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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042039
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】眼精疲労回復剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/455 20060101AFI20230317BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230317BHJP
   A23L 33/15 20160101ALN20230317BHJP
【FI】
A61K31/455
A61K31/27
A61P43/00 121
A61P27/02
A61P3/00
A23L33/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149106
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 あさぎ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD23
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZC21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA24
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA05
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】ニコチン酸アミドを経口剤として用いた場合の眼に対する効果を明らかにし、眼の内側から眼精疲労に効果的な製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】ニコチン酸アミドを有効量含有する、目のピント調節機能低下を原因とする経口用眼精疲労回復剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミドを有効量含有する、目のピント調節機能低下を原因とする経口用眼精疲労回復剤。
【請求項2】
VDT作業後の眼精疲労に用いられる、請求項1に記載の眼精疲労回復剤。
【請求項3】
ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤であって、少なくともネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と組み合わせて経口摂取されるための眼精疲労回復剤。
【請求項4】
前記経口用眼精疲労回復剤と、前記点眼剤とを、同日に適用することを特徴とする、請求項3に記載の眼精疲労回復剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼精疲労回復剤に関する。より詳細には、本発明はニコチン酸アミドを含有する眼精疲労回復剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチン酸アミドは、ビタミン類の1つであり、主にスキンケア領域において、血行促進、抗炎症、セラミド合成促進等の成分として使用されている。体内での種々の酸化還元反応を起こす補酵素として働き、ニコチン酸アミドが欠乏すると、皮膚炎、胃腸・神経障害等のペラグラを生じる。内服剤においては、ニコチン酸アミドは肉体疲労時の滋養強壮を目的とした栄養補給ドリンク剤等で用いられている。
【0003】
例えば、例えば、特許文献1では、ニコチン酸アミド及び大豆タンパク分解物を有効成分として含有するコラーゲン産生促進剤が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、生薬成分と、ニコチン酸アミド等のビタミン類と、アミノ酸類を含有する疲労改善内服剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-107376号公報
【特許文献2】特開2012-207026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スキンケア領域や栄養補給飲料の領域におけるニコチン酸アミドの有効性は上記のように種々の報告がなされているが、眼科領域において、ニコチン酸アミドが直接的にどのような作用効果を奏するのかは十分に報告されていない。
【0007】
特にニコチン酸アミドを経口摂取した場合に、点眼剤のように眼の外側から作用する場合とは異なり、眼の内側から作用する場合の機序や効果は知られておらず、経口剤としての効果の研究や開発が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、ニコチン酸アミドを含有する経口剤としての効果を明らかにし、眼精疲労を眼の内側から改善するための製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討した結果、ニコチン酸アミドを経口摂取した場合は、目のピント調節機能の低下に対して効果を奏し、眼精疲労の改善に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる製剤を提供する。
[1]
ニコチン酸アミドを有効量含有する、目のピント調節機能低下を原因とする経口用眼精疲労回復剤。
【0011】
[2]
VDT作業後の眼精疲労に用いられる、[1]に記載の眼精疲労回復剤。
【0012】
ニコチン酸アミドを含有する眼精疲労の改善に有用である経口剤と、点眼剤とを併用した場合の効果は全く知られていない。本発明者らは、後述の実施例に示すように、特定の成分を含有する点眼剤と組み合わせて、本発明の経口剤を用いた場合に、眼精疲労の改善効果が更に高まることを見出した。よって、本発明は、下記に掲げる製剤を提供する。
【0013】
[3]
ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤であって、少なくともネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と組み合わせて経口摂取されるための眼精疲労回復剤。
【0014】
[4]
前記経口用眼精疲労回復剤と、前記点眼剤とを、同日に適用することを特徴とする、[3]に記載の眼精疲労回復剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ニコチン酸アミドを含有する経口剤を用いることにより、ピント調節機能の低下に対して効果を奏し、眼の内側から眼精疲労の改善に有用である製剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[経口用眼精疲労回復剤]
本発明において、経口用眼精疲労回復剤は、ニコチン酸アミドを有効量含有する。
【0017】
ニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミド化合物であり、水溶性ビタミンである。ニコチン酸は、天然物からの抽出物であっても良いし、公知の方法によって合成した物でも良い。具体的には、第17改正日本薬局方に収載されているものを用いることが出来る。血行促進作用や、肌荒れ改善作用の他、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。
【0018】
ニコチン酸アミドの含有量は、他の成分の種類や含有量や剤形等によって適宜設定され限定されないが、例えば、固形製剤の場合、製剤全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.7質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、ニコチン酸アミドの含有量は、例えば、製剤全量に対して、95質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が特に好ましい。また、ニコチン酸アミドの含有量は、例えば、製剤全量に対して、0.1質量%~95質量%が好ましく、0.3質量%~70質量%がより好ましく、0.7質量%~30質量%が更に好ましい。
【0019】
ニコチン酸アミドの含有量は、他の成分の種類や含有量や剤形等によって適宜設定され限定されないが、例えば、液体製剤の場合、製剤全量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。また、ニコチン酸アミドの含有量は、例えば、製剤全量に対して、1.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。また、ニコチン酸アミドの含有量は、例えば、製剤全量に対して、0.001質量%~1.5質量%が好ましく、0.005質量%~1.0質量%がより好ましく、0.01質量%~0.3質量%が更に好ましく、0.02質量%~0.2質量%が特に好ましい。
【0020】
ニコチン酸アミドの1日量は、他の成分の種類や含有量等によって適宜設定され限定されないが、例えば、1mg/日以上が好ましく、5mg/日以上がより好ましく、12mg/日以上が更に好ましい。また、ニコチン酸アミドの1日量は、例えば、400mg/日以下が好ましく、200mg/日以下がより好ましく、100mg/日以下がさらに好ましい。
【0021】
経口用眼精疲労回復剤としては、ニコチン酸アミド以外の成分を含有することができる。限定はされないが、例えば、ビタミンB12及びその誘導体並びにそれらの塩(例えばシアノコバラミン)、フルスルチアミン及びその誘導体並びにそれらの塩(例えばフルスルチアミン塩酸塩)、ビタミンB6及びその誘導体並びにそれらの塩(例えばピリドキシン塩酸塩)、エステル類(例えば、γ-オリザノール)、ビタミンE及びその誘導体並びにそれらの塩(例えばトコフェロールコハク酸エステルカルシウム)、パントテン酸及びその誘導体並びにそれらの塩(例えばパントテン酸カルシウム)などが挙げられる。
【0022】
[用途]
本発明は、眼精疲労の回復に効果的に用いられる。本明細書において、眼精疲労とは、眼痛、目のかすみ、まぶしさ、充血等の目の症状や、頭痛、肩こり等の全身症状を生じる状態をいう。このように、目の症状が続き、体の症状まで生じる点から、単なる疲れ目とは区別される。
【0023】
後述の実施例に示すように、本発明は、ニコチン酸アミドを経口剤として摂取することにより、目のピント調節機能の低下に対して目の内側から効果を奏することが見出されている。詳細なメカニズムは不明であるが、摂取されたニコチン酸アミドが、毛様体筋や眼周囲筋、眼周囲の神経である動眼神経等に作用し、ピント調節機能等を改善することにより眼精疲労を改善させているものと推測される。別の実施形態において、本発明は、ニコチン酸アミドを有効量含有する、ピント調節機能改善剤としても用いることが可能である。
【0024】
近年では、パソコンだけでなく、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の利用が急増しており、仕事や学業、ゲーム等の娯楽において、多くの時間に近業作業を行っている状況である。これらの近業作業・VDT(Visual Display Terminal)作業を持続すると、ピント調節運動に関わる目の奥の末梢神経や筋肉を酷使した状態になり、近見視力といったピント調節の力が低下し、眼精疲労におちいる。具体的には、眼の奥の辛さや痛み(眼痛)、慢性的な目の疲れ、かすみ等の症状が現れる。よって、本発明は、近業作業やVDT作業の前後や、作業中に用いることが好ましい。
【0025】
限定はされないが、本発明は、例えば、近業作業やVDT作業を1日1~17時間、3~15時間、5~12時間行う者に対して用いられることが好ましい。
【0026】
ピント調節に関わる末梢神経としては、動眼神経、外転神経等がある。近業作業やVDT作業により、これらの神経を酷使することで、ピント調節力が低下し、目の奥の辛さや痛み(眼痛)、かすみとして感じられることがある。詳細なメカニズムは不明であるが、摂取されたニコチン酸アミドが、眼の内側からこれらの末梢神経に作用し、ピント調節力を向上させ、それらの症状を改善させているものと推測される。
【0027】
眼周囲筋(眼筋)には、例えば、眼輪筋、上直筋、外側直筋、内側直筋、下直筋、上斜筋、下斜筋等がある。眼周囲筋の緊張が続くことにより、目の奥の辛さや痛み(眼痛)として感じられることがある。詳細なメカニズムは不明であるが、摂取されたニコチン酸アミドが、このような眼周囲筋の持続する緊張を緩和し、目の奥の辛さや痛み(眼痛)を改善させているものと推測される。よって、本発明は、ニコチン酸アミドを有効量含有する、眼周囲筋の緊張緩和剤、又は、目の奥の痛み(眼痛)の改善剤としても用いることが可能である。
【0028】
眼周囲筋は、近業作業やVDT(Visual Display Terminal)作業により、緊張状態が持続しやすい。近年では、パソコンだけでなく、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の利用が急増しており、仕事や学業、ゲーム等の娯楽において、多くの時間に近業作業を行っている状況である。この様な状況では、眼周囲筋の緊張が気付かないうちに持続・悪化し、単なる一時的な目の疲れを超えて、眼精疲労にまで至ってから自覚することも起こり得る。よって、本発明は、近業作業やVDT作業の前後や、作業中に用いることが好ましい。限定はされないが、本発明は、例えば、近業作業やVDT作業を1日1~17時間、3~15時間、5~12時間行う者に対して用いられることが好ましい。
【0029】
別の実施形態において、後述の実施例に示すように、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と組み合わせて、本発明の経口剤を用いた場合に、眼精疲労の改善効果が更に高まることを見出されている。限定はされないが、ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤は、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤の利用と組み合わせて(併用して)用いることが効果的であり得る。
【0030】
ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤としては、例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩を、0.00005~0.1w/v%含有するものが好ましく、0.0001~0.05w/v%含有するものがより好ましく、0.0005~0.01w/v%含有するものが更に好ましく、0.001~0.005w/v%含有するものが更により好ましい。
【0031】
具体的なネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤の投与方法としては、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~2滴、1~3滴、又は2~3滴を1日3~4、5~6回、3~6又は4回点眼して用いる方法を例示できる。
【0032】
このような併用は、ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤を、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と併用することを明記することに限らず、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤との併用を促すような態様も含まれる。併用を促す態様とは、例えば、販促資料等において、ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤を、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と近接して記載することや、併記して記載すること等が挙げられる。また、例えば、販売店において、ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤を、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と近接して設置し、販売すること等が挙げられる。
【0033】
本発明の製剤は、限定はされないが、医薬品、医薬部外品、又は、飲食品として調製、加工することが可能である。
【0034】
[剤形]
医薬品、医薬部外品、又は、飲食品では、具体的には、固形製剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠など)や液剤(ドリンク剤、シロップ剤、懸濁剤)、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0035】
例えば、錠剤であれば、粉末状の活性成分と製薬上許容される担体成分(賦形剤など)とを混合して圧縮成形することにより調製でき、キャンディー(飴)などの製菓錠剤は型に注入する方法で調製してもよい。錠剤には、糖衣コーティングを施し、糖衣錠としてもよい。さらに、錠剤は単層錠であってもよく、二層錠などの積層錠であってもよい。
【0036】
顆粒剤などの粉粒剤は、種々の造粒法(押出造粒法、粉砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、高速攪拌造粒法など)により調製してもよく、錠剤は、上記造粒法、打錠法(湿式打錠法、直接打錠法)などを適当に組み合わせて調製できる。
【0037】
カプセル剤は、慣用の方法により、カプセル(軟質又は硬質カプセル)内に粉粒剤(粉剤、顆粒剤など)を充填することにより調製できる。
【0038】
液剤は、各成分を担体成分である水性媒体(精製水、エタノール含有精製水など)に溶解又は分散させ、必要により濾過又は滅菌処理し、所定の容器に充填し、滅菌処理することにより調製できる。
【0039】
本発明は、経口剤として、固形製剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠など)や、液剤(ドリンク剤、シロップ剤、懸濁剤など)等を用いることが可能である。
【0040】
本発明の製剤は、剤形等のより、公知の方法により服用し易く用いられる。例えば錠剤であれば、1回の服用を1~6錠、1~4錠、1~3錠、又は1~2錠に分けて服用してもよい。また、カプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0041】
本発明の製剤は、1日1回~数回に分け、通常、1日1~6回、1日1~3回、1日1~2回又は任意の期間及び間隔で摂取若しくは投与され得る。限定はされないが、服用のし易さの観点から、1日1~2回の服用が好ましく、1日1回の服用がより好ましい。
【0042】
限定はされないが、販売店において、ニコチン酸アミドを有効量含有する経口用眼精疲労回復剤を、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤と近接して設置し、販売することの観点から、例えば、60日分以内の分量で製品化されることが好ましく、40日分以内の分量で製品化されることがより好ましい。
【実施例0043】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[試験例1.ニコチン酸アミドの内服による眼精疲労改善効果の評価試験]
被験者5名に対し、試験初日の午前中に、近見(近点)視力検査を実施した。近見視力検査は、公知の検査表を用いて行うことができる。
【0045】
具体的には、近見視力検査は、ひらがな万国式近点検査表(株式会社半田屋商店)を用い、同検査表の説明書きに従って実施した。すなわち、検査表を被験者の眼の前から30cmに配置し、記載された文字を左行から右行に順次読ませた。最後に辛うじて読むことができた行の下段の(V)の値を被験者の近見視力とした。
【0046】
上述のように、近見視力に問題が生じるとピント調節の力が低下し、眼精疲労におちいる。具体的には、眼の奥の辛さや痛み(眼痛)、慢性的な目の疲れ、かすみ等の症状が現れる。
【0047】
試験初日の午前中に、近見視力検査を行った後、各被験者は、PCなどVDT作業を5時間以上実施し、検査から約8時間後(試験初日の夜)に再度同検査を実施した。
【0048】
再度の検査の翌日から、被験者は、1日100mgのニコチン酸アミド(SOURCE NATURALS)を毎日服用した。全ての被験者は、日中は5時間以上VDT作業を行った。服用開始から1週間後の午前中に再度近見視力検査を実施し、VDT作業を5時間以上実施し、検査から約8時間後(試験最終日の夜)に再度同検査を実施した。試験初日の午前中の検査、及び、8時間後の再検査結果を表1に示す。試験最終日の午前中の検査、及び、8時間後の再検査結果を表2に示す。午前中の検査結果と、再検査結果とを比較した近見視力の下がり値を「朝→夜の下がり値」として示した。「見えやすさ」は、対象物を視認する早さを示している。また、表3では、試験初日の夜の再検査結果と、試験最終日の夜の再検査結果とを並べて比較した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表1に示す通り、試験初日では、朝の検査結果と比較して、5時間以上のVDT作業を行った後の再検査結果では、近見視力の低下が認められた。このように、日々のVDT作業等でピント調節運動に関わる目の奥の末梢神経や筋肉を酷使した状態が続くと、ピント調節の力が低下し、眼精疲労に繋がってしまう。
【0053】
これに対して、表2に示す通り、1週間の間、1日100mgのニコチン酸アミドを服用することで、5時間以上のVDT作業を行った後であっても、近見視力の低下を抑制することが可能となった。
【0054】
総合すると、表3に示す通り、服用前のVDT作業後の夜の近点視力に対して、1週間1日100mgのニコチン酸アミドを服用した後では近見視力の改善が認められた。
【0055】
[試験例2.ニコチン酸アミドの内服と、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤との併用による眼精疲労改善効果の評価試験]
被験者4名に対し、試験初日の午前中に、近見(近点)視力検査を実施した。近見視力検査の方法は、試験例1と同様である。
【0056】
試験初日の午前中に、近見視力検査を行った後、各被験者は、PCなどVDT作業を5時間以上実施し、検査から約8時間後(試験初日の夜)に再度同検査を実施した。
【0057】
再度の検査の翌日から、被験者は、1日100mgのニコチン酸アミド(SOURCE NATURALS)を毎日服用し、加えて、0.005%のネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤を1回1~2滴、1日5~6回点眼した。全ての被験者は、日中は5時間以上VDT作業を行った。服用と点眼開始から1週間後の午前中に再度近見視力検査を実施し、VDT作業を5時間以上実施し、検査から約8時間後(試験最終日の夜)に再度同検査を実施した。試験初日の午前中の検査、及び、8時間後の再検査結果を表4に示す。試験最終日の午前中の検査、及び、8時間後の再検査結果を表5に示す。また、表6では、試験初日の夜の再検査結果と、試験最終日の夜の再検査結果とを並べて比較した。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
表4に示す通り、試験初日では、朝の検査結果と比較して、5時間以上のVDT作業を行った後の再検査結果では、近見視力の低下が認められた。この結果は、試験例1の試験初日の結果と同様の傾向であった。
【0062】
これに対して、表5に示す通り、1週間の間、1日100mgのニコチン酸アミドを服用し、更に0.005%のネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤を1回1~2滴、1日5~6回点眼することで、5時間以上のVDT作業を行った後であっても、近見視力の低下を抑制することが可能となった。近見視力の低下抑制効果は、ニコチン酸アミドの経口投与だけでも認められたが、ネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤を併用することにより、更に顕著に近見視力の低下抑制効果が認められた。
【0063】
総合すると、表6に示す通り、服用前のVDT作業後の夜の近点視力に対して、1週間1日100mgのニコチン酸アミドを服用しさらに0.005%のネオスチグミンメチル硫酸塩を含有する点眼剤を点眼した後では近見視力の改善が認められた。