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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041903
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】粉末経鼻投与製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K31/568
A61K9/14
A61K47/36
A61K47/38
A61P15/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015215
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2019555371の分割
【原出願日】2018-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017227133
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002990
【氏名又は名称】あすか製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】湊 宏一
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 知弥
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢治
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 教久
(72)【発明者】
【氏名】矢島 弘也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和広
(57)【要約】
【課題】テストステロンなどのステロイドホルモン類の血中濃度を特定の範囲に長期間に亘って制御できる粉末経鼻投与製剤を提供する。
【解決手段】有効成分として平均粒子径50~300μmの粒子状男性ホルモンを含む粉末経鼻投与製剤を調製する。前記粉末経鼻投与製剤は水溶性高分子を含む。前記粉末経鼻投与製剤は、男性ホルモンのCmaxを15ng/ml以下に調整できる。前記水溶性高分子は、ヒドロキシアルキル基を有するセルロースなどの水溶性多糖類を含んでいてもよい。前記水溶性高分子は粒子状であってもよい。前記水溶性高分子の割合は、前記粒子状男性ホルモン1重量部に対して1~50重量部程度であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として平均粒子径50~300μmの粒子状男性ホルモンを含む粉末経鼻投与製剤であって、
水溶性高分子をさらに含み、かつ
男性ホルモンの最高血中濃度(Cmax)を15ng/ml以下に調整できる粉末経鼻投与製剤。
【請求項2】
水溶性高分子が水溶性多糖類を含む請求項1記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項3】
水溶性多糖類がヒドロキシアルキル基を有するセルロースを含む請求項2記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項4】
水溶性高分子が結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含まない請求項1~3のいずれかに記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項5】
水溶性高分子が粒子状である請求項1~4のいずれかに記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項6】
男性ホルモンが、テストステロン、C1-4アルキルテストステロン、テストステロンC1-18アルカン酸エステル、テストステロンシクロアルカン酸エステル、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン及びドロスタノロンからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項7】
水溶性高分子の割合が、粒子状男性ホルモン1重量部に対して1~50重量部である請求項1~6のいずれかに記載の粉末経鼻投与製剤。
【請求項8】
男性ホルモンの平均血中濃度(Cavg)を2~7.5ng/mlに調整できる請求項1~7のいずれかに記載の粉末経鼻投与製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の治療に有効なテストステロンなどのステロイドホルモン類を含む粉末経鼻投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
LOH症候群は、認知力や睡眠障害、内臓脂肪の増加等の様々な症状及び兆候が見られるが、血中テストステロン濃度低下と関連することから、テストステロン(17β-ヒドロキシ-3-オキソ-4-アンドロステン)の補充が有効と考えられている。
【0003】
従来のテストステロン補充療法剤は、主に注射剤及び経皮剤である。これらの製剤における問題点として、注射剤では、投与部位の痛みや投与に通院が必要であり、海外のインプラント剤も同様の欠点を有している。また、経皮剤では、塗布した部位に触れた家族等への汚染、皮膚のかぶれやジヒドロテストステロン(DHT)の上昇が問題となっている。いずれの方法でも、投与直後に非生理的濃度にまでテストステロン濃度が上昇することにより様々な副作用が発現する場合がある。
【0004】
また、テストステロンを有効成分とする点鼻剤(液剤)では、粘膜吸収の特徴でもある速効性を活かすため、テストステロンの粒子径を小さくして生体内吸収を改善する方法が試みられている。特開平11-130659号公報(特許文献1)には、有効量の薬物としてテストステロン、懸濁化剤として約0.05~5%w/wの結晶セルロース・カルメロースナトリウム(アビセルRC)を含んでなる水性懸濁医薬品組成物であって、薬物粒子の形状が、粒子径10nm~10μmの球形である物理的安定性が改良された水性懸濁医薬組成物が開示されている。実施例では、0.1~3μmのテストステロンが使用されている。
【0005】
しかし、このような小粒径のテストステロンを含む液剤では、生体内吸収は改善するものの、テストステロン補充療法においてアメリカ食品医薬品局(FDA)でクライテリアとされている最高血中濃度(Cmax)が15ng/mlを超えている。例えば、米国でテストステロン補充療法に使用されている医薬品「AVEED」でも同様のクライテリアが設定されている。さらに、平均血中濃度(Cavg)が成人男性の血中テストステロン濃度(正常領域)とされている2.01~7.5ng/ml(日本泌尿器学会雑誌95:751-760,2004)を超え、予期しない副作用の発現が危惧されていた。特に、急激な血中テストステロン濃度の上昇は、その後の急激な血中テストステロン濃度の低下を引き起こし、多血症、Prostate Specific Antigen(PSA)の上昇、尿閉、女性化乳房および睡眠時無呼吸の進行などの副作用を引き起こすとも言われている。
【0006】
一方、特表2012-526726号公報(特許文献2)には、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、前記治療剤のうち少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、前記治療剤が約5~250μmの粒度分布を有する粒子を含む薬学的製剤が開示されている。この文献には、発明の課題として、薬物動態プロファイルが臨床的必要条件により緊密に一致するように、吸入可能な薬学的製剤を設計することが可能である必要性があると記載されており、具体的には、片頭痛患者の血中濃度における早期の高ピークをもたらすことによる症状の迅速な初期緩和や、経時的に高い血中濃度を維持することによる再発防止が記載されている。実施例では、鼻腔内用乾燥粉末製剤として、片頭痛治療薬であるスマトリプタン又はゾルミトリプタン乾燥粉末製剤(15μmの粒度を有する遊離塩基単品、15μmの粒度を有する遊離塩基と38~100μmの粒度を有する遊離塩基との混合品)が調製されている。また、実施例では、グラニセトロン乾燥粉末製剤を味覚評価しているが、グラニセトロンの粒度は記載されていない。さらに、この文献には、乾燥粉末製剤は、無担体であってもよく、担体及び所望に応じて1つ以上の賦形剤と治療剤との混合物であってもよいと記載されており、多数の担体及び賦形剤が例示されているが、実施例では、担体及び賦形剤について記載されていない。
【0007】
また、特開平9-291025号公報(特許文献3)には、薬物と、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水吸収性でかつゲル形成性の基剤と、結晶セルロースなどの水吸収性でかつ水難溶性の基剤とを含む粉末状経鼻投与組成物が開示されている。この文献は、薬物の吸収性を向上させることを目的としており、水溶性の薬物、脂溶性の高い薬物以外の薬物や、非ペプチド・蛋白質性薬物の最高血中濃度を向上させることが目的としている。前記薬物の粒径について、90重量%以上の粒子の粒子径が10~350μmであることが好ましいと記載されているが、実施例の粒子径は不明である。実施例では、前記薬物として、消炎ステロイドであるプロピオン酸ベクロメタゾン、制吐剤であるメトクロプラミド、黄体形成ペプチドホルモンである酢酸リュープロライド、ペプチドホルモンであるサケカルシトニンが使用されている。
【0008】
このように、従来の技術では、テストステロン補充療法剤の開発は、特許文献1に見られるように、テストステロンの粒子径を小さくすることを前提に様々な観点から検討されているのが現状であり、テストステロンの粒子径を調整することにより血中テストステロン濃度を正常領域に制御する試み(特に、粉末点鼻製剤)は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11-130659号公報(請求項1及び6、実施例3)
【特許文献2】特表2012-526726号公報(請求項1、段落[0002][0003]、[0131]~[0134]、[0156][0178]、実施例)
【特許文献3】特開平9-291025号公報(請求項1、段落[0019][0022][0048]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、テストステロンなどのステロイドホルモン類の血中濃度を特定の範囲に長期間に亘って制御できる粉末経鼻投与製剤を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、急激な血中濃度の上昇を抑制しつつ、投与回数及び副作用を抑制できる粉末経鼻投与製剤を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、テストステロンの最高血中濃度(Cmax)を成人男性の血中テストステロン濃度に制御でき、かつテストステロンの平均血中濃度(Cavg)を成人男性の血中テストステロン濃度に調整できる粉末経鼻投与製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、粉末経鼻投与製剤の有効成分である粒子状ステロイドホルモン類の平均粒径を50~300μmに調整することにより、テストステロンなどのステロイドホルモン類の血中濃度を特定の範囲に長期間に亘って制御できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の粉末経鼻投与製剤は、有効成分として平均粒子径50~300μmの粒子状ステロイドホルモン類を含む。前記粉末経鼻投与製剤は、水溶性高分子(特にヒドロキシアルキル基を有するセルロースなどの水溶性多糖類)をさらに含んでいてもよい。前記水溶性高分子は、結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含まなくてもよい。前記水溶性高分子は粒子状であってもよい。前記ステロイドホルモン類は、男性ホルモン(特にテストステロン及び/又はその誘導体)で形成されていてもよい。前記水溶性高分子の割合は、前記粒子状ステロイドホルモン類1重量部に対して1~50重量部程度であってもよい。前記粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類の最高血中濃度(Cmax)を15ng/ml以下に調整できる粉末経鼻投与製剤であってもよい。前記粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類の平均血中濃度(Cavg)を2~7.5ng/mlに調整できる粉末経鼻投与製剤であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、粉末経鼻投与製剤の有効成分である粒子状ステロイドホルモン類の平均粒径が50~300μmに調整されているため、テストステロンなどのステロイドホルモン類の血中濃度を特定の範囲に長期間に亘って制御できる。そのため、急激な血中濃度の上昇を抑制しつつ、投与回数及び副作用を抑制でき、例えば、1日2回投与で副作用も低減できる。特に、ステロイドホルモン類としてのテストステロンと、特定の水溶性高分子とを組み合わせることにより、テストステロンの最高血中濃度(Cmax)を15ng/ml以下に調整でき、ステロイドホルモン類の平均血中濃度(Cavg)を2~7.5ng/mlに調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、参考例1及び2で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図2図2は、実施例1~2及び参考例3で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図3図3は、実施例3~5及び参考例4で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図4図4は、実施例6~8で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図5図5は、実施例9~12で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図6図6は、実施例13~15で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図7図7は、実施例16~21で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
図8図8は、実施例22~27で得られた粉末経鼻投与製剤の血中テストステロン濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[有効成分]
本発明の粉末経鼻投与製剤は、有効成分(薬理又は生理活性成分)として、平均粒子径50~300μmの粒子状ステロイドホルモン類を含む。ステロイドホルモン類は、男性ホルモン(アンドロゲン)と、女性ホルモン(エストロゲン)と、副腎皮質ホルモンとに大別できる。男性ホルモンとしては、例えば、テストステロン、テストステロン誘導体[例えば、メチルテストステロンなどのC1-4アルキルテストステロン;テストステロン酢酸エステル、テストステロンプロピオン酸エステル、テストステロンイソカプロン酸エステル、テストステロンエナント酸エステル、テストステロンデカン酸エステル、テストステロンウンデカン酸エステルなどのテストステロンC1-18アルカン酸エステル;テストステロンブチルヘキサン酸エステル(Testosterone buciclate)などのテストステロンシクロアルカン酸エステル;ジヒドロテストステロン(DHT);デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)など]、ドロスタノロンなどが挙げられる。女性ホルモンとしては、例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロン、ホスフェストロールなどのエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン、ノルエチステロン、プレグナンジオールなどのゲスターゲン(黄体ホルモン)などが挙げられる。副腎皮質ホルモンとしては、例えば、リン酸デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、リン酸ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。これらのステロイドホルモン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのうち、ステロイドホルモン(特に男性ホルモン)が好ましく、テストステロン又はその誘導体(特に、テストステロン)が特に好ましい。
【0019】
粒子状ステロイドホルモン類の形状は、粒子状(又は粉末状)であれば、特に限定されず、等方形状(球状又は略球状、立方体状など)であってもよく、異方形状(楕円体状、多角体状、直方体状、繊維状、不定形状など)であってもよい。
【0020】
本発明では、粒子状ステロイドホルモン類は、特定の平均粒子径を有しており、粒子径が所定の範囲に調整されているため、血中濃度を特定の範囲に長期間コントロールできる。ステロイドホルモン類の体積平均粒子径(D50)は50~300μm であればよく、好ましくは70~250μm、さらに好ましくは100~230μm(例えば150~200μm)程度であってもよく、急激な血中濃度の上昇を抑制しつつ、投与回数及び副作用を抑制できる点から、例えば50~200μm、好ましくは80~150μm、さらに好ましくは90~130μm(特に100~120μm)程度であってもよい。平均粒子径が大きすぎると、粉末経鼻投与製剤におけるステロイドホルモン類の最高血中濃度(Cmax)が低くなり、小さすぎると、粉末経鼻投与製剤におけるステロイドホルモン類の平均血中濃度(Cavg)が低くなる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、粒子状ステロイドホルモン類の形状が異方形状である場合は、各粒子の粒子径は、長径と短径との平均値を意味する。
【0021】
ステロイドホルモン類は粒子径分布(粒度分布)の幅が小さい方が好ましく、累積度数90%の粒子径(D90)は100~300μm、好ましくは120~280μm、さらに好ましくは150~250μm(特に200~240μm)程度である。
【0022】
粒子径分布の幅が小さいステロイドホルモン類を調製する方法(粒子径をコントロールする方法)は、慣用の粉体処理装置を利用してもよく、例えば、市販の表面改質処理装置(ホソカワミクロン(株)製「ノビルタNOB-MINI」)などを用いて均一な粒子を調製してもよい。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において、粒子状ステロイドホルモン類の体積平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折式粒度測定装置を用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
有効成分は、前記粒子状ステロイドホルモン類に加えて、他の有効成分を含んでいてもよい。他の有効成分としては、薬理作用を有する有効成分であれば特に限定されないが、例えば、膵臓性循環系ホルモン類、プロスタグランジン類、ステロイド類、副腎皮質ホルモン類、甲状腺ホルモン類、成長ホルモン類などの他のホルモン類などが挙げられる。
【0025】
有効成分中の粒子状ステロイドホルモン類の割合は、例えば50重量%以上であってもよく、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であってもよく、100重量%(有効成分が粒子状ステロイドホルモン類のみ)であってもよい。
【0026】
[水溶性高分子]
本発明の粉末経鼻投与製剤は、前記有効成分に加えて、水溶性高分子をさらに含む。本発明では、前記粒子径を有する有効成分と水溶性高分子とを組み合わせることにより、ステロイドホルモン類の血中濃度をさらに効果的に調整できる。
【0027】
水溶性高分子には、水溶性合成高分子、水溶性多糖類などが含まれる。水溶性合成高分子と水溶性多糖類とは、それぞれ単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0028】
水溶性合成高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、コリドン(ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体)などのコポリビドン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの水溶性合成高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
水溶性多糖類は、薬理学的又は生理学的に許容可能な多糖類であればよい。多糖類としては、例えば、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウムなどの可溶性デンプン;メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(カルメロース又はCMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロースエーテル類; セルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのセルロースエステル類;キチン、キトサン、プルランなどのホモ多糖類;アラビアゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウムなどのヘテロ多糖類などが挙げられる。これらの水溶性多糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
これらの水溶性高分子のうち、水によりゲル化し、鼻腔の粘膜に付着し易い水溶性高分子が好ましく、例えば、前記例示の水溶性合成高分子、水溶性多糖類が好ましい。具体的には、水溶性多糖類(MC、CMC、CMC-Na、HEC、HPC、HPMCなど)が好ましく、ヒドロキシアルキル基(特に、ヒドロキシプロピル基)を有するセルロース(HEC、HPCなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロース、HPMCなどのヒドロキシC2-4アルキルC1-4アルキルセルロースなど)が特に好ましい。なかでも、ヒドロキシアルキルセルロース(特にヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2-3アルキルセルロース)と前記粒子径を有する粒子状ステロイドホルモン類(特にテストステロン)とを組み合わせると、平均血中濃度(Cavg)を有効に調整できるため、最高血中濃度(Cmax)の過度な上昇の抑制と、平均血中濃度(Cavg)の調整とを両立できる。
【0031】
水溶性多糖類中のヒドロキシアルキル基を有するセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピル基を有するセルロース)の割合は、例えば50重量%以上であってもよく、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であってもよく、100重量%(有効成分がステロイドホルモン類のみ)であってもよい。本発明では、多糖類は、結晶セルロースを含んでいなくてもよい。
【0032】
水溶性高分子(特に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性多糖類)の粘度は、例えば、20℃の2重量%水溶液において、例えば2~10000mPa・s、好ましくは10~8000mPa・s(例えば100~7000mPa・s)、さらに好ましくは120~5000mPa・s(特に150~4000mPa・s)程度であってもよい。前記粘度は用途に応じて選択してもよく、例えば50~1000mPa・s(特に100~500mPa・s)程度であってもよく、取り扱い性が重要な場合などは、例えば500~5000mPa・s(特に1000~4000mPa・s)程度であってもよい。粘度が小さすぎると、取り扱い性が低下する虞がある。本明細書及び特許請求の範囲において、粘度は、毛細管粘度計法又は回転粘度計法で測定できる。
【0033】
水溶性高分子(特に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性多糖類)の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算で、例えば100,000~5,000,000、好ましくは300,000~2,000,000、さらに好ましくは500,000~1,500,000程度であってもよい。前記分子量は用途に応じて選択してもよく、例えば500,000~1,000,000(特に600,000~800,000)程度であってもよく、取り扱い性が重要な場合などは、例えば700,000~1,500,000(特に800,000~1,000,000)程度であってもよい。
【0034】
水溶性高分子の形状は、特に限定されず、例えば、前記粒子ステロイドホルモン類とは独立した形状である粒子状であってもよく、前記ステロイドホルモン類と複合化した形状(例えば、前記ステロイドホルモン類の表面を被覆した形状又は表面に付着した形状など)であってもよく、粒子状と複合化した形状との組み合わせであってもよい。これらのうち、粒子状が好ましい。
【0035】
粒子状水溶性高分子の形状は、特に限定されず、等方形状(球状又は略球状、立方体状など)であってもよく、異方形状(楕円体状、多角体状、直方体状、繊維状、不定形状など)であってもよい。これらのうち、等方形状に近い形状が好ましく、短径に対する長径の比率は、例えば100倍以下であってもよく、好ましくは10倍以下、さらに好ましくは5倍以下(特に3倍以下)であってもよい。
【0036】
粒子状水溶性高分子(特に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性多糖類)の体積平均粒子径(D50)は、例えば10~500μm、好ましくは30~300μm、さらに好ましくは40~200μm(特に50~150μm)程度であってもよい。また、粒子状水溶性高分子の平均粒径は、粒子状ステロイドホルモン類の平均粒子径に対して、例えば0.1~10倍、好ましくは0.2~5倍(例えば0.3~1倍)、さらに好ましくは0.4~0.8倍(特に0.5~0.7倍)程度であってもよい。粒子状水溶性高分子の平均粒子径が大きすぎると、粒子状ホルモン類との均一な混合が困難となる虞があり、小さすぎても、粒子状ホルモン類との均一な混合が困難となる虞がある。粒子状水溶性高分子の体積平均粒子径の測定方法は、粒子状ステロイドホルモン類の平均粒子径と同様の方法で測定できる。
【0037】
水溶性高分子の割合は、粒子状ステロイドホルモン類1重量部に対して、例えば1~50重量部、好ましくは3~30重量部、さらに好ましくは4~20重量部(特に4~15重量部)程度である。水溶性高分子の割合が少なすぎると、平均血中濃度(Cavg)を有効に調整できない虞がある。
【0038】
[他の成分]
本発明の粉末経鼻投与製剤は、前記有効成分及び水溶性高分子に加えて、賦形剤をさらに含んでいてもよい。賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖類又は糖アルコール類;微結晶セルロースなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。賦形剤の割合は、粒子状ステロイドホルモン類100重量部に対して、例えば0.1~100重量部、好ましくは1~50重量部、さらに好ましくは3~30重量部程度である。
【0039】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、薬理学的又は生理学的に許容可能な成分であればよく、例えば、結合剤(例えば、トウモロコシデンプン、デキストリンなどのデンプン類;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)、エチルセルロース(EC)などのセルロース類;ポリ乳酸などの合成高分子など)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンなど)、滑沢剤、崩壊補助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、安定剤、防腐剤又は保存剤、殺菌剤又は抗菌剤、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤、着色剤、矯臭剤又は香料、清涼化剤、消泡剤などが挙げられる。これら他の成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の成分の割合は、粒子状ステロイドホルモン類100重量部に対して、例えば0.1~100重量部、好ましくは1~50重量部、さらに好ましくは3~30重量部程度である。
【0040】
[粉末経鼻投与製剤の特性]
本発明の粉末経鼻投与製剤は、前記粒子状ステロイドホルモン類を含む粉末(粒子)の形態であればよく、水溶性高分子と組み合わせる場合、水溶性高分子が粒子状ステロイドホルモン類と複合化した複合粒子であってもよく、粒子状ステロイドホルモン類と粒子状水溶性高分子との混合物であってもよく、前記複合粒子と粒子状ステロイドホルモン類と粒子状水溶性高分子との混合物であってもよい。
【0041】
複合粒子の製造方法は、慣用の造粒方法を利用でき、乾式造粒法(例えば、乾式破砕造粒法、圧縮成形造粒法など)、湿式造粒法(例えば、押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、混合・攪拌造粒法、噴霧乾燥造粒法、振動造粒法など)のいずれであってもよい。これらのうち、湿式造粒法などが汎用される。造粒物は、必要により、粉砕、整粒してもよい。複合粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば100~500μm、好ましくは120~300μm、さらに好ましくは150~250μm程度であってもよい。複合粒子の体積平均粒子径の測定方法は、粒子状ステロイドホルモン類の平均粒子径と同様の方法で測定できる。
【0042】
粒子状ステロイドホルモン類及び粒子状水溶性高分子の製造方法も、それぞれ前記乾式造粒法及び前記湿式造粒法のいずれであってもよい。前記造粒法のうち、簡便性などの点から、乾式破砕造粒法が汎用される。粉砕には、アトマイザー(サンプルミル、ハンマーミルなど)、ピンミル、ジェットミル、ボールミルなど、通常、医薬品の粉砕に用いられる粉砕機を使用できる。
【0043】
混合物の混合方法としては、慣用の方法、例えば、V型混合機やコンテナミキサーなどの容器回転式の混合機や、リボンミキサーやハイスーピードミキサーなどの容器固定型混合機などを用いて混合してもよい。本発明の粉末経鼻投与製剤は、粒子状ステロイドホルモン類と粒子状水溶性高分子との混合物であるのが好ましい。この混合物において、粒子状ステロイドホルモン類と粒子状水溶性高分子とは均一に混合されているのが好ましい。
【0044】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類(特にテストステロン)の最高血中濃度(Cmax)の過度の上昇を抑制でき、例えば25ng/ml以下、好ましくは18ng/ml以下、さらに好ましくは15ng/ml以下(特に7.5ng/ml以下)であってもよい。
【0045】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類(特にテストステロン)の血中濃度の変動(平均血中濃度(Cavg))も抑制でき、例えば1~10ng/ml、好ましくは2~7.5ng/ml、さらに好ましくは2.5~7ng/mlの範囲に維持できる。さらに、変動の抑制は、12時間にわたって維持することができる。
【0046】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、血中濃度の変動が小さいため、ステロイドホルモン類(特にテストステロン)の最高血中濃度(Cmax)に到達する時間(Tmax)も遅く、例えば0.1時間以上(例えば0.1~3時間)、好ましくは0.3時間以上、さらに好ましくは0.5時間以上(特に0.8時間以上)であってもよい。
【0047】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、血中濃度の変動が小さいため、ステロイドホルモン類(特にテストステロン)の最高血中濃度(Cmax)の1/2の血中濃度に到達する時間である消失半減期(t1/2)も長く、例えば2時間以上(例えば2~10時間)、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上(特に6時間以上)であってもよい。
【0048】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類(特にテストステロン)の平均血中濃度(Cavg)も調製でき、例えばFDAの示すテストステロン補充療法臨床試験のエンドポイントである3~10ng/mlに調整できる。
【0049】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、血中平均滞留時間(MRT0-∞)も長く、例えば3時間以上(例えば3~20時間程度)であってもよく、例えば4時間以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは6時間以上(特に7時間以上)であってもよい。
【0050】
本明細書及び特許請求の範囲において、最高血中濃度(Cmax)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)平均血中濃度(Cavg)及び血中平均滞留時間(MRT0-∞)は、後述する実施例に記載の方法で評価できる。
【0051】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、最高血中濃度(Cmax)の過度の上昇が抑制され、副作用も小さいため、安全性も優れている。そのため、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例えば、ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)に対して、安全に投与できる。
【0052】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、粉末状であればよく、散剤、細粒剤、顆粒剤、スプレー剤、エアゾール剤などであってもよい。投与方法も、噴霧などの鼻腔に投与する方法であればよく、特に限定されず、製剤の種類応じて選択できる。
【0053】
投与回数は、特に制限されず、例えば、1日1回であってもよく、必要に応じて1日複数回(例えば、1日2~3回)であってもよいが、最高血中濃度(Cmax)の過度の上昇が抑制され、12時間にわたって血中テストステロン濃度が安定しているため、1日2回の投与回数であってもよい。
【0054】
投与量は、投与対象の種、年齢、体重、及び状態(一般的状態、病状、合併症の有無など)、投与時間、剤形、投与方法などに応じて、選択できる。例えば、ヒトに対する投与量(1日用量)は、例えば0.01~50mg/日、好ましくは0.05~30mg/日(例えば、0.1~20mg/日)、さらに好ましくは0.5~15mg/日(特に1~10mg/日)程度である。
【実施例0055】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、使用した原料の詳細及び平均粒子径の測定方法は以下の通りである。
【0056】
[原料]
テストステロンA:東京化成工業(株)製テストステロン、体積平均粒子径(D50)123μm
テストステロンB:SIGMA-ALDRICH社製テストステロン、体積平均粒子径(D50)184μm
テストステロンC:バイエル社製テストステロン、体積平均粒子径(D50)273μm
【0057】
ヒドロキシプロピルセルロースH:日本曹達(株)製「HPC-H」、体積平均粒子径(D50)80~110μm、粘度(2重量%水溶液、20℃)1000~4000mPa・s、分子量(GPC法)91万
ヒドロキシプロピルセルロースM:日本曹達(株)製「HPC-M」、粘度(2重量%水溶液、20℃)150~400mPa・s、分子量(GPC法)70万
ヒドロキシプロピルセルロースL:日本曹達(株)製「HPC-L」、粘度(2重量%水溶液、20℃)6~10mPa・s、分子量(GPC法)14万
【0058】
結晶セルロース:旭化成ケミカルズ(株)製「セオラスPH-F20JP」
【0059】
アルファー化デンプン:旭化成ケミカルズ(株)製「MX-1」、粘度(2重量%水溶液、25℃)70mPa・s
カルボキシビニルポリマー:ルブリゾール社製「974P」、粘度(2重量%、pH7.5)29.4万~39.4万mPa・s、分子量50万~500万
アルギン酸Na:(株)キミカ製「I-8」、粘度(1重量%水溶液、20℃)800~900mPa・s、分子量100万~400万
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学工業(株)製「90SH-15000SR)、粘度(2重量%水溶液、20℃)1.5万mPa・s、分子量1万~20万
ポリビニルピロリドン:BASF社製「K-90」、粘度(10w/v%水溶液、20℃)300~700mPa・s、分子量36万
キサンタンガム:三晶(株)製「CG-F」、粘度(1重量%水溶液、1重量%KCl添加)1200~1600mPa・s、分子量200万~5000万
【0060】
ポリエチレングリコール:三洋化成工業(株)製「6000」、粘度(500g/リットル水溶液、25℃)200~400mPa・s、分子量7300~9300
ポリビニルアルコール:日本合成化学工業(株)「EG-18」、粘度(4重量%水溶液)18.3mPa・s、分子量3万~11万
キトサン:(株)キミカ製「F」、粘度(0.5重量%水溶液、20℃)5~20mPa・s、分子量1万~100万
カルメロースナトリウム:第一工業製薬(株)製「PR-S」、粘度(2重量%水溶液、25℃)20~40mPa・s、分子量6000~3万
ローカストビーンガム:(株)キミカ製「RL-200Z」、粘度(85℃にて溶解水溶液)3000~4000mPa・s、分子量30万
コポリビドン:BASF社製「VA64」、粘度(5重量%水溶液、25℃)5mPa・s、分子量5万
【0061】
乳糖:乳糖水和物、DFE Pharma社製
【0062】
[粒子径の測定方法]
レーザー回折式粒度測定装置(マルバーン社製「マスターサイザー3000」を用いて、乾式の分散方法(ユニット)で測定した。
【0063】
参考例1及び2
(1)製剤処方
参考例1及び2の製剤処方を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(2)製剤化方法
テストステロンAを乳鉢で、粉砕後、ヒドロキシプロピルセルロースH又は結晶セルロースを加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0066】
なお、筒状のデバイスは、スパイナル針(テルモ(株)製「テルモスパイナル針(登録商標)」)が入っていたプロテクター(プラスチック製)の先端をやすりで滑らかにしたデバイスであり、全ての実施例において、この容器を酸素ガススプレー缶(理化学実験用ガス)に接続して製剤を噴霧した。
【0067】
(3)薬物動態の評価
高齢の雌性イヌ(3頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量5mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10、12及び24時間に、23G注射針及びヘパリン処理した注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は遠心分離(15000rpm、2分間、4℃)後、血漿を採取し、測定時まで冷凍庫(-20℃以下)で凍結保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0068】
(HPLC条件)
HPLC:Prominenceシリーズ((株)島津製作所製)
カラム:Scherzo SM-C18(2.0mmi.d.×50mm、3μm、インタクト(株)製)
移動相A:0.1vol%酢酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:40℃
オートサンプラー内温度:室温
流量:0.3ml/min
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
(MS条件)
MS/MS:3200QTRAP((株)エービー・サイエックス製)
イオン化法:ESI法(Electrospray Ionization)
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 6.4:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、血中濃度の定量値が定量下限値以上となった最終測定時点までの濃度・時間曲線下面積(AUC0-t)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-∞)を算出した。
【0073】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表4に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図1に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4及び図1の結果から明らかなように、糖類として、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、結晶セルロースを用いた製剤と比べて、最高血中濃度(Cmax)が低く、消失半減期(t1/2)及び血中平均滞留時間(MRT0-∞)が延長されているため、血中テストステロン濃度を長く維持できた。
【0076】
実施例1~2及び参考例3
(1)製剤処方
実施例1~2及び参考例3の製剤処方を以下の表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
(2)製剤化方法
テストステロンBの分級品又はその粉砕品(テストステロンBを篩により分級後、体積平均粒子径を測定した分級品:体積平均粒子径184μmの実施例1、90.4μmの実施例2及び乳鉢中で粉砕後、体積平均粒子径を測定した粉砕品:体積平均粒子径16.2μmの参考例3)に、ヒドロキシプロピルセルロースHを加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0079】
(3)薬物動態の評価
高齢の雌性イヌ(3頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10、12及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0080】
(HPLC条件)
HPLC:Nexera X2((株)島津製作所製)
カラム:Kinetex 2.6μm EVO C18(4.6mmi.d.×150mm、2.6μm、Phenomenex社製)
移動相A:0.05vol%酢酸水溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
(MS条件)
MS/MS:Qtrap 6500((株)エービー・サイエックス製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表7に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 6.4:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後12時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-12hr)、血中濃度の定量値が定量下限値以上となった最終測定時点までの濃度・時間曲線下面積(AUC0-t)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-∞)を算出した。
【0085】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表8に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図2に示す。
【0086】
【表8】
【0087】
表8及び図2の結果から明らかなように、50μm未満のテストステロンを用いた参考例3は、最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/mlを超えるのに対して、粒径の大きいテストステロンを用いた実施例1~2は、最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持されていた。また、実施例1~2は、参考例3と比較して、最高血中濃度(Cmax)が低く、血中濃度半減期(T1/2)及び血中平均滞留時間(MRT0-∞)が大幅に延長されているため、1日2回投与が可能であり、服薬コンプライアンスの改善につながる。
【0088】
また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(12時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-12hr)/12で算出したところ、以下の表9に示すように、実施例1~2は正常範囲である2.01~7.5ng/mlに収まっていた。
【0089】
【表9】
【0090】
実施例3~5及び参考例4
(1)製剤処方
実施例3~5及び参考例4の製剤処方を以下の表10に示す。
【0091】
【表10】
【0092】
(2)製剤化方法
テストステロンCの分級品又はその粉砕品(テストステロンCを篩により分級後、体積平均粒子径を測定した分級品:体積平均粒子径273μmの実施例3、131μmの実施例4、70.4μmの実施例5及び乳鉢中で粉砕後、体積平均粒子径を測定した粉砕品:体積平均粒子径16.2μmの参考例4)に、乳糖を加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0093】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(8頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0094】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表11に示す。
【0095】
【表11】
【0096】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表12に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0099】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表13に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図3に示す。なお、測定値は、測定頭数の平均値及び変動幅を示す(以下同様)。
【0100】
【表13】
【0101】
表13及び図3の結果から明らかなように、50μm未満のテストステロンを用いた参考例4は、最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/mlを超えるのに対して、粒径の大きいテストステロンを用いた実施例3~5は、最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持されていた。
【0102】
実施例6~8
(1)製剤処方
実施例6~8の製剤処方を以下の表14に示す。
【0103】
【表14】
【0104】
(2)製剤化方法
テストステロンC分級品(テストステロンCを篩により分級後、体積平均粒子径を測定した分級品:体積平均粒子径114μm)に、ヒドロキシプロピルセルロースを加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0105】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(8頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0106】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム水溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表15に示す。
【0107】
【表15】
【0108】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表16に示す。
【0109】
【表16】
【0110】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0111】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表17に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図4に示す。
【0112】
【表17】
【0113】
表17及び図4の結果から明らかなように、体積平均粒子径114μmのテストステロンと水溶性高分子とを組み合わせた実施例6~8は、いずれも最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持され、かつ平均血中濃度(Cavg)も2.01~7.5ng/mlに収まっていた。
【0114】
実施例9~12
(1)製剤処方
実施例9~12の製剤処方を以下の表18に示す。
【0115】
【表18】
【0116】
(2)製剤化方法
テストステロンC分級品(テストステロンCを篩により分級後、平均粒子径を測定した分級品:平均粒子径114μm)に、ヒドロキシプロピルセルロースM及び乳糖を加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0117】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(7頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及びヘパリン処理した注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0118】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表19に示す。
【0119】
【表19】
【0120】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表20に示す。
【0121】
【表20】
【0122】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0123】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表21に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図5に示す。
【0124】
【表21】
【0125】
表21及び図5の結果から明らかなように、いずれの配合量でも最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持され、かつ平均血中濃度(Cavg)も2.01~7.5ng/mlに収まっていた。
【0126】
実施例13~15
(1)製剤処方
実施例13~15の製剤処方を以下の表22に示す。
【0127】
【表22】
【0128】
(2)製剤化方法
テストステロンC分級品(テストステロンCを篩により分級後、平均粒子径を測定した分級品:平均粒子径114μm)に、表22に示す割合で、ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖を加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0129】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(7頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0130】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表23に示す。
【0131】
【表23】
【0132】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表24に示す。
【0133】
【表24】
【0134】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0135】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表25に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図6に示す。
【表25】
【0136】
表25及び図6の結果から明らかなように、いずれも最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持され、かつ平均血中濃度(Cavg)も2.01~7.5ng/mlに収まっていた。
【0137】
実施例16~21
(1)製剤処方
実施例16~21の製剤処方を以下の表26に示す。
【0138】
【表26】
【0139】
(2)製剤化方法
テストステロンC分級品(テストステロンCを篩により分級後、平均粒子径を測定した分級品:平均粒子径114μm)2mgに、表26に示す各種の水溶性高分子8mgを加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0140】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(7頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0141】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表27に示す。
【0142】
【表27】
【0143】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表28に示す。
【0144】
【表28】
【0145】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0146】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表29に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図7に示す。
【0147】
【表29】
【0148】
表29及び図7の結果から明らかなように、いずれも最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持され、かつ平均血中濃度(Cavg)も2.01~7.5ng/mlに収まっていた。
【0149】
実施例22~27
(1)製剤処方
実施例22~27の製剤処方を以下の表30に示す。
【0150】
【表30】
【0151】
(2)製剤化方法
テストステロンC粉砕品(テストステロンCを乳鉢中で粉砕後、体積平均粒子径を測定した分級品:体積平均粒子径114μm)2mgに、表30に示す各種の水溶性高分子8mgを加え混合した混合物を筒状のデバイスに充填し、投与製剤とした。
【0152】
(3)薬物動態の評価
高齢の雄性イヌ(7頭)の片側鼻腔内に製剤を充填した筒状のデバイスを約1cm挿入し、単回経鼻投与した(テストステロンの投与量2mg)。経鼻投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間に、23G注射針及び注射筒を用いて採血した。1時点の採血量は約1mlとした。採血した血液は直ちにヘパリンナトリウム入り真空採血管に移し、軽く撹拌した。遠心分離(3000rpm、10分間、4℃)後、血漿を採取し、分析時まで冷凍保存した。以下の分析条件にて血中テストステロン濃度を測定した。
【0153】
(HPLC条件)
HPLC:2795(Waters社製)
カラム:Chromolith Performance RP-18e(3.0mmi.d.×100mm、Merck社製)
移動相A:0.005mol/l酢酸アンモニウム溶液
移動相B:メタノール
カラム温度:45℃
試料室温度:10℃
注入量:10μL
グラジエント条件:以下の表31に示す。
【0154】
【表31】
【0155】
(MS条件)
MS/MS:Quattro ultima(Waters社製)
イオン化法:ESI法
イオン極性:Positive
測定イオン:以下の表32に示す。
【0156】
【表32】
【0157】
得られた血中テストステロン濃度を薬物動態解析ソフト(Phoenix WinNonlin Version 7.0:サターラ合同会社製)で解析し、最高血中濃度(Cmax)、投与後10時間までの血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-10hr)、無限大まで外挿した血中濃度・時間曲線下面積(AUC0-∞)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、消失半減期(t1/2)、血中平均滞留時間(MRT0-10hr及びMRT0-∞)を算出した。また、平均血中濃度(Cavg)について、1日2回投与(10時間ごとの投与)を想定の上、AUC(0-10hr)/10で算出した。
【0158】
得られた投与製剤の薬物動態を評価した結果を以下の表33に示し、血中テストステロン濃度の経時変化を図8に示す。
【0159】
【表33】
【0160】
表33及び図8の結果から明らかなように、いずれも最高血中濃度(Cmax)がFDAのクライテリアである15ng/ml以下に維持され、実施例22~26では平均血中濃度(Cavg)も2.01~7.5ng/mlに収まっていた。一方、実施例27は、水溶性高分子の粘度が低いためか、平均血中濃度(Cavg)は2.01ng/ml未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の粉末経鼻投与製剤は、ステロイドホルモン類を利用した各種の治療剤(LOH症候群治療薬、抗がん剤、更年期障害治療薬、骨粗鬆症治療薬、慢性腎臓病治療薬、不妊症治療薬、月経異常治療薬、避妊薬、機能性子宮出血治療薬、子宮内膜症治療薬など)として利用でき、特に、ステロイドホルモン類がテストステロンである場合、LOH症候群治療薬として有効に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8