(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041829
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】セリンプロテアーゼ分子および療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230316BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20230316BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230316BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230316BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230316BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230316BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230316BHJP
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C12N 1/15 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230316BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230316BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230316BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230316BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230316BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230316BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230316BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20230316BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230316BHJP
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A61K 48/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
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C12N15/13
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C07K14/47
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A61P43/00 111
A61P43/00 123
A61P43/00 105
A61P37/02
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A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K47/65
A61K47/64
A61K45/00
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023013891
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2021215386の分割
【原出願日】2013-10-04
(31)【優先権主張番号】61/709,763
(32)【優先日】2012-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/762,173
(32)【優先日】2013-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/762,216
(32)【優先日】2013-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505098937
【氏名又は名称】リサーチ ディベロップメント ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジー. ローゼンブルム
(72)【発明者】
【氏名】カーリッド アマナリ モハメダリ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス エイチ. チェン
(57)【要約】
【課題】細胞を標的とするセリンプロテアーゼ構築物を提供すること。
【解決手段】そのような構築物は、増殖性疾患(例えばがん)の細胞を処置するためなどの、標的化細胞死滅のための方法において使用することができる。いくつかの態様では、改善された安定性および細胞毒性を示す、グランザイムBポリペプチドなどの組換えセリンプロテアーゼが提供される。ラパチニブまたはトラスツズマブ耐性がんを処置するための方法および組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の組成物等。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年10月4日に出願された米国仮特許出願第61/709,763号;2013年2月7日に出願された同第61/762,173号;および2013年2月7日に出願された同第61/762,216号(これらの各々は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
配列表の組み込み
68KB(Microsoft Windows(登録商標)で測定)であり、2013年10月4日に作成されたファイル名「CLFR.P0395WO_ST25.txt」のファイルに含まれる配列表は、本明細書と共に電子的に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般に、分子生物学および組換えタンパク質産生の分野に関する。より詳細には、本発明は、改変されたセリンプロテアーゼポリペプチド、例えば、グランザイムなど、およびそのようなポリペプチドを含む細胞標的化構築物に関する。
【背景技術】
【0004】
標的化治療薬(例えば、がんに適用するための)の成功裏の開発は、標的細胞に特異的なリガンドおよび抗原の同定、それらの成分を特異的に標的化することができる分子の生成、ならびに、最終的に、標的細胞を死滅させるための毒性が強い分子の使用に依存している。抗体と小さな毒性の薬物または放射性同位元素とで構成される免疫結合体がin vitro、動物モデルにおいて首尾よく試験されており、臨床の場で活性が実証されている。毒素成分として小分子を使用することに加えて、いくつもの高度に細胞傷害性のタンパク質成分、例えば、ジフテリア毒素、リシンA-鎖、シュードモナス外毒素、およびゲロニン(rGel)などが標的化療法のために使用されている。しかし、毛細血管漏出症候群、免疫原性および偶発的毒性(標的でない細胞に対する)などの問題により、特に、長期間または慢性の適用に関する成功裏の療法の実行が依然として限定されている。したがって、高度に特異的かつ高度に活性な毒素分子およびそのような分子を含む細胞標的化構築物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
N末端にIIGG、IVGGまたはILGGを有する短縮型セリンプロテアーゼと融合した、選択されたプロテアーゼによる切断を受けやすい切断部位を含む組換えポリペプチドであって、前記選択されたプロテアーゼによる前記ポリペプチドの切断の際に、N末端にイソロイシンを有する前記短縮型セリンプロテアーゼが前記ポリペプチドから放出される、組換えポリペプチド。
(項目2)
前記プロテアーゼ切断部位がカスパーゼ切断配列、フューリン切断配列、グランザイムB切断配列または第Xa因子切断配列である、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)
前記プロテアーゼ切断配列がカスパーゼ-3切断配列である、項目2に記載のポリペプチド。
(項目4)
前記切断部位に対してN末端側に位置する細胞結合性部分をさらに含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目5)
前記細胞結合性部分が、GP240、5T4、HER1、HER2、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、Fn14またはIGF-1Rに結合する、項目4に記載のポリペプチド。
(項目6)
前記細胞結合性部分が、VEGF、BLyS、抗体または前述のいずれかの細胞結合性部分である、項目4に記載のポリペプチド。
(項目7)
前記細胞結合性部分が抗体重鎖または抗体軽鎖である、項目6に記載のポリペプチド。(項目8)
前記抗体重鎖または前記抗体軽鎖がヒトIgG抗体重鎖またはヒトIgG抗体軽鎖である、項目7に記載のポリペプチド。
(項目9)
前記セリンプロテアーゼがグランザイムである、項目1に記載のポリペプチド。
(項目10)
前記グランザイムが、配列番号1と少なくとも80%同一のグランザイムB(GrB)である、項目9に記載のポリペプチド。
(項目11)
前記選択されたプロテアーゼにより切断された際に生じる前記GrBポリペプチドがアミノ末端に配列IIGGHEAK(配列番号27)を含む、項目10に記載のポリペプチド。
(項目12)
配列YVDEVDIIGGHEAK(配列番号26);RVRRIIGGHEAK(配列番号29);RVRRIIGGHEAK(配列番号30);(I/A)(E/D)GRIIGGHEAK(配列番号31);YEVDIIGGHEAK(配列番号32);WEHDIIGGHEAK(配列番号33);DVADIIGGHEAK(配列番号34);DEHDIIGGHEAK(配列番号35);DEVDIIGGHEAK(配列番号36);DMQDIIGGHEAK(配列番号37);LEVDIIGGHEAK(配列番号38);LEHDIIGGHEAK(配列番号39);VEIDIIGGHEAK(配列番号40);VEHDIIGGHEAK(配列番号41);IETDIIGGHEAK(配列番号42);LETDIIGGHEAK(配列番号43)またはIEADIIGGHEAK(配列番号44)を含む、項目11に記載のポリペプチド。
(項目13)
配列YVDEVDIIGGHEAK(配列番号26)を含む、項目12に記載のポリペプチド。
(項目14)
細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目15)
前記GrBコード配列が、以下の特徴:
(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(b)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(c)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(d)Arg96に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(e)Arg100に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(f)Arg102に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(g)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(h)Arg201に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(i)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(j)Lys221に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(k)Lys222に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(l)Lys225に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;または
(m)Arg226に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失
の1つまたは複数を含む、項目10に記載のポリペプチド。
(項目16)
前記GrBコード配列が、Lys27およびArg28に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、項目10に記載のポリペプチド。
(項目17)
Lys27およびArg28に対応する位置における前記アミノ酸置換がK27EまたはK27LおよびR28Aである、項目16に記載のポリペプチド。
(項目18)
前記GrBコード配列が、
82PKN
84に対応する位置において置換された配列PVPNを含む、項目10に記載のポリペプチド。
(項目19)
ヒト抗体重鎖およびヒト抗体軽鎖を含む抗体標的化部分であって、前記抗体軽鎖、前記抗体重鎖またはその両方が、前記抗体軽鎖および/または前記抗体重鎖に対してC末端側に位置する短縮型セリンプロテアーゼを含む、抗体標的化部分。
(項目20)
前記短縮型セリンプロテアーゼが、項目10から18までのいずれか一項に記載のGrBポリペプチドである、項目19に記載の抗体標的化剤。
(項目21)
前記抗体がヒトIgGである、項目19に記載の抗体標的化剤。
(項目22)
前記抗体がヒトIgG1である、項目21に記載の抗体標的化剤。
(項目23)
血清安定性のあるGrBポリペプチドを提供する方法であって、項目10から18までのいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを得るステップを含む、方法。
(項目24)
配列番号1と少なくとも80%同一なグランザイムB(GrB)コード配列を含む組換えポリペプチドであって、前記GrBコード配列が、以下の特徴:
(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(b)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(c)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(d)Arg96に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(e)Arg100に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(f)Arg102に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(g)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(h)Arg201に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(i)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(j)Lys221に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(k)Lys222に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;
(l)Lys225に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;または
(m)Arg226に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失
の1つまたは複数を含む、組換えポリペプチド。
(項目25)
Cysを含むアミノ酸配列をさらに含み、前記アミノ酸配列が前記GrBコード配列に対してC末端側に位置する、項目24に記載のポリペプチド。
(項目26)
前記GrBコード配列に対してC末端側に位置する配列SSCSGSA(配列番号12)をさらに含む、項目25に記載のポリペプチド。
(項目27)
前記GrBコード配列が、前記特徴のうちの2つ、3つ、4つまたは5つを含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目28)
Asp37に対応する位置に極性側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目29)
Asp37に対応する位置におけるAsn置換を含む、項目28に記載のポリペプチド。
(項目30)
Asp150に対応する位置に極性側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目31)
Asp150に対応する位置におけるAsn置換を含む、項目30に記載のポリペプチド。
(項目32)
Asn51に対応する位置におけるAlaまたはSer置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目33)
Asn84に対応する位置におけるAlaまたはSer置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目34)
Cys210に対応する位置におけるAla置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目35)
Arg96に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目36)
Arg100に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目37)
Arg102に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目38)
Arg201に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目39)
Lys221に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目40)
Lys222に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目41)
Lys225に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目42)
Arg226に対応する位置に極性または正に荷電した側鎖を有する残基のアミノ酸置換を含む、項目24に記載のポリペプチド。
(項目43)
細胞結合性部分と結合体化または融合している、項目24に記載のポリペプチド。
(項目44)
前記細胞結合性部分とチオエステル連結によって結合体化している、項目43に記載のポリペプチド。
(項目45)
前記GrBコード配列に対してC末端側に位置する細胞結合性部分と融合している、項目24に記載のポリペプチド。
(項目46)
前記細胞結合性部分がVEGF、BLyS、抗体または前述のいずれかの細胞結合性部分である、項目43に記載のポリペプチド。
(項目47)
前記抗体が、モノクローナル、キメラ抗体、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fv、または単鎖Fv(scFv)抗体である、項目46に記載のポリペプチド。
(項目48)
前記抗体がヒト抗体、ヒト化抗体または脱免疫化抗体である、項目46に記載のポリペプチド。
(項目49)
前記抗体が、15A8抗体、ZME-018抗体、ScFvMEL抗体、セツキシマブ抗体またはトラスツズマブ抗体である、項目46に記載のポリペプチド。
(項目50)
前記細胞結合性部分ががん細胞において発現されるタンパク質、炭水化物または脂質に結合する、項目43に記載のポリペプチド。
(項目51)
前記細胞結合性部分が、GP240、5T4、HER1、HER2、CD-33、CD-38、flt1、Flk-1、CEA、FGFR3、IGFBP2またはIGF-1Rに結合する、項目43に記載のポリペプチド。
(項目52)
前記ポリペプチドまたは前記細胞結合性部分が画像化剤とさらに結合体化している、項目43に記載のポリペプチド。
(項目53)
(a)配列番号1と少なくとも80%同一な組換えグランザイムB(GrB)ポリペプチド、
(b)細胞透過性ペプチド(CPP)、および
(c)細胞標的化ポリペプチド
を含む組換えポリペプチドであって、前記CPPが前記GrBポリペプチドと前記細胞標的化ポリペプチドの間に位置するか、または前記CPPが前記細胞標的化ポリペプチドに対してC末端側に位置する、組換えポリペプチド。
(項目54)
前記CPPがT1、T2、INF7または26である、項目53に記載の組換えポリペプチド。
(項目55)
前記細胞標的化ポリペプチドがZMEまたは4D5である、項目53に記載の組換えポリペプチド
(項目56)
N末端からC末端までに、前記GrBポリペプチド、第1のリンカー、T1またはINF7 CPP、第2のリンカーおよびZME抗体を含む、項目53に記載の組換えポリペプチド。
(項目57)
N末端からC末端までに、前記GrBポリペプチド、第1のリンカー、4D5抗体、第2のリンカーおよび26 CPPを含む、項目53に記載の組換えポリペプチド。
(項目58)
(a)細胞標的化scFv抗体ドメイン、
(b)抗体重鎖定常(Fc)ドメイン、および
(c)短縮型セリンプロテアーゼ
を含む細胞標的化構築物。
(項目59)
前記ポリペプチドが、NからC末端までに、(c)短縮型セリンプロテアーゼ、(b)Fcドメイン、および(a)scFvドメインを含む、項目58に記載の細胞標的化構築物。
(項目60)
前記ポリペプチドが、NからC末端までに、(a)scFvドメイン、(b)Fcドメイン、(d)プロテアーゼ切断部位を含むペプチドおよび(c)短縮型セリンプロテアーゼを含む、項目58に記載の細胞標的化構築物。
(項目61)
前記短縮型セリンプロテアーゼが配列番号1と少なくとも80%同一なグランザイムB(GrB)ポリペプチドである、項目58に記載の細胞標的化構築物。
(項目62)
前記プロテアーゼにより切断された際に生じる前記GrBポリペプチドが、アミノ末端に配列IIGGHEAK(配列番号27)を含む、項目61に記載の細胞標的化構築物。(項目63)
前記プロテアーゼ切断部位がカスパーゼ切断配列、フューリン切断配列、グランザイムB切断配列または第Xa因子切断配列である、項目60に記載の細胞標的化構築物。
(項目64)
前記ポリペプチドが、配列YVDEVDIIGGHEAK(配列番号26);RVRRIIGGHEAK(配列番号29);RVRRIIGGHEAK(配列番号30);(I/A)(E/D)GRIIGGHEAK(配列番号31);YEVDIIGGHEAK(配列番号32);WEHDIIGGHEAK(配列番号33);DVADIIGGHEAK(配列番号34);DEHDIIGGHEAK(配列番号35);DEVDIIGGHEAK(配列番号36);DMQDIIGGHEAK(配列番号37);LEVDIIGGHEAK(配列番号38);LEHDIIGGHEAK(配列番号39);VEIDIIGGHEAK(配列番号40);VEHDIIGGHEAK(配列番号41);IETDIIGGHEAK(配列番号42);LETDIIGGHEAK(配列番号43)またはIEADIIGGHEAK(配列番号44)を含む、項目61に記載の細胞標的化構築物。
(項目65)
前記プロテアーゼ切断部位がカスパーゼ-3切断配列である、項目60に記載の細胞標的化構築物。
(項目66)
前記ポリペプチドが配列YVDEVDIIGGHEAK(配列番号26)を含む、項目61に記載の細胞標的化構築物。
(項目67)
前記FcドメインがヒトIgG Fcドメインである、項目58に記載の細胞標的化構築物。
(項目68)
前記FcドメインがヒトIgG1 Fcドメインである、項目67に記載の細胞標的化構築物。
(項目69)
前記scFvドメインが、GP240、5T4、HER1、HER2、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、Fn14またはIGF-1Rに結合する、項目69に記載の細胞標的化構築物。
(項目70)
前記scFvドメインがFn14に結合する、項目69に記載の細胞標的化構築物。
(項目71)
前記ポリペプチドが、配列番号45と少なくとも90%同一な配列を含む、項目70に記載の細胞標的化構築物。
(項目72)
組換えGrBが、項目24に記載の配列を含む、項目61に記載の細胞標的化構築物。(項目73)
前記GrBコード配列が、Lys27およびArg28に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、項目61に記載の細胞標的化構築物。
(項目74)
Lys27およびArg28に対応する位置における前記アミノ酸置換がK27EまたはK27LおよびR28Aである、項目73に記載の細胞標的化構築物。
(項目75)
前記GrBコード配列が、
82PKN
84に対応する位置において置換された配列PVPNを含む、項目58に記載の細胞標的化構築物。
(項目76)
項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物を薬学的に許容される担体中に含む組成物。
(項目77)
項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド分子。
(項目78)
項目77に記載のポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞。
(項目79)
項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物を発現する、項目78に記載の宿主細胞。
(項目80)
哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、繊毛虫細胞または昆虫細胞である、項目78に記載の宿主細胞。
(項目81)
ポリペプチドを製造する方法であって、
(a)項目77に記載のポリヌクレオチド分子を、コードされるポリペプチドを産生する条件下で細胞において発現させるステップ、および
(b)前記ポリペプチドを前記細胞から精製するステップ
を含む方法。
(項目82)
細胞増殖性疾患を有する被験体を処置するための、項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物の使用であって、前記ポリペプチドが細胞標的化部分と結合体化している、使用。
(項目83)
前記細胞増殖性疾患が自己免疫疾患である、項目82に記載の使用。
(項目84)
前記細胞増殖性疾患ががんまたは前がん状態である、項目82に記載の使用。
(項目85)
前記がんが、肺がん、乳がん、脳がん、前立腺がん、脾臓がん、膵臓がん、子宮頸部がん、卵巣がん、頭頸部がん、食道がん、肝臓がん、皮膚がん、腎臓がん、白血病、骨がん、精巣がん、結腸がん、または膀胱がんである、項目84に記載の使用。
(項目86)
少なくとも第2の抗がん療法を前記被験体に施すことをさらに含む、項目84に記載の使用。
(項目87)
前記第2の抗がん療法が、外科的療法、化学療法、放射線治療、遺伝子療法または免疫療法である、項目86に記載の使用。
(項目88)
細胞増殖性疾患を処置するための医薬の製造において使用するための、項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物。
(項目89)
細菌またはウイルス感染症を処置するための、項目1から57までのいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物の使用であって、前記ポリペプチドが細胞標的化部分と結合体化している、使用。
(項目90)
項目1から57までのいずれかに記載のポリペプチドまたは項目58から75までのいずれか一項に記載の細胞標的化構築物を含む、被験体の処置において使用するための組成物。
(項目91)
前記ポリペプチドが細胞結合性部分と結合体化している、項目90に記載の組成物。
(項目92)
(a)組換えグランザイムB(GrB)コード配列、
(b)標的化ポリペプチド、および
(c)配列番号22の配列を有する細胞透過性ペプチド(CPP)
を含む標的化剤。
(項目93)
前記標的化ポリペプチドが、Her2/neuに結合する、項目92に記載の標的化剤。
(項目94)
前記標的化ポリペプチドがscFv 4D5である、項目93に記載の標的化剤。
(項目95)
N末端からC末端までに、(a)組換えGrBコード配列、(i)第1のリンカーペプチド、(b)標的化ポリペプチド、(ii)第2のリンカーペプチド、および(c)配列番号22の配列を有する細胞透過性ペプチド(CPP)を含む、項目92に記載の標的化剤。
(項目96)
前記第1のリンカーペプチドまたは前記第2のリンカーペプチドが、配列番号13の配列を含む、項目95に記載の標的化剤。
(項目97)
前記組換えGrBが、項目24に記載の配列を含む、項目92に記載の標的化剤。
(項目98)
配列番号24と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目92に記載の標的化剤。
(項目99)
配列番号24のアミノ酸配列を含む、項目98に記載の標的化剤。
(項目100)
ラパチニブ耐性がんまたはトラスツズマブ耐性がんを有する被験体を処置するための、Her2/neuを標的とするグランザイム治療薬の使用。
(項目101)
前記被験体が乳がんを有する、項目100に記載の使用。
(項目102)
前記被験体が、ラパチニブまたはトラスツズマブで以前に処置されている、項目100に記載の使用。
(項目103)
前記被験体がラパチニブ耐性がんを有する、項目100に記載の使用。
(項目104)
前記被験体がトラスツズマブ耐性がんを有する、項目100に記載の使用。
(項目105)
前記Her2/neuを標的とするグランザイム治療薬が、細胞透過性ペプチド(CPP)を含む、項目100に記載の使用。
(項目106)
前記Her2/neuを標的とするグランザイム治療薬が、項目92から99までのいずれか一項に記載の標的化剤である、項目100に記載の使用。
(項目107)
ラパチニブ耐性がんまたはトラスツズマブ耐性がんを有する被験体を処置するための医薬の作製において使用するための、Her2/neuを標的とするグランザイム治療薬。
本発明のある特定の実施形態は、短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドおよびそのようなセリンプロテアーゼを含む融合タンパク質に関する。本明細書で使用される場合、短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドとは、IIGG配列、IVGG配列またはILGG配列に対してN末端側に位置するリーダー配列が除去されるまたは異種配列で置き換えられるように短縮された、操作されたセリンプロテアーゼを指す。そのような短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドの例は
図1に示されている。いくつかの態様では、短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドを細胞標的化部分と結合体化または融合して、細胞を標的とする細胞傷害性構築物をもたらす。そのような構築物は、例えば、がんなどの細胞増殖性疾患の処置において使用することができる。
【0006】
したがって、ある特定の実施形態では、選択されたプロテアーゼによって切断されると、N末端にイソロイシンを有する短縮型セリンプロテアーゼが放出されるような、N末端にIIGG、IVGGまたはILGGを有する短縮型セリンプロテアーゼと融合した、選択されたプロテアーゼによる切断を受けやすい切断部位を含む組換えポリペプチドが提供される。いくつかの態様では、プロテアーゼ切断部位は、細胞内プロテアーゼまたは細胞外プロテアーゼのためのものである。例えば、切断部位は、カスパーゼ、フューリン、グランザイムBまたは第Xa因子の切断配列であってよい。例えば、選択されたプロテアーゼ切断部位は、カスパーゼ1~10の切断部位(例えば、YEVD、WEHD、DVAD、DEHD、DEVD、DMQD、LEVD、LEHD、VEID、VEHD、IETD、LETDまたはIEAD)、フューリン切断部位(RVRR)、グランザイムB切断部位(IEPD)または第Xa因子切断部位((I/A)(E/D)GR;配列番号28)であってよい。さらに、好ましい態様では、組換えポリペプチドは、切断部位に対してN末端側に位置する細胞結合性部分をさらに含む。例えば、細胞結合性部分は、抗体またはリガンド(例えば、VEGFまたはBLyS)、例えば、GP240、5T4、HER1、HER2、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、Fn14またはIGF-1Rに結合する部分などであってよい。
【0007】
一部の特定の態様では、当該実施形態に従って使用するための短縮型セリンプロテアーゼは、グランザイムB(配列番号1)、グランザイムA(配列番号46)、グランザイムH(配列番号47)、グランザイムK(配列番号48)、グランザイムM(配列番号49)、カテプシンG(配列番号50)、キマーゼ(配列番号51)、ミエロブラスチン(配列番号52)、カリクレイン-14(配列番号53)、補体因子D(配列番号54)、PRSS3タンパク質(配列番号55)、トリプシン-1(配列番号56)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57)またはPRSSL1タンパク質(配列番号58)と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である配列を含む。ある特定の態様では、短縮型セリンプロテアーゼは、ヒトグランザイム、例えば、グランザイムB(GrB)などと少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である。
【0008】
当該実施形態のさらに別の態様では、当該実施形態のセリンプロテアーゼ(例えば、GrBポリペプチド)または標的化剤は、Cysを含むアミノ酸配列をさらに含み、当該アミノ酸配列は、セリンプロテアーゼコード配列に対してC末端側に位置する。例えば、ポリペプチドは、セリンプロテアーゼコード配列に対してC末端側に位置する配列SSCSGSA(配列番号12)を含んでよい。いくつかの態様では、Cys(セリンプロテアーゼに対してC末端側に位置する)を使用して、例えば、ジスルフィド架橋を形成することなどによって、プロテアーゼと別の部分(例えば、細胞標的化部分)を結合体化することができる。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、安定性および/または活性が増強された組換えグランザイムB(GrB)ポリペプチドを提供する。いくつかの態様では、そのようなGrBポリペプチドを細胞標的化部分と結合体化または融合し、それにより、高度に特異的な標的化細胞傷害性構築物をもたらすことができる。例えば、細胞標的化部分は、がん細胞標的化ポリペプチド(例えば、がん細胞に特異的な抗原に結合する抗体)であってよい。そのような態様では、所与の抗原を発現するがん細胞を特異的に死滅させる一方で、他の細胞はインタクトなままにすることを可能にする標的化がん療法の方法が提供される。好ましい態様では、GrBポリペプチドおよび/または標的化部分は、実質的なヒトアミノ酸配列で構成される。したがって、いくつかの態様では、当該実施形態のポリペプチドは、ヒト被験体に投与された際に堅固な免疫応答を惹起しない。
【0010】
ある特定の具体的な態様では、当該実施形態に従って使用するためのグランザイムは、ヒトGrB配列、例えば配列番号1など(参照により本明細書に組み込まれるNCBI受託番号AAA75490.1およびEAW66003.1も参照されたい)と比較して1つまたは複数のアミノ酸欠失および/または置換を含むGrBコード配列である。例えば、組換えGrBは、配列番号1と少なくとも80%同一(例えば、配列番号1と少なくとも約または約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一)であってよい。ある特定の態様では、GrBポリペプチドは、異なる種のGrB由来の対応するアミノ酸に対して1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、実質的なヒトGrBポリペプチドは、
図1で提供されるGrBポリペプチド(例えば、霊長類GrB、ブタGrB、ウシGrBまたはマウスGrB)のうちの1つに由来する対応するアミノ酸のアミノ酸位における1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の置換を含んでよい。いくつかの態様では、組換えGrBは、以下の特徴の1つまたは複数を含む:(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(b)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(c)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(d)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;および/または(e)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失。別の態様では、GrBポリペプチドは、特徴(a)~(e)のうちの2つ、3つ、4つまたは5つを含む。ある特定の態様では、組換えGrBは、実質的にグリコシル化されていないGrBポリペプチドと定義される。
【0011】
さらなる実施形態では、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、以下の特徴の1つまたは複数を含む:(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(b)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(c)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(d)Arg96に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(e)Arg100に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(f)Arg102に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(g)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(h)Arg201に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(i)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(j)Lys221に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(k)Lys222に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(l)Lys225に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;および/または(m)Arg226に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失。したがって、いくつかの態様では、当該実施形態の組換えポリペプチドは、特徴(a)~(m)のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、または13個全てを含む。
【0012】
ある特定の態様では、組換えGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のAsn51位および/またはAsn84位に対応するアミノ酸位におけるグリコシル化を欠く。いくつかの態様では、当該実施形態のGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のAsn51位および/またはAsn84位に対応する位置におけるアミノ酸置換または欠失を含む。別の態様では、GrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のAsn51位および/またはAsn84位におけるArg置換、His置換、Lys置換、Asp置換、Glu置換、Ser置換、Thr置換、Gln置換、Cys置換、Gly置換、Pro置換、Ala置換、Val置換、Ile置換、Leu置換、Met置換、Phe置換、Tyr置換またはTrp置換を含む。例えば、一態様では、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のAsn51位に対応する位置におけるAla置換、Ser置換、Thr置換、LysまたはGln置換を含む。その代わりにまたはそれに加えて、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のAsn84位に対応する位置におけるAla置換、Ser置換、Thr置換、Arg置換またはGln置換を含む。
【0013】
いくつかの態様では、組換えGrBポリペプチドは、Lys27および/またはArg28に対応する位置におけるアミノ酸置換または欠失を含む。例えば、組換えGrBは、Lys27に対応する位置とArg28に対応する位置の両方における置換を含んでよい。いくつかの場合には、置換は、K27EまたはK27LおよびR28Aから選択される。さらに別の態様では、組換えGrBコード配列は、82PKN84に対応する位置における1つ、2つまたは3つのアミノ酸置換または欠失を含む。例えば、一部の特定の態様では、GrBコード配列は、82PKN84に対応する位置において置換された配列PVPNを含む。
【0014】
別の態様では、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のAsp37位および/またはAsp150位に対応するアミノ酸位におけるアミノ酸欠失または置換(例えば、極性側鎖を有するアミノ酸の置換)を含む。したがって、いくつかの態様では、組換えGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のAsp37位および/またはAsp150位におけるArg置換、His置換、Lys置換、Glu置換、Ser置換、Thr置換、Asn置換、Gln置換、Cys置換、Gly置換、Pro置換、Ala置換、Val置換、Ile置換、Leu置換、Met置換、Phe置換、Tyr置換またはTrp置換を含む。例えば、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のAsp37位に対応する位置におけるSer置換、Thr置換、Gln置換、Glu置換またはAsn置換を含んでよい。その代わりにまたはそれに加えて、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のAsp150位に対応する位置におけるSer置換、Thr置換、Gln置換、Glu置換またはAsn置換を含む。
【0015】
いくつかの態様では、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸Arg96位、Arg100位、Arg102位、Arg201位、および/またはArg226位に対応する位置におけるアミノ酸置換または欠失を含む。別の態様では、GrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のArg96位、Arg100位、Arg102位、Arg201位、および/またはArg226位におけるAsn置換、His置換、Lys置換、Asp置換、Glu置換、Ser置換、Thr置換、Gln置換、Cys置換、Gly置換、Pro置換、Ala置換、Val置換、Ile置換、Leu置換、Met置換、Phe置換、Tyr置換またはTrp置換を含む。ある特定の態様では、組換えGrBは、Arg96、Arg100、Arg102、Arg201、および/またはArg226に対応する位置における極性または正に荷電した側鎖を有するアミノ酸残基の置換を含む。例えば、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のArg96位、Arg100位、Arg102位、Arg201位、および/またはArg226位に対応する位置におけるAla置換、Asn置換、Ser置換、Thr置換、Lys置換、His置換またはGln置換を含んでよい。さらに別の態様では、組換えポリペプチドは、前記Arg位の2つ、3つ、4つまたは5つにおける欠失または置換を含む。
【0016】
ある特定の態様では、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のLys221位、Lys222位および/またはLys225位に対応する位置におけるアミノ酸置換または欠失を含む。別の態様では、GrBポリペプチドは、ヒトアミノ酸のLys221位、Lys222位および/またはLys225位におけるAsn置換、His置換、Arg置換、Asp置換、Glu置換、Ser置換、Thr置換、Gln置換、Cys置換、Gly置換、Pro置換、Ala置換、Val置換、Ile置換、Leu置換、Met置換、Phe置換、Tyr置換またはTrp置換を含む。ある特定の態様では、組換えGrBは、Lys221、Lys222および/またはLys225に対応する位置における極性または正に荷電した側鎖を有するアミノ酸残基の置換を含む。例えば、組換えGrBは、ヒトアミノ酸のLys221位、Lys222位および/またはLys225位に対応する位置におけるAla置換、Asn置換、Ser置換、Thr置換、Arg置換、His置換またはGln置換を含んでよい。さらに別の態様では、組換えポリペプチドは、前記Lys位の2つまたは3つにおける欠失または置換を含む。
【0017】
さらに別の態様では、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、Cys210に対応する位置におけるアミノ酸欠失または置換を含む。いくつかの態様では、組換えGrBは、Cys210に対応する位置におけるArgアミノ酸置換、Hisアミノ酸置換、Lysアミノ酸置換、Aspアミノ酸置換、Gluアミノ酸置換、Serアミノ酸置換、Thrアミノ酸置換、Asnアミノ酸置換、Glnアミノ酸置換、Glyアミノ酸置換、Proアミノ酸置換、Alaアミノ酸置換、Valアミノ酸置換、Ileアミノ酸置換、Leuアミノ酸置換、Metアミノ酸置換、Pheアミノ酸置換、Tyrアミノ酸置換またはTrpアミノ酸置換を含む。例えば、組換えGrBポリペプチドは、Cys210に対応する位置におけるAla置換、Val置換、Ile置換、Leu置換、Met置換、Ser置換、Thr置換、Asn置換、Phe置換、Tyr置換またはGln置換を含んでよい。
【0018】
さらに別の実施形態では、複数の組換えGrBポリペプチド(またはその融合タンパク質もしくは結合体)を含む組成物であって、GrBポリペプチドの少なくとも約90%、95%、98%、99%または99.5%が活性な酵素活性を有する組成物が提供される。さらに別の実施形態では、複数の組換えGrBポリペプチド(またはその融合タンパク質もしくは結合体)を含む組成物であって、GrBポリペプチドの少なくとも約90%、95%、98%、99%または99.5%がインタクトなGrBコード配列(すなわち、タンパク質分解により切断されていないGrBポリペプチド配列)を含む組成物が提供される。さらに別の実施形態では、複数の組換えGrBポリペプチド(またはその融合タンパク質もしくは結合体)であって、その少なくとも約90%、95%、98%、99%または99.5%が単量体(すなわち、分子当たり単一のGrBポリペプチド)として組成物中に存在するGrBポリペプチドが提供される。例えば、前述の組成物はいずれも、組換えGrBポリペプチドを含む水溶液などの確定した医薬組成物であってよい。いくつかの態様では、当該実施形態の組成物は、複数の組換えGrBポリペプチドであって、その少なくとも約90%、95%、98%、99%または99.5%が(1)活性な酵素活性を有し、(2)インタクトなGrBアミノ酸配列を含み、かつ/または(3)GrBポリペプチドに関して単量体として組成物中に存在するGrBポリペプチドを含む。
【0019】
さらに別の実施形態では、(a)当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼ、(b)標的化ポリペプチド、および(c)細胞透過性ペプチド(CPP)を含む標的化剤が提供される。ある特定の態様では、標的化ポリペプチドは、Her2/neuに結合するポリペプチドなどのがん細胞標的化ポリペプチドである。例えば、標的化ペプチドは、scFv
4D5配列(配列番号23)を含んでよい。当該実施形態の標的化剤に使用するためのCPPは、本明細書において詳述されているCPP配列のいずれであってもよい。好ましい態様では、CPPは、配列番号22の配列を有する「26」CPPである。したがって、一部の特定の態様では、標的化剤は、N末端からC末端までに、(a)短縮型セリンプロテアーゼコード配列(例えば、グランザイム)、(i)第1のリンカーペプチド、(b)標的化ポリペプチド、(ii)第2のリンカーペプチド、および(c)細胞透過性ペプチド(CPP)(例えば、配列番号22の配列を有する)を含む。種々のリンカーペプチドを当該実施形態に従って使用することができ、例えば、第1のリンカーペプチドおよび/または第2のリンカーペプチドは、配列番号13の配列を含んでよい。さらに具体的な態様では、標的化剤は、N末端からC末端までに、(a)組換えGrBコード配列(例えば、当該実施形態の野生型哺乳動物GrBコード配列または改変されたコード配列)(i)第1のリンカーペプチド、(b)標的化ポリペプチド、(ii)第2のリンカーペプチド、および(c)配列番号22の配列を有する細胞透過性ペプチド(CPP)を含む。したがって、いくつかの態様では、標的化剤は、配列番号24と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるポリペプチド配列(例えば、配列番号24の配列を含む標的化剤)を含む。
【0020】
さらに別の実施形態では、被験体におけるラパチニブまたはトラスツズマブ耐性がん(例えば、乳がん)を処置する方法であって、(a)ラパチニブまたはトラスツズマブ耐性がんを有する被験体を同定するステップ、および(b)当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼ(例えば、GrBポリペプチド)と連結したHer2/neu標的化治療薬を被験体に投与するステップを含む方法が提供される。例えば、いくつかの態様では、被験体は、ラパチニブまたはトラスツズマブを用いた処置を受けていた、または現在受けている。いくつかの好ましい態様では、Her2/neu標的化治療薬は、上記の標的化剤のうちの1つなどのCPP配列を含む。したがって、いくつかの態様では、ラパチニブまたはトラスツズマブ耐性がんを有する被験体の処置において使用するための組成物であって、当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼを含むHer2/neu標的化治療薬で構成される組成物が提供される。
【0021】
さらに別の実施形態では、N末端からC末端までに、(a)プロテアーゼ切断部位を含むペプチド、および(b)短縮型セリンプロテアーゼ(例えば、組換えGrBポリペプチド)を含む組換えポリペプチドが提供される。いくつかの態様では、プロテアーゼ切断部位は、プロテアーゼにより切断されると、アミノ末端にイソロイシン残基(例えば、IIGG、IVGGまたはILGG)を有するセリンプロテアーゼが生じるように位置づけられている。したがって、GrBの場合では、プロテアーゼにより切断されるとIIGGHEAK;配列番号27のアミノ末端配列を有する遊離GrBが放出される。ある特定の態様では、プロテアーゼ切断部位は、哺乳動物の細胞内プロテアーゼ(例えば、その認識配列であるC末端で切断するプロテアーゼ)によって切断される部位である。当該実施形態に従って使用するためのプロテアーゼ切断部位の例としては、限定することなく、カスパーゼ1~10の切断部位(例えば、YEVD、WEHD、DVAD、DEHD、DEVD、DMQD、LEVD、LEHD、VEID、VEHD、IETD、LETDまたはIEAD)、フューリン切断部位(RVRR)、グランザイムB切断部位(IEPD)または第Xa因子切断部位((I/A)(E/D)GR;配列番号28)が挙げられる。ある特定の具体的な態様では、カスパーゼ-3の切断部位を使用し、当該実施形態の組換えポリペプチドは、配列番号25のカスパーゼ-3切断配列を含む。さらに別の態様では、当該実施形態の組換えポリペプチドはGrBポリペプチドであり、配列YVDEVDIIGGHEAK(配列番号26);RVRRIIGGHEAK(配列番号29);RVRRIIGGHEAK(配列番号30);(I/A)(E/D)GRIIGGHEAK(配列番号31);YEVDIIGGHEAK(配列番号32);WEHDIIGGHEAK(配列番号33);DVADIIGGHEAK(配列番号34);DEHDIIGGHEAK(配列番号35);DEVDIIGGHEAK(配列番号36);DMQDIIGGHEAK(配列番号37);LEVDIIGGHEAK(配列番号38);LEHDIIGGHEAK(配列番号39);VEIDIIGGHEAK(配列番号40);VEHDIIGGHEAK(配列番号41);IETDIIGGHEAK(配列番号42);LETDIIGGHEAK(配列番号43)またはIEADIIGGHEAK(配列番号44)を含む。上記の通り、いくつかの態様では、組換えポリペプチドは、細胞透過性ペプチド(CPP)および/またはプロテアーゼ切断配列に対してN末端側に位置する細胞結合性部分などの細胞結合性部分をさらに含んでよい。ある特定の好ましい態様では、細胞結合性部分は、抗体または抗原結合性の抗体断片である。当該実施形態の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子も同様に提供される。
【0022】
特定の実施形態では、(a)細胞結合性部分(例えば、その抗体または抗原結合性ドメイン)、(b)選択されたプロテアーゼによる切断を受けやすい切断部位、および(c)N末端にIIGGを有するGrBコード配列(例えば、本明細書において提供される組換えポリペプチドのうちの1つなど)を含む細胞標的化構築物が提供され、その結果、ポリペプチドが選択されたプロテアーゼによって切断されると、N末端イソロイシンを有するGrBが細胞標的化構築物から放出される。本明細書において実証されている通り、そのような細胞標的化構築物は、驚いたことに、血清に長期にわたって曝露してさえも安定であり、それにより、理想的な治療剤がもたらされる。したがって、いくつかの態様では、血清安定性のある細胞標的化構築物をもたらす方法であって、異種プロテアーゼ切断部位(例えば、細胞内プロテアーゼによって認識される切断部位)に対してC末端側に位置するGrBコード配列を含む細胞標的化構築物を得ることを含む方法が提供される。
【0023】
さらに別の実施形態では、当該実施形態のセリンプロテアーゼポリペプチドまたは構築物をコードする配列を含むポリヌクレオチド分子が提供される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド分子は、発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル配列または転写終結配列)に作動可能に連結した発現カセット内に含まれる。さらに別の態様では、ポリヌクレオチド分子は、当該実施形態の細胞標的化構築物などのセリンプロテアーゼ融合タンパク質をコードする。
【0024】
さらに別の実施形態では、当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼ(または細胞標的化構築物)をコードする発現可能なポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞が提供される。いくつかの態様では、宿主細胞は、当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドをさらに含む。例えば、当該実施形態の宿主細胞は、哺乳動物細胞(例えば、培養したヒト細胞)、酵母細胞、細菌細胞、繊毛虫細胞(ciliate cell)または昆虫細胞であってよい。したがって、さらなる実施形態では、ポリペプチドを製造する方法であって、(a)当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド分子を、コードされるポリペプチドを産生する条件下で細胞において発現させるステップ、および(b)ポリペプチドを細胞から精製するステップを含む方法が提供される。
【0025】
さらなる実施形態では、当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドであって、セリンプロテアーゼが細胞標的化部分と結合体化または融合した短縮型セリンプロテアーゼポリペプチドが提供される。例えば、セリンプロテアーゼポリペプチドは細胞標的化部分とチオエステル連結によって(例えば、セリンプロテアーゼポリペプチドに含まれるまたはセリンプロテアーゼコード配列に対してC末端側に位置するCys残基を使用することによって)結合体化することができる。いくつかの態様では、細胞結合性部分をセリンプロテアーゼポリペプチドと融合して、融合タンパク質を形成する。この態様では、細胞標的化部分を短縮型セリンプロテアーゼコード配列に対してC末端側に位置づけ、それにより、プロテアーゼ酵素活性を維持するべきであることが当業者には理解されよう。例えば、ある特定の態様では、細胞標的化部分は、細胞において発現される(例えば、がん細胞において特異的にまたは優先的に発現される)タンパク質、炭水化物または脂質に結合させることができる。細胞標的化部分の例は、下にさらに詳述および例示されており、それらとして、限定することなく、GP240、5T4、HER1、HER2、CD-33、CD-38、VEGFR-1、VEGFR-2、CEA、FGFR3、IGFBP2、IGF-1R、BAFF-R、TACI、APRIL、Fn14またはHER3に結合する部分が挙げられる。
【0026】
さらに別の態様では、短縮型セリンプロテアーゼまたは細胞標的化構築物は、画像化剤とさらに結合体化している。例えば、画像化剤は、放射性核種、MRI造影剤または超音波造影剤であってよい。したがって、いくつかの態様では、被験体における標的細胞を画像化するための方法であって、画像化剤と結合体化した細胞標的化構築物を被験体に投与するステップ、および被験体における標的細胞を画像化するステップを含む方法が提供される。
【0027】
ある場合では、融合タンパク質は、短縮型セリンプロテアーゼと細胞標的化ポリペプチドの間に位置する追加的なアミノ酸を含んでよいことが理解されよう。一般に、これらの配列は、「リンカー配列」または「リンカー領域」と互換的に称される。リンカー領域は、1つまたは複数のアミノ酸の長さであってよく、多くの場合、リンカーに可撓性を付与する1つまたは複数のグリシン残基を含むことが当業者には理解されよう。いくつかの特定の実施例では、本実施形態において使用するためのリンカーとしては、限定することなく、218リンカー(GSTSGSGKPGSGEGSTKG;配列番号13)、HLリンカー(EAAAK;配列番号14)SSGおよびG4Sリンカー(GGGGS;配列番号15)が挙げられる。そのようなリンカー配列は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上繰り返すこともでき、1つまたは複数の異なるリンカーと組み合わせてリンカー配列のアレイを形成することもできる。例えば、一部の適用では、リンカー領域は、内在性細胞内プロテアーゼによって認識される切断部位などのプロテアーゼ切断部位を含んでよい。この場合、細胞標的化構築物が標的細胞に内部移行すると、タンパク質分解による切断により、セリンプロテアーゼが細胞標的化部分および/または他のポリペプチドドメインから分離され得る。そのように、この実施形態による細胞標的化構築物には、細胞標的化ポリペプチドからの潜在的な干渉が低減するので、標的化されたセリンプロテアーゼの細胞内活性が増強されるという利点があり得る。
【0028】
当該実施形態による細胞標的化構築物は、セリンプロテアーゼ、細胞標的化部分、またはその両方に付着した追加的なアミノ酸を含んでよい。例えば、細胞標的化構築物の産生または精製を補助するために追加的なアミノ酸を含めることができる。細胞標的化部分に付着させることができるアミノ酸配列のいくつかの特定の例としては、これだけに限定されないが、精製タグ(例えば、T7、MBP.GST、HA、またはポリHisタグ)、タンパク質分解の切断部位、例えば、トロンビンまたはフューリン切断部位など、細胞内局在化シグナルまたは分泌シグナルが挙げられる。したがって、ある特定の態様では、当該実施形態の細胞標的化構築物は、GrBなどのセリンプロテアーゼと細胞標的化部分の間に位置するプロテアーゼ切断部位(例えば、フューリン切断部位)を含む。
【0029】
さらに別の態様では、当該実施形態の細胞標的化構築物は、細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含む。本明細書で使用される場合、CPPおよび膜トランスロケーションペプチド(MTP)という用語は互換的に使用され、細胞によって内部移行されるタンパク質の能力を増強するペプチド配列を指す。当該実施形態に従って使用するためのCPPの例としては、限定することなく、HIV Tat、ヘルペスウイルスVP22、ショウジョウバエアンテナペディアホメオボックス遺伝子産物、プロテグリンIに由来するペプチドセグメント、ならびに本明細書において例示されているT1ペプチド(配列番号19)、T2ペプチド(配列番号20)、INF7ペプチド(配列番号21)およびINF26ペプチド(配列番号22)が挙げられる。ある特定の態様では、当該実施形態の細胞標的化構築物は、セリンプロテアーゼと細胞標的化部分の間に位置し、または細胞標的化部分に対してC末端側に位置するCPPを含む。ある特定の態様では、CPPは、リンカー配列によってセリンプロテアーゼおよび/または細胞標的化部分と隔てられている。
【0030】
当該実施形態による細胞標的化構築物(例えば、細胞標的化部分およびセリンプロテアーゼを含む)は、2つの性質、(1)特異的な細胞の集団に対する結合親和性および(2)細胞内に内部移行する能力を有することが望ましい。しかし、内部移行しにくい細胞標的化構築物でさえ、当該実施形態による方法において使用することができることが企図される。当業者に周知の方法を使用して、特定の細胞標的化構築物が標的細胞によって内部移行されるかどうかを、例えば、細胞内抽出物の免疫組織化学的染色または免疫ブロットによって決定することができる。ある場合では、それ自体では内部移行することができない細胞標的化部分を、当該実施形態による細胞標的化構築物の状況では内部移行させることができることも企図される。当該実施形態において使用するための細胞標的化部分としては、これだけに限定されないが、抗体、増殖因子、ホルモン、ペプチド、アプタマー、アビマー(avimer)(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20060234299号および同第20060223114号を参照されたい)およびサイトカインが挙げられる。上記の通り、細胞標的化部分は、セリンプロテアーゼと共有結合または非共有結合によって結合体化することができ、また、ある場合では、標的化構築物は融合タンパク質であってよい。
【0031】
ある特定の好ましい態様では、当該実施形態において使用するための細胞標的化部分は抗体またはその断片である。一般に、抗体という用語は、これだけに限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、ミニボディ、ダイアボディ(dibodies)、トリボディ(tribody)ならびに抗体断片、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fv、または単鎖Fv(scFv)抗体単一ドメイン抗体など、ならびに抗体模倣物、例えば、アンチカリン(anticalin)など、ならびにそれらの任意の混合物を包含する。いくつかの場合には、細胞標的化部分は単鎖抗体(scFv)である。関連する態様では、細胞標的化ドメインはアビマーポリペプチドであってよい。したがって、ある場合では、当該実施形態の細胞標的化構築物はGrBポリペプチドとscFvまたはアビマーとを含む融合タンパク質である。例えば、いくつかの非常に具体的な態様では、GrBポリペプチドを、15A8、scFvMEL、ZME-018、scFv23、セツキシマブまたはトラスツズマブ抗体と結合体化または融合する。同様に、GrBポリペプチドを、抗CD-33抗体または抗CD-38抗体と融合または結合体化することができる。
【0032】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、ヒト抗体重鎖および軽鎖を含む細胞標的化部分であって、抗体軽鎖、重鎖またはその両方が、抗体軽鎖および/または重鎖に対してC末端側に位置する当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼを含む、細胞標的化部分を提供する。例えば、抗体は、ヒトIgG、例えば、IgG1などであってよい。
【0033】
さらに別の実施形態では、(a)細胞標的化scFv抗体ドメイン、(b)抗体重鎖定常(Fc)ドメイン;および(c)当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼを含む細胞標的化構築物が提供される。例えば、細胞標的化構築物は、NからC末端までに、(c)短縮型セリンプロテアーゼ、(b)Fcドメイン;および(a)scFvドメインを含んでよい。あるいは、細胞標的化構築物は、NからC末端までに、(a)scFvドメイン、(b)Fcドメイン、(d)プロテアーゼ切断部位を含むペプチド(例えば、細胞内プロテアーゼによって切断可能なもの)および(c)当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼを含んでよい。いくつかの態様では、細胞標的化構築物は、N末端、C末端またはエレメント(a)、(b)および/もしくは(c)のいずれかの間に融合したリンカーまたはCPPのような追加的なエレメントを含んでよい。ある特定の具体的な態様では、細胞標的化構築物のscFvはFn14に結合し、セリンプロテアーゼは配列番号45の配列(または配列番号45と少なくとも約85%、90%または95%同一である配列)を含む細胞標的化構築物などのGrBである。
【0034】
別の態様では、当該実施形態の細胞標的化部分は増殖因子であってよい。例えば、形質転換増殖因子、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、Bリンパ球刺激物質(BLyS)、ヘレグリン、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、または低酸素症誘導因子を、当該実施形態による細胞標的化部分として使用することができる。これらの増殖因子により、構築物を同類の増殖因子受容体を発現する細胞に標的化することが可能になる。例えば、VEGFを使用して、VEGFR-2および/またはVEGFR-1を発現する細胞を標的とすることができる。さらに別の態様では、細胞標的化部分は、ポリペプチドBLyS(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20060171919号を参照されたい)であってよい。
【0035】
さらに別の態様では、細胞標的化部分はホルモンであってよい。当該実施形態において使用するためのホルモンのいくつかの例としては、これだけに限定されないが、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、アンドロゲン、エストロゲン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、オキシトシン、サイロトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、コルチコトロピン-放出ホルモン、ソマトスタチン、ドーパミン、メラトニン、チロキシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、アドレナリン、ノルアドレナリン、プロゲステロン、インスリン、グルカゴン、アミリン、エリスロポエチン(erythropoitin)、カルシトリオール、カルシフェロール、心房性ナトリウム利尿性ペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、神経ペプチドY、グレリン、PYY3-36、インスリン様増殖因子1、レプチン、トロンボポエチンまたはアンジオテンシノーゲンが挙げられる。上記の通り、ホルモンを含む標的化構築物を、示されているホルモンに対する細胞外受容体を含む細胞集団を標的化する方法において使用することができる。
【0036】
当該実施形態のさらに別の態様では、細胞標的化部分はサイトカインであってよい。例えば、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、白血病抑制因子、エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、オンコスタチンM、白血病抑制因子、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、TGF-β、IL 1α、IL-1β、IL-1RA、MIF、TNF様アポトーシス弱誘導因子(TNF-like weak inducer of apoptosis)(TWEAK)およびIGIFは全て、当該実施形態による標的化部分として使用することができる。
【0037】
前述の説明から、当該実施形態による細胞標的化構築物により、使用する細胞標的化部分に応じて特定の細胞の集団を標的とすることができることが当業者には明らかであろう。例えば、細胞標的化部分は、感染細胞標的化部分であってよい。この場合、細胞標的化部分は、細菌、原生動物またはウイルスなどの病原体に感染している細胞の表面で主に発現される細胞タンパク質に結合し得る。ある特定の他の態様では、細胞標的化部分は、病原体によりコードされる因子、例えば細菌タンパク質、原生動物タンパク質またはウイルスタンパク質などに結合し得る。この態様では、細胞標的化構築物は、病原体が標的細胞に進入する前、または進入する時にその病原体に結合することによって細胞を間接的に標的化し得ることが企図される。したがって、いくつかの場合には、病原体が細胞に輸送されることにより、標的化構築物の内部移行が媒介され得る。追加的な態様では、細胞標的化部分は、感染細胞の表面で発現される、病原体によりコードされるポリペプチドに結合し得る。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した細胞の場合では、細胞標的化部分は、例えば、gp120に結合し得る。前述の方法のいずれかを使用して、感染の拡散を限定することができることが企図される。例えば、セリンプロテアーゼ(例えば、GrB)を感染細胞に送達することにより、アポトーシスを誘導することまたはアポトーシスを受けるように細胞を感作することができる。
【0038】
当該実施形態のいくつかの態様では、細胞標的化部分は、免疫細胞標的化部分と定義することができる。この場合、細胞標的化部分は、特定の免疫細胞の集団において発現される細胞表面分子に結合し得、かつ/またはそれにより内部移行され得る。したがって、セリンプロテアーゼを特定の型の免疫細胞に標的化することを用いて、例えば、自己免疫疾患またはリンパ腫を処置することができる。
【0039】
当該実施形態のさらに別の態様では、細胞標的化部分は、がん細胞標的化部分であってよい。特定の型のがん細胞は、周囲の組織と比較して独特な表面分子を異常に発現することが周知である。したがって、これらの表面分子に結合する細胞標的化部分により、がん細胞へのセリンプロテアーゼの標的化された送達が特異的に可能になる。例えば、細胞標的化部分は、肺がん細胞、乳がん細胞、脳がん細胞、前立腺がん細胞、脾臓がん細胞、膵臓がん細胞、子宮頸部がん細胞、卵巣がん細胞、頭頸部がん細胞、食道がん細胞、肝臓がん細胞、皮膚がん細胞、腎臓がん細胞、白血病細胞、骨がん細胞、精巣がん細胞、結腸がん細胞または膀胱がん細胞に結合し得、かつそれにより内部移行され得る。したがって、がん細胞を標的とするセリンプロテアーゼの有効性は、いくつかの場合には、がん細胞上の特定のがんマーカーの発現または発現レベルに左右され得る。ある特定の態様では、標的化されたセリンプロテアーゼを用いてがん患者を処置するための方法であって、患者のがん細胞が特定の細胞表面マーカーを発現しているか(またはどの程度まで発現しているか)を同定するステップ、および特定の細胞表面マーカーが発現しているがんを有すると同定された患者に標的化されたセリンプロテアーゼ療法(場合によって、別の抗がん療法と併せて)を施すステップを含む方法が提供される。別の態様では、標的化されたセリンプロテアーゼ療法の用量は、がん細胞上の細胞表面マーカーの発現レベルに応じて調整することができる。
【0040】
したがって、ある特定の実施形態では、細胞増殖性疾患を処置するための方法であって、当該実施形態による細胞標的化構築物を投与することを含む方法が提供される。本明細書で使用される場合、「細胞増殖性の状態」という句は、これだけに限定されないが、自己免疫疾患、がんおよび前がん状態を含む。例えば、当該実施形態の方法は、がん、例えば、肺がん、乳がん、脳がん、前立腺がん、脾臓がん、膵臓がん、子宮頸部がん、卵巣がん、頭頸部がん、食道がん、肝臓がん、皮膚がん、腎臓がん、白血病、骨がん、精巣がん、結腸がん、または膀胱がんなどを処置するために使用することができる。例えば、黒色腫などの皮膚がんを、皮膚がん細胞を標的とするセリンプロテアーゼを投与することによって処置するための方法が提供される。同様に、gp240陽性皮膚がんを処置するための方法であって、scFvMEL標的化部分を含む当該実施形態のセリンプロテアーゼを投与することを含む方法が提供される。
【0041】
いくつかの場合には、当該実施形態の細胞標的化構築物を、別の(例えば、第2の)抗がん療法と併せて使用することができる。したがって、特定の例では、細胞標的化部分と結合体化したセリンプロテアーゼを含む細胞標的化構築物を投与することによって細胞を抗がん療法(例えば、化学療法)に対して感作する方法が提供される。この場合、細胞標的化構築物は、抗がん療法を施す前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。例えば、抗がん療法は、外科的療法、化学療法、放射線治療、遺伝子療法または免疫療法であってよい。いくつかの態様では、抗がん療法が化学療法である場合、化学療法は1つまたは複数のアポトーシス誘導剤を含むことが好ましい場合がある。
【0042】
当該実施形態のさらに別の態様では、自己免疫疾患または炎症性疾患を処置するための方法であって、当該実施形態による細胞標的化構築物を投与することを含む方法が提供される。例えば、細胞を標的とするセリンプロテアーゼは、関節リウマチ、乾癬、変形性関節症、炎症性腸疾患、1型糖尿病、組織もしくは臓器の拒絶反応または多発性硬化症の処置において使用することができる。これらの態様では、細胞標的化構築物は、ステロイドなどの他の処置レジメンと組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明の方法および/または組成物に関して考察されている実施形態は、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物に対して使用することができる。したがって、1つの方法または組成物に関する実施形態を本発明の他の方法および組成物にも同様に適用することができる。
【0044】
本明細書において使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は1つまたは複数を意味し得る。請求項(複数可)において使用される場合には、「含む(comprising)」という単語と同時に使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語は1つまたは1つ以上を意味し得る。
【0045】
請求項における「または(or)」という用語の使用は、代替物のみを指すことまたは代替物が相互排他的であることが明示されていなければ、「および/または(and/or)」を意味するために用いられるが、本開示では、代替物のみおよび「および/または(and/or)」を指すという定義が支持される。 本明細書で使用される場合、「別の(another)」という用語は、少なくとも第2、またはそれ以降のものを意味し得る。
【0046】
本出願全体を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために使用したデバイス、方法に関する誤差である固有の変動、または試験被験体の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0047】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、発明の詳細な説明および特定の実施例は本発明の好ましい実施形態を示しているが、当業者にはこの発明の詳細な説明から本発明の主旨および範囲内のさまざまな変化および改変が明らかになるので、単に例示として示されていることが理解されるべきである。
【0048】
以下の図は本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図の1つまたは複数を本明細書で提示されている特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによってよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1-1】
図1A~Cは、種々の哺乳動物グランザイムポリペプチドおよびグランザイムに対して高い相同性を有するセリンプロテアーゼのアラインメントの図である。それぞれの場合において、示されているポリペプチド配列は成熟活性ポリペプチド(すなわち、N末端リーダー配列を欠く)のものである。(A)Homo sapiens由来のGrBの配列(配列番号1;100%);Pan troglodytes由来のGrBの配列(配列番号2;98%);Pan paniscus由来のGrBの配列(配列番号3;98%);Pongo abelii由来のGrBの配列(配列番号4;93%);Macaca nemestrina由来のGrBの配列(配列番号5;87%);Macaca mulatta由来のGrBの配列(配列番号6;87%);Macaca fascicularis由来のGrBの配列(配列番号7;86%);Sus scrofa由来のGrBの配列(配列番号8;72%);Bos taurus由来のGrBの配列(配列番号9;72%);Rattus norvegicus由来のGrBの配列(配列番号10;70%);およびMus musculus由来のGrBの配列(配列番号11;71%)のアラインメントを示す図である。括弧内のパーセント値は、成熟H.sapiens GrBに対するパーセント同一性を示す。ヒトGrBのAsp37、Asn51、Asn84、Asp150、およびCys210に対応するアミノ酸位がそれぞれ太字の影付きで示されている。H.sapiensの隣の*は、GrBについてのある特定の配列読み取りが、示されている「R」ではなく35位の「Q」を示すことを示す。例えば、NCBI受託番号AAA75490.1と、それに対してEAW66003.1を参照されたい。(B)Homo sapiens由来の種々の成熟グランザイムポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。グランザイムB「Gzm B」(配列番号1)、グランザイムA「Gzm A」(配列番号46)、グランザイムH「Gzm H」(配列番号47)、グランザイムK「Gzm K」(配列番号49)およびグランザイムM「Gzm M」(配列番号49)の配列が示されている。(C)グランザイムポリペプチドに対して高い相同性を有するHomo sapiens由来のセリンプロテアーゼポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。成熟グランザイムB(配列番号1)、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)およびPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)の配列が示されている。アラインメントにおいて、「*」は同一のアミノ酸位を示し、「:」および「.」は、それぞれ高度に類似したアミノ酸位または類似したアミノ酸位を示す。
【
図1-2】
図1A~Cは、種々の哺乳動物グランザイムポリペプチドおよびグランザイムに対して高い相同性を有するセリンプロテアーゼのアラインメントの図である。それぞれの場合において、示されているポリペプチド配列は成熟活性ポリペプチド(すなわち、N末端リーダー配列を欠く)のものである。(A)Homo sapiens由来のGrBの配列(配列番号1;100%);Pan troglodytes由来のGrBの配列(配列番号2;98%);Pan paniscus由来のGrBの配列(配列番号3;98%);Pongo abelii由来のGrBの配列(配列番号4;93%);Macaca nemestrina由来のGrBの配列(配列番号5;87%);Macaca mulatta由来のGrBの配列(配列番号6;87%);Macaca fascicularis由来のGrBの配列(配列番号7;86%);Sus scrofa由来のGrBの配列(配列番号8;72%);Bos taurus由来のGrBの配列(配列番号9;72%);Rattus norvegicus由来のGrBの配列(配列番号10;70%);およびMus musculus由来のGrBの配列(配列番号11;71%)のアラインメントを示す図である。括弧内のパーセント値は、成熟H.sapiens GrBに対するパーセント同一性を示す。ヒトGrBのAsp37、Asn51、Asn84、Asp150、およびCys210に対応するアミノ酸位がそれぞれ太字の影付きで示されている。H.sapiensの隣の*は、GrBについてのある特定の配列読み取りが、示されている「R」ではなく35位の「Q」を示すことを示す。例えば、NCBI受託番号AAA75490.1と、それに対してEAW66003.1を参照されたい。(B)Homo sapiens由来の種々の成熟グランザイムポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。グランザイムB「Gzm B」(配列番号1)、グランザイムA「Gzm A」(配列番号46)、グランザイムH「Gzm H」(配列番号47)、グランザイムK「Gzm K」(配列番号49)およびグランザイムM「Gzm M」(配列番号49)の配列が示されている。(C)グランザイムポリペプチドに対して高い相同性を有するHomo sapiens由来のセリンプロテアーゼポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。成熟グランザイムB(配列番号1)、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)およびPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)の配列が示されている。アラインメントにおいて、「*」は同一のアミノ酸位を示し、「:」および「.」は、それぞれ高度に類似したアミノ酸位または類似したアミノ酸位を示す。
【
図1-3】
図1A~Cは、種々の哺乳動物グランザイムポリペプチドおよびグランザイムに対して高い相同性を有するセリンプロテアーゼのアラインメントの図である。それぞれの場合において、示されているポリペプチド配列は成熟活性ポリペプチド(すなわち、N末端リーダー配列を欠く)のものである。(A)Homo sapiens由来のGrBの配列(配列番号1;100%);Pan troglodytes由来のGrBの配列(配列番号2;98%);Pan paniscus由来のGrBの配列(配列番号3;98%);Pongo abelii由来のGrBの配列(配列番号4;93%);Macaca nemestrina由来のGrBの配列(配列番号5;87%);Macaca mulatta由来のGrBの配列(配列番号6;87%);Macaca fascicularis由来のGrBの配列(配列番号7;86%);Sus scrofa由来のGrBの配列(配列番号8;72%);Bos taurus由来のGrBの配列(配列番号9;72%);Rattus norvegicus由来のGrBの配列(配列番号10;70%);およびMus musculus由来のGrBの配列(配列番号11;71%)のアラインメントを示す図である。括弧内のパーセント値は、成熟H.sapiens GrBに対するパーセント同一性を示す。ヒトGrBのAsp37、Asn51、Asn84、Asp150、およびCys210に対応するアミノ酸位がそれぞれ太字の影付きで示されている。H.sapiensの隣の*は、GrBについてのある特定の配列読み取りが、示されている「R」ではなく35位の「Q」を示すことを示す。例えば、NCBI受託番号AAA75490.1と、それに対してEAW66003.1を参照されたい。(B)Homo sapiens由来の種々の成熟グランザイムポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。グランザイムB「Gzm B」(配列番号1)、グランザイムA「Gzm A」(配列番号46)、グランザイムH「Gzm H」(配列番号47)、グランザイムK「Gzm K」(配列番号49)およびグランザイムM「Gzm M」(配列番号49)の配列が示されている。(C)グランザイムポリペプチドに対して高い相同性を有するHomo sapiens由来のセリンプロテアーゼポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。成熟グランザイムB(配列番号1)、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)およびPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)の配列が示されている。アラインメントにおいて、「*」は同一のアミノ酸位を示し、「:」および「.」は、それぞれ高度に類似したアミノ酸位または類似したアミノ酸位を示す。
【
図1-4】
図1A~Cは、種々の哺乳動物グランザイムポリペプチドおよびグランザイムに対して高い相同性を有するセリンプロテアーゼのアラインメントの図である。それぞれの場合において、示されているポリペプチド配列は成熟活性ポリペプチド(すなわち、N末端リーダー配列を欠く)のものである。(A)Homo sapiens由来のGrBの配列(配列番号1;100%);Pan troglodytes由来のGrBの配列(配列番号2;98%);Pan paniscus由来のGrBの配列(配列番号3;98%);Pongo abelii由来のGrBの配列(配列番号4;93%);Macaca nemestrina由来のGrBの配列(配列番号5;87%);Macaca mulatta由来のGrBの配列(配列番号6;87%);Macaca fascicularis由来のGrBの配列(配列番号7;86%);Sus scrofa由来のGrBの配列(配列番号8;72%);Bos taurus由来のGrBの配列(配列番号9;72%);Rattus norvegicus由来のGrBの配列(配列番号10;70%);およびMus musculus由来のGrBの配列(配列番号11;71%)のアラインメントを示す図である。括弧内のパーセント値は、成熟H.sapiens GrBに対するパーセント同一性を示す。ヒトGrBのAsp37、Asn51、Asn84、Asp150、およびCys210に対応するアミノ酸位がそれぞれ太字の影付きで示されている。H.sapiensの隣の*は、GrBについてのある特定の配列読み取りが、示されている「R」ではなく35位の「Q」を示すことを示す。例えば、NCBI受託番号AAA75490.1と、それに対してEAW66003.1を参照されたい。(B)Homo sapiens由来の種々の成熟グランザイムポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。グランザイムB「Gzm B」(配列番号1)、グランザイムA「Gzm A」(配列番号46)、グランザイムH「Gzm H」(配列番号47)、グランザイムK「Gzm K」(配列番号49)およびグランザイムM「Gzm M」(配列番号49)の配列が示されている。(C)グランザイムポリペプチドに対して高い相同性を有するHomo sapiens由来のセリンプロテアーゼポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。成熟グランザイムB(配列番号1)、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)およびPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)の配列が示されている。アラインメントにおいて、「*」は同一のアミノ酸位を示し、「:」および「.」は、それぞれ高度に類似したアミノ酸位または類似したアミノ酸位を示す。
【
図1-5】
図1A~Cは、種々の哺乳動物グランザイムポリペプチドおよびグランザイムに対して高い相同性を有するセリンプロテアーゼのアラインメントの図である。それぞれの場合において、示されているポリペプチド配列は成熟活性ポリペプチド(すなわち、N末端リーダー配列を欠く)のものである。(A)Homo sapiens由来のGrBの配列(配列番号1;100%);Pan troglodytes由来のGrBの配列(配列番号2;98%);Pan paniscus由来のGrBの配列(配列番号3;98%);Pongo abelii由来のGrBの配列(配列番号4;93%);Macaca nemestrina由来のGrBの配列(配列番号5;87%);Macaca mulatta由来のGrBの配列(配列番号6;87%);Macaca fascicularis由来のGrBの配列(配列番号7;86%);Sus scrofa由来のGrBの配列(配列番号8;72%);Bos taurus由来のGrBの配列(配列番号9;72%);Rattus norvegicus由来のGrBの配列(配列番号10;70%);およびMus musculus由来のGrBの配列(配列番号11;71%)のアラインメントを示す図である。括弧内のパーセント値は、成熟H.sapiens GrBに対するパーセント同一性を示す。ヒトGrBのAsp37、Asn51、Asn84、Asp150、およびCys210に対応するアミノ酸位がそれぞれ太字の影付きで示されている。H.sapiensの隣の*は、GrBについてのある特定の配列読み取りが、示されている「R」ではなく35位の「Q」を示すことを示す。例えば、NCBI受託番号AAA75490.1と、それに対してEAW66003.1を参照されたい。(B)Homo sapiens由来の種々の成熟グランザイムポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。グランザイムB「Gzm B」(配列番号1)、グランザイムA「Gzm A」(配列番号46)、グランザイムH「Gzm H」(配列番号47)、グランザイムK「Gzm K」(配列番号49)およびグランザイムM「Gzm M」(配列番号49)の配列が示されている。(C)グランザイムポリペプチドに対して高い相同性を有するHomo sapiens由来のセリンプロテアーゼポリペプチドの配列のアラインメントを示す図である。成熟グランザイムB(配列番号1)、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)およびPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)の配列が示されている。アラインメントにおいて、「*」は同一のアミノ酸位を示し、「:」および「.」は、それぞれ高度に類似したアミノ酸位または類似したアミノ酸位を示す。
【
図2-1】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図2-2】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図2-3】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図2-4】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図2-5】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図2-6】
図2A~Eは、GrBポリペプチドおよび当該実施形態の構築物を示す図である。Aは、GrB融合構築物についての一般的な設計を示す概略図である。膜トランスロケーションペプチド(MTP)、エンドソーム切断ペプチド(ECP)、細胞質ゾル切断ペプチド(CCP)、および細胞透過性ペプチド(CPP)の位置が示されている。Bは、化学的結合体化のために使用することができるGrBポリペプチドの例を示す概略図である。それぞれの場合のGrBにおける置換が示されている(A、C210A;N1、D150N;d1;N51S;およびd2 N84A)。構築物「CM」に関しては、「RからAへ」とは、R96A置換、R100A置換、およびR102A置換を示し、「RからKへ」とは、R201K置換を示し、「KからAへ」とは、K221A置換、K222A置換、K225A置換、およびR226A置換を示す。C~Eは、50種のGrB標的化構築物の設計を示す概略図である。
【
図3】
図3は、VEGF
121およびGrBを含む種々の融合タンパク質の構築および試験について示す図である。左側のパネルは、4つの異なるGrB-VEGF融合タンパク質の概略図を示す。GrBポリペプチドは野生型ヒト配列(WT)であり、それぞれの場合において、GrBポリペプチドはG
4Sリンカー配列によってVEGF
121と融合している。右側のパネルは、融合タンパク質のそれぞれのGrB酵素活性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、GrBおよびZME(VL-VH)を含む種々の融合タンパク質の構築および試験について示す図である。左側のパネルは、4つの異なるGrB-ZME融合タンパク質の概略図を示す。GrBポリペプチドは野生型ヒト配列(SL)またはN51Sの置換を伴う配列(d1/SL-1);N84Aの置換を伴う配列(d2/SL-2);またはその両方の位置における置換を伴う配列(d1,2/SL-3)である。それぞれの場合において、GrBポリペプチドはG
4Sリンカー配列によってZMEと融合している。右側のパネルは、発現された融合タンパク質のそれぞれのGrB酵素活性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、GrBに基づく融合構築物免疫毒素の構築および調製を示す図である。Aは、融合性ペプチド26を伴わないまたは伴う、scFv 4D5およびGrBを含有する免疫GrB構築物の概略図である。Bは、精製された免疫GrBを還元条件下および非還元条件下でSDS-PAGEによって分析した図である。
【
図6-1】
図6は、GrBに基づく融合物の特徴付けおよび比較についての図である。Aは、ELISAによる、免疫GrB構築物のHer2/neu ECD、Her2/neu陽性BT474 M1細胞、およびHer2/neu陰性Me180細胞に対するK
dである。Bは、融合タンパク質のGrB部分の、ネイティブなGrBと比較した酵素活性を示す。Cは、25nMの免疫毒素を用いて処理した4時間後のBT474 M1細胞およびMe180細胞の内部移行分析について示す。細胞を、PI核対比染色を伴う、抗GrB抗体(FITCと結合体化した二次抗体)を用いた免疫蛍光染色に供した。Dは、BT474 M1細胞における25nMの免疫GrBの細胞内挙動のウエスタンブロット分析について示す。
【
図6-2】
図6は、GrBに基づく融合物の特徴付けおよび比較についての図である。Aは、ELISAによる、免疫GrB構築物のHer2/neu ECD、Her2/neu陽性BT474 M1細胞、およびHer2/neu陰性Me180細胞に対するK
dである。Bは、融合タンパク質のGrB部分の、ネイティブなGrBと比較した酵素活性を示す。Cは、25nMの免疫毒素を用いて処理した4時間後のBT474 M1細胞およびMe180細胞の内部移行分析について示す。細胞を、PI核対比染色を伴う、抗GrB抗体(FITCと結合体化した二次抗体)を用いた免疫蛍光染色に供した。Dは、BT474 M1細胞における25nMの免疫GrBの細胞内挙動のウエスタンブロット分析について示す。
【
図6-3】
図6は、GrBに基づく融合物の特徴付けおよび比較についての図である。Aは、ELISAによる、免疫GrB構築物のHer2/neu ECD、Her2/neu陽性BT474 M1細胞、およびHer2/neu陰性Me180細胞に対するK
dである。Bは、融合タンパク質のGrB部分の、ネイティブなGrBと比較した酵素活性を示す。Cは、25nMの免疫毒素を用いて処理した4時間後のBT474 M1細胞およびMe180細胞の内部移行分析について示す。細胞を、PI核対比染色を伴う、抗GrB抗体(FITCと結合体化した二次抗体)を用いた免疫蛍光染色に供した。Dは、BT474 M1細胞における25nMの免疫GrBの細胞内挙動のウエスタンブロット分析について示す。
【
図7-1】
図7は、BT474 M1親ハーセプチン耐性(HR)細胞およびBT474 M1親ラパチニブ耐性(LR)細胞のアポトーシス経路に対する免疫GrBの影響を示す。Aは、アネキシンV/PI染色アッセイによるGrB/4D5/26のアポトーシスの検出について示す。Me180細胞がHer2/neu陰性対照群としての機能を果たした。Bは、GrBに基づく融合構築物によるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-9ならびにPARPによる切断および活性化のウエスタンブロット分析について示す。Cは、GrB/4D5/26のアポトーシスの動態および特異性のウエスタンブロット調査について示す。細胞を、100μMのzVAD-fmkを親細胞またはHR細胞では24時間にわたって、LR細胞では最大48時間にわたって伴ってまたは伴わずに、GrB/4D5/26を用いて最大24時間処理した。
【
図7-2】
図7は、BT474 M1親ハーセプチン耐性(HR)細胞およびBT474 M1親ラパチニブ耐性(LR)細胞のアポトーシス経路に対する免疫GrBの影響を示す。Aは、アネキシンV/PI染色アッセイによるGrB/4D5/26のアポトーシスの検出について示す。Me180細胞がHer2/neu陰性対照群としての機能を果たした。Bは、GrBに基づく融合構築物によるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-9ならびにPARPによる切断および活性化のウエスタンブロット分析について示す。Cは、GrB/4D5/26のアポトーシスの動態および特異性のウエスタンブロット調査について示す。細胞を、100μMのzVAD-fmkを親細胞またはHR細胞では24時間にわたって、LR細胞では最大48時間にわたって伴ってまたは伴わずに、GrB/4D5/26を用いて最大24時間処理した。
【
図7-3】
図7は、BT474 M1親ハーセプチン耐性(HR)細胞およびBT474 M1親ラパチニブ耐性(LR)細胞のアポトーシス経路に対する免疫GrBの影響を示す。Aは、アネキシンV/PI染色アッセイによるGrB/4D5/26のアポトーシスの検出について示す。Me180細胞がHer2/neu陰性対照群としての機能を果たした。Bは、GrBに基づく融合構築物によるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-9ならびにPARPによる切断および活性化のウエスタンブロット分析について示す。Cは、GrB/4D5/26のアポトーシスの動態および特異性のウエスタンブロット調査について示す。細胞を、100μMのzVAD-fmkを親細胞またはHR細胞では24時間にわたって、LR細胞では最大48時間にわたって伴ってまたは伴わずに、GrB/4D5/26を用いて最大24時間処理した。
【
図7-4】
図7は、BT474 M1親ハーセプチン耐性(HR)細胞およびBT474 M1親ラパチニブ耐性(LR)細胞のアポトーシス経路に対する免疫GrBの影響を示す。Aは、アネキシンV/PI染色アッセイによるGrB/4D5/26のアポトーシスの検出について示す。Me180細胞がHer2/neu陰性対照群としての機能を果たした。Bは、GrBに基づく融合構築物によるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-9ならびにPARPによる切断および活性化のウエスタンブロット分析について示す。Cは、GrB/4D5/26のアポトーシスの動態および特異性のウエスタンブロット調査について示す。細胞を、100μMのzVAD-fmkを親細胞またはHR細胞では24時間にわたって、LR細胞では最大48時間にわたって伴ってまたは伴わずに、GrB/4D5/26を用いて最大24時間処理した。
【
図8-1】
図8は、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞におけるミトコンドリア経路に対する免疫GrBの影響を示す図である。Aは、ミトコンドリア経路における上流成分であるBcl-2およびBIDに対するGrBに基づく融合タンパク質の影響を示す。Bは、チトクロムcの放出およびBaxのトランスロケーションに対する免疫GrBの影響を示す。
【
図8-2】
図8は、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞におけるミトコンドリア経路に対する免疫GrBの影響を示す図である。Aは、ミトコンドリア経路における上流成分であるBcl-2およびBIDに対するGrBに基づく融合タンパク質の影響を示す。Bは、チトクロムcの放出およびBaxのトランスロケーションに対する免疫GrBの影響を示す。
【
図9】
図9は、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞における、Her2/neuおよびERシグナル伝達経路に対するGrB/4D5およびGrB/4D5/26の影響のウエスタンブロット分析について示す図である。細胞を、100nMの免疫GrBを用いて24時間または48時間にわたって処理し、総細胞溶解物を数量化し、ウエスタンブロット分析によってpHer2/neu、pAkt、pmTOR、pERK、エストロゲン受容体(strogen receptor)(ER)、プロゲステロン受容体m(PR)、およびPI-9のレベルについてさらに評価した。
【
図10】
図10は、BT474 M1腫瘍異種移植片におけるGrB/4D5/26の腫瘍アポトーシス活性を示す図である。Aは、BT474 M1側腹部腫瘍を有するマウスに、食塩水または44mg/kgのGrB/4D5/26を示されている時間(矢印)に静脈内注射した。平均腫瘍体積を、デジタルカリパスを用いて測定したW×L×Hとして算出した。Bは、食塩水およびGrB/4D5/26を静脈内注射した後の腫瘍試料の免疫蛍光染色を示す。注射の24時間後に動物を屠殺し、凍結腫瘍切片を調製し、抗GrB抗体(緑色)および抗マウスCD31抗体(赤色)によって検出した。DNA染色のためにHoechst33342(青色)を使用した。Cは、TUNELアッセイによる腫瘍組織におけるアポトーシスの検出を示す。
【
図11】
図11は、ハーセプチンの添加を伴うGrB/4D5/26のMDA MB453細胞に対する競合的な細胞傷害性を示すグラフである。MDA MB453細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、一晩付着させた。その後、細胞を、種々の濃度のGrB/4D5/26を用いて処理するか、または5μMのハーセプチンを用いて6時間にわたって前処理し、その後さまざまな濃度のGrB/4D5/26と一緒に処理した。72時間後に、細胞をクリスタルバイオレットで染色した。
【
図12】
図12は、種々のがん細胞におけるHer2/neuおよびPI-9の発現レベルのウエスタンブロット分析を示す図である。全細胞溶解物(50μg)をSDS-PAGEによって分析し、抗Her2/neuまたは抗PI-9抗体を用いて免疫ブロットし、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した二次抗体と一緒にインキュベートし、化学発光を検出した。アクチンをローディングコントロールとして使用した。
【
図13】
図13は、エンドソーム溶解性試薬であるクロロキンのGrB/4D5/26の細胞死滅活性に対する影響を示すグラフである。BT474 M1および誘導体を、15μMのクロロキンを伴って、または伴わずに、種々の濃度のGrB/4D5/26と一緒にインキュベートした。72時間後、生存細胞の相対数をクリスタルバイオレットアッセイによって決定した。
【
図14】
図14は、Her2/neu陽性細胞およびHer2/neu陰性細胞に対するGrB/4D5のアポトーシス効果を示すグラフである。アポトーシスを評価するために、細胞を6ウェルプレート当たり細胞5×10
5個で播種し、次いで、100nMのGrB/4D5で48時間にわたって処理した。アポトーシスによる細胞死の発生をアネキシンV/PI染色アッセイによって検出した。
【
図15】
図15は、BT474 M1親細胞ならびにそれに由来するハーセプチン耐性細胞およびラパチニブ耐性細胞のウエスタンブロットによる特徴付けについて示す図である。特性には、各細胞株におけるHerファミリーメンバーおよびERファミリーメンバーの発現および活性化、下流のERKおよびAktの活性、ならびに内在性GrB阻害剤であるPI-9のレベルが含まれた。
【
図16】
図16は、BT474 M1親および耐性バリアントにおけるPI-9のmRNAレベルを示す図である。細胞を回収し、RNAを抽出した。PI-9およびβ-アクチンのmRNAの発現レベルを半定量的逆転写PCRによって検出した。
【
図17】
図17は、4D5-IgG1と、それに対してHerceptin(登録商標)の、Her2細胞外ドメイン(ECD)に対する親和性に関するELISA試験の結果を示すグラフである。
【
図18-1】
図18は、種々のGrB抗体融合構築物を示す概略図である。左上のパネルは、基本的なIgG構造を示す。右上のパネルは、切断可能なリンカーによって軽鎖と融合したGrBを含むIgG構造を示す。左下のパネルは、切断可能なリンカーによって重鎖と融合したGrBを含むIgG構造を示す。右下のパネルは、C末端に単鎖抗体が融合した重鎖(Fc)と融合したGrBを示す。
【
図18-2】
図18は、種々のGrB抗体融合構築物を示す概略図である。左上のパネルは、基本的なIgG構造を示す。右上のパネルは、切断可能なリンカーによって軽鎖と融合したGrBを含むIgG構造を示す。左下のパネルは、切断可能なリンカーによって重鎖と融合したGrBを含むIgG構造を示す。右下のパネルは、C末端に単鎖抗体が融合した重鎖(Fc)と融合したGrBを示す。
【
図19】
図19は、N末端において融合したGrB構築物と、それに対してC末端において融合したGrB構築物の、遊離した活性なGrBに対するプロテイナーゼの切断部位を有するものと有さないものの細胞傷害性を測定するための試験の結果を示す図である。下のパネルは、構築物「HCB」(HMEL scFv-G4S-YVDEVD(配列番号25)-GrB);「WH」(GrB-G4S-INF7-HMEL scFv);および「HNB」(HMEL scFv-G4S-GrB)の概略図を示す。右側のパネルのグラフは、HMEL scFv標的受容体を欠くMEF3.5-/-細胞に対する構築物の細胞傷害性を示す。左側のパネルのグラフは、HMEL scFv標的受容体を有するAAB527細胞に対する構築物の細胞傷害性を示す。
【
図20】
図20は、野生型GrB(右のレーン)または「A」変異(C210A)を含むGrBとの抗体融合物を分離するために使用するSDS-PAGEゲルの再生について示す図である。結果により、野生型GrBとの抗体融合物の場合では、融合タンパク質に対応する確定したバンドは存在しなかったことが示される。対照的に、GrB「A」変異体により、ゲルにおいて明らかな確定したバンドによって証明される通り、有意な量のインタクトな融合タンパク質が産生された。遊離抗体、融合タンパク質および非特異的なベクタータンパク質が移動した位置が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
I.本発明
近年、種々の悪性疾患を処置するための標的化がん療法が開発されてきた。これらの薬剤は、その細胞標的化の特異性により、化学療法などの従来の療法と比較してより有効であり、かつ生じる副作用が少ない。しかし、そのような標的化療法であっても、多くの場合、患者における実質的な割合の標的がん細胞を有効に死滅させるために十分に高い比活性は有さない。同様に、標的化療法であっても、多くの場合、患者における標的でない細胞の死滅に起因し得る副作用を回避するためには十分に特異的ではない。本明細書において提供される新しい治療薬および方法は、標的細胞集団に対して毒性が強く、かつ高度に特異的な細胞標的化構築物を提供することによってこれらの不備に対処する。
【0051】
本明細書において実証されている通り、本発明において提供されるGrB「ペイロード」ポリペプチドは、安定性と活性の両方が改善されている。この特質のそれぞれにより、標的細胞に対するGrBペイロードの毒性が増大する。さらに、GrB分子の比活性が増強されることにより、療法に関してより少ない投与量が有効になり、それにより、標的化療法の可能性のある毒性の副作用が低減し得る。具体的には、当該実施形態の組換えGrBポリペプチドは、以下の特徴の1つまたは複数を含む:(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(b)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失;(c)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(d)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換または欠失;および/または(e)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失。
【0052】
したがって、一部の実施形態では、安定性および活性が増強された組換えグランザイムB(GrB)ポリペプチドが提供される。いくつかの態様では、そのようなGrBポリペプチドを、4D5抗体またはZME抗体などの細胞標的化部分と結合体化または融合し、それにより、高度に特異的な標的化細胞傷害性構築物をもたらすことができる。そのような態様では、所与の抗原を発現するがん細胞を特異的に標的として死滅させる一方で、他の細胞はインタクトなままにすることを可能にする標的化がん療法の方法が提供される。好ましい態様では、GrBポリペプチドおよび/または標的化部分は、ヒト被験体に投与された際に堅固な免疫応答を生じない実質的なヒトアミノ酸配列で構成される。例えば、当該実施形態の細胞標的化構築物は、N末端からC末端までに、組換えGrBポリペプチド、場合によってリンカー、CPP(例えば、T1またはINF7など)、および細胞標的化部分(例えば、ZMEなど)を含んでよい。そのような細胞標的化構築物は実施例4、実施例5、および実施例7において例示されている。それぞれの場合において、標的細胞と比較して高度に特異的であり、かつ毒性が強い活性を有する構築物が示されている。
【0053】
別の態様では、当該実施形態の細胞標的化構築物は、N末端からC末端までに、セリンプロテアーゼポリペプチド、場合によってリンカー、細胞標的化部分(例えば、4D5など)、場合によって第2のリンカー、およびCPP(例えば、CPP26など)を含む。そのような構築物は、本明細書において実施例8および実施例11に例示されており、Her2発現細胞に対する選択性の高い毒性が実証されている。興味深いことに、これらの構築物にCPPドメインを含めた場合、Her2発現細胞に対する細胞傷害性が著しく増大しただけでなく、抗Her2療法に対する耐性を獲得した細胞に対してさえも高度に有効なままであった(例えば、表12に示されている結果を参照されたい)。したがって、本発明において提供される標的化剤は、Her2受容体を標的とする他の治療薬に対する耐性を獲得した腫瘍のクラスに対してさえも有効である。したがって、これらの新しい構築物を使用して、療法に対する耐性を獲得したHer-2陽性がんを処置すること、または最初の段階で現行の治療薬と置き換えることによって耐性が獲得されることを予防することができる。
【0054】
II.セリンプロテアーゼポリペプチド
前述の概要に記載の通り、当該実施形態のある特定の態様は、
図1に示されているポリペプチドのうちの1つなどの短縮型セリンプロテアーゼを含む細胞標的化構築物に関する。好ましい態様では、当該実施形態に従って使用するためのセリンプロテアーゼは、ヒトポリペプチドまたは実質的なヒトポリペプチドである。例えば、短縮型セリンプロテアーゼは、グランザイムB(配列番号1)、グランザイムA(配列番号46)、グランザイムH(配列番号47)、グランザイムK(配列番号49)またはグランザイムM(配列番号49)から選択されるグランザイム、またはこれらのグランザイムポリペプチドの1つと少なくとも約80%、85%、90%または95%同一のポリペプチドであってよい。さらに別の態様では、セリンプロテアーゼは、IIGG、IVGGまたはILGGのN末端アミノ酸配列を有する(その成熟、活性型にある場合)Homo sapiens由来のプロテアーゼである。例えば、セリンプロテアーゼは、カテプシンG(配列番号50、NCBI受託番号P08311)、キマーゼ(配列番号51、NCBI受託番号P23946)、ミエロブラスチン(配列番号52、NCBI受託番号P24158)、カリクレイン-14(配列番号53、NCBI受託番号Q9P0G3)、補体因子D(配列番号54、NCBI受託番号K7ERG9)、PRSS3タンパク質(配列番号55、NCBI受託番号A1A508)、トリプシン-1(配列番号56、NCBI受託番号P07477)、セリンプロテアーゼ57(配列番号57、NCBI受託番号Q6UWY2)またはPRSSL1タンパク質(配列番号58、NCBI受託番号B7ZMF6)、または、これらのプロテアーゼポリペプチドの1つと少なくとも約80%、85%、90%または95%同一のポリペプチドであってよい。
【0055】
ある特定の非常に具体的な態様では、当該実施形態に従って使用するためのセリンプロテアーゼはGrBポリペプチドである。したがって、本実施形態において使用するための分子の1つまたは複数としては、これだけに限定されないが、以下の特徴の1つまたは複数を含むヒトGrB(配列番号1)が挙げられる:(a)Asp37に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(b)Asp150に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(c)Asn51に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、(d)Asn84に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失、および/または(e)Cys210に対応する位置におけるアミノ酸置換もしくは欠失。例えば、本実施形態に従って使用するためのGrB配列は、ヒトGrBと少なくとも70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上同一のGrBポリペプチドを含んでよい。ある特定の態様では、別の種(ヒト以外)由来のGrBの対応する位置のアミノ酸が1つまたは複数のアミノ酸で置換された組換えGrB配列が提供される。
【0056】
ある場合では、セリンプロテアーゼポリペプチドまたはその一部は、非ヒト供給源に由来してもよく、相同なヒトポリペプチドに由来してもよい。例えば、GrBの場合では、ポリペプチドは、Pan troglodytesのGrB(配列番号2);Pan paniscusのGrB(配列番号3);Pongo abeliiのGrB(配列番号4);Macaca nemestrinaのGrB(配列番号5);Macaca mulattaのGrB(配列番号6);Macaca fascicularisのGrB(配列番号7);Sus scrofaのGrB(配列番号8);Bos taurusのGrB(配列番号9);Rattus norvegicusのGrB(配列番号10);またはMus musculusのGrB(配列番号11)の対応する位置におけるアミノ酸に対する1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでよい(
図1Aを参照されたい)。同様に、当該実施形態のグランザイムポリペプチドは、異なるグランザイムコード配列の対応する位置におけるアミノ酸に対する1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでよい(例えば、
図1Bを参照されたい)。さらに別の態様では、当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼは、異なる相同なセリンプロテアーゼコード配列の対応する位置におけるアミノ酸に対する1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでよい(例えば、
図1Cを参照されたい)。これらのポリペプチドの間では高い相同性が共有されるので、上記の対応するアミノ酸位に対するそのような置換により、発現された際にプロテアーゼ活性を維持するコード配列がもたらされることが予測される。
【0057】
追加的な態様では、セリンプロテアーゼポリペプチドを、それらの酵素活性を維持しながら1つまたは複数の他のアミノ置換によってさらに改変することができる。例えば、1つまたは複数の位置においてアミノ酸置換を行うことができ、置換は、同様の親水性を有するアミノ酸に対するものである。タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指標(hydropathic amino acid index)の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(KyteおよびDoolittle、1982年)。アミノ酸の相対的なハイドロパシー特性が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、今度はそれにより、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用が定義されることが許容される。したがって、そのような保存された置換をGrBにおいて行うことができ、これによるそれらの活性に対する影響はほんの小さなものであると見込まれる。米国特許第4,554,101号において詳述されている通り、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(0.5);ヒスチジン -0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。これらの値を指針として使用することができ、したがって、親水性値が±2の範囲内のアミノ酸の置換が好ましく、±1の範囲内のアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5の範囲内のアミノ酸の置換がさらに特別好ましい。したがって、本明細書に記載のGrBポリペプチドはいずれも、異なるが、同様の親水性値を有する相同なアミノ酸に対するアミノ酸の置換によって改変することができる。+/-1.0、または+/-0.5点の範囲内の親水性を有するアミノ酸は相同であるとみなされる。さらに、セリンプロテアーゼ配列を、その酵素活性を保持しながら、アミノ酸欠失、置換、付加または挿入によって改変することができることが企図される。
【0058】
III.細胞標的化部分
上記の通り、当該実施形態による細胞標的化部分は、例えば、抗体、増殖因子、ホルモン、ペプチド、アプタマーまたはサイトカインであってよい。例えば、当該実施形態による細胞標的化部分は、メラノーマ細胞などの皮膚がん細胞に結合し得る。gp240抗原は、種々の黒色腫において発現されるが正常組織では発現されないことが実証されている。したがって、当該実施形態のある特定の態様では、GrBおよびgp240に結合する細胞標的化部分を含む細胞標的化構築物が提供される。いくつかの場合には、gp240結合性分子は、ZME-018(225.28S)抗体または9.2.27抗体などの抗体であってよい。さらに好ましい実施形態では、gp240結合性分子は、scFvMEL抗体などの単鎖抗体であってよい。したがって、本発明の非常に具体的な実施形態では、scFvMELと結合体化したヒトGrBを含む細胞標的化構築物が提供される。
【0059】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、細胞標的化構築物は、乳がん細胞に向けられ得る。例えば、抗Her-2/neu抗体などのHer-2/neuに結合する細胞標的化部分をGrBと結合体化することができる。そのような細胞標的化構築物の1つの例は、単鎖抗Her-2/neu抗体scFv23とGrBとを含む融合タンパク質である。Her-2/neuに結合するscFv(FRP5)などの他のscFv抗体も本実施形態の組成物および方法に使用することができる(von Minckwitzら、2005年)。
【0060】
ある特定の追加的な実施形態では、がん細胞標的化部分は多数の種類のがん細胞に結合することが企図される。例えば、8H9モノクローナル抗体およびそれに由来する単鎖抗体は、乳がん、肉腫および神経芽細胞腫において発現される糖タンパク質に結合する(Ondaら、2004年)。別の例は、米国特許出願第2004005647号、およびWinthropら、2003年に記載されている、さまざまながんの種類において発現される抗原であるMUC-1に結合する細胞標的化剤である。したがって、ある特定の実施形態では、当該実施形態による細胞標的化構築物は複数のがんまたは腫瘍の種類を標的とし得ることが理解されよう。
【0061】
さらに、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン受容体およびゴナドトロピン放出ホルモン受容体などのホルモン受容体を含めた、ある特定の細胞表面分子が腫瘍細胞において高度に発現される(Nechushtanら、1997年)。したがって、対応するホルモンを、がん療法において細胞に特異的な標的化部分として使用することができる。
【0062】
種々の系列の造血細胞において多数の細胞表面受容体が同定されているので、これらの受容体に特異的なリガンドまたは抗体を、細胞に特異的な標的化部分として使用することができる。IL2も、IL2R+細胞を標的とするためのキメラタンパク質の、細胞に特異的な標的化部分として使用することができる。あるいは、B7-1、B7-2およびCD40などの他の分子を使用して、活性化T細胞を特異的に標的とすることができる(The Leucocyte Antigen Facts Book、1993年、Barclayら(編)、Academic Press)。さらに、B細胞はCD19受容体、CD40受容体およびIL4受容体を発現し、これらの受容体に結合する部分、例えば、CD40リガンド、IL4、IL5、IL6およびCD28などによって標的することができる。T細胞およびB細胞などの免疫細胞を排除することは、自己免疫、過敏症、移植拒絶応答の処置、およびリンパ系腫瘍の処置において特に有用である。自己免疫疾患の例は、多発性硬化症、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythemotisis)、強皮症、およびぶどう膜炎(uviatis)である。より詳細には、ミエリン塩基性タンパク質は多発性硬化症における免疫細胞による攻撃の主要な標的であることが公知であるので、このタンパク質を、多発性硬化症を処置するための細胞に特異的な標的化部分として使用することができる(WO97/19179;Beckerら、1997年)。
【0063】
特異的な細胞サブセットを標的とするために使用することができる他のサイトカインとしては、インターロイキン(IL1~IL15)、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、白血病抑制因子、腫瘍壊死因子、形質転換増殖因子、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子、および/または線維芽細胞増殖因子が挙げられる(Thompson(編)、1994年、The Cytokine Handbook、Academic Press、San Diego)。いくつかの態様では、標的化ポリペプチドは、Fn14受容体に結合するサイトカイン、例えば、TWEAKなどである(例えば、参照により本明細書に組み込まれるWinkles 2008年;Zhouら、2011年およびBurklyら、2007年を参照されたい)。
【0064】
ヘマトポエチン(4ヘリックスバンドル)(例えば、EPO(エリスロポエチン)、IL-2(T細胞増殖因子)、IL-3(重複コロニーCSF)、IL-4(BCGF-1、BSF-1)、IL-5(BCGF-2)、IL-6 IL-4(IFN-β2、BSF-2、BCDF)、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-13(P600)、G-CSF、IL-15(T細胞増殖因子)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、OSM(OM、オンコスタチンM)、およびLIF(白血病抑制因子)など);インターフェロン(例えば、IFN-γ、IFN-α、およびIFN-βなど);免疫グロブリンスーパーファミリー(例えば、B7.1(CD80)、およびB7.2(B70、CD86)など);TNFファミリー(例えば、TNF-α(カケクチン)、TNF-β(リンホトキシン、LT、LT-α)、LT-β、CD40リガンド(CD40L)、Fasリガンド(FasL)、CD27リガンド(CD27L)、CD30リガンド(CD30L)、および4-1BBL)など);ならびに特定のファミリーに割り当てられていないもの(例えば、TGF-β、IL 1α、IL-1β、IL-1 RA、IL-10(サイトカイン合成阻害剤F)、IL-12(NK細胞刺激因子)、MIF、IL-16、IL-17(mCTLA-8)、ならびに/またはIL-18(IGIF、インターフェロン-γ誘導因子)など)を含めた種々の公知のサイトカインが存在することが当業者には理解される。さらに、Fc受容体発現細胞を標的とするために抗体の重鎖のFc部分を使用すること、例えば、肥満細胞および好塩基球を標的とするためにIgE抗体のFc部分を使用することなどができる。
【0065】
さらに、いくつかの態様では、細胞標的化部分は、ペプチド配列または環状ペプチドであってよい。例えば、当該実施形態に従って使用することができる細胞標的化ペプチドおよび組織標的化ペプチドは、例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,232,287号;同第6,528,481号;同第7,452,964号;同第7,671,010号;同第7,781,565号;同第8,507,445号;および同第8,450,278号において提供される。
【0066】
過去数年にわたって、いくつかのモノクローナル抗体が治療的使用について認可され、著しい臨床的成功および商業的成功が達成されている。モノクローナル抗体の臨床的な有用性の大半は、モノクローナル抗体がそれらの標的に結合する親和性および特異性、ならびに、それらのサイズが比較的大きいことに起因して循環寿命が長いことから得られるものである。しかし、モノクローナル抗体は、半減期が短いことが有利である、またはサイズが大きいことにより潜在的な治療的活性の領域への物理的到達が阻害されるような適応症において使用するためには十分に適さない。
【0067】
したがって、非常に好ましい実施形態では、細胞標的化部分は、抗体またはアビマーである。抗体およびアビマーは、実質的にあらゆる細胞表面マーカーに対して生成することができ、したがって、これにより、目的の細胞集団の実質的に全てを標的としてGrBを送達する方法がもたらされる。細胞標的化部分として使用することができる抗体を生成するための方法は下で詳述されている。所与の細胞表面マーカーに結合するアビマーを生成するための方法は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20060234299号および同第20060223114号において詳述されている。
【0068】
抗体および抗体様標的化部分
上に示されている通り、いくつかの態様では、細胞標的化部分は、抗体である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、指定されたタンパク質またはペプチド、またはその断片に特異的に反応する免疫グロブリンおよびその断片を含むものとする。適切な抗体としては、これだけに限定されないが、ヒト抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、結合体化した抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒と結合体化または融合した抗体)、Small Modular Immuno Pharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、単鎖抗体、ラクダ様抗体(cameloid antibody)、抗体様分子(例えば、アンチカリン(anticalin))、および抗体断片が挙げられる。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片))、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す限りは抗体断片も包含する。いくつかの態様では、抗体は、重鎖のみを含むVHH(すなわち、抗原特異的VHH)抗体であってよい。例えば、そのような抗体分子は、ラマまたは他のラクダ科の動物の抗体(例えば、ラクダ科の動物のIgG2もしくはIgG3、またはそのようなラクダ科の動物のIgのCDRを示すフレーム)に由来するもの、またはサメ抗体に由来するものであってよい。本発明で使用するための抗体ポリペプチドは、任意の種類のものであってよい(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)。一般に、IgGおよび/またはIgMは、生理的状況において最も一般的な抗体であり、また、実験室の環境で最も容易に作製されるので、これらが好ましい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」とは、インタクトな抗体の一部、例えば、抗体の抗原結合性領域または可変領域などを包含する。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fc断片およびFv断片;トリアボディ;テトラボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。「抗体断片」という用語は、特異的な抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と同様に作用する任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質も包含する。例えば、抗体断片は、単離された断片、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖可変領域および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続した組換え単鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)、ならびに超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小の認識単位を包含する。
【0070】
「ミニ抗体」または「ミニボディ」も当該実施形態と共に使用されることが意図されている。ミニボディとは、ヒンジ領域によってsFvと隔てられたオリゴマー形成ドメインをC末端に含むsFvポリペプチド鎖である(Packら、1992年)。オリゴマー形成ドメインは、自己会合性α-へリックス、例えば、追加的なジスルフィド結合によってさらに安定化することができるロイシンジッパーを含む。オリゴマー形成ドメインは、ポリペプチドから機能的結合タンパク質へのin vivoにおけるフォールディングを容易にすると考えられているプロセスである膜を横切る方向性フォールディングと適合するように設計する。一般に、ミニボディは、当技術分野で周知の組換え方法を使用して産生される。例えば、Packら(1992年);Cumberら(1992年)を参照されたい。
【0071】
いくつかの場合には、抗体様分子は、抗体CDRドメインを提示するために使用することができるタンパク質足場である。そのようなタンパク質足場の起源は、これだけに限定されないが、フィブロネクチン(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20090253899号を参照されたい)および優先的にフィブロネクチンIII型ドメイン10、Staphylococcus aureusのプロテインAのドメインBから生じるプロテインZ、チオレドキシンA、または「アンキリンリピート」(Kohlら、2003年)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」および「テトラトリコペプチドリピート」などの繰り返しモチーフを伴うタンパク質の中から選択される構造であってよい。種々の抗体に基づく構築物および断片を調製し、使用するための技法は当技術分野で周知である。アンチカリンなどの追加的な抗体様分子は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20100285564号、20060058510号、20060088908号、20050106660号、PCT出願公開第WO2006/056464号および(Skerra、2001年)に詳しく記載されている。
【0072】
抗体様結合性ペプチド模倣薬も当該実施形態において意図されている。Liuら(2003年)は、切り詰め型抗体としての機能を果たし、また、血清半減期がより長いこと、ならびに合成方法があまり煩わしくないという特定の利点を有するペプチドである「抗体様結合性ペプチド模倣薬」(ABiP)を記載している。同様に、いくつかの態様では、抗体様分子は環状ペプチドまたは二環式ペプチドである。例えば、抗原結合性二環式ペプチドを単離するための方法(例えば、ファージディスプレイによって)、およびそのようなペプチドを使用するための方法が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100317547号において提供される。
【0073】
モノクローナル抗体(MAb)は、ある特定の利点、例えば、再現性および大規模生産を有すると理解されている。本発明の実施形態は、ヒト起源、マウス起源、サル起源、ラット起源、ハムスター起源、ウサギ起源およびニワトリ起源のモノクローナル抗体を提供する。調製が容易であり、試薬がすぐに利用可能であるので、マウスモノクローナル抗体が多くの場合に好ましい。
【0074】
「ヒト化」抗体も、ヒト定常領域ドメインおよび/または可変領域ドメイン、二重特異性抗体、組換え抗体および工学的に産生された抗体、ならびにその断片を有するマウス、ラット、または他の種由来のキメラ抗体として意図されている。本明細書で使用される場合、「ヒト化」免疫グロブリンという用語は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(通常はマウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つまたは複数のCDRとを含む免疫グロブリンを指す。CDRをもたらす非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と称され、フレームワークをもたらすヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と称される。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖免疫グロブリンおよびヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。本発明において提供されるものなどの抗体をヒト化するための方法は当技術分野で周知である、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Harveyら、2004年を参照されたい。
【0075】
IV.融合タンパク質および結合体
A.リンカー
種々のリンカーを当該実施形態の短縮型セリンプロテアーゼ構築物に使用することができる。いくつかの態様では、リンカーは、1つまたは複数のアミノ酸(例えば、2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個またはそれ以上のアミノ酸)のランダムなひと続きであり得る。当該実施形態に従って使用するためのいくつかの特異的なリンカーとしては、218リンカー(GSTSGSGKPGSGEGSTKG;配列番号13)、HLリンカー(EAAAK;配列番号14)およびG4Sリンカー(GGGGS;配列番号15)が挙げられる(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Robinsonら、1998年;Araiら、2004年およびWhitlowら、1993年)。
【0076】
別の態様では、リンカーは、ポリペプチド構築物の異なるドメインをタンパク質分解による切断などによって分離する手段としての機能を果たし得る。例えば、リンカー領域は、内在性細胞内プロテアーゼによって認識される切断部位などのプロテアーゼ切断部位を含んでよい。さらに別の態様では、プロテアーゼ切断部位は、ある特定の細胞型においてのみ切断される部位(例えば、感染細胞においてのみ切断される、HIVプロテアーゼなどのウイルスのプロテアーゼによって切断される部位)であってよい。当該実施形態に従って使用するためのプロテアーゼ切断部位の例としては、限定することなく、トロンビン、フューリン(Goyalら、2000年)およびカスパーゼ切断部位が挙げられる。
【0077】
当該実施形態の細胞標的化構築物は、当技術分野において以前に記載されている種々の結合体化または連結によってつながっていてよい。一実施例では、選択的に切断可能なリンカーまたはアミノ酸配列などの生物学的に放出可能な結合を使用することができる。例えば、腫瘍の環境に優先的に位置するまたはその中で活性な酵素の切断部位を含むペプチドリンカーが考えられている。例えば、ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビン、第IXa因子、第Xa因子、または、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、もしくはストロメライシンなどのメタロプロテイナーゼによって切断されるリンカー。好ましい実施形態では、細胞内プロテイナーゼによって切断されるリンカーにより、標的化構築物が標的とする細胞に切断前にインタクトに内部移行されることが可能になるので、これが好ましい。
【0078】
選択的に切断可能なリンカー、合成リンカー、またはグリシンリッチリンカーなどの他のアミノ酸配列などのアミノ酸は上記されており、これを使用して、タンパク質性の成分を分離することができる。いくつかの特定の実施例では、本実施形態において使用するためのリンカーとしては、218リンカー(GSTSGSGKPGSGQGSTKG)(配列番号13)またはG4Sリンカー(GGGGS)(配列番号15)が挙げられる。さらに、GrBと細胞標的化部分を結合体化するために首尾よく使用することができる多数の種類のジスルフィド結合含有リンカーが公知であるが、一般に、異なる薬理的特性および能力に基づいて、ある特定のリンカーが他のリンカーよりも好ましい。例えば、立体「障害のある」ジスルフィド結合を含有するリンカーはin vivoにおける安定性がより大きく、したがって、作用部位に結合する前に毒素部分が放出されることが予防されるので、これが好ましい。
【0079】
B.結合体
さらに、当業者に公知の任意の他の連結/カップリング剤および/または機構、例えば、抗体-抗原相互作用、アビジンビオチン連結、アミド連結、エステル連結、チオエステル連結、エーテル連結、チオエーテル連結、リン酸エステル連結、ホスホルアミド連結、酸無水物連結、ジスルフィド連結、イオン性相互作用および疎水性相互作用、二重特異性抗体および抗体断片、またはこれらの組合せなどを使用して、当該実施形態の成分を組み合わせることができる。
【0080】
血液中で妥当な安定性を有する架橋剤を使用することが意図されている。標的化剤と治療/予防剤を結合体化するために首尾よく使用することができる多数の種類のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害のあるジスルフィド結合を含有するリンカーにより、in vivoにおけるより大きな安定性がもたらされ、それにより、作用部位に到達する前に標的化ペプチドが放出されることが予防されることが証明され得る。したがって、これらのリンカーは連結剤の1つの群である。
【0081】
別の架橋試薬はSMPTであり、これは、近接するベンゼン環およびメチル基による「立体障害のある」ジスルフィド結合を含有する二官能性架橋剤である。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオレート陰イオンによる攻撃から結合を保護する機能を果たし、それにより、付着した薬剤が標的部位に送達される前に結合体が脱カップリングされることを予防するのに役立つと考えられる。
【0082】
SMPT架橋試薬は、多くの他の公知の架橋試薬と同様に、システインのSHまたは第一級アミンなどの官能基(例えば、リシンのイプシロンアミノ基)に架橋結合する能力をもたらす。別の可能性のある種類の架橋剤としては、切断可能なジスルフィド結合を含有するヘテロ二官能性光反応性アジ化フェニル、例えば、スルホサクシニミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオン酸などが挙げられる。N-ヒドロキシ-スクシンイミジル基は第一級アミノ基と反応し、アジ化フェニルは(光分解されると)、任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0083】
障害のある架橋剤に加えて、障害のないリンカーも本発明に従って使用することができる。他の有用な架橋剤としては、保護されたジスルフィドを含有または生成しないと考えて、SATA、SPDPおよび2-イミノチオランが挙げられる(Thorpeら、1987年)。そのような架橋剤の使用は当技術分野において十分に理解されている。別の実施形態は、柔軟なリンカーの使用を伴う。
【0084】
米国特許第4,680,338号には、リガンドとアミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質の結合体を産生するため、特に、キレート化剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体結合体を形成するために有用な二官能性リンカーが記載されている。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号には、種々の穏やかな条件下で切断可能な不安定な結合を含有する切断可能な結合体が開示されている。
【0085】
米国特許第5,856,456号では、ポリペプチド構成物を接続して融合タンパク質、例えば、単鎖抗体を作製することにおいて使用するためのペプチドリンカーが提供される。リンカーは、約50アミノ酸までの長さであり、荷電アミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリシン)、その後のプロリンの少なくとも1回の出現を含有し、より大きな安定性および凝集の減少を特徴とする。米国特許第5,880,270号には、種々の免疫診断技法および分離技法において有用な、アミノオキシを含有するリンカーが開示されている。
【0086】
C.細胞透過性および膜トランスロケーションペプチド
さらに、ある特定の態様では、ライブラリー配列は、ORF配列内に、細胞結合性ドメインまたは細胞透過性ペプチド(CPP)などの公知の機能を有するポリペプチドをコードする配列のセグメントを、cDNAに由来する配列またはランダム化配列と一緒に含んでよい(すなわち、融合タンパク質をコードするORFを生成するために)。したがって、ある特定の態様では、当該実施形態のDNA分子は、CPPコード配列をライブラリー配列(例えば、ランダム化配列など)のセグメント、CPPコード配列の5’、CPPコード配列の3’またはその両方と一緒に含むORFを含む。本明細書で使用される場合、「細胞透過性ペプチド」および「膜トランスロケーションドメイン」という用語は、互換的に使用され、ポリペプチドが細胞膜(例えば、真核細胞の場合では原形質膜)を横切ることを可能にするポリペプチド配列のセグメントを指す。CPPセグメントの例としては、これだけに限定されないが、HIV Tatに由来するセグメント(例えば、GRKKRRQRRRPPQ;配列番号18)、ヘルペスウイルスVP22、ショウジョウバエアンテナペディアホメオボックス遺伝子産物、プロテグリンI、ペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK;配列番号16)またはメリチン(GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ;配列番号17)が挙げられる。ある特定の態様では、CPPは、T1 CPP配列(TKIESLKEHG;配列番号19)、T2 CPP配列(TQIENLKEKG;配列番号20)、26 CPP配列(AALEALAEALEALAEALEALAEAAAA;配列番号22)またはINF7 CPP配列(GLFEAIEGFIENGWEGMIEGWYGCG;配列番号21)を含む。
【0087】
V.投与および医薬製剤
一部の実施形態では、有効量の細胞標的化構築物を細胞に投与する。他の実施形態では、治療有効量の標的化構築物を、疾患を処置するために個体に投与する。「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、当該実施形態のGrBなどの、細胞を標的とする短縮型セリンプロテアーゼの、単独でまたは細胞傷害性療法と組み合わせて投与した場合にそれを投与した細胞または組織における生理的変化をもたらすために必要な量と定義される。「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、がんなどの疾患の有害作用を排除する、減少させる、遅延させる、または最小限にする当該実施形態の標的化分子の量と定義される。多くの場合、細胞を標的とするセリンプロテアーゼ構築物によって治癒はもたらされない可能性があるが、少なくとも1つの症状の軽減または改善などの部分的な利益だけはもたらされる可能性があることは当業者には容易に理解される。一部の実施形態では、いくらかの利益がある生理的変化も治療的に有益であるとみなされる。したがって、一部の実施形態では、細胞を標的とするセリンプロテアーゼ(例えば、GrB)の生理的変化をもたらす量が「有効量」または「治療有効量」とみなされる。さらに、治療有効量は、同時にまたは逐次的に施される追加的な処置レジメンの包含に依存的であり得ることが明らかである。したがって、ある特定の実施形態では、物理的変化が第2の治療的処置の効果の増強の構成要素となることが理解されよう。
【0088】
当該実施形態の細胞標的化構築物は、それ自体で、またはがん、自己免疫、移植拒絶反応、外傷後の免疫応答および感染症を処置するための医薬組成物の形態で、例えば、HIVのgp120などのウイルス性抗原を標的化することにより被験体に投与することができる。より詳細には、リンパ腫;自己免疫、移植拒絶反応、移植片対宿主病、虚血および脳卒中を含めた免疫細胞媒介性障害に関与する細胞を排除することにおいて、キメラポリペプチドが有用であり得る。当該実施形態のタンパク質を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖剤形成(dragee-making)、溶離、乳化、カプセル封入、捕捉または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、薬学的に使用することができる、タンパク質の調製物への加工を容易にする1つまたは複数の生理的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または助剤を使用して従来の様式で製剤化することができる。適切な製剤は選択される投与経路に依存的である。
【0089】
好ましい実施形態では、当該実施形態の方法および組成物によってがん細胞を処置することができる。当該実施形態による細胞標的化構築物を用いて処置することができるがん細胞としては、これだけに限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、睾丸、舌、または子宮に由来する細胞が挙げられる。さらに、がんは、特に以下の組織型であってよいがこれだけに限定されない:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;石灰化上皮腫;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌; 肝細胞癌と胆管細胞癌の混合;索状腺癌(trabecular adenocarcinoma);腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性結腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌(branchiolo-alveolar adenocarcinoma);乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌(acidophil carcinoma);好酸性腺癌;好塩基性癌(basophil carcinoma);明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭および濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌(endometroid carcinoma);皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;腺癌(扁平上皮化生を伴う);胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;男性ホルモン産生細胞腫、悪性;セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫(malig melanoma);類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル芽細胞歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル芽細胞線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏枝神経膠腫;乏突起膠腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の指定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;およびヘアリー細胞白血病。
【0090】
好ましい実施形態では、細胞標的化構築物の全身性製剤が考えられている。全身性製剤としては、注射、例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、髄腔内注射または腹腔内注射によって投与するために設計されたもの、ならびに経皮投与、経粘膜投与、吸入による投与、経口投与または肺内投与のために設計されたものが挙げられる。最も好ましい実施形態では、細胞を標的とするセリンプロテアーゼを、直接静脈内投与または腫瘍内投与することによって送達する。
【0091】
注射に関しては、当該実施形態のタンパク質は、水溶液中に、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理的食塩水緩衝液などの生理的に適合する緩衝液中に製剤化することができる。溶液は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化用薬剤を含有してよい。
【0092】
あるいは、タンパク質は、使用する前に適切なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水を用いて構成するための散剤の形態であってよい。
【0093】
A.有効な投与量
当該実施形態の細胞を標的とするセリンプロテアーゼは、一般に、意図された目的を達成するために有効な量で使用される。疾患状態を処置または予防するための使用に関しては、当該実施形態の分子またはその医薬組成物を治療有効量で投与または適用する。治療有効量は、症状を改善させるもしくは予防する、または処置されている患者の生存を延長するために有効な量である。治療有効量の決定は、特に、本明細書において提供される詳細な開示を踏まえて、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0094】
全身投与に関しては、最初にin vitroアッセイから治療有効用量を推定することができる。例えば、動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されるIC50を含む循環濃度範囲が達成されるように用量を設定することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。
【0095】
最初の投与量は、当技術分野で周知の技法を使用してin vivoのデータ、例えば、動物モデルから推定することもできる。当業者は、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0096】
投薬の量および間隔は、治療効果を維持するために十分な分子の血漿中レベルがもたらされるように個別に調整することができる。注射による投与に関しては、通常の患者への投与量は1日当たり約0.1mg/kg~5mg/kg、好ましくは1日当たり約0.5mg/kg~1mg/kgにわたる。治療的に有効な血清中レベルは、毎日複数回投与を行うことによって達成することができる。
【0097】
局部投与または選択的摂取の場合には、タンパク質の有効な局所濃度は血漿中濃度に関連しない場合がある。当業者は、過度な実験を伴わずに治療的に有効な局部投与量を最適化することができる。
【0098】
投与する分子の量は、当然、処置を受ける被験体、被験体の体重、苦痛の重症度、投与の様式および処方する医師の判断に依存的となる。
【0099】
療法は、症状が検出可能である間、または症状が検出可能ではない時でさえも断続的に繰り返すことができる。療法は、単独で、または他の薬物と組み合わせて提供することができる。自己免疫障害の場合では、当該実施形態のセリンプロテアーゼの構築物と組み合わせて使用することができる薬物としては、これだけに限定されないが、ステロイド性抗炎症剤および非ステロイド性抗炎症剤が挙げられる。
【0100】
B.毒性
治療有効用量の本明細書に記載の細胞を標的とするGrBにより、実質的な毒性を引き起こすことなく治療的利益がもたらされることが好ましい。
【0101】
本明細書に記載の分子の毒性は、細胞培養物または実験動物において標準の薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)またはLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を決定することによって決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は治療指数である。高い治療指標を示すタンパク質が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトにおける使用に関して毒性ではない投与量の範囲を設定することに使用することができる。本明細書に記載のタンパク質の投与量は、毒性をほとんどまたは全く伴わない有効用量を含む循環濃度の範囲内に入ることが好ましい。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動してよい。厳密な製剤、投与経路および投与量は、個々の医師が患者の状態を考慮して選択することができる。(例えば、Finglら、1975年を参照されたい)。
【0102】
C.医薬調製物
当該実施形態の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解または分散させた、有効量の1つまたは複数のキメラポリペプチド、またはキメラポリペプチドと少なくとも1つの追加的な薬剤を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、必要に応じて、例えばヒトなどの動物に投与した際に、有害なアレルギー性反応または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を指す。少なくとも1つのキメラポリペプチドまたは追加的な活性成分を含有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年に例示されている通り、本開示を考慮して、当業者には分かるであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって要求される滅菌、発熱性、一般的な安全性および純度の標準に適うべきであることが理解されよう。
【0103】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」とは、当業者に公知の任意のかつ全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性物質、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤(isotonic agent)、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、色素、同様の材料およびこれらの組合せを包含する(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年、1289~1329頁を参照されたい)。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物または医薬組成物におけるその使用が意図される。
【0104】
細胞を標的とするセリンプロテアーゼは、固体、液体またはエアロゾルのいずれの形態で投与するか、および注射などの投与経路のために滅菌する必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含んでよい。当該実施形態の本療法は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜を通じて、心膜内に、臍帯内に、眼内に、経口的に、局所的に、局部的に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射によって、注入によって、持続注入によって、標的細胞を直接浸す局部灌流によって、カテーテルによって、洗浄によって、クレーム中で、脂質組成物(例えば、リポソーム)中で、または当業者に公知の他の方法もしくは上記の任意の組合せによって投与することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年を参照されたい)。
【0105】
動物患者に投与する当該実施形態の組成物の実際の投薬量は、患者の体重、状態の重症度、処置される疾患の種類、以前のまたは同時に行われる治療介入、特発性疾患、および投与経路などの物理的因子および生理的因子によって決定することができる。いずれにしても、投与に関与する実践者により、組成物中の活性成分(複数可)の濃度および個々の被験体に対する適切な用量(複数可)が決定される。
【0106】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでよい。他の実施形態では、活性化合物は、単位の重量の約2%~約75%、または例えば約25%~約60%、およびその中の導き出せる任意の範囲を構成してよい。他の非限定的な例では、上記の数に基づいて、体重1kg当たり約5mg~体重1kg当たり約100mg、体重1kg当たり約5マイクログラム~体重1kg当たり約500ミリグラムなどを含み得る用量を投与することができる。
【0107】
どんな場合でも、組成物は、1つまたは複数の成分の酸化を阻止するために種々の抗酸化剤を含んでよい。さらに、微生物の作用の予防は、これだけに限定されないが、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはこれらの組合せを含めた種々の抗細菌剤および抗真菌剤などの防腐剤によってもたらすことができる。
【0108】
組成物が液体の形態で提供される実施形態では、担体は、これだけに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびこれらの組合せを含めた溶媒または分散媒であってよい。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって;例えば、液体ポリオールまたは脂質などの担体中の分散剤によって必要な粒度を維持することによって;例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性物質を使用することによって;またはそのような方法の組合せによって維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウムまたはこれらの組合せなどを含むことが好ましい。
【0109】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、上に列挙されている種々の他の成分と一緒に適切な溶媒に組み込み、必要に応じて、その後、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒および/または他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液、懸濁剤または乳剤を調製するための滅菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、活性成分と任意の追加的な所望の成分の散剤を予め滅菌濾過したその液体培地から得る真空乾燥またはフリーズドライ技法である。液体培地は、必要であれば適切に緩衝し、液体希釈剤を、まず、注射前に十分な生理食塩水またはグルコースを用いて等張性にするべきである。直接注射用の高度に濃縮された組成物の調製も意図されており、その場合、非常に急速な透過をもたらし、高濃度の活性薬剤を狭い面積に送達するためにDMSOを溶媒として使用することが企図される。
【0110】
組成物は、製造および保管の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。内毒素コンタミネーションは安全なレベルで最小限に、例えば、タンパク質1mg当たり0.5ng未満で維持されるべきであることが理解されよう。
【0111】
特定の実施形態では、注射用組成物の持続的な吸収は、組成物中に、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはこれらの組合せなどの吸収を遅延させる薬剤を使用することによってもたらすことができる。
【0112】
VI.併用療法
当該実施形態の核酸、ポリペプチドまたはナノ粒子複合体の効果を増大させるために、これらの組成物を、目的の疾患の処置において有効な他の薬剤と組み合わせることが望ましい。
【0113】
非限定的な例として、がんの処置は、当該実施形態の細胞を標的とするセリンプロテアーゼ治療薬と他の抗がん剤を一緒に用いて実行することができる。「抗がん」剤により、被験体におけるがんに、例えば、がん細胞を死滅させること、がん細胞におけるアポトーシスを誘導すること、がん細胞の成長速度を低下させること、転移の発生率もしくは数を低減させること、腫瘍サイズを低下させること、腫瘍の成長を阻害すること、腫瘍もしくはがん細胞への血液供給を減少させること、がん細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進すること、がんの進行を予防もしくは阻害すること、またはがんの被験体の寿命を増大させることによって負の影響を及ぼすことができる。より一般的には、これらの他の組成物は、細胞の増殖を死滅させるまたは阻害するために有効な、合わせた量で提供される。このプロセスは、細胞を抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体、および薬剤(複数可)または多数の因子(複数可)に同時に接触させることを伴ってよい。これは、細胞を、薬剤の両方を含む単一の組成物または薬理学的製剤と接触させることによって、または、細胞を、一方が抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体を含み、他方が第2の薬剤(複数可)を含む2つの別個の組成物または製剤に同時に接触させることによって達成することができる。特定の実施形態では、抗がんペプチドが一方の薬剤であってよく、抗がんナノ粒子複合体が他方の薬剤であってよい。
【0114】
抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体を用いた処置は、他の薬剤による処置よりも先に行ってもよく、その後に、数分から数週間までにわたる間隔で行ってもよい。他の薬剤および抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体を細胞に別々に適用する実施形態では、一般に、各送達時の間に長期間が過ぎず、したがって、薬剤および抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体により、細胞に対する有利に組み合わされた効果がなお発揮されることを確実にする。そのような例では、細胞を、両方のモダリティと、互いと約12~24時間以内に、より好ましくは、互いと約6~12時間以内に接触させることができることが意図されている。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(例えば、2日、3日、4日、5日、6日または7日)から数週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間)が経過する場合、処置の期間を著しく延長することが望ましい。
【0115】
セリンプロテアーゼに基づく療法を「A」とし、放射線治療、化学療法または抗炎症剤などの二次的な薬剤を「B」として、種々の組合せを使用することができる:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A
A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
ある特定の実施形態では、本実施形態のGRB療法の患者への施行は、もしあれば、ベクターの毒性を考慮に入れて、化学療法薬を投与するための一般的なプロトコールに従う。処置サイクルは必要に応じて繰り返されることが予想される。種々の標準の療法、ならびに外科的介入を、記載されている過剰増殖細胞療法と組み合わせて適用することができることも意図されている。
【0116】
A.化学療法
がん療法は、種々の併用療法も含む。いくつかの態様では、当該実施形態のセリンプロテアーゼ治療薬を化学療法剤と併せて投与する(または製剤化する)。例えば、いくつかの態様では、化学療法剤は、EGFR、VEGFR、AKT、Erb1、Erb2、ErbB、Syk、Bcr-Abl、JAK、Src、GSK-3、PI3K、Ras、Raf、MAPK、MAPKK、mTOR、c-Kit、eph受容体またはBRAF阻害剤などのプロテインキナーゼ阻害剤である。プロテインキナーゼ阻害剤の非限定的な例としては、アファチニブ、アキシチニブ、ベバシズマブ、ボスチニブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ホスタマチニブ(Fostamatinib)、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ(Mubritinib)、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ルクソリチニブ、サラカチニブ(Saracatinib)、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、AP23451、ベムラフェニブ、MK-2206、GSK690693、A-443654、VQD-002、ミルテホシン、ペリホシン、CAL101、PX-866、LY294002、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、アルボシジブ、ゲニステイン、セルメチニブ、AZD-6244、バタラニブ、P1446A-05、AG-024322、ZD1839、P276-00、GW572016またはこれらの混合物が挙げられる。
【0117】
さらに別の併用化学療法としては、例えば、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)など;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなど;アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)など;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)およびトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine)を含めたエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体であるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン合成類似体、カルゼレシン合成類似体およびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソ尿素(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)など;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ1IおよびカリチアマイシンオメガI1など;ジネミシンAなどを含めたジネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネートなど;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンCなど、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)など;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサートなど;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎剤(anti-adrenal)、例えば、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸(frolinic acid)など;アセグラトン;アルドホスファミド 配糖体;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサマイトシンなど;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなど;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸など;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリカマイシン(plicomycin)、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される組成物は、ゲフィチニブと組み合わせて使用することができる。他の実施形態では、当該実施形態をGleevacと組み合わせて実施することができる(例えば、1日当たり約400~約800mgのGleevacを患者に投与することができる)。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の化学療法薬を本明細書において提供される組成物と組み合わせて使用することができる。
【0118】
B.放射線治療
放射線治療は、処置において広範囲にわたって使用されており、一般に、γ線、X線、および/または放射性同位元素の腫瘍細胞への誘導性送達として公知のものを含む。マイクロ波およびUV照射などの他の形態の放射線治療も意図されている。これらの因子の全てが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が非常に高い。X線の線量の範囲は、長期間(3~4週間)にわたって1日50~200レントゲンの線量から、2000~6000レントゲンの単回照射までにわたる。放射性同位元素の投与量の範囲は広範に変動し、同位元素の半減期、放射される放射線の強度および種類、ならびに新生細胞による取り込みに依存する。
【0119】
「接触させる」および「曝露させる」という用語は、細胞に適用される場合、本明細書では、治療用組成物および化学療法薬または放射線治療剤を標的細胞に送達する、または標的細胞の近位に直接置くプロセスを記載するために使用される。細胞の死滅または均衡状態を達成するために、両方の薬剤を、細胞を死滅させるまたは細胞の分裂を妨げるために有効な、合わせた量で細胞に送達する。
【0120】
C.免疫療法
免疫療法薬は、一般に、がん細胞を標的とし、破壊するために免疫エフェクター細胞および分子を使用することに依拠する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であってよい。抗体は単独で療法のエフェクターとしての機能を果たすこともでき、他の細胞を動員して細胞死滅に実際に影響を及ぼすこともできる。抗体を薬物または毒素(化学療法薬、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合体化し、単に標的化剤として機能させることもできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってよい。種々のエフェクター細胞は細胞傷害性T細胞およびNK細胞を含む。
【0121】
したがって、免疫療法を本実施形態のセリンプロテアーゼ療法と併せて併用療法の一部として使用することができる。併用療法の一般的な手法を以下に考察する。一般に、腫瘍細胞は、標的化に適した、すなわち、大多数の他の細胞には存在しないいくつかのマーカーを有さなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、そのいずれもが当該実施形態において標的化に適し得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、がん胎児性抗原、前立腺特異的抗原、尿中の腫瘍関連抗原、胎児の抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、Sialyl Lewis抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が挙げられる。
【0122】
D.遺伝子療法
さらに別の実施形態では、二次的な処置は、治療用ポリヌクレオチドを治療用組成物の前に、その後に、またはそれと同時に投与する遺伝子療法である。遺伝子産物を発現させるためのウイルスベクターは当技術分野で周知であり、それらとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルスを含めたポックスウイルス、およびSV40を含めたパピローマウイルス(papiloma viruses)のような真核生物の発現系が挙げられる。あるいは、発現構築物の投与は、リポソームまたはDOTAP:コレステロール小胞などの脂質に基づくベクターを用いて達成することができる。これらの方法は全て当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、1989年;Ausubelら、1998年;Ausubel、1996年を参照されたい)。
【0123】
以下の遺伝子産物のうちの1つをコードするベクターを送達することには、標的組織に対する複合的な抗過剰増殖効果がある。種々のタンパク質が当該実施形態の範囲内に包含され、それらは当技術分野で周知である。
【0124】
E.外科手術
がんの人のおよそ60%がいくつかの種類の外科手術を受け、それらとして、予防的外科手術、診断または病期分類のための外科手術、治癒的外科手術および待機的外科手術が挙げられる。治癒的外科手術は、本明細書において提供される処置、化学療法、放射線治療、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替の療法などの他の療法と併せて使用することができるがん処置である。
【0125】
治癒的外科手術としては、がん性組織の全部または一部を物理的に除去、摘出、および/または破壊する切除が挙げられる。腫瘍の切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍の切除に加えて、外科手術による処置として、レーザー外科手術、冷凍外科療法、電気外科手術、および顕微鏡で制御された外科手術(モース手術)が挙げられる。さらに、当該実施形態は、表在性のがん、前がん、または偶発的な量の正常組織の除去と併せて使用することができることが意図されている。
【0126】
がん性の細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を摘出すると、体内に腔が形成され得る。処置は、追加的な抗がん療法の領域の灌流、直接注射または局所適用によって達成することができる。そのような処置は、例えば、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、もしくは7日ごと、または1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、および5週間または1カ月ごと、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、6カ月ごと、7カ月ごと、8カ月ごと、9カ月ごと、10カ月ごと、11カ月ごと、または12カ月ごとに繰り返すことができる。これらの処置は、投与量も変動するものであってよい。
【実施例0127】
以下の実施例は、当該実施形態の好ましい実施形態を実証するために含まれる。本発明者が発見した技法に従う、実施例に開示されている技法が当該実施形態の実施において十分に機能し、したがって、それを実施するための好ましい方式を構成するとみなすことができることが当業者には理解されるべきである。しかし、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでも本発明の主旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果が得られることが当業者には理解されるべきである。
【0128】
(実施例1)
GrB-VEGF融合構築物の試験
4つの異なる融合構築物を、野生型(ネイティブな)ヒトGrB(WT)、潜在的な自己切断ドメインの欠失を有する変異体(A)、1つのグリコシル化ドメインの変異を有する変異体(N1)および2つの変異を組み合わせた型(A、N1)を使用して生成した。構築物をPCRによって生成し、変異をDNA配列決定によって確認し、タンパク質を哺乳動物発現細胞にトランスフェクトした。タンパク質を発現させ、精製した。発現させたポリペプチドを用いたin vitroアッセイにより、酵素活性に関して同様のレベルが示された(
図3)。次いで、融合タンパク質を使用して、VEGFR-2受容体(PAE/VEGFR-2)を発現しているトランスフェクトされた内皮細胞または対照(PAE/VEGFR-1)細胞株を処理した。試験の結果が表1に示されている。示されている値はnM単位のIC
50値である。
【0129】
【0130】
これらの試験により、上記の改変によるグランザイムB融合タンパク質の全体的な発現/収率に対する影響はないことが示された。グランザイムB C210A変異の酵素活性および細胞傷害活性はネイティブなグランザイムBと同様であった。したがって、この変異体は、グランザイムB化学的結合体化試験の候補としてネイティブなグランザイムBよりも優れている。
【0131】
(実施例2)
GrB活性に対するリンカーの影響の調査
GrB配列とZME配列の間に異なるリンカーを使用して、上に示されている通りGrB-ZME(VL-VH)融合タンパク質を構築した。構築物SLにはG4Sリンカーを使用し、LLはHL(EAAAK)リンカーの4つの繰り返しであり、XはG4S+218リンカーであった。全てのリンカーで標的細胞に対する特異的な細胞毒性効果が示された。表2に示されている通り、最も短い柔軟なリンカーを含有する構築物で標的細胞に対する最良の細胞傷害性(最低のIC50)が実証された。したがって、この試験により、短いリンカーによってより有効な治療薬が生じ得ることが示された。
【0132】
【0133】
(実施例3)
標的化構築物の活性に対するGrBグリコシル化の影響
GrB分子(d1およびd2)ならびに改変GrB/scFvMEL融合構築物内の2つのグリコシル化部位を上記に詳述および
図4に示されている通り同定した(d1はN51Sを示し、d2はN84Aを示す)。各グリコシル化部位を改変し、次いで、両方の改変を含有する分子を生成した。個々の改変によるin vitroにおけるGrBの酵素活性に対する影響はわずかであった(例えば、
図4を参照されたい)。しかし、表3に示されている通り、グリコシル化部位のそれぞれを除去することにより、IC
50が元の野生型を含有するGrBよりも低い分子が生じた。非特異的な細胞株(SKOV3)に対する影響はわずかであった。
【0134】
【0135】
(実施例4)
標的化構築物の活性に対するGrBグリコシル化およびT1トランスロケーションドメインの影響
3つの発現構築物を開発し、試験した。(LL)はGrB-HL-HL-HL-HL-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-ZMEであった;(E)はGrB-HL-HL-HL-HL-T1-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-T1-ZMEであった;および(J)(LL)はGrB(d1、A、N)-HL-HL-HL-HL-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-ZMEであった。構築物を発現させ、試験した。結果が表4に示されており、T1ドメインを組み込むことにより、標的細胞に対する構築物の特異的な細胞傷害性が増大するが、非特異的毒性に対する影響はないことが実証される。d1改変GrBを構築物に組み込むことにより、構築物の特異的な細胞傷害性がさらに増大し、非特異的な細胞傷害性に対する影響はなかった。この結果は、GrB(d1、A、N)ポリペプチドを含む構築物の場合に特に明白であった。
【0136】
【0137】
(実施例5)
標的化構築物の活性に対するリンカー設計、トランスロケーションドメインおよび/またはエンドソーム切断可能ペプチドの影響
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(LL)はGrB-HL-HL-HL-HL-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-ZMEである、(E)はGrB-HL-HL-HL-HL-T1-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-T1-ZMEであった;(M1)はGrB-HL-HL-HL-HL-T1-Fur-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-T1-Fur-ZMEであった;(X)はGrB-G4S/218-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-ZMEであった;(W)はGrB-G4S/218-INF7-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-INF7-ZMEであった;および(WF)はGrB-G4S/218-INF7-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-INF7-Fur-ZMEであった。
【0138】
これらの構築物を発現させ、試験した。表5に示されている結果により、フューリンにより切断可能な部位を「E」分子(M1)に付加することにより、特異的な細胞株と非特異的な細胞株の両方の感受性が増大することが実証される。膜を横切るトランスロケーションを改善するためにINF7ペプチドを組み込むことにより、標的細胞の感受性が著しく増大した(構築物WおよびWF)。
【0139】
【0140】
(実施例6)
標的化構築物の活性に対するC末端トランスロケーションドメインの影響
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(LL)はGrB-HL-HL-HL-HL-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-ZMEであった;(F)はGrB-HL-HL-HL-HL-ZME(VL-VH)-ペネトラチンをコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-HL4-ZME-ペネトラチンであった;および(T)はGrB-G4S/218-ZME(VL-VH)-218-26をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-ZME-26であった。
【0141】
これらの構築物を発現させ、試験した。表6に示されている結果により、ペネトラチンを組み込むことによる融合構築物の生物活性に対する影響はないことが実証される。「26」分子を組み込むことにより、標的細胞に対する毒性および非標的細胞に対する毒性が同様に増大した。
【0142】
【0143】
(実施例7)
標的化構築物の活性に対する、相対的な位置が同じである異なる膜トランスロケーションペプチドの影響
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(U)はGrB-G4S/218-26-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-26-ZMEであった;(Y)はGrB-G4S/218-T1-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-T1-ZMEであった;(YY)はGrB-G4S/218-T2-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-T2-ZMEであった;および(W)はGrB-G4S/218-INF7-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-INF7-ZMEであった。
【0144】
これらの構築物を発現させ、試験した。表7に示されている結果により、「26」、T1、およびT2を含有する構築物(U、YおよびYY)の標的細胞に対する毒性は、非特異的な細胞株に対するものよりも低いことが実証される。INF7膜トランスロケーションペプチドを含有する構築物Wのみで特異性の明らかな改善が示された。
【0145】
【0146】
(実施例8)
膜トランスロケーションペプチドを有する標的化構築物および膜トランスロケーションペプチドを有さない標的化構築物の特異性
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(GrB)はGrBをコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrBであった;(GrB-26)はGrB-G4S/218-26をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-26である、(GrB-4D5)はGrB-G4S/218-4D5(Vl-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-4D5であった;および(GrB-4D5-26)はGrB-G4S/218-4D5(VL-VH)-218-26をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-4D5-26であった。
【0147】
これらの構築物を発現させ、試験した。表8に示されている結果により、GrB/4D5構築物はHER2を発現している標的細胞に対して活性ではないことが実証される。「26」トランスロケーションペプチドを組み込むことにより、HER2陽性細胞に対する感受性が回復したが、HER2陰性細胞に対する細胞傷害性は増大しなかった。
【0148】
【0149】
(実施例9)
標的化構築物の活性に対するエンドソーム切断ペプチド(ECP)の影響
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(XF)はGrB-G4S/218-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-ZMEであった;(UF)はGrB-G4S/218-26-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-26-Fur-ZMEであった;(YF)はGrB-G4S/218-T1-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-T1-Fur-ZMEであった;(WF)はGrB-G4S/218-INF7-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-G218-INF7-ZMEであった;および(ZF)はGrB-SSG-CCP-MTP-Fur-GSGSG-ZME(VL-VH)をコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrB-Ad2-ZMEであった。
【0150】
これらの構築物を発現させ、試験した。結果は表9に示されている。
【0151】
【0152】
(実施例10)
別のGrB融合構築物の細胞傷害活性の評価
別のGrB発現構築物を開発し、試験した。(GrB)はGrBをコードし、プラスミドの指定はpSECTag-GrBであった。(GrB-TWEAK)はGrB-G4S-TNF様アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)をコードするものであった。これらの構築物を発現させ、試験した。細胞毒性試験の結果が表10に示されている。
【0153】
【0154】
(実施例11)
Her2を標的とするGrB融合物の構築および特徴付け
細胞株および培養物。細胞株BT474 M1、NCI-N87、Calu3、MDA
MB435、およびMe180は全てAmerican Type Culture Collection(Manassas、VA)から入手した。ヒト乳がん細胞株MDA MB453はZhen Fan博士(The University of Texas MD Anderson Cancer Center、Houston、TX)から惜しみなく供給された。ヒト乳がん細胞株eB-1はDihua Yu博士(The University of Texas MD Anderson Cancer Center、Houston、TX)から好意で提供された。BT474 M1 HR細胞およびBT474 M1 LR細胞は、1μMのハーセプチンまたは1.5μMのラパチニブの継続的な存在下で12カ月の選択後にBT474 M1細胞から得た。BT474 M1 MDR-1細胞を、プラスミドpHaMDR1を親のBT474 M1細胞にトランスフェクトすることによって生成した。HEK 293T細胞株はBryant
G.Darnay博士(MD Anderson Cancer Center)から供給された。すべての細胞株を、10%熱不活化ウシ胎仔血清、2mMのL-グルタミン、および1mMの抗生物質を補充したダルベッコ改変イーグル培地またはRPMI1640培地中で維持した。
【0155】
GrBに基づく融合物の構築、発現、および精製。ヒト化抗Her2/neu scFv 4D5の配列を公開されたハーセプチン軽鎖可変ドメイン配列および重鎖可変ドメイン配列(Carterら、1992年)から得た。以前の知見により、融合性ペプチドの使用により、エンドソームからの脱出および大きな分子の細胞質ゾルへの送達が容易になることが示唆された(Plankら、1994年;Bongartzら、1994年)。したがって、本発明者らは融合性ペプチド26を組み込んだ。
【0156】
GrB/4D5/26 DNA構築物、GrB/4D5 DNA構築物、GrB/26
DNA構築物、およびGrB DNA構築物をオーバーラップポリメラーゼ連鎖反応法によって生成した。構築物の図解が
図5Aに示されている。本発明者らは、GrB、4D5(配列番号23)、またはペプチド26の個々の成分の間に組み込む普遍的な218リンカー(GSTSGSGKPGSGEGSTKG;配列番号13)を設計した。ペプチド26(AALEALAEALEALAEALEALAEAAAA;配列番号22)は、二量体形成を担う3つのC末端アミノ酸を有さない29残基の両親媒性ペプチドから生成した(Turkら、2002年)。構築物遺伝子の全てを、哺乳動物細胞発現ベクターpSecTag(Life Technologies、Carlsbad、CA)にクローニングした。
【0157】
合計3×107個のHEK 293T細胞を、50μgのプラスミドDNAおよび150μL(1mg/mL)のポリエチレンイミン試薬を使用し、それらをOPTI-MEM培地(Life Technologies)に加え、室温で20分インキュベートした後にトランスフェクション混合物を細胞に加えてトランスフェクトした。37℃、100%湿度、5%CO2で一晩インキュベートした後、DMEM無血清培地を加え、細胞をさらに3日間インキュベートした。以前報告された固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清からGrBに基づくタンパク質試料を精製した(Caoら、2009年)。タンパク質の活性化を、組換えエンテロキナーゼ(Merck、Whitehouse Station、NJ)と一緒に、製造者の説明書に従って一晩インキュベートすることによって達成した。リン酸緩衝食塩水で透析した後、タンパク質を濾過滅菌し、-80℃で保管した。
【0158】
GrBに基づく融合物を、GrBと4D5を、pH感受性融合性ペプチド26を構築物のC末端に付加することを伴って融合すること(GrB/4D5/26と称される;配列番号24)、またはpH感受性融合性ペプチド26を構築物のC末端に付加することを伴わずに融合すること(GrB/4D5と称される)によって生成した。さらに、GrBおよびGrB/26を対照として使用した。全ての融合タンパク質をヒト胎児由来腎臓細胞(HEK 293T)において発現させた。精製後、最終産物は予測された分子量の所に移動し、純度は>95%であった(
図5B)。
【0159】
結合親和性の分析。GrBに基づくタンパク質試料のKd値および特異性をELISAによって評価した。このアッセイでは、以前に記載されている通り、ウサギ抗c-myc抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼと結合体化したヤギ抗ウサギ免疫グロブリンGをトレーサーとして使用した(Caoら、2012年)。
【0160】
GrB/4D5/26およびGrB/4D5の結合親和性(K
d値)を、精製したHer2/neu細胞外ドメイン(ECD)、Her2/neu陽性BT474 M1ヒト乳がん細胞、およびHer2/neu陰性Me180ヒト子宮頸がん細胞を使用してELISAによって評価した。どちらの融合物もHer2/neu ECDおよびBT474 M1細胞に特異的に結合したが、Me180細胞には結合しなかった(
図6A)。最大半量の特異的結合(specific binding)を生じる融合構築物の濃度を算出することによって見かけのK
d値を決定した。GrB/4D5およびGrB/4D5/26では、Her2/neu ECDに対してそれぞれ0.329nMおよび0.469nM、ならびにBT474 M1細胞に対してそれぞれ0.383nMおよび0.655nMの見かけのK
d値が実証された。これらの結果は、概して、Her2/neu受容体に対するネイティブなハーセプチンに関して公開されたK
d値(0.15nM)と一致する(Carterら、1992年)。
【0161】
GrBに基づく融合物の酵素アッセイ。GrB成分の酵素活性を、連続的な比色定量アッセイにおいてN-α-t-ブトキシカルボニル-L-アラニル-L-アラニル-L-アスパルチル-チオベンジルエステル(BAADT)を特異的な基質として使用して決定した(Liuら、2003年)。アッセイは、25℃、BAADT中の市販のヒトGrB(Enzyme Systems Products、Livermore、CA)またはGrBに基づく融合タンパク質からなった。Thermomaxプレートリーダー(Columbia、MD)で405nmにおける吸光度の変化を測定した。405nmにおける13,100cm-1M-1の吸光係数を使用することによって試料の吸光度の増加を酵素的速度に変換した。GrBに基づく融合タンパク質の比活性を、ネイティブなGrBを標準物質として使用して算出した。
【0162】
融合物のGrB成分の生物活性を評価するために、本発明者らは、構築物の基質BAADTを切断する能力を、ネイティブな真正GrBのものと比較した(
図6B)。GrB/4D5およびGrB/4D5/26はインタクトなGrB酵素活性を有した(それぞれ1.54×10
5U/μmoLおよび1.57×10
5U/μmoL)。これらの活性は、ネイティブなGrB標準物質の活性(1.19×10
5U/μmoL)に匹敵した。プロGrB融合構築物はGrBのN末端に精製タグを含有し、それにより分子が酵素的に不活性になるので、これらのタンパク質はBAADTの加水分解を引き起こすことができなかった。
【0163】
融合構築物の細胞取り込みおよびGrB送達。免疫蛍光法に基づく内部移行試験を、BT474 M1細胞およびMe180細胞を使用して実施した。細胞を、25nMのGrB/4D5/26を用いて4時間処理し、抗GrB抗体(フルオレセインイソチオシアネート[FITC]と結合体化した二次抗体)を用いた免疫蛍光染色に供した。PIを用いて核を対比染色した。Zeiss LSM510共焦点レーザー走査顕微鏡Zeiss LSM510(Carl Zeiss、Thornwood、NY)を用いて免疫蛍光法の可視化を実施した。
【0164】
BT474 M1細胞では、融合タンパク質を用いて処理した後、どちらの融合物のGrB部分も主に細胞質ゾルにおいて観察されたが、Me180細胞では観察されず(
図6C)、これにより、どちらの構築物も、Her2/neu陽性細胞に曝露した後に細胞結合および内部移行において効率的であることが実証された。融合物の内部移行の効率をGrBシグナル(全長GrB融合物+遊離GrB)の時間依存的ウエスタンブロット分析によってさらに検査した(
図6D)。どちらの構築物も30分以内にBT474 M1細胞内に急速に内部移行した。GrB/4D5と比較して、GrB/4D5/26では、細胞への内部移行の増強および長い持続が示された。GrB/4D5またはGrB/4D5/26のエンドサイトーシス後のGrBの細胞内送達も時間依存的ウエスタンブロット法(遊離GrB)によって評価した。GrB/4D5によるGrB送達は48時間の処理に至るまで観察されなかったが、GrB/4D5/26によるGrB送達はおよそ4時間の処理で開始することが観察され、48時間まで非常に高レベルの遊離GrBが示された(
図6D)。
【0165】
GrBに基づく融合物のin vitroにおける細胞毒性効果。対数期の細胞を96ウェルプレートに播種し(1ウェル当たり細胞約5×103個)、一晩付着させた。細胞を、さまざまな濃度のGrBに基づく融合タンパク質、GrB、または培地と一緒に37℃で72時間さらにインキュベートした。以前に記載されている通り、クリスタルバイオレット染色法、その後のSorenson’s緩衝液中での色素の可溶化を使用して細胞の生存能力を決定した(Caoら、2009年)。
【0166】
GrBに基づく融合物をいくつもの腫瘍細胞株に対して試験した。72時間の曝露後、GrB/4D5/26ではHer2/neu陽性細胞に対する特異的な細胞傷害性が実証され、IC
50値は100nM未満であり(表11)、また、GrB/4D5ではいくらか高い用量の細胞毒性効果が実証された(>200nM)。さらに、GrB/26では、>600nMの用量で最小の細胞傷害性が示されたが、1.5μMに至る用量ではGrB自体の有意な活性は観察されなかった。Her2/neu陽性MDA MB453細胞を、ハーセプチン(5μM)を用いて6時間にわたって前処理し、その後にGrB/4D5/26を用いて72時間にわたって処理した場合、GrB/4D5/26の細胞傷害性は低下し(
図11)、それにより、GrB/4D5/26構築物の抗原結合の必要性が実証された。
【0167】
本発明者らは、種々の腫瘍細胞における内在性プロテイナーゼ阻害剤9(PI-9)の発現レベルをさらに調査した(
図12、表11)。これらの試験では、GrB構築物の細胞傷害性に対する細胞の応答とPI-9の内在性発現との関連性を見いだすことはできなかった。これは、PI-9以外の因子が、Her2/neuを発現している標的細胞に対するGrB/4D5/26細胞傷害性の観察された差異の原因になり得ることを示唆している可能性がある。
【0168】
【0169】
ハーセプチンまたはラパチニブに対して耐性の細胞に対するGrB/4D5/26の細胞毒性効果。ハーセプチンまたはラパチニブに対する獲得耐性は、Her2/neu下流シグナル伝達経路の同時上方制御またはエストロゲン受容体(ER)経路を通じたシグナル伝達の活性化によって媒介され得る(Wangら、2011年)。この試験では、本発明者らは、BT474 M1細胞のハーセプチン耐性(HR)バリアントおよびラパチニブ耐性(LR)バリアントのモデルを開発した。親のBT474 M1細胞は、ハーセプチン(IC50:52.5nM)とラパチニブ(IC50:34.7nM)のどちらに対しても直ちに感受性であった(表12)。HR細胞では、ハーセプチンに対する耐性(IC50:10.1μM、F.R.:192)が実証されたが、ラパチニブ(IC50:32.4nM)に対しては感受性のままであった。LR細胞では、高マイクロモル濃度のハーセプチン(IC50:74.1μM、F.R.:1411)とラパチニブ(IC50:8.2μM、F.R.:237)のどちらに対しても耐性が示された。表12に示されている通り、ハーセプチンに対して耐性の細胞では、GrB/4D5/26構築物に対して同等の感受性が実証された(HR細胞と親のBT474 M1細胞のどちらについてもIC50約30nM)。LR細胞については、IC50は親の細胞と比較してわずかに増加した(2倍)(それぞれ66.1nMと32.9nM)。
【0170】
本発明者らは、BT474 M1親細胞に上皮増殖因子(EGF)またはニューレグリン-1(NRG-1)増殖因子を添加することにより、ハーセプチンおよびラパチニブに対する細胞毒性反応を回避することができるが、β-エストラジオールを添加することではそれを回避することはできないことも実証した。BT474 M1細胞を20ng/mLのEGFまたは50ng/mLのNRG-1で72時間にわたって前処理することにより、ハーセプチンに対する耐性が400~500倍増大し、ラパチニブに対する耐性が16倍増大した(表12)。しかし、これらの耐性細胞を処理することにより、親のBT474 M1細胞と比較してGrB/4D5/26融合物に対する交差耐性は生じなかった。
【0171】
細胞をクロロキンの存在下でGrB/4D5/26と一緒にインキュベートすることにより、これらの細胞に対する細胞傷害性が改善されなかったことは重要な知見であった(
図13)。この所見により、融合性ペプチド26が、細胞内小胞からGrB融合タンパク質を効率的に放出し、それにより、細胞質ゾルのGrB基質への到達およびアポトーシスの誘導が可能になることが実証された。
【0172】
【0173】
GrB/4D5/26細胞傷害性の機構に関する試験。本発明者らは、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞のアポトーシスに至るタンパク質分解カスケードを開始させるGrBに基づく融合物の潜在性を評価するための実験のパネルを行った。
【0174】
アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)染色。アネキシンV/PI染色アッセイを使用して、GrB/4D5/26に曝露した後にアポトーシスを受ける細胞の百分率を定量的に決定した。細胞を6ウェルプレートに播種し(1ウェル当たり細胞5×105個)、100nMのGrB/4D5/26と一緒に37℃で24時間または48時間インキュベートした。細胞のアリコートをリン酸緩衝食塩水で洗浄し、次いで、アネキシンV-FITC抗体と一緒にインキュベートした。インキュベーションの最後にPI溶液を加え、細胞をすぐにフローサイトメトリーによって分析した。
【0175】
生存可能な集団が減少したことと、早期アポトーシスの集団がより多かったことの組み合わせによって示される通り、GrB/4D5/26により、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞におけるアポトーシスが誘導された(
図7A)。100nMのGrB/4D5ではこれらの細胞のいずれにおいてもアポトーシスは誘導されなかった(
図14)。Her2/neu陰性Me180細胞はいすれの構築物の影響も受けなかった。
【0176】
カスパーゼの活性化。ウエスタンブロット分析を使用して、カスパーゼ-3の活性化、およびカスパーゼ-9の活性化ならびにPARPによる切断を同定した。BT474 M1細胞をGrB/4D5/26で処理することにより、全ての細胞においてカスパーゼ3、カスパーゼ9、およびPARPによる切断がもたらされたが、細胞をGrB/4D5で処理した場合には活性化は起こらなかった(
図7B)。BT474 M1の親細胞およびHR細胞と比較して、LR細胞ではカスパーゼ-9、カスパーゼ-3、およびPARPの活性化が遅延し、これは、観察された細胞毒性効果の低下と同時に起こった。
【0177】
本発明者らは、BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞においてGrB/4D5/26によって誘導されるPARPによる切断の動態をさらに評価し、親細胞およびHR細胞では薬物に曝露した2時間後に切断が起こったが、LR細胞では24時間の時点で切断が起こったことを見いだした(
図7C)。さらに、汎カスパーゼ阻害剤zVAD-fmkの存在下では、全ての細胞においてGrB/4D5/26のPARPによる切断が部分的に阻害された。この所見は、カスパーゼ-3による切断、その後のPARPによる切断に関してGrB活性に依拠する機構と一致する。
【0178】
ミトコンドリア経路に対する影響。GrB/4D5またはGrB/4D5/26を用いて処理した後、細胞を採取し、0.5mLの1×細胞質ゾル抽出緩衝液混合物(BioVision、Milpitas、CA)に再懸濁させ、次いで、氷冷したガラスホモジナイザーでホモジナイズした。ホモジネートを遠心分離し、上清を採取し、細胞質ゾル画分として標識した。ペレットを0.1mLのミトコンドリア抽出緩衝液に再懸濁させ、ミトコンドリア画分として保存した。細胞質ゾル画分およびミトコンドリア画分それぞれのアリコートを、チトクロムcを認識する抗体およびBaxを認識する抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を用いてウエスタンブロット法によって分析した。さらに、Bcl-2を認識する抗体およびBIDを認識する抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用したウエスタンブロット分析によってアポトーシスについて分析した。
【0179】
本発明者らは、GrB/4D5/26によって誘導される、いくつかのミトコンドリアが関連する経路による細胞死を検出した。BT474 M1親細胞、BT474 M1 HR細胞、およびBT474 M1 LR細胞では、GrB/4D5/26処理により、BIDが活性化され、抗アポトーシスBcl-2タンパク質が下方制御され(
図8A)、それにより、ミトコンドリアから細胞質ゾルへのチトクロムcの放出が誘発された(
図8B)。Baxは通常、無処理の細胞の細胞質ゾルとミトコンドリアのどちらにも存在する。しかし、細胞をGrB/4D5/26で処理すると、Baxは細胞質ゾルでは減少し、ミトコンドリアでは増加する(
図8B)。以前に記載されている通り、GrB/4D5/26を用いて24時間にわたって処理することにより、BT474 M1の親細胞とHR細胞のどちらにおいてもミトコンドリア経路が活性化されるが、この活性化はLR細胞では遅延することが示された。
【0180】
Her関連シグナル伝達経路およびER関連シグナル伝達経路に対するGrB融合物の影響。処理後、細胞溶解物を、Her2/neuを認識する抗体およびリン酸化(p)-mTOR(S2448)を認識する抗体(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)、ならびにp-Her2/neu(Tyr877)を認識する抗体、p-Her2/neu(Tyr1221/1222)を認識する抗体、EGF受容体を認識する抗体、p-EGF受容体(Thr845)を認識する抗体、Her3を認識する抗体、p-Her3(Tyr1328)を認識する抗体、IGF1受容体を認識する抗体、p-IGF1受容体(Tyr 1165/1166)を認識する抗体、ERを認識する抗体、PRを認識する抗体、Aktを認識する抗体、p-Aktを認識する抗体、ERKを認識する抗体、p-ERK(Thr 177/Thr160)を認識する抗体、PTENを認識する抗体、PI-9を認識する抗体、およびβ-アクチンを認識する抗体(全てSanta Cruz Biotechonology)を用いてウエスタンブロット法によって分析した。化学発光の増強によって免疫反応性タンパク質を可視化した。
【0181】
本発明者らは、BT474 M1親細胞および耐性バリアントにおけるHer関連シグナル伝達事象およびER関連シグナル伝達事象に対する構築物の機構的な影響を検査した。
図15に示されている通り、ハーセプチンに対して耐性の細胞ではHerファミリー受容体の活性が増強したが、プロゲステロン受容体(PR)およびPI-9のレベルは低下した。対照的に、LR細胞では、Herファミリー受容体の活性が全体的に下方制御されたが、ER、PR、およびPI-9は高レベルであった。
【0182】
GrB/4D5またはGrB/4D5/26を用いて処理した細胞では、これらのシグナル伝達経路に対する影響が実証され、これは、本発明者らが観察した細胞傷害性の結果に対応する(
図9)。GrB/4D5/26を用いて処理することにより、Her2/neuシグナル伝達カスケードにおける重大な事象であるHer2/neuおよびその下流の分子であるAkt、mTORおよびERKのリン酸化が著しく阻害された。対照的に、GrB/4D5では、これらの経路に対して比較的低い影響が示された。本発明者らは、全ての細胞でERレベルの低下を観察した。他の研究者からの証拠により、ラパチニブを用いてER陽性細胞株およびHer2/neu陽性細胞株におけるER経路の上方制御により、脱出/生存経路が創出されることが実証されているが(Wangら、2011年;Liuら、2009年)、GrB/4D5/26は、これらの細胞におけるシグナル伝達経路の全てを不活化することができると思われる。本発明者らは、LR細胞に対するGrB/4D5/26のシグナル伝達の影響が親細胞またはHR細胞と比較して遅延することも観察し、これは、LR細胞に関して観察されたアポトーシスによる細胞死の結果と一致した。特に、この耐性株ではPI-9のmRNAおよびタンパク質レベルが上昇したが、親細胞またはHR細胞では上昇しなかった(
図15および16)。総合すると、これらの結果により、ER経路の活性化により、PI-9の発現が上方制御され、これにより、親細胞と比較してGrB/4D5/26活性のわずかな阻害およびアポトーシスによる細胞死の遅延がもたらされることが示唆される。
【0183】
本発明者による調査により、GrB/4D5/26融合物が、Her2/neu陽性細胞に対して、それが従来のHer2/neu治療剤であるハーセプチンおよびラパチニブに対する耐性を獲得した細胞であっても、GrB/4D5構築物よりも細胞傷害性であることが示唆される。細胞傷害性の結果は、シグナル伝達に対して観察された影響と同時に起こり、これらの経路をモニタリングすることが薬効のモニタリングとして有用であり得る。
【0184】
MDR-1発現細胞に対するGrB/4D5/26の影響。多剤耐性(MDR)は、種々の理由から生じる現象である。MDRの最も特徴付けられている原因は、P-糖タンパク質(Pgp)として公知の170kDaの膜糖タンパク質の過剰発現である。MDR-1が発現しているHer2/neu陽性細胞に対するGrBに基づく融合物の影響を検証するために、本発明者らは、プラスミドpHaMDR1を親のBT474 M1細胞にトランスフェクトすることによってBT474 M1 MDR-1細胞を生成した。表13に示されている通り、親細胞と比較して、BT474 M1 MDR-1では、タキソールに対して209倍の耐性、およびビンブラスチンに対して89倍の耐性が示された。しかし、本発明者らは、MDR-1細胞のGrB/4D5構築物とGrB/4D5/26構築物に対する交差耐性を観察することはできなかった。したがって、GrBに基づく融合構築物により、標的細胞に対して、それが化学療法剤に対する獲得耐性を有する細胞であっても、広範囲の細胞傷害性が実証される。
【0185】
【0186】
異種移植片モデルにおけるGrB/4D5/26融合物の抗腫瘍活性。本発明者らは、BALB/cヌードマウスを使用して、全身投与後の侵襲性乳がんに対するGrB/4D5/26のin vivoにおける影響を評価した。各マウスに、BT474 M1細胞1×10
7個を右側の側腹部に注射する2週間前に開始して、3mg/kgのエストラジオールシピオネートを週に1回、皮下注射した(Jeromeら、2006年;Gullyら、2010年)。細胞を接種した後3日目に、マウスに食塩水またはGrB/4D5/26(44mg/kg)のいずれかを、1週間当たり5回、2週間にわたって静脈(尾静脈)内注射した。さらに50日にわたって動物をモニタリングし、腫瘍を測定した(カリパス)。食塩水と比較して、GrB/4D5/26により、観察した50日にわたって腫瘍の進行が著しく遅くなった(
図10A)。この用量ではGrB/4D5/26のマウスに対する明白な毒作用はなく、これにより、このスケジュールにおける最大耐量には達していなかったことが示唆される。
【0187】
最後に、本発明者らは、BT474 M1腫瘍を有するマウスに投与した後のGrB/4D5/26の局在化を決定した。生理食塩水またはGrB/4D5/26を最後に注射した24時間後に、マウスを屠殺し、切片スライドのための調製において腫瘍試料をすぐに凍結させた。試料スライドを、抗GrB抗体(FITCと結合体化した二次抗体)または末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性ニック末端標識(TUNEL)反応混合物のいずれかと一緒に、ならびに抗マウスCD31抗体(フィコエリトリンと結合体化した二次抗体)と一緒にインキュベートし、さらにHoechst33342を用いた核対比染色に供した。免疫蛍光観察をZeiss Axioplan 2 imaging microscope(Carl Zeiss)の下で実施した。
【0188】
免疫蛍光染色により、GrB/4D5/26が直ちにかつ特異的に腫瘍組織に局在したことが確認された(
図10B)。この観察により、GrB/4D5/26により、Her2/neuを過剰発現している腫瘍細胞をin vivoにおいて有効に標的することができ、観察可能な毒性がない状態で有意な腫瘍の成長抑制効果を実証できることがさらに示唆された。腫瘍組織の核をTUNELで染色することにより(
図10C)、GrB/4D5/26処理群では腫瘍組織がアポトーシス核を示したことが明白に実証された。さらに、GrB/4D5/26の腫瘍内分布は、主に広範囲にわたるアポトーシス応答を伴う領域に集中すると思われた(
図10BのGrb/4D5/26の分布と
図10CのTUNEL染色を比較されたい)。
【0189】
これらの試験では、本発明者らは、ヒトGrBをアポトーシス誘導エフェクターとして含有する新規のヒト抗Her2/neu免疫毒素を構築した。GrBは、一部において、このセリンプロテアーゼが多様かつ周知の細胞傷害性作用の機構を発揮するので、標的化治療適用のための理想的なペイロードであると思われる(TrapaniおよびSutton、2003年;ChowdhurtyおよびLieberman、2008年)。興味深いことに、この試験により、カスパーゼ活性化の阻害剤の構築物の全体的な細胞傷害性に対する影響はわずかであることが見いだされ、これは、この分子によって活性化されるアポトーシス促進性の経路が多数、重複して存在することの証拠になり、また、これにより、このクラスの薬剤に対する耐性の出現は生物学的な展望から難しい可能性があることが示唆される。
【0190】
名目上の細胞傷害性プロセスでは、GrBは、パーフォリン媒介性膜貫通ポアの作用によって標的細胞に直接浸透する。このプロセスは、リソソーム区画を迂回し、それにより、GrBが細胞質ゾル基質に直接接近することが可能になる(Motykaら、2000年)。抗体に媒介される事象によるGrBの内部移行により腫瘍細胞特異性がもたらされるが、Her2/neuの場合では、内部移行はリソソーム区画を通って進行する可能性が高い。本発明者の最適な構築物に関して、本発明者らは、26残基の融合性ペプチドを含めた。中性のpHでは、このペプチドはランダムな立体配置を有するが、酸性リソソーム条件下では、このペプチドは、両親媒性へリックスであると仮定され、それにより、リソソーム膜が破壊され、融合構築物の細胞質ゾルへの送達を改善することが可能になる(Turkら、2002年)。
【0191】
Dalkenら(2006年)により、Her2/neuを標的とする融合構築物GrB/FRP5の構築および生物活性が記載された。この薬剤は、標的細胞に対して特異的に細胞傷害性であり、IC50値がnM以下の範囲であるが、細胞傷害活性は、リソソーム向性薬剤(lysomotropic agent)であるクロロキンの添加に依存的であることが示された。クロロキンの不在下では、薬剤の細胞傷害性は10~300分の1に低下し、したがって、構築物が主にリソソーム区画内に隔離され、アポトーシスのカスケード機構を活性化するためには利用可能でなくなっている可能性があることが示唆される。融合性のpH感受性ペプチド26を本発明者の構築物に組み込むことにより、GrB融合物の活性を増強するためのリソソーム向性薬剤の必要性が回避されると思われ、また、これにより、細胞内により高い濃度の標的タンパク質がもたらされた。このペプチドの使用には、GrB成分の酵素活性に対する影響もなく、Her2/neu受容体への4D5の結合活性に対する影響もないと思われた。最後に、26成分が存在することにより、in vitroにおける抗原陰性細胞に対する構築物の非特異的毒性の増強もなく、本発明者の異種移植片試験における静脈内投与中の構築物の明らかな毒性の増加もないと思われた。
【0192】
抗腫瘍有効性試験により、BT474 M1異種移植片モデルにおいて、総用量が44mg/kgのGrB/4D5/26が有効であったことが実証された。この用量は、約140mg/m2の総用量に変換される。T-DM1結合体の臨床的な用量レベルはおよそ3.6mg/kg(約280mg/m2)であり、これは、本発明者が外挿したGrB構築物についての臨床的な用量よりもおよそ2倍高い。本発明者の試験により、処置スケジュールの間に死亡または体重減少はなかったことが実証され、これにより、この薬剤の安全性および忍容性が示唆される。本発明者らにより腫瘍異種移植片の完全な退縮は観察されなかったが、代替のスケジュールまたは高用量を使用する必要がある。
【0193】
Her2/neuを標的とする治療剤であるハーセプチンおよびラパチニブのがん処置における転帰は有意に改善されたものであるが、それらの使用は耐性および忍容性の問題によって限定される(GarrettおよびArteaga、2011年;Bedardら、2009年)。機能付与したGrB融合物のHR細胞またはLR細胞に対する細胞傷害性を評価することにより、重要なステップが示される。本発明者の結果により、GrB/4D5/26により、カスパーゼ依存性アポトーシス効果およびカスパーゼ非依存性アポトーシス効果の結果として、耐性細胞の増殖および生存が阻害されることが示唆された。さらに、本発明者による細胞のシグナル伝達の調査により、GrB/4D5/26によってHer2/neuおよびERファミリーメンバーのリン酸化を効率的に下方制御し、それにより、PI3K/Akt経路とRas/ERK経路の両方の阻害をもたらすことができることが示された。
【0194】
治療剤の群に影響を及ぼす多剤耐性機構の発生は、がん処置における応答の低下を生じる中心的な問題であることが示されている(Szakacsら、2006年;Hilgerothら、2012年)。MDR表現型の出現も、ADCの適用に関する重大な問題であり得る(HurvitzおよびKakkar、2012年;MurphyおよびMorris、2012年)。Kovtunらによる試験(2010年)により、PEGに基づく親水性リンカーを利用するADCにより、MDR-1発現細胞において、T-DM1に見いだされる非極性リンカーSMCCを有する同様の結合体よりも大きな保持が示されることが報告された。したがって、MDRの出現により、抗体から細胞内に放出された際に遊離した薬物が流出することに起因して、T-DM1に対する交差耐性が生じ得る。対照的に、現行の試験により、MDRの発現によってGrBに基づく融合構築物に対する交差耐性は生じないことが実証されており、これは従来のADC手法に対する重要な利点であると思われる。
【0195】
唯一のヒトGrBの細胞内阻害剤は核細胞質セルピン、PI-9である。PI-9は、GrB媒介性アポトーシスからの自己保護のために、リンパ球、樹状細胞および肥満細胞において内因的に発現されることが見いだされている(TrapaniおよびSutton、2003年;ChowdhuryおよびLieberman、2008年)。これにより、がん細胞における内在性PI-9のレベルによって本発明者の標的分子のGrB活性が阻害される可能性があることが示唆され得る。しかし、本発明者の試験では、Her2/neu陽性細胞におけるPI-9のレベルとGrB/4D5/26に対する細胞の感受性の間にいかなる関係も示されなかった。
【0196】
本発明者らは、ラパチニブ耐性細胞に対するGrB感受性を検査し、これらの細胞ではGrB/4D5/26のIC50にわずかな(2倍)増加が示されることが見いだされた。これは、アポトーシスの遅延を導くPI-9の上方制御と同時に起こった。この上方制御は、ラパチニブ耐性によって誘導されるER経路の変化の間接的な結果であり得る。したがって、脱出経路としてER経路の上方制御が起こり得るER陽性かつHer2陽性である細胞株では、内在性GrB阻害剤であるPI-9が上方制御されてGrB活性が阻害される可能性がある。
【0197】
結論として、前述の試験により、pH感受性融合性ペプチド26をエンドソーム溶解性ドメインとして使用した、Her2/neuを標的とする機能付与した新規のGrB融合構築物により、GrBの細胞質内への放出が効率的に促進され、それにより、Her2/neu陽性がん細胞のアポトーシスによる細胞死がもたらされることが実証される。この融合性ペプチドは、パーフォリンまたはクロロキンを必要とせずにGrBに誘導されるアポトーシスを試験するために有用であり得る。さらに、当該試験により、ラパチニブまたはトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))のいずれかに対して高度に耐性である腫瘍細胞、および化学療法剤に対して耐性であるMDR-1を発現している細胞はGrBに基づく融合タンパク質に対する交差耐性を有さないことが実証された。LR細胞におけるPI-9発現の誘導によりGrB/4D5/26のアポトーシス性の細胞傷害性が遅延するが、耐性細胞はラパチニブに対して200倍超耐性であるという事実にもかかわらず、この薬剤のIC50値は親細胞よりも2倍大きいだけである。
【0198】
(実施例12)
切断可能なカルボキシル末端GrB融合物の構築
GrBコード配列に対してN末端側に位置する標的化ポリペプチドを含むGrB融合構築物を構築した。生じた融合タンパク質を操作して、プロテアーゼによる切断後に活性なGrB酵素(すなわち、アミノ末端に遊離したイソロイシンを有する)を放出するようなプロテアーゼ切断部位を含める。
【0199】
試験した最初の構築物には、標的化部分(例えば、抗体)+カスパーゼにより切断可能なペプチド+グランザイムB(「挿入物」)が含まれた。G4Sリンカーまたは218リンカーなどのリンカーも、標的化部分と切断可能なペプチドの間に組み込むことができる。特に興味深いカスパーゼにより切断可能なペプチド配列の1つはYVDEVD↓(配列番号25;その後にGrBアミノ酸配列が続いてよい)であり、「↓」は切断部位を示す。いくつかの態様では、カスパーゼ-3による切断可能なペプチドを、別のカスパーゼまたはフューリンなどの異なるプロテアーゼによって切断可能なペプチドで置換することができる。
【0200】
最初の試験構築物に関しては、抗Her2/neu scFv 4D5配列をヒトIgG1フレームワークに移植して「4D5-IgG1」ベース構築物を生成した。この移植された抗体を、Herceptin(登録商標)と比較したHer2 ECDに対する親和性の試験に供した。
図17に示されているこれらの試験により、2つの抗体が同様の標的親和性を示すことが確認される。4D5-IgG1ベースを使用して、いくつかのGrB融合タンパク質を生成し、適切な細胞株に対する細胞傷害活性について試験した。産生した構築物は以下の通りであった:
4D5-Ac - 4D5-IgG1重鎖とGrBのN末端を、4D5重鎖とGrBが、上記のカスパーゼにより切断可能なリンカーによって隔てられるように融合した。この場合、GrBコード配列は、N51S点変異およびC210A点変異を含み、C末端のINF7トランスロケーションペプチドに含まれた。したがって、当該構築物の重鎖は、NからC末端までに、4D5IgG1重鎖-カスパーゼにより切断可能なリンカー-GrB-INF7を含む(例えば、
図18の左下のパネルを参照されたい)。
【0201】
4D5-AfNI - 4D5-IgG1重鎖とGrBのN末端を、4D5重鎖とGrBが、フューリンにより切断可能なリンカーによって隔てられるように融合した。GrBコード配列は、N51S点変異およびC210A点変異を含む。したがって、当該構築物の重鎖は、NからC末端までに、4D5IgG1重鎖-フューリンにより切断可能なリンカー-GrBを含む(例えば、
図18の左下のパネルを参照されたい)。
【0202】
4D5-BfNI - 4D5-IgG1軽鎖とGrBのN末端を、4D5軽鎖とGrBがフューリンにより切断可能なリンカーによって隔てられるように融合した。GrBコード配列は、N51S点変異およびC210A点変異を含む。したがって、当該構築物の軽鎖は、NからC末端までに、4D5IgG1軽鎖-フューリンにより切断可能なリンカー-GrBを含む(例えば、
図18の右上のパネルを参照されたい)。
【0203】
4D5-AeafNI - 4D5-IgG1重鎖とGrBのN末端を、4D5重鎖とGrBが、上記のカスパーゼにより切断可能なリンカーよって隔てられるように融合した。この場合、GrBコード配列は、K27EおよびR28Aに加えて、N51S点変異およびC210A点変異を含む。したがって、当該構築物の重鎖は、NからC末端までに、4D5IgG1重鎖-カスパーゼにより切断可能なリンカー-GrBを含む(例えば、
図18の左下のパネルを参照されたい)。
【0204】
IgG-Ac - マウス抗Her2 IgG1重鎖とGrBのN末端を、4D5重鎖とGrBが、上記のカスパーゼにより切断可能なリンカーによって隔てられるように融合した。この場合、GrBコード配列は、N51S点変異およびC210A点変異を含み、C末端のINF7トランスロケーションペプチドに含まれた。したがって、当該構築物の重鎖は、NからC末端までに、マウスIgG1重鎖-カスパーゼにより切断可能なリンカー-GrB-INF7を含む(例えば、
図18の左下のパネルを参照されたい)。
【0205】
上記の構築物を、哺乳動物細胞において、重鎖抗体ポリペプチドおよび軽鎖抗体ポリペプチド(またはその融合物)が分泌されるように配置したバイシストロン性の発現ベクターから発現させた。組み立てられた抗体融合構築物を細胞培地から精製した。次いで、これらの構築物を、細胞傷害活性についてHer2発現SKBR3細胞または対照MCF-7細胞(Her2を発現しない)と比較して試験した。これらの試験の結果(以下の表14に示す)により、GrB融合物抗体の全てが堅固な細胞傷害活性を示し、IC50がHerceptin(登録商標)と比較して少なくとも4分の1未満であることが実証される。
【0206】
【0207】
HMEL scFvとのGrB融合物を用いて追加的な試験を行った。これらの試験については、構築物「HCB」(HMEL scFv-G4S-YVDEVD(配列番号25)-GrB)の細胞傷害性を対照構築物「WH」(GrB-G4S-INF7-HMEL scFv)と比較し、「HNB」(HMEL scFv-G4S-GrB)をAAB527細胞とMEF3.5-/-細胞とで比較した(
図19、構築物概略図についての下のパネルを参照されたい)。
図19に示されているこれらの試験の結果により、予測通り、いずれの構築物も、標的受容体を欠く細胞と比較して有意な活性を有さないことが実証される(右側のパネルのグラフ)。対照的に、WH構築物およびHCB構築物のみが、AAB527細胞と比較して有意な活性を有し、これにより、細胞傷害活性のためにはGrBが特異的に切断されて活性型になることが必要であることが示される。さらなる試験を行って、重鎖GrB融合物と軽鎖GrB融合物の両方を含む構築物を試験する。
【0208】
(実施例13)
Fcと融合したscFv領域を含むGrB融合構築物
scFv領域ならびに抗体Fcドメインを含む別のGrB融合構築物を設計し、構築した。これらの構築物に関しては、GrBを、抗体配列に対してN末端側に位置するようにまたはC末端において融合することができる(上記の通り切断可能なリンカーによって)。したがって、構築物は、一般構造GrB-Fc-scFv(例えば、
図18の右下のパネルを参照されたい)またはscFv-Fc-切断可能なリンカー-GrBを含んでよい。
【0209】
この配置の最初の試験として、GrB-Fc-IT4(scFv)を含む構築物を産生した。具体的には、IT4 scFvは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー12A(TNFRSF12A)遺伝子の産物を標的とするものであり、参照により本明細書に組み込まれるZhouら、2011年において以前に記載されている。当該構築物によって生じる融合タンパク質の配列は配列番号45として提供される。当該構築物を上記に詳述されるように発現させ、精製し、細胞株のパネルに対する活性について試験した(GrB単独対照を使用して)。以下の表15に示されている結果により、構築物が高度に活性であり、IC50測定値が3までの低さであることが実証された。
【0210】
【0211】
(実施例14)
追加的なGrB-VEGF融合構築物を用いた試験
追加的な試験を行って、VEGF標的化部分と融合した種々のGrB変異体の血清の安定性および細胞傷害性を試験した。試験した構築物は以下の通りであった:GrB/VEGF121;EA-GrB/VEGF121(K27E点変異、R28A点変異を有するGrB変異体);LA-GrB/VEGF121(K27L点変異、R28A点変異を有するGrB変異体);EAPVPN-GrB/VEGF121(野生型GrBの82PKN84ループがPVPNに変異、K27E点変異、R28A点変異を含む);PVPN-GrB/VEGF121(野生型GrBの82PKN84ループがPVPNに変異);LP-GrB/VEGF121(GrB N末端のすぐ上流にHisタグ、トロンビン切断部位およびカスパーゼ-3の切断部位(DEVD)の付加)。これらの構築物を、血清(FBS)中で4時間インキュベートした後、またはPBS中で4時間インキュベートした後、酵素活性について試験した。これらの試験の結果が以下の表16に示されている。これらの試験により、「EA」変異と「LA」変異はどちらも、血清中でインキュベートした後に対照構築物よりも有意に大きい活性を残すことができることが示された。
【0212】
同じ構築物を、血清(FBS)中またはPBS中で4時間インキュベートした後、細胞傷害活性について試験した。これらの試験の結果が表17に示されている。これらのデータにより、血清中でインキュベーションした後でさえも、「EA」変異体標的化構築物および「LA」変異体標的化構築物のどちらにも、標的細胞に対する高度な活性および特異性が残っていることが実証された。しかし、重要なことに、LP-GrB/VEGF121構築物にも、血清に曝露した後でさえ高度な活性が残っていた。この構築物は、カスパーゼによる切断によってGrB酵素活性が活性化される細胞取り込み時まで不活性であるという事実によって保護されたと仮定される。
【0213】
【0214】
【0215】
本明細書において開示され、特許請求されている方法は全て、本開示に照らして、過度な実験を伴わずに行い、実行することができる。本発明の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本明細書に記載の方法および方法のステップまたは一連のステップに、本発明の概念、主旨および範囲から逸脱することなく変形を適用することができることが当業者には明らかになろう。より詳細には、化学的にかつ生理的に関連するある特定の薬剤で本明細書に記載の薬剤を置換することができるが、同じまたは同様の結果が達成されることが明らかになろう。当業者に明らかであるそのような同様の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨、範囲および概念に入るとみなされる。
【0216】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載のものを補充する例示的な処置上のまたは他の詳細を提供する限りでは具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】