(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041904
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】前処理装置及び前処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
G01N35/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015226
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2021139222の分割
【原出願日】2016-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 毅
(72)【発明者】
【氏名】住田 裕保
(72)【発明者】
【氏名】北脇 良彦
(72)【発明者】
【氏名】田端 誠一郎
(57)【要約】
【課題】前処理が自動化された装置において、前処理工程をユーザが所望する温度で容易に実行する。
【解決手段】少なくとも遠心分離工程を含む検体の前処理を行う前処理装置(100)であって、検体が収容された容器(10)を保持する保持部(610)を有し、保持部(610)によって保持された容器(10)を回転させて遠心分離工程を行う遠心分離部(600)と、保持部(610)に保持された容器(10)内の検体の温度を調整する温度調整部(420)と、温度調整部(420)によって調整される温度の指定をユーザから受け付ける入力部(320)と、入力部(320)を介して指定を受け付けた温度に応じて温度調整部(420)を制御する制御部(300と、を備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも遠心分離工程を含む検体の前処理を行う前処理装置であって、
前記検体が収容された容器を保持する保持部を有し、前記保持部によって保持された容器を回転させて前記遠心分離工程を行う遠心分離部と、
前記保持部に保持された前記容器内の検体の温度を調整する温度調整部と、
前記温度調整部によって調整される温度の指定をユーザから受け付ける入力部と、
前記入力部を介して指定を受け付けた温度に応じて前記温度調整部を制御する制御部と、
を備える前処理装置。
【請求項2】
前記遠心分離部を内部に収容した収容部をさらに備え、
前記温度調整部は、前記収容部内に設けられている
請求項1記載の前処理装置。
【請求項3】
前記保持部に保持された前記容器内に試薬を分注するための分注部をさらに備える
請求項1又は2記載の前処理装置。
【請求項4】
温度の指定をするための設定画面を表示する表示部をさらに備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項5】
前記設定画面は、温度を示す数値を指定可能である
請求項4に記載の前処理装置。
【請求項6】
前記設定画面では、前処理に含まれる複数の動作内容を設定可能であるとともに、前記複数の動作のための複数の温度を設定可能である
請求項4又は5に記載の前処理装置。
【請求項7】
前記設定画面は、前記複数の温度に含まれる第1温度から前記複数の温度に含まれる第2温度に切り替わる間に、前処理に含まれる工程を実施させるか否かを設定可能である
請求項6に記載の前処理装置。
【請求項8】
前記設定画面は、試薬の温度を設定可能である
請求項4~7のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項9】
前記入力部は、分析項目に応じた複数のモード毎に温度の指定をユーザから受け付け、
前記表示部は、分析項目に応じた複数のモードのいずれかを選択する選択画面を表示し、
前記制御部は、前記選択画面で選択されたモードにおいて指定されている温度に応じて前記温度調整部を制御する、
請求項4~8のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記入力部を介して指定を受け付けた温度を示す情報を記憶する記憶部を備える
請求項1~9のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項11】
試薬が設置される試薬設置部と、
前記試薬設置部に設置された試薬温度を調整する試薬温度調整部と、
をさらに備え、
前記入力部は、前記試薬設置部の温度を示す試薬温度情報をユーザから受け付け、
前記制御部は、前記試薬温度情報が示す温度に応じて前記試薬温度調整部を制御する
請求項1~10のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項12】
前記前処理は、検体に含まれる細胞の固定及び膜透過処理工程をさらに含む
請求項1~11のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項13】
前記保持部によって保持された前記容器内に第1および第2試薬を分注するための分注部と、
前記遠心分離部を内部に収容する収容部と、をさらに備え、
前記温度調整部は、前記収容部内の雰囲気温度を調整し、
前記制御部は、前記収容部内において前記容器内の前記検体と前記第1試薬との第1反応工程、前記第1反応工程における未反応成分を除去するための遠心分離工程、及び、前記検体と前記第2試薬との第2反応工程を実施する制御をするとともに、前記第1反応工程および前記第2反応工程のそれぞれが異なる温度で行われるよう前記温度調整部による前記収容部内の雰囲気温度の切り替えを制御する
請求項1に記載の前処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記収容部内の雰囲気温度が切り替わる間に、前記前処理に含まれる他の工程を実行させる
請求項13に記載の前処理装置。
【請求項15】
前記他の工程は、前記遠心分離部により行われる、前記未反応成分を除去するための遠心分離工程とは異なる他の遠心分離工程を含む
請求項14に記載の前処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記収容部内の雰囲気温度が切り替わってから、前記第2反応工程を開始するよう制御する
請求項13~15のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項17】
前記第1試薬及び前記第2試薬の少なくともいずれか一方は、前記検体に含まれる前記細胞を染色するための染色試薬である
請求項13~16のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項18】
前記第1試薬は、細胞の表面抗原を染色するための染色試薬であり、
前記第2試薬は、細胞内の対象物質を染色するための染色試薬である、
請求項17に記載の前処理装置。
【請求項19】
前記収容部は、前記収容部外から分注部が備える分注管が前記収容部内に進入するための進入口と、前記進入口を開閉する開閉機構と、を備える
請求項2及び13~18のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項20】
前記温度調整部から前記容器を通って前記温度調整部に戻る対流を前記収容部内に生じさせる対流発生機構をさらに備え、
前記制御部は、前記開閉機構によって前記進入口が開いている場合には、前記進入口が閉じている場合よりも前記対流を弱めるよう前記対流発生機構を制御する
請求項19に記載の前処理装置。
【請求項21】
前記収容部内に設けられた遠心分離部を回転させるモータをさらに備え、前記モータは前記収容部外に設けられている
請求項2および13~20のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記収容部内の雰囲気温度が前記温度調整部によって調整されているときに前記収容部内に設けられた遠心分離部を回転させる
請求項2および13~21のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項23】
前記前処理は、Fluorescence In Situ Hybridization(FISH)分析のための前処理である
請求項1~22のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項24】
検体が収容された容器を保持する保持部を備え、前記保持部に保持された前記容器内の前記検体と試薬との反応工程を含む前記検体の前処理を行う前処理部と、
前記保持部に保持された前記容器内の検体の温度を調整する温度調整部と、
前記試薬が設置される試薬設置部と、
前記試薬設置部に設置された試薬の温度を調整する試薬温度調整部と、
前記温度調整部によって調整される温度および前記試薬温度調整部によって調整される温度の指定をユーザから受け付ける入力部と、
前記入力部を介して指定を受け付けた温度に応じて前記温度調整部および前記試薬温度調整部を制御する制御部と、
を備える前処理装置。
【請求項25】
検体と試薬との反応工程を含む前記検体の前処理を行う前処理部と、
前記前処理部によって処理される前記検体の温度を調整する温度調整部と、
前記前処理部の複数の動作内容および各動作内容を行う際に前記温度調整部によって調整される温度を含む動作モードの設定をユーザから受け付ける入力部と、
前記入力部を介して設定された動作モードに応じて、前記前処理部および前記温度調整部を制御する制御部と、
を備える前処理装置。
【請求項26】
検体が収容された容器を保持して遠心分離する遠心分離部、前記遠心分離部によって保持された前記容器内に第1および第2試薬を分注するための分注部、及び、前記遠心分離部を内部に収容する収容部を備えた前処理部と、
前記収容部内の雰囲気温度を調整する温度調整部と、
前記収容部内において前記容器内の前記検体と前記第1試薬との第1反応工程、前記第1反応工程における未反応成分を除去するための遠心分離工程、及び、前記検体と前記第2試薬との第2反応工程を行うよう前記前処理部を制御するとともに、前記第1反応工程および前記第2反応工程のそれぞれが異なる温度で行われるよう前記温度調整部による前記収容部内の雰囲気温度の切り替えを制御する制御部と、
を備える前処理装置。
【請求項27】
検体が収容された容器を保持する保持部、前記保持部によって保持された前記容器内に第1および第2試薬を分注するための分注管を有する分注部、及び、前記保持部を内部に収容する収容部を備えた前処理部と、
前記収容部内の雰囲気温度を調整する温度調整部と、
前記第1試薬および前記第2試薬が設置される試薬設置部と、
前記試薬設置部に設置された前記第1試薬および前記第2試薬の温度を調整する試薬温度調整部と、
前記試薬設置部から前記分注管により前記第1試薬を吸引し、前記分注管を前記収容部内に挿入して前記保持部に保持された前記容器内に前記第1試薬を分注し、前記容器内の前記検体と前記第1試薬とを反応させる第1反応工程、及び、前記試薬設置部から前記分注管により前記第2試薬を吸引し、前記分注管を前記収容部内に挿入して前記保持部に保持された前記容器内に前記第2試薬を分注し、前記検体と前記第2試薬とを反応させる第2反応工程を行うよう前記前処理部を制御するとともに、前記第1反応工程における前記収容部内の雰囲気温度および前記第1試薬の温度と、前記第2反応工程における前記収容部内の雰囲気温度および前記第2試薬の温度とが異なるよう、前記温度調整部および前記試薬温度調整部を制御する制御部と、
を備える前処理装置。
【請求項28】
検体が収容された容器を保持して遠心分離する遠心分離部、及び、前記遠心分離部によって保持された前記容器内に分注管によって試薬を分注するための分注部を備えた前処理部と、
前記容器を傾けることによって前記容器内の上清を廃棄する廃棄部と、
前記容器内の前記検体と前記試薬との反応工程および前記反応工程後の遠心分離工程を行うよう前記前処理部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記遠心分離工程後に、(i)前記分注管を前記遠心分離部によって保持された前記容器内に挿入させ、前記容器内の上清を廃棄するよう前記分注部を制御する、又は、(ii)前記遠心分離部から前記容器を取り出し、前記容器を傾けて前記容器内の上清を廃棄するよう前記廃棄部を制御する、
前処理装置。
【請求項29】
温度の指定をユーザから受け付け、
指定を受け付けた温度に応じて、遠心分離部に保持された容器内の温度を調整するよう温度調整部を制御し、
温度調整された前記容器を回転させて遠心分離工程を実施する
前処理方法。
【請求項30】
検体の温度および試薬の温度の指定をユーザから受け付け、
指定を受け付けた温度に応じて温度調整部により前記検体の温度および前記試薬の温度を調整し、
温度調整された前記検体および前記試薬の反応工程を実施する
前処理方法。
【請求項31】
検体の前処理を行う前処理装置の動作モードを設定するための設定画面を表示し、
前記設定画面において、前記前処理に含まれる複数の動作内容および各動作内容を行う際の前記検体の温度を動作モードに対応付けてユーザから設定を受け付け、
設定された動作モードに応じて、前記前処理装置の前処理動作を制御する
前処理方法。
【請求項32】
検体が収容された容器を保持して遠心分離する収容部内の雰囲気温度を第1温度に調整し、
雰囲気温度が前記第1温度に調整された前記収容部内で、前記容器内の検体と第1試薬との第1反応工程および未反応成分を除去するための遠心分離工程を行い、
前記収容部内の雰囲気温度を、前記第1温度から第2温度へ切り替え、
雰囲気温度が前記第2温度に切り替えられた前記収容部内で、前記容器内の検体と第2試薬との第2反応工程を行う
前処理方法。
【請求項33】
検体が収容された容器を収容する収容部内の雰囲気温度および第1試薬を第1温度に調整し、
温度調整された前記第1試薬を吸引した分注管を、前記温度調整された前記収容部内に挿入して前記容器内に前記第1試薬を分注し、
前記収容部内の雰囲気温度および第2試薬を、前記第1温度と異なる第2温度に調整し、
温度調整された前記第2試薬を吸引した分注管を、前記温度調整された前記収容部内に挿入して前記容器内に前記第2試薬を分注する、
前処理方法。
【請求項34】
検体が収容された容器を回転させて遠心分離部により遠心分離工程を実施し、
動作モードに応じて、(i)分注管により前記容器内の上清を吸引して廃棄する上清廃棄動作、又は、(ii)前記遠心分離部から前記容器を取り出し、前記容器を傾けて前記容器内の上清を廃棄する上清廃棄動作を実施する
前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメトリー等によって検体の分析を行う前に検体の前処理を自動的に行う前処理装置及び前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメトリー等によってたとえば細胞の分析を行うには、分析に先立って、細胞の前処理が必要とされる。前処理では、細胞の検出を容易にするため、細胞の染色が行われることがある。特許文献1は、細胞の前処理のためのシステムを開示している。特許文献1に開示されている前処理は、HIV感染培養におけるCD4(cluster of differentiation 4)の分析のためのサンプルを作成するためのものである。特許文献1の前処理は、全血へのCD4試薬の分注、渦動による攪拌、培養、溶解溶液の分注、遠心分離、洗浄、余剰液体の廃棄を含む。特許文献1は、これらの前処理を室温で行うことを開示している。
図15に示すように、特許文献1の装置は、遠心分離部4を備えている。特許文献2には、試薬分注、遠心処理、上清除去を行う細胞前処理装置が開示されている。
図16及び
図17に示すように、特許文献2の細胞前処理装置は、それぞれ昇降自在に設けられた第1の温度制御槽15、第2の温度制御槽16、第3の温度制御槽17を備える。第1の温度制御槽15は4℃に、第2の温度制御槽16は40℃に、第3の温度制御槽17は30℃に固定される。各温度制御槽の上面には凹孔18が形成されており、検体を収めた検体管2は、遠心分離等のために設けられたサンプルディスク1の回転に伴って、所定の温度制御槽の上方に移動し、温度制御槽の上昇に伴って、温度制御槽の凹孔18内に挿入され、所定の温度に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-508177号公報
【特許文献2】特開平3-175362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の前処理装置では、分析項目によっては、適切な温度で前処理の各工程が行われず、分析に適した試料が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、細胞前処理装置(100)である。実施形態において、細胞前処理装置(100)は、少なくとも遠心分離工程を含む検体の前処理を行う。前処理装置(100)は、前記検体が収容された容器(10)を保持する保持部(610)を有し、前記保持部(610)によって保持された容器(10)を回転させて前記遠心分離工程を行う遠心分離部(600)と、前記保持部(610)に保持された前記容器(10)内の検体の温度を調整する温度調整部(420)と、前記温度調整部(420)によって調整される温度の指定をユーザから受け付ける入力部(320)と、前記入力部(320)を介して指定を受け付けた温度に応じて前記温度調整部(420)を制御する制御部(300)と、を備える。ユーザから指定を受け付けた温度に応じて温度調整部を制御することで、前処理工程をユーザが所望する温度で容易に実行できる。
【0006】
前記遠心分離部(600)を内部に収容した収容部(400)をさらに備え、前記温度調整部(420)は、前記収容部(400)内に設けられているのが好ましい。この場合、収容部内の温度をユーザが所望する温度に調整できる。
【0007】
前記保持部(610)に保持された前記容器(10)内に試薬を分注するための分注部(210)をさらに備えるのが好ましい。
【0008】
温度の指定をするための設定画面(1000)を表示する表示部(310)をさらに備えるのが好ましい。設定画面により温度の指定を容易に行える。前記設定画面(1000)は、温度を示す数値を指定可能であるのが好ましい。
【0009】
前記設定画面(1000)では、前処理に含まれる複数の動作内容を設定可能であるとともに、前記複数の動作のための複数の温度を設定可能であるのが好ましい。この場合、動作に応じた温度を設定できる。
【0010】
前記設定画面(1000)は、前記複数の温度に含まれる第1温度から前記複数の温度に含まれる第2温度に切り替わる間に、前処理に含まれる工程を実施させるか否かを設定可能であるのが好ましい。この場合、温度切り替わりの間の工程実施の有無を設定できる。
【0011】
前記設定画面(1000)は、試薬の温度を設定可能であるのが好ましい。この場合、試薬設置部の温度も設定できる。
【0012】
前記入力部(320)は、分析項目に応じた複数のモード毎に温度の指定をユーザから受け付け、前記表示部(310)は、分析項目に応じた複数のモードのいずれかを選択する選択画面(800)を表示し、前記制御部(300)は、前記選択画面(800)で選択されたモードにおいて指定されている温度に応じて前記温度調整部(420)を制御するのが好ましい。この場合、モードに応じた温度調整が可能である。
【0013】
前記制御部(300)は、前記入力部(310)を介して指定を受け付けた温度を示す情報を記憶する記憶部(34)を備えるのが好ましい。この場合、温度を示す情報を記憶することができる。
【0014】
試薬が設置される試薬設置部(220,230)と、前記試薬設置部(220,230)に設置された試薬の温度を調整する試薬温度調整部(221,231)と、をさらに備え、前記入力部(310)は、前記試薬設置部(220,230)の温度を示す試薬温度情報をユーザから受け付け、前記制御部(300)は、前記試薬温度情報が示す温度に応じて前記試薬温度調整部(221,231)を制御するのが好ましい。この場合、試薬の温度もユーザ指定により調整できる。
【0015】
前記前処理は、検体に含まれる細胞の固定及び膜透過処理工程をさらに含むのが好ましい。
【0016】
前記保持部によって保持された前記容器内に第1および第2試薬を分注するための分注部と、前記遠心分離部を内部に収容する収容部と、をさらに備え、前記温度調整部は、前記収容部内の雰囲気温度を調整し、前記制御部は、前記収容部内において前記容器内の前記検体と前記第1試薬との第1反応工程、前記第1反応工程における未反応成分を除去するための遠心分離工程、及び、前記検体と前記第2試薬との第2反応工程を実施する制御をするとともに、前記第1反応工程および前記第2反応工程のそれぞれが異なる温度で行われるよう前記温度調整部による前記収容部内の雰囲気温度の切り替えを制御するのが好ましい。この場合、第1反応工程と第2反応工程をそれぞれ適切な温度で実施できる。なお、雰囲気温度とは、収容部内の大気の温度である。
【0017】
前記制御部は、前記収容部内の雰囲気温度が切り替わる間に、前記前処理に含まれる他の工程を実行させるのが好ましい。この場合、温度の切り替えと他の工程とを並行して実行することができる。前記他の工程は、前記遠心分離部により行われる、前記未反応成分を除去するための遠心分離工程とは異なる他の遠心分離工程を含むのが好ましい。
【0018】
前記制御部は、前記収容部内の雰囲気温度が切り替わってから、前記第2反応工程を開始するよう制御することができる。この場合、切り替わり後の温度で確実に第2反応工程を実行することができる。
【0019】
前記第1試薬及び前記第2試薬の少なくともいずれか一方は、前記検体に含まれる前記細胞を染色するための染色試薬であるのが好ましい。さらには、前記第1試薬は、細胞の表面抗原を染色するための染色試薬であり、前記第2試薬は、細胞内の対象物質を染色するための染色試薬であるのが好ましい。
【0020】
前記収容部(400)は、前記収容部(400)外から分注部(210)が備える分注管(21)が前記収容部(400)内に進入するための進入口(432)と、前記進入口(432)を開閉する開閉機構(45)と、を備えるのが好ましい。進入口によって、収容部内へのアクセスが可能となる。また、進入口を設けても、開閉機構によって進入口を閉じることで、収容部内の温度変化を抑制できる。
【0021】
前記温度調整部(420)から前記容器(10)を通って前記温度調整部(420)に戻る対流を前記収容部(400)内に生じさせる対流発生機構(421,322)をさらに備え、前記制御部(300)は、前記開閉機構によって前記進入口が開いている場合には、前記進入口が閉じている場合よりも前記対流を弱めるよう前記対流発生機構を制御するのが好ましい。入口が開いているときは、対流を弱めることで、収容部内の温度変化を抑制できる。
【0022】
前記収容部内に設けられた遠心分離部を回転させるモータ(63)をさらに備え、前記モータ(630)は前記収容部外に設けられているのが好ましい。この場合、モータの発熱が収容部内の温度に影響するのを抑えることができる。
【0023】
前記制御部(300)は、前記収容部内の雰囲気温度が前記温度調整部によって調整されているときに前記収容部内に設けられた遠心分離部(600)を回転させるのが好ましい。遠心分離部の回転により、収容部(400)内が撹拌され、収容部(400)内の温度を均一化させることができる。なお、遠心分離部の回転は、遠心分離のために行われる必要はなく、収容部(400)内の攪拌のために行われれば足りる。
【0024】
前記前処理は、Fluorescence In Situ Hybridization(FISH)分析のための前処理であってもよい。この前処理は、異なる温度での処理が望ましいため、温度切り替えにより適切な前処理が行える。
【0025】
他の観点からみた前処理装置(100)は、検体が収容された容器(10)を保持する保持部(610)を備え、前記保持部に保持された前記容器内の前記検体と試薬との反応工程を含む前記検体の前処理を行う前処理部(201)と、前記保持部(610)に保持された前記容器(10)内の検体の温度を調整する温度調整部(420)と、前記試薬が設置される試薬設置部(220,230)と、前記試薬設置部(220,230)に設置された試薬の温度を調整する試薬温度調整部(221,231)と、前記温度調整部(221,231)によって調整される温度および前記試薬温度調整部(221,231)によって調整される温度の指定をユーザから受け付ける入力部(320)と、前記入力部(320)を介して指定を受け付けた温度に応じて前記温度調整部(420)および前記試薬温度調整部(220,230)を制御する制御部(300)と、を備える。
【0026】
他の観点からみた前処理装置(100)は、検体と試薬との反応工程を含む前記検体の前処理を行う前処理部(201)と、前記前処理部(201)によって処理される前記検体の温度を調整する温度調整部(420)と、前記前処理部(201)の複数の動作内容および各動作内容を行う際に前記温度調整部(420)によって調整される温度を含む動作モードの設定をユーザから受け付ける入力部(310)と、前記入力部(310)を介して設定された動作モードに応じて、前記前処理部(201)および前記温度調整部(420)を制御する制御部(300)と、を備える。
【0027】
他の観点からみた前処理装置(100)は、検体が収容された容器(10)を保持して遠心分離する遠心分離部(600)、前記遠心分離部(600)によって保持された前記容器(10)内に第1および第2試薬を分注するための分注部(210)、及び、前記遠心分離部(600)を内部に収容する収容部(400)を備えた前処理部(201)と、前記収容部(400)内の雰囲気温度を調整する温度調整部(420)と、前記収容部内において前記容器内の前記検体と前記第1試薬との第1反応工程、前記第1反応工程における未反応成分を除去するための遠心分離工程、及び、前記検体と前記第2試薬との第2反応工程を行うよう前記前処理部を制御するとともに、前記第1反応工程および前記第2反応工程のそれぞれが異なる温度で行われるよう前記温度調整部による前記収容部内の雰囲気温度の切り替えを制御する制御部(300)と、を備える。
【0028】
他の観点からみた前処理装置(100)は、検体が収容された容器を保持する保持部(610)、前記保持部によって保持された前記容器内に第1および第2試薬を分注するための分注管を有する分注部(210)、及び、前記保持部を内部に収容する収容部(400)を備えた前処理部(201)と、前記収容部内の雰囲気温度を調整する温度調整部(420)と、前記第1試薬および前記第2試薬が設置される試薬設置部(220,230)と、前記試薬設置部に設置された前記第1試薬および前記第2試薬の温度を調整する試薬温度調整部(221,231)と、前記試薬設置部から前記分注管により前記第1試薬を吸引し、前記分注管を前記収容部内に挿入して前記保持部に保持された前記容器内に前記第1試薬を分注し、前記容器内の前記検体と前記第1試薬とを反応させる第1反応工程、及び、前記試薬設置部から前記分注管により前記第2試薬を吸引し、前記分注管を前記収容部内に挿入して前記保持部に保持された前記容器内に前記第2試薬を分注し、前記検体と前記第2試薬とを反応させる第2反応工程を行うよう前記前処理部を制御するとともに、前記第1反応工程における前記収容部内の雰囲気温度および前記第1試薬の温度と、前記第2反応工程における前記収容部内の雰囲気温度および前記第2試薬の温度とが異なるよう、前記温度調整部および前記試薬温度調整部を制御する制御部(300)と、を備える。
【0029】
他の観点からみた前処理装置(100)は、検体が収容された容器を保持して遠心分離する遠心分離部(600)、及び、前記遠心分離部によって保持された前記容器内に分注管によって試薬を分注するための分注部(201)を備えた前処理部(201)と、前記容器を傾けることによって前記容器内の上清を廃棄する廃棄部(273)と、前記容器内の前記検体と前記試薬との反応工程および前記反応工程後の遠心分離工程を行うよう前記前処理部を制御する制御部(300)と、を備え、前記制御部(300)は、前記遠心分離工程後に、(i)前記分注管を前記遠心分離部によって保持された前記容器内に挿入させ、前記容器内の上清を廃棄するよう前記分注部を制御する、又は、(ii)前記遠心分離部から前記容器を取り出し、前記容器を傾けて前記容器内の上清を廃棄するよう前記廃棄部を制御する。
【0030】
本発明の他の態様は前処理方法である。実施形態において方法は、温度の指定をユーザから受け付け、指定を受け付けた温度に応じて、遠心分離部に保持された容器内の温度を調整するよう温度調整部を制御し、温度調整された前記容器を回転させて遠心分離工程を実施する。
【0031】
他の観点からみた前処理方法は、検体の温度および試薬の温度の指定をユーザから受け付け、指定を受け付けた温度に応じて温度調整部により前記検体の温度および前記試薬の温度を調整し、温度調整された前記検体および前記試薬の反応工程を実施する。
【0032】
他の観点からみた前処理方法は、検体の前処理を行う前処理装置の動作モードを設定するための設定画面を表示し、前記設定画面において、前記前処理に含まれる複数の動作内容および各動作内容を行う際の前記検体の温度を動作モードに対応付けてユーザから設定を受け付け、設定された動作モードに応じて、前記前処理装置の前処理動作を制御する。
【0033】
他の観点からみた前処理方法は、検体が収容された容器を保持して遠心分離する収容部内の雰囲気温度を第1温度に調整し、雰囲気温度が前記第1温度に調整された前記収容部内で、前記容器内の検体と第1試薬との第1反応工程および未反応成分を除去するための遠心分離工程を行い、前記収容部内の雰囲気温度を、前記第1温度から第2温度へ切り替え、雰囲気温度が前記第2温度に切り替えられた前記収容部内で、前記容器内の検体と第2試薬との第2反応工程を行う。
【0034】
他の観点からみた前処理方法は、検体が収容された容器を収容する収容部内の雰囲気温度および第1試薬を第1温度に調整し、温度調整された前記第1試薬を吸引した分注管を、前記温度調整された前記収容部内に挿入して前記容器内に前記第1試薬を分注し、前記収容部内の雰囲気温度および第2試薬を、前記第1温度と異なる第2温度に調整し、温度調整された前記第2試薬を吸引した分注管を、前記温度調整された前記収容部内に挿入して前記容器内に前記第2試薬を分注する。
【0035】
他の観点からみた前処理方法は、検体が収容された容器を回転させて遠心分離部により遠心分離工程を実施し、動作モードに応じて、(i)分注管により前記容器内の上清を吸引して廃棄する上清廃棄動作、又は、(ii)前記遠心分離部から前記容器を取り出し、前記容器を傾けて前記容器内の上清を廃棄する上清廃棄動作を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1B】制御部による温度制御のためのブロック図である。
【
図6】前処理開始のための手順を示すフローチャートである。
【
図7A】前処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図7B】試薬庫にセットされた試薬を示す表である。
【
図8A】前処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図8B】前処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図8C】試薬庫にセットされた試薬を示す表である。
【
図9A】前処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図9B】試薬庫にセットされた試薬を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1Aに示す前処理装置100は、検体の前処理を行い、検体の分析に用いられる試料を調製する。実施形態において検体は、細胞を含む。細胞を含む検体は、例えば、血液検体であり、より具体的には、例えば、全血検体である。前処理は、例えば、細胞の染色のために行われ、複数の工程を含む。実施形態において、複数の工程は、細胞の染色工程と染色工程以外の工程を含む。
【0038】
前処理装置100によって、調整された試料は、分析装置によって分析される。分析装置は、例えば、フローサイトメータを有する。フローサイトメータは、試料を光学的に分析する。実施形態において、前処理装置100は分析装置とは別の装置であるが、分析装置が前処理装置100を備えていてもよい。
【0039】
図1Aにおいて、XYZ軸は互いに直交している。X軸は左右方向を示し、Y軸は前後を示し、Z方向は鉛直方向を示す。以下では、Y軸の正の向きが装置100の前方であり、Z軸の正の向きが鉛直上方である。他の図においても、XYZ軸は、
図1Aに示すXYZ軸と同じである。
【0040】
図1Aに示すように、前処理装置100は、装置本体200を備える。装置本体200は、前処理部201を備える。前処理部201は、分注部210を備える。分注部210は、検体が収容された容器10への試薬の分注等をする。分注部210は、ノズル211を備える。
図2に示すように、ノズル211には、使い捨ての分注管であるピペットチップ212が装着される。ノズル211は、ピペットチップ212を介して、液体の吸引及び吐出を行う。液体の吸引は、図示しないシリンジにより、ノズル211に負圧を与えることで行われ、液体の吐出は、図示しないシリンジにより、ノズル211に陽圧を与えることで行われる。
【0041】
図1Aに示す分注部210は、ノズル211の移送部213を備える。移送部213は、装置本体200内において、ノズル211をXYZ軸方向に移動させる。移送部213は、図示しないモータを有し、モータの駆動により、ノズル211が移動する。
【0042】
図1Aに示すに装置本体200は、第1試薬設置部220を備える。第1試薬設置部220には、前処理のための試薬が設置される。装置本体200は、第2試薬設置部230も備える。第2試薬設置部230にも、前処理のための試薬が設置される。実施形態の試薬設置部220,230は、内部に試薬が設置される試薬庫として構成されている。
【0043】
試薬設置部220,230の内部には、試薬が収容された試薬容器225,235が設置される。
図1Aにおいて、第1試薬設置部220には、11個の試薬容器225を設置することができ、第2試薬設置部230には、7個の試薬容器235を設置することができる。試薬設置部220,230には、それぞれ、複数の開口227,237が形成されている。開口227,237は、試薬設置部220,230内に設置される試薬容器225,235の上方に形成されている。開口227,237は、ノズル221が、試薬設置部220,230の上方から、試薬設置部220,230内に進入するためのものである。
【0044】
試薬の吸引時において、ノズル211は、移送部213によって、吸引すべき試薬を収容した試薬容器225,235の真上に移動する。続いて、ノズル211は、移送部213によって下方移動し、試薬容器225の真上位置から、開口227,237を通って、試薬容器225,235内に進入する。そして、ノズル211は、試薬容器225,235内の試薬を吸引する。
【0045】
実施形態の試薬設置部220,230は、内部に設置された試薬の温度を、所望の温度に保つため、内部に試薬温度調整部221,231を備える。
【0046】
実施形態において第1試薬設置部220は、内部の試薬を冷却することができる冷却試薬庫である。第1試薬設置部220は、冷却のため、第1試薬温度調整部221として冷却装置を備える。冷却装置は、例えば、ペルチェ素子によって構成される。冷却装置は、コンプレッサ又はその他の冷却装置であってもよい。第1試薬設置部220内の温度は、図示しない温度センサによって測定される。
【0047】
実施形態において第2試薬設置部230は、内部の試薬を加温することができる加温試薬庫である。第2試薬設置部230は、加温のため、第2試薬温度調整部231として加温装置を備える。加温装置は、例えば、ブロックヒータによって構成される。加温装置は、その他のヒータであってもよい。第2試薬設置部230内の温度は、図示しない温度センサによって測定される。第2試薬設置部230は、試薬を常温で保持することもできる。
【0048】
図1Aに示す装置本体200は、第1チップ設置部240及び第2チップ設置部250を備える。チップ設置部240,250には、ノズル211に装着されるピペットチップ212が設置される。第2チップ設置部250は、第1チップ設置部240に設置されるピペットチップ212よりも大きいピペットチップ212が設置される。ノズル211には大小いずれのピペットチップ212も装着可能である。ノズル211には、試薬の分注量に応じた大きさのピペットチップ212が装着される。
【0049】
ピペットチップ212は、非金属製であり、より具体的には、プラスチック製である。プラスチックは、金属に比べて、熱伝導率が低い。チップ212の温度と後述の収容部400内の温度とが大きく異なる場合に、熱伝導性が高いチップ212を収容部400内に進入させると、収容部400の温度が変化し易い。これに対して、プラスチック製のチップ212を、収容部400内に進入させても、収容部400の温度変化を抑制できる。
【0050】
試薬の吸引等に先立って、ノズル211は、移送部213によって、装着すべきピペットチップ212の真上に移動する。続いて、ノズル211は、移送部213によって、ピペットチップ212に向かって下方移動する。これにより、ノズル211の下端にピペットチップ212が装着される。なお、使用済みのピペットチップ212は、破棄部260に破棄される。
【0051】
前処理部201は、後述の収容部400外で、前処理における一部の工程を行うことができる外部処理部270を備える。外部処理部270は、後述の収容部400とは異なり温度調整がなされておらず、室温で、前処理における一部の工程を行うことができる。なお、前処理においては、外部処理部270を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
【0052】
実施形態の外部処理部270は、検体が収容された容器10を、収容部400外で保持する保持部271を備える。保持部271は、XY方向に移動するための移動機構272によって、後述の進入口405を通って、収容部400内に進入し、収容部400の容器10を把持して、収容部400に取り出すことができる。
【0053】
実施形態の外部処理部270は、容器10内の上清を廃棄する廃棄部273を備える。保持部271は、移動機構272によって容器10を傾けるデカントによって、容器10内の上清を廃棄部273に廃棄することができる。実施形態の外部処理部270は、容器10内の液体の攪拌部274を備える。撹拌部274は、例えば、保持部271によって保持された容器10内の液体を振とう攪拌するボルテックスミキサーである。実施形態において、外部処理部270は、上清除去工程と撹拌工程を、室温で行うことができるが、外部処理部270は、上清除去工程と撹拌工程以外の工程を室温で行えるように構成されていてもよい。
【0054】
前処理部201は、内部で前処理が行われる収容部400を備える。収容部300の内部には、遠心分離部600が収容されている。収容部400は、周囲が断熱材によって覆われており、内部の温度を保持し易い。実施形態において、前処理は、検体と試薬の反応工程を含むため、以下では、収容部400を「反応槽」ということもある。
図2に示すように、収容部400は、槽本体401を備える。実施形態においては、槽本体401内において、前処理における各工程が行われる。
【0055】
槽本体401は、ほぼ円筒状の容器である。槽本体401は、上部が開口している。収容部400は、槽本体401の上部開口を覆う蓋430を備えている。蓋430は、ヒンジ435を介して、槽本体401に取り付けられている。蓋430は、手動で開閉可能である。手動開閉時に手で蓋を掴めるよう、蓋430の上面には、凹状の把手431が形成されている。
【0056】
蓋430には、収容部400の上方から収容部400内に進入するための進入口432が形成されている。
図1Aにも示すように、実施形態の進入口432は、蓋430の縁部に形成されたU字状の切欠きである。試薬を収容部400内の容器10に分注する場合、
図2に示すように、試薬を吸引したノズル211は、移送部213によって、進入口432の真上に移動する。続いて、ノズル211は、移送部213によって下方移動し、進入口432を通って、収容部400内に進入する。そして、ノズル211は、試薬を容器10に吐出する。これにより、容器10内に試薬が分注される。
【0057】
図3(a)にも示すように、収容部400は、進入口432を開閉する開閉機構450を備えている。実施形態の開閉機構450は、進入口432を閉じるシャッター450aと、シャッター450を開閉動作させる駆動部451と、を備える。シャッター450aと駆動部451は、連結部452によって連結されている。駆動部451は、例えば、ソレノイドであり、シャッター450aをY軸方向に移動させる。
図3(a)に示すように、進入口432がシャッター450aによって閉じられていると、収容部400内の冷気又は熱気の漏れを防止して、収容部400内の温度変化を抑制できる。また、
図3(b)に示すように、シャッター450aが移動して、進入口432が開いていると、
図2に示すように、進入口432の上方から、ノズル211が収容部400内に進入することができる。
【0058】
図2に示すように、槽本体401には、収容部400の後方から収容部400内に進入するための進入口405も形成されている。この進入口432は、外部処理部270の保持部271が、収容部400の内部に進入するためのものである。
図2に示すように、シャッター450aは、進入口451とともに、進入口432を閉じることができるように、側面視においてL字状に形成されている。
【0059】
通常、シャッター450aは、進入口432,405を閉じている。シャッター450aは、ノズル211又は保持部271が収容部400に進入する前に、進入口432,405を開き、ノズル211又は271が収容部400から抜け出ると、進入口432,405を閉じる。このように、進入口432,405は、必要なときだけ開かれるため、収容部400の内部温度が、収容部400の外部温度の影響を受けて変動するのを抑制することができる。
【0060】
検体の前処理は、槽本体401内で行われる。
図2に示すように、槽本体401の内部には、検体が収容された容器10を保持する保持部610が設けられている。実施形態の保持部610は、遠心分離部600に設けられている。遠心分離部600は、槽本体401の底部411に支持されている。
図4Aに示すように、遠心分離部600は、複数の保持部610が外周に取り付けられたロータ613を有する。ロータ613の回転により、保持部610に保持された容器10内の液体への遠心分離が行われる。
【0061】
保持部610は、支持部材611を介して、ロータ613に支持されている。
図4Aのロータ613には、10個の保持部610が設けられている。ロータ613の上面には、保持部610の近傍に、1から10の数字が付されている。ロータ613に付された数字は、容器10を設置すべき保持部610の位置をユーザに示すものである。容器10を設置すべき保持部610をわかりやすくするため、1から10までで値が隣り合う数字は、ロータ613の中心を挟んで反対外に配置されている。
【0062】
遠心分離部600は、ロータ613の回転中心となる回転軸615を有する。回転軸回転軸615は、底部411に対して回転自在に支持されている。
図4Bにも示すように、回転軸615の下部には、プーリ616が設けられている。回転軸615は、モータ630によって回転駆動される。モータ630の回転軸631にはプーリ632が設けられている。プーリ616とプーリ632との間には、ベルト620が巻き掛けられている。モータ630の回転は、ベルト620を介して、槽本体401内の回転軸615に伝達される。回転軸615の回転によって、ロータ613が回転する。モータ630は、収容部400の外側において、収容部400に取り付けられている。モータ630の回転軸631は、収容部400を貫通しており、プーリ632は、収容部400内に位置する。ベルト620は、収容部400内に位置している。モータ630を収容部400外に配置することで、モータ630による発熱が収容部400内の温度に影響するのを抑えることができる。
【0063】
図2に示す収容部400は、槽本体401の下部に設けられた温度調整槽402を備えている。槽本体401と温度調整槽402との間は、槽本体401の底部411によって仕切られている。底部411は、槽本体401内の第1室510と、温度調整槽402内の第2室520と、を仕切部である。仕切部である底部411には、第1室510と第2室520とを連通させる貫通孔412,413が形成されている。後述のように、貫通孔412,413によって、第1室510と第2室520とを循環する対流が形成される。対流は、収容部400内の温度の均一化を促進する。
【0064】
温度調整槽402内には、収容部400内の雰囲気温度を調整する温度調整部420が設けられている。実施形態の温度調整部420は、ペルチェ素子420aを有している。温度調整部420は、収容部400内を所望の温度に調整することができる。温度調整部420は、収容部400内を加温して、収容部400内を室温よりも高い温度に保持することができる。また、温度調整部420は、収容部400内を冷却して、収容部400内を室温よりも低い温度に保持することができる。さらに、温度調整部420は、収容部400内を室温と同程度の一定の温度に保持することもできる。収容部400内の温度を監視するため、槽本体401内には、温度センサ428が設けられている。
図2では、温度センサ428は、貫通孔412の近傍に設けられている。温度センサ428は、温度調整槽402内に設けられても良い。
【0065】
温度調整槽402内には、収容部400内に対流を生じさせる対流発生機構421,422を備えている。実施形態の対流発生機構421,422は、温度調整部420によって発生した熱気又は冷気を、槽本体401へ送る第1ファン421及び第2ファン422を有している。ファン421,422は、収容部400内に対流を生じさせる。対流は、複数の貫通孔412,413のうち、温度調整部420から離れた位置にある第1貫通孔412において、第2室520から第1室510に向かい、温度調整部420の上方位置にある第2貫通孔412において、第1室510から第2室に向かう。
【0066】
第1ファン421は、第2貫通孔413の下方に配置されている。第1ファン421は、温度調整部420によって発生した熱気又は冷気を、温度調整部420から離れた位置にある第1貫通孔412側へ送るべく、温度調整槽402内を水平に流れる気流を発生させる。第2ファン422は、第1貫通孔412の下方に配置されている。第2ファン422は、第1ファン421による水平気流を、上方の第1貫通孔412に向かう上昇気流に変換するように配置されている。
【0067】
第1貫通孔412から第1室510に入った気流は、保持部610付近を通って、第2貫通孔413へ向かう。第2貫通孔413の下方に配置された第1ファン421は、第2貫通孔413から気流を引き込む。このように、第1ファン421及び第2ファン422によって、第1室510及び第2室520を循環する対流が形成され、温度調整部420によって発生した熱気又は冷気を第1室510に流すことができ、効率的に、第1室510内の温度を調整することができる。なお、前処理中にロータ613を回転させることで、第1室510内の温度分布をより均一化させることができる。
【0068】
第2ファン422は、シャッター450aが進入口432を開いているときには、停止する。第2ファン422の停止により、対流が弱まる。対流が弱まることで、進入口432から収容部400内の熱気又は冷気が、収容部400外に逃げるのを防止できる。なお、対流を弱めるには、第1ファン421及び第2ファン422の回転数を下げることで行っても良い。また、進入口432は、第2貫通孔413の上方に設けられていることからも、進入口432から収容部400内の熱気又は冷気が、収容部400外に逃げるのが防止される。第2貫通孔413においては、上から下に向かう気流が発生しているため、収容部400上部の進入口432からの熱気又は冷気が逃げにくい構造となっている。
【0069】
図2に示す収容部400は、温度調整槽402の後方に設けられた排熱部425を備えている。排熱部425は、温度調整部420によって発生した冷排熱又は温排熱を、装置本体200の外部へ逃がすためのものである。排熱部425は、温度調整部420によって発生した冷排熱又は温排熱を後方に流すファン423と、ファン423によって発生した気流を、装置本体200の後方に導くためのダクト425aとを備えている。ダクト425aの後部には、装置本体200の外部へ繋がる排気口426が形成されている。ダクト425aは、外部処理部270の下方に配置されている。温度調整槽402を槽本体401の下方に配置したことにより、ダクト425の位置も下方位置となり、外部処理部270の下方空間を有効活用できる。
【0070】
図4Cに示すように、温度調整部420は、槽本体401内に設けられていても良い。
図4Cにおいては、温度調整部420は、槽本体401の後側の内部に設けられている。
図4Cのように、温度調整部420を槽本体401に設けた場合、温度調整槽402を省略できる。
図4Cにおいては、ダクト425aは、槽本体401と同じ高さに配置されている。
【0071】
図4Cでは、遠心分離部600の回転軸615の下部は、底部411を貫通し、収容部400の外部にまで延びている。
図4Cにおいても、回転軸615を回転駆動するモータ630は、収容部400の外部に配置されている。
図4Cにおいては、収容部400の外部に配置されたベルト620によって、モータ630の回転が、回転軸615に伝達される。
図4Cに示す構造においては、
図4Bに示す構造よりも、モータ630を、収容部400からより離すことができるため、モータ630による発熱が収容部400内の温度に影響するのをより抑えることができる。なお、
図4Dに示すように、温度調整部420は、槽本体401の側方に設けられていても良い。この場合、温度調整部420に隣接するファン423から装置本体200の外部までの距離が小さくなり、ダクト425を不要化、又はダクト425を小さくすることができる。
【0072】
図1Aに戻り、前処理装置100は、制御部300を備える。制御部300は、前処理装置本体200の各部を制御する。プロセッサ330及び記憶部340を有するコンピュータによって構成されている。制御部300のプロセッサは、前処理のための制御のコンピュータプログラムを実行することで、前処理装置200の各部を制御する。コンピュータプログラムは、記憶部340に格納されている。
【0073】
制御部300は、例えば、分注部210の移動及びノズル211による試薬等の液体の吸排を制御する。ノズル211による液体の吸排は、容器10内の液体を撹拌するためにも行われる。ノズル211による液体の吸引は、容器10内の上清除去のためにも行われる。また、制御部300は、試薬設置部220,230の温度調整部221,231を制御することで、試薬設置部220,230内の温度を調整する。制御部300は、試薬設置部220,230内に設置された図示しない温度センサの検出信号に基づいて、試薬設置部220,230内の温度を把握する。制御部300は、必要に応じて、外部処理部270を制御することで、外部処理部270に、攪拌工程、上清除去工程を行わせる。
【0074】
実施形態の制御部300は、開閉機構450の駆動部451を制御することで、進入口432の開閉制御を行う。制御部300は、モータ630を制御することで、遠心分離部600に遠心分離工程を行わせる。
【0075】
制御部300は、温度調整部420を制御することで、収容部400の温度を調整する。温度の調整は、加温及び冷却を含む。
図1Bに示すように、制御部300は、前処理部201の収容部400内に設置された温度センサ428の検出信号に基づいて、前処理部201を構成する収容部400内の温度を把握する。温度センサ482によって検出された温度は、制御部300にフィードバックされる。制御部300は、記憶部340に記憶された指定温度341aと、フィードバックされた温度との差分を演算部331によって求め、差分が小さくなるように温度制御部332による温度制御を行う。ここでの温度制御は、例えば、PDI制御である。温度制御部332は、温度調整部420への指令値を出力し、温度センサ482によって検出される温度が設定温度341aになるように制温度調整部420を制御する。指定温度341aは、ユーザ入力により制御部300の記憶部340に記憶されている。指定温度341aの設定については後述する。
【0076】
制御部300は、前処理中に収容部400内の温度を切り替える制御を行うことができる。制御部300は、ファン421,422を制御することで、収容部400の対流を制御できる。制御部300は、進入口432が開いているときには、第2ファン422を停止させること等で、対流を弱める制御をする。制御部300は、ファン433を制御し、温度調整部420によって発生した冷排熱又は温排熱、装置本体200へ逃がす。
【0077】
制御部300には、前処理の制御画面を表示する表示部310と、ユーザからの入力を受け付ける入力部320と、が接続されている。制御部300は、例えば、
図5Aに示す制御画面800を表示部310に表示させる。
【0078】
前処理装置100のユーザは、画面800を入力部320によって操作することで、制御部300に予め設定された複数の処理モードから一つのモードを選択して、装置本体200を動作させることができる。また、ユーザは、画面800によって、装置本体200の動作状況を把握することができる。
【0079】
画面800は、処理モードの選択領域810を備えている。選択領域810は、モードを選択するための選択画面である。処理モードは、装置本体200において実行される前処理の動作条件が規定されたものである。
図1Aに示すように、制御部340の記憶部340には、複数の設定ファイル341,342,343が保存されている。各設定ファイル341,342,343には、前処理に含まれる複数の工程を示す動作項目及び各動作項目の動作条件を規定した処理モードが設定されている。記憶部34には、設定ファイル341は、前処理装置で実行可能な複数の処理モードに対応して、複数の設定ファイル341,342,343が保存されている。各設定ファイル341342,343には、各処理モードにおける指定温度を示す指定温度情報341a,341b,341cが含まれる。1つの設定ファイルは、複数の指定温度情報を含むことができる。指定温度は、入力部320を介したユーザ入力により指定される。
【0080】
ユーザは、
図6に示す手順に従って、画面800を操作し、前処理を実行させることができる。
図6のステップS10において、ユーザは、
図5Aの「ファイルを開く」ボタン811を選択し、記憶部340に保存されている1又は複数の設定ファイル341の中から、実行したい前処理の処理モードの動作項目及び動作条件を規定した設定ファイルを選択する。例えば、設定ファイル「モードA.csv」がユーザによって選択されると、
図5Bに示すように、ファイル表示部814には、「モードA.csv」がユーザによって選択された設定ファイル341であることが表示される。
【0081】
ここで、分析項目によって、分析試料の調製の仕方が異なるため、前処理において必要な工程は、検体の分析項目によって異なる。例えば、分析項目が、白血球の表面抗原分析である場合、白血球の表面抗原分析に適した検体の前処理が必要とされる。また、分析項目が、フローサイトメトリーFISH(fluorescence in situ hybridization)分析である場合、フローサイトメトリーFISHに適した検体の前処理が必要とされる。設定ファイル341では、分析項目に応じた前処理の処理モードが規定されている。ユーザは、複数の処理モードに対応する複数の設定ファイルの中から、分析項目に応じた処理モードが規定された設定ファイル341を選択する。例えば、分析項目が白血球の表面抗原分析である場合、ユーザは、白血球の表面抗原分析用の処理モードが規定された設定ファイル341を選択する。また、分析項目が、フローサイトメトリーFISH分析である場合、ユーザは、フローサイトメトリーFISH分析用の処理モードが規定された設定ファイル341を選択する。
【0082】
選択領域810には、「ウォーミングアップ」ボタン812が設けられている。ユーザによって、設定ファイル341が選択されると、「ウォーミングアップ」ボタン812が選択可能になる。ステップS20において、ユーザが、「ウォーミングアップ」ボタン812を選択すると、制御部300は、装置本体200に前処理開始のためのウォーミングアップを開始させる。このとき、
図5Bの画面800の装置状態表示部860は、装置状態が、ウォーミングアップ中であることを示す。
【0083】
実施形態において、ウォーミングアップでは、収容部(反応槽)400、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220、及び第2試薬設置部(加温試薬庫)230それぞれの内部温度が、予め設定された指定温度に調整される。
【0084】
ウォーミングアップにおいて、反応槽400の温度は、選択された処理モードにおける開始時の温度に調整される。開始時の温度は、例えば、4℃、室温、又は70℃である。ウォーミングアップにおいて、冷却試薬庫220の温度は、例えば、4℃に調整される。ウォーミングアップにおいて、加温試薬庫230の温度は、例えば、室温又は70℃に調整される。なお、室温は、温度非調整により得られる温度であってもよいし、30℃程度の温度に調整することで得られる温度であってもよい。
【0085】
図5Bの画面800では、収容部(反応槽)400、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220、及び第2試薬設置部(加温試薬庫)230それぞれの内部温度が、温度表示領域870に表示される。
【0086】
ウォーミングアップが完了すると、領域810の「処理開始」ボタン813が選択可能になる。また、ウォーミングアップが完了すると、制御部300は、検体と試薬を前処理装置本体200にセットすることを促す表示を行う。
図6のステップS30において、ユーザは、
図5Bの画面500に表示されている「反応遠心部」領域820と、「加温試薬庫」領域840と、「冷却試薬庫」領域850と、を参照して、検体及び試薬を装置本体200に設置する。
【0087】
「反応遠心部」領域820は、選択された処理モードにおいて、反応槽400内の複数の保持部610のうち、どの保持部610に容器10をセットすればよいかを示す。
図5Bの「反応遠心部」領域820は、一例として、6個の容器10を、ロータ613に「1」「2」「3」「4」「5」「6」の数字が付された各保持部610にセットすべきことを示している。
図5Bにおいて、「開始Pos.」821は、一例として6個の容器を数字「1」の位置からセットすべきことを示し、「キュベット数」は、一例として、セットすべき容器10が6個であることを示す。また、「反応遠心部」領域820には、容器10が設置される保持部10の位置を示す図形823が表示される。図形823内の数字は、ローラ613に付された数字と対応している。したがって、ユーザは、容易に容器10を正しい位置にセットすることができる。図形823において、斜線付数字は、容器10をセットすべき位置を示す。
【0088】
「冷却試薬庫」領域850は、選択された処理モードにおいて、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220のどの位置に、どのような試薬をセットすればよいかを示す。
図5Bの「冷却試薬倉庫」領域850内の図形851は、A,B1,B2,B3,B4,B5,C,D,E,F,Gの11個の試薬容器設置位置を示す。一例として、
図5Bにおいては、図形851内の斜線付文字である「A」「B1」「B2」「B3」「B4」「B5」「C」「E」「F」「G」の位置が、試薬容器225が設置される位置であることを示し、
図5の試薬名表示部852は、斜線付文字の位置に設置される試薬の名称を示している。
図5の図形851内のA~Gで示される試薬容器設置位置は、第1試薬設置部220における試薬容器225の設置位置と対応しており、ユーザは、容易に試薬容器225を第1試薬設置部220の正しい位置にセットすることができる。
【0089】
なお、以下では、Aの位置に設置された試薬容器をA試薬容器、B1~B5の位置に設置された試薬容器をB1~B5試薬容器、Cの位置に設置された試薬容器をC試薬容器、Dの位置に設置された試薬容器をD試薬容器、Eの位置に設置された試薬容器をE試薬容器、Fの位置に設置された試薬容器をF試薬容器という。
【0090】
「加温試薬庫」領域840は、選択された処理モードにおいて、第2試薬設置部(加温試薬庫)230のどの位置に、どのような試薬をセットすればよいかを示す。
図5Bの「加温試薬庫」領域840内の図形841は、H,I,J,K,L,M,Nの7個の試薬容器設置位置を示す。一例として、
図5Bにおいては、第2試薬設置部230には試薬が設置されないことを示す。
図5Bの図形841内のH~Nで示される試薬容器設置位置は、第2試薬設置部230における試薬容器235の設置位置と対応しており、ユーザは、容易に試薬容器235を第2試薬設置部230の正しい位置にセットすることができる。
【0091】
なお、以下では、Hの位置に設置された試薬容器をH試薬容器、Iの位置に設置された試薬容器をI試薬容器、Jの位置に設置された試薬容器をJ試薬容器、Kの位置に設置された試薬容器をK試薬容器、Lの位置に設置された試薬容器をL試薬容器、Mの位置に設置された試薬容器をM試薬容器、Nの位置に設置された試薬容器をN試薬容器という。
【0092】
図5Bの画面800では、「チップ」領域830も表示される。「チップ」領域830は、選択された処理モードの前処理において、チップ設置部240,250に設置されたどのピペットチップ212が何本使用されるかを示す。ユーザは、「チップ」領域830を参照することで、必要な数のピペットチップ212がチップ設置部240,250に設置されているかを確認することができる。
【0093】
検体が収容された容器10及び試薬容器225,235のセットが完了すると、ユーザは、
図6のステップS40において、画面800の「処理開始」ボタン813を選択する。「処理開始」ボタン814が選択されると、制御部300は、選択された設定ファイル341に規定された動作項目及び動作条件に従い、装置本体200の各部を制御し、容器10内の検体の前処理を行う。
【0094】
図7Aは、白血球の表面抗原分析用の前処理の動作手順を示している。制御部300は、白血球の表面抗原分析用の前処理の設定ファイル341に規定された動作項目及び動作条件に従って、
図7Aに示す手順を実行する。
【0095】
図7Aに示す前処理に先立って行われるステップS20のウォーミングアップでは、反応槽400の温度は前処理開始時の温度である室温に設定される。第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度は4℃に設定される。第2試薬設置部(加温試薬庫)230の温度は、室温に設定される。なお、ここでの室温は、温度非調整により得られる温度とする。
【0096】
図7Aでは、ステップS201-1~S212-2までの反応槽400の温度は室温である。室温は、
図7Aにおける反応等に適した温度である。ステップS213にて、反応槽400内の雰囲気温度が、試料の保存に適した低温(4℃)に切り替えられる。このように、温度切り替えにより、反応槽400内の温度を、各工程にとって望ましい温度に調整することができる。
【0097】
以下では、
図7Aに示す各工程を詳細に説明する。まず、制御部300は、抗体反応工程を実行する。抗体反応工程は、抗体反応工程は、細胞の表面抗原と抗体試薬との反応により、細胞表面を染色する工程である。抗体反応工程では、複数種類の抗体試薬が用いられる。抗体反応工程は、ステップS201-1,S201-2,S102を含む。
【0098】
ステップS201-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたB1試薬容器内の抗体試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の抗体試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。B2~B5試薬容器内の抗体試薬についても同様に、容器10へ分注される。ステップS201-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS2002の反応工程では、試薬と検体との反応が所定時間行われる。
【0099】
抗体反応工程に続いて、溶血工程が実行される。溶血工程は、ステップS203-1からS206を含む。ステップS203-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたH試薬容器内の溶血剤(
図7B参照)が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の溶血剤が反応槽400内の容器10の混合液へ分注される。ステップS203-2の攪拌工程では、分注された溶血剤と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS204の反応工程では、溶血剤と検体との反応が所定時間行われる。
【0100】
ステップS205-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたJ試薬容器内の溶血剤(
図7B参照)が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の溶血剤が反応槽400内の容器10の混合液へ分注される。ステップS205-2の攪拌工程では、分注された溶血剤と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS206の反応工程では、溶血剤と検体との反応が所定時間行われる。
【0101】
溶血工程に続いて、洗浄工程が実行される。洗浄工程は、ステップS207からステップS212-2を含む。ステップS207では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS208の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0102】
ステップS209-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたE試薬容器内の洗浄液が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の洗浄液が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの洗浄液は、リン酸緩衝食塩液(PBS)である(
図7B参照)。ステップS209-2の攪拌工程では、分注された洗浄液と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS210では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS211の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。ステップS212-1~S212-2では、ステップS209-1~ステップS209-2と同様の処理が繰り返される。以上により、分析のための試料が調製される。
【0103】
洗浄工程に続いて、ステップS213の保存工程が実行される。保存工程は、温度変更工程である。制御部300は、ステップS213において、反応槽400内の雰囲気温度を、試料の保存に適した低温(4℃)に変更する。制御部300は、温度センサ428の検出結果に基づいて、反応槽400内の雰囲気温度の切り替わりを判断する。保存工程において、試料は、分析されるまで、保存に適した低温で保存される。
【0104】
図8A,
図8B,
図9A,
図9Bは、FISH分析用の前処理の動作手順を示している。FISH分析用の前処理では、検体に含まれる細胞表面の染色に加えて細胞内の染色が必要となる。制御部300は、FISH分析用の前処理の設定ファイル341に規定された動作項目及び動作条件に従って、
図8A,
図8B,
図9A,
図9Bに示す手順を実行する。ここで、FISH分析用の前処理は、ハイブリダイゼーションを含むが、実施形態において、ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションのための他の装置において行われる。実施形態において、前処理装置100にて実行される処理は、
図8A,
図8Bに示すハイブリダイゼーション前の手順と、
図9A,
図9Bに示すハイブリダイゼーションの手順である。なお、前処理装置100においてハイブリダイゼーションを行っても良い。
【0105】
図8A,
図8Bに示す前処理に先立って行われるステップS20のウォーミングアップでは、反応槽400内の雰囲気温度は処理開始時の温度である4℃に設定され、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度も4℃に設定される。制御部300は、前処理中において、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度を4℃に保持する。第1試薬設置部(加温試薬庫)230の温度は、室温に設定される。なお、ここでの室温は、温度非調整により得られる温度とする。
【0106】
図8A,
図8Bでは、ステップS301~S321までの反応槽400の温度は4℃である。4℃は、細胞の固定・膜透過・試料保存に適した温度である。
【0107】
以下では、
図8A,
図8Bに示す各工程を詳細に説明する。前処理実行開始直後のステップS301-1,S301-2では、反応槽400の温度変更工程が行われ、反応槽400内の雰囲気温度が4℃に調整される。前処理の実行前のウォーミングアップにおいて反応槽400内の温度は一旦4℃に調整されるが、検体が収容された容器10を反応槽400内にセットするために、蓋430を開けることで、反応槽400内の温度が上昇することがある。このため、制御部300は、ステップS301において、反応槽400の温度が4℃になるまで温度調整をする。ステップS301-2において、制御部300は、温度センサ428の検出結果に基づいて、反応槽400内の雰囲気温度が4℃になったことを判断する。
【0108】
反応槽400の温度が4℃に調整されると、制御部300は、細胞の固定処理工程を実行する。固定処理工程は、ステップS302からS308を含む。ステップS302の遠心分離工程では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS303の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0109】
ステップS304-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたE試薬容器内の試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、リン酸緩衝食塩液(PBS)である(
図8C参照)。ステップS304-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0110】
ステップS305-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたF試薬容器内の試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、メタノール/酢酸/PBSである(
図8C参照)。ステップS305-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0111】
ステップS306の反応工程では、試薬と検体との反応が所定時間行われる。ステップS307では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS308の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0112】
固定処理工程に続いて、細胞の膜透過処理工程が実行される。膜透過処理工程は、ステップS309-1からS313を含む。
【0113】
ステップS309-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたE試薬容器内の試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、リン酸緩衝食塩液(PBS)である(
図8C参照)。ステップS309-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0114】
ステップS310-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたF試薬容器内の試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、メタノール/酢酸/PBSである(
図8C参照)。ステップS310-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0115】
ステップS311の反応工程では、試薬と検体との反応が所定時間行われる。ステップS312では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS3313の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0116】
膜透過処理工程に続いて、洗浄工程が実行される。洗浄工程は、ステップS314-1~S320-2を含む。
【0117】
ステップS314-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたJ試薬容器内の反応バッファ(
図8C参照)が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の反応バッファが反応槽400内の容器10へ分注される。ステップS314-2の攪拌工程では、分注された反応バッファと検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0118】
ステップS315では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS3316の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0119】
ステップS317-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたK試薬容器内のバッファが、ノズル211により所定量吸引され、所定量のバッファが反応槽400内の容器10へ分注される。ここでのバッファは、2×Saline Sodium Citrate Buffer(SSC)である(
図8C参照)。ステップS317-2の攪拌工程では、分注されたバッファと検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0120】
ステップS318では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS3319の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0121】
ステップS320-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたK試薬容器内のバッファが、ノズル211により所定量吸引され、所定量のバッファが反応槽400内の容器10へ分注される。ここでのバッファは、2×Saline Sodium Citrate Buffer(SSC)である。ステップS320-2の攪拌工程では、分注されたバッファと検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。
【0122】
洗浄工程に続いて、ステップS321の保存工程が実行される。ここでの保存工程は、温度変更工程を含む。制御部300は、ステップS321において、反応槽400内の雰囲気温度を、ステップS320-2までの工程で作成された試料の保存に適した低温(4℃)に確実に設定するため、温度変更工程を実行する。制御部300は、温度センサ428の検出結果に基づいて、反応槽400内の雰囲気温度が4℃であることを判断する。保存工程において、試料は、ハイブリダイゼーションが行われるまで、保存に適した低温で保存される。
【0123】
別の装置でハイブリダイゼーションが行われた後、
図9Aに示す手順が実行される。
図9Aに示す処理に先立って行われるステップS20のウォーミングアップでは、反応槽400内の雰囲気温度は処理開始時の温度である70℃に設定され、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度は室温に設定される。なお、ここでの室温は、温度調整により得られる30℃とする。また、第2試薬設置部230の温度は反応槽400の温度と同じ70℃に設定される。
【0124】
図9Aでは、ステップS402からステップS405までは反応槽400内の雰囲気温度は70℃に調整され、ステップS407からS414までは反応槽400内の雰囲気温度は30℃(室温)に調整される。ステップS415では、反応槽400内の雰囲気温度は、再び4℃に切り替えられる。
【0125】
図9Aの処理において、ステップS402からステップS405までの反応槽400内の雰囲気温度が70℃に調整されるのは、
図9AのステップS405の反応工程が、70℃で行われるのが、望ましいからである。また、ステップS407からS414までの反応槽400内の雰囲気温度が30℃(室温)に調整されるのは、これらの工程が、室温で行われるのが望ましい(70℃は高すぎる)からである。ステップS415の保存工程において収容部400内の雰囲気温度が4℃に調整されるのは、調製された試料を、分析まで低温で保存するためである。
【0126】
このように、
図9Aの処理においては、各工程において、望ましい温度が変化するが、温度切り替えにより、反応槽400内の温度を各工程にとって望ましい温度に調整することができる。
【0127】
以下では、
図9Aに示す各工程を詳細に説明する。前処理実行開始直後のステップS401-1、S401-2では、反応槽400の温度変更工程が行われ、反応槽400内の雰囲気温度が70℃に調整される。前処理の実行前のウォーミングアップにおいて反応槽400内の温度は一旦70℃に調整されるが、その後、反応槽400内の温度が下降することがある。このため、制御部300は、ステップS401-1,S401-2において、反応槽400内の雰囲気温度が70℃になるまで温度調整をする。
【0128】
反応槽400内の雰囲気温度が70℃に調整されると、制御部300は、洗浄工程を実行する。洗浄工程は、ステップS402からステップS411を含む。ステップS402の遠心分離工程では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS403の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0129】
ステップS404-1の分注工程では、加温試薬庫230に設置されたH試薬容器内の試薬が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、1.0×Saline Sodium Citrate Buffer(SSC)である(
図9B参照)。試薬は、加温試薬庫230において、反応槽400と同じ70℃に加温されているため、試薬分注による温度低下を防止できる。ステップS404-2の攪拌工程では、分注された試薬と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS405の反応工程では、試薬と検体の反応が、70℃という望ましい温度において所定時間行われる。
【0130】
ステップS405反応工程後、制御部300は、ステップS406において、反応槽400の温度を、30℃に変更する。制御部300は、反応槽400内の雰囲気温度が、30℃に達するのを待たずに、次のステップS407の実行を開始する。洗浄工程は温度がさほど問題とならないため、温度の変更と洗浄とを並行して行うことで、前処理時間を短縮することができる。
【0131】
ステップS407の遠心分離工程では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS408の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0132】
ステップS409-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたA試薬容器内のバッファが、ノズル211により所定量吸引され、所定量の試薬が反応槽400内の容器10へ分注される。ここでの試薬は、TBSTである(
図9B参照)。ステップS409-2の攪拌工程では、分注されバッファと検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS410の遠心分離工程では、遠心分離部600により遠心分離工程が行われる。ステップS411の上清除去工程では、ノズル211の吸引によって容器10の上清が取り除かれる。
【0133】
洗浄工程の終了後、ステップS412-1,S412-2の温度変更工程が実行される。ステップS412-1、S412-2の温度変更工程は、次の核染色工程の実行に先立って、反応槽400内の雰囲気温度を、確実に30℃にするためのものである。ステップS406の温度変更工程による温度変更に伴いステップS407からステップS411の洗浄工程中に反応槽400内の雰囲気温度は30℃に下降するが、もし、30℃になっていなければ、ステップS412の温度変更工程では、30℃になるまで、待機される。
【0134】
反応槽400の温度が30℃になると、核染色工程が実行される。核染色工程は、細胞内の核を染色する工程である。核染色工程は、ステップS413-1,S413-2,S414を含む。
【0135】
ステップS413-1の分注工程では、冷却試薬庫220に設置されたB試薬容器内の核染色剤が、ノズル211により所定量吸引され、所定量の核染色剤が反応槽400内の容器10へ分注される。ステップS413-2の攪拌工程では、分注された核染色剤と検体とが、ノズル211の吸排動作により攪拌される。ステップS414の反応工程では、核染色剤により検体に含まれる細胞の核が染色される。以上の処理により、FISH分析用の試料が調製される。
【0136】
各染色工程に続いて、ステップS415の保存工程が実行される。ここでの保存工程は、温度変更工程を含む。制御部300は、ステップS415において、反応槽400内の雰囲気温度を、分析用の試料の保存に適した低温(4℃)にするため、温度変更工程を実行する。保存工程において、試料は、分析が行われるまで、保存に適した低温で保存される。
【0137】
以上のように本実施形態の前処理装置100によれば、前処理に含まれる各工程において望まれる温度が異なっていても温度切り替えにより対応できる。また、前処理装置100は、分析項目に応じた複数種類の前処理を実行できるが、前処理の種類に応じた適切な温度での前処理が可能である。
【0138】
図10~
図14は、分析項目に応じた処理モードの設定ファイルを作成するための設定画面900を示している。実施形態において、設定画面900は、
図5A,
図5Bに示す画面800における設定ボタン815がユーザによって選択されると、制御部300は、
図10に示す設定画面900を表示部310に表示させる。ユーザは、この設定画面900において、分析項目に応じた前処理の動作項目及び各動作項目の動作条件を設定することができる。
【0139】
設定画面900は、ウォーミングアップの条件を設定するための領域910を備える。領域910は、収容部(反応槽)400の温度設定部911と、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度設定部912と、第2試薬設置部(加温試薬庫)230の温度設定部913と、を備える。温度設定部911,912,913に設定された指定温度は、記憶部340において、指定温度情報341a,342a,343aとして保存される。ウォーミングアップの際には、収容部400、第1試薬設置部220、及び第2試薬設置部230は、温度設定部911,912,913に設定された指定温度に調整される。なお、温度設定部911,912,913は、プルダウンメニューであり、選択されると、設定すべき温度候補のリストが
図11B,
図11C,
図11Dに示すように表示される。温度候補のリストには、温度候補のほか、温度調整をしないことを示す「温調なし」も含まれる。温度設定部911,912,913では、温度を数値で指定することができる。なお、温度の指定は、温度候補の選択に限られず、入力部320が温度を示す数値を直接受け付けても良い。
【0140】
設定画面900は、試薬ボトルホルダの設定領域920を備える。試薬ボトルホルダは、試薬設置部220,230に設置される標準の大きさの試薬容器よりも小さい試薬容器を設置するために用いられるホルダである。設定領域920では、試薬容器を設置する際に、ホルダを用いるか否かを設定できる。領域920中の冷却試薬庫領域921では、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220において、E試薬容器及びF試薬容器について、ホルダを用いるか否かを設定できる。領域920中の加温試薬庫領域922では、第2試薬設置部(加温試薬庫)230において、J試薬容器、K試薬容器、L試薬容器、M試薬容器、及びN試薬容器について、ホルダを用いるか否かを設定できる。
【0141】
設定画面900は、前処理の動作項目及び動作条件の設定領域930を備える。設定領域930は、動作項目の順序を示す領域931を有する。
図10において、領域931には、1から順に数字が表示される。領域921の数字は、動作項目の実行順序を示す。
【0142】
設定領域930は、領域931で示す各順序における動作項目を選択するための領域932を有する。例えば、順序「No.1」に対応する領域932が、ユーザによって選択されると、
図11Aに示すように、順序「No.1」における複数の動作項目の候補が、プルダウンメニュー940で表示される。ユーザは、メニュー940中の複数の動作項目から一つの動作項目を選択する。メニュー940には、温度調整のための動作項目である「温度制御、試薬分注のための動作項目である「分注」、試料のための動作項目である「攪拌」、検体と試薬の反応のための動作項目である「反応」、遠心分離のための動作項目である「遠心」、上清除去のための動作項目である「上清除去」などが含まれる。
【0143】
メニュー940中の「攪拌A」は、収容部400外で行われる攪拌のための動作項目である。「撹拌A」が選択されると、外部処理部270の攪拌部274で撹拌が行われる。メニュー中の「攪拌B」は、収容部400内で行われる攪拌のための動作項目である。「攪拌B」が選択されると、ノズル211による液体の吸排により、収容部400内で攪拌が行われる。このように、攪拌を収容部400内で行うか、収容部400外で行うかを設定可能である。
【0144】
収容部400内で行われる吸排撹拌では、容器10内の液体が、ピペットチップ212に付着し、容器10内の液体がわずかであるが減少する。これに対し、収容部400外の攪拌部274での攪拌は、振とう攪拌であり、容器10内の液体とピペットチップとの接触は生じないため、容器10内の液体の減少を回避することができる。したがって、検体の量が少ない場合など、攪拌による容器10内の液体とピペットチップとの接触を回避したい場合には、「攪拌A」を選択すればよい。
【0145】
メニュー940中の「上清除去(デカント)」は、収容部400外で行われる上清除去のための動作項目である。「上清除去(デカント)」が選択されると、外部処理部270においてデカントにより上清除去が行われる。メニュー904中の「上清除去(ピペット)」は、収容部400内で行われる上清除去のための動作項目である。「上清除去(ピペット)」が選択されると、ノズル211に装着されたピペットチップからの吸引により、収容部300内で上清除去が行われる。このように、上清除去を収容部400内で行うか、収容部400外で行うかを設定可能である。デカントによる上清除去は、動作時間を短くしたい場合や、ピペットチップを消費したくない場合に有効である。一方、ピペットチップからの吸引による上清除去は、残液量のバラつきを小さくしたい場合や、微量液の除去をしたい場合に有効である。
【0146】
また、メニュー940には、「分注A+攪拌A」のように複数の動作項目の組み合わせも表示される。複数の動作項目の組み合わせを選択することで、複数の動作項目を容易に選択できる。
【0147】
図12は、メニュー940において、「温度制御」を選択したときの画面900を示している。一つの処理モードにおいて、「温度制御」の動作項目は、いくつでも設定可能である。
【0148】
図12の画面900において、「温度制御」が選択された行の「編集」ボタンが、ユーザによって選択されると、制御部300は、
図13Aに示す動作条件設定画面1000を表示部310に表示させる。画面1000では、メニュー940で選択可能な動作項目における動作条件を設定することができる。
【0149】
画面1000は、動作項目「温度制御」のための条件設定領域1010を備える。領域1010では、動作項目「温度制御」が実行される温度変更工程を実行した後の温度が設定される。領域1010は、収容部(反応槽)400の温度を設定する設定部1013、第1試薬設置部(冷却試薬庫)220の温度を設定する設定部1014、第2試薬設置部(加温試薬庫)230の温度を設定する設定部1015を備える。設定部1013,1014,1015に設定された指定温度は、記憶部340において、指定温度情報341a,342a,343aとして保存される。設定部1013があることで、温度変更工程で、収容部400内の温度を変更できる。また、設定部1014,1015があることで、温度変更工程では、試薬設置部220,230内の温度も変更できる。
【0150】
設定部1013,1014,1015は、プルダウンメニューであり、選択されると、設定すべき温度候補のリストが
図13B,
図13C,
図13Dに示すように表示される。温度候補のリストには、温度候補のほか、温度調整をしないことを示す「温調なし」も含まれる。温度設定部1013,1014,1015では、温度を数値で指定することができる。なお、温度の指定は、温度候補の選択に限られず、入力部320が温度を示す数値を直接受け付けても良い。
【0151】
領域1010は、「温度変化待ち機能」のON/OFFの選択部1011を備える。「温度変化待ち機能」がONであると、収容部400又は試薬設置部220,230内の温度が設定された温度に切り替わるまで、温度変更工程の次に設定された工程を実行せずに待機する。「温度変化待ち機能」がOFFであると、収容部400又は試薬設置部220,230内の温度が設定された温度に切り替わる前に、温度変更工程の次に設定された工程が実行される。
【0152】
領域1010は、待ち時間の設定部1012を備える。設定部1012では、設定部1013,1014,1015に設定された温度になってから、次の工程を実行するまでの待ち時間が設定される。待ち時間の設定は、温度変化待ち機能がONに設定されたときに有効である。待ち時間があることで、収容部400内の容器10内の液体の温度又は試薬設置部220,230内の試薬の温度を、待ち時間の間に設定された温度に近づけることができる。
【0153】
画面1000は、動作項目「分注」のための条件設定領域1020を備える。領域1020では、メニュー940における分注B以外の分注Aから分注Nまでの分注条件が設定される。領域1020は、分注量の設定部1021、吐出速度の設定部1022、分注する試薬の名称の設定部1023、吐出モードの設定部1024、及び、ピペットチップ交換を検体毎にするか工程毎にするかを設定する選択部1025,10126を備える。
【0154】
実施形態において、吐出モードとしては、非接液吐出(液面追従なし)、非液吐出(液面追従あり)、接液吐出の3つを選択可能である。接液吐出とは、ピペットチップを容器10内の液に接触させて吐出するモードである。非接液吐出とは、ピペットチップを容器10内の液に接触させないように、液面上方で吐出するモードである。液面追従とは、液の吐出に伴う液面上昇に追従させてピペットチップを上方に移動させることである。
【0155】
画面1000は、動作項目「分注B」のための条件設定領域1030を備える。領域1030では、B1~B5試薬容器の試薬の分注条件が設定される。領域1030は、各試薬の分注量の設定部1031、吐出速度の設定部1032、分注する試薬の名称の設定部1033、吐出モードの設定部1034、各試薬の分注順序の設定部1031を備える。
【0156】
画面1000は、動作項目「反応」のための条件設定領域1040を備える。領域1040は、分注された試薬と検体との反応のための時間の設定部1041を備える。
【0157】
画面1000は、動作項目「遠心」のための条件設定領域1045を備える。領域1045では、遠心分離部600による遠心分離の条件が設定される。領域1045は、遠心分離の時間の設定部1046、回転数の設定部1047、加速度の設定部1048を備える。
【0158】
画面1000は、動作項目「攪拌A」のための条件設定領域1050を備える。領域1050では、収容部400外での攪拌のための条件が設定される。領域1050は、攪拌の強度の設定部1051、攪拌時間の設定部1052を備える。
【0159】
画面1000は、動作項目「攪拌B」のための条件設定領域1060を備える。領域1060では、収容部400内での攪拌のための条件が設定される。領域1060は、吸排撹拌における吸排量の設定部1061、吸排回数の設定部1062、吸排速度の設定部1063を備える。
【0160】
画面1000は、動作項目「上清除去(ピペット)」のための条件設定領域1070を備える。領域1070では、収容部400内での上清除去のための条件が設定される。領域1070は、吸引による上清除去における吸引量の設定部1071、吸引位置(高さ)の設定部1072、吸引速度の設定部1073を備える。
【0161】
画面1000は、動作項目「上清除去(デカント)」のための条件設定領域1080を備える。領域1080では、収容部400外での上清除去のための条件が設定される。領域1080は、デカントの角度の設定部1081、容器10を傾けて停止させる時間の設定部1082、デカントの動作時間の設定部1083を備える。
【0162】
画面1000は、動作項目「ダミー吐出」のための条件設定領域1090を備える。領域1090では、ダミーでの吐出を行うための条件が設定される。領域1090は、ダミーで吐出される試薬の種類の設定部1091、吐出される試薬の分注量の設定部1092を備える。
【0163】
画面1000の各領域1010,1020,1030,1040,1045,1050,1060,1070,1080,1090は、動作項目選択領域932において選択された動作項目に対応した領域だけが、設定のために有効化されて条件を設定可能となる。例えば、
図12のように動作項目「温度制御」についての画面1000では、領域1010だけが有効化され、温度制御のための条件だけを設定可能である。なお、動作項目選択領域932において、複数の動作項目の組み合わせが選択された場合、画面1000では、複数の動作項目に対応した領域において設定可能である。
【0164】
画面1000の設定ボタン1110が選択されると、その動作項目についての動作条件が、保存され、画面900に戻る。キャンセル1120が選択されると、動作条件が保存されずに、画面900に戻る。
【0165】
図14は、各順序における動作項目を設定した後の画面900の例を示している。設定領域930は、設定された動作項目を示す動作項目表示部933と、設定された動作条件を示す動作条件表示部934とを備える。動作条件表示部934には、各順序の動作項目について、
図13Aの画面1000で設定された条件が表示される。
図14の画面900において、保存ボタン940が選択されると、画面900で設定された処理モードが設定ファイル341として保存される。保存されたファイル341は、
図5A,A5Bの画面800において、処理モードの選択のために選択可能である。
【0166】
本実施形態では、分析項目に応じた前処理の条件を設定画面900,1000にて設定できるため、ユーザが自由に適切な前処理条件を設定することができる。
【符号の説明】
【0167】
10 容器
100 前処理装置
210 分注部
220 試薬設置部
221 試薬温度調整部
230 試薬設置部
231 試薬温度調整部
300 制御部
400 収容部
405 進入口
420 温度調整部
432 新入口
450 開閉機構
510 第1室
520 第2室
411 仕切部
412 開口(貫通孔)
413 開口(貫通孔)
600 遠心分離部
610 保持部
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメトリー分析用の前処理方法であって、
検体の前処理を行う前処理装置の動作内容を設定するための設定画面を表示すること、
前記設定画面を介して、前記検体を回転させて生じた上清を除去する洗浄処理の動作内容の設定を受け付けること、及び、
設定された動作内容に応じて、前記前処理装置による前記洗浄処理の動作を制御すること、を含み、
前記洗浄処理の動作内容として、
(1)前記検体と試薬とから調製された試料にバッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、及び、
(2)前記試料に前記バッファ溶液を添加せずに前記洗浄処理を行うこと、
のそれぞれの設定を選択的に受け付け可能である、前処理方法。
【請求項2】
前記洗浄処理の動作内容として、
(3)前記検体に前記バッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、の設定を選択的に受け付け可能である、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記動作内容の設定を受け付けることは、前記(3)の洗浄処理の設定と、前記(1)の洗浄処理又は前記(2)の洗浄処理の設定とを受け付けることを含む、請求項2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記動作内容の設定を受け付けることは、前記洗浄処理の実施回数に関する設定を受け付けることを含む、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項5】
前記洗浄処理は、前記検体と前記バッファ溶液とを収容可能な容器において行われ、
前記動作内容の設定を受け付けることは、前記上清が除去された後に前記容器に残る液体の量に関する設定を受け付けることを含む、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項6】
前記動作内容の設定を受け付けることは、前記検体の分析項目に応じて、前記動作内容の設定を受け付けることを含む、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項7】
前記試薬は、溶血剤および染色液の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項8】
前記検体は全血検体である、請求項1に記載の前処理方法。
【請求項9】
前記洗浄処理は、前記検体と前記バッファ溶液とを収容可能な容器を回転させることにより行われる、請求項1~8の何れか一項に記載の前処理方法。
【請求項10】
フローサイトメトリー分析用の前処理のためのコンピュータプログラムであって、
検体の前処理を行う前処理装置の動作内容を設定するための設定画面を表示する手段、
前記設定画面を介して、前記検体を回転させて生じた上清を除去する洗浄処理の動作内容の設定を受け付ける手段、及び、
設定された動作内容を規定した設定ファイルを保存する手段、としてコンピュータを機能させ、
前記洗浄処理の動作内容として、
(1)前記検体と試薬とから調製された試料にバッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、及び、
(2)前記試料に前記バッファ溶液を添加せずに前記洗浄処理を行うこと、
のそれぞれの設定を選択的に受け付け可能である、コンピュータプログラム。
【請求項11】
前記洗浄処理の動作内容として、
(3)前記検体に前記バッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、の設定を選択的に受け付け可能である、請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
フローサイトメトリー分析用の前処理装置であって、
検体を回転させて生じた上清を除去する洗浄処理を含む前記検体の前処理を行う前処理部と、
表示部と、
前記前処理部の動作内容を設定するための設定画面を前記表示部に表示させ、前記設定画面を介して、前記洗浄処理の動作内容の設定を受け付け、設定された動作内容に応じて、前記前処理部による前記洗浄処理の動作を制御するよう構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗浄処理の動作内容として、
(1)前記検体と試薬とから調製された試料にバッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、及び、
(2)前記試料に前記バッファ溶液を添加せずに前記洗浄処理を行うこと、
のそれぞれの設定を選択的に受け付け可能に構成されている、前処理装置。
【請求項13】
前記洗浄処理の動作内容として、
(3)前記検体に前記バッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、の設定を選択的に受け付け可能である、請求項12に記載の前処理装置。
【請求項14】
フローサイトメトリー分析用の分析装置であって、
検体を回転させて生じた上清を除去する洗浄処理を含む前記検体の前処理を行う前処理部と、
前記前処理部によって前処理が行われた前記検体を分析する分析部と、
表示部と、
前記前処理部の動作内容を設定するための設定画面を前記表示部に表示させ、前記設定画面を介して、前記洗浄処理の動作内容の設定を受け付け、設定された動作内容に応じて、前記前処理部による前記洗浄処理の動作を制御するよう構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗浄処理の動作内容として、
(1)前記検体と試薬とから調製された試料にバッファ溶液を添加して前記洗浄処理を行うこと、及び、
(2)前記試料に前記バッファ溶液を添加せずに前記洗浄処理を行うこと、
のそれぞれの設定を選択的に受け付け可能に構成されている、分析装置。