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特開2023-42055半導体装置の製造方法及び大気圧プラズマ装置
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  • 特開-半導体装置の製造方法及び大気圧プラズマ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042055
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び大気圧プラズマ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20230317BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230317BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L21/52 Z
H05H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149132
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】521405229
【氏名又は名称】エーイーティーピージャパン合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】593096169
【氏名又は名称】ヤマトマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 秀人
(72)【発明者】
【氏名】片桐 啓介
【テーマコード(参考)】
2G084
5F047
5F061
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084BB11
2G084CC03
2G084CC11
2G084CC34
2G084FF02
2G084GG07
2G084GG18
5F047BA21
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA04
5F061CA21
5F061CA22
5F061CB03
5F061CB12
(57)【要約】
【課題】処理対象の表面が複雑な形状であっても、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができ、プラズマフレーム中の電位差による半導体素子へのダメージを与えず、このことによって、半導体装置の温度が変動しても封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、半導体素子をシリコーン樹脂系接着剤を用いて基板に接着し、その後、前記基板上の前記半導体素子を樹脂封止する半導体装置の製造方法であって、前記基板に前記半導体素子を接着する工程と、前記樹脂封止を行う工程において封止樹脂が接する接面に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行う工程と、前記樹脂封止を行う工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を採用した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子をシリコーン樹脂系接着剤を用いて基板に接着し、その後、前記基板上の前記半導体素子を樹脂封止する半導体装置の製造方法であって、
前記基板に前記半導体素子を接着する工程と、
前記樹脂封止を行う工程において封止樹脂が接する接面に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行う工程と、
前記樹脂封止を行う工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理は、先端部分の長さが5~300mmであり、前記先端部分の材料がセラミックスである前記プラズマガスの照射用ノズルを用いる請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置であって、
先端部分の長さが5~300mmであり、前記先端部分の材料がセラミックスであるプラズマガスの照射用ノズルを備え、前記プラズマガスは、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする大気圧プラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法と、当該半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、はんだや、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などに銀などの導電性微粒子を混合した接着剤(ダイボンド剤)を用いて、支持体である基板に半導体チップ(半導体素子)を接合した一体化物を、エポキシ樹脂などの封止樹脂により封止した構造を有している。このような半導体装置には、半導体装置を製造する過程における封止樹脂で封止する場合や、半導体装置をプリント基板に接続する場合などに、外部から熱が加えられる。また、半導体装置が動作する際には、半導体内に動作電流が流れることによって半導体チップから熱が発生する。このように半導体装置の温度が変動すると、半導体装置を構成する材料がそれぞれに膨張や収縮をするため、半導体チップや、支持体である基板、封止樹脂との間に内部応力が発生する。そして、その応力が大きいと、半導体装置を構成する材料間の接着界面が剥離して、封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生し、半導体装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0003】
このような、温度変動によって生じる内部応力の影響を阻止するために、耐熱性に優れ低応力であるシリコーン系樹脂を採用した接着剤(シリコーン系接着剤)が用いられている。しかしながら、シリコーン系接着剤は、低分子シロキサン成分を含有している。この低分子シロキサンが原因で、硬化したシリコーン系接着剤の硬化物の表面と封止樹脂との接着性が悪く、シリコーン系接着剤を用いた半導体装置の信頼性が十分ではなかった。
【0004】
この問題に対して、特許文献1では、シリコーン系接着剤の硬化物の表面に紫外線照射処理を行って硬化物の表面を改質し、その後、封止樹脂で封止することによって、シリコーン系接着剤の硬化物と封止樹脂との接着性を向上させる方法を開示している。しかしながら、紫外線は直進する性質を有することから、シリコーン系接着剤の硬化物の表面に紫外線の照射方向に対する影の部分があると、当該部分には紫外線が照射されない。そして、紫外線が照射されない部分と封止樹脂との間で剥離が発生し、半導体装置の信頼性を十分に向上させることができない。
【0005】
そこで特許文献2は、シリコーン系接着剤の硬化物の表面及び基板の表面に、酸素を含んだガスを用いた大気圧プラズマ処理を行ってそれぞれの表面を改質し、その後、封止樹脂で封止することによって、シリコーン系接着剤の硬化物と封止樹脂との接着性を向上させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-036510号公報
【特許文献2】特開2004-079683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示の大気圧プラズマ処理は、酸素を含んだガスを用いている。酸素プラズマは、シリコーン系接着剤の硬化物の表面に酸素プラズマの照射方向に対する影の部分があっても回り込んで処理することが可能ではあるが、大気中において酸素プラズマは十分長い時間ラジカル状態では存在しないので、処理対象の表面が複雑な形状であると、プラズマ処理が施されない部分が残ってしまう課題がある。また、酸素プラズマのプラズマフレーム中に、プラズマ化に伴う電位差が残存していると、この電位差によって半導体素子を破壊してしまう課題もある。
【0008】
そこで、上述の問題に鑑み、本件発明は、処理対象の表面が複雑な形状であっても、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができ、プラズマフレーム中の電位差による半導体素子へのダメージを与えず、このことによって、半導体装置の温度が変動しても封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置を得ることができる製造方法と、当該半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、鋭意研究の結果、以下の半導体装置の製造方法と、当該半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置に想到した。
【0010】
すなわち、本件発明は、半導体素子をシリコーン樹脂系接着剤を用いて基板に接着し、その後、前記基板上の前記半導体素子を樹脂封止する半導体装置の製造方法であって、前記基板に前記半導体素子を接着する工程と、前記樹脂封止を行う工程において封止樹脂が接する接面に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行う工程と、前記樹脂封止を行う工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を採用した。
【0011】
前記プラズマ処理は、先端部分の長さが5~300mmであり、前記先端部分の材料がセラミックスである前記プラズマガスの照射用ノズルを用いることが好ましい。
【0012】
本件発明は、上述の半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置であって、先端部分の長さが5~300mmであり、前記先端部分の材料がセラミックスであるプラズマガスの照射用ノズルを備え、前記プラズマガスは、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする大気圧プラズマ装置を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本件発明に係る半導体装置の製造方法によれば、処理対象の表面が複雑な形状であっても、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができ、プラズマフレーム中の電位差が無く半導体素子へのダメージを与えない。そして、このことによって、封止樹脂と封止樹脂が接する接面との接着性を向上し、半導体装置の温度が変動しても封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0014】
本件発明に係る大気圧プラズマ装置によれば、処理対象の表面が複雑な形状であっても、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができ、プラズマフレーム中の電位差が無く半導体素子へのダメージを与えない。そして、当該大気圧プラズマ装置を用いてプラズマ処理することによって、封止樹脂と封止樹脂が接する接面との接着性を向上し、半導体装置の温度が変動しても封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体装置の略断面図である。
図2】プラズマガスの照射用ノズルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明に係る半導体装置の製造方法、及び当該半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置の実施の形態に関して述べる。以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0017】
1.半導体装置の製造方法の実施形態
本件発明に係る半導体装置の製造方法は、ウェハをダイシングして個片化された半導体素子をシリコーン樹脂系接着剤を用いて支持体である基板に接着し、その後、基板上の半導体素子を樹脂封止する半導体装置の製造方法である。当該製造方法の工程は、工程A:基板に半導体素子を接着する工程と、工程B:前記樹脂封止を行う工程において封止樹脂が接する接面に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行う工程と、工程C:樹脂封止を行う工程と、を含んでいる。
【0018】
そして、工程Bのプラズマ処理では、先端部分の長さが5~300mmであり、当該先端部分の材料がセラミックスであるプラズマガスの照射用ノズルを用いて、プラズマガスを照射することが好ましい。
【0019】
半導体装置は、はんだや、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などに必要に応じて銀などの導電性微粒子を混合した接着剤を用いて、支持体である基板に半導体素子を接着した一体化物を、エポキシ樹脂などの封止樹脂により封止した構造を有している。なお、本明細書においては、半導体素子は、トランジスタやダイオードなどのいわゆるディスクリート半導体だけでなく、半導体上に形成された複数のトランジスタや抵抗などから構成された集積回路を含む。図1に、半導体装置の略断面図を示す。なお、図1は、半導体装置の略断面図の1つの例であり、本件発明に係る半導体装置の製造方法は、図1の構造に制限されない。半導体素子2は、支持体である基板3に、シリコーン樹脂系接着剤4を用いて接着されている。半導体素子2に形成された電極パッドは、電気を通す金属製のボンディングワイヤ5を介して、基板3上の電極6と接続されている。電極6は、基板3に形成された配線やビア、スルーホールなどを介して球状端子7に電気的導通状態で接続されている。半導体装置1は、上述した、基板3に半導体素子2を接着した一体化物を、封止樹脂8を用いて封止した構造を有している。
【0020】
このような構造の半導体装置1に封止られる半導体素子2は、様々な機能を有する半導体素子が挙げられるが、例えば、高い電圧及び大きな電流を扱うパワー半導体などが挙げられる。パワー半導体は製造工程において高温に曝されるだけでなく、動作時においても半導体素子自身の発熱によって高温になることから、温度変動によって生じる内部応力の影響を阻止するために、耐熱性に優れ低応力であるシリコーン系樹脂を採用した接着剤(シリコーン系接着剤4)などを用いて、半導体素子を支持体である基板に接着している。
【0021】
ここで、シリコーン系接着剤4は、封止樹脂との接着性を阻害する低分子シロキサン成分を含有している。そして、低分子シロキサン成分は、シリコーン系接着剤4の硬化時に、シリコーン樹脂系接着剤4の露出面10に滲出したり、揮散して基板3の表面や半導体素子2の表面などに付着する。なお、本明細書において、露出面10とは、シリコーン系接着剤4において、半導体素子2と基板3とに接しておらず、封止樹脂8を用いて封止された際に、封止樹脂10が接する接面のことである。そして、「封止樹脂が接する接面」とは、基板3の表面や半導体素子2の表面、露出面10を含む、工程Cにおいて封止樹脂8が接する接面のことである。
【0022】
本件発明に係る半導体装置の製造方法では、工程Bにおいて、樹脂封止を行う工程(工程C)において封止樹脂8が接する接面に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行うことによって、低分子シロキサン成分を改質する。窒素プラズマやアルゴンプラズマは、酸素プラズマなどの他のプラズマガスと比べて、大気中において長い時間ラジカル状態で存在することができる。このことによって、処理対象の表面が複雑な形状であっても、プラズマガスがラジカル状態で処理対象のあらゆる表面に到達することができ、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができる。このようにして低分子シロキサン成分を改質することによって、封止樹脂8が接する接面の接着性が向上し、半導体装置1の温度が変動しても封止樹脂8に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置1を得ることができる。
【0023】
上述したように、本件発明に係る半導体装置の製造方法は、工程Aと工程Bと工程Cとを含んでいる。すなわち、工程Bは、工程Aと工程Cとの間であれば、どのようなタイミングで行っても良く、1回以上行っても良い。例えば、工程Aの後、半導体素子2に形成された電極パッドと基板3上の電極6とをボンディングワイヤ5を介して接続する工程の前に、工程Bを行うことができる。この場合、シリコーン系接着剤4の硬化時に揮散して半導体素子2上の電極パッド表面に付着した低分子シロキサンの改質も行うことができる。このことによって、ボンディングワイヤ5の接合強度を向上することができる。また、工程Cの直前に、工程Bを行うこともできる。封止樹脂8が接する接面の低分子シロキサンを改質して、封止樹脂8が接する接面の接着性が向上するだけでなく、基板3の表面などに残存する汚れ成分をプラズマガスが除去し、プラズマによって形成された高エネルギーの荷電粒子が基板3の表面を適度に粗すことによるアンカー効果が生じて、基板3と封止樹脂8との接着性を向上することができる。
【0024】
工程Bに用いるガスは、窒素やアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであれば使用できるが、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するものが好ましい。窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行うことによって、低分子シロキサン成分を改質することができる。窒素プラズマやアルゴンプラズマは、酸素プラズマなどの他のプラズマガスと比べて、大気中において長くラジカル状態で存在することができる。このことによって、封止樹脂8が接する接面が複雑な形状であっても、プラズマガスがラジカル状態で封止樹脂8が接する接面のあらゆる表面に到達することができ、さらに、プラズマガスの照射方向に対するボンディングワイヤなどによる陰になる部分にもプラズマガスが到達することができるため、確実にプラズマ処理による封止樹脂8が接する接面の改質を行うことができる。
【0025】
プラズマガスは、窒素、アルゴンの気体に、エネルギーを加えて気体中の分子を原子に解離し、原子をさらにイオンと電子に電離することによって生成される。プラズマガスの形態には、直流(DC)電源を用いて連続的に放電を行うことによって発生させる熱プラズマと、高周波放電励起によって発生させる低温プラズマなどが挙げられる。本件発明に係るプラズマガスの発生形態は、低温プラズマが好ましい。プラズマガスの温度が低温であることから、プラズマガスが照射される対象が高温に曝されることがなく、温度によるダメージが少ないからである。高周波放電励起における放電周波数は、13.56MHzなどのHF帯域から、2.56GHzといったUHF帯域が一般的であるが、本件発明に係る放電周波数は、10kHz以上30kHz以下が好ましい。放電周波数が10kHz未満であると、プラズマガスのエネルギーが低く、封止樹脂8が接する接面の改質が十分に行えず好ましくない。放電周波数が30kHzを超えると、プラズマガスの温度が高温になることから、プラズマガスが照射される対象へのダメージが懸念されることから好ましくない。
【0026】
次に、図2に、上述の方法で生成されたプラズマガスの照射用ノズルの概略図を示す。照射用ノズル20は、円筒形であって、中心線23より上半分は照射用ノズル20の外観を示し、中心線23より下半部は照射用ノズル20の断面を示している。中心線23より下半部の照射用ノズル20の断面図においては、ハッチング部分はテーパー部21及び円筒部22の断面を示しており、ハッチングの無い部分はテーパー部21及び円筒部22の中空部である。円筒部22は、テーパー部21のテーパー部分の狭くなった末端に接するようにして取り付けられる。この照射用ノズル20は、上述の、高周波放電を行う装置の先端部分とテーパー部21とを接続して取り付けられる。そして、プラズマガスはテーパー部21から円筒部22の方向に中空部を流れて、円筒部22の先端から放射され、プラズマフレームとなる。すなわち、照射用ノズル20の「先端部分」は、円筒部22である。
【0027】
円筒部22は、石英ガラスや金属を用いることもできるが、セラミックスを用いたものが好ましい。そして、円筒部22の長さは5~300mmが好ましく、30~50mmがより好ましい。円筒部22の内径、すなわち、中空部の直径は、3~15mmが好ましく、7~10mmがより好ましい。照射用ノズル20の先端部分に、5~300mmの長さのセラミックス製の円筒部22を用いることによって、プラズマを発生させるための放電は円筒部22の内部で終了し、照射用ノズル20から放射されるプラズマフレーム中には電位差が無い。照射用ノズル20を用いてプラズマガスをプラズマ処理対象面へ照射することによって、プラズマ処理対象面の表面の改質を行うことができる。さらに、プラズマフレーム中には電位差が無いことから、プラズマ処理中に半導体素子2にプラズマガスが照射されても、半導体素子2は電気的なダメージを受けない。
【0028】
この照射用ノズル20は、円筒部22の先端から放射されるプラズマフレームにおいて、大気中の酸素を取り込み、活性種を発生させることができる。この、酸素活性種によって、封止樹脂が接する接面を確実に改質することができる。また、照射用ノズル20の先端部分に、長さが5~300mmのセラミックス製の円筒部22を備えることによって、活性種のオゾンの発生を極めて少なくすることができる。一般的な不活性ガスを用いた低温プラズマの場合、低温での放電であることからオゾンが大量に発生する。しかしながら、本件発明に係る半導体装置の製造方法では、照射用ノズル20を用いてプラズマガスを照射する。照射用ノズル20は、長さが5~300mmで、中空部の直径が3~15mmのセラミックス製の円筒部22を備えており、円筒部22の内部では、プラズマガスが高温の熱プラズマ状態になる。この効果によって、オゾンの発生が少なくなり、プラズマ処理の施設においては、簡易的な局部排気で運用することができる。
【0029】
円筒部22の材料であるセラミックスは、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどをそれぞれ主成分とする酸化物系セラミックスや、窒化アルミ系セラミックス、窒化珪素系セラミックス、炭化ケイ素セラミックスなどが挙げられる。これらのなかで、アルミナセラミックスが好ましい。電気絶縁性に優れており、プラズマを発生させるための放電が円筒部22の内部で終了するからである。
【0030】
照射用ノズル20の先端からプラズマ処理対象面、すなわち封止樹脂が接する接面までの照射距離は、プラズマガスの流速や流量などに依存して異なるが、10~40mmであることが好ましい。そして、プラズマガスの流量は、30~50NL(ノルマルリットル)/分が好ましい。また、プラズマ処理の速度は、プラズマ処理対象面の形状などに依存して異なるが、10~300mm/秒であることが好ましい。なお、これらの条件は、プラズマ処理対象面の改質を適切に行うことができる限りにおいて、上記の範囲に制限されない。
【0031】
〔シリコーン樹脂系接着剤〕
工程Aにおいて、個片化された半導体素子2を支持体である基板3に接着するためのシリコーン樹脂系接着剤4に用いる樹脂としては、ストレートシリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂などが挙げられる。ストレートシリコーン樹脂としては、末端反応性ポリジオルガノシロキサンをベース樹脂として縮合反応により硬化するもの、付加反応により硬化するもの、紫外線により硬化するもの、有機過酸化物のラジカル反応により硬化するものなどが挙げられる。有機樹脂変性シリコーン樹脂としては、硬化性シリコーン変性エポキシ樹脂組成物、硬化性シリコーン変性フェノール樹脂組成物、硬化性シリコーン変性ポリイミド組成物などが挙げられ、耐熱性の高いポリイミドシリコーン樹脂なども挙げられる。なお、半導体素子2を基板3に接着することに適したシリコーン樹脂系接着剤に用いる樹脂であれば、上述したものに制限されない。
【0032】
半導体素子2の接着面と、支持体である基板3との間に、電気的導通が求められる場合は、金や銀などの金属微粒子やこれらの金属によるめっき樹脂粒子などの導電性微粒子をシリコーン樹脂系接着剤4に混合して導電性を付与したシリコーン樹脂系接着剤4を用いることもできる。
【0033】
シリコーン樹脂系接着剤4は、所定の粘度を有した液状、もしくはペースト状であり、これを吐出機を用いて、基板3の表面などに塗布する。基板3上に塗布したシリコーン樹脂系接着剤4に半導体素子2を接着後、温度プロファイルが調整可能な加熱炉などを用いて加熱することによりシリコーン樹脂系接着剤4を硬化させることができる。
【0034】
〔封止樹脂〕
工程Cにおいて、基板3に半導体素子2を接着した一体化物を封止することに用いる封止樹脂8としては、硬化性エポキシ樹脂、硬化性フェノール樹脂、硬化性ポリフェニレンサルファイド樹脂、硬化性ポリエーテルアミド樹脂、硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。硬化性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、基板3に半導体素子2を接着した一体化物を封止することに適した封止樹脂であれば、上述したものに制限されない。
【0035】
工程Cで、封止樹脂8によって基板3に半導体素子2を接着した一体化物を封止する方法としては、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、ポッティングなどの方法が挙げられる。なお、封止樹脂8によって基板3に半導体素子2を接着した一体化物を封止することができる方法であれば、上述した方法に制限されない。
【0036】
封止後に、上述した封止樹脂を硬化させる方法としては、加熱によるもの、紫外線照射によるものなどが挙げられるが、加熱によるものが好ましい。
【0037】
2.大気圧プラズマ装置の実施形態
本件発明に係る大気圧プラズマ装置は、本件発明に係る半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置であって、先端部分の長さが5~300mmであり、前記先端部分の材料がセラミックスであるプラズマガスの照射用ノズルを備え、前記プラズマガスは、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴としている。
【0038】
当該大気圧プラズマ装置は、本件発明に係る半導体装置の製造方法で説明した、プラズマガスの照射用ノズル20を備えている。照射用ノズル20は、円筒形であって、中心線23より上半分は照射用ノズル20の外観を示し、中心線23より下半部は照射用ノズル20の断面を示している。中心線23より下半部の照射用ノズル20の断面図においては、ハッチング部分はテーパー部21及び円筒部22の断面を示しており、ハッチングの無い部分はテーパー部21及び円筒部22の中空部である。円筒部22は、テーパー部21のテーパー部分の狭くなった末端に接するようにして取り付けられる。この照射用ノズル20は、上述の、高周波放電を行う装置の先端部分とテーパー部21とを接続して取り付けられる。そして、プラズマガスはテーパー部21から円筒部22の方向に中空部を流れて、円筒部22の先端から放射され、プラズマフレームとなる。すなわち、照射用ノズル20の「先端部分」は、円筒部22である。
【0039】
円筒部22は、石英ガラスや金属を用いることもできるが、セラミックスを用いたものが好ましい。そして、円筒部22の長さは5~300mmが好ましく、30~50mmがより好ましい。円筒部22の内径、すなわち、中空部の直径は、3~15mmが好ましく、7~10mmがより好ましい。照射用ノズル20の先端部分に、5~300mmの長さのセラミックス製の円筒部22を用いることによって、プラズマを発生させるための放電は円筒部22の内部で終了し、照射用ノズル20から放射されるプラズマフレーム中には電位差が無い。照射用ノズル20を用いてプラズマガスをプラズマ処理対象面へ照射することによって、プラズマ処理対象面の表面の改質を行うことができる。さらに、プラズマフレーム中には電位差が無いことから、プラズマ処理中に半導体素子2にプラズマガスが照射されても、半導体素子2は電気的なダメージを受けない。
【0040】
この照射用ノズル20は、円筒部22の先端から放射されるプラズマフレームにおいて、大気中の酸素を取り込み、活性種を発生させることができる。この、酸素活性種によって、封止樹脂が接する接面を確実に改質することができる。また、照射用ノズル20の先端部分に、長さが5~300mmのセラミックス製の円筒部22を備えることによって、活性種のオゾンの発生を極めて少なくすることができる。一般的な不活性ガスを用いた低温プラズマの場合、低温での放電であることからオゾンが大量に発生する。しかしながら、本件発明に係る半導体装置の製造方法では、照射用ノズル20を用いてプラズマガスを照射する。照射用ノズル20は、長さが5~300mmで、中空部の直径が3~15mmのセラミックス製の円筒部22を備えており、円筒部22の内部では、プラズマガスが高温の熱プラズマ状態になる。この効果によって、オゾンの発生が少なくなり、プラズマ処理の施設においては、簡易的な局部排気で運用することができる。
【0041】
また、当該大気圧プラズマ装置は、窒素やアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスであれば使用できるが、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射することが好ましい。シリコーン樹脂系接着剤4の露出面10(及び前記基板の表面)に、窒素とアルゴンとから選択される少なくとも1種以上を含有するプラズマガスを照射するプラズマ処理を行うことによって、低分子シロキサン成分を改質する。窒素プラズマやアルゴンプラズマは、酸素プラズマなどの他のプラズマガスと比べて、大気中において長くラジカル状態で存在することができる。このことによって、処理対象の表面が複雑な形状であっても、プラズマガスがラジカル状態で処理対象のあらゆる表面に到達することができ、大気中の酸素を取り込んで活性種を発生させて、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができる。このようにして低分子シロキサン成分を改質することによって、封止樹脂8が接する接面の接着性が向上し、半導体装置1の温度が変動しても封止樹脂8に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置1を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上の通り、本件発明に係る半導体装置の製造方法と、当該半導体装置の製造方法に用いる大気圧プラズマ装置によれば、処理対象の表面が複雑な形状であっても、確実にプラズマ処理による表面の改質を行うことができ、プラズマフレーム中の電位差が無く半導体素子へのダメージを与えない。そして、このことによって、封止樹脂が接する接面の接着性を向上し、半導体装置の温度が変動しても封止樹脂に亀裂が生じるなどの破壊が発生せず、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。したがって、半導体素子をシリコーン樹脂系接着剤を用いて基板に接着し、その後、基板上の半導体素子を樹脂封止する半導体装置の製造方法に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体装置
2 半導体素子
3 基板
4 シリコーン樹脂系接着剤
5 ボンディングワイヤ
6 電極
7 球状端子
8 封止樹脂
10 露出面
20 照射用ノズル
21 テーパー部
22 円筒部
23 中心線
図1
図2