IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムラ製作所の特許一覧

<>
  • 特開-単結晶 図1
  • 特開-単結晶 図2
  • 特開-単結晶 図3
  • 特開-単結晶 図4
  • 特開-単結晶 図5
  • 特開-単結晶 図6
  • 特開-単結晶 図7
  • 特開-単結晶 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041918
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】単結晶
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20230316BHJP
   C30B 15/34 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B15/34
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015392
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2018215550の分割
【原出願日】2018-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 優
(72)【発明者】
【氏名】輿 公祥
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信也
(57)【要約】
【課題】サイズの大きい種結晶を用いる場合であっても、種結晶への熱衝撃に起因する育成結晶の結晶性の悪化を抑えることのできる、EFG法を用いた単結晶育成方法により育成することのできる高品質の単結晶を提供する。
【解決手段】一実施の形態として、平板状の酸化ガリウム系化合物の育成結晶22であって、育成方向に垂直な幅W方向の中心Pから、前記幅W方向に15mm離れた中心Pの両側の2点P、Pにおけるω値の差の絶対値を、2点P、Pの距離である30mmで除した値が60sec/mm以下であり、前記ω値が、X線ロッキングカーブ測定による回折ピークにおける、結晶表面と入射X線との間の角度である、育成結晶22を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の酸化ガリウム系化合物の単結晶であって、
育成方向に垂直な幅方向の中心から、前記幅方向に15mm離れた前記中心の両側の2点におけるω値の差の絶対値を、前記2点の距離である30mmで除した値が60sec/mm以下であり、
前記ω値が、X線ロッキングカーブ測定による回折ピークにおける、結晶表面と入射X線との間の角度である、
単結晶。
【請求項2】
幅、厚さが、それぞれ50mm以上、1mm以上である、
請求項1に記載の単結晶。
【請求項3】
双晶面を含まない、
請求項1又は2に記載の単結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の単結晶育成方法として、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、EFG法により酸化ガリウム系単結晶を育成している。酸化ガリウム系材料は、EFG法により高品質かつ大きなサイズの単結晶の育成が可能な材料の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-103864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EFG法においては、融液が供給された結晶育成用ダイの上面に種結晶を接触させ、引き上げることにより、融液を結晶化させて単結晶を育成する。ここで、高温の結晶育成用ダイに接触することにより種結晶に加わる熱衝撃が大きいと、種結晶の結晶性が悪化し、種結晶の結晶性を引き継ぐ育成結晶の結晶性が悪くなる。
【0005】
種結晶の幅を小さくすることにより、種結晶と結晶育成用ダイの接触面積が小さくなるため、種結晶に加わる熱衝撃を抑えることができる。しかしながら、幅の小さい単結晶を用いて幅の大きな単結晶を育成する場合には、育成中に育成結晶の幅を拡げる肩拡げ工程が必要になり、酸化ガリウム系単結晶を育成する場合は、この幅方向の肩拡げ工程において双晶化が生じやすいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、サイズの大きい種結晶を用いる場合であっても、種結晶への熱衝撃に起因する育成結晶の結晶性の悪化を抑えることのできる、EFG法を用いた単結晶育成方法により育成することのできる高品質の単結晶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、以下の単結晶を提供する。
【0008】
[1]平板状の酸化ガリウム系化合物の単結晶であって、育成方向に垂直な幅方向の中心から、前記幅方向に15mm離れた前記中心の両側の2点におけるω値の差の絶対値を、前記2点の距離である30mmで除した値が60sec/mm以下であり、前記ω値が、X線ロッキングカーブ測定による回折ピークにおける、結晶表面と入射X線との間の角度である、単結晶。
[2]幅、厚さが、それぞれ50mm以上、1mm以上である、上記[1]に記載の単結晶。
[3]双晶面を含まない、上記[1]又は[2]に記載の単結晶。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイズの大きい種結晶を用いる場合であっても、種結晶への熱衝撃に起因する育成結晶の結晶性の悪化を抑えることのできる、EFG法を用いた単結晶育成方法により育成することのできる高品質の単結晶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るEFG法単結晶育成装置の一部を示す垂直断面図である。
図2図2は、実施の形態に係るEFG法単結晶育成装置の一部を示す斜視図である。
図3図3(a)は、育成結晶の育成に用いる前の種結晶の形状を示す平面図である。図3(b)は、種結晶の先端領域の断面を示す斜視図である。
図4図4(a)、(b)は、それぞれ種結晶の主領域の先端領域に近い位置におけるΔω値、育成結晶の任意の幅W方向の断面におけるΔω値を説明するための模式図である。
図5図5(a)~(c)は、先端領域の形状の例を示す平面図である。
図6図6(a)~(d)は、実施の形態に係る育成結晶の育成工程を示す模式図である。
図7図7は、実施例1に係る試料1~4のタッチ前とタッチ後の主領域の先端領域に近い位置におけるΔωの値を示すグラフである。
図8図8は、試料5、6の結晶育成用ダイの上面への接触回数の増加に伴う主領域の先端領域に近い位置におけるΔωの値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(EFG法単結晶育成装置の構成)
図1は、実施の形態に係るEFG法単結晶育成装置10の一部を示す垂直断面図である。図2は、実施の形態に係るEFG法単結晶育成装置10の一部を示す斜視図である。
【0012】
EFG法単結晶育成装置10は、酸化ガリウム系化合物の融液である融液20を収容する坩堝11と、この坩堝11内に設置された結晶育成用ダイ12と、結晶育成用ダイ12の上面12aを露出させるように坩堝11の開口面を閉塞する蓋13と、酸化ガリウム系化合物の単結晶からなる平板状の種結晶21を保持する種結晶保持具14と、種結晶保持具14を昇降可能に支持するシャフト15とを有する。
【0013】
坩堝11は、Ga系化合物の粉末を溶解させて得られた融液20を収容する。坩堝11は、Ga系化合物の融液である融液20を収容しうる耐熱性を有するイリジウム等の材料からなる。
【0014】
結晶育成用ダイ12は、坩堝11内の融液20を毛細管現象により上面12aまで上昇させるためのスリット12bを有する。スリット12bの開口部12cは、上面12aに含まれる。
【0015】
蓋13は、坩堝11から高温の融液20が蒸発することを防止し、さらに結晶育成用ダイ12の上面12a以外の部分に融液20の蒸気が付着することを防ぐ。
【0016】
EFG法単結晶育成装置10においては、種結晶21を下降させて、融液20が供給された結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させ、融液20と接触した種結晶21を引き上げることにより、平板状の育成結晶22を育成する。育成結晶22の結晶方位は種結晶21の結晶方位と等しく、育成結晶22の結晶方位を制御するためには、例えば、種結晶21の底面の面方位及び水平面内の角度を調整する。
【0017】
種結晶21及び育成結晶22は、酸化ガリウム系化合物の単結晶からなる。酸化ガリウム系化合物は、Ga、又は、Al、In等の元素の添加により組成変調されたGaである。また、酸化ガリウム系化合物には、Sn、Si、Fe等の各種ドーパント不純物元素が添加されていてもよい。
【0018】
図3(a)は、育成結晶22の育成に用いる前、すなわち、融液20が供給された結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させる前の種結晶21の形状を示す平面図である。種結晶21は、一定の幅Wを有する平板状の主領域21aと、幅Wの方向に垂直な長さ方向Dの主領域21aの一端に隣接する、主領域21aよりも狭い幅を有する先端領域21bと、を有する。
【0019】
また、種結晶21は、先端領域21bを長さ方向Dの端部21cからの距離が0.8mmである長さ方向Dに垂直な面(図3(a)の線分A-Aで表される面)で切断したときの先端領域21bの断面21dの面積が132mm以下である。
【0020】
図3(b)は、種結晶21の先端領域21bの断面21dを示す斜視図である。種結晶21を長さ方向Dに沿って降下させ、端部21cを融液20が供給された結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させると、瞬間的に、端部21cから長さ方向Dにおよそ0.8mmまでの部分が溶融する。
【0021】
すなわち、断面21dは、種結晶21を結晶育成用ダイ12の上面12aに最初に接触させた瞬間に表れる面である。本発明者は、この断面21dの面積が、種結晶21を結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させるときの熱衝撃の大きさに大きく関係し、これが132mm以下であるときに、種結晶21の底部近傍の結晶性の低下が効果的に抑えられることを見出した。
【0022】
育成結晶22には、種結晶21の底部の結晶性が引き継がれる。このため、種結晶21の底部近傍の結晶性の低下を抑えることにより、育成結晶22の結晶性の低下を抑えることができる。
【0023】
なお、種結晶21が主領域21aと先端領域21bを含む構成を有しない場合、すなわち全領域において幅が一定である形状を有する場合であっても、長さ方向Dの端部からの距離が0.8mmである長さ方向Dに垂直な面で切断したときの面積を132mm以下にして、熱衝撃を抑えることはできるが、この場合、全体的に長さ方向Dに垂直な断面の面積が132mm以下という小径の結晶となるため、育成結晶22の育成工程に幅方向の肩拡げ工程(育成初期に幅Wの方向等に結晶の幅を拡げる工程)が必要となる。
【0024】
しかしながら、上述のように、酸化ガリウム系単結晶を育成する場合は、幅方向の肩拡げ工程において双晶化が生じやすいという問題がある。このため、主領域21aと先端領域21bを含む種結晶21を用いて、酸化ガリウム系単結晶である育成結晶22を幅方向に肩拡げせずに育成することが好ましい。幅方向に肩拡げせずに育成することにより、双晶化しない、すなわち双晶面を含まない育成結晶22を得ることもできる。
【0025】
育成結晶22を幅方向に肩拡げせずに育成する場合、種結晶21の幅W及び厚さTと、育成結晶22の幅W及び厚さTがほぼ等しくなる。このため、サイズの大きな育成結晶22を育成するために、サイズの大きい種結晶21を用いることが好ましく、例えば、主領域21aの幅W、厚さTが、それぞれ50mm以上、1mm以上である種結晶21を用いて、幅W、厚さTが、それぞれ50mm以上、1mm以上である育成結晶22を得ることができる。
【0026】
上述のように、種結晶21は、端部21cを結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させた瞬間の熱衝撃が抑えられ、底部近傍の結晶性の低下が効果的に抑えられる。このため、種結晶21は、端部21cを結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させた後であっても、底部近傍が高い結晶性を有する。
【0027】
例えば、端部21cを結晶育成用ダイ12の上面12aに瞬間的に接触させた後の、主領域21aの先端領域21bとの境界から5~7mmの位置におけるΔω値を60sec/mm以下とすることができる。すなわち、任意の面を回折面としたときのΔωの最大値を60sec/mm以下とすることができる。例えば、(-102)面を主面(幅Wの方向と長さ方向Dに平行な面)とする種結晶21の場合、(-102)面を回折面とするときにΔωが最も大きくなるため、(-102)面を回折面とするときのΔω値を60sec/mm以下とすることができる。
【0028】
また、育成結晶22には、種結晶21の底部の結晶性が引き継がれるため、端部21cを結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させた後の種結晶21の主領域21aの先端領域21bとの境界から5~7mmの位置におけるΔω値が60sec/mm以下である場合、育成結晶22の任意の幅W方向の断面におけるΔω値を60sec/mm以下とすることができる。
【0029】
図4(a)、(b)は、それぞれ種結晶21の主領域21aの先端領域21bとの境界から5~7mmの位置におけるΔω値、育成結晶22の任意の幅W方向の断面におけるΔω値を説明するための模式図である。Δωは、幅W、Wの方向の中心Pから幅W、Wの方向に15mm離れた中心Pの両側の点P、Pにおけるω値の差の絶対値を、点P、Pの間の距離である30mmで除した値である。ここで、ω値は、X線ロッキングカーブ測定による回折ピークにおける、結晶表面と入射X線との間の角度である。図4(a)に示される種結晶21の点P、P、Pは、主領域21aの先端領域21bとの境界から5~7mmの距離に位置する。
【0030】
種結晶21の先端領域21bの典型的な形状は、図3(a)に示されるような、長さ方向Dの端部の面である端面21eが、幅Wの方向から傾斜した1つの平面で構成される形状である。この形状は、平面形状が長方形の平板状の単結晶の一端を斜めに切り落とすだけで形成することができるため、作り易さの点で優れている。
【0031】
しかしながら、先端領域21bの形状は、主領域21aと先端領域21bを有し、先端領域21bの断面21dの面積が132mm以下であるという条件を満たす形状であれば、他の形状であってもよい。
【0032】
図5(a)~(c)は、先端領域21bの形状の例を示す平面図である。図5(a)は、端面21eが曲面である先端領域21bの形状の例を示す。図5(b)は、端面21eが幅Wの方向から傾斜した2つの異なる傾きを有する平面で構成される先端領域21bの形状の例を示す。図5(c)は、端面21eが長さ方向Dに直交する(幅Wの方向に平行な)面である先端領域21bの形状の例を示す。
【0033】
先端領域21bの体積が大きすぎると、先端領域21bが溶けきるまでの時間(主領域21aが結晶育成用ダイ12の上面12aに接触するまでの時間)が長くなり、種結晶21に融液20の蒸発物が付着し易くなる。この付着した蒸発物は種結晶21の表面で結晶化し、単結晶成長の下地となる場合があるため、育成結晶22の双晶化の原因となり得る。
【0034】
このため、種結晶21への融液20の蒸発物の付着を抑えるために、先端領域21bの高さを10mm以下にすることが好ましい。
【0035】
(単結晶の育成方法)
図6(a)~(d)は、実施の形態に係る育成結晶22の育成工程を示す模式図である。図6(a)~(d)は、種結晶21の主面に垂直な方向(厚さTの方向)から視た側面図である。なお、図6(a)~(d)においては、結晶育成用ダイ12の上面12aの上の融液20の図示は省略する。
【0036】
まず、図6(a)に示されるように、種結晶21をその長さ方向Dに沿って下降させて、結晶育成用ダイ12の上面12aに近づける。
【0037】
次に、図6(b)に示されるように、種結晶21の下降を続けて、端部21cを融液20が供給された結晶育成用ダイ12の上面12aに接触させる。図6(b)は、端部21cが結晶育成用ダイ12の上面12aに接触した直後の種結晶21の形状を示しており、このときの種結晶21の状態は、図3(b)に示されるような、断面21dが底面として現れている状態である。
【0038】
次に、図6(c)に示されるように、さらに種結晶21を下降させて、先端領域21bが完全に溶融して、主領域21aが結晶育成用ダイ12の上面12aに接触してから下降を止める。
【0039】
次に、図6(d)に示されるように、種結晶21をその長さ方向Dに沿って引き上げて、融液20を結晶化させ、育成結晶22を育成する。ここで、育成結晶22の厚さを増すため、育成結晶22の育成初期に、厚さ方向の肩拡げを行ってもよい。幅方向の肩拡げと異なり、厚さ方向の肩拡げにおいては、双晶が生じにくい。
【0040】
なお、上述の種結晶21への熱衝撃が抑えられる効果は、種結晶21の結晶方位に依らないため、育成結晶22の主面の面方位は限定されない。すなわち、本実施の形態によれば、任意の面を主面とする結晶性に優れた育成結晶22を育成することができる。そして、その育成結晶22から基板を切り出すことができるため、任意の面を主面とする結晶性に優れた酸化ガリウム系基板を得ることができる。
【0041】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、サイズの大きい種結晶を用いる場合であっても、種結晶への熱衝撃に起因する育成結晶の結晶性の悪化を抑えることができる。また、サイズの大きい種結晶を用いることにより、幅方向に肩を拡げずにサイズの大きい単結晶を育成することができるため、サイズが大きく、かつ結晶性に優れた酸化ガリウム系単結晶を得ることができる。育成する酸化ガリウム系単結晶の幅を大きくすることにより、径の大きな基板を切り出すことができ、厚さを大きくすることにより、切り出される基板の枚数を増やすことができる。
【実施例0042】
幅Wが65mm、厚さTが5.5mmの、平面形状が長方形の平板状の酸化ガリウム系単結晶からなる種結晶を3つ用意し、これらを試料1~3とした。試料1~3の長さ方向Dに垂直な面で切断したときの面積は一定であり、357.5mmである。すなわち、長さ方向Dの端部からの距離が0.8mmである長さ方向Dに垂直な面で切断したときの面積は357.5mmである。
【0043】
また、幅Wが65mm、厚さTが5.5mmの主領域21aと、厚さTが5.5mmであり、端面21eが幅Wの方向からおよそ5°傾斜した1つの平面で構成される先端領域21bとを有する平板状の酸化ガリウム系単結晶からなる種結晶を1つ用意し、これを試料4とした。試料4は、図3(a)に示される種結晶21と同様の形状を有し、断面21dの面積はおよそ50mmである。
【0044】
試料1~4の主面の面方位はいずれも(-102)面であり、長さ方向Dは<010>方向である。
【0045】
そして、試料1~4の結晶育成用ダイ12の上面12aに接触する前の状態(タッチ前)と、結晶育成用ダイ12の上面12aに一瞬接触させて長さ方向Dの端部からの距離が0.8mmである長さ方向Dに垂直な面が現れた状態(タッチ後)における、上面12aに接触させる側の長さ方向Dの端部の面(接触側端面)に近い位置(試料1~3はタッチ前後それぞれの時点での接触側端面から5mmの位置、試料4は主領域21aの先端領域21bとの境界から6mmの位置)におけるΔωを測定した。
【0046】
図7は、試料1~4のタッチ前とタッチ後のΔωの値を示すグラフである。図7は、先端領域を有さない試料1~3の接触側端面近傍の結晶性が大きく低下し、一方で、先端領域を有する試料4の結晶性の低下が抑えられていることを示している。これは、試料4の先端領域21bの断面21dの面積が132mm以下であるために、熱衝撃が抑えられたことによると考えられる。
【実施例0047】
幅Wが65mm、厚さTが5.5mmの、平面形状が長方形の平板状の酸化ガリウム系単結晶からなる種結晶を1つ用意し、これを試料5とした。試料5の長さ方向Dに垂直な面で切断したときの面積は一定であり、357.5mmである。すなわち、長さ方向Dの端部からの距離が0.8mmである長さ方向Dに垂直な面で切断したときの面積は357.5mmである。
【0048】
また、幅Wが65mm、厚さTが5.5mmの主領域21aと、厚さTが5.5mmであり、端面21eが幅Wの方向からおよそ5°傾斜した1つの平面で構成される先端領域21bとを有する平板状の酸化ガリウム系単結晶からなる種結晶を1つ用意し、これを試料6とした。試料6は、図3(a)に示される種結晶21と同様の形状を有し、断面21dの面積はおよそ50mmである。
【0049】
試料5、6の主面の面方位はいずれも(-102)面であり、長さ方向Dは<010>方向である。
【0050】
そして、試料5、6の結晶育成用ダイ12の上面12aへの接触、結晶育成、先端の切り落とし(試料6については先端を斜めに切り落として先端領域21bを形成し、試料5については先端を長さ方向Dに垂直に切り落とす)の流れを複数回繰り返し、接触させるごとに接触側端面に近い位置(試料5は各々の時点での接触側端面から5mmの位置、試料6は主領域21aの先端領域21bとの境界から6mmの位置)におけるΔωを測定した。
【0051】
図8は、試料5、6の結晶育成用ダイ12の上面12aへの接触回数(タッチ回数)の増加に伴うΔωの値の変化を示すグラフである。図8は、先端領域を有さない試料5の接触側端面近傍の結晶性が、1回のタッチで大きく低下し、一方で、先端領域を有する試料4は3回目のタッチ後でもΔωが60sec/mm以下であり、優れた結晶性を保持していることを示している。
【0052】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0053】
また、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0054】
10…EFG法単結晶育成装置、 11…坩堝、 12…結晶育成用ダイ、 20…融液、 21…種結晶、 21a…主領域、 21b…先端領域、21c…端部、 21d…断面、 21e…端面、 22…育成結晶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8