(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042018
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】乳液状皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/58 20060101AFI20230317BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230317BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K8/58
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149070
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】有福 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 典子
(72)【発明者】
【氏名】福寿 忠弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB171
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD092
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD662
4C083CC05
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 べとつき感がなく、かつ、軋み感のない、使用感が良好な乳液状化粧料を提供する。
【解決手段】 本発明の乳液状化粧料は、シリカエアロゲルが0.01~0.1質量%を含む。前記シリカエアロゲルは平均円形度が0.8以上であることが好ましい。前記シリカエアロゲルはメタノール湿潤性を表すM値が20以上であることが好ましい。前記シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下であることが好ましい。前記シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下であることが好ましい。前記シリカエアロゲルは、吸油量が400mL/100g以上800mL/100g以下であることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01~0.1質量%のシリカエアロゲルを含むことを特徴とする乳液状化粧料。
【請求項2】
前記シリカエアロゲルは平均円形度が0.8以上である請求項1記載の乳液状化粧料。
【請求項3】
前記シリカエアロゲルはメタノール湿潤性を表すM値が20以上である請求項1又は2に記載の乳液状化粧料。
【請求項4】
前記シリカエアロゲルは、コールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の乳液状化粧料。
【請求項5】
前記シリカエアロゲルは、吸油量が400mL/100g以上800mL/100g以下である請求項1~4のいずれかに記載の乳液状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳液状皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
乳液状化粧料、いわゆる、乳液は、乾燥、紫外線、酸化、ストレス等から皮膚を守り、皮膚本来のもつ恒常性を維持し、健康に保つことを目的としたスキンケア化粧料のひとつである。乳液は、水分が多く、油分が適当に含有されているため、皮膚のモイスチャーバランスを保ち、皮膚の保湿や柔軟機能を果たすのに効果的である。
一般的な乳液に用いられる成分として、油性成分、水性成分、界面活性剤、増粘剤等であり、その種類や組み合わせは数多い。乳液は、油分を含むため、塗布後に水性成分が蒸発すると、油分に起因するべたつき感を感じやすく、べたつきのない使用感の良い乳液が求められている。例えば、疎水性粉末1~50質量%を内油相に、樹脂粉末から選ばれる疎水性粉末0.1~3質量%を外水相に配合することで、べたつきを抑えた水中油型乳化化粧料が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、べたつきを軽減する目的で、多量の疎水性粉末を配合することで、乳液全体が増粘して、塗布後に軋みを感じる傾向があり、改善の余地があった。
そこで、本発明は、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、シリカエアロゲルを極少量配合することにより、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状皮膚化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の乳液状化粧料は、0.01~0.1質量%のシリカエアロゲルを含む。
また、本発明の乳液状化粧料は、前記シリカエアロゲルの平均円形度が0.8以上であることが好ましい。
本発明の乳液状化粧料は、前記シリカエアロゲルのメタノール湿潤性を表すM値が20以上であることが好ましい。
また、本発明の乳液状化粧料は、前記シリカエアロゲルのコールターカウンター法により測定された体積基準累積50%径(D50)が1μm以上200μm以下であることが好ましい。
また、本発明の乳液状化粧料は、前記シリカエアロゲルの吸油量が400mL/100g以上800mL/100g以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の乳液状化粧料は、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の乳液状化粧料について実施形態に基づき詳細に説明する。
【0008】
[乳液状化粧料]
本発明の乳液状化粧料は、0.01~0.1質量%のシリカエアロゲルを含む。更に、本発明の乳液状化粧料は、水性成分を55~95質量%、油性成分を1~30質量%、界面活性剤を1~3質量%、保湿剤を1~10質量%、その他の成分を含んでもよい。以下、各成分について詳述する。
【0009】
<シリカエアロゲル>
本発明の乳液状化粧料に使用されるシリカエアロゲルは公知の方法によって調製することができる。例えば、国際公開第2012/057086号、特開2014-218433号公報等に記載された方法によって調製することができる。
ここで、シリカエアロゲルは、多孔質なシリカ骨格構造を有し、分散媒体として気体を伴う固体材料を意味し、特に空隙率60%以上の固体材料を意味する。シリカエアロゲルは高い空隙率を有するにもかかわらず、優れた機械強度を示す。なお、空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
【0010】
(含有量)
本実施形態に係る乳液状化粧料に含まれるシリカエアロゲルの含有量の下限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。また、シリカエアロゲルの含有量の上限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、0.10質量%以下が好ましく、0.08質量%以下がより好ましい。シリカエアロゲルの含有量が上記下限値未満になると、製剤中の油性成分や皮脂を吸収する効果が得られずに、べたついて、感触が悪化する。また、シリカエアロゲルの含有量が上記上限値を超えると、塗布後に軋みを感じ、感触が悪化する。シリカエアロゲルの含有量が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
【0011】
(空隙率)
シリカエアロゲルの空隙率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、シリカエアロゲルの空隙率の上限は、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましい。 空隙率が上記下限値未満になると、製剤中の油性成分や皮脂を吸収する効果が得られずに、べたついた感触となり、感触が悪化する。空隙率が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。また、空隙率が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
空隙率とは、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。
【0012】
(平均円形度)
シリカエアロゲルの平均円形度の下限は0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましい。平均円形度が上記下限値未満になると、不定形粒子や凝集粒子が多くなり、流動性および充填性、ローリング性が悪化し、触感が悪化する。また、平均円形度が上記範囲内であると、流動性および充填性、ローリング性が良く、優れた触感を有する乳液状化粧料を提供することができる。
平均円形度は走査電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析法により算出される値である。具体的には、平均円形度は、2000個以上のシリカエアロゲルについてSEMにより1000倍の倍率で観察したSEM像を画像解析して得られる円形度の相加平均値である。シリカエアロゲルの円形度は下記式(1)により求められる値である。
C=4πS/L2 ・・・(1)
ここで、式(1)中、Cは円形度を表し、Sは当該シリカエアロゲルが画像中に占める面積(投影面積)を表し、Lは画像中における当該シリカエアロゲルの外周部の長さ(周囲長)を表す。
【0013】
(M値)
シリカエアロゲルのメタノール湿潤性を表すM値の下限は20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのM値の上限は60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。M値が上記下限値未満になると、皮脂吸収や撥水性の付与の効果が得られずに、化粧持ちが悪化する。また、M値が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。M値が上記範囲内であると、その他原料との相溶性が良好で、滑らかな感触が得られ、かつ、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。 M値が上記範囲内であるシリカエアロゲルを得るために、国際公開第2012/057086号、特開2014-218433号公報等に記載の方法に従い、シリル化剤を用いて、シリル化処理を行うとよい。シリル化処理により、シリカエアロゲル表面のヒドロキシ基をシリル基で置換した疎水性のシリカエアロゲルをシリル化シリカという。
M値の測定方法は、0.2gのシリカエアロゲルを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌する。ここに、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないようにチューブを用いて添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定する。終点におけるメタノール-水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(vol%)をM値とする。M値は下記式(2)により求められる値である。
M値=メタノール滴下量(mL)/(メタノール滴下量(mL)+50mL)×100・・・(2)
【0014】
(体積基準累積50%径)
シリカエアロゲルの体積基準累積50%径(D50)の下限は1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのD50の上限は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。D50が上記下限値未満のシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。また、D50が上記上限値を超えると、乳液状化粧料からのシリカエアロゲルの分離が起こりやすく、加えて、ざらついた感触になり、感触が悪化する。D50が上記範囲内であると、引っ掛かり感や軋み感のない、滑らかな感触を有する乳液状化粧料を提供することができる。
シリカエアロゲルのD50はコールターカウンター法によって測定される値である。
【0015】
(吸油量)
シリカエアロゲルの吸油量の下限は400mL/100g以上であることが好ましく、500mL/100g以上であることがより好ましく、550mL/100g以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの吸油量の上限は800mL/100g以下であることが好ましく、750mL/100g以下であることがより好ましく、700mL/100g以下であることがさらに好ましい。
吸油量が上記下限値未満になると、製剤中の油性成分や皮脂を吸収する効果が得られずに、べたついて、感触が悪化する。また、吸油量が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、塗布後に軋みを感じ、感触が悪化する傾向がある。吸油量が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
吸油量は、JIS K5101-13-1「精製あまに油法」記載の方法に測定される値である。
【0016】
(比表面積)
シリカエアロゲルの比表面積の下限は350m2/g以上であることが好ましく、400m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの比表面積の上限は1000m2/g以下であることが好ましく、900m2/g以下であることがより好ましく、850m2/g以下であることがさらに好ましい。比表面積が上記下限値未満になると、乳液状化粧料がべたついた感触となり、感触が悪化する。また、比表面積が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。
比表面積が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
比表面積は、BET法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBET法により解析して求めた値が比表面積である。その際の解析に用いる圧力範囲は、相対圧0.1~0.25の範囲である。
【0017】
(細孔容積)
シリカエアロゲルの細孔容積の下限は3mL/g以上であることが好ましく、3.5mL/g以上であることがより好ましく、4.0mL/g以上であることがさらに好ましい。また、エアロゲルの細孔容積の上限は6mL/g以下であることが好ましく、5.5mL/g以下であることがより好ましく、5.0mL/g以下であることがさらに好ましい。細孔容積が上記下限値未満になると、皮脂吸収の効果が得られずに、乳液状化粧料がべたついた感触となり、感触が悪化する。また、細孔容積が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。細孔容積が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
細孔容積は、BJH法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBJH法(Barrett, E. P.;Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951))により解析することによって、細孔半径1nm以上100nm以下の細孔に由来する細孔容積が得られる。
【0018】
(細孔半径)
シリカエアロゲルの細孔半径のピークの下限は10nm以上であることが好ましく、12nm以上であることがより好ましく、13nm以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルの細孔半径のピークの上限は40nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。また、細孔半径が1nm~100nmの範囲内に全細孔容積の70容量%以上の細孔が存在することが好ましい。
細孔半径のピークが上記下限値未満のシリカエアロゲルを得ることは困難である。また、細孔半径のピークが上記上限を超えると、皮脂吸収の効果が得られずに、乳液状化粧料がべたついた感触となり、感触が悪化する。細孔半径のピークが上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
細孔半径は、BJH法によって測定される値である。具体的には、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定する。そして、当該吸着等温線をBJH法により解析して得られる、細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸にとり細孔半径を横軸にとってプロットした細孔分布曲線(体積分布曲線)が最大のピーク値をとる細孔半径を、細孔半径のピークとする。
【0019】
(C値)
シリカエアロゲルの疎水性を表す炭素含有量(C値)の下限は7.5質量%以上であることが好ましく、8.0質量%以上であることがより好ましく、8.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリカエアロゲルのC値の上限は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。C値が上記下限値未満になると、製剤中の油性成分や皮脂を吸収する効果が得られずに、べたついて、感触が悪化する。また、C値が上記上限値を超えたシリカエアロゲルを得ることは困難であり、得られた場合でも、乳液状化粧料を塗布した際に、引っ掛かりを感じ、感触が悪化する傾向がある。C値が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
C値は、1000~1500℃程度の温度において、空気中または酸素中でシリカエアロゲルを酸化処理した際に発生する二酸化炭素の量を定量することにより、測定することができる。
【0020】
<水性成分>
本発明の乳液状化粧料に含まれる水性成分として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、水道水や井戸水等の水道法による水質基準に準じた上水道水である常水、常水を蒸留するか、または、イオン交換樹脂を通して精製して得られる精製水、海洋深層水や温泉水などの天然水、カルシウムを含む水を電気分解した場合に陰極に生成するアルカリイオン水等を用いることができる。
【0021】
(含有量)
本発明の乳液状化粧料に含まれる水性成分の含有量の下限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、水性成分の含有量の上限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。水性成分の含有量が上記下限値未満になると、乳液状化粧料を塗布した際に、みずみずしい感触が得られずに、べたついて、感触が悪化する。また、水性成分の含有量が上記上限値を超えると、保湿効果を得ることが困難となる。水性成分の含有量が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
【0022】
<油性成分>
本発明の乳液状化粧料に含まれる油性成分として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。また、液体油、半固形・固形油のうちいずれか1種、あるいは、複数組み合わせて含有することができる。
例えば、液体油として、炭化水素類;スクワラン、流動パラフィン、α―オレフィンオリゴマー、急パラフィン等、油脂類;ヒマワリ種子油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、ローズヒップ油、アーモンド油、メドウフォーム油等の植物油、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等、エステル類;イソノナン酸イソノニル、ホホバ油、ミリスチン酸オクチルドデシル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コレステロール脂肪酸エステル等、シリコーン油;ジメチコン、フェニルメチコン、シクロペンタシロキサン等が挙げられる。
また、半固形・固形油として、脂肪酸類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等、高級アルコール類;セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、コレステロール、ラノリンアルコール等、炭化水素類;ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等、ロウ/油脂類;パルミチン酸セチル、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、シア脂、カカオ脂、水添パーム油等が挙げられる。
【0023】
(含有量)
本発明の乳液状化粧料に含まれる油性成分の含有量の下限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、油性成分の含有量の上限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。油性成分の含有量が上記下限値未満になると、乳液状化粧料を塗布した際に、保湿効果を得ることが困難となる。また、油性成分の含有量が上記上限値を超えると、みずみずしい感触が得られずに、べたついて、感触が悪化する。油性成分の含有量が上記範囲内であると、べたつき感がなく、かつ、軋み感のない乳液状化粧料を提供することができる。
【0024】
<界面活性剤>
本発明の乳液状化粧料に含まれる界面活性剤として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、その他の界面活性剤を挙げることができる。
上記親油性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α´-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0025】
上記親水性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類(例えばポリソルベート60)、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2-オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POPセチルエーテル、POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、PEG脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0026】
上記その他の界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体等のカチオン界面活性剤、及び、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤を安定性及び皮膚刺激性に問題のない範囲で配合してもよい。
【0027】
(含有量)
本発明の乳液状化粧料に含まれる界面活性剤の含有量の下限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、界面活性剤の含有量の上限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、3質量%以下が好ましく、2.8質量%以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記下限値未満になると、乳化状態を形成することや安定的に保つことが困難となる。また、界面活性剤の含有量が上記上限値を超えると、ぬるつきやべとついた感触となり、感触が悪化する。界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、保存安定性が良好で、塗った際の感触が良好な乳液状化粧料を提供することができる。
【0028】
<保湿剤>
本発明の乳液状化粧料に含まれる保湿剤として、通常の化粧料に用いられる成分を含有することができる。例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、トレハロース、POEメチルグルコシド、トリメチルグリシン、アミノ酸類、ヒアルロン酸ナトリウム、その他の多糖類、生体高分子等を挙げることができる。
【0029】
(含有量)
本発明の乳液状化粧料に含まれる保湿剤の含有量の下限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、保湿剤の含有量の上限は、当該乳液状化粧料全体の質量に対して、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。保湿剤の含有量が上記下限値未満になると、保湿効果を得ることが困難となる。また、保湿剤の含有量が上記上限値を超えると、ぬるつきやべとついた感触となり、感触が悪化する。保湿剤の含有量が上記範囲内であると、保湿効果が良好で、塗った際の感触が良好な乳液状化粧料を提供することができる。
【0030】
<その他の成分>
本発明の乳液状化粧料は、さらに、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、増粘剤、香料、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、色素、抗炎症剤、収れん剤、ビタミン類、美白・抗老化成分、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、殺菌剤、防腐剤、体質顔料、白色顔料、着色顔料、真珠光沢顔料(パール剤)、低級アルコール、多価アルコール、血行促進剤、冷感剤、皮膚賦活剤、染料等を含有することができる。
【0031】
[乳液状化粧料の製造方法]
本発明の乳液状化粧料は、公知の方法により、製造することができ、例えば、分散媒(O/W型乳液の場合の水相)に分散相(同じく油相)を撹拌しながら添加し、予備的に乳化を行った後、機械的な力によって乳化粒子を微小化して、製造することができる。
【実施例0032】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。なお、実施例及び比較例の評価は以下の方法で実施した。
【0033】
[測定方法]
(平均円形度の測定)
2000個以上のシリカエアロゲルについてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
(M値)
シリカエアロゲルのサンプル0.2gを50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより撹拌した。撹拌後、ビュレットを使用してメタノールをサンプルに直接接触しないようにチューブを用いて添加し、サンプルの全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定した。終点におけるメタノール-水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(vol%)を、上記式(2)から算出しM値とした。
(D50)
D50は、コールターカウンター法によって、精密粒度分布測定装置Multisizer3(ベックマン・コールター株式会社製)によって測定した。40mlのエタノールに対してシリカを0.3g添加し、シャープマニュファクチュアリング株式会社製の超音波洗浄機UT-105Sを用いて、出力100wで5分間分散させた。尚、上記分散は、容量50mlのラボランスクリュー管瓶を使用し、適正量の水を入れた洗浄槽内に設置して行った。得られたエタノール分散液を、100μmのアパチャーチューブを使用して測定した。得られた粒度分布から、体積分布に対するD50を評価した。
【0034】
(吸油量)
吸油量の測定は、JIS K5101-13-1に規定されている「精製あまに油法」により行った。
(BET比表面積、BJH細孔容積、細孔半径のピーク)
BET比表面積、BJH細孔容積、および細孔半径のピークの測定は、前述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP-miniにより行った。
(C値)
C値の測定はelementar社vario MICRO cubeを用いて、温度1150℃において酸素とヘリウムをフローしながらで酸化処理し、発生した二酸化炭素の量を定量することにより測定し、シリカエアロゲル全量を基準(100質量%)とする質量%で算出した。
【0035】
[評価方法]
得られた乳液状化粧料について、専門パネラー10名が、各乳液状化粧料を直接顔に塗布したときの「伸びやすさ」、塗布直後の「べたつきのなさ」を以下の基準で評価した。結果は、専門パネラー10名の平均点で示した。
<評点基準:べたつきのなさ>
(評点):(評価)
3:べたつかない。
2:ややべたつかない。
1:べたつく。
<評点基準:伸びやすさ>
(評点):(評価)
3:伸びやすい。
2:やや伸びやすい。
1:伸びにくい。
<判定基準>
(評点平均値):(判定)
2.0を超える:〇
1.8以上、2.0未満:△
1.8未満:×
【0036】
[シリカエアロゲルの調製]
特開2014-218433号公報に記載の調製方法に従ってシリカエアロゲルを調製した。調整したシリカエロゲルの物性を表1に示す。以下の実施例中、特に記載がない限り、%は質量%を表す。
【0037】
【0038】
[実施例1および比較例1~2]
表2に示す組成で、以下の1~5の順に従って、乳液状化粧料を作製した。
1.成分Cを75℃に加熱して、溶解する。
2.成分Aをコンテナーで混合し、成分Bを他のコンテナーで混合する。
3.成分Bに溶解させた成分Cを追加する。
4.成分Aを3に加える。
5.ホモジナイザーで、10分2000rpm、撹拌混合する。
表2に、それらの評価結果を示す。
【0039】
【0040】
表2に示すように、実施例1の乳液状化粧料は、油性成分に起因するべたつきが抑制され、かつ、軋み感がない、良好な伸びやすさを有すものであった。