(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042041
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】圧電モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/21 20160101AFI20230317BHJP
H02N 2/12 20060101ALI20230317BHJP
H02N 2/16 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H02K11/21
H02N2/12
H02N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149110
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】518287320
【氏名又は名称】株式会社Piezo Sonic
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】多田 興平
【テーマコード(参考)】
5H611
5H681
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611PP07
5H611QQ01
5H611QQ03
5H611RR00
5H611RR01
5H611UA08
5H611UB01
5H681BB03
5H681BB16
5H681CC02
5H681CC07
5H681DD15
5H681DD35
5H681DD53
5H681DD55
5H681DD57
5H681DD65
5H681DD66
5H681DD75
5H681EE03
5H681EE22
5H681EE23
5H681FF02
5H681FF04
5H681FF08
5H681FF09
5H681GG22
5H681GG23
5H681GG24
5H681GG27
(57)【要約】
【課題】圧電モータに、別の部材又は別の装置を取り付ける。
【解決手段】圧電モータ100は、弾性体113と、弾性体に貼り付けられた圧電素子112及び摺動材114とを有しているステータ111と、摺動材と当接する基体部分122と、皿バネ部分123とを有するロータ121と、ロータと共に回転するシャフト135とを備え、シャフトの端部には、接続部材160と接続される部材接続部137が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と、皿バネ部分とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記シャフトの端部には、接続部材と接続される部材接続部が形成されている、圧電モータ。
【請求項2】
前記部材接続部に接続されている前記接続部材をさらに備える、請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項3】
前記接続部材は、前記シャフトの回転軸と同軸であり、且つ前記シャフトの前記端部から突出していると共に、前記シャフトとエンコーダとを接続する、請求項1又は2に記載の圧電モータ。
【請求項4】
前記接続部材は、前記シャフトの回転軸と同軸であり、且つ前記シャフトの前記端部から突出していると共に、前記シャフトと他の圧電モータとを接続する、請求項1又は2に記載の圧電モータ。
【請求項5】
前記接続部材は、前記部材接続部に接続される第1の接続部と、前記他の圧電モータが備えるシャフトに接続される第2の接続部とを有している、請求項4に記載の圧電モータ。
【請求項6】
前記接続部材は、前記他の圧電モータが備えるシャフトである、請求項4に記載の圧電モータ。
【請求項7】
前記接続部材は、接続部を有しており、
前記部材接続部は、前記接続部が挿入される穴である、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【請求項8】
他のステータ及び他のロータをさらに備えている、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部材を接続可能な圧電モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子を利用して駆動力を生じさせる圧電モータ(例えば、超音波モータ)が記載されている。この圧電モータは、ベースに固定されたステータと、ステータに対向するロータとを備えている。そして、ステータは、弾性体と、弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有している。また、ロータは、環状部材を備えている。そして、環状部材は、摺動材と当接する基体部分と、基体部分と一体的に形成されている皿バネ部分とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
圧電モータのステータの圧電素子に高周波電圧が印可されると、圧電素子の伸縮によって弾性体にたわみ振動が生じ、円周方向に進行波が発生する。ロータは、摺動材を介して弾性体と接触しているので、進行波が発生すると進行波とは反対の方向に回転する。この回転に伴い、シャフトがロータと同じ方向に回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電モータのシャフトには、圧電モータとは別の部材又は別の装置の取り付けが望まれる場合がある。例えば、取り付けが望まれる別の部材又は別の装置は、エンコーダ等の検出装置、又は他の圧電モータ等である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての圧電モータは、弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、前記摺動材と当接する基体部分と、皿バネ部分とを有するロータと、前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、前記シャフトの端部には、接続部材と接続される部材接続部が形成されている。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る圧電モータの概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧電モータの概略断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る接続構造の概略的な分割斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る圧電モータの概略斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る圧電モータの概略断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る圧電モータの概略斜視図である。
【
図7】第3実施形態に係る圧電モータの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[第1実施形態]
図1から
図3を用いて第1実施形態の圧電モータ100について説明する。
図1は、第1実施形態の圧電モータ100の斜視図であり、ケース134側から見た外観を示している。また、
図2は、シャフト135の長手方向に沿った概略断面図であり、シャフト135の回転軸を通る断面を示している。そして、
図3は、エンコーダENとの接続構造の概略的な分割斜視図である。
【0011】
図1に示すように、圧電モータ100は、ベース141と、ベース141にねじ止めされているケース134を備えている。さらに、圧電モータ100は、ベース141を貫通してベース141から突出するシャフト135を備えている。また、略板状のベース141の側面には、外部と接続するためのコネクタ144が、端子支持板を介して取り付けられている。さらに、圧電モータ100には、検出装置の一例として、圧電モータ100のシャフト135の回転数及び回転の有無等を検出するエンコーダENが取り付けられている。なお、検出装置の他の例としては、シャフト135の回転速度及び回転位置等を検出するタコジェネレータがある。
【0012】
続いて
図2に示すように、圧電モータ100は、シャフト135の回転軸を中心に略回転対称の構成を備えている。この圧電モータ100は、ベース141に固定されたステータ111と、ステータ111に対向するロータ121とを備えている。そして、ステータ111及びロータ121は、ケース134内の略円柱状のスペースに格納されている。このステータ111は、弾性体113と、弾性体113に貼り付けられた圧電素子112及び摺動材114とを有している。
【0013】
また、ロータ121は、摺動材114と当接する基体部分122と、当該基体部分122と一体的に形成されている皿バネ部分123とを有している。そして、基体部分122と皿バネ部分123とは、環状部材120を構成している。また、シャフト135は、それぞれ略リング状のステータ111及びロータ121を貫通している。そして、ステータ111とロータ121はシャフト135の回転軸と同軸であり、シャフト135はロータ121と共に回転する。
【0014】
また、圧電モータ100は、圧電素子112と電気的に接続されているフレキシブル基板115を備えている。このフレキシブル基板115は、コネクタ144と電気的に接続されている。そして、圧電素子112には、コネクタ144及びフレキシブル基板115を介して、外部電源から高周波電圧が印可される。高周波電圧が印可されると、圧電素子112の伸縮によって弾性体113にたわみ振動が生じ、円周方向に進行波が発生する。この進行波の各頂点において、ロータ121は、摺動材114を介して弾性体113と接触している。そして、各頂点は楕円運動しており、当該楕円運動の軌跡は、進行波の進む方向とは逆方向である。そのため、ロータ121は、進行波とは反対の方向に回転する。
【0015】
ベース141からロータ121に向かって、ピエゾ素子等の圧電素子112と、圧電素子112が貼り付けられた弾性体113と、弾性体113に貼り付けられた摺動材114とが、この順に配置されている。この摺動材114は、基体部分122を強く押し付けても変形を抑制できるように構成してもよい。一例として、摺動材114は、強化繊維を含む架橋フッ素樹脂により形成できる。
【0016】
例えば、摺動材114のフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、又はFEPを用いることができ、2種以上のフッ素樹脂を用いることもできる。また強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、PTFE繊維、又はボロン繊維を用いることができる。強化繊維を含む架橋フッ素樹脂を用いることによって、ロータ121の基体部分122が摺動材114に押し付けられた際に、強化繊維が摺動材114の変形を抑制する。これにより、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力(両者の間の摩擦力)をより強くして、圧電モータ100を高トルク化することができる。
【0017】
また、摺動材114は、略円形の外形を有し、架橋フッ素樹脂(強化繊維を含む架橋フッ素樹脂を含む)によって形成できる。一例として、架橋フッ素樹脂は、JISK7218A法(リング対ディスク)に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、1×10-6mm3/N・M未満である。また、弾性体113は、複数の櫛歯を備えている。そして、当該櫛歯同士の間には、弾性体113の中心から弾性体113の外周に向かって放射状に延在する矩形状の溝が形成されている。また、一例としての弾性体113は、鉄、鋼、ジュラルミン、銅合金及びチタン合金等の金属によって形成できる。
【0018】
シャフト135は、ロータ121の回転に伴い、ロータ121と同じ方向に回転する。また、ベース141にはシャフト135が貫通する穴が形成されており、この穴にはベアリング138が取り付けられている。代替的に、ベアリング138に代えて、例えばフッ素樹脂製のブッシュを用いてもよい。さらに、ケース134にもシャフト135が貫通する穴が形成されており、この穴に対応する位置にもベアリング138が取り付けられている。
【0019】
ステータ111は、複数のステータねじによってベース141に固定されている。具体的に、弾性体113のシャフト135側の縁部は、ねじ穴を有している。また、ベース141は、弾性体113のねじ穴に対応するねじ穴を有している。そして、ステータねじが両ねじ穴と螺合することにより、ステータ111がベース141に固定されている。
【0020】
ロータ121は、皿バネ部分123が固定される固定部の一例として、シャフト135に固定されるスタビライザー125を有している。なお、
図2において、スタビライザー125は、斜線の塗り潰しによって表されている。環状部材120の中央には穴が形成されており、環状部材120とスタビライザー125とは別体である。そして、ロータ121は、複数のロータねじと、スタビライザー125とを介して、シャフト135のフランジ136に固定されている。そして、皿バネ部分123のシャフト135側に位置する内縁部は、ねじ穴を有している。また、スタビライザー125の外縁部は、当該ねじ穴に対応するねじ穴を有している。そして、ロータねじが両ねじ穴と螺合することにより、皿バネ部分123がスタビライザー125に固定されている。
【0021】
皿バネ部分123は、ロータ121をステータ111に対して付勢するためのスプリングとして機能する。これにより、基体部分122が、ステータ111の摺動材114に押し付けられている。すなわち、皿バネ部分123が基体部分122をステータ111に対して付勢することにより、ロータ121が摺動材114に密着する。皿バネ部分123がスプリングとして機能することにより、圧電モータ100のサイズを小さくすることができる。
【0022】
また、皿バネ部分123は、圧電モータ100の半径方向において、基体部分122とスタビライザー125との間に設けられている。換言すると、スタビライザー125は、皿バネ部分123よりもシャフト135に近い位置において、シャフト135に固定されている。具体的に、スタビライザー125の内縁部及びシャフト135のフランジ136には、それぞれ対応するねじ穴が形成されている。そして、ロータねじが両ねじ穴と螺合することにより、スタビライザー125がフランジ136に固定されている。
【0023】
このスタビライザー125は、皿バネ部分123の湾曲した薄肉部よりも厚く形成されている。すなわち、シャフト135の回転軸方向において、スタビライザー125は、皿バネ部分123の薄肉部よりも厚い。そして、スタビライザー125は、皿バネ部分123の振動が伝搬するように構成されている。これにより、皿バネ部分123の振動を抑制し、異音を低減できる。また、振動を抑制する結果、圧電モータ100の寿命をより長くできる。なお、スタビライザー125は厚いため、皿バネ部分123から振動が伝搬しても損傷する可能性は低い。また、スタビライザー125は、環状部材120よりも質量が大きくなるように形成してもよい。なお、スタビライザー125には、アルマイト処理、又はアニール処理を施してもよい。
【0024】
さらに、スタビライザー125によって、皿バネ部分123の内縁部から皿バネ部分123の外縁部までの距離をより短くできる。換言すると、ロータ121の半径方向における皿バネ部分123の長さをより短くできる。これにより、損傷しやすい薄肉部を短くできるため、皿バネ部分123が損傷する可能性を減少できる。その結果、圧電モータ100の寿命をより長くできる。また、より強い力でロータ121をステータ111に押し付けても損傷しないため、圧電モータ100を高トルク化することができる。さらに、高精度の加工を要する薄肉部を短くできるため、皿バネ部分123の製造コストを削減できる。また、皿バネ部分123の変形量を低く抑えて、圧電モータ100を高トルク化することができる。
【0025】
なお、皿バネ部分123は、ロータねじによって、スタビライザー125にねじ止めされている。そして、スタビライザー125は、ロータねじによって、シャフト135のフランジ136にねじ止めされている。そして、ねじ止めにより、皿バネ部分123をスタビライザー125に強固に固定できると共に、スタビライザー125をシャフト135に強固に固定できる。代替的に、皿バネ部分123の固定と、スタビライザー125の固定には、溶接等の他の固定方法を用いることもできる。
【0026】
スタビライザー125は、金属製であってもよい。一例として、スタビライザー125は、5000系アルミニウム合金(例えばA5052)によって形成できる。これにより、ケース134をベース141に取り付ける際に、スタビライザー125の変形量を低く抑えることができる。そのため、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力(両者の間の摩擦力)をより強くして、圧電モータ100を高トルク化することができる。さらに、両者の間の押し付け力がばらつくことも抑制できる。すなわち、ケース134を取り付ける際に、スタビライザー125は、ベース141(ステータ111)側に押し付けられる。これにより、ロータ121がステータ111に押し付けられるが、その際にスタビライザー125の大きな変形に起因して、押し付け力がばらつくことを抑制できる。なお、環状部材120は、一例として、7000系アルミニウム合金(例えばA7075)によって形成できる。
【0027】
また、スタビライザー125は、環状部材120よりも低剛性となるように(縦弾性係数が低くなるように)構成してもよい。これにより、スタビライザー125が振動を吸収することによって、皿バネ部分123の振動をより抑制できる。そのために、スタビライザー125は、シャフト135の回転軸を中心とする環状溝129を有している。この環状溝129は、断面略U字状の形状を有しており、環状溝129の底はスタビライザー125の他の部分よりも薄い。この環状溝129により、スタビライザー125の剛性をより低くできる。その結果、皿バネ部分123の振動をより抑制できる。このようにスタビライザー125を低剛性に構成することにより、ロータ121をステータ111に押し付ける際にスタビライザー125がわずかに変形する。その結果、ロータ121をステータ111に押し付ける力を均等に分散させることができる。なお、スタビライザー125は、環状部材120と同じ剛性、または環状部材120よりも高剛性となるように構成してもよい。ただし、低剛性となるように構成することにより、皿バネ部分123の振動をより抑制できる。
【0028】
なお、環状溝129の数は一つには限定されず、二つ以上の環状溝129が形成されていてもよい。また、環状溝129に代えて、格子状、放射状、又は同心円状に配列されるように複数の穴又は凹部を形成してもよい。さらに、多数の穴又は凹部を等間隔で形成してもよく、スタビライザー125内に多数の中空の空間又はリング状の空間を形成してもよい。さらに、振動を抑制する必要がない場合(例えば、異音を無視できる場合)、ロータ121は、スタビライザー125を備えていなくともよい。この場合、皿バネ部分123は、シャフト135まで延在し、フランジ136に直接固定される。
【0029】
また、略リング状のスタビライザー125の半径方向における幅は、同じく略リング状の皿バネ部分123の半径方向における幅よりも長い。これにより、皿バネ部分123の全周に渡って、スタビライザー125の質量を、皿バネ部分123の対応する部分よりも大きくできる。そのため、皿バネ部分123の全周に渡って、スタビライザー125の剛性を、皿バネ部分123よりも低くできる。ただし、一変形例として、スタビライザー125の形状はリング状には限定されず、多角形等の他の形状であってもよい。
【0030】
[接続構造]
圧電モータ100は、
図2及び
図3に示す接続部材160を備えている。そして、シャフト135の端部には、接続部材160と接続される部材接続部137が形成されている。すなわち、圧電モータ100は、部材接続部137に接続されている接続部材160を備えている。代替的に、接続部材160は、圧電モータ100に選択的に取り付け可能であってもよい。また、接続部材160には、エンコーダENが取り付けられている。なお、圧電モータ100がエンコーダENを備えていてもよく、圧電モータ100が圧電モータ100に選択的に取り付け可能であってもよい。
【0031】
接続部材160は、シャフト135の回転軸と同軸である。そして、シャフト135に取り付けられた接続部材160は、シャフト135の端部から突出している。すなわち、接続部材160は、シャフト135と共に回転するように、シャフト135に接続されている。具体的に、
図3に示すように、接続部材160は、略円筒状の大径部161と、接続部である小径部162とを有している。そして、シャフト135の部材接続部137は、略円筒状の小径部162が挿入される穴である。代替的に、接続部材160の一方の端部に形成されている接続部が、接続部材160の他方の端部より大きな外寸を有していてもよい。さらに、接続部は、接続部材160に接続できればよく、角柱状等の他の形状を有していてもよい。
【0032】
小径部162には、ねじ山が形成されており、部材接続部137には当該ねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。そして、小径部162は、部材接続部137に螺合されている。具体的に、圧電モータ100の他の部材を組み立てた後に、接続部材160の小径部162が部材接続部137にねじ込まれる。このとき、大径部161と小径部162との間の段差に、シャフト135の端面を突き当てる。これにより、シャフト135の回転軸に沿った方向において、接続部材160を正確な位置に取り付けることができる。そして、接続部材160の取り付け後、エンコーダENを接続部材160の大径部161に取り付ける。このように、圧電モータ100の他の部材を組み立てた後に、接続部材160を取り付けでき、且つ取り外すこともできる。そのため、接続部材160を交換して、圧電モータ100に他の種類の検出装置等を取り付けることもできる。
【0033】
部材接続部137の深さは、小径部162の長さよりも長い。また、接続部材160の小径部162と大径部161との間には、ねじ山又はねじ溝が形成されていない。そして、接続部材160が接続されると、小径部162と大径部161との間の段差に、シャフト135の端面が突き当たる。これにより、接続部材160の中心軸とシャフト135の回転軸とを一致させることができる。すなわち、接続部材160の中心軸が、シャフト135の回転軸に対して傾くことを防止できる。
【0034】
代替的に、部材接続部137がシャフト135の端面から突出する雄ねじ部であってもよい。この場合、接続部材160の接続部は、雄ねじ部が挿入される雌ねじ部となる。ただし、シャフト135に雌ねじ部が形成されることによって、シャフト135がケース134から突出することを防止できる。また、部材接続部137と接続部材160の接続部は、螺合に代えて又は螺合と共に、接着若しくは融着等の方法で接続されていてもよい。ただし、螺合によって接続することにより、接続部材160を取り外して交換できる。
【0035】
なお、接続部材160の螺合方向は、圧電モータ100の主たる回転方向である正転方向と一致させてもよい。すなわち、圧電モータ100の正転方向が右回転であれば、接続部材160の小径部162は右ねじとして構成される。ここで、正転方向は、逆転方向よりも負荷がかかる方向、又は逆転方向よりも回転する時間が多い方向である。
【0036】
例えば、圧電モータ100は、薬液を注入する注入機器の駆動機構を駆動する。この場合、シャフト135が正転方向に回転すると駆動機構のアクチュエータが前進し、シャフト135が逆転方向に回転するとアクチュエータが後進する。そして、正転時には、逆転時よりも圧電モータ100に負荷がかかる。または、正転時には、逆転時よりも圧電モータ100が長く駆動する。ここで、コネクタ144を介して圧電モータ100に入力される駆動信号は交流信号であり、位相が異なる2種類の信号のうち一方が他方に対して遅れている場合を正転信号としたときに、他方が一方に対して遅れている場合が逆転信号となる。
【0037】
また、接続部材160は、シャフト135とエンコーダENとを接続している。具体的に、接続部材160の大径部161には、エンコーダENを取り付けるための取り付け構造として、面取り部163が形成されている。また、エンコーダENには、不図示のボスを挿入する穴が形成されている。そして、エンコーダENに挿入されるボスは、大径部161の面取り部163に突き当たる。これによって、大径部161がエンコーダENに挿入された状態で、エンコーダENが接続部材160を介してシャフト135に取り付けられる。なお、エンコーダENは、シャフト135の回転を検出して注入機器の制御装置へパルス信号を送る。
【0038】
一例として、接続部材160の材質は、真鍮、リン性銅、チタン、及びステンレス等である。また、接続部材160は、シャフト135よりも硬い材料によって形成できる。例えば、接続部材160の材料は、ビッカース硬さ試験によって測定される硬さがシャフト135の材料よりも硬い。これにより、小径部162が部材接続部137の内面に食い込むので、より硬く接続部材160を締結できる。
【0039】
以上説明した実施形態に係る圧電モータ100によれば、エンコーダEN等の検出装置を圧電モータ100に取り付けることができる。また、エンコーダENにおける大径部161を挿入する部分のサイズは、エンコーダENの種類によって異なることがある。この場合であっても、大径部161の長さ、直径、又は形状を異ならせることによって、異なる種類のエンコーダENを圧電モータ100に取り付けることができる。すなわち、圧電モータ100のシャフト135を、異なる複数のエンコーダENの間で共用できる。
【0040】
なお、圧電モータ100は、非磁性体材料を用いて構成できる。非磁性体材料の一例として、弾性体113の材料はリン青銅であり、シャフト135、ロータねじ、及びステータねじの材料は真鍮である。また、ケース134、ベース141、皿バネ部分123、及びスタビライザー125の材料はアルミニウムである。非磁性体材料を用いて圧電モータ100を構成することにより、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の、磁気を利用する機器の近傍で圧電モータ100を使用できる。
【0041】
[第2実施形態]
図4及び
図5を用いて第2実施形態の圧電モータ200について説明する。
図4は、圧電モータ200の斜視図である。そして、
図5は、シャフト235の長手方向に沿った概略断面図であり、シャフト235の回転軸を通る断面を示している。第2実施形態の圧電モータ200は、他のステータ及び他のロータをさらに備えている。すなわち、シングルタイプである再1実施形態の圧電モータ100とは異なり、ダブルタイプの圧電モータ200は、二組のステータと二組のロータを備えている。
【0042】
なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について主に説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0043】
図4に示すように、圧電モータ200は、一対のベース241に固定されるケース234を有する。一対のベース241はそれぞれ略板状であり、ケース234に対してねじ止めされている。さらに、圧電モータ200は、ベース241を貫通してベース241から突出するシャフト235を備えている。また、一対のベース241のそれぞれの側面には、外部と接続するためのコネクタ244が、端子支持板を介して取り付けられている。
【0044】
図5に示すように、圧電モータ200は、シャフト235の回転軸を中心に略回転対称の構成を備えている。この圧電モータ200は、一方のベース241に固定された一のステータ211Aと、ステータ211Aに対向する一のロータ221Aとを備えている。さらに、圧電モータ200は、他方のベース241に固定された他のステータ211Bと、他のステータ211Bに対向する他のロータ221Bとを備えている。なお、以下の説明においては、一のステータ211A及び他のステータ211Bを総称して、単にステータ211と呼ぶことがある。また、一のロータ221A及び他のロータ221Bを総称して、単にロータ221と呼ぶことがある。
【0045】
ステータ211及びロータ221は、ケース234内の略円柱状のスペースに格納されている。また、シャフト235は、それぞれ略リング状のステータ211及びロータ221を貫通しており、ステータ211とロータ221はシャフト235の回転軸と同軸である。そして、シャフト235は、ロータ221と共に回転する。
【0046】
各ステータ211は、弾性体213と、圧電素子212と、摺動材214とを有している。そして、圧電素子212及び摺動材214は、弾性体213に貼り付けられている。また、圧電モータ200の両側において、圧電素子212と、弾性体213と、摺動材214とは、ベース241からロータ221に向かってこの順に配置されている。また、各ロータ221は、基体部分222と皿バネ部分223とを有している。そして、基体部分222と皿バネ部分223とは、環状部材220を構成している。基体部分222は摺動材214と当接し、皿バネ部分223は基体部分222と一体的に形成されている。さらに、各ロータ221は、皿バネ部分223が固定されると共に、シャフト235に固定される固定部の一例として、スタビライザー225を有している。
【0047】
一方のベース241にはシャフト235が貫通する穴が形成されており、当該穴にはベアリング238が取り付けられている。また、他方のベース241には接続部材160が貫通する穴が形成されており、当該穴にはベアリング238が取り付けられている。代替的に、二つのベアリング238の少なくとも一方に代えてブッシュを用いてもよい。また、各ステータ211は、複数のステータねじによって各ベース241に固定されている。具体的に、弾性体213のシャフト235側の縁部は、ねじ穴を有している。また、ベース241は、弾性体213のねじ穴に対応するねじ穴を有している。そして、ステータねじが両ねじ穴と螺合することにより、ステータ211がベース241に固定されている。
【0048】
各ロータ221は、複数のロータねじと、スタビライザー225とを介して、シャフト235のフランジ236に固定されている。また、各ロータ221は、皿バネ部分223が固定されるスタビライザー225を有している。具体的に、皿バネ部分223のシャフト235側に位置する内縁部は、ねじ穴を有している。また、スタビライザー225の外縁部は、当該ねじ穴に対応するねじ穴を有している。そして、ロータねじが両ねじ穴と螺合することにより、皿バネ部分223がスタビライザー225に固定されている。代替的に、二つのロータ221が、一つのスタビライザー225を共用してもよい。この場合、二つの皿バネ部分223が、一つのスタビライザー225に固定される。スタビライザー225が一つである場合には、圧電モータ200を小型化することができる。
【0049】
さらに、各スタビライザー225は、シャフト235の回転軸を中心とする環状溝229を有している。この環状溝229は、断面略U字状の形状を有しており、環状溝229の底はスタビライザー225の他の部分よりも薄い。また、圧電モータ200の半径方向において、スタビライザー225の幅は、皿バネ部分223の幅よりも長く設定されている。なお、シャフト235のフランジ236とスタビライザー225との間にスペーサーを配置してもよい。さらに、このスペーサーに代えてまたはスペーサーに加えて、フランジ236とスタビライザー225との間にスプリング、例えば皿バネを配置してもよい。
【0050】
圧電モータ200は、第1実施形態と同様の接続部材160を備えている。そして、シャフト235の端部には、接続部材160と接続される部材接続部237が形成されている。すなわち、圧電モータ200は、部材接続部237に接続されている接続部材160を備えている。また、接続部材160は、ステータ211Aからロータ221Aへと向かう方向に延びている。そして、接続部材160には、エンコーダENが取り付けられている。
【0051】
上記第2実施形態に係る圧電モータ200によれば、エンコーダEN等の検出装置をダブルタイプの圧電モータ200に取り付けることができる。また、異なる種類のエンコーダENを圧電モータ200に取り付けることができる。すなわち、圧電モータ200のシャフト235を、異なる複数のエンコーダENの間で共用できる。
【0052】
[第3実施形態]
図6及び
図7を用いて第3実施形態の圧電モータ300について説明する。
図6は、圧電モータ300の斜視図である。そして、
図7は、シャフト335の長手方向に沿った概略断面図であり、シャフト335の回転軸を通る断面を示している。この第3実施形態の圧電モータ300は、第2実施形態の圧電モータ200を二つ備えている。なお、第3実施形態の説明においては、第1及び第2実施形態との相違点について主に説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0053】
図6に示すように、圧電モータ300は、二つの圧電モータ200を備えている。すなわち、一の圧電モータ200Aに、他の圧電モータ200Bが取り付けられている。なお、以下の説明では、一方の圧電モータ200A及び他方の圧電モータ200Bを総称して単に圧電モータ200と呼ぶことがある。
【0054】
また、
図7に示すように、圧電モータ300は、接続部材360を備えている。そして、接続部材360は、シャフト235及びシャフト335の回転軸と同軸である。また、接続部材360は、シャフト235の端部から突出していると共に、シャフト235と他方の圧電モータ200Bとを接続している。すなわち、他方の圧電モータ200Bは、シャフト335を備えており、接続部材360を介して一方の圧電モータ200Aに取り付けられている。そして、シャフト335の一方の端部には、接続部材160と接続される第1の部材接続部337Aが形成されている。そして、第1の部材接続部337Aには、接続部材160の小径部162(
図3)に形成されているねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。そして、小径部162は、第1の部材接続部337Aに螺合されている。なお、接続部材160には、不図示のエンコーダENを取り付けることができる。
【0055】
また、シャフト335の他方の端部には、接続部材360と接続される第2の部材接続部337Bが形成されている。そして、第2の部材接続部337Bには、接続部材360の大径部361に形成されているねじ山と噛み合うねじ溝が形成されている。そして、大径部361は、第2の部材接続部337Bに螺合されている。これにより、シャフト235、接続部材360、シャフト335、及び接続部材160が、共に回転するように接続される。なお、シャフト335は、第2の部材接続部337Bが形成されている端部を除いて、シャフト235と同様に構成されている。
【0056】
接続部材360は、シャフト235の部材接続部237に接続される第1の接続部と、シャフト335の第2の部材接続部337Bに接続される第2の接続部とを有している。具体的に、接続部材360は、第1の接続部である小径部362と、第2の接続部である大径部361とを有している。そして、シャフト335の第2の部材接続部337Bは、大径部361が挿入される穴である。さらに、圧電モータ300は、接続部材160を備えている。そして、シャフト335の端部には、接続部材160と接続される第1の部材接続部337Aが形成されている。すなわち、シャフト335の第1の部材接続部337Aは、接続部材160の小径部162が挿入される穴である。
【0057】
一例として、圧電モータ200Bの連結は、以下の手順によって行われる。まず、一方の圧電モータ200Aの他の部材を組み立てる。そして、一方の圧電モータ200Aのシャフト235に、接続部材360をねじ込む。続いて、他方の圧電モータ200Bのシャフト335を接続部材360に取り付ける。その後、他方の圧電モータ200Bの他の部材を組み立てる。さらに、他方の圧電モータ200Bのシャフト335に接続部材160をねじ込んで、圧電モータ300が組み立てられる。なお、必要であれば、エンコーダENを接続部材160に取り付ける。
【0058】
このように、他方の圧電モータ200Bの他の部材を組み立てる前に、シャフト335を接続部材360に取り付ける。これにより、一方の圧電モータ200Aの位置と他方の圧電モータ200Bの位置とが、シャフト335の回転方向においてずれることを防止できる。代替的に、他方の圧電モータ200Bの他の部材を組み立てた後に、シャフト335を接続部材360に接続してもよい。この場合、シャフト335の端面がシャフト235の端面に付き当たるまで、接続部材360をねじ込む。これにより、大径部361の長さを調整することによって、シャフト335の回転方向における位置ずれを抑制できる。
【0059】
以上説明した第3実施形態に係る圧電モータ300によれば、一方の圧電モータ200Aに他方の圧電モータ200Bを取り付けることができる。また、異なる種類のエンコーダENを圧電モータ300に取り付けることもできる。すなわち、圧電モータ300のシャフト335を、異なる複数のエンコーダENの間で共用できる。
【0060】
代替的に、接続部材360は、他方の圧電モータ200Bが備えるシャフト335と一体的に構成されていてもよい。すなわち、シャフト335に、小径部362と同形状の雄ねじ部を形成してもよい。この場合であっても、シャフト235にシャフト335を取り付けて、他方の圧電モータ200Bを連結できる。さらに、シャフト235と接続部材360とが一体的に構成されていてもよい。すなわち、シャフト235に、大径部361と同形状の雄ねじ部を形成してもよい。この場合であっても、シャフト235にシャフト335を取り付けて、他方の圧電モータ200Bを連結できる。
【0061】
また、圧電モータ300は、三つ以上の圧電モータ200を備えていてもよい。また、シングルタイプの圧電モータ100に、シングルタイプの圧電モータ100又はダブルタイプの圧電モータ200が取り付けられていてもよい。さらに、ダブルタイプの圧電モータ200に、シングルタイプの圧電モータ100が取り付けられていてもよい。
【0062】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0063】
例えば、接続部材160は、回転力を伝達する延長シャフトとして機能させてもよい。この場合、接続部材160にはエンコーダENが取り付けられない。そして、接続部材160は、ギア等の他の部材に接続されて、当該他の部材に回転力を伝達する。この場合、接続部材160の長さは、第1実施形態の接続部材160が有する長さより長くとも短くともよい。さらに、シャフト135は、ケース134から突出するような長さを有していてもよい。この場合、接続部材160は、ケース134の外側でシャフト135に取り付けられる。さらに、圧電モータ100又は圧電モータ200には、別の部材の一例として延長シャフトを取り付けてもよい。この場合、接続部材160の大径部161を雄ねじ部として構成する。そして、延長シャフトの端部に大径部161をねじ込む雌ねじ部を形成する。
【符号の説明】
【0064】
100:圧電モータ、111:ステータ、112:圧電素子、113:弾性体、114:摺動材、121:ロータ、122:基体部分、123:皿バネ部分、135:シャフト、137:部材接続部、160:接続部材、200:圧電モータ、211:ステータ、212:圧電素子、213:弾性体、214:摺動材、221:ロータ、222:基体部分、223:皿バネ部分、235:シャフト、237:部材接続部、300:圧電モータ、335:シャフト、360:接続部材、337A:部材接続部、337B:部材接続部