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特開2023-42061切羽安定性評価装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042061
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】切羽安定性評価装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20230317BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230317BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230317BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230317BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
G01B11/00 H
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
G01V1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149141
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000154565
【氏名又は名称】株式会社福田組
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】久田 大地
(72)【発明者】
【氏名】若月 和人
【テーマコード(参考)】
2F065
2G024
2G064
2G105
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA49
2F065AA58
2F065BB15
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ08
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2G024AD34
2G024CA13
2G024FA01
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BC40
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
2G105AA02
2G105BB02
2G105EE01
2G105EE06
(57)【要約】
【課題】切羽の安定性を評価する新たな技術を提供する。
【解決手段】切羽安定性評価装置2000は、切羽10の周囲の音を録音することで得られる音声データ22、及び切羽10を撮像することで得られるビデオデータ32を取得する。切羽安定性評価装置2000は、音声データ22によって表される音の種類を特定する。切羽安定性評価装置2000は、ビデオデータ32を用いて、切羽10における崩落領域の面積である崩落面積を算出する。切羽安定性評価装置2000は、特定した音の種類及び算出した崩落面積に基づいて、切羽10の安定度を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得部と、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定部と、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出部と、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定部と、を有する切羽安定性評価装置。
【請求項2】
前記音種別特定部は、前記音声データによって表される音が、掘削音を含まない音、軽い掘削音、及び重い掘削音のうちのどの種類であるかを特定し、
重い掘削音は、軽い掘削音と比較し、高周波成分が大きい音である、請求項1に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項3】
前記崩落面積算出部は、前記ビデオデータのビデオフレームから動体を表す動体領域を検出し、前記動体領域がマーキングされた前記ビデオフレームに対してセマンティックセグメンテーションを行うことにより、前記崩落領域を表す前記動体領域を検出する、請求項1又は2に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項4】
前記崩落面積算出部は、前記ビデオデータを用いて、掘削機械によって掘削されている位置である掘削点を特定し、前記掘削点に基づいて、前記掘削機械によって砕かれた岩盤の土砂が堆積している領域である堆積領域を特定し、前記崩落領域から前記堆積領域を除外する、請求項1から3いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項5】
前記崩落面積算出部は、前記評価対象の切羽に含まれる複数の部分領域それぞれについて、その部分領域に含まれる前記崩落領域の面積を、前記崩落面積として算出する、請求項1から4いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項6】
前記安定度特定部は、前記音声データによって表される音の種類が、掘削音を含まない音ではなく、なおかつ、前記崩落面積が閾値以上である場合、前記評価対象の切羽の安定度が、複数のレベルの安定度のうち、最も高い安定度であると特定する、請求項1から5いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項7】
前記安定度特定部は、前記崩落領域の面積が前記閾値未満である場合において、前記音声データによって表される音の種類が重い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度を、前記音声データによって表される音の種類が軽い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度よりも高くする、請求項6に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項8】
前記評価対象の切羽の安定度に関する情報である安定度情報を出力する出力部を有し、
前記安定度情報は、前記評価対象の切羽の安定度の時間変化を表すグラフを含む、請求項1から7いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
【請求項9】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得ステップと、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出ステップと、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定ステップと、を有する制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得ステップと、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出ステップと、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定ステップと、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、掘削現場の安定性を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル施工などといった掘削作業の現場では、作業の安全性を確保し、必要に応じて適切な対策を実施するために、切羽の安定性を確認しながら作業を行うことが求められている。この点、切羽の安定性を人手で評価することは、主観的な部分が多く評価にバラつきが発生するため、経験豊富な熟練技術者の判断に負うところが大きい。しかしながら、掘削箇所にこのような熟練技術者を長時間臨場させることは難しい場合が多い。そこで、情報処理技術を利用して切羽の安定性を評価する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1は、切羽の発破孔に関するデータを利用して、切羽の安定度を特定する技術を開示している。特許文献2は、切羽を撮影した画像から、切羽の風化の状態、切羽の崩落の頻度、切羽面に生じた亀裂の状態、切羽を構成する岩種、及び切羽面に生じた湧き水の状態を解析することにより、切羽の安定度を特定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-071165号公報
【特許文献2】特開2019-190062号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vijay Badrinarayanan、Alex Kendall、R. Cipolla、「SegNet: A Deep Convolutional Encoder-Decoder Architecture for Image Segmentation」、[online]、2016年10月10日、arXiv、インターネット<URL:https://arxiv.org/pdf/1511.00561.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、発破掘削が行われることが前提となっている。そのため、油圧ブレーカ等で切羽を掘削するケースでは、特許文献1の技術を利用することができない。特許文献2は、切羽の画像のみを用いて切羽の安定性を評価する。そのため、切羽の安定性の評価に、視覚的な情報以外の情報が考慮されない。本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、切羽の安定性を評価する新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の切羽安定性評価装置2000は、評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得部と、前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出部と、前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定部と、を有する。
【0008】
本開示の制御方法は、コンピュータによって実行される。当該制御方法は、評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得ステップと、前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出ステップと、前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定ステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、本開示の制御方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、切羽の安定性を評価する新たな技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の切羽安定性評価装置の動作の概要を例示する図である。
図2】実施形態1の切羽安定性評価装置の機能構成を例示するブロック図である。
図3】切羽安定性評価装置を実現するコンピュータのハードウエア構成を例示するブロック図である。
図4】実施形態1の切羽安定性評価装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図5】音の種類を分類する方法を例示する図である。
図6】堆積領域を例示する図である。
図7】判定ルールに従って切羽の安定度を特定する処理の流れを例示するフローチャートである。
図8】判定ルールに従って切羽の安定度を特定する処理の流れを例示するフローチャートである。
図9】出力部を有する切羽安定性評価装置の機能構成を例示するブロック図である。
図10】安定度情報を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。また、特に説明しない限り、所定値や閾値などといった予め定められている値は、その値を利用する装置からアクセス可能な記憶部などに予め格納されている。さらに、特に説明しない限り、記憶部は、1つ以上の任意の数の記憶装置で構成される。
【0013】
図1は、実施形態1の切羽安定性評価装置2000の動作の概要を例示する図である。ここで、図1は、切羽安定性評価装置2000の概要の理解を容易にするための図であり、切羽安定性評価装置2000の動作は、図1に示したものに限定されない。
【0014】
切羽安定性評価装置2000は、評価対象の切羽である切羽10について、その安定性の評価を行う。ここでいう切羽とは、掘削機械を用いた掘削の現場(トンネル工事の現場など)における掘削面を意味する。
【0015】
切羽10の安定性の評価は、音声データ22及びビデオデータ32を用いて行われる。音声データ22は、マイクロフォン20を利用して、切羽10の周囲の音を録音することで生成された音声データである。ビデオデータ32は、カメラ30を利用して、切羽10を撮影することで得られたビデオデータである。なお、図1ではマイクロフォン20とカメラ30が分けて図示されているが、これらは、同一の筐体に収められていてもよい。
【0016】
切羽安定性評価装置2000は、音声データ22によって表されている音の種類を、複数の特定の種類の中から特定する。例えば音の種類としては、1)掘削音なし、2)軽い掘削音、及び3)重い掘削音という3つを採用することができる。「掘削音なし」に分類される音は、掘削音がほとんど又は全く含まれていない音である。このような音は、掘削機械による掘削が行われていない状況の音である。
【0017】
「軽い掘削音」に分類される音は、掘削機械の音が主体の音であり、高周波数成分が大きい。このような音は、比較的軟らかい地山を掘削するときに発生する音である。「重い掘削音」に分類される音は、掘削機械と岩盤が一体となって発生される音であり、軽い掘削音と比較し、低周波数の成分が大きくなっている。このような音は、比較的硬い地山を掘削するときに発生する音である。このように、軽い掘削音と重い掘削音の違いには、掘削している切羽10の堅さの違いが反映されている。
【0018】
さらに切羽安定性評価装置2000は、ビデオデータ32を用い、切羽10から崩落した領域である崩落領域の面積を算出する。そして、切羽安定性評価装置2000は、音声データ22を利用して特定された音の種類と、ビデオデータ32を利用して算出された崩落面積とに基づいて、切羽10の安定度を特定する。
【0019】
<作用効果の一例>
本実施形態の切羽安定性評価装置2000によれば、切羽10の周囲の音を録音することで得られた音声データ22、及び切羽10を撮像することで得られたビデオデータ32を利用して、切羽10の安定度が特定される。このように、切羽安定性評価装置2000によれば、切羽の安定性を評価する新たな技術が提供される。また、切羽安定性評価装置2000によれば、画像だけでなく、音声も利用して切羽10の安定度が特定される。そのため、画像だけを利用して切羽10の安定度を特定するケースと比較し、切羽10の安定度をより正確に特定することができる。さらに、切羽安定性評価装置2000では、掘削機械を利用した掘削作業において、切羽10の安定度を特定することができる。
【0020】
以下、本実施形態の切羽安定性評価装置2000について、より詳細に説明する。
【0021】
<機能構成の例>
図2は、実施形態1の切羽安定性評価装置2000の機能構成を例示するブロック図である。切羽安定性評価装置2000は、取得部2020、音種別特定部2040、崩落面積算出部2060、及び安定度特定部2080を有する。取得部2020は、音声データ22及びビデオデータ32を取得する。音種別特定部2040は、音声データ22によって表される音の種類を特定する。崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を利用して、崩落面積を算出する。安定度特定部2080は、音の種類及び崩落面積に基づいて、切羽10の安定度を特定する。
【0022】
<ハードウエア構成の例>
切羽安定性評価装置2000の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、切羽安定性評価装置2000の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0023】
図3は、切羽安定性評価装置2000を実現するコンピュータ500のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ500は、任意のコンピュータである。例えばコンピュータ500は、PC(Personal Computer)やサーバマシンなどといった、据え置き型のコンピュータである。その他にも例えば、コンピュータ500は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータである。コンピュータ500は、切羽安定性評価装置2000を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。
【0024】
例えば、コンピュータ500に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ500で、切羽安定性評価装置2000の各機能が実現される。上記アプリケーションは、切羽安定性評価装置2000の各機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。なお、上記プログラムの取得方法は任意である。例えば、当該プログラムが格納されている記憶媒体(DVD ディスクや USB メモリなど)から、当該プログラムを取得することができる。その他にも例えば、当該プログラムが格納されている記憶装置を管理しているサーバ装置から、当該プログラムをダウンロードすることにより、当該プログラムを取得することができる。
【0025】
コンピュータ500は、バス502、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512を有する。バス502は、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ504などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0026】
プロセッサ504は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ506は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス508は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0027】
入出力インタフェース510は、コンピュータ500と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース510には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0028】
ネットワークインタフェース512は、コンピュータ500をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0029】
ストレージデバイス508は、切羽安定性評価装置2000の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ504は、このプログラムをメモリ506に読み出して実行することで、切羽安定性評価装置2000の各機能構成部を実現する。
【0030】
切羽安定性評価装置2000は、1つのコンピュータ500で実現されてもよいし、複数のコンピュータ500で実現されてもよい。後者の場合において、各コンピュータ500の構成は同一である必要はなく、それぞれ異なるものとすることができる。
【0031】
<<マイクロフォン20及びカメラ30について>>
マイクロフォン20は、切羽10の周囲の音を記録して音声データを生成することができる任意のマイクロフォンである。マイクロフォン20によって生成された音声データ22は、任意の記憶部に格納される。例えばマイクロフォン20は、入出力インタフェース510又はネットワークインタフェース512を介して、コンピュータ500(切羽安定性評価装置2000)と通信可能に接続されている。ただし、マイクロフォン20によって生成された音声データ22が切羽安定性評価装置2000によって取得できればよく、マイクロフォン20は、切羽安定性評価装置2000と通信可能に接続されていなくてもよい。
【0032】
カメラ30は、切羽10を撮像してビデオデータを生成することができる任意のカメラである。カメラ30によって生成されたビデオデータ32は、任意の記憶部に格納される。例えばカメラ30は、入出力インタフェース510又はネットワークインタフェース512を介して、コンピュータ500(切羽安定性評価装置2000)と通信可能に接続されている。ただし、カメラ30によって生成されたビデオデータ32が切羽安定性評価装置2000によって取得できればく、カメラ30は、切羽安定性評価装置2000と通信可能に接続されていなくてもよい。
【0033】
<処理の流れ>
図4は、実施形態1の切羽安定性評価装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。取得部2020は、音声データ22及びビデオデータ32を取得する(S102)。音種別特定部2040は、音声データ22によって表されている音の種類を特定する(S104)。崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を用いて、崩落面積を算出する(S106)。安定度特定部2080は、特定された音の種類と、算出された崩落面積とに基づいて、切羽10の安定度を特定する(S108)。
【0034】
なお、切羽安定性評価装置2000によって行われる処理の流れは、図4に示した流れに限定されない。例えば、音の種類の特定(S104)とビデオデータ32の取得(S106)は、図4に示されている順序とは逆の順序で行われてもよいし、並行して行われてもよい。
【0035】
切羽安定性評価装置2000は、図4に示されている処理を繰り返し実行することにより、切羽10の安定度を繰り返し特定することが好適である。例えば切羽安定性評価装置2000は、特定の時間ごとに図4に示されている処理を行うことにより、特定の時間ごとに切羽10の安定度を特定する。
【0036】
<音声データ22及びビデオデータ32の取得:S102>
取得部2020は、音声データ22及びビデオデータ32を取得する(S102)。取得部2020が音声データ22を取得する方法は任意である。例えば取得部2020は、音声データ22が格納されている記憶部にアクセスし、音声データ22を読み出すことにより、音声データ22を取得する。その他にも例えば、取得部2020は、他の装置(例えばマイクロフォン20)から送信される音声データ22を受信することで、音声データ22を取得する。
【0037】
取得部2020がビデオデータ32を取得する方法についても同様である。すなわち、例えば取得部2020は、ビデオデータ32が格納されている記憶部からビデオデータ32を読み出したり、他の装置(例えばカメラ30)から送信されたビデオデータ32を受信したりすることで、ビデオデータ32を取得する。
【0038】
また、取得部2020は、音声データ22とビデオデータ32の双方を含むデータを取得し、当該データから、音声データ22とビデオデータ32のそれぞれを抽出してもよい。例えばカメラ30が、マイクロフォン20が内臓されているビデオカメラであるとする。この場合、カメラ30を利用して、音声と映像の双方が記録されたビデオファイルを生成することができる。取得部2020は、当該ビデオファイルを取得し、そのビデオファイルに含まれるデータのうち、映像を表すデータを、ビデオデータ32として抽出する。また、取得部2020は、当該ビデオファイルに含まれるデータのうち、音声を表すデータを、音声データ22として抽出する。
【0039】
<音の種類の特定:S104>
音種別特定部2040は、音声データ22によって表されている音の種類を特定する(S104)。例えば前述したように、音声の種類としては、1)掘削音無し、2)軽い掘削音、及び3)重い掘削音という3つの種類が用いられる。
【0040】
音声データ22によって表されている音の種類を分類する方法は様々である。例えば音種別特定部2040は、図5に示す流れの処理により、音の種類の分類を行う。図5は、音の種類を分類する方法を例示する図である。音種別特定部2040は、音声データ22を所定の時間長ごと(例えば1秒ごと)に分割することで、複数の部分音声データを得る(S202)。音種別特定部2040は、各部分音声データを閾値と比較することで、各部分音声データを2値化する(S204)。以下、この2値化で得られる値を音声フラグと呼ぶ。音声フラグが1であることは、部分音声データによって表される音声の中に、掘削音が含まれる蓋然性が高いことを意味する。
【0041】
例えば音種別特定部2040は、部分音声データによって表される音圧の時系列データから、音圧の統計値(平均値、最大値、又は最頻値など)を算出する。そして、音種別特定部2040は、算出した統計値が閾値以上であれば、当該部分音声データを、値が1の音声フラグに変換する。一方、算出した統計値が閾値未満であれば、音種別特定部2040は、当該部分音声データを、値が0の音声フラグに変換する。
【0042】
音種別特定部2040は、各部分音声データから得られた音声フラグの統計値(平均値や最頻値など)を算出する(S206)。例えば音声データ22の長さが N 秒間であり、部分音声データの長さが 1 秒間であり、統計値の種類として平均値を利用するとする。この場合、音種別特定部2040は、N 個の部分音声データから得られた N 個の音声フラグの平均値を算出する。
【0043】
音種別特定部2040は、音声フラグの統計値に基づいて、音声データ22によって表される音の種類を特定する(S208)。ここで、音声フラグの統計値が大きいほど、音声データ22において掘削音の発生頻度が高いことを意味する。また、切羽10が堅いほど、激しい掘削が必要になるために、掘削音の発生頻度が高くなる。そのため、音声データ22が重い掘削音を表している場合、音声データ22が軽い掘削音を表している場合よりも、音声フラグの統計値が大きくなる。また、音声データ22が軽い掘削音を表している場合、音声データ22に掘削音が含まれていない場合よりも、音声フラグの統計値が大きくなる。
【0044】
そこで例えば、予め、音声フラグの統計値の数値範囲を、重い掘削音を表す範囲、軽い掘削音を表す範囲、及び掘削音なしを表す範囲の3つに分割しておく。そのために、重い掘削音の範囲と軽い掘削音の範囲とを分ける閾値(以下、第1フラグ閾値)と、軽い掘削音の範囲と掘削音なしの範囲とを分ける閾値(以下、第2フラグ閾値)とを定めておく。音種別特定部2040は、音声データ22について算出した音声フラグの統計値が、上記3つの数値範囲のうちのどれに含まれるかを判定する。
【0045】
音声フラグの統計値が第1フラグ閾値以上である場合、音種別特定部2040は、音声データ22によって表される音の種類が、重い掘削音であると判定する。音声フラグの統計値が第2フラグ閾値以上第1フラグ閾値未満である場合、音種別特定部2040は、音声データ22によって表される音の種類が、軽い掘削音であると判定する。音声フラグの統計値が第2フラグ閾値未満である場合、音種別特定部2040は、音声データ22によって表される音の種類が、掘削音なしであると判定する。
【0046】
ここで、音種別特定部2040は、図5に示した処理を行う前に、音声データ22に対して任意の前処理を行ってもよい。例えば前処理は、高周波数領域や低周波数領域の雑音の除去である。なお、特定の周波数領域に含まれる雑音を除去する技術には、ハイパスフィルタやローパスフィルタを利用するなどいった既存の技術を利用することができる。
【0047】
音の種類を分類する方法は、図5に示す方法に限定されない。例えば音種別特定部2040は、訓練済みの機械学習モデルを利用して、音声データ22によって表される音の種類の分類を行ってもよい。以下、このモデルを音種別分類モデルと呼ぶ。音種別分類モデルは、音声データ22が入力されたことに応じ、その音声データ22によって表される音の種類を示すラベルを出力するように、予め訓練されている。このようなモデルには、時系列データを扱うことができる任意の機械学習モデル(例えば、RNN(recurrent neural network))を利用することができる。
【0048】
音種別分類モデルの訓練は、訓練入力データと訓練正解データのペアで構成される訓練データを複数利用することで行うことができる。訓練入力データは音声データである。訓練正解データは、対応する音声データによって表されている音の種類を示すラベルである。このような訓練データを利用して機械学習モデルの訓練を行う技術には、既存の種々の技術を利用することができる。
【0049】
ここで、音の種類の特定を行う時間的なスケールは任意である。例えば音種別特定部2040は、音声データ22によって表される音全体について、音の種類を1つ特定する。その他にも例えば、音種別特定部2040は、音声データ22を所定時間(例えば1秒ごと)ごとの音声データに分割し、各音声データについて、その音声データによって表される音の種類を特定してもよい。
【0050】
<崩落面積の算出:S106>
崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を利用して、崩落面積を算出する(S106)。崩落面積の算出は、切羽10の画像領域から崩落している領域である崩落領域を検出し、検出した崩落領域の面積を算出することで実現できる。
【0051】
ここで、切羽10から崩落領域を検出する方法について説明する。例えば崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を構成する複数のビデオフレームを比較することにより、切羽10を表す画像領域の中から、動体を表す領域である動体領域を検出する。ここで、動体を検出する技術には、背景差分法、Lucas-Kanade法、又は Gunnar Farneback法などといった種々の技術を利用することができる。
【0052】
さらに崩落面積算出部2060は、動体領域を、その領域に含まれる物体の種類ごとに分類することで、崩落領域を特定する。例えば崩落領域は、その中に含まれる物体が土砂である動体領域として定義することができる。そこで崩落面積算出部2060は、その中に含まれる物体が土砂である動体領域を、崩落領域として特定する。
【0053】
崩落領域の検出には、例えば、セマンティックセグメンテーションを利用することができる。具体的には、崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を用いて動体領域の検出を行った後、ビデオデータ32の各ビデオフレームに対し、動体領域のマーキングを行う。動体領域のマーキングは、例えば、動体領域に対して特定の色を重畳したり、動体領域を特定の色で置換したりすることによって行われる。そして、崩落面積算出部2060は、動体領域がマーキングされたビデオフレームに対してセマンティックセグメンテーションを行うことで、崩落領域を検出する。
【0054】
セマンティックセグメンテーションでは、ビデオフレームに含まれる各ピクセルについて、そのピクセルによって表される物体の種類が特定される。これにより、崩落領域に分類される各ピクセルを検出することができるため、崩落領域を検出することができる。
【0055】
セマンティックセグメンテーションを行う具体的な方法は任意である。例えば、セマンティックセグメンテーションを行うように訓練された分類器を用いることができる。セマンティックセグメンテーションを実現する分類器を訓練する技術には、既存の技術を利用することができる。例えば、非特許文献1に開示されている技術を利用することができる。
【0056】
崩落面積算出部2060は、検出した崩落領域の面積を算出することで、崩落面積を算出する。なお、崩落領域が複数検出された場合、例えば崩落面積算出部2060は、各崩落領域の面積を合計することで、崩落面積が算出される。
【0057】
ここで、予め切羽10を複数の部分領域に分割しておき、部分領域ごとに崩落面積が算出されてもよい。この場合、崩落面積は部分領域ごとに算出される。具体的には、崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32を構成する各ビデオフレームから各部分領域を検出し、部分領域ごとに崩落領域の検出を行う。そして、崩落面積算出部2060は、部分領域ごとにその部分領域の中で検出された崩落領域の面積を合計することで、部分領域ごとの崩落面積を算出する。
【0058】
崩落領域の面積は、例えば、当該領域の画像上の面積で表される。すなわち、崩落面積算出部2060は、崩落領域の面積を、崩落領域を構成するピクセルの数(すなわち、画像上の面積)として算出する。その他にも例えば、崩落面積算出部2060は、崩落領域に対応する現実世界上の領域の面積を、崩落領域の面積として算出してもよい。この場合、ビデオデータ32における画像上の単位面積に対する、現実世界上の単位面積の比率を予め定めておく。そして、崩落面積算出部2060は、崩落領域の画像上の面積を算出し、算出した値に上記比率を掛けることで、現実世界上の領域の面積で表される崩落領域の面積を算出する。例えば、1ピクセルが現実世界上の N[cm^2] に対応する場合、崩落領域を構成するピクセルの数に N を掛けることで、現実世界上の面積(単位 cm^2)として崩落領域の面積を算出することができる。
【0059】
その他にも例えば、崩落領域の面積は、全体の面積に対する崩落領域の面積の比で表されてもよい。切羽10全体について1つの崩落面積が算出される場合、全体の面積は、切羽10の面積である。一方、部分領域ごとに崩落面積が算出される場合、全体の面積は、部分領域の面積である。
【0060】
ここで、切羽を掘削機械で掘削すると、掘削機械によって砕かれた岩盤が土砂となって堆積していく。この土砂は、崩落として検出したい対象ではない。そのため、このように掘削機械によって砕かされた岩盤の土砂の面積は、崩落面積に含めないことが好適である。しかしながら、土砂が動いている領域を崩落領域として検出する場合、掘削機械によって砕かれた岩盤の土砂を表す領域(以下、堆積領域)も、崩落領域として検出されてしまう。
【0061】
そこで例えば、崩落面積算出部2060は、崩落面積から堆積領域の面積を減算することで、堆積領域が崩落領域として扱われないようにする。図6は、堆積領域を例示する図である。図において、符号100は、掘削機械が切羽10と接触する箇所の座標(以下、掘削位置100)を表す。また、符号110は、堆積領域を表す。図6において、堆積領域110は、上辺の中心が掘削位置100であり、上辺の長さが所定長Lであり、下辺が切羽10の下辺(すなわち地面)となる長方形として定められている。なお、堆積領域110の形状は長方形には限定されず、任意の形状とすることができる。
【0062】
堆積領域110の特定は、例えば以下のようにして行われる。まず崩落面積算出部2060は、各ビデオフレームから、掘削機械のうち、切羽10の掘削を行っている部分(以下、掘削部)を検出する。掘削部は、例えば油圧ブレーカの先端部分などである。ここで、掘削部の検出には、既存の種々の物体認識技術を利用することができる。例えば、掘削部を検出するように訓練された機械学習モデルを利用する方法などを採用できる。
【0063】
崩落面積算出部2060は、掘削部の特定の部位(例えば中心点や重心点など)の座標を、掘削位置100として検出する。さらに崩落面積算出部2060は、掘削位置100に基づいて、堆積領域110を決定する。
【0064】
崩落面積算出部2060は、崩落領域のうち、堆積領域110に含まれる領域の面積を、崩落面積から減算する。なお、減算をする代わりに、崩落面積算出部2060は、崩落領域の面積を合計して崩落面積を算出する際に、堆積領域110の中に含まれる崩落領域を計算対象から除外してもよい。
【0065】
また、崩落面積算出部2060は、崩落領域の検出を行う前に堆積領域110の検出を行い、崩落領域の検出対象とする領域から堆積領域110を除外してもよい。このようにすることで、堆積領域110からは崩落領域が検出されないため、堆積領域110において土砂が動いている領域の面積は、崩落面積に含まれないようになる。
【0066】
崩落面積を算出する時間的なスケールは任意である。例えば崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32に含まれる各ビデオフレームについて、そのビデオフレームによって表されている状態における崩落面積を算出する。その他にも例えば、崩落面積算出部2060は、ビデオデータ32に含まれるビデオフレームのうち、所定時間ごとに1つのビデオフレーム(例えば1秒間や1分間ごとに1つのビデオフレーム)について、崩落面積を算出してもよい。
【0067】
その他にも例えば、崩落面積算出部2060は、所定時間ごとに崩落面積の統計値(平均値や最大値など)を算出してもよい。例えば、30fps(frames per second)のビデオデータ32について、各ビデオフレームについて崩落面積が算出され、かつ、1秒間ごとに崩落面積の統計値が算出されるとする。この場合、崩落面積算出部2060は、30枚のビデオフレームごとに、それら30枚の動画フレームそれぞれから算出した崩落面積の統計値を算出する。
【0068】
<切羽10の安定度の特定:S108>
安定度特定部2080は、音声データ22によって表される音の種類と、崩落領域の面積とに基づいて、切羽10の安定度を特定する(S108)。ここで、音声データ22に掘削音が含まれておらず、かつ、崩落面積が大きいとする。これは、切羽10において、掘削による振動が加えられていなくても、大きな崩落が発生していることを意味する。そのため、このような状況では、切羽10の安定度が低いと考えられる。一方で、音声データ22に掘削音が含まれており、かつ、崩落面積が小さいとする。この場合、切羽10において、掘削による振動が加えられていても、崩落が小さいことを意味する。そのため、このような状況では、切羽10の安定度が高いと考えられる。
【0069】
そこで例えば、安定度特定部2080は、予め定められている判定ルールに基づいて、切羽10の安定度を特定する。図7及び図8は、判定ルールに従って切羽10の安定度を特定する処理の流れを例示するフローチャートである。
【0070】
図7及び図8の処理では、切羽10の安定度が、危険度レベルで表されている。切羽10の危険度レベルが高いほど、切羽10の安定度が低いこと(危険度が高いこと)を表す。より具体的には、危険度レベルとして、危険度レベル1、危険度レベル2、危険度レベル3A、危険度レベル3B、及び危険度レベル4という5つのレベルが設定されている。危険度レベル1が最も高い安定度を表し、危険度レベル4が最も低い安定度を表す。危険度レベル3Aと危険度レベル3Bはいずれも、危険度レベル2よりも安定度が低く、危険度レベル4よりも安定度が高い。ただし、危険度レベル3Aと危険度レベル3Bについては、どちらの方が安定度が高いのかは特定しておらず、例えば互いに同程度の安定度である。
【0071】
安定度特定部2080は、音声データ22に掘削音が含まれるか否かを判定する(S302)。ここで、音声データ22によって表される音の種類が掘削音無しの場合には、音声データ22に掘削音が含まれないと判定され、それ以外の場合は、音声データ22に掘削音が含まれると判定される。
【0072】
音声データ22に掘削音が含まれる場合(S302:YES)、安定度特定部2080は、崩落面積が第1面積閾値以上であるか否かを判定する(S304)。崩落面積が第1面積閾値未満である場合(S304:NO)、安定度特定部2080は、切羽10の安定度が危険度レベル1であることを特定する(S306)。切羽10の安定度が危険度レベル1となる状況は、掘削が行われている(音声データ22に掘削音が含まれている)にもかかわらず、崩落が小さい(崩落面積が第1面積閾値未満)という状況である。
【0073】
崩落面積が第1面積閾値以上である場合(S304:YES)、安定度特定部2080は、音声データ22によって表される音の種類が重い掘削音であるか否かを判定する(S308)。音声データ22によって表される音の種類が重い掘削音である場合(S308:YES)、安定度特定部2080は、切羽10の安定度が危険度レベル2であると判定する(S310)。音声データ22によって表される音の種類が重い掘削音でない場合(S308:NO)、すなわち、音の種類が軽い掘削音である場合、安定度特定部2080は、切羽10の安定度が危険度レベル3Aであると判定する(S312)。
【0074】
ここで、切羽10の安定度が危険度レベル2又は危険度レベル3Aとなる状況は、掘削が行われており(音声データ22に掘削音が含まれている)、かつ、崩落がある程度大きい(崩落面積が第1面積閾値以上である)という点で共通している。そこで、掘削の重さで安定度が区別されている。より具体的には、前述した通り、掘削音が重いケースの方が、掘削音が軽いケースよりも、掘削されている岩盤が固い。そのため、掘削音が重いケースの方が、掘削音が軽いケースよりも、切羽10の安定度が高いと考えられる。よって、音声データ22によって表される音声の種類が重い掘削音である場合の方が、音声データ22によって表される音声の種類が軽い掘削音である場合よりも、切羽10の安定度が高いと判定されている(前者は危険度レベル2で、後者は危険度レベル3A)。
【0075】
音声データ22に掘削音が含まれない場合(S302:NO)、安定度特定部2080は、崩落面積が第2面積閾値以上であるか否かを判定する(S314)。崩落面積が第2面積閾値以上である場合(S314:YES)、安定度特定部2080は、切羽10の安定度が危険度レベル4であると判定する(S316)。切羽10の安定度が危険度レベル4となる状況は、掘削が行われていない(音声データ22に掘削音が含まれていない)にもかかわらず、崩落が大きい(崩落面積が第2面積閾値以上)という状況である。
【0076】
崩落面積が第2面積閾値未満である場合(S314:NO)、安定度特定部2080は、崩落面積が第3面積閾値以上であるか否かを判定する(S318)。ここで、第2面積閾値>第3面積閾値である。崩落面積が第3面積閾値以上である場合(S318:YES)、安定度特定部2080は、切羽10の安定度が危険度レベル3Bであると特定する(S320)。切羽10の安定度が危険度レベル3Bとなる状況は、掘削が行われておらず(音声データ22に掘削音が含まれていない)、かつ、ある程度の崩落がある(崩落面積が第3面積閾値以上第2面積閾値未満)という状況である。
【0077】
崩落面積が第3面積閾値未満である場合(S318:YES)、安定度特定部2080は、切羽10の安定度を、判定保留とする(S318)。ここで、音声データ22に掘削音が含まれず、かつ、崩落面積が第3面積閾値未満であるという状況は、掘削が行われておらず、かつ、崩落が小さい状況である。このような状況の切羽10については、掘削が行われた場合における崩落の大きさを検証しないと、安定度の特定が難しい。そこで安定度特定部2080は、判定の結果を保留とする。なお、判定保留は、「判定結果なし」と表現してもよい。
【0078】
なお、図7及び図8で示されているのは判定ルールの一例であり、判定ルールは図7に示したものに限定されない。
【0079】
ここで、崩落面積が部分領域ごとに算出される場合、切羽10の安定度は、部分領域ごとに特定される。そのため例えば、安定度特定部2080は、図7及び図8で示される判定ルールに基づいて、部分領域ごとに、危険度レベルを特定する。
【0080】
<結果の出力>
切羽安定性評価装置2000は、安定度特定部2080によって特定された切羽10の安定度を示す情報(以下、安定度情報)を出力する。安定度情報の出力を行う機能構成部を、出力部と呼ぶ。図9は、出力部2100を有する切羽安定性評価装置2000の機能構成を例示するブロック図である。図9において、出力部2100から安定度情報200が出力されている。
【0081】
安定度情報200に含まれる情報は様々である。例えば安定度情報200は、安定度特定部2080によって特定された切羽10の安定度の時系列データを示す。図10は、安定度情報200を例示する図である。図10の安定度情報200は、切羽10の分割態様を表す表示210、及び安定度の時系列データのグラフである危険度グラフ220を示す。
【0082】
表示210は、切羽10がどのように部分領域に分割されているのかを表す。図10の例において、切羽10は、4つの部分領域R1からR4に分割されている。切羽安定性評価装置2000は、これら4つの分割領域それぞれについて、所定時間ごとに危険度レベルを特定する。
【0083】
危険度グラフ220は、部分領域ごとに、危険度レベルの時系列データを折れ線で示している。危険度グラフ220において、横軸は時間を示しており、縦軸は危険度レベルを示している。ここで、危険度レベル3Aと3Bはいずれも、危険度レベル3として扱われている。
【0084】
図10において、安定度情報200は、危険度グラフ220を2つ示している。危険度グラフ220-1は、切羽10の危険度をリアルタイムで示している。一方、危険度グラフ220-2は、過去(例えば前日)の切羽10の危険度を示している。
【0085】
出力部2100が安定度情報200を生成するタイミングはリアルタイムに限定されない。例えば出力部2100は、定期的なタイミングで特定の期間の切羽10についての安定度情報200を生成し、出力してもよい。具体的な例としては、出力部2100は、1日に一度、その日の切羽10についての安定度情報200を生成する。
【0086】
危険度グラフ220の時間軸のスケールは、切羽安定性評価装置2000が切羽10の安定度を特定する時間のスケールより粗くてもよい。この場合、例えば切羽安定性評価装置2000は、切羽10の安定度の統計値を算出して、危険度グラフ220にプロットする。例えば、カメラ30のフレームレートが 30fps であり、ビデオデータ32のビデオフレームごとに切羽10の安定度が特定されるとする。また、危険度グラフ220の時間軸のスケールが1秒であるとする。この場合、出力部2100は、1秒ごとに、切羽10について算出された30個の安定度の統計値を算出し、その統計値を危険度グラフ220にプロットする。
【0087】
安定度情報200が含む情報は、危険度グラフ220に限定されない。例えば出力部2100は、所定のレベル以上の危険度が特定された場合に、警告を表す安定度情報200を生成してもよい。例えば警告は、一度でも所定のレベル以上の危険度が特定された場合に行われる。その他にも例えば、警告は、所定のレベル以上の危険度が所定の頻度以上で特定された場合に行われてもよい。
【0088】
ここで、警告の方法は任意である。例えば警告を表す安定度情報200は、切羽10の状態が危険である旨のメッセージを含む。このメッセージは、テキストメッセージであってもよいし、画像で表されたメッセージであってもよいし、音声メッセージであってもよい。その他にも例えば、警告を表す安定度情報200は、警告音であってもよい。
【0089】
安定度情報200の出力態様は任意である。例えば出力部2100は、安定度情報200を任意の記憶部に格納する。その他にも例えば、出力部2100は、安定度情報200を任意のディスプレイ装置(掘削現場に設置されたディスプレイ装置など)に表示させたり、任意のスピーカ(掘削現場に設置されたスピーカなど)に再生させたりする。その他にも例えば、出力部2100は、安定度情報200を任意の端末(例えば、掘削現場の作業員や管理者が利用している端末)に送信する。
【0090】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0091】
なお、上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0092】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得部と、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定部と、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出部と、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定部と、を有する切羽安定性評価装置。
(付記2)
前記音種別特定部は、前記音声データによって表される音が、掘削音を含まない音、軽い掘削音、及び重い掘削音のうちのどの種類であるかを特定し、
重い掘削音は、軽い掘削音と比較し、高周波成分が大きい音である、付記1に記載の切羽安定性評価装置。
(付記3)
前記崩落面積算出部は、前記ビデオデータのビデオフレームから動体を表す動体領域を検出し、前記動体領域がマーキングされた前記ビデオフレームに対してセマンティックセグメンテーションを行うことにより、前記崩落領域を表す前記動体領域を検出する、付記1又は2に記載の切羽安定性評価装置。
(付記4)
前記崩落面積算出部は、前記ビデオデータを用いて、掘削機械によって掘削されている位置である掘削点を特定し、前記掘削点に基づいて、前記掘削機械によって砕かれた岩盤の土砂が堆積している領域である堆積領域を特定し、前記崩落領域から前記堆積領域を除外する、付記1から3いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
(付記5)
前記崩落面積算出部は、前記評価対象の切羽に含まれる複数の部分領域それぞれについて、その部分領域に含まれる前記崩落領域の面積を、前記崩落面積として算出する、付記1から4いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
(付記6)
前記安定度特定部は、前記音声データによって表される音の種類が、掘削音を含まない音ではなく、なおかつ、前記崩落面積が閾値以上である場合、前記評価対象の切羽の安定度が、複数のレベルの安定度のうち、最も高い安定度であると特定する、付記1から5いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
(付記7)
前記安定度特定部は、前記崩落領域の面積が前記閾値未満である場合において、前記音声データによって表される音の種類が重い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度を、前記音声データによって表される音の種類が軽い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度よりも高くする、付記6に記載の切羽安定性評価装置。
(付記8)
前記評価対象の切羽の安定度に関する情報である安定度情報を出力する出力部を有し、
前記安定度情報は、前記評価対象の切羽の安定度の時間変化を表すグラフを含む、付記1から7いずれか一項に記載の切羽安定性評価装置。
(付記9)
コンピュータによって実行される制御方法であって、
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得ステップと、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出ステップと、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定ステップと、を有する制御方法。
(付記10)
前記音種別特定ステップにおいて、前記音声データによって表される音が、掘削音を含まない音、軽い掘削音、及び重い掘削音のうちのどの種類であるかを特定し、
重い掘削音は、軽い掘削音と比較し、高周波成分が大きい音である、付記9に記載の制御方法。
(付記11)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記ビデオデータのビデオフレームから動体を表す動体領域を検出し、前記動体領域がマーキングされた前記ビデオフレームに対してセマンティックセグメンテーションを行うことにより、前記崩落領域を表す前記動体領域を検出する、付記9又は10に記載の制御方法。
(付記12)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記ビデオデータを用いて、掘削機械によって掘削されている位置である掘削点を特定し、前記掘削点に基づいて、前記掘削機械によって砕かれた岩盤の土砂が堆積している領域である堆積領域を特定し、前記崩落領域から前記堆積領域を除外する、付記9から11いずれか一項に記載の制御方法。
(付記13)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記評価対象の切羽に含まれる複数の部分領域それぞれについて、その部分領域に含まれる前記崩落領域の面積を、前記崩落面積として算出する、付記9から12いずれか一項に記載の制御方法。
(付記14)
前記安定度特定ステップにおいて、前記音声データによって表される音の種類が、掘削音を含まない音ではなく、なおかつ、前記崩落面積が閾値以上である場合、前記評価対象の切羽の安定度が、複数のレベルの安定度のうち、最も高い安定度であると特定する、付記9から13いずれか一項に記載の制御方法。
(付記15)
前記安定度特定ステップにおいて、前記崩落領域の面積が前記閾値未満である場合において、前記音声データによって表される音の種類が重い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度を、前記音声データによって表される音の種類が軽い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度よりも高くする、付記14に記載の制御方法。
(付記16)
前記評価対象の切羽の安定度に関する情報である安定度情報を出力する出力ステップを有し、
前記安定度情報は、前記評価対象の切羽の安定度の時間変化を表すグラフを含む、付記9から15いずれか一項に記載の制御方法。
(付記17)
コンピュータに、
評価対象の切羽の周囲の音を録音することで得られる音声データ、及び前記評価対象の切羽を撮像することで得られるビデオデータを取得する取得ステップと、
前記音声データによって表される音の種類を特定する音種別特定ステップと、
前記ビデオデータを用いて、前記評価対象の切羽における崩落領域の面積である崩落面積を算出する崩落面積算出ステップと、
前記特定した音の種類及び前記算出した崩落面積に基づいて、前記評価対象の切羽の安定度を特定する安定度特定ステップと、を実行させるプログラム。
(付記18)
前記音種別特定ステップにおいて、前記音声データによって表される音が、掘削音を含まない音、軽い掘削音、及び重い掘削音のうちのどの種類であるかを特定し、
重い掘削音は、軽い掘削音と比較し、高周波成分が大きい音である、付記17に記載のプログラム。
(付記19)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記ビデオデータのビデオフレームから動体を表す動体領域を検出し、前記動体領域がマーキングされた前記ビデオフレームに対してセマンティックセグメンテーションを行うことにより、前記崩落領域を表す前記動体領域を検出する、付記17又は18に記載のプログラム。
(付記20)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記ビデオデータを用いて、掘削機械によって掘削されている位置である掘削点を特定し、前記掘削点に基づいて、前記掘削機械によって砕かれた岩盤の土砂が堆積している領域である堆積領域を特定し、前記崩落領域から前記堆積領域を除外する、付記17から19いずれか一項に記載のプログラム。
(付記21)
前記崩落面積算出ステップにおいて、前記評価対象の切羽に含まれる複数の部分領域それぞれについて、その部分領域に含まれる前記崩落領域の面積を、前記崩落面積として算出する、付記17から20いずれか一項に記載のプログラム。
(付記22)
前記安定度特定ステップにおいて、前記音声データによって表される音の種類が、掘削音を含まない音ではなく、なおかつ、前記崩落面積が閾値以上である場合、前記評価対象の切羽の安定度が、複数のレベルの安定度のうち、最も高い安定度であると特定する、付記17から21いずれか一項に記載のプログラム。
(付記23)
前記安定度特定ステップにおいて、前記崩落領域の面積が前記閾値未満である場合において、前記音声データによって表される音の種類が重い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度を、前記音声データによって表される音の種類が軽い掘削音である場合における前記評価対象の切羽の安定度よりも高くする、付記22に記載のプログラム。
(付記24)
前記評価対象の切羽の安定度に関する情報である安定度情報を出力する出力ステップを有し、
前記安定度情報は、前記評価対象の切羽の安定度の時間変化を表すグラフを含む、付記17から23いずれか一項に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0093】
10 切羽
20 マイクロフォン
22 音声データ
30 カメラ
32 ビデオデータ
100 掘削位置
110 堆積領域
200 安定度情報
210 表示
220 危険度グラフ
500 コンピュータ
502 バス
504 プロセッサ
506 メモリ
508 ストレージデバイス
510 入出力インタフェース
512 ネットワークインタフェース
2000 切羽安定性評価装置
2020 取得部
2040 音種別特定部
2060 崩落面積算出部
2080 安定度特定部
2100 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
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図10