(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041832
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】空調機器
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20230316BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20230316BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
F24F1/0007 331
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013905
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2018181536の分割
【原出願日】2018-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓馬
(72)【発明者】
【氏名】中山 和樹
(57)【要約】
【課題】暑熱環境から移動してきた者の暑熱感をすぐに解消させる。
【解決手段】個別空調機器50は、フロントパネル51と、フロントパネル51に対向するリアパネル52と、フロントパネル51とリアパネル52との間の空洞に設けられ、周辺温度よりも低温又は高温の熱媒体が供給されることによって、前記空洞内の空気と前記熱媒体との間で熱交換するとともに輻射冷熱又は輻射温熱及び対流を発生させる熱交換器55と、前記空洞内の空気を送風するファン56,57と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントパネルと、
前記フロントパネルに対向するリアパネルと、
前記フロントパネルと前記リアパネルとの間の空洞に設けられ、周辺温度よりも低温又は高温の熱媒体が供給されることによって、前記空洞内の空気と前記熱媒体との間で熱交換するとともに輻射冷熱又は輻射温熱及び自然対流を発生させる熱交換器と、
前記空洞内の空気が前記熱交換器に衝突するように、前記空洞外の空気を前記空洞内に送風するファンと、を備える
空調機器。
【請求項2】
前記ファンは、前記空洞内の空気が前記熱交換器に垂直に衝突するように、前記空洞外の空気を前記空洞内に送風する
請求項1に記載の空調機器。
【請求項3】
前記ファンが前記フロントパネルに設けられ、前記ファンが、前記空洞内の空気を前方に、又は、前記空洞外の空気を前記空洞内に、送風する
請求項1又は2に記載の空調機器。
【請求項4】
前記ファンが前記空洞の上部に設けられ、前記ファンが前記空洞内に向けて下方に、又は、前記空洞外に向けて上方に送風する
請求項1又は2に記載の空調機器。
【請求項5】
前記ファンが前記空洞の側部に設けられ、前記ファンが前記空洞内に向けて横に、又は、前記空洞外に向けて横に送風する
請求項1又は2に記載の空調機器。
【請求項6】
前記ファンが前記空洞の下部に設けられ、前記ファンが前記空洞内の空気を下方に、又は、前記空洞外の空気を上方に送風する
請求項1又は2に記載の空調機器。
【請求項7】
前記ファンの作動又は停止を切り替えるセンサ又はスイッチが設けられる
請求項1から6の何れか一項に記載の空調機器。
【請求項8】
前記フロントパネル、前記リアパネル、前記熱交換器及び前記ファンが机の天板から上方又は下方に離れて配置される
請求項1から7の何れか一項に記載の空調機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、机と、その机の背側に立設された衝立と、その衝立に内蔵された熱交換式空調機とを備える空調装置付き机が開示されている。このような空調装置付き机を用いれば、机で作業する作業者の周りを熱交換式空調機によって個別に空調することができる。
【0003】
特許文献3には、タスク・アンビエント空調が開示されている。アンビエント空調には床吹出式空調システムが採用され、温度調節された空気を床の吹出口から吹き出すことによって室内の全体的な温度が適切な温度に調節される。タスク空調には対流発生パネルが採用されている。具体的には、机の周りに間仕切りが設けられることによって個別空間が区画され、対流発生パネルがその間仕切りに取り付けられている。対流発生パネルは、起立した状態の一対の対向板と、それら対向板の間に設けられた熱交換器とを有する。
冷房時には、机の天板の上方において対流発生パネルを間仕切りに取り付け、室温よりも低い熱媒体を対流発生パネルの熱交換器に供給すると、熱交換器及び対向板が冷やされる。そのため、熱交換器及び対向板の冷輻射によって作業者に涼感を与えることができる。また、一対の対向板の間の空気と熱媒体との熱交換によって空気が冷やされ、その空気の自然対流により下降する。そのため、机の天板上に冷気が漂い、作業者に涼感を与えることができる。更に、机の天板も冷やされ、天板の二次冷輻射によって作業者に涼感を与えることができる。
暖房時には、机の天板の下方において対流発生パネルを間仕切りに取り付け、室温よりも高い熱媒体を対流発生パネルの熱交換器に供給すると、熱交換器及び対向板が温められる。そのため、机の天板の下に暖気が漂うことによって、更に熱交換器及び対向板の温輻射によって、作業者に温感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-205713号公報
【特許文献2】特開2016-205719号公報
【特許文献3】特許第5396248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、暑熱環境からタスク・アンビエント空調の冷房環境に移動してきた場合、その者の粗熱が除去されるまでの間は十分な涼感が得られない上、涼感を得るまでに長時間を要する。また、タスク・アンビエント空調の冷房環境に慣れるまでの間、暑さを感じてしまうこともある。それに対処すべく、団扇で仰いで涼感を得るものとしても、作業の妨げになってしまう。また、冷房環境に移動する前にクールシャワーなど専用の粗熱除去装置を用いて涼感を得るものとしても、粗熱除去装置の設置コストが増えてしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、暑熱環境から移動してきた者の暑熱感をすぐに解消させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、空調機器は、フロントパネルと、前記フロントパネルに対向するリアパネルと、前記フロントパネルと前記リアパネルとの間の空洞に設けられ、周辺温度よりも低温又は高温の熱媒体が供給されることによって、前記空洞内の空気と前記熱媒体との間で熱交換するとともに輻射冷熱又は輻射温熱及び自然対流を発生させる熱交換器と、前記空洞内の空気を送風するファンと、を備える。
【0008】
以上によれば、周辺温度よりも低温の熱媒体が熱交換器に供給されると、空調機器を冷房機器として利用できる。その場合、輻射冷熱が熱交換器から発生して、空調機器の近くに居る者が涼感を得られる。更に、フロントパネルとリアパネルの間の空洞内の空気が冷やされて自然に下降するため、空調機器の近くに居る者が自然対流による涼感を得られる。
また、空洞内の空気がファンによって送風されるため、気流が空洞から吹き出される。暑熱環境から移動してきた者がその気流を浴びると、急速に冷やされるとともに涼感を得られる。よって、その者の暑熱感がすぐに解消される。
【0009】
一方、周辺温度よりも高温の熱媒体が熱交換器に供給されると、空調機器を暖房機器として利用できる。その場合、輻射温熱が熱交換器から発生するため、空調機器の近くに居る者が温感を得られる。更に、フロントパネルとリアパネルの間の空洞内の空気が温められて自然に上昇するため、空調機器の近くに居る者が温感を得られる。
また、暖房環境に暑さを感じた者が空洞から吹き出されるファンの気流を浴びると、逆に暑さが緩和されるという利用方法による効果も期待できる。
【0010】
好ましくは、前記ファンが前記フロントパネルに設けられ、前記ファンが前記空洞内の空気を前方に送風する。
【0011】
以上によれば、暑熱環境から移動してきた者がフロントパネルの前に居ると、ファンの気流を浴びるため、その者の暑熱感がすぐに解消される。
一方、暖房環境に暑さを感じた者がフロントパネルの前に居ると、ファンの気流を浴びるため、暑さが緩和される。
【0012】
好ましくは、前記ファンが前記空洞の上部に設けられ、前記ファンが前記空洞内に向けて下方に送風する。
【0013】
以上によれば、空調機器が冷房機器として用いられる場合、熱交換器によって冷やされた空気がファンによって強制的に下降するため、空調機器の近くに居る者が強制対流による涼感を得られる。特に、暑熱環境から移動してきた者が空洞の下方へ吹き出されるファンの気流を浴びると、その者の暑熱感がすぐに解消される。
一方、暖房環境に暑さを感じた者が空洞の下方に吹き出されるファンの気流を浴びると、暑さが緩和される。
【0014】
好ましくは、前記ファンが前記空洞の側部に設けられ、前記ファンが前記空洞内に向けて横に送風する。
【0015】
以上によれば、暑熱環境から移動してきた者が空洞から吹き出されるファンの気流を浴びると、その者の暑熱感がすぐに解消される。
一方、暖房環境に暑さを感じた者が空洞から吹き出されるファンの気流を浴びると、暑さが緩和される。
【0016】
好ましくは、前記ファンが前記空洞の下部に設けられ、前記ファンが前記空洞内の空気を下方に送風する。
【0017】
以上によれば、空調機器が冷房機器として用いられる場合、熱交換器によって冷やされた空気がファンによって強制的に下降するため、空調機器の近くに居る者が強制対流による涼感を得られる。特に、暑熱環境から移動してきた者が空洞の下方へ吹き出されるファンの気流を浴びると、その者の暑熱感がすぐに解消される。
一方、暖房環境に暑さを感じた者が空洞の下方に吹き出されるファンの気流を浴びると、暑さが緩和される。
【0018】
好ましくは、前記フロントパネル、前記リアパネル、前記熱交換器及び前記ファンが机の天板から上方又は下方に離れて配置される。
【0019】
以上によれば、フロントパネル、リアパネル、熱交換器及びファンが机の天板から上方に離れて配置される場合、周辺温度よりも低い熱媒体が熱交換器に供給されると、空洞内の空気が冷やされて自然に下降する。その冷気が机の天板の上に漂うため、机で作業する者が涼感を得られる。
フロントパネル、リアパネル、熱交換器及びファンが机の天板から下方に離れて配置される場合、周辺温度よりも高い熱媒体が熱交換器に供給されると、空洞内の空気が温められて自然に上昇する。その暖気が机の天板の下に漂うため、机で作業する者が温感を得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、暑熱環境から移動してきた者がファンの気流を浴びると、その者の暑熱感がすぐに解消する。
一方、暖房環境に暑さを感じた者がファンの気流を浴びると、その者の暑さが緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】執務室内に設置された什器類及び個別空調機器の斜視図である。
【
図4】第2実施形態の個別空調機器の斜視図である。
【
図5】第2実施形態の変形例の個別空調機器の斜視図である。
【
図6】第3実施形態の個別空調機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1の実施の形態〕
1.室内のタスク・アンビエント空調
図1は、建物の或る階の断面図である。この階は下側のスラブ11と上側のスラブ12との間に設けられており、下側スラブ11の上方には床パネル13が敷設され、下側スラブ11と床パネル13との間に床下空間15が形成されている。上側スラブ12の下方には天井パネル14が設置され、上側スラブ12と天井パネル14との間には天井裏空間16が形成されている。床パネル13と天井パネル14との間の空間は、下側スラブ11上に立設された壁パネル18によって執務室17と機械室19に区画されている。床パネル13には、執務室17と床下空間15を連通させる吹出口13aが設けられている。天井パネル14には、執務室17と天井裏空間16を連通させる吸込口14aが設けられている。
【0023】
執務室17では、タスク・アンビエント空調が行われる。アンビエント空調とは、執務室17の全体的な温度を調節する空調をいい、タスク空調は、作業者の周りの温度を調節する空調をいう。アンビエント空調は空調機20によって実施され、タスク空調は個別空調機器50及び調温機器70によって実施される。
【0024】
2.アンビエント空調
執務室17内のアンビエント空調を行う空調機20は、機械室19内に設置されている。空調機20から天井裏空間16までダクト22が配設され、空調機20から床下空間15までダクト21が配設されている。空調機20は室内機及び換気装置等を備える。空調機20は、吸込口14a、天井裏空間16及びダクト22を通じて執務室17内から空気を吸い込んで空調した上で、ダクト21、床下空間15及び吹出口13aを通じて空調済み空気を執務室17内に吹き出す。これにより、執務室17が全体的に適切な温度及び湿度に調整される。
【0025】
また、空調機20は、吸込口14a、天井裏空間16及びダクト22を通じて執務室17内から屋内空気を吸い込んで、その屋内空気を屋外に排出する。更に、空調機20は、屋外から外気を吸い込んで、その外気と屋内空気との間で熱交換した上で、ダクト21、床下空間15及び吹出口13aを通じてその外気を執務室17内に吹き出す。これにより、執務室17内と屋外の換気が行われる。
【0026】
3.タスク空調
図2は、執務室17内に設置された什器類及び個別空調機器50の斜視図である。
図1及び
図2に示すように、執務室17内には複数の作業机30が設置されている。背側が突き合わされた作業机30の間には衝立41が立設されており、左右に隣り合う作業机30の間には衝立42が立設されている。
【0027】
作業机30は天板31及び脚部32を備える。脚部32が天板31から垂下するとともに床パネル13上で起立し、天板31が脚部32によって支持される。この天板31には、木材、金属、ガラス等で作製された矩形状の板材が用いられる。天板31の幅は、衝立41の幅(左右方向の長さ)と同程度に定められ、天板31の奥行きは衝立42の幅(前後方向の長さ)と同程度に定められる。作業者は作業机30の前で椅子に座って作業机30で作業を行い、パネル型の個別空調機器50によって作業者の周りのタスク空調がなされる。個別空調機器50は輻射式且つ対流式の空調機器である。
【0028】
個別空調機器50は、各作業机30の天板31の上の奥側において、天板31から上方又は下方に離れた位置に設置されている。具体的には、個別空調機器50が衝立41に対して着脱可能式であり、個別空調機器50を冷房機として利用する場合には、実線で示すように個別空調機器50が天板31の上方において衝立41に掛けられて設置され、個別空調機器50が作業机30の天板31の上及びその周辺を個別に冷房する。一方、個別空調機器50を暖房機として利用する場合には、二点鎖線で示すように個別空調機器50が天板31の下方において衝立41に掛けられて設置され、個別空調機器50が作業机30の天板31の下及びその周辺を個別に暖房する。
なお、個別空調機器50が天板31上で起立した脚部によって支持されることによって天板31から上方に離れて設置されるものとしてもよいし、個別空調機器50が吊り材によって天板31から吊り下げられて設置されてもよい。
【0029】
図3を参照して、個別空調機器50について詳細に説明する。
図3は、個別空調機器50の斜視図である。
図3では、個別空調機器50の内部を図示するため、個別空調機器50のフロントパネル51の一部を切り取って示す。
【0030】
個別空調機器50はフロントパネル51、リアパネル52、サイドパネル53,54、熱交換器55、ファン56,57、可撓性往き管61、可撓性還り管62及びカプラー63(
図2参照)を備える。
【0031】
フロントパネル51、リアパネル52及びサイドパネル53,54は上下が開口した薄型の角筒状に組み立てられている。フロントパネル51とリアパネル52はこれらの間に間隔を置いて前後に互いに対向し、サイドパネル53,54がこれらの間に間隔を置いて左右に互いに対向する。なお、パネル51~54によって囲われた空洞の上部開口若しくは下部開口又はこれらの両方にパンチングプレート或いは金網等のフィルタが設けられてもよい。
【0032】
フロントパネル51の右部と左部には吹出口が形成されており、吹出口にファン56,57が設けられている。ファン56,57がパンチングプレート或いは金網等の有孔板によって覆われて、有孔板によって保護されている。ファン56,57はプロペラファン等の軸流ファンであり、パネル51~54によって囲われた空洞内の空気を前方に向けて送風する。なお、ファン56,57は遠心ファン、斜流ファン又は横断流ファンであってもよい。
【0033】
パネル51~54によって囲われた空洞には、熱交換器55が収容されている。熱交換器55は熱媒体パイプ55aと、熱媒体パイプ55aの外面に取り付けられた放熱用又は吸熱用の伝熱フィン55bとを有する。
【0034】
熱媒体パイプ55aは金属等のように熱伝導率の高い伝熱管材からなり、例えば鉄管、ステンレス管、銅管、アルミニウム管といった金属パイプを熱媒体パイプ55aに利用することができる。熱媒体パイプ55aは、パネル51~54によって囲われた空洞内の左部と右部において折り返されるように葛折り状に配管されている。なお、熱媒体パイプ55aの折り返し部の前には、ファン56,57が配置されている。
【0035】
伝熱フィン55bは、熱伝導率の高い針金を螺旋状に巻いて成るコイル材からなり、その螺旋状のコイル形態を保った状態で更に熱媒体パイプ55aの周囲に螺旋状に巻き付けられている。伝熱フィン55bは、熱媒体パイプ55aの全体の外面に取り付けられていてもよいし、熱媒体パイプ55aの左右の折り返し部以外の部分全体に取り付けられていてもよい。伝熱フィン55bは、空気に接触する表面積を拡大化させて、放熱又は吸熱の効率を向上させる表面積拡大部である。
【0036】
熱媒体パイプ55aの一端に可撓性往き管61の一端が接続され、熱媒体パイプ55aの他端に可撓性還り管62の一端が接続されている。
図2に示すように、可撓性往き管61及び可撓性還り管62の他端にはカプラー63が取り付けられている。カプラー63が床パネル13に設けられたカプラーに接続されると、可撓性往き管61が床下の往き管71に接続され、可撓性還り管62が床下の還り管72に接続される。
図1に示すように、往き管71及び還り管72は、一端同士が互いに接続されて床下空間15内で配管されており、他端が機械室19内の調温機器70に接続されている。調温機器70は、水等の熱媒体を所定の温度に調整しつつ、調温された熱媒体を往き管71に送出するとともに還り管72から熱媒体を受け入れることにより熱媒体を循環させる。ここで、個別空調機器50が冷房機として利用される場合、調温機器70が熱媒体を執務室17内の温度よりも低く、例えば15℃に調温する。一方、個別空調機器50が暖房機として利用される場合、調温機器70が熱媒体を執務室17内の温度よりも高く、例えば44~45℃に調温する。
【0037】
4.冷房
冷房時は、空調機20を冷房運転するとともに、調温機器70を低温運転することによって、アンビエント冷房とタスク冷房を併用する。また、冷房時は、個別空調機器50を天板31の上方において衝立41に掛けて用いる。
【0038】
空調機20が冷房運転されると、冷気が吹出口13aから吹き出される。これにより、執務室17が設定温度に冷房される。
【0039】
調温機器70が低温運転されると、熱媒体が調温機器70によって執務室17の室温よりも低温に調温されるとともに、調温機器70と熱交換器55との間を循環する。熱交換器55に供給された熱媒体によって熱交換器55が周辺の室温よりも低く冷やされ、強いてはフロントパネル51、リアパネル52及びサイドパネル53,54も周辺の室温よりも低温に冷やされる。そうすると、熱交換器55及びパネル51~54から輻射冷熱が発生して、熱交換器55及びパネル51~54の冷輻射によって、作業机30で作業する作業者に涼感を与えることができる。
【0040】
また、熱交換器55によって熱交換器55内の熱媒体と熱交換器55外の空気の熱交換が行われ、冷気が自然対流によって下降する。下降した冷気が天板31の表面に沿って拡がって、天板31上で漂う。そのような冷気及びその流れによって、作業机30で作業する作業者に涼感を与えることができる。ここで、熱交換器55がパネル51~54によって囲われているので、冷気の自然下降流が外乱に影響されない。
【0041】
熱交換器55及びパネル51~54の冷輻射や天板31上の冷気によって、天板31も冷やされる。そうすると、天板31の二次冷輻射によって、作業机30で作業する作業者に涼感を与えることができる。
【0042】
ところで、暑熱環境から執務室17内に移動してきた者が空調機20によるアンビエント冷房や個別空調機器50によるタスク冷房の環境に曝されても、その者の粗熱が除去されるまでの間、その者は暑さを感じてしまう。しかしながら本実施形態では、ファン56,57により生じた気流を浴びることによって、涼感が得られる。また、その者の粗熱がファン56,57による気流によって急速に除去される。よって、その者の暑熱感がすぐに解消される。
【0043】
しかも、ファン56,57が前方に向けて送風するので、気流は作業者の頭部、頸部或いは胸部に当たり、作業者が涼感を得やすい。
【0044】
また、ファン56,57が熱媒体パイプ55aの左右の折り返し部の前に設けられているので、ファン56,57の気流が冷気の自然下降流に影響を及ぼしにくく、冷気の流れに乱れが殆ど生じない。但し、熱交換器55によって冷やされた冷気がファン56,57によって作業者に向けて送風されてもよい。
【0045】
なお、ファン56,57がセンサ又はスイッチ(開閉器)によって通電・遮電されるものとしてもよい。以下に、センサ又はスイッチを用いた例を挙げる。
【0046】
(1) ファン56,57をオン・オフするスイッチが作業机30、パネル51~54又は衝立41,42に設けられている。作業者が暑さを感じたら、スイッチをオンに操作することによって、ファン56,57を作動させる。一方、作業者が暑さを解消したら、スイッチをオフに操作することによって、ファン56,57を停止させる。
【0047】
(2) 非接触型又は接触型の人感センサが作業机30、衝立41,42若しくはパネル51~54又はそれらの周囲に設けられている。人感センサによって作業者が検出されたら、制御回路がファン56,57を作動させる。その後、制御回路が作業者の検出時から所定時間だけ計時したら、制御回路がファン56,57を停止させる。なお、人感センサによって作業者が検出されなくなったら、制御回路がファン56,57を停止させるものとしてもよい。
【0048】
(3) 作業机30の上又はその周辺に設置されたパーソナルコンピュータに、そのパーソナルコンピュータの電源のオン・オフを検出するセンサが設けられている。センサによってパーソナルコンピュータの電源のオンが検出されたら、制御回路がファン56,57を作動させる。その後、制御回路がパーソナルコンピュータの電源オンの検出時から所定時間だけ計時したら、制御回路がファン56,57を停止させる。なお、センサによってパーソナルコンピュータの電源オフが検出されたら、制御回路がファン56,57を停止させるものとしてもよい。
【0049】
(4) 作業机30と組となる椅子に荷重センサが設けられており、荷重センサの検出荷重が制御回路によって所定閾値と比較される。作業者が椅子に着座すると、着座センサの検出荷重が所定閾値を超えるので、制御回路がファン56,57を作動させる。その後、制御回路がファン56,57の作動時から所定時間だけ計時したら、制御回路がファン56,57を停止させる。なお、作業者が立ち上がることによって荷重センサの検出荷重が所定閾値以下になったら、制御回路がファン56,57を停止させるものとしてもよい。
【0050】
5.暖房
暖房時は、空調機20を暖房運転するとともに、調温機器70を高温運転することによって、アンビエント暖房とタスク暖房を併用する。また、暖房時は、個別空調機器50を天板31の下方において衝立41に掛けて用いる。
【0051】
空調機20が暖房運転されると、暖気が吹出口13aから吹き出される。これにより、執務室17が所定の設定温度に暖房される。
【0052】
調温機器70が高温運転されると、熱媒体が調温機器70によって執務室17の室温よりも高温に調温されるとともに、調温機器70と熱交換器55との間を循環する。熱交換器55に供給された熱媒体によって熱交換器55が周辺の室温よりも高温に温められ、強いてはフロントパネル51、リアパネル52及びサイドパネル53,54も周辺の室温よりも高温に温められる。そうすると、熱交換器55及びパネル51~54から輻射及び対流温熱が発生して、熱交換器55及びパネル51~54の温輻射によって、作業机30で作業する作業者に温感を与えることができる。
【0053】
また、熱交換器55によって熱媒体と空気の熱交換が行われ、暖気が自然対流によって上昇する。上昇した暖気が天板31の裏側の表面に拡がって、天板31の下で漂う。そのような暖気及びその流れによって、作業机30で作業する作業者に温感を与えることができる。
【0054】
熱交換器55及びパネル51~54の温輻射や天板31下の暖気によって、天板31も温められる。そうすると、天板31の二次温輻射によって、作業机30で作業する作業者に温感を与えることができる。
【0055】
通常時はファン56,57が停止しているが、作業者が暖房の暑さを感じたら、スイッチをオンに操作することによって、ファン56,57を作動させる。そうすると、作業者がファン56,57による気流を浴びることによって、涼感を得られる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
図4は、第2実施形態の個別空調機器50Aの斜視図である。第2実施形態の個別空調機器50Aの各構成要素には、それに相当する個別空調機器50の各構成要素と同一の符号を付す。また、以下では、第2実施形態の個別空調機器50Aと第1実施形態の個別空調機器50との間で相違する点について主に説明する。
【0057】
第2実施形態では、軸流ファン、遠心ファン、斜流ファン又は横断流ファン等のファン56,57がパネル51~54によって囲われた空洞の上部開口に設けられているとともに、フロントパネル51の中央に横長のスリット58が形成されている。
【0058】
冷房時にファン56,57が作動すると、ファン56,57が下方に向けて送風する。そうすると、熱交換器55によって冷やされた冷気が自然対流に加えて、ファン56,57の風圧によって下方に流れる。下方に流れた冷気が天板31に沿って前方に流れて、作業者に吹き付けられる。そのため、作業者に涼感を与えることができる。
【0059】
また、ファン56,57の風圧によって、熱交換器55によって冷やされた冷気の一部がスリット58を通過して前方に流れる。そのため、その冷気が作業者に吹き付けられるので、作業者に涼感を与えることができる。
【0060】
スリット58を開閉するシャッターがスリット58に設けられていてもよい。作業者が手動で又は電動でシャッターを閉じると、冷気がスリット58から吹き出なくなるが、冷気の下降気流の流量が増える。一方、作業者が手動で又は電動でシャッターを開くと、スリット58からの冷気と下降気流の冷気が作業者に吹き付けられる。よって、シャッターの開閉によって冷気の吹付態様を変更することができる。
【0061】
なお、スリット58が形成されていなくてもよい。
【0062】
暖房時に作業者が暑さを感じた場合、スイッチをオンに操作することによって、ファン56,57を作動させる。そうすると、ファン56,57が下方に向けて送風するため、空気が床パネル13に沿って前方に流れて、作業者に吹き付けられる。そのため、作業者が涼しさを感じる。この時ファン56,57の風向を逆向きに運転すると、空気が作業机30の天板31に沿って前方に流れるため、より効果的に気流を浴びさせることもできる。
【0063】
図4に示す例では、ファン56,57がパネル51~54によって囲われた空洞の上部開口に設けられていたが、逆に、
図5に示す個別空調機器50Bのように、ファン56,57がパネル51~54によって囲われた空洞の下部開口に設けられてもよい。この場合、冷気噴き出し用のスリットが形成されていない。またこの場合、冷房時に、ファン56,57が熱交換器55によって冷やされた冷気を吸い込んで、それを下方に送風するため、下方に流れた冷気が天板31に沿って前方に流れる。そのため、作業者に涼感を与えられる。一方、暖房時に、ファン56,57が下方又は上方に向けて送風するため、暖房に暑さを感じた者が気流によって涼しさを感じる。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
図6は、第3実施形態の個別空調機器50Cの斜視図である。第3実施形態の個別空調機器50Cの各構成要素には、それに相当する個別空調機器50の各構成要素と同一の符号を付す。また、以下では、第3実施形態の個別空調機器50Cと第1実施形態の個別空調機器50との間で相違する点について主に説明する。
【0065】
第3実施形態では、サイドパネル53,54の上部に吸込口がそれぞれ形成されており、軸流ファン、遠心ファン、斜流ファン又は横断流ファン等のファン56,57が各吸込口に設けられている。また、フロントパネル51の中央に横長のスリット58が形成されている。
【0066】
冷房時にファン56,57が作動すると、ファン56,57が、パネル51~54に囲まれた空洞に向けて送風する。そうすると、熱交換器55によって冷やされた冷気がファン56,57の風圧によって空洞の上部開口や下部開口から吹き出される。空洞の下部開口から吹き出された冷気が天板31に沿って前方に流れて、作業者に吹き付けられる。そのため、作業者に涼感を与えることができる。
【0067】
また、ファン56,57の風圧によって、熱交換器55によって冷やされた冷気の一部がスリット58を通過して前方に流れる。そのため、その冷気が作業者に吹き付けられるので、作業者に涼感を与えることができる。なお、第2実施形態の場合と同様に、シャッターがスリット58に設けられていてもよい。
【0068】
暖房時に作業者が暑さを感じた場合、スイッチをオンに操作することによって、ファン56,57を作動させる。そうすると、ファン56,57がパネル51~54に囲まれた空洞に向けて送風するため、空洞内の空気が空洞の上部開口及び下部空洞から吹き出て、その空気が天板31の裏側及び床パネル13に沿って前方に流れて、作業者の下半身に吹き付けられる。そのため、作業者が涼しさを感じる。
【0069】
〔変形例〕
上記各実施形態では、個別空調機器50,50A,50B,50Cのデザインやファン56,57の設置スペースに応じて、ファン56,57の設置位置がフロントパネル51、サイドパネル53,54、空洞の上部開口又は空洞の下部開口である。個別空調機器50,50A,50B,50Cのデザイン、ファン56,57の大きさ、ファン56,57の設置スペースを設計変更して、ファン56,57の設置位置を設計変更してもよい。設計変更した場合でも、ファン56,57の気流が直接的又は間接的に作業者に吹き付けられるようにする。
【符号の説明】
【0070】
50,50A,50B…輻射型空調機器
51…フロントパネル
52…リアパネル
53,54…サイドパネル
55…熱交換器
56,57…ファン