後1年の期間にわたる時点で測定した。
【0068】
この研究の結果を図13および図14に示し、窒素重層の使用が、酸素含有空気の存在と比較して、特に40℃および60℃という高温で両方のAPIの分解を有意に減少させたことを実証する。窒素重層を使用した場合、EDTAの存在もしくは非存在はAPIの安定性に対してほとんど差異を生まなかった。
【0069】
(実施例3:安定性に対する種々の抗酸化剤の効果)
次いで、保存剤として0.05% w/v EDTAも含む実施例1の処方F2(水性溶液中でpH6.5に調節したクエン酸ナトリウム緩衝液中の5mM ケトロラク、5mM フェニレフリン)(群2, G2)に代替の抗酸化剤を添加する効果を評価する研究を行った。評価した抗酸化剤は、0.1% アスコルビン酸(A1)、0.1% L-システインHCl一水和物(A2)、0.1% L-グルタチオン(還元型)(A3)および0.1% モノチオグリセレート(A4)であった。各APIに関する関連物質を、2~8℃から60℃までの範囲に及ぶ温度でサンプルを貯蔵後1ヶ月の期間にわたる時点で測定した。
【0070】
この研究の結果を図15図18に示し、1ヶ月の時点で、これらの4種の抗酸化剤は、各々驚くべきことに、各APIの分解を、特に、40℃および60℃という高温で増大させたことを示す。
【0071】
(実施例4:より高濃度のフェニレフリンの安定性の評価)
フェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミン併用製剤中のフェニレフリンの濃度を、フェニレフリンの安定性に対する有害な効果なしに増大し得るかを評価するために、pH6.5に調節した、保存剤も抗酸化剤も他の賦形剤も添加なしのクエン酸カルシウム緩衝液中の450mM フェニレフリンの水性製剤を調製し、サンプルを4℃~40℃の間の温度で4ヶ月の期間にわたって貯蔵した場合に評価した。
【0072】
この研究の結果を図19に提供する。この高濃度フェニレフリン製剤は、4ヶ月間にわたって4℃~30℃の間で安定であった。
【0073】
(実施例5:フェニレフリンおよびケトロラク併用の長期安定性の評価)
pH6.5に調節した20mM クエン酸ナトリウム緩衝液中の固定したフェニレフリンHCl(12.37mg/mL)およびケトロラクトロメタミン(4.24mg/mL)の併用製剤に関して、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加せずに、長期安定性研究を行った。5mL USPタイプ1ガラスバイアルにアリコートに分け、Daiko D777-1 Flurotec(登録商標)被覆20mmストッパーで閉じた上記製剤のサンプルを、逆さにして貯蔵し、遮光するためにホイルで包み、次いで、長期貯蔵条件(5±3℃)および加速貯蔵条件(25±2℃/60±5% RH)下で維持した。各バイアルは、4.5mLの溶液(0.5mL過剰充填を含む)を含んだ。
【0074】
これらの条件下で30ヶ月貯蔵した後に測定した場合、生成物の外観、溶液のpH、もしくは有効性において測定可能な変化はなかった。この30ヶ月の時点で、5℃および25℃での貯蔵は、それぞれ、合計で1.17%および1.36%の関連物質を生じた。2℃~8℃という表示された貯蔵条件下で保持されたこの製剤に関するフェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミンの測定された有効性のグラフ表示を、それぞれ図20Aおよび図20Bに提供する。これらの図面で証明されるように、30ヶ月を通じて観察された有効性における有意な減少は何らなかった(3本のバイアルを各時点でアッセイした)。
【0075】
(実施例6~9)
以下の実施例6~9は、灌流溶液への注入によって希釈され、その後レンズ置換および交換手術の間に眼内灌流のために使用された、本発明に従うフェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミン併用製剤のインビボ研究の結果を提供する。以下の製剤を、この一連の研究で評価した:(a)フェニレフリンHClのみ(PE)、(b)ケトロラクトロメタミンのみ(KE)、(c)フェニレフリンHClおよびケトロラクトロメタミンの併用(PE-KE)、または(d)活性な薬学的成分なし(ビヒクルコントロール)。各場合において、いかなる保存剤も抗酸化剤も添加せずに、pH6.5に調節した20mM
クエン酸ナトリウム緩衝液を含む水性溶液中に製剤化し、各場合で2.5mL アリコートで提供した。各場合に、上記製剤のアリコートを、灌流ビヒクルキャリアとしての平衡塩類溶液(BSS, Baxter Healthcare, 製造コード1A7233)の中に、以下に記載されるとおりの特定の最終投与濃度になるように注入した。上記研究はまた、プロパラカインHCl(0.5%, Bausch & Lomb)、トロピカミド(1.0%, Bausch & Lomb)およびシプロフロキサシンHCl(3%, Alcon)を以下に記載される程度まで利用した。
【0076】
試験薬剤の散瞳特性および抗炎症特性を、ヒトの超音波水晶体乳化吸引手術のアフリカミドリザルモデルで評価した。手術前に、ベースラインの測定値および評価を、各サルの両眼に対して行って、生体顕微鏡法、ならびにKowa FM-500機器を使用する定量的フレア光度計測法下で定量的にスコア付けすることによって、瞳孔直径、レンズおよび虹彩完全性、角膜厚、および前眼房フレアおよび細胞数を決定した。超音波水晶体乳化吸引手術とポリメチルメタクリレート(PMMA)人工レンズでのレンズ置換を、Storz Premier前方超音波水晶体乳化吸引機械(anterior phacoemulsification machine)を使用して行った。上記処置を右眼に対してのみ行って、手術位置変動性を最小限にし、左眼がコントロールとして働くようにし、可能性のある誘発される任意の視力喪失の結果を最小限にした。
【0077】
試験動物を、1滴の局所プロパラカインを用いて増大させたケタミン/キシラジン麻酔の下で腹臥位に置いた。MVR 20 Gランスブレード(lance blade)で右眼の角膜を小さく切開し、そこから0.4~0.6mLの粘弾性物質(2% ヒドロキシプロピルメチルセルロース, EyeCoat, Eyekon Medical)を、粘弾性注射器を介して前眼房へと導入した。2.65mmストレートクリア角膜両斜角ブレード(straight clear cornea bi-beveled blade)を使用して、角膜縁の1.0mm前に角膜切開を行った。超音波水晶体乳化吸引ハンドピースで灌流を適用して、粘弾性物質を除去し、試験灌流液を導入した。合計で4分間の灌流後、灌流を停止し、前眼房を粘弾性物質で再度満たした。嚢切開(capsulorhexis)を行い、超音波水晶体乳化吸引チップを、超音波水晶体乳化吸引エネルギーを印加して前眼房に再導入して、レンズを破壊し、吸引およびレンズ断片除去を可能にした。レンズ除去後に灌流をある期間延長して、全ての処置群にわたって眼内灌流液送達を標準化した(灌流のこの超音波水晶体乳化吸引セグメントの間に合計で14分間)。上記超音波水晶体乳化吸引および灌流処置の後に、PMMA眼内レンズ(IOL)を挿入し、さらに2分間の灌流を行い、その後、角膜切開を2本の12.0ナイロン縫合糸で閉じた。以下に記載されるとおり、試験流体もしくはビヒクルコントロールでの灌流は、超音波水晶体乳化吸引およびレンズ置換の前、その間およびその後に、合計で20分間、流速20mL/分で行った。
【0078】
これらの研究において、レーザーフレア光度計測法を、Kowa FM-500(Kowa Company, Tokyo Japan)を使用してベースラインで、手術処置を開始した後4.5時間、24時間、48時間および1週間で行った。上記Kowa FM-500は、前眼房フレアを定量するために、レーザー光散乱を測定する。レーザーは、前眼房および炎症応答の間に前眼房へと放出されるタンパク質に向けられ、焦点を通過してレーザー光を散乱させる。この光散乱は、ミリ秒あたりの光子数として光電子倍増管によって定量される。各観察点で、7回の許容可能な読み取り(2回のバックグラウンド測定値間の差異<15%)が得られるまで測定値を集め、最低および最高の読み取りを消去し、製造業者によって指定されるように、平均値±標準偏差を計算した。
【0079】
散瞳効果のタイムコースを、灌流処置の間の瞳孔の映像記録によって記録した。瞳孔直径および開瞼器の固定幅(11mm)を映像から測定して、瞳孔直径をミリメートル単位で計算した。各記録された処置についての映像時間記録(video time log)に従って注入処置の過程の間に周期的間隔で測定を行った。
【0080】
主要効力変数は、瞳孔直径およびレーザーフレア光度計測法による測定値であった。主要効力変数を、SAS(SAS Institute Inc.)を用い、一元配置反復測定ANOVA法と事後Student Newman-Keuls検定を使用して、プロトコル補正集団(protocol correct population)(大きなプロトコル逸脱なしに研究を完了した全ての被験体)において分析した。ANOVA分
析の項は、シーケンス(=時間, キャリーオーバー効果と混同される)、眼、サルおよび処置を含んだ。適切なモデルベースの比較を用いて、全ての時点での瞳孔直径およびフレア測定値に関して有意レベルp<0.05で処置の差異を検出した。
【0081】
(実施例6:超音波水晶体乳化吸引手術モデルでの術中灌流後のフェニレフリンおよびケトロラクの濃度範囲研究)
非GLP研究を濃度範囲効力研究として行って、白内障手術の間にBSS中の眼内灌流によって個々に与えられる、および併用して与えられる場合の、PEおよびKEを評価した。目的は、散瞳および炎症エンドポイントの両方に対して各薬剤の利益を評価することであった。
【0082】
第1シリーズの実験(フェーズ1と称する)では、16匹の動物を4匹の群に分け、超音波水晶体乳化吸引手術のこのモデルにおいてBSS灌流溶液中のフェニレフリンの最大有効濃度を確立するために研究した。フェーズ1コホートにおけるサルのうちの4匹にはトロピカミド(ムスカリン様散瞳薬)を与えて、陽性コントロールとして働くようにし、標準的な局所的術前送達経路によって十分な瞳孔拡張下での目的のエンドポイント測定値の決定を可能にした。上記フェニレフリン処置群に、低濃度(3μM)、中間濃度(10μM)、高濃度(30μM)および最高濃度(90μM)のフェニレフリン含有BSS灌流液を与えた。低濃度および最高濃度の処置群は各2匹の動物からなり、フェーズ1の一部が進行中のときの、より高い濃度のフェニレフリンを評価するための決定をなした。フェニレフリン効力の主要エンドポイントは、散瞳であった。術後の炎症エンドポイントもまた、評価した。
【0083】
BSS灌流液を、フェニレフリンなしか、または濃度3.0μM、10μM、30μMもしくは90μM(表1を参照のこと)のフェニレフリンを含むかのいずれかで、超音波水晶体乳化吸引針を通して送達した。ステージ1灌流(0:00~2:00分)を、上記粘弾性物質を除去およびフェニレフリンの散瞳効果を評価するために適用し、ステージ2灌流(2:00~4:00分)の間中継続した。その後、粘弾性物質を前眼房に再導入し、嚢切開を行った。ステージ3灌流(4:00~18:00分)を上記嚢切開の後に開始し、合計で14分間継続した。その初期段階の間に、レンズを断片化し、超音波水晶体乳化吸引エネルギーの印加によって吸引した。ステージ4灌流をPMMAレンズの導入後に行って、その処置のために導入された粘弾性物質を排出および任意のさらなるレンズ断片を除去した。上記トロピカミドコントロール動物を、BSSのみでの前眼房灌流を開始する20分前に、2滴の1% トロピカミドで予備処置した。
【0084】
最初の数匹の動物の手術の後に、最初の超音波水晶体乳化吸引前の灌流の継続時間を2分から4分へと延ばして、最大の瞳孔拡張を得た。
【0085】
第2シリーズの実験(フェーズ2と称される)は、低濃度、中濃度および高濃度のケトロラクを含む、もしくはケトロラクなし(陰性コントロール)のBSS灌流液を使用した超音波水晶体乳化吸引手術の後に散瞳および炎症を評価した。前眼房灌流を、灌流溶液中に散瞳薬なしを使用して開始して、ケトロラクおよびBSSのみの散瞳効果を評価した。2分の灌流および散瞳の評価の後に、フェーズ1実験で散瞳をもたらすことにおいて有効であると判明したフェニレフリンの濃度(30μM)を、灌流溶液中に含めて、超音波水晶体乳化吸引処置を行うために十分な拡張をもたらした。ケトロラク効力の二次的エンドポイントは、散瞳であり、主要エンドポイントは、前眼房炎症の確認された尺度であるレーザーフレア光度計測法であった。
【0086】
BSS灌流液を、ケトロラクなしもしくは濃度3.0μM、10μM、もしくは30μMのケトロラクを含むかのいずれかで、超音波水晶体乳化吸引針を通じて送達した(表1
を参照のこと)。ステージ1灌流(0:00~2:00分)を適用して、粘弾性物質を除去およびケトロラクの散瞳効果を評価した。次いで、高濃度フェニレフリンを灌流液瓶に(濃度30μMを達成するように)添加し、ラインを洗い流し、灌流をステージ2(2:00~4:00分)の間中継続した。その後、粘弾性物質を前眼房に再導入し、嚢切開を行った。ステージ3灌流(4:00~18:00分)を嚢切開の後に開始し、合計で14分間継続し、その初期段階の間に、超音波水晶体乳化吸引エネルギーを印加した。ステージ4灌流を、PMMAレンズの導入後に行った。
【0087】
(結果)
前眼房灌流の開始の最初の1分以内の1~2mmの初期瞳孔拡張の後に、瞳孔直径は、直径に対する時間の有意な効果(F=2.75, P<0.0001)を伴って全ての処置群に関して約5分以内に最大拡張に漸近的に近づいた(図21および図22を参照のこと)。第1の実験セットでは、傾向から、BSS灌流液中のフェニレフリンの存在が瞳孔直径の濃度依存性増大に寄与したことが示唆される。BSSのみでの灌流の20分前に局所的トロピカミドを受けたコントロール群で示された初期拡張(0~2分)は、薬理学的効果ではなかった可能性があり、全ての群における前眼房灌流の開始の最初の2分以内に測定した拡張の成分は、角膜切開を作ることおよび可能性のある灌流/吸引の流体力学的影響を可能にするために導入された粘弾性物質のクリアランスに関連したことを反映する。しかし、注目すべきは、トロピカミドコントロール群における初期のさらなる拡張は、上記処置の開始時に全ての他の処置群より大きなベースライン拡張から始まり(F=7.73, P<0.0001)、中濃度、高濃度および最高濃度のフェニレフリン群が示すものより低い最大拡張を生じた。最高、高および中のフェニレフリン群と低フェニレフリン群の間の差異は、6:00分、8:00分、10:00分、14:00分、18:00分および19:00分の時点で有意であった(それぞれ、F=2.41, p<0.043; F=2.66, p<0.0315; F=3.24, p<0.0136; F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001; F=3.79, p<0.005;Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=23, 図21を参照のこと)。このことから、術中の散瞳の大きさに対するフェニレフリン灌流液の濃度依存性効果が確認された。低濃度フェニレフリンおよびトロピカミドコントロール群に対する最高濃度、高濃度および中濃度のフェニレフリン群間の差異は、14:00および18:00分の時点で有意であった(それぞれ、F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001;Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=23, 図21を参照のこと)。このことは、術中の散瞳を長引かせることにおけるフェニレフリンの濃度依存性効果を示していた。全ての他の時点での全ての他の群の間の差異は、Student Newman-Keuls判定基準では有意でなかったが、群内での平均瞳孔直径において認められる傾向は、フェニレフリン群にわたる開始速度と散瞳効果の大きさの両方に対する濃度依存性を示唆する。より後の時点では、高フェニレフリン処置群における平均拡張は、この種の成体の眼では、8.3mmという瞳孔散瞳の解剖学的限界(角膜縁の内径に対応する)に近い。
【0088】
3~30μM ケトロラクを含むBSSもしくはBSSのみで、30μM フェニレフリンを導入する前に前眼房を2分間灌流した第2の実験セットでは、灌流開始の30秒以内に瞳孔直径の急速な1~2mmの増加、続いて、30秒~2分の間にそれほど急速ではない濃度非依存性の増加があった。最初の2分間の間には、ケトロラク処置群とBSS処置動物との間に統計的な差異は認められなかった。同じ挙動がBSSコントロール群によって示されると仮定すると、この初期の拡張は、第1の実験セットにおいてフェニレフリン群およびトロピカミドコントロール群の挙動によって証明されるように、粘弾性物質のクリアランスおよび灌流/吸引の流体力学的影響に関連する可能性がある。2分で全てのケトロラク処置動物およびBSS処置動物に30μM フェニレフリンを導入した後、全
ての群において、瞳孔直径のさらに急速な増加があり、4分で最大拡張に達した。最大拡張は、4分間の最初の灌流と、嚢切開を行ったときの超音波水晶体乳化吸引の開始との間の間隔で瞳孔直径が僅かに減少した後の残りの灌流期間を通じて持続された。14:00分および18:00分の時点で、BSS群および高濃度ケトロラク群に対して低濃度および中濃度のケトロラク群の間を除いて、統計的に有意な群の差異は全くなかった(低および中>BSSおよび高;それぞれ、F=6.62, p<0.0002; F=9.26, p<0.0001;Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=23, 図2を参照のこと)。しかし、この差異に関する処置のグループ分けは、差異がケトロラク効果から生じなかったことを示唆し、おそらく、制限されたサンプルサイズに関連し、動物間および処置間の差異を反映した。両方の実験セットの全ての処置群において、瞳孔は処置の最後のレンズ配置後に収縮した。
【0089】
ベースラインの術前前眼房フレアの測定値は、全ての処置群において処置した(右)眼で3.0~12.7光子単位/ミリ秒の範囲に及んだ(平均=6.0±2.4 SD)。コントロール(左)眼でのフレア測定値は、研究の継続期間の間中、この範囲内のままであった。これらの測定値は、細隙灯顕微鏡検査によって行った前眼房フレア評価(眼の自然な静止状態において前眼房中のタンパク質密度を定量することにおけるレーザーフレア光度計測法の有用性を確認する)に適合した。全ての処置群において、処置した眼におけるフレア測定値に対する時間の有意な効果があった(F=2.16, p<0.0034)。このことは、介入関連炎症を定量することにおけるフレア光度計測法の有用性をさらに確認した(図23図24および図25を参照のこと)。ベースライン 対 4.5時間および24時間 対 48時間および168時間での処置した眼でのフレア測定値は、全ての処置群にわたって有意に異なった(F=2.16, p<0.0034; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=75)。コントロールの眼と処置した眼との間の差異は、全ての被験体にわたって全ての術後の試験時点で異なった(F=236.64, P<0.0001; Studentt Newman-Keuls検定, α=0.05, df=195)。
【0090】
第1の実験セットでは、超音波水晶体乳化吸引継続期間は、理想のパラメーターを精密にしていたので、処置群内で異なった。超音波水晶体乳化吸引時間が、重篤な炎症応答を引き起こしていることおよび超音波水晶体乳化吸引の低減が賛同されることが、最初の4回の手術処置で確立された。4.5時間および24時間の時点での、より短い継続期間(15~25秒)の超音波水晶体乳化吸引の群に対するより長い継続期間(45~55秒)の超音波水晶体乳化吸引の群の分析から、超音波水晶体乳化吸引継続時間に伴ってフレア測定値において統計的に有意な増加があることが明らかになった(F=4.42, p<0.0018; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=14; 図24を参照のこと)。このことから、前眼房損傷および炎症の程度を定量することにおける、レーザーフレア光度計測法の有用性が確認された。この差異は、48時間および1週間の時点まで解明された。
【0091】
高い超音波水晶体乳化吸引エネルギーを受けた被験体(これは、高フェニレフリン群およびトロピカミド群の各々において2匹のサルを含んだ)を排除して分析したところ、全ての時点で、トロピカミドコントロールと比較して、フェニレフリンのフレア測定値に対して処置効果がないことが明らかになった(Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=7)。
【0092】
第2の実験セットでは、群サイズが小さいにも拘わらず、中ケトロラク群および高ケトロラク群におけるフレア測定値の一致した減少傾向があった。BSSコントロール群 対
4.5時間の時点で有意性を達成した中濃度および高濃度のケトロラク群(これらの2つの処置群を合わせて分析に検出力を加える場合)において、フレア測定値間に統計的有
意差があった(F=5.17, P<0.0223; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=13; 図25を参照のこと)。高用量および中用量のケトロラク群におけるフレア測定値は、24時間および48時間の時点で、コントロール群と比較して低いままであったが、これらの差異は、分析の検出力を考慮すれば、高用量および中用量のケトロラク群が合わせて分析されようが別個に分析されようが、統計的有意に達しなかった。1週間では処置群のうちのいずれの間でも統計的有意差はなかったが、高濃度ケトロラク群は、同様の傾向を維持した。
【0093】
(結論)
アフリカミドリザル超音波水晶体乳化吸引モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する散瞳および炎症測定の定量を可能にした。これらの測定値のうち、映像瞳孔直径評価および前眼房フレア光度計測法は、評価した時点での処置効果に対して最も応答性であった。映像瞳孔データは、前眼房灌流液中でのフェニレフリンの術中の送達が、手術処置の間中維持される散瞳の急速な開始を生じることを実証した。得られた最大散瞳は、濃度依存性であり、超音波水晶体乳化吸引手術処置に十分な散瞳が、評価した全濃度で達成された。10μM以上の濃度によって、術前の局所的1% トロピカミド(白内障処置の標準ケア)によって得られたものを越える散瞳が生じた。フレア光度計測および角膜厚測定(pachymetry)の測定値は、前眼房灌流液へのフェニレフリンの添加と関連する前眼房炎症もしくは角膜浮腫の低減を示さなかった。
【0094】
映像瞳孔データは、前眼房灌流液中でのケトロラクの術中送達が、BSSのみで観察されたものとは実質的に異なる散瞳変化を生じないことを実証した。しかし、濃度30μMでのフェニレフリンを灌流液にいったん添加した後は、急速な拡張が起こった。このことは、フェニレフリンの術中送達の以前に実証された有用性を確認した。フレア光度計測の測定値は、手術直後の前眼房炎症に対して4.5時間でケトロラクの正の効果を示した。
【0095】
(実施例7:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の研究)
非GLP研究を、90μM PEおよび30μM KEを含む灌流溶液で行って、散瞳および炎症エンドポイントに対する、白内障手術の間の眼内灌流によって投与された場合の併用効果を評価した。この実験シリーズでは、14匹のサルを7匹の群に分け、BSSのみ 対 PEおよびKE併用を含むBSS灌流液の効力を確立するために研究した。効力エンドポイントは、散瞳および前眼房炎症の尺度としてのレーザーフレア光度計測法を含んだ。コントロール群には、超音波水晶体乳化吸引手術のアフリカミドリザルモデルを使用するためにムスカリン性散瞳薬であるトロピカミドを術前にさらに与えて十分な拡張を可能にした。
【0096】
(結果)
PE-KE併用で灌流した動物は、灌流の約60秒内に6.0~6.5mmの瞳孔拡張を達成した(図26を参照のこと)。これらの値は、トロピカミドでの術前処置後に得られたものに等しかった。前眼房灌流を開始して最初の1分以内での3.0~4.0mmの初期の瞳孔拡張の後に、トロピカミドコントロール群およびPE-KE処置群の両方で、瞳孔直径に対する時間の有意な効果を伴って(F=86.69, P<0.0001; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=12)それぞれ約2.5分および3.5分以内に、瞳孔直径がプラトーに達した(図1を参照のこと)。BSSのみでの灌流の20分前に局所的トロピカミドを受けたコントロール群で示された初期の拡張(0~2分)は、薬理学的効果でなかった可能性があり、灌流/吸引の流体力学的効果および/または角膜切開の作製を可能にするために誘導した粘弾性物質のクリアランスと関連する拡張を反映する。しかし、注目すべきは、トロピカミドコントロール群における初期のさらなる拡張は、処置の開始時に処置群より大きなベースライン拡張
から始まり(F=86.69, P<0.0001; 図26を参照のこと)、PE-KE処置群によって示されたものより小さな最大拡張を生じたことである。PE-KE媒介性瞳孔拡張は、前眼房灌流開始から90秒以内にトロピカミドの術前投与によって達成された拡張を越えた。コントロール群とPE-KEを受けている処置群との間の差異は、0:00分、3:30分、4:00分、4:30分、5:00分、5:30分、6:00分、8:00分、10:00分、12:00分、12:30分および13:00分の時点で、有意であった(それぞれ、F=25.08, p<0.003; F=5.61, p<0.0355; F=9.95, p<0.0083; F=14.71, p<0.0024; F=18.01, p<0.0011; F=9.93, p<0.0084; F=10.39, p<0.0073; F=14.77, p<0.0023;
F=14.77, p<0.0023; F=28.65, p<0.0002; F=20.51, p<0.0007; F=8.66, p<0.0134; F=5.48, p<0.0391; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=12; 図26を参照のこと)。
【0097】
観察された群の差異は、術中の散瞳の大きさにおよび術中の散瞳の長期化に対する、フェニレフリンおよびケトロラクを含むPE-KE灌流液の処置効果を確認した。初期の時点での2群間の差異は、群内変動性を反映してStudent Newman-Keuls判定基準によって有意ではなかったが、平均瞳孔直径で認められた傾向は、開始速度および散瞳効果の大きさの両方に対する処置効果を示唆する。より後の時点では、PE-KE処置群の中のいくらかの被験体での平均拡張は、この種の成体の眼において約10.5mmという散瞳の解剖学的限界(角膜縁の内径に対応する)に近づいた。
【0098】
ベースラインの術前前眼房フレア測定値は、両方の処置群において、手術した(右)眼で1.6~9.9光子単位/ミリ秒(平均=5.3±2.3)の範囲に及んだ。両方の処置群において、処置した眼のフレア測定値に対して時間の有意な効果があった。このことから、介入関連炎症を定量することにおいてフレア光度計測法の有用性が確認された(図27を参照のこと)。ベースライン 対 2時間、4.5時間、24時間、48時間および1週間での処置した眼のフレア測定値は、両方の処置群にわたって有意に異なっていた(F=4.94, p<0.0008; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=59)。
【0099】
PE-KE処置群は、トロピカミドコントロール群と比べて経時的により低い値のフレア測定値を有したが、それらは、いかなる時点でも統計的有意に達せず(F=3.32,
P<0.0935; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=12; 図27を参照のこと)、一部は、実験的介入に対する被験体応答において大きな変動性を反映した。1匹のPE-KE処置被験体は、レンズ除去を複雑にする、前眼房灌流の間のより制限された瞳孔拡張を示した。この動物を除いたフレア測定値の分析は、2時間、4.5時間、24時間および48時間の時点で、PE-KE処置群とトロピカミドコントロール群間の統計的有意差を明らかにする(F=9.74, P<0.0097; Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=11; 図28を参照のこと)。1週間では、処置群の間に統計的有意差はなかった。
【0100】
(結論)
上記アフリカミドリザル超音波水晶体乳化吸引モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する散瞳および炎症測定の定量を可能にした。これらの測定値のうち、映像瞳孔直径評価および前眼房フレア光度計測法は、評価した時点での処置効果に対して最も応答性であった。映像瞳孔データは、前眼房灌流液中のPE-KEの術中送達が急速な散瞳の開始を生じ、手術処置の間中散瞳が維持されることを実証した。得られた散瞳は、超音波水晶体
乳化吸引手術処置が灌流の最初の60秒以内に行われるのに十分であった。散瞳の程度は、術前の局所的1% トロピカミド(白内障処置の標準ケア)によって得られるものを越えていた。フレア光度計測法の測定値は、手術直後に前眼房炎症に対するPE-KEの正の効果を示唆する。
【0101】
(実施例8:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の用量応答研究)
この非GLP研究を、低濃度、中濃度および高濃度のPEおよびKEを含む灌流溶液をアフリカミドリザルに房内送達した後に、用量応答および散瞳のタイムコースを確立するために行った。PE-KE製剤は、20mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)中に3:1の固定比で45mM フェニレフリンおよび15mM ケトロラクを含んだ。さらに濃厚450mM フェニレフリンHCl(PE)製剤を、高用量群でフェニレフリン濃度を上昇させるために提供した。散瞳のタイムコースを、4匹のサルで低濃度のPEおよびKE(90:30μM)灌流溶液を、4匹のサルにおいて中濃度(268:89μM)灌流溶液を、および4匹のサルにおいて高濃度(1165:89μM)灌流溶液を、房内投与した後に映像によって評価した。全ての房内投与の容積は、150μLであり、前眼房へのシリンジ容積の射出を約5秒間にわたって行った。
【0102】
低濃度(PE:KEは90:30μM)を混合するために、PE-KE薬物組成物の1本のバイアルから1.0mLを引き出し、500mL BSS灌流瓶の中に注入した。中濃度(PE:KEは268:89μM)に関してはPE-KE薬物組成物の3本のバイアルを、各バイアルから1.0mLを引き出して使用し、500mL BSS灌流瓶に注入した。高濃度群(PE:KEは1165:89μM)に関しては、さらなるフェニレフリンHClをBSS溶液中のPE:KEに添加した。
【0103】
(結果)
房内PE/KE灌流溶液を注射したサルは、灌流の60秒以内に約6~7mmの瞳孔拡張を達成した。図29に示されるように、初期の急速な瞳孔拡張の後に、瞳孔直径は、全ての処置群の間で瞳孔直径に対する時間の有意な効果を伴って約1分の時点でプラトーに達した(F=64.33, p<0.0001)。低用量群(90:30μM)と高用量群(1165:89μM)との間の差異は、1:30分、3:00分および3:30分の時点で統計的に有意であった(Student Newman-Keuls検定, α=0.05, df=9)。
【0104】
(結論)
アフリカミドリザル散瞳モデルは、ヒト臨床エンドポイントに関連する瞳孔応答の定量を可能にした。映像瞳孔データは、前眼房へのPE-KEの房内送達が、急速な散瞳の開始を生じ、これが映像記録が行われた10分の期間の間中維持されることが実証された。得られた散瞳は、超音波水晶体乳化吸引手術処置が投与後の最初の60秒以内に行われるために十分であった。散瞳の程度は、局所的1% トロピカミドの術前送達(白内障処置の標準ケア)による以前の効力研究のコントロールアームで得られたもの(平均瞳孔直径5.9mm)より大きかった。
【0105】
(実施例9:超音波水晶体乳化吸引手術モデルにおけるフェニレフリンおよびケトロラク併用の安全性研究)
非臨床的GLP毒性研究を、アフリカミドリザルで行った。この研究では、12匹の雄性サルおよび12匹の雌性サルに、超音波水晶体乳化吸引手術とレンズ置換を受けさせ、2週間回復させた。前眼房および関連する眼の構造全体にわたるPE-KE灌流溶液の連続灌流を、手術の間に行った。これは、この生成物の意図した投与経路を代表する。3種の濃度を評価した:低濃度群において720μM PEと90μM KE(720:90
μM)、中濃度群において2160μM PEと270μM KE(2160:270μM)、および高濃度群において7200μM PEと900μM KE(7200:900μM)。
【0106】
別個のコントロール群を同様に評価した。等しい数の雄性動物および雌性動物を、釣り合った平均体重を達成するために体重ランクに基づいて割り当てて、各群に分配した。全ての動物に、0日目に眼内レンズを置き換える手術処置を受けさせた。
【0107】
(結果)
手術処置を十分に許容した全ての動物は、無事な回復を有し、予定された屠殺および剖検まで生き残った。処置関連効果は、呼吸および心血管の観察および全ての臨床検査パラメーターに対して観察されなかった。
【0108】
各PE/KE灌流溶液の150μLの初期の房内送達は、30秒以内に急速な瞳孔拡張を生じ、拡張は、6.76±0.15~7.29±0.15mm(平均±SD)へと用量依存性様式で増大した。BSSのみの150μlの房内送達の30秒後に、トロピカミドコントロール群の瞳孔直径は、5.18±0.18mmであった。
【0109】
低濃度処置群は、4.5時間および14日でトロピカミドコントロール群と比較してより低いフレア測定値を有したが、それらは、いかなる時点でも統計的有意性に達しなかった一方で、高濃度処置群におけるフレア応答は、全ての時点でコントロール群のものにほぼ等しかった。中濃度処置群は、全ての術後時点でトロピカミドコントロール、低濃度、および高濃度と比較してより高いフレア測定値を有し、2時間、4.5時間、および24時間で有意に達した。これらの知見は、中濃度処置群におけるより大きな手術外傷に対して二次的であると考えられる。フレアに対する濃度依存性効果は全く認められなかった。2週間では、処置群の間で統計的有意差はなかった。
【0110】
コントロール、低濃度、および高濃度処置群では、超音波水晶体乳化吸引手術後に眼内圧が低下したが、ベースラインからの差異は有意に達しなかった。4.5時間の時点で、中濃度処置群の眼内圧は、他の処置群におけるより有意に高かったが、ベースラインからの有意差はなかった(not different than baseline)。全体的な傾向としては、術後眼内圧の低下があった。
【0111】
瞳孔、角膜、レンズ、および虹彩のベースラインの臨床評価は、全ての動物の手術した(右)眼および手術しない(左)眼において正常範囲内であった。瞳孔直径は、24時間の時点でベースラインに戻った。このことは、残存する処置関連の散瞳効果もしくは縮瞳効果が最小であったことを示していた。
【0112】
(実施例10:臨床研究)
フェーズ2bヒト臨床試験は、本発明の処方1に従って製剤化したケトロラクおよびフェニレフリン併用薬物組成物を、術中の散瞳(瞳孔拡張)の維持ならびに白内障および他のレンズ置換手術から生じる術後疼痛および過敏の低減に対するその効果に関して評価した。併用薬物組成物を、眼内手術処置の間の眼内投与の前に、平衡塩類溶液灌流キャリア中で希釈した。
【0113】
主題のフェーズ2b研究は、無作為化並行群間比較のビヒクル対照要因計画試験(randomized, parallel group, vehicle-controlled, factorial design study)であり、同軸超音波水晶体乳化吸引プロセスとアクリルレンズ挿入を使用して、一側性の白内障摘出とレンズ置換(CELR)を受けている被験体において、フェニレフリン(PE)、ケトロラク(KE
)およびPEとKEの両方を含む併用薬物組成物を比較するために行った。試験灌流溶液の投与を、二重盲検様式で行った。上記研究は、4アーム完全要因計画において、平衡塩類溶液(BSS)中で希釈して投与した場合の、2種の活性薬学的成分(PEおよびKE, 単独でおよび併用して)の、散瞳の維持および術後疼痛低減に対する寄与を評価した。上記研究はまた、術後炎症に対する併用薬物組成物、PE、およびKEの効果を調査した。被験体を、以下の4つの処置アームのうちの1つに、1:1:1:1様式で無作為化した:
a.BSSビヒクル
b.BSS中483μM PE
c.BSS中89μM KE
d.BSS中483μM PEおよび89μM KEを含む併用薬物組成物
【0114】
この研究の全ての被験体に、術前の散瞳薬および麻酔薬を与えた。上記4群の各々に、CELR手術処置の間に眼の前眼房の単回の灌流として、この研究では平均8分間の曝露で、それぞれの灌流処置を施した。さらに、上記処置の最後に、前眼房を灌流処置で満たした。外科的ベースライン(外科的切開の直前)から手術処置の最後(創傷閉鎖)までの経時的な瞳孔直径変化を、手術の日における術後疼痛であるときに測定し、ならびに、疼痛レスキュー薬物療法をとる前に、視覚的アナログスケール(VAS)によって、2時間、4時間、6時間、8時間および10~12時間に、および患者によって記録された他の時間測定に測定した。
【0115】
この223名の患者のフェーズ2b臨床試験では、併用薬物組成物で処置した被験体は、BSS群もしくはKE群のいずれと比較しても、白内障処置の間中ずっと、統計的に有意な(p<0.0001)かつ臨床的に有意義な散瞳の維持を示した。散瞳の維持は、眼科医が瞳孔を通して手術するとことを考慮すれば、安全かつ上手くレンズ交換を行うために重要である。散瞳が上記処置の間中維持されなければ、眼内の構造体を損傷するリスクが増大し、必要とされる手術時間をしばしば長引かせる。手術の間の瞳孔サイズの任意の低減は、手術手技を妨げる。この研究では、平均瞳孔直径は、切開の時に8.3mmであった。2.5mm以上の低減(「極度の収縮」)は、処置に対して極度の潜在的な影響とともに、直径のうちの30%および平均瞳孔面積のうちの52%が失われることを表す。予測外なことには、この研究から、併用薬物組成物群の被験体のうちのわずか4%と比較して、BSS群の被験体のうちの21%およびKE群の被験体のうちの21%は、この極度の収縮を経験することを実証した。
【0116】
術中の合併症は、レンズ交換手術の間に瞳孔直径が6mm未満であるときに増大する。瞳孔収縮のこのレベルを経験した研究被験体の特性を同定するための、術中の瞳孔直径の治療を意図した集団に基づく(intent-to-treat basis)での分類別分析(categorical analysis)。この研究において、併用薬物組成物は、他の3つの処置アームの各々と比較した場合、この瞳孔収縮の程度、すなわち6mm未満の直径への縮瞳を防止することにおいて統計的に有意に優れていた(表XX)。
【表5】
【0117】
瞳孔直径の臨床的に有意な減少は、処置関連合併症(後嚢断裂、レンズ断片の残留および硝子体漏出が挙げられる)の増大と関連している。これらの知見は、フェニレフリンおよびケトロラクが臨床的に意義深い縮瞳を防止することにおいて各々寄与しかつ相乗的に作用することを実証する。
【0118】
この知見は驚くべきことである。なぜなら、フェニレフリンは強力な散瞳薬であり、縮瞳のみを阻害すると予測されているからである。驚くべきことに、ケトロラクはまた、フェニレフリンの効果に加えて抗縮瞳効果を提供した。
【0119】
さらに、併用薬物組成物はまた、PE群(p=0.0089)もしくはBSS群(p=0.0418)のいずれかと比較して術後初期(術後10~12時間)の疼痛を有意に低減した。驚くべきことに、併用薬物組成物はまた、中程度および重度の疼痛の訴えの頻度を減少させた(BSS処置被験体では、2.5倍以上の訴え)。薬物組成物は、安全でかつこの研究で十分許容された。
【0120】
この研究は、上記で同定された出願において特許請求された本発明の組成物および使用が驚くべき程度の極度の瞳孔収縮を妨げ、手術の間に試験薬物に曝したほんの数分後に手術後最大10~12時間まで中程度および重度の術後疼痛の予測外の低減を生じることを実証する。
【0121】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、図示および例証によって幾分詳細に記載されてきたものの、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の趣旨からも範囲からも逸脱することなく本発明に対して行われ得ることは、本発明の教示に鑑みて、当業者に容易に明らかである。
【0122】
本発明の好ましい実施形態においては、例えば、以下が提供される。
【0123】
(項1)
水性キャリア中にフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系を含む、滅菌の液体薬学的製剤であって、ここで該製剤は、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有であり、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合に、少なくとも6ヶ月間安定である、薬学的製剤。
(項2)
前記緩衝系は、リン酸ナトリウム緩衝系およびクエン酸ナトリウム緩衝系から選択される、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項3)
前記緩衝系は、クエン酸ナトリウム緩衝系を含む、上記項2に記載の薬学的製剤。
(項4)
前記緩衝系は、約20mM クエン酸ナトリウム緩衝系を含む、上記項3に記載の薬学的
製剤。
(項5)
前記薬学的製剤は、pH5.8~6.8を有する、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項6)
前記薬学的製剤は、pH5.8~6.8を有する、上記項4に記載の薬学的製剤。
(項7)
前記製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項8)
前記製剤は、単回使用容器内に含まれる、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項9)
前記製剤は、46~76mM フェニレフリンおよび8.5~14mM ケトロラクを含む、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項10)
前記製剤は、約60.75mM フェニレフリンおよび約11.25mM ケトロラクを含む、上記項9に記載の薬学的製剤。
(項11)
前記製剤が注入される眼内灌流キャリアをさらに含み、ここで注入後に、前記フェニレフリンは、濃度30~720μMで存在し、前記ケトロラクは、濃度44~134μMで存在する、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項12)
前記製剤が注入される眼内灌流キャリアをさらに含み、ここで注入後に、前記フェニレフリンは、濃度240~720μMで存在し、前記ケトロラクは、濃度10~270μMで存在する、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項13)
前記フェニレフリンおよびケトロラクは、モル比1:1~13:1 フェニレフリン:ケトロラクで含まれる、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項14)
前記フェニレフリンおよびケトロラクは、モル比 3:1~10:1 フェニレフリン:ケトロラクで含まれる、上記項1に記載の薬学的製剤。
(項15)
水性キャリア中のフェニレフリン、ケトロラクおよび緩衝系から本質的になる滅菌の液体薬学的製剤であって、ここで該製剤は、5±3℃~25±2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも6ヶ月間安定である、薬学的製剤。
(項16)
前記緩衝系は、クエン酸ナトリウム緩衝系を含む、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項17)
前記薬学的製剤は、pH5.8~6.8を有する、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項18)
前記製剤は、5±3℃~25+2℃の温度で貯蔵した場合、少なくとも24ヶ月の期間にわたって安定である、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項19)
前記製剤は、単回使用容器内に含まれる、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項20)
前記製剤は、約60.75mM フェニレフリンおよび約11.25mM ケトロラクを含む、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項21)
前記製剤が注入される灌流キャリアをさらに含み、ここで注入後に、前記フェニレフリンは、濃度240~720μMで存在し、前記ケトロラクは、濃度10~270μMで存在する、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項22)
前記フェニレフリンおよびケトロラクは、モル比 3:1~10:1 フェニレフリン:ケトロラクで含まれる、上記項15に記載の薬学的製剤。
(項23)
注射用の単回使用容器にパッケージされた、フェニレフリン、ケトロラク、緩衝系および水性キャリアを含む、注射用の滅菌薬学的液体投与形態。
(項24)
前記容器は、注射物が取り出され得るクロージャーで閉じられたバイアルおよびプレフィルドシリンジから選択される、上記項23に記載の投与形態。
(項25)
フェニレフリン、ケトロラク、緩衝系および眼内灌流キャリアを含む滅菌の液体薬学的製剤であって、ここで該フェニレフリンは、濃度30~720μMで含まれ、該ケトロラクは、濃度10~270μMで含まれる、薬学的製剤。
(項26)
前記フェニレフリンは、濃度90~720μMで含まれ、前記ケトロラクは、濃度44~134μMで含まれる、上記項25に記載の薬学的製剤。
(項27)
前記製剤は、保存剤非含有かつ抗酸化剤非含有である、上記項25に記載の薬学的製剤。
図1
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図3
図4
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【外国語明細書】