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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042004
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】ファンデーション
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20230317BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q1/12
A61K8/891
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149052
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】有福 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 典子
(72)【発明者】
【氏名】福寿 忠弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC172
4C083AC341
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB11
4C083CC12
4C083DD21
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 伸び広がりが良好で、均一に塗布でき、かつ、べとつき感がなく、使用感が良好なマット感のあるファンデーションを提供する。
【解決手段】 本発明のファンデーションは、シリカエアロゲルが1~10質量%とフェニル基を有するオイルを1~5質量%を含む。前記シリカエアロゲルは平均円形度が0.8以上であることが好ましい。前記シリカエアロゲルはメタノール湿潤性を表すM値が20以上であることが好ましい。前記シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下であることが好ましい。前記フェニル基を有するオイルは、フェニル変性シリコーンおよび安息香酸誘導体のいずれか一方または双方を含むことが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~15質量%のシリカエアロゲルと、1~10質量%のフェニル基を有するオイルとを含むことを特徴とするファンデーション。
【請求項2】
前記シリカエアロゲルは平均円形度が0.8以上である請求項1記載のファンデーション。
【請求項3】
前記シリカエアロゲルはメタノール湿潤性を表すM値が20以上である請求項1又は2に記載のファンデーション。
【請求項4】
前記シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下である請求項1~3のいずれかに記載のファンデーション。
【請求項5】
前記フェニル基を有するオイルは、フェニル変性シリコーンおよび安息香酸誘導体のいずれか一方または双方を含む請求項1~4のいずれかに記載のファンデーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーションに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションは肌の色を整え、しみやそばかすなどのカバー、紫外線からの保護、外界のストレスからの防御などの機能を有する化粧料である。
ファンデーションは、日常生活を送る上での発汗や皮脂により、肌からの剥離や凝集が発生し、いわゆる、化粧くずれが経時的に起こるが、この化粧くずれを防止するために、疎水性粉末の使用が効果的である。
配合する疎水性粉末として、疎水性のシリカエアロゲルの粉末が、高い吸油特性により、皮脂を効率よく吸収すること、また、疎水性であることから、汗や雨などの水分をはじき、化粧持ちに効果的に寄与することから、好適に用いることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-88307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸油量が高い粉体を使用した場合、通常の疎水性粉末と比較して、マットになり過ぎて、くすんだ印象になったり、油分を吸着することで色調の変化が起こり、ともすれば、化粧崩れの原因になったりする傾向があった。
そこで、本発明は、化粧持ちが良好であり、かつ、色のくすんだ印象のないファンデーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、シリカエアロゲルとフェニル基を有するオイルを、特定の割合で組み合わせて用いることにより、フェニル基を有するオイルの光沢を付与する効果が、シリカエアロゲルの配合によって、くすんだ印象になることを防止するため、化粧持ちが良好であり、かつ、色のくすんだ印象のないファンデーションが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のファンデーションは、1~15質量%のシリカエアロゲルと、1~10質量%のフェニル基を有するオイルとを含む。
また、本発明のファンデーションは、前記シリカエアロゲルの平均円形度が0.8以上であることが好ましい。
本発明のファンデーションは、前記シリカエアロゲルのメタノール湿潤性を表すM値が20以上であることが好ましい。
また、本発明のファンデーションは、前記シリカエアロゲルのコールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下であることが好ましい。
本発明のファンデーションは、前記フェニル基を有するオイルがフェニル変性シリコーンおよび安息香酸誘導体のいずれか一方または双方を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のファンデーションは、化粧持ちが良好であり、かつ、色のくすんだ印象のないファンデーションである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明のファンデーションについて実施形態に基づき詳細に説明する。
【0008】
[ファンデーション]
本発明のファンデーションは、1~15質量%のシリカエアロゲルと、1~10質量%のフェニル基を有するオイルとを含む。更に、本発明のファンデーションは、粉体基剤成分を55~75質量%、その他のオイル成分を5~15質量%、着色剤成分を5~15質量%、及び、その他の成分を含んでも良い。以下、各成分について詳述する。
【0009】
<シリカエアロゲル>
本発明のファンデーションに使用されるシリカエアロゲルは公知の方法によって調製することができる。例えば、国際公開第2012/057086号、特開2014-218433号公報等に記載された方法によって調製することができる。
ここで、シリカエアロゲルは、多孔質なシリカ骨格構造を有し、分散媒体として気体を伴う固体材料を意味し、空隙率60%以上の固体材料を意味する。シリカエアロゲルは高い空隙率を有するにもかかわらず、優れた機械強度を示す。なお、空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
【0010】
(含有量)
本実施形態に係るファンデーションに含まれるシリカエアロゲルの含有量の下限は、当該ファンデーション全体の質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、シリカエアロゲルの含有量の上限は、当該ファンデーション全体の質量に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。シリカエアロゲルの含有量が上記下限値未満になると、皮脂吸収や撥水性の付与の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、シリカエアロゲルの含有量が上記上限値を超えると、過剰なマット感が付与され、くすんだ印象になる。シリカエアロゲルの含有量が上記範囲内であると、化粧持ちが良好で、適度なマット感を有するファンデーションを提供することができる。
【0011】
(空隙率)
シリカエアロゲルの空隙率の下限は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、シリカエアロゲルの空隙率の上限は、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましい。
空隙率が上記下限値未満になると、皮脂吸収の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、空隙率が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。空隙率が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、光拡散効果が良く、外観保持性が良いファンデーションを提供することができる。
空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
【0012】
(平均円形度)
シリカエアロゲルの平均円形度の下限は0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましい。平均円形度が上記下限値未満になると、不定形粒子や凝集粒子が多くなり、流動性および充填性、ローリング性が悪化し、触感が悪化する。また、平均円形度が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、流動性および充填性、ローリング性が良く、優れた触感を有するファンデーションを提供することができる。
平均円形度は走査電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析法により算出される値である。具体的には、平均円形度は、2000個以上のシリカエアロゲルについてSEMにより1000倍の倍率で観察したSEM像を画像解析して得られる円形度の相加平均値である。シリカエアロゲルの円形度は下記式(1)により求められる値である。
C=4πS/L ・・・(1)
ここで、式(1)中、Cは円形度を表し、Sは当該シリカエアロゲルが画像中に占める面積(投影面積)を表し、Lは画像中における当該シリカエアロゲルの外周部の長さ(周囲長)を表す。
【0013】
(M値)
シリカエアロゲルのメタノール湿潤性を表すM値の下限は20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのM値の上限は60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。M値が上記下限値未満になると、皮脂吸収や撥水性の付与の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、M値が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。M値が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、その他原料との相溶性が良好で、滑らかな感触が得られ、かつ、ファンデーションに耐水性を持たせることができ、色の定着性、すなわち、化粧持ちが良好となる。
M値が上記範囲内であるシリカエアロゲルを得るために、国際公開第2012/057086号、特開2014-218433号公報等に記載の方法に従い、シリル化剤を用いて、シリル化処理を行うとよい。シリル化処理により、シリカエアロゲル表面のヒドロキシ基をシリル基で置換した疎水性のシリカエアロゲルをシリル化シリカという。
M値の測定方法は、0.2gのシリカエアロゲルを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌する。ここに、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないようにチューブを用いて添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定する。終点におけるメタノール-水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(vol%)をM値とする。M値は下記式(2)により求められる値である。
M値=メタノール滴下量(mL)/(メタノール滴下量(mL)+50mL)×100・・・(2)
【0014】
(体積基準累積50%径)
シリカエアロゲルの体積基準累積50%径(D50)の下限は1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのD50の上限は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。D50が上記下限値未満のシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。また、D50が上記上限値を超えると、ファンデーションからのシリカエアロゲルの分離が起こりやすく、加えて、ざらついた感触になり、感触が悪化する。D50が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、外観保持性が良く、滑らかな触感を有するファンデーションを提供することができる。
シリカエアロゲルのD50はコールターカウンター法によって測定される値である。
【0015】
(吸油量)
シリカエアロゲルの吸油量の下限は400mL/100g以上であることが好ましく、500mL/100g以上であることがより好ましく、550mL/100g以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの吸油量の上限は800mL/100g以下であることが好ましく、750mL/100g以下であることがより好ましく、700mL/100g以下であることがさらに好ましい。吸油量が上記下限値未満になると、皮脂吸収の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、吸油量が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
吸油量が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、光拡散効果が良く、外観保持性が良いファンデーションを提供することができる。
吸油量は、JIS K5101-13-1「精製あまに油法」記載の方法に測定される値である。
【0016】
(比表面積)
シリカエアロゲルの比表面積の下限は350m/g以上であることが好ましく、400m/g以上であることがより好ましく、500m/g以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの比表面積の上限は1000m/g以下であることが好ましく、900m/g以下であることがより好ましく、850m/g以下であることがさらに好ましい。比表面積が上記下限値未満になると、ファンデーションがべたついた感触となり、感触が悪化する。また、比表面積が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
比表面積が上記範囲内であると、シリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、滑らかな感触を有するファンデーションを提供することができる。
比表面積は、BET法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBET法により解析して求めた値が比表面積である。その際の解析に用いる圧力範囲は、相対圧0.1~0.25の範囲である。
【0017】
(細孔容積)
シリカエアロゲルの細孔容積の下限は3mL/g以上であることが好ましく、3.5mL/g以上であることがより好ましく、4.0mL/g以上であることがさらに好ましい。また、エアロゲルの細孔容積の上限は6mL/g以下であることが好ましく、5.5mL/g以下であることがより好ましく、5.0mL/g以下であることがさらに好ましい。細孔容積が上記下限値未満になると、皮脂吸収の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、細孔容積が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
細孔容積が上記範囲内であるとシリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、光拡散効果が良く、外観保持性が良いファンデーションを提供することができる。
細孔容積は、BJH法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBJH法(Barrett, E. P.;Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951))により解析することによって、細孔半径1nm以上100nm以下の細孔に由来する細孔容積が得られる。
【0018】
(細孔半径)
シリカエアロゲルの細孔半径のピークの下限は10nm以上であることが好ましく、12nm以上であることがより好ましく、13nm以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの細孔半径のピークの上限は40nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。また、細孔半径が1nm~100nmの範囲内に全細孔容積の70容量%以上の細孔が存在することが好ましい。細孔半径のピークが上記下限値未満のシリカエアロゲルを得ることは困難である。また、細孔半径のピークが上記上限を超えると、シリカエアロゲルの光拡散効果が悪く、ファンデーションとしてのカバー力が弱くなる。細孔半径のピークが上記範囲内であるとシリカエアロゲルを化粧料の原料として使用したときに、光拡散効果が良く、外観保持性が良いファンデーションを提供することができる。
細孔半径は、BJH法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBJH法により解析して得られる、細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸にとり細孔半径を横軸にとってプロットした細孔分布曲線(体積分布曲線)が最大のピーク値をとる細孔半径を、細孔半径のピークとする。
【0019】
(C値)
シリカエアロゲルの疎水性を表す炭素含有量(C値)の下限は7.5質量%以上であることが好ましく、8.0質量%以上であることがより好ましく、8.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのC値の上限は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。C値が上記下限値未満になると、皮脂吸収や撥水性の付与の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、C値が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
C値が上記範囲内であると、シリカエアロゲルは化粧料原料として適した疎水性と耐水性を有するという効果を奏する。
C値は、1000~1500℃程度の温度において、空気中または酸素中でシリカエアロゲルを酸化処理した際に発生する二酸化炭素の量を定量することにより、測定することができる。
【0020】
<フェニル基を有するオイル>
本発明のファンデーションに含まれるフェニル基を有するオイルは、フェニル基に由来する、高い屈折率を有するため、光沢を付与する効果があり、シリカエロゲルの配合によって、ファンデーションがマットになり過ぎて、くすんだ印象になることを防止する効果がある。加えて、オイルなので、疎水性粉末との親和性が高く、分散性が良い。
フェニル基を含有するオイルとして、例えば、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン等のフェニル変性シリコーン、オクチルオキシ安息香酸メチルブチルフェニル、デシルオキシ安息香酸メチルブチルフェニル、ヘキシルオキシ安息香酸メチルブチルフェニル、ペンチル安息香酸メチルブチルフェニル、ヘプチルビフェニルカルボン酸メチルブチルフェニル、安息香酸アルキル(C12-15)等の安息香酸誘導体、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、等がある。
なかでも、フェニル変性シリコーンが好ましく、特に好ましくは、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチコンが、シリカエアロゲルとの分散性が良好であることから、好ましい。
フェニル基を有するオイルは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(含有量)
本発明のファンデーションに含まれるフェニル基を有するオイルの含有量の下限は、当該ファンデーション全体の質量に対して、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。また、フェニル基を有するオイルの含有量の上限は、当該ファンデーション全体の質量に対して、10質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましい。フェニル基を有するオイルの含有量が上記下限値未満になると、ファンデーションを塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する。また、フェニル基を有するオイルの含有量が上記上限値を超えると、光沢感が過剰に付与され、テカリの原因になる。加えて、べたついた感触になり、感触が悪化する。
【0022】
<粉体基剤成分>
本発明のファンデーションに含まれる粉体基剤成分として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、タルク、カオリン、セリサイト、マイカなどの粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、合成マイカなどの合成無機粉体、シルク、セルロースなどの天然繊維の粉末、トウモロコシ、小麦から作られるデンプンなどの有機天然粉体、シリコーン、ナイロン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの有機合成粉体等があげられる。
【0023】
<その他のオイル成分(フェニル基を有さないオイル)>
本発明のファンデーションに含まれるその他のオイル成分として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソブチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸ジ2-へチルヘキシル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸オクチルドデシル、グリセリン脂肪酸エステル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-ヘチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリメリト酸トリトリデシル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、メトキシケイヒ酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ダイマー酸ジイソプロピル、炭酸プロピレン等のエステル油;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール等の高級アルコール(本発明において、高級アルコールは、炭素数8~22の直鎖又は分岐鎖のアルコールを意味する。);メチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン、フッ素変性シリコーン等のフッ素油などが挙げられる。
【0024】
<着色剤成分>
本発明のファンデーションに含まれる着色剤成分として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料、酸化鉄類、グンジョウ、カーボンブラックなどの着色顔料、雲母チタンやガラスフレークなどの真珠光沢顔料などが挙げられる。
【0025】
<その他の成分>
本発明のファンデーションは、さらに、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、消炎剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、染料、水、感触改善剤等を含有することができる。
【0026】
[ファンデーションの製造方法]
本発明のファンデーションは、公知の方法により、製造することができ、固形状、液状のいずれにもすることができる。
また、主に粉体と油、界面活性剤などからなり、油よりも粉体を多く含む粉末固形ファンデーション、主に粉体、油、水、界面活性剤などからなる乳化型ファンデーション、主に油と粉体などからなり、粉体よりも油を多く含む油性ファンデーションなどとすることができる。中でも粉末固形ファンデーションとするのが好ましく、パウダーファンデーションとして好適である。
例えば、パウダーファンデーションの場合、粉体基剤成分、着色剤、感触改善剤およびシリカエアロゲルを混合した後、フェニル基を有するオイル、その他のオイル成分、防腐剤を加えながら、撹拌混合し、その後、混合した原料を粉砕し、篩い分けを実施した後、中皿に圧縮成形することによって製造することができる。中皿は、金属製や樹脂製等、材質は問わない。
【実施例0027】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。なお、実施例及び比較例の評価は以下の方法で実施した。
【0028】
[測定方法]
(平均円形度の測定)
2000個以上のシリカエアロゲルについてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
(M値)
シリカエアロゲルのサンプル0.2gを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌した。撹拌後、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないようにチューブを用いて添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定した。終点におけるメタノール-水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(vol%)を、上記式(2)から算出しM値とした。
(D50)
D50は、コールターカウンター法によって、精密粒度分布測定装置Multisizer3(ベックマン・コールター株式会社製)によって測定した。40mlのエタノールに対してシリカを0.3g添加し、シャープマニュファクチュアリング株式会社製の超音波洗浄機UT-105Sを用いて、出力100wで5分間分散させた。尚、上記分散は、容量50mlのラボランスクリュー管瓶を使用し、適正量の水を入れた洗浄槽内に設置して行った。得られたエタノール分散液を、100μmのアパチャーチューブを使用して測定した。得られた粒度分布から、体積分布に対するD50を評価した。
【0029】
(吸油量)
吸油量の測定は、JIS K5101-13-1に規定されている「精製あまに油法」により行った。
(BET比表面積、BJH細孔容積、細孔半径のピーク)
BET比表面積、BJH細孔容積、および細孔半径のピークの測定は、前述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP-miniにより行った。
(C値)
C値の測定はelementar社vario MICRO cubeを用いて、温度1150℃において酸素とヘリウムをフローしながらで酸化処理し、発生した二酸化炭素の量を定量することにより測定し、シリカエアロゲル全量を基準(100質量%)とする質量%で算出した。
【0030】
[評価方法]
得られたファンデーションについて、専門パネラー10名が、各ファンデーションを直接顔に塗布したとき、各評価項目について、以下の基準で評価した。結果は、専門パネラー10名の平均点で示した。
<評点基準>
(評点):(評価)
3:良い
2:普通
1:悪い
<判定基準>
(評点平均値):(判定)
2.0を超える:〇
1.8以上、2.0未満:△
1.8未満:×
【0031】
[シリカエアロゲルの調製]
特開2014-218433号公報に記載の調製方法に従ってシリカエアロゲルを調製した。調製したシリカエアロゲルの物性を表1に示す。以下の実施例中、特に記載がない限り、%は質量%を表す。
【0032】
【表1】
【0033】
[実施例1~2および比較例1~2]
フェニル基を有するオイルとしてフェニルトリメチコンを用意した。
表2に示す組成で、以下の1~4の順に従って、ファンデーションを作製した。
1.成分Aを混合する。
2.成分Aに成分Bを加えながら、撹拌混合する。
3.混合した原料を粉砕し、篩い分けを実施する。
4.5.9MPaで2秒間、圧縮成形する。
表3に、それらの評価結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表3に示すように、実施例1のファンデーションは、シリカエアロゲルに起因するコンシーラー、凝集性、弾力性、肌への密着性と防水性に優れ、かつ、フェニル基を有するオイルに起因する滑らかさと伸びやすさを有し、色のくすみがないことが分かった。