(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004202
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 23/20 20060101AFI20230110BHJP
H01H 13/30 20060101ALI20230110BHJP
H01H 23/24 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H01H23/20
H01H13/30
H01H23/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105752
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲学
【テーマコード(参考)】
5G035
5G206
【Fターム(参考)】
5G035CA01
5G035CB02
5G035CB04
5G035DA07
5G206AS15J
5G206FS22J
5G206JU02
(57)【要約】
【課題】直流電圧に対応可能なスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置は、主スイッチ1と、主スイッチ1を摺動可能に支持する支持部材2と、主スイッチ1の動作に応じて開閉可能な接点3と、を備え、主スイッチ1は屈曲した状態で配設された弾性体1cを備えていて弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を摺動して往復運動可能である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主スイッチと、
前記主スイッチを摺動可能に支持する支持部材と、
前記主スイッチの動作に応じて開閉可能な接点と、
屈曲した状態で配設され、前記主スイッチを付勢する弾性体と、
を備え、
前記主スイッチは、前記弾性体の復元力により摺動方向に前記支持部材上を移動可能である、スイッチ装置。
【請求項2】
前記主スイッチは所定の軸線回りに回転可能である、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記主スイッチを操作する操作部材をさらに備え、
前記操作部材は、前記主スイッチを操作する操作部を備え、
前記主スイッチは、前記操作部により操作される二つの被操作部を備え、
前記主スイッチの前記支持部材上の摺動方向への移動に応じて、前記操作部は前記二つの被操作部を交互に操作する、請求項1または2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記主スイッチの動作に応じて前記接点を開閉する副スイッチをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記主スイッチの動作に応じて動作し、前記副スイッチを動作させる制御部材をさらに備え、
前記主スイッチがオン位置あるいはオフ位置にあるとき、前記制御部材と前記副スイッチ又は前記主スイッチとの間には隙間が形成される、請求項4に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関し、特に直流電圧に対応可能なスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や太陽光パネル等を使用して蓄電する蓄電池の需要が高まっている。蓄電池は直流で蓄電するが、一般家庭やオフィスビル、駅ビル等の建物のコンセントに送電される電気は交流であるため、直流を交流に変換してコンセントに供給し、さらに交流を直流に変換して最終的な機器に供給する必要がある。直流-交流変換及び交流-直流変換の変換効率の影響でエネルギーの一部が熱として逃げてしまうため、持続可能な社会の実現のために直流電源は直流のまま使用しようという考え方がある。
【0003】
ゼロエネルギービルディングでは、太陽光パネルなどで昼間に蓄電し、夜間等には蓄電した電気を直流で使用する傾向にあるが、建物で使用する配線径を小さくするために380V等の高電圧で配線する流れになりつつあり、斯かる高電圧で直流化された照明等を安全にオンオフ可能なスイッチ装置が求められている。交流はゼロクロスポイントが存在するため、スイッチをオフした際にアークが切断されるが、直流ではスイッチをオフした際に発生したアークが消えず、スイッチ装置の端子間温度が上昇して火災の原因になる恐れがある。
【0004】
アークを切断する手法として、接点間距離を広くする手法や、接点間近傍に磁石を配置して磁力によりアークを引き伸ばして消弧する手法等がある。しかし、このような対策をしても、ゆっくりスイッチ操作を行った場合にはアークが切断され難い。例えば交流用スイッチ装置を直流で使用する場合、十分な接点間距離を確保できればアークの影響を抑制できるが、接点間の距離が短いと接点間にアークが発生し続ける恐れがある。例えばゆっくりスイッチを操作したり、スイッチを途中で止めたりすると、十分な接点間距離が得られず、アークが発生し続ける可能性がある。従って、スイッチ操作に拘わらずアークを切断可能なスイッチ装置が求められている。
【0005】
スイッチ装置には、ロッカースイッチ、スライドスイッチ、押ボタンスイッチ等の種々の形態のものがある。従って、種々の形態に適用可能なスイッチ装置も求められる。アーク切断に関する技術や種々の形態のスイッチ装置としては、例えば後述の文献が公知である。
【0006】
特許文献1には、可動接点と固定接点との間に発生するアークを飛ばすために、可動接点と固定接点との間に磁界を発生させる永久磁石を設けることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、復帰ばねの復元力で極めて短い時間でオン状態からオフ状態に遷移し、アークの発生を抑えるスイッチ装置が開示されている。
【0008】
特許文献3には、固定接点から可動接点が離れるときに固定接点と可動接点の間に入り込む消弧板を備えた直流電圧スイッチが開示されている。
【0009】
特許文献4には、押し釦収容部内に下部が挿入された押し釦の下端面にピン収容穴を形成し、コイルバネによりピンの上端を弾性的にピン収容穴に保持し、押し釦収容部と一体のスイッチ収容部内の可動接片を保持した可動接片支持体をピンの下端によってシーソ運動させ、それによりコモン接片と2つの固定接片との間の導通を切り替える押し釦スイッチが記載されている。
【0010】
特許文献5には、底面のほぼ中央に共通接点を有し、共通接点から離れた位置に少なくとも一つの固定接点を具備した絶縁ケースと、導電性バネ材によってコ字状に折曲形成され、コ字状に折曲げられた二枚の接片に共通接点が係合して共通接点と電気的接触を保つと共に共通接点を支点にシーソ運動が可能なように支持された可動接片と、この可動接片の一端側に絶縁ケースの底面から離れる方向に偏倚力を与えるスプリングと、絶縁ケースの上方に設けられ押釦の押下操作により可動接片をスプリングの偏倚力に抗して回動させ可動接片の二枚の接片の間に固定接点を挟み込んで共通端子と固定端子の間を電気的に接触させる操作ロッドと、から成る押釦スイッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-104448号公報
【特許文献2】特開2014-75290号公報
【特許文献3】特開2013-145697号公報
【特許文献4】特開平7-6146号公報
【特許文献5】実開昭61-189534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の問題に鑑み、直流電圧に対応可能なスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、主スイッチと、主スイッチを摺動可能に支持する支持部材と、主スイッチの動作に応じて開閉可能な接点と、を備え、主スイッチは屈曲した状態で配設された弾性体を備えていて弾性体の復元力により摺動方向に支持部材上を摺動して往復運動可能である、スイッチ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、直流電圧に対応可能なスイッチ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】第一実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図1B】第一実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図1C】第一実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図1D】第一実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図4】切断線X1、X2を示す一実施例のスイッチ装置の平面図である。
【
図5A】オン位置の主スイッチを示すスイッチ装置のX1-X1断面図である。
【
図5B】オン位置の主スイッチを示すスイッチ装置のX2-X2断面図である。
【
図6A】中立状態の主スイッチを示すスイッチ装置のX1-X1断面図である。
【
図6B】中立状態の主スイッチを示すスイッチ装置のX2-X2断面図である。
【
図7A】中立状態の主スイッチを示すスイッチ装置のX1-X1断面図である。
【
図7B】中立状態の主スイッチを示すスイッチ装置のX2-X2断面図である。
【
図8A】オフ位置の主スイッチを示すスイッチ装置のX1-X1断面図である。
【
図8B】オフ位置の主スイッチを示すスイッチ装置のX2-X2断面図である。
【
図9】第二実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図10】第三実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図11】第四実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図12】第五実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【
図13】第六実施形態のスイッチ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではないことに留意されたい。さらに、各要素の移動方向や位置関係は、原則図示の状態を基準に説明する。
【0017】
図1A~
図1Dは、第一実施形態のスイッチ装置の概略図である。第一実施形態のスイッチ装置はオルタネート型の押ボタンスイッチである。スイッチ装置は、主スイッチ1と、主スイッチ1を摺動可能に支持する支持部材2と、主スイッチ1の動作に応じて開閉可能な接点3と、を備えている。またスイッチ装置は主スイッチ1を操作する操作部材4を備えていてもよい。さらに、スイッチ装置は主スイッチ1の動作に応じて接点3を開閉する副スイッチ5を備えていてもよい。
【0018】
主スイッチ1は例えば回転可能なスイッチであり、支持部材2は例えばハウジングである。主スイッチ1は軸1aを備え、支持部材2は軸1aを受入れる軸受2eを備えている。軸1aのサイズは軸受2eのサイズより小さいため、軸1aは軸受2eの中で摺動可能である。本実施形態では、軸1aは円柱形の棒であり、軸受2eは長円形の溝であり、長円形の軸受2eの長径が円柱形の軸1aの径より大きいため、軸1aは軸受2eの長手方向に摺動(本実施形態では直線移動)可能である。なお、本明細書における「直線移動」とは、回転又は揺動しながら真っ直ぐ進む移動や、物体上の点が全て平行に真っ直ぐに進む平行移動を含む。これにより、主スイッチ1は軸線J1回りで回転方向D2に回転可能であって且つ摺動方向D1に支持部材2上を摺動可能である。本実施形態において軸線J1は移動可能な可動軸線である。また、本実施形態では摺動方向D1が接点3の開閉方向D0と異なる方向である。接点3の開閉方向D0と異なる方向とは、例えば接点3の開閉方向D0に対して直交する方向であり、具体的には軸受2eの長軸方向である。
【0019】
主スイッチ1は屈曲した状態で配設された弾性体1cを備えている。弾性体1cは、主スイッチ1の移動方向(本実施形態では、S1方向あるいはS2方向)へ屈曲した状態で配設される。具体的には、弾性体1cは支持部材2の第一側S1又は第二側S2に向かって屈曲した状態で(例えばくの字状に弾性変形させて)取付けられる。第一側S1と第二側S2は互いに支持部材2の反対側を表す。また、第一側に向かう位置または方向を「S1側」または「S1方向」と称し、第二側に向かう位置または方向を「S2側」または「S2方向」と称する。弾性体1cは、主スイッチ1の動作(本実施形態では摺動および回転)に応じて、真っ直ぐに圧縮した状態を経て屈曲方向を反対側(S1側からS2側に、又はS2側からS1側に)に変化させる。弾性体1cの屈曲方向が変化するとき、弾性体1cは主スイッチ1をS1側且つ反時計回りに付勢し、あるいはS2側且つ時計回りに付勢する。また、弾性体1cは、主スイッチ1の回動方向に応じて、副スイッチ5を時計回りに付勢し、又は反時計回りに付勢する。主スイッチ1は圧縮した弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を摺動して往復運動し、副スイッチ5は屈曲した弾性体1cの付勢力により接点3を開位置又は閉位置に維持する。弾性体1cは例えばコイルばねであるが、板ばね、ゴム等の他の弾性体でもよい。
【0020】
接点3は、例えば単投単極式、双投単極式等の接点であり、可動接点3aと固定接点3bを備えている。本実施形態では、接点3が単投単極式であり、可動接点3aが副スイッチ5の動作に応じて支点を中心にシーソ運動する。可動接点3aがシーソ運動することにより、可動接点3aと固定接点3bが開閉する。接点3が開いたときの接点間距離は、アークを切断可能な距離になるように設計される。
【0021】
操作部材4は、例えば押ボタン、スライドボタン等である。本実施形態では操作部材4が押ボタンである。操作部材4は主スイッチ1を操作する一つの操作部4cを備え、主スイッチ1は操作部4cにより操作される二つの被操作部1bを備えている。操作部4cは例えば凸部であり、二つの被操作部1bは例えば隙間を空けた二つの凸部である。主スイッチ1が支持部材2上を摺動して往復運動することにより、二つの被操作部1bのうちのいずれか一つが操作部4cの近傍に配置されるため、一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作(本実施形態では押下)可能である。従って、押ボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。これによりスイッチ装置は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、オルタネート型の押ボタンスイッチとしても構成できる。また、操作部材4をスライドボタン等の他のボタンに変更するだけで、後述のスライドスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置は種々の形態のスイッチ装置として構成できる。
【0022】
副スイッチ5は、例えば回転可能なスイッチである。副スイッチ5は、支持部材2で支持される軸5dを備えている。これにより、副スイッチ5は軸線J2回りで回転方向D3に回転可能である。本実施形態において、軸線J2は所定位置に固定された固定軸線である。また本実施形態では、弾性体1cが副スイッチ5に連結し、副スイッチ5は弾性体1cの屈曲方向の変化に応じて回転する。副スイッチ5は、可動接点3aを開位置又は閉位置に付勢する弾性体5bと、弾性体5bの先端に連結して可動接点3aに接触する端部5cと、を備えているとよい。本実施形態では、可動接点3aが副スイッチ5の回転に応じて支点を中心にシーソ運動する。端部5cが可動接点3aの支点の両側へ往復運動して可動接点3aを押圧することにより、可動接点3aと固定接点3bが開閉する。弾性体5bは、可動接点3aを付勢することにより、可動接点3aと固定接点3bの開閉速度を高める。S1側からS2側へ、あるいはS2側からS1側に移動する端部5cが可動接点3aの支点を乗り越える際、端部5cが支点の一方側から他方側に移動するため、可動接点3aが支点を中心に瞬間的に回動し、その結果、可動接点3aと固定接点3bとが瞬間的に開閉する。本実施形態では、弾性体5bがコイルばねであるが、板ばね、ゴム等の他の弾性体でもよい。また、端部5cは可動接点3aに接触する半球状のピンであるが、尖鋭なピンでもよい。
【0023】
副スイッチ5の軸線J2は、主スイッチ1の軸線J1と平行であるとよい。軸線J1と軸線J2が平行であることにより、主スイッチ1から副スイッチ5へ力が効率良く伝達され、副スイッチ5は接点3を素早く開閉できる。また、副スイッチ5が弾性体1cの屈曲方向の変化に応じて所望の回転範囲で回転するためには、軸線J1が軸線J2の両側へ交互に移動するとよい。具体的には、軸線J1が、副スイッチ5の所望の回動範囲の中心と軸線J2とを結ぶ仮想線Iを跨いで両側へ往復運動するとよい。本実施形態では、スイッチ装置が主スイッチ1と副スイッチ5を備えた二段式スイッチとして構成される。
【0024】
第一実施形態のスイッチ装置の動作について説明する。
図1A及び
図1Bに示すスイッチ装置の状態(1)~(6)は、操作部材4が押下され復帰する間に主スイッチ1がオフ位置から中立状態を経てオン位置へ遷移する様子を示している。また、
図1C及び
図1Dに示すスイッチ装置の状態(7)~(12)は、操作部材4が押下され復帰する間に主スイッチ1がオン位置から中立状態を経てオフ位置へ遷移する様子を示している。以下では、これらスイッチ装置の状態(1)~(12)について説明する。なお、「オン位置」とはスイッチ装置を操作していないときに接点3が閉位置にあるときの主スイッチ1の位置を意味し、「オフ位置」とはスイッチ装置を操作していないときに接点3が開位置にあるときの主スイッチ1の位置を意味し、「中立状態」とは「オン位置」と「オフ位置」の間の主スイッチ1の状態を意味することに留意されたい。
【0025】
図1Aに示す状態(1)では、操作部材4が押下されておらず、主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1の弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付け、副スイッチ5を時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸1aは長円形の軸受2eの中でS1側に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5が接点3を開位置に維持している。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより押下可能な状態である。
【0026】
図1Aに示す状態(2)では、操作部材4が途中まで押下される。主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cにより操作されることにより、主スイッチ1が軸線J1回りで時計回りの回転方向D2に回転する。しかし、主スイッチ1の弾性体1cはS2方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。これにより、副スイッチ5は回転せずに接点3を開位置に維持する。また、主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中でS1側に依然として位置付けられる。
【0027】
図1Aに示す状態(3)では、操作部材4が完全に押下される。操作部材4が完全に押下される直前に、つまり操作部材4が所定位置まで押下されると、主スイッチ1が軸線J1回りで時計回りの回転方向D2に
図1A(2)の状態からさらに回転することにより、操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の二つの被操作部1bの間に入り込み、
図1A(2)から
図1A(3)に至る途中で、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS1方向に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS2方向且つ時計回りに付勢し、副スイッチ5を反時計回りに付勢するので、副スイッチ5は軸線J2回りで反時計回りの回転方向D3に回転する。弾性体5bにより付勢される端部5cは、可動接点3aの支点を乗り越える際にS1側からS2側に短時間で移動し、可動接点3aのS2側が端部5cにより押圧されて接点3が瞬時に閉じる。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転動作よりも遅延して動作し、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が閉じず、操作部材4が完全に押下されたら接点3が瞬時に閉じるようになる。従って、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つ素早く閉じる。
【0028】
図1Bに示す状態(4)では、操作部材4が途中まで復帰する。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態である。弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第二側S2方向且つ時計回りに付勢するが、主スイッチ1の位置は操作部材4により支持部材2の第一側S1に規制されているため、主スイッチ1の軸1aは依然として軸受2eの中で第一側S1に位置付けられている。つまり、操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の被操作部1bに干渉して、主スイッチ1の摺動を妨げる。また、弾性体1cは副スイッチ5を反時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を閉位置に維持する。
【0029】
図1Bに示す状態(5)では、操作部材4がさらに復帰する。操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の被操作部1bに干渉しなくなり、主スイッチ1の位置が操作部材4により規制されなくなる。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS2方向に付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を反時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を閉位置に維持する。
【0030】
図1Bに示す状態(6)では、操作部材4が完全に復帰し、主スイッチ1はオン位置にある。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態である。弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付け、副スイッチ5を反時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5は接点3を閉位置に維持する。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより操作可能な状態になる。
【0031】
図1Cに示す状態(7)では、操作部材4が押下されていない。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付け、副スイッチ5を版時計方向に付勢する。軸1aが軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5が接点3を閉位置に維持している。つまり、主スイッチ1はオン位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより押下可能な状態である。
【0032】
図1Cに示す状態(8)では、操作部材4が途中まで押下される。主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの他方が操作部4cによって押下されることにより、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に回転する。しかし、弾性体1cはS1方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1をS2方向且つ時計回りに付勢し、副スイッチ5を反時計回りに付勢する。これにより、副スイッチ5は回転せずに接点3を閉位置に維持する。また、主スイッチ1の軸1aは、軸受2eの中で第二側S2に依然として位置付けられる。
【0033】
図1Cに示す状態(9)では、操作部材4が完全に押下される。操作部材4が完全に押下される直前に、つまり操作部材4が所定位置まで押下されると、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に、
図1C(8)の状態からさらに回転する。これにより、操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の二つの被操作部1bの間に入り込み、
図1C(8)から
図1C(9)の状態に至る途中で、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS2方向に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢するので、副スイッチ5は軸線J2回りで時計回りの回転方向D3に回転する。端部5cは、S2側からS1側に移動して可動接点3aの支点を乗り越える際に支点のS2側からS1側に短時間で移動し、可動接点3aのS1側が移動する端部5により押圧されて接点3が瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転動作よりも遅延して回転動作する。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分に押下されたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3を瞬間的に開くことが可能であり、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0034】
図1Dに示す状態(10)では、操作部材4が途中まで復帰する。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態である。弾性体1cは主スイッチ1をS1方向に付勢するが、主スイッチ1の位置は操作部材4により支持部材2の第二側S2に規制されているため、主スイッチ1の軸1aは依然として軸受2eの中で第二側S2に位置付けられている。つまり、操作部材4の操作部4cが被操作部1bに干渉して主スイッチ1の摺動を妨げる。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0035】
図1Dに示す状態(11)では、操作部材4がさらに復帰する。操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の被操作部1bに干渉しなくなり、主スイッチ1の移動が操作部材4により規制されなくなる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1側且つ反時計回りに付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0036】
図1Dに示す状態(12)では、操作部材4が完全に復帰する。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付け、副スイッチ5を時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。つまり、主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより押下可能な状態になる。
【0037】
第一実施形態のスイッチ装置によれば、ゆっくりスイッチ操作を行っても接点を瞬間的に開閉することができ、アークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できるので、直流電圧に対応可能である。特に、スイッチ装置はアークが発生し易い直流高電圧の場合に好適である。また主、スイッチ1が弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を摺動して往復運動することにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより操作可能な状態になる。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作することにより、押ボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。これによりスイッチ装置は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、オルタネート型の押ボタンスイッチとしても構成できる。また、操作部材4をスライドボタン等の他のボタンに変更するだけで、後述のスライドスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置は、種々の形態のスイッチ装置としても構成できる。
【0038】
以下、第一実施形態のスイッチ装置の一実施例について説明する。
図2及び
図3は、一実施例のスイッチ装置10の分解図及び斜視図である。スイッチ装置10はオルタネート型の押ボタンスイッチである。スイッチ装置10は、主スイッチ1と、主スイッチ1を摺動可能に支持する支持部材2と、主スイッチ1の動作に応じて開閉可能な接点3と、主スイッチ1を操作する操作部材4と、主スイッチ1の動作に応じて接点3を開閉する副スイッチ5と、を備えている。加えて、本実施例のスイッチ装置10は、主スイッチ1と副スイッチ5の動作タイミングを制御する制御部材6をさらに備えている。
【0039】
主スイッチ1は回転可能なスイッチであり、支持部材2はハウジングである。支持部材2は、外側カバー2a、内側カバー2b、内側ベース2c、及び外側ベース2dを備えている。主スイッチ1は軸1aを備え、外側カバー2aは軸1aを受入れる軸受2eを備えている。本実施例では、軸1aは円柱形の棒であり、軸受2eは台形の溝である(
図5A~
図8Bも参照)。台形の軸受2eの上底の長さが円柱形の軸1aの径より大きいため、軸1aは軸受2eの長手方向に摺動(本例では直線移動)可能である。これにより、主スイッチ1は軸線J1回りに回転方向D2に回転可能であって且つ摺動方向D1に外側カバー2a上を直線移動可能である。台形の軸受2eの下底側は開放されているため、主スイッチ1を軸受2eの中に配置し易く、また組み立てし易い。
【0040】
主スイッチ1は、屈曲した状態で配設された弾性体1cを備えている。弾性体1cは、主スイッチ1の回転方向D2に沿うように屈曲した状態で配設される。具体的には、弾性体1cは外側カバー2aの第一側S1又は第二側S2に向かって屈曲した状態で、例えばくの字状に弾性変形させて取付けられる。弾性体1cは、主スイッチ1の回転に応じて、真っ直ぐに圧縮された状態を経て屈曲方向をS1方向へ又はS2方向へ変化させる。弾性体1cの屈曲方向が変化するとき、弾性体1cは主スイッチ1をS2側且つ時計回り又はS1側且つ反時計回りに付勢し、制御部材6をS2側且つ反時計回り又は時計回りに付勢する。つまり、主スイッチ1は圧縮した弾性体1cの復元力により、摺動方向D1に軸受2e上を直線移動して往復運動する。弾性体1cは例えばコイルばねであるが、板ばね、ゴム等の他の弾性体でもよい。
【0041】
接点3は双投単極式の接点であり、一対の可動接点3aと一対の固定接点3bを備えている。接点3は外側ベース2dに配設される。本実施例では、可動接点3aが副スイッチ5の動作に応じて、可動側の端子3cに形成された支点3d(
図5B等を参照)を中心にシーソ運動可能であり、可動接点3aのシーソ運動により可動接点3aと固定接点3bが開閉する。接点3が開いたときの接点間距離は、アークを切断可能な距離になるように設計される。
【0042】
操作部材4は押ボタンである。操作部材4は、本体4aと、本体4aを所定位置に復帰させる弾性体4bと、を備えている。弾性体4bはコイルばねであるが、板ばね、ゴム等の他の弾性体でもよい。本体4aは外側カバー2aの開口から外部へ露出し、弾性体4bは内側カバー2bの受容部2hで受容される。また、操作部材4は主スイッチ1を押下する操作部4cを備え、主スイッチ1は、操作部4cにより押下される二つの被操作部1b1、1b2を備えている。操作部4cが二つの被操作部1b1、1b2のうちの一方を押下することにより、主スイッチ1が回動する。主スイッチ1が軸受2e上を摺動して往復運動することにより、二つの被操作部1bのうちのいずれか一つが操作部4cの近傍に配置されるため、一つの操作部4cで二つの被操作部1b1、1b2を交互に操作可能である。操作部4cは凸部であり、二つの被操作部1b1、1b2は貫通孔を挟んだ二つの側壁である。本実施例では、一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に押下可能であるため、押ボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。これによりスイッチ装置10は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、オルタネート型の押ボタンスイッチとしても構成できる。また、操作部材4をスライドボタン等の他のボタンに変更するだけで、後述のスライドスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置10は種々の形態のスイッチ装置として構成できる。
【0043】
副スイッチ5は例えば回転可能なスイッチである。副スイッチ5は、内側ベース2cの軸受2gで支持される軸5dを備える。これにより、副スイッチ5は軸線J2回りで回転方向D3に回転可能である。本実施例では、弾性体1cが制御部材6に連結し、制御部材6は弾性体1cの屈曲方向の変化に応じて揺動し、副スイッチ5は制御部材6の揺動に応じて回転する。副スイッチ5は、本体5aと、可動接点3aを開位置又は閉位置に付勢する一対の弾性体5bと、弾性体5bの先端に連結して可動接点3aに接触する一対の端部5cと、を備えている。端部5cが可動接点3aの支点に対してS1側を押下すると、可動接点3aが
図5B図示の反時計回りに回動して接点3が閉じる。また、端部5cがS2側を押下すると、可動接点3aが
図5B図示の時計回りに回動して接点3が開く。このように一対の端部5cが一対の可動接点3aの支点の両側へ往復運動することにより、一対の可動接点3aと一対の固定接点3bが同時に開閉する。一対の弾性体5bは、一対の可動接点3aを付勢することにより、可動接点3aと固定接点3bの開閉速度を高める。弾性体5bはコイルばねであり、端部5cは可動接点3aに接触する尖鋭なピンである。スイッチ装置10は、主スイッチ1と副スイッチ5を備えた二段式スイッチとして構成される。
【0044】
制御部材6は、主スイッチ1と副スイッチ5との間に配置される。制御部材6は、弾性体1cを受容する受容部6aを備えている。受容部6aは例えば円筒形の溝である。また、制御部材6は、内側ベース2cの一対の受容部2iで受容される一対の脚部6cを備えている。脚部6cは例えば三角形の先端を備えた側壁であり、内側ベース2cの受容部2iは例えば三角形の溝である。三角形の脚部6cのサイズは三角形の受容部2iのサイズより小さいため、脚部6cが受容部2iの中で軸線J3回りに揺動可能である。制御部材6は、弾性体1cの屈曲方向の変化に応じて、弾性体1cの付勢力により軸線J3回りで揺動方向D4に揺動する。
【0045】
制御部材6は、副スイッチ5の回動動作を制御する二つの制御部6b(制御部6b1、6b2)を備える。副スイッチ5は、制御部材6の動作に応じて二つの制御部6b1、6b2の一方に接触する被制御部5eを備えている。二つの制御部6b1、6b2は例えば隙間を空けた二つの側壁であり、被制御部5eは例えば凸部である。被制御部5eは、制御部6b1、6b2の間に配置される。制御部6b1、6b2の間の隙間のサイズAが、被制御部5eのサイズBより大きい。また、
図5B、
図6B、
図7B、及び
図8Bの状態では、制御部材6(制御部6b1、6b2)と副スイッチ5(被制御部5e)との間には隙間Sがある。制御部材6と副スイッチ5との間に隙間Sがあることにより、制御部材6が軸線J3回りで揺動すると、一方の制御部6b1、6b2が制御部材6の揺動開始から遅延して被制御部5eに接触し、被制御部5eを押して副スイッチ5を回転させる。主スイッチ1の動作に応じて弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは制御部材6が揺動せず、且つ制御部材6と副スイッチ5との間に隙間Sがあるため、制御部6b1、6b2が被制御部5eに接触するまでは副スイッチ5が回転しない。このため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転開始よりも遅延して回転する。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が完全に押下されると接点3が瞬時に開くようになる。従って、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても接点3が瞬時に開くため、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0046】
以下では、スイッチ装置10の動作について説明する。
図4は切断線X1、X2を示すスイッチ装置10の平面図であり、
図5A、
図6A、
図7A、及び
図8Aはそれぞれ、オン位置、中立状態、中立状態、及びオフ位置の主スイッチ1を示すスイッチ装置10のX1-X1断面図であり、
図5B、
図6B、
図7B、及び
図8Bはそれぞれ、オン位置、中立状態、中立状態、及びオフ位置の主スイッチ1を示すスイッチ装置10のX2-X2断面図である。これら図面に示す四つの状態(7)、状態(9)、状態(11)、及び状態(12)は、それぞれ
図1C及び
図1Dに示す状態(7)、状態(9)、状態(11)、及び状態(12)に対応することに留意されたい。
【0047】
図5A及び
図5Bに示す状態(7)では、操作部材4が押下されておらず、主スイッチ1はオン位置にある。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付ける。主スイッチ1の軸1aは支持部材2の台形の軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が軸受2eの角部に係止している。また、副スイッチ5は接点3を閉位置に維持している。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより押下可能な状態となる。
【0048】
図6A及び
図6Bに示す状態(9)では、操作部材4が完全に押下される。操作部材4が完全に押下される直前に(つまり操作部材4が所定位置まで押下されると)、主スイッチ1が軸線J1回りで時計回りの回転方向D2に回転することにより、操作部4cが主スイッチ1の二つの被操作部1b1、1b2の間に入り込み、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮された状態を経て反対側であるS1側に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS2方向且つ時計回りに付勢し、制御部材6を反時計回りに回動させる。主スイッチ1の位置は操作部材4によって規制され、制御部材6は軸線J3回りで反時計回りの揺動方向D4に揺動する。一方、制御部材6と副スイッチ5との間に隙間Sがあることにより、制御部材6の制御部6b2は、制御部材6の揺動開始から遅延して副スイッチ5の被制御部5eに接触する。制御部材6の揺動に伴い被制御部5eが制御部6b2によりS1方向に押されることで、副スイッチ5は軸線J2回りで反時計回りの回転方向D3に回転する。副スイッチ5は瞬間的に回転するため、副スイッチ5の回転に応じて
図5Bの状態から
図6Bの状態に移行する過程で、端部5cがS2方向に移動して可動接点3aのS2側を押圧して接点3を瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは制御部材6が揺動せず、且つ制御部材6と副スイッチ5との間に隙間Sがあることにより制御部材6が副スイッチ5に接触するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転よりもさらに遅延して回転する。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分に押下されたら接点3が瞬時に開く。また、支点3dの位置における端部5cの可動接点3aへの接触位置は、
図5Bおよび
図6Bにおける端部5cの可動接点3aへの接触位置と比較して高い位置にあるので、端部5cは支点3dの位置で止まることはなく、可動接点3aのS1側あるいはS2側の一方側に移動しようとする。そして、端部5cの可動接点3aのS1側あるいはS2側への移動により可動接点3aが押下されるため、接点3が開いた状態あるいは閉じた状態に速やかに移行する。このため、可動接点3aと固定接点3bとが閉状態と開状態との間の中立的な状態を維持することを防止でき、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達でき、アークが生じることを防ぐこと、あるいはアークが発生したと仮定しても素早く消弧することが可能となる。
【0049】
図7A及び
図7Bに示す状態(11)では、操作部材4が復帰する。操作部4cが主スイッチ1の被操作部1b1に干渉しなくなり、主スイッチ1の移動が操作部材4により規制されなくなる。弾性体1cはS1側に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS2方向且つ時計回りに付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で直線移動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を直線移動する。また、弾性体1cは制御部材6を反時計回りに付勢した状態を維持し、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0050】
図8A及び
図8Bに示す状態(12)では、操作部材4が完全に復帰する。弾性体1cはS1側に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1をS2側に位置付ける。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、軸受2eの角部に係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。つまり、主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、被操作部1b1が操作部4cの近傍に配置されて、操作部4cにより押下可能な状態である。
【0051】
スイッチ装置10の上記構成及び動作により、スイッチ装置10は、ゆっくりスイッチ操作を行っても接点3が中立位置に維持されることがなくなり、アークを切断不可能な接点間距離に維持されず且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できるので、直流電圧に対応可能である。特に、スイッチ装置10はアークが発生し易い直流高電圧の場合に好適である。また、主スイッチ1が圧縮した弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を直線移動して往復運動することにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより押下可能な状態になる。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に押下することにより、押ボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。つまりスイッチ装置10は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、オルタネート型の押ボタンスイッチとしても構成できる。また、操作部材4をスライドスイッチ等の他のボタンに変更するだけで、後述のスライドスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置10は、種々の形態のスイッチ装置として構成できる。
【0052】
上記構成及び動作は一例であり、他の形態を採用できることに留意されたい。例えば、前述のように操作部材4を無くすことにより、スイッチ装置をロッカースイッチとして構成可能である。また、後述するように、操作部材4を例えばスライドボタンに変更することにより、スイッチ装置をスライドスイッチとして構成可能である。さらに後述するように、例えば副スイッチ5を無くすことにより、スイッチ装置を一段式スイッチとして構成可能である。また後述するように、主スイッチ1は、回転せずに支持部材2に対して摺動のみ行うように構成可能である。また軸受2eは、長円形の溝や台形の溝ではなく、長方形の溝、楕円形の溝、円弧形の溝、曲線形の溝等でもよい。軸受2eが楕円形の溝、円弧形の溝、曲線形の溝等の場合は、主スイッチ1が曲線移動する。なお、本書における「曲線移動」とは、回転又は揺動しながら曲線に沿って進む移動や、物体上の点が全て平行に曲線に沿って進む平行移動を含む。また後述するように、軸受を主スイッチ1に形成し、軸を支持部材2に形成してもよい。また、制御部材6と副スイッチ5の間に隙間Sを形成するのではなく、制御部材6と主スイッチ1の間に隙間Sを形成してもよい。また後述するように、副スイッチ5の弾性体5b又は端部5cは無くてもよい。加えて、スイッチ装置10は、単投式や双投式ではなく例えば三投式、四投式等のスイッチ装置としても構成可能であり、また単極式ではなく例えば双極式、三極式、四極式等のスイッチ装置としても構成可能である。
【0053】
図9は第二実施形態のスイッチ装置の概略図である。ここでは、第一実施形態のスイッチ装置と同一又は類似の構成及び動作については説明を省略することに留意されたい。第二実施形態のスイッチ装置では、主スイッチ1が軸1aを備えるのではなく軸受1dを備え、支持部材2が軸受2eを備えるのではなく軸2jを備えている点で、第一実施形態のスイッチ装置とは異なる。本実施形態では、軸2jは円柱形の棒であり、軸受1dは長円形の溝である。軸受1dの長径が円柱形の軸2jの径より大きいため、軸受1dは軸2jに規制されながら軸2j上を摺動(本実施形態では直線移動又は曲線移動)可能である。また、軸線J1と軸線J2はそれぞれ所定位置に固定された固定軸線である。これにより、主スイッチ1は軸線J1回りで回転方向D2に回転可能であって、且つ摺動方向D1に支持部材2上を摺動可能である。本実施形態では、摺動方向D1が接点3の開閉方向と異なる方向である。接点3の開閉方向と異なる方向とは、例えば接点3の開閉方向D0に対して傾斜した方向であり、具体的には軸受1dの長軸方向である。
【0054】
第二実施形態のスイッチ装置では、主スイッチ1の弾性体1cが主スイッチ1の移動方向、本実施形態では支持部材2のS1側あるいはS2側に屈曲した状態で且つ圧縮した状態で配設される。具体的には、弾性体1cはS1側又はS2側に向かって屈曲した状態で、例えばくの字状に弾性変形させて且つ圧縮した状態で取付けられる。つまり、スイッチ装置が操作されていないときに弾性体1cが圧縮した状態でない場合は、主スイッチ1が軸2j上を摺動して第一側S1又は第二側S2に係止されなくなる。ひいては、主スイッチ1の被操作部1bのいずれか一方が操作部材4の操作部4cの近傍に配置されなくなり、操作部4cによって操作不可能になる。弾性体1cはスイッチ装置が操作されていないときも圧縮した状態であるため、主スイッチ1の被操作部1bのいずれか一方が操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによって操作可能になる。
【0055】
図9に示す状態(7)では、操作部材4が押下されておらず、主スイッチ1はオン位置にある。弾性体1cは、S1側に屈曲した状態であり且つ圧縮した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1をS2方向且つ時計回りに付勢し、副スイッチ5を反時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸受1dは軸2jに対して第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5が接点3を閉位置に維持している。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作(本実施形態では押下)可能な状態である。
【0056】
図9に示す状態(9)では、操作部材4が完全に押下される。操作部材4が完全に押下される直前に(つまり操作部材4が所定位置まで押下されると)、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に回転することにより、操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の二つの被操作部1bの間に入り込み、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS2側に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。主スイッチ1の位置は操作部材4によって規制され、副スイッチ5は軸線J2回りで時計回りの回転方向D3に回転して接点3を瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転動作よりも遅延して動作する。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分に押下されたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0057】
図9に示す状態(11)では、操作部材4が復帰する。操作部4cが主スイッチ1の被操作部1bに干渉しなくなり、主スイッチ1の移動が操作部材4により規制されなくなる。弾性体1cはS2側に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢するため、主スイッチ1の軸受1dが軸2j上を摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0058】
図9に示す状態(12)では、操作部材4が完全に復帰し、主スイッチ1はオフ位置にある。弾性体1cはS2側に屈曲した状態で且つ圧縮した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸受1dは、支持部材2の軸2jに対して支持部材2の第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に付勢されることにより、二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより押下可能な状態になる。
【0059】
第二実施形態のスイッチ装置によれば、弾性体1cはスイッチ装置が操作されていないときも圧縮した状態であるため、主スイッチ1をS1方向又はS2方向に付勢し、副スイッチ5を反時計回り又は時計回りに付勢する。これにより、主スイッチ1が支持部材2の第一側S1又は第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちのいずれか一方が操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作可能な状態になる。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作することにより、押ボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。つまりスイッチ装置は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、オルタネート型の押ボタンスイッチとしても構成できる。また、操作部材4をスライドボタン等の他のボタンに変更するだけで、後述のスライドスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置は、種々の形態のスイッチ装置として構成できる。
【0060】
図10は第三実施形態のスイッチ装置の概略図である。ここでは、第一実施形態のスイッチ装置と同一又は類似の構成及び動作については説明を省略することに留意されたい。第三実施形態のスイッチ装置は、副スイッチ5を備えず、主スイッチ1のみを備えた一段式スイッチである点で、第一実施形態のスイッチ装置とは異なる。本実施形態では、主スイッチ1が、可動接点3aを開位置又は閉位置に付勢する弾性体1cと、弾性体1cの先端に連結して可動接点3aに接触する端部1eと、を備えている。本実施形態では、可動接点3aが、主スイッチ1の動作(本実施形態では回転)に応じて支点を中心にシーソ運動する。端部1eが可動接点3aの支点の両側へ往復運動することにより、可動接点3aと固定接点3bが開閉する。弾性体1cが可動接点3aを付勢することにより、可動接点3aと固定接点3bの開閉速度を高める。本実施形態では、弾性体1cがコイルばねであるが、板ばね、ゴム等の他の弾性体でもよい。また本実施形態では、端部1eが可動接点3aに接触する半球状のピンであるが、尖鋭なピンでもよい。弾性体1cが板ばね、ゴム等の他の実施形態では、端部1eが無くてもよい。
【0061】
図10に示す状態(7)では、操作部材4が押下されていない。主弾性体1cはS1方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付けるとともに、可動接点3aのS2側を押圧して可動接点3aを時計回りに付勢し、接点3を閉状態に維持する。主スイッチ1の軸1aは支持部材2の長円形の軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。つまり、主スイッチ1はオン位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作(本実施形態では押下)可能な状態である。
【0062】
図10に示す状態(9)では、操作部材4が完全に押下される。操作部材4が完全に押下される直前に(つまり操作部材4が所定位置まで押下されると)、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に回転することにより、操作部4cが主スイッチ1の二つの被操作部1bの間に入り込み、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS2側に瞬時に屈曲する。S2側に屈曲した弾性体1cは、主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢するとともに、端部5eを瞬間的にS2側からS1側に移動させる。端部5eのこの動作により、可動接点3aのS1側が端部5eにより押圧されて接点3を瞬時に開く。主弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは可動接点3aが開かないため、可動接点3aは主スイッチ1の回転動作よりも遅延して動作する。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分に押下されたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0063】
図10に示す状態(11)では、操作部材4が復帰する。操作部材4の操作部4cが主スイッチ1の被操作部1bに干渉しなくなり、主スイッチ1の移動が操作部材4により規制されなくなる。弾性体1cはS2方向に屈曲し且つ圧縮した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢するため、軸1aが軸受2eの中で摺動(本実施形態では直線移動)し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは可動接点3aのS1側を押圧して反時計回りに付勢し、接点3を開位置に維持する。
【0064】
図10に示す状態(12)では、操作部材4が完全に復帰する。弾性体1cはS2側に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付ける。弾性体1cはまた、端部1eにより可動接点3aのS1側を押圧して可動接点3aを反時計回りに付勢して、接点3を開状態に維持する。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作可能な状態である。
【0065】
第三実施形態のスイッチ装置によれば、弾性体1cが可動接点3aを直接付勢するため、副スイッチ5を無くすことにより、部品点数を削減できるという副次的な効果が奏される。但し、第一実施形態や第二実施形態のスイッチ装置と比べ、副スイッチ5や制御部材6が無い分、主スイッチ1の回転動作に対する接点3の開閉動作の遅延時間が短縮されるため、弾性体1cの剛性、長さ、屈曲度合い等を調整することにより主スイッチ1の回転に対する接点3の開閉動作の遅延時間を調整するとよい。
【0066】
図11は第四実施形態のスイッチ装置の概略図である。ここでは、第一実施形態のスイッチ装置と同一又は類似の構成及び動作については説明を省略することに留意されたい。第四実施形態のスイッチ装置はスライドスイッチである点で、第一実施形態のスイッチ装置とは異なる。本実施形態では、操作部材4を押ボタンからスライドボタンに変更している。逆に、操作部材4をスライドボタンから押ボタンに変更してもよい。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作(本実施形態ではスライド)可能であるため、スライドボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。これによりスイッチ装置は、押ボタンスイッチからスライドスイッチへ、又はスライドスイッチから押ボタンスイッチへ変更できるだけでなく、操作部材4を無くしたロッカースイッチへ変更できる。つまり、スイッチ装置は、種々の形態のスイッチ装置として構成できる。
【0067】
また本実施形態では、スイッチ装置が操作されていないときは操作部材4の操作部4cと主スイッチ1の被操作部1bとの間には隙間が形成されない。つまり、スイッチ装置が操作されていないときは、操作部4cと被操作部1bが常に接触している。スイッチ装置が操作されていないときに操作部4cと被操作部1bが接触していることにより、スイッチ操作を開始するときに、操作者が操作部材4から触覚フィードバックを得ることができる。
【0068】
図11に示す状態(7)では、操作部材4がスライドされていない。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付け、副スイッチ5を支持部材2の第二側S1に位置付ける。主スイッチ1の軸1aは支持部材2の長円形の軸受2eの中でS2側に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5が接点3を閉位置に維持している。つまり、主スイッチ1はオン位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作可能な状態である。
【0069】
図11に示す状態(9)では、操作部材4が所定位置までスライドされる。操作部材4が所定位置までスライドされると、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に回転することにより、主スイッチ1の弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て、反対側であるS2方向に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。副スイッチ5は、軸線J2回りで時計回りの回転方向D3へ回転して、接点3を瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転動作よりも遅延して動作する。従って、操作部材4が十分にスライドされるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分にスライドされたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0070】
図11に示す状態(11)では、操作部材4がさらにスライドされる。弾性体1cはS2側に屈曲した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0071】
図11に示す状態(12)では、操作部材4が完全にスライドされる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付け、副スイッチ5を支持部材2の第一側S1に位置付ける。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が支持部材2に係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。つまり、主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド操作可能な状態になる。
【0072】
第四実施形態のスイッチ装置によれば、主スイッチ1が弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を摺動して往復運動することにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド操作可能な状態になる。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作することにより、スライドボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能である。これによりスイッチ装置は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、スライドスイッチとしても構成できる。また、操作部材4を押ボタン等の他のボタンに変更するだけで、後述の押ボタンスイッチ等の他の形態のスイッチ装置としても構成できる。つまり、スイッチ装置は、種々の形態のスイッチ装置として構成できる。また、スイッチ装置が操作されていないときに操作部4cと被操作部1bが接触していることにより、スイッチ操作を開始するときに操作者が操作部材4から触覚フィードバックを得ることができる。
【0073】
図12は第五実施形態のスイッチ装置の概略図である。ここでは、第四実施形態のスイッチ装置と同一又は類似の構成及び動作については説明を省略することに留意されたい。第五実施形態のスイッチ装置では、主スイッチ1が回転せず、支持部材2に対して摺動(本実施形態では直線移動)、つまりスライドのみを行う点で、第四実施形態のスイッチ装置とは異なる。また本実施形態では、スイッチ装置が操作されていないときは、操作部4cと主スイッチ1の被操作部1bとの間には隙間が形成される。つまり、スイッチ装置が操作されていないときは、操作部4cと被操作部1bが接触しない。
【0074】
図12に示す状態(7)では、操作部材4がスライドされていない。弾性体1cはS1側に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付け、副スイッチ5を支持部材2の第二側S1に位置付ける。主スイッチ1の軸1aは支持部材2の長円形の軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が軸受2eに係止している。また、副スイッチ5が接点3を閉位置に維持している。つまり主スイッチ1はオン位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド操作可能な状態である。
【0075】
図12に示す状態(9)では、操作部材4が所定位置までスライドされる。操作部材4が所定位置までスライドされると、主スイッチ1が摺動方向D1に摺動することにより、主スイッチ1の弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS2方向に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。副スイッチ5は、軸線J2回りで時計回りの回転方向D3に回転して、接点3を瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の摺動動作よりも遅延して動作する。従って、操作部材4が十分にスライドされるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分にスライドされたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0076】
図12に示す状態(11)では、操作部材4がさらにスライドされる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向に付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0077】
図12に示す状態(12)では、操作部材4が完全にスライドされる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付け、副スイッチ5を時計回りに付勢する。軸1aは軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が軸受2eに係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。つまり主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド可能な状態になる。
【0078】
第五実施形態のスイッチ装置によれば、主スイッチ1が回転せず、支持部材2に対して直線移動のみを行うため、主スイッチ1の可動範囲が制限され、支持部材2を薄型化できるという副次的な効果が奏される。
【0079】
図13は第六実施形態のスイッチ装置の概略図である。ここでは、第四実施形態のスイッチ装置と同一又は類似の構成及び動作については説明を省略することに留意されたい。第六実施形態のスイッチ装置では、主スイッチ1の摺動方向D1が接点3の開閉方向D0と同じ方向である。また本実施形態では、副スイッチ5が弾性体5bを備えていない。さらに本実施形態では、可動接点3aが支点を中心にシーソ運動するのではなく、接点3の開閉方向D0へ直線運動する。
【0080】
図13に示す状態(7)では、操作部材4がスライドされていない。弾性体1cはS1方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第二側S2に位置付け、副スイッチ5反時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸1aは支持部材2の長円形の軸受2eの中で第二側S2に位置付けられ、主スイッチ1が軸受2eに係止している。また、副スイッチ5が接点3を閉位置に維持している。つまり主スイッチ1はオン位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第二側S2に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド可能な状態である。
【0081】
図13に示す状態(9)では、操作部材4が所定位置までスライドされる。操作部材4が所定位置までスライドされると、主スイッチ1が軸線J1回りで反時計回りの回転方向D2に回転することにより、弾性体1cが真っ直ぐに圧縮した状態を経て反対側であるS2側に瞬時に屈曲する。弾性体1cは、主スイッチ1をS1側且つ反時計回りに付勢し、副スイッチ5を時計回りに付勢する。副スイッチ5は軸線J2回りでD3方向に回転して接点3を瞬時に開く。弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは副スイッチ5が回転しないため、副スイッチ5は主スイッチ1の回転動作よりも遅延して動作する。従って、操作部材4が十分にスライドされるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分にスライドされたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。
【0082】
図13に示す状態(11)では、操作部材4がさらにスライドされる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であり、弾性体1cは主スイッチ1をS1方向且つ反時計回りに付勢するため、主スイッチ1の軸1aが軸受2eの中で摺動し、主スイッチ1は摺動方向D1に支持部材2上を摺動する。また、弾性体1cは副スイッチ5を時計回りに付勢するため、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。
【0083】
図13に示す状態(12)では、操作部材4が完全にスライドされる。弾性体1cはS2方向に屈曲した状態であるため、弾性体1cは、主スイッチ1を支持部材2の第一側S1に位置付け、副スイッチ5を時計回りに付勢する。主スイッチ1の軸1aは軸受2eの中で第一側S1に位置付けられ、主スイッチ1が軸受2eに係止している。また、副スイッチ5は接点3を開位置に維持する。つまり主スイッチ1はオフ位置にある。主スイッチ1が支持部材2の第一側S1に位置付けられることにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部4cの近傍に配置されて操作部4cによりスライド可能な状態になる。
【0084】
第六実施形態のスイッチ装置によれば、主スイッチ1の摺動方向D1を接点3の開閉方向D0と同じ方向になるようにスイッチ装置を構成できる。また、副スイッチ5の弾性体5bを無くすことにより、部品点数を削減できるという副次的な効果が奏される。
【0085】
図14は比較例のスイッチ装置の概略図である。比較例のスイッチ装置は、例えば交流用スイッチ装置であり、開閉可能な接点42と、接点42を開状態又は閉状態に維持するスイッチ43と、を備えている。スイッチ43は、真っ直ぐな状態で配設された弾性体を備えている。斯かる交流用スイッチ装置を直流高電圧で使用する場合、スイッチ43のオフ位置において十分な接点間距離Dを確保できればアークの影響を抑制できるが、接点間距離が短いと接点間にアークが発生し続ける恐れがある。また、ゆっくりスイッチ43を操作したり、スイッチ43を中立状態で止めたりすると、十分な接点間距離Dが得られず、アークが発生し続ける可能性がある。
【0086】
対照的に、前述の実施形態のスイッチ装置によれば、弾性体1cの屈曲方向が変化するまでは接点3が開かない。従って、操作部材4が十分に押下されるまでは接点3が開かず、操作部材4が十分に押下されたら接点3が瞬時に開くため、操作部材4をゆっくり操作したり又は操作部材4を途中で止めたりしても、接点3はアークを切断不可能な接点間距離に維持されず、且つアークを切断可能な接点間距離に素早く到達できる。また、主スイッチ1が弾性体1cの復元力により摺動方向D1に支持部材2上を摺動して往復運動することにより、主スイッチ1の二つの被操作部1bのうちの一つが操作部材4の操作部4cの近傍に配置されて操作部4cにより操作可能な状態になる。一つの操作部4cで二つの被操作部1bを交互に操作することにより、押ボタンやスライドボタンである操作部材4で主スイッチ1をオン位置又はオフ位置に切替え可能になる。つまりスイッチ装置は、操作部材4を無くしたロッカースイッチとして構成できるだけではなく、種々の形態のスイッチ装置として構成できる。ひいては、直流電圧に対応可能であって且つ種々の形態のスイッチに適用可能なスイッチ装置を提供できる。
【0087】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0088】
1 主スイッチ; 1a 軸; 1b 被操作部; 1c 弾性体; 1d 軸受; 2 支持部材; 2e 軸受; 2j 軸; 3 接点; 4 操作部材; 4c 操作部; 5 副スイッチ; 5b 弾性体; 5c 端部; 5d 軸; 5e 被操作部; 6 制御部材; 6b 制御部; 10 スイッチ装置; D0 開閉方向; D1 摺動方向; D2、D3 回転方向; D4 揺動方向; J1~J3 軸線; S 隙間; S1 第一側; S2 第二側