(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042093
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】有機EL表示パネルおよび有機EL表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/22 20060101AFI20230317BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230317BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230317BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230317BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230317BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230317BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149195
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】鬼丸 俊昭
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC26
3K107CC45
3K107DD88
3K107DD89
3K107FF09
3K107GG06
3K107GG24
3K107GG28
3K107GG57
5C094AA31
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
5C094DA15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB15
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH15
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】バンクの欠陥部に隣接する画素がリペア処理によって発光しなくなることを抑制する。
【解決手段】有機EL表示パネル1は、複数の画素Pのそれぞれに対応する複数の画素電極20と、複数の列バンク30と、複数の行バンク40と、複数の発光層50と、共通電極60と、を備える。有機EL表示パネル1は、列バンク32に設けられた欠陥部Dと、欠陥部Dに隣接する2つの画素P1、P2の画素電極21、22上に設けられた複数の第1絶縁部70および複数の第2絶縁部80と、を有する。複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側および他方側に位置し、かつ、列バンク32と列バンク32の両隣に位置する列バンク31、33との間において第1方向Xに沿って設けられている。複数の第2絶縁部80は、列バンク32と列バンク31、32との間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に配列された複数の画素のそれぞれに対応する複数の画素電極と、
前記第1方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクと、
前記第2方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクと、
前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に設けられた複数の発光層と、
前記複数の発光層上に設けられた共通電極と、
を備える有機EL表示パネルであって、
前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部と、
前記複数の画素のうち前記欠陥部に隣接する2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第1絶縁部と、
前記第1絶縁部とは異なる材料を含み、前記2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第2絶縁部と、
を有し、
前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置し、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1方向に沿って設けられ、
前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って設けられており、
前記第2絶縁部は、前記第1方向から見た場合に、前記第1絶縁部に接する第1領域と、前記第1領域が設けられた面とは異なる面に設けられ、前記発光層に接する第2領域と、を有し、
前記第1絶縁部は、前記画素電極に接する底面の縁端から上方に向かって傾斜する側面を有し、
前記発光層は、前記画素電極に接する底面から上方に向かって傾斜する端部を有し、
前記第2絶縁部の前記第1領域は前記第1絶縁部の前記側面に接し、前記第2領域は前記発光層の前記端部に接している
有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記第2絶縁部は、前記第1絶縁部よりも、前記発光層を形成するためのインクに対して親液性を有する
請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記第2絶縁部は、前記第1絶縁部よりも、前記発光層を形成するためのインクに対して撥液性を有する材料の割合が少ない
請求項1または2に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
前記第2絶縁部は、前記第1絶縁部から見て前記欠陥部が存在する側の前記第1絶縁部の側面に接している
請求項1~3のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項5】
前記第1絶縁部は、前記行バンクから見て前記欠陥部が存在する側の前記行バンクの側面に接している
請求項1~4のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項6】
前記欠陥部は、前記2つの列バンク、前記複数の第1絶縁部および前記複数の第2絶縁部によって囲まれている
請求項1~5のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項7】
基板と、
前記基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に配列された複数の画素のそれぞれに対応する複数の画素電極と、
前記第1方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクと、
前記第2方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクと、
前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に設けられた複数の発光層と、
前記複数の発光層上に設けられた共通電極と、
を備える有機EL表示パネルであって、
前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部と、
前記複数の画素のうち前記欠陥部に隣接する2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第1絶縁部と、
前記第1絶縁部とは異なる材料を含み、前記2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第2絶縁部と、
を有し、
前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置し、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1方向に沿って設けられ、
前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って設けられており、
前記2つの画素のそれぞれの前記複数の第1絶縁部によって挟まれた領域において、
前記発光層は、直接または前記第2絶縁部を介して、前記画素電極の全面を覆っている
有機EL表示パネル。
【請求項8】
基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に複数の画素電極を形成する画素電極形成工程と、
前記第1方向に沿って配置された前記複数の画素電極の間において、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクを形成する、および、前記第2方向に沿って配置された前記複数の画素電極の間において、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクを形成するバンク形成工程と、
前記複数の画素電極のうち、前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部に近接する画素電極上に、複数の第1絶縁部を形成する第1絶縁部形成工程と、
前記複数の第1絶縁部とは異なる材料を含む複数の第2絶縁部を、前記欠陥部に近接する画素電極上に形成する第2絶縁部形成工程と、
前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に複数の発光層を形成する発光層形成工程と、
前記複数の発光層上に共通電極を形成する共通電極形成工程と、
を含み、
前記第1絶縁部形成工程において、前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置するように、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する列バンクとの間において前記第1方向に沿って形成され、
前記第2絶縁部形成工程において、前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記両隣に位置する列バンクとの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って形成される
有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記発光層形成工程において、前記発光層は前記画素電極上に発光層形成用のインクを塗布することで形成され、
前記第2絶縁部に対する前記インクの接触角は、前記第1絶縁部に対する前記インクの接触角よりも小さい
請求項8に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルおよび有機EL表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)表示パネルは、行列状に配列された複数の画素と、格子状に設けられた複数のバンクと、を備えている。複数の画素のそれぞれは、画素電極(陽極)、発光層および共通電極(陰極)が順に積層された構造を有している。発光層は、例えば、赤、緑または青の発光材料を含み、隣り合うバンクの間に発光材料を含む発光層用インクを塗布することで形成される。
【0003】
例えば、バンクに異物や欠けなどの欠陥部がある場合、発光層用インクを塗布したときに欠陥部に隣接する2つの画素の発光層用インクが混色することがある。特許文献1には、欠陥部に隣接する2つの画素の画素電極に絶縁材料を塗布してリペア処理をした後に、発光層用インクを塗布することで、混色が拡大することを抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された方法では、リペア処理された画素、すなわちバンクの欠陥部に隣接する画素が発光しなくなることがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、バンクの欠陥部に隣接する画素が、リペア処理によって発光しなくなることを抑制する有機EL表示パネル等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る有機EL表示パネルの一態様は、基板と、前記基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に配列された複数の画素のそれぞれに対応する複数の画素電極と、前記第1方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクと、前記第2方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクと、前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に設けられた複数の発光層と、前記複数の発光層上に設けられた共通電極と、を備える有機EL表示パネルであって、前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部と、前記複数の画素のうち前記欠陥部に隣接する2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第1絶縁部と、前記第1絶縁部とは異なる材料を含み、前記2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第2絶縁部と、を有し、前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置し、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1方向に沿って設けられ、前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って設けられており、前記第2絶縁部は、前記第1方向から見た場合に、前記第1絶縁部に接する第1領域と、前記第1領域が設けられた面とは異なる面に設けられ、前記発光層に接する第2領域と、を有し、前記第1絶縁部は、前記画素電極に接する底面の縁端から上方に向かって傾斜する側面を有し、前記発光層は、前記画素電極に接する底面から上方に向かって傾斜する端部を有し、前記第2絶縁部の前記第1領域は前記第1絶縁部の前記側面に接し、前記第2領域は前記発光層の前記端部に接している。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る有機EL表示パネルの一態様は、基板と、前記基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に配列された複数の画素のそれぞれに対応する複数の画素電極と、前記第1方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクと、前記第2方向に沿って配列された前記複数の画素の間に位置し、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクと、前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に設けられた複数の発光層と、前記複数の発光層上に設けられた共通電極と、を備える有機EL表示パネルであって、前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部と、前記複数の画素のうち前記欠陥部に隣接する2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第1絶縁部と、前記第1絶縁部とは異なる材料を含み、前記2つの画素のそれぞれの画素電極上に設けられた複数の第2絶縁部と、を有し、前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置し、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1方向に沿って設けられ、前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記2つの列バンクとのそれぞれの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って設けられており、前記2つの画素のそれぞれの前記複数の第1絶縁部によって挟まれた領域において、前記発光層は、直接または前記第2絶縁部を介して、前記画素電極の全面を覆っている。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板の主面に平行な第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って行列状に複数の画素電極を形成する画素電極形成工程と、前記第1方向に沿って配置された前記複数の画素電極の間において、前記第2方向に沿って延伸する複数の列バンクを形成する、および、前記第2方向に沿って配置された前記複数の画素電極の間において、前記第1方向に沿って延伸する複数の行バンクを形成するバンク形成工程と、前記複数の画素電極のうち、前記複数の列バンクの少なくとも1つの列バンクに設けられた欠陥部に近接する画素電極上に、複数の第1絶縁部を形成する第1絶縁部形成工程と、前記複数の第1絶縁部とは異なる材料を含む複数の第2絶縁部を、前記欠陥部に近接する画素電極上に形成する第2絶縁部形成工程と、前記複数の画素電極を覆うように、前記複数の列バンクの間に複数の発光層を形成する発光層形成工程と、前記複数の発光層上に共通電極を形成する共通電極形成工程と、を含み、前記第1絶縁部形成工程において、前記複数の第1絶縁部は、前記欠陥部から見て前記第2方向の一方側および前記一方側の反対である他方側に位置するように、かつ、前記欠陥部を有する列バンクと当該列バンクの両隣に位置する列バンクとの間において前記第1方向に沿って形成され、前記第2絶縁部形成工程において、前記複数の第2絶縁部は、前記欠陥部を有する列バンクと前記両隣に位置する列バンクとの間において前記第1絶縁部に接するように前記第1方向に沿って形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機EL表示パネル等によれば、バンクの欠陥部に隣接する画素が、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】有機EL表示パネルの一部を示す平面図である。
【
図2】有機EL表示パネルを
図1のII-II線から見た断面図である。
【
図3】比較例の有機EL表示パネルの一部の平面図であり、列バンクに欠陥部が設けられた例を示す図である。
【
図4】比較例の有機EL表示パネルを
図3のIV-IV線から見た断面図である。
【
図5】実施の形態に係る有機EL表示パネルを備える表示装置を示す模式図である。
【
図6】実施の形態に係る有機EL表示パネルの一部の平面図であり、列バンクに欠陥部が設けられた例を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る有機EL表示パネルを
図6のVII-VII線から見た断面図である。
【
図8】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図9A】有機EL表示パネルの製造工程の一部を示す図である。
【
図9B】有機EL表示パネルの製造工程の一部を示す図である。
【
図9C】有機EL表示パネルの製造工程の一部を示す図である。
【
図9D】有機EL表示パネルの製造工程の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明に至る経緯)
本発明に至る経緯について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、有機EL表示パネル1の一部を示す平面図である。
図2は、有機EL表示パネルを
図1のII-II線から見た断面図である。なお、
図1および
図2は、有機EL表示パネル1の全領域のうち欠陥部が無い領域を示している。また、
図1では、後述する発光層50および共通電極60の図示を省略している。
【0014】
図1に示すように、有機EL表示パネル1は、行列状に配列された複数の画素Pと、格子状に設けられた複数の列バンク30および複数の行バンク40と、を備えている。複数の列バンク30は、第1方向Xに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って延伸している。複数の行バンク40は、第2方向Yに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第1方向Xに沿って延伸している。列バンク30の高さは、行バンク40の高さよりも高くなるように形成されている。なお、
図1に示す第3方向Zは、有機EL表示パネル1の光出射方向である。
【0015】
図2に示すように、複数の画素Pのそれぞれは、陽極となる画素電極20、電圧が印加されることで発光する発光層50、および、陰極となる共通電極60が順に積層された構造を有している。発光層50は、例えば、赤(R)、緑(G)または青(B)の発光材料を含む。発光層50は、隣り合う列バンク30の間の画素電極20上および行バンク40上に、発光材料を含む発光層用インクを塗布することで形成される。
【0016】
図3は、比較例の有機EL表示パネル101の一部の平面図であり、列バンク30に欠陥部Dが設けられた例を示す図である。
図4は、比較例の有機EL表示パネル101を
図3のIV-IV線から見た断面図である。
図3でも、発光層150および共通電極160の図示を省略している。
【0017】
有機EL表示パネルの製造過程では、列バンク30に異物や欠けなどの欠陥を有する欠陥部Dが形成されることがある。
図3および
図4には、列バンク30の一部が決壊した状態の欠陥部Dが示されている。
【0018】
列バンク30に欠陥部Dが設けられると、発光層用インクを塗布したときに、欠陥部Dに隣接する2つの画素Pの発光層用インクが混色することがある。そこで、比較例の有機EL表示パネル101では、欠陥部Dに隣接する画素Pの画素電極20上に撥液性を有する絶縁部材170を形成してリペア処理をした後、発光層用インクを塗布している。このように、撥液性を有する絶縁部材170を形成した後に発光層用インクを塗布することで、第2方向Yに隣り合う画素Pの発光層150を分断し、発光層用インクの混色が拡大することを抑制できる。
【0019】
しかしながら、絶縁部材170は撥液性を有するため、画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに発光層用インクが絶縁部材170からはじかれ、画素電極20が発光層150で覆われず、画素電極20の露出した領域が形成される。そのため、発光層150上に共通電極160を形成したときに、共通電極160の一部が画素電極20の露出した領域に電気的に接触し(ショートし)、発光層150が発光しなくなるという問題がある。このように、比較例の有機EL表示パネル101では、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなる、すなわち滅点になるという問題がある。
【0020】
それに対し、本発明の有機EL表示パネルは、以下に示す構成を有することで、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0021】
以下、本発明に係る有機EL表示パネルの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
各図において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を付している。また、各図は、模式図であり、膜厚および各部の大きさの比などは、必ずしも厳密に表したものではない。
【0023】
(実施の形態)
[有機EL表示パネルを備える表示装置]
実施の形態に係る有機EL表示パネル1を備える表示装置2について、
図5を参照しながら説明する。
【0024】
図5は、有機EL表示パネル1を備える表示装置2を示す模式図である。
【0025】
表示装置2は、有機EL表示パネル1と、有機EL表示パネル1に接続された駆動制御回路部5とを備えている。
【0026】
駆動制御回路部5は、有機EL表示パネル1に含まれる薄膜トランジスタ等を駆動する複数の駆動回路7、および、複数の駆動回路7を制御する制御回路6を有している。
【0027】
有機EL表示パネル1は、行列状に配置された複数の画素Pを有している。例えば、カラー表示用の有機EL表示パネルでは、赤(R)、緑(G)、青(B)による3種類の画素Pを有している。3種類の画素Pのうち、異なる色の画素Pは第1方向Xに沿ってこの順で繰り返し配置され、同じ色の画素Pは第2方向Yに沿って配置されている(
図1参照)。これらの画素Pは、サブ画素と呼ばれることもあるが、本実施の形態では、赤、緑、青のそれぞれの画素を画素Pと呼ぶ。なお、複数の画素Pは、3種類の画素Pに限られず、赤、緑、青、白(W)による4種類の画素であってもよい。
【0028】
[有機EL表示パネルの構成]
実施の形態に係る有機EL表示パネル1の構成について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
【0029】
図6は、有機EL表示パネル1の一部の平面図であり、列バンク30に欠陥部Dが設けられた例を示す図である。
図7は、有機EL表示パネル1を
図6のVII-VII線から見た断面図である。
図6では、発光層50および共通電極60の図示を省略している。以下、有機EL表示パネル1を表示パネル1と呼ぶ場合がある。
【0030】
表示パネル1は、基板10と、複数の画素Pのそれぞれに1対1で対応する複数の画素電極20と、基板10上に設けられた複数の列バンク30および複数の行バンク40と、複数の発光層50(
図7参照)と、共通電極60(
図7参照)とを備えている。また、本実施の形態の表示パネル1は、複数の第1絶縁部70と、複数の第2絶縁部80と、を備えている。
【0031】
図6には、複数の列バンク30の一例である列バンク31、32および33が示され、複数の行バンク40の一例である行バンク41、42が示されている。同図には、複数の画素Pの一例として画素P1およびP2が示され、複数の画素電極20の一例である画素電極21および22が示されている。同図には、複数の第1絶縁部70の一例である第1絶縁部71、72、73および74が示され、複数の第2絶縁部80の一例である、第2絶縁部81、82、83および84が示されている。
【0032】
基板10には、複数の画素Pを発光制御する複数の薄膜トランジスタなどが設けられている(図示省略)。複数の薄膜トランジスタのそれぞれは、基板10上に設けられた複数の画素電極20に接続されている。
【0033】
複数の画素電極20は、基板10の主面10aに平行な第1方向Xおよび第2方向Yに沿って行列状に配置されている。画素電極20は、光の反射率が高い導電性材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、モリブデンなどによって形成される。
【0034】
複数の列バンク30は、第1方向Xに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第2方向Yに沿って延伸している。基板10の主面10aを基準としたときの高さは、列バンク30は、行バンク40よりも高くなるように形成されている(
図7参照)。列バンク30は、絶縁性を有する材料、例えばアクロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基などのエチレン性の二重結合を有する熱硬化樹脂などによって形成されている。また、列バンク30は、発光層50を形成するための発光層用インクに対して撥液性を有する材料を含んでいる。
【0035】
複数の行バンク40は、第2方向Yに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第1方向Xに沿って延伸している。すなわち行バンク40は、列バンク30に直交している。行バンク40は、絶縁性を有する材料、例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、ノボラックフェノール樹脂などによって形成されている。また、行バンク40は、発光層用インクに対して親液性を有する材料を含んでいる。
【0036】
発光層50は、例えば有機材料に溶媒を混合した発光溶液を塗布することで形成される。有機材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
【0037】
複数の発光層50は、複数の列バンク30の間に設けられている。発光層50は、例えば、隣り合う列バンク30の間に発光層用インクを塗布することで形成されるが、行バンク40は親液性を有しているため、画素電極20上だけでなく行バンク40上にも形成される。つまり、発光層50は、第2方向Yに沿って配置された複数の画素電極20および複数の行バンク40を覆うように、第2方向Yに沿って帯状に形成される。なお、本実施の形態の発光層50は、欠陥部Dに隣接する画素Pにおいて、分断された状態となっている。これについては後述する。
【0038】
共通電極60は、複数の発光層50上に設けられている。共通電極60も、発光層50と同様に、複数の列バンク30の間に設けられている。共通電極60は、例えばスパッタ法または蒸着法により、発光層50を覆うように第2方向Yに沿って帯状に設けられている。なお、共通電極60は、複数の発光層50および複数の列バンク30の全面を覆うように形成されていてもよい。
【0039】
ここで、複数の列バンク30のうちの1つの列バンク32に欠陥部Dが設けられた例について説明する。欠陥部Dとは、列バンク30において異物が設けられた部分または列バンク30において欠けが生じている部分である。
図6および
図7には、列バンク32の一部が決壊した状態の欠陥部Dが示されている。
【0040】
表示パネル1では、異なる色の複数の画素Pが複数の列バンク30によって仕切られ、同じ色の複数の画素Pが複数の行バンク40によって仕切られている。そのため、例えば列バンク32に欠陥部Dが設けられると、発光層用インクを塗布してから乾燥するまでの間に、欠陥部Dに隣接する2つの画素P1、P2の発光層用インクが混色することがある。
【0041】
そこで、本実施の形態でも比較例と同様に、欠陥部Dに隣接する画素Pの画素電極20上に複数の第1絶縁部70を形成するリペア処理を施す。リペア処理は、例えば、第1絶縁部70を形成するための絶縁材料を、針を用いて塗布する処理である。なお、リペア処理は、インクジェット法またはディスペンス法等によって実行されてもよい。
【0042】
図6に示すように、複数の第1絶縁部70は、複数の画素電極20のうち欠陥部Dに隣接する2つの画素電極21、22に設けられる。例えば、複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側(第2方向Yのマイナス側)および一方側の反対である他方側(第2方向Yのプラス側)に位置し、かつ、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する2つの列バンク31、33とのそれぞれの間において第1方向Xに沿って設けられている。
【0043】
具体的には、第1絶縁部71は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側に位置し、列バンク32と列バンク31との間において第1方向Xに沿って設けられている。第1絶縁部72は、欠陥部Dから見て第2方向Yの他方側に位置し、列バンク32と列バンク31との間において第1方向Xに沿って設けられている。第1絶縁部73は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側に位置し、列バンク32と列バンク33との間において第1方向Xに沿って設けられている。第1絶縁部74は、欠陥部Dから見て第2方向Yの他方側に位置し、列バンク32と列バンク33との間において第1方向Xに沿って設けられている。なお、上記における第2方向Yの一方側とは、例えば、欠陥部Dが端から数えて第k(kは1以上の整数)の行バンク40と第(k+1)の行バンク40との間に設けられている場合、欠陥部Dから見て第kの行バンク40側を意味する。第2方向Yの他方側とは、欠陥部Dから見て第(k+1)の行バンク40側を意味する。
【0044】
また、第1絶縁部71、73は、行バンク41の2つの側面40aのうち、行バンク41から見て欠陥部Dが存在する側(第2方向Yのプラス側)の側面40aに接している。第1絶縁部72、74は、行バンク42の2つの側面40aのうち、行バンク42から見て欠陥部Dが存在する側(第2方向Yのマイナス側)の側面40aに接している。この第1絶縁部70は、行バンク40よりも高さが高く、また、行バンク40よりも幅が狭くなるように形成される。
【0045】
第1絶縁部70は、発光層50を形成するための発光層用インクに対して撥液性を有する材料、例えば、フッ素樹脂を含む樹脂によって形成されている。第1絶縁部70の樹脂としては、光や熱で硬化させることが可能な樹脂、例えばポリイミドやアクリル、または、アクロイル基、アリル基、ビニル基などを有する樹脂にフッ素を導入したフッ化ポリマーなどの樹脂材料が用いられる。
【0046】
第1絶縁部70を、撥液性を有する材料とすることで、隣り合う列バンク30の間に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70上に形成されなくなる。そのため、第2方向Yにおいて隣り合う画素Pの発光層用インクが繋がらずに分断して形成され、発光層用インクの混色が拡大することを抑制できる。
【0047】
しかしながら、第1絶縁部70は撥液性を有するため、画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70からはじかれてしまう。そこで、本実施の形態の表示パネル1では、さらに、第1絶縁部70とは異なる材料を含む第2絶縁部80が設けられている。
【0048】
図6に示すように、複数の第2絶縁部80は、複数の画素電極20のうち欠陥部Dに隣接する2つの画素電極21、22に設けられる。例えば、複数の第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する2つの列バンク31、33とのそれぞれの間において、第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられている。
【0049】
具体的には、第2絶縁部81は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側に位置し、列バンク32と列バンク31との間において第1方向Xに沿って設けられている。第2絶縁部82は、欠陥部Dから見て第2方向Yの他方側に位置し、列バンク32と列バンク31との間において第1方向Xに沿って設けられている。第2絶縁部83は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側に位置し、列バンク32と列バンク33との間において第1方向Xに沿って設けられている。第2絶縁部84は、欠陥部Dから見て第2方向Yの他方側に位置し、列バンク32と列バンク33との間において第1方向Xに沿って設けられている。この第2絶縁部80は、行バンク40よりも高さが低く、また、行バンク40よりも幅が狭くなるように形成される。欠陥部Dは、2つの列バンク31、33、複数の第1絶縁部71~74、および、複数の第2絶縁部81~84によって囲まれた構造となっている。
【0050】
第2絶縁部80は、光や熱で硬化させることが可能な樹脂、例えばポリイミドやアクリル、または、アクロイル基、アリル基、ビニル基などを有する樹脂材料で形成されている。第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも発光層用インクに対して親液性を有している。言い換えると、第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも、発光層用インクに対して撥液性を有する材料の割合が少ない。なお、親液性は、接触角によって評価することができ、接触角が小さいほど親液性を有するといえる。本実施の形態では、第2絶縁部80に対する発光層用インクの接触角は、第1絶縁部70に対する発光層用インクの接触角よりも小さい。例えば、第2絶縁部80に対する発光層用インクの接触角は30°以下であり、第1絶縁部70に対する発光層用インクの接触角は50°以上である。なお、第2絶縁部80には、第1絶縁部70に対しても親液性を有する材料が含まれている。
【0051】
さらに、画素Pの断面構造について、
図7を参照しながら詳しく説明する。ここでは画素P1を例に挙げて説明するが、画素P2も同様である。また、ここでは、一方側の第1絶縁部71および第2絶縁部81を例に挙げて説明するが、他方側の第1絶縁部72および第2絶縁部82も同様である。
【0052】
図7に示すように、第1絶縁部71は、行バンク41の2つの側面40aのうち、行バンク41から見て欠陥部Dが存在する側の側面40aに接するように画素電極20上に形成されている。第1絶縁部71は、画素電極20に接する底面70c、および、底面70cの縁端から上方に向かって傾斜する側面70aを有している。第1絶縁部71の側面70aは、底面70cの近くの裾野部分においてスロープ状となっている。
【0053】
第2絶縁部81は、第1絶縁部71の側面70aと発光層50との間に設けられ、第1絶縁部71に接する第1領域80aと、発光層50に接する第2領域80bとを有している。第1領域80aおよび第2領域80bは、第2絶縁部81の表面の異なる面に設けられている。
【0054】
第1領域80aは、第2絶縁部81から見て第1絶縁部71側に位置している。また、第1領域80aは、第1絶縁部70から見て欠陥部Dが存在する側の第1絶縁部71の側面70aの裾野部分に接している。
【0055】
第2領域80bは、第2絶縁部81から見て画素P1内の発光層50側に位置し、発光層50の端部50dに接している。具体的には、発光層50は、画素電極21に接する底面50cから上方に向かって傾斜する端部50dを有し、第2絶縁部81の第2領域80bは、この端部50dの下面に接している。つまり、発光層50は、2つの画素P1、P2のそれぞれの複数の第1絶縁部70によって挟まれた領域(発光領域)において、直接または第2絶縁部81を介して、画素電極20の全面を覆っている。表示パネル1が、第1絶縁部70に加えさらに第2絶縁部81を有することで、例えば画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70にはじかれてしまうという現象を抑えることができる。
【0056】
このように本実施の形態の表示パネル1は、第1絶縁部70に加えさらに第2絶縁部80を有している。第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と、2つの列バンク31、33とのそれぞれの間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられている。これによれば、画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70の画素電極20に接する裾近傍においてはじかれてしまうことを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。言い換えると、画素電極20の全面を発光層50で覆うことができる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、第1絶縁部70のリペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0057】
[有機EL表示パネルの製造方法]
有機EL表示パネル1の製造方法について、
図8および
図9A~
図9Dを参照しながら説明する。
【0058】
図8は、有機EL表示パネル1の製造方法を示すフローチャートである。
図9A、
図9B、
図9Cおよび
図9Dは、有機EL表示パネル1の製造工程の一部を示す図である。
【0059】
まず、基板10の主面10aに平行な第1方向Xおよび第2方向Yに沿って行列状に複数の画素電極20を形成する(ステップS11)。次に、第1方向Xに沿って配置された複数の画素電極20の間において、第2方向Yに沿って延伸する複数の列バンク30を形成する。また、第2方向Yに沿って配置された複数の画素電極20の間において、第1方向Xに沿って延伸する複数の行バンク40を形成する(ステップS12)。
【0060】
これらのステップS11およびS12により、基板10上に複数の画素電極20、複数の列バンク30および複数の行バンク40が形成される(
図9A参照)。
【0061】
次に、列バンク30の欠陥有無の検査が行われる。
図9Aに示すように、列バンク30に欠陥部Dが存在する場合、以降に示すリペア処理が実行される。以下では、複数の列バンク30のうち列バンク32に欠陥部Dが存在する例について説明する。
【0062】
次に、複数の画素電極20のうち、列バンク32に設けられた欠陥部Dに近接する画素電極20(
図9Bに示す画素電極21)上に、複数の第1絶縁部70を形成する(ステップS13)。このステップにおいて、複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側および他方側に位置するように、かつ、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する列バンク31、33との間において第1方向Xに沿って形成される。なお、第1絶縁部70は、例えば、針の先端に保持された撥液性を有する絶縁材料を画素電極20上に転写することで形成される。
【0063】
次に、複数の第1絶縁部70とは異なる材料を含む複数の第2絶縁部80を、欠陥部Dに近接する画素電極20(
図9Cに示す画素電極21)に形成する(ステップS14)。このステップにおいて、複数の第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と両隣に位置する列バンクと31、33との間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って形成される。第2絶縁部80は、例えば、針の先端に保持された親液性を有する絶縁材料を画素電極20上に転写することで形成される。第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも発光層用インクに対して親液性を有している。言い換えると、第2絶縁部80に対する発光層用インクの接触角は、第1絶縁部70に対する発光層用インクの接触角よりも小さい。
【0064】
次に、複数の画素電極20を覆うように、複数の列バンク30の間に複数の発光層50を形成する(ステップS15)(
図9D参照)。発光層50は、発光材料を含む発光層用インクをインクジェット法などによって塗布することで形成される。発光層用インクは、例えば、塗布直後は行バンク40の高さよりも高く、乾燥後は行バンク40の高さよりも低くなる。
【0065】
次に、複数の発光層50上に共通電極60を形成する(ステップS16)(
図7参照)。共通電極60は、共通電極60となる金属材料をスパッタリングまたは蒸着することで形成される。これらのステップS11~S16が実行されることで、表示パネル1が作製される。
【0066】
この表示パネル1の製造方法は、第1絶縁部70を形成するステップの後に、第2絶縁部80を形成するステップを含む。第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と、両隣に位置する列バンク31、33とのそれぞれの間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられる。これによれば、発光層50を形成するステップにて画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70の画素電極20に接する裾近傍においてはじかれてしまうことを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、共通電極60を形成するステップにて、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、欠陥部Dに隣接する画素Pが、第1絶縁部70のリペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0067】
また、有機EL表示パネル1の製造工程では、発光層50を形成する前に列バンク30の欠陥有無の検査が行われるが、実際には混色が発生しない程度でも欠陥として扱われ、リペア処理が行われることがある。リペア処理が行われた場合、比較例に示した方法では画素電極20と共通電極160とがショートして滅点となる。それに対し本実施の形態の方法では、画素電極20と共通電極60とがショートすることを防止できるので、実際には混色が発生しない程度であるが検査にて欠陥とされた画素Pを、滅点とせずに発光させることができる。
【0068】
[効果等]
本実施の形態に係る有機EL表示パネル1は、基板10と、基板10の主面10aに平行な第1方向Xおよび第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って行列状に配列された複数の画素Pのそれぞれに対応する複数の画素電極20と、第1方向Xに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第2方向Yに沿って延伸する複数の列バンク30と、第2方向Yに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第1方向Xに沿って延伸する複数の行バンク40と、複数の画素電極20を覆うように、複数の列バンク30の間に設けられた複数の発光層50と、複数の発光層50上に設けられた共通電極60と、を備える。また、有機EL表示パネル1は、複数の列バンク30の少なくとも1つの列バンク(例えば列バンク32)に設けられた欠陥部Dと、複数の画素Pのうち欠陥部Dに隣接する2つの画素P1、P2のそれぞれの画素電極21、22上に設けられた複数の第1絶縁部70と、第1絶縁部70とは異なる材料を含み、2つの画素P1、P2のそれぞれの画素電極21、22上に設けられた複数の第2絶縁部80と、を有する。複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側および一方側の反対である他方側に位置し、かつ、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する2つの列バンク31、33とのそれぞれの間において第1方向Xに沿って設けられている。複数の第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と2つの列バンク31、32とのそれぞれの間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられている。第2絶縁部80は、第1方向Xから見た場合に、第1絶縁部70に接する第1領域80aと、第1領域80aが設けられた面とは異なる面に設けられ、発光層50に接する第2領域80bと、を有している。第1絶縁部70は、画素電極20に接する底面70cの縁端から上方に向かって傾斜する側面70aを有している。発光層50は、画素電極20に接する底面50cから上方に向かって傾斜する端部50dを有している。第2絶縁部80の第1領域80aは第1絶縁部70の側面70aに接し、第2領域80bは発光層50の端部50dに接している。
【0069】
このように、第1絶縁部70に加え、画素電極20上にさらに第2絶縁部80を設けることで、例えば画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70の画素電極20に接する裾近傍においてはじかれてしまうことを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、第1絶縁部70のリペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0070】
また、第2絶縁部80が上記の第1領域80aおよび第2領域80bを有することで、画素電極20が露出しないように、画素電極20上に発光層50を設けることができる。そのため、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0071】
また、第2絶縁部80の第1領域80aが第1絶縁部70の側面70aに接し、第2領域80bが発光層50の端部50dに接していることで、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができる。そのため、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0072】
また、第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも、発光層50を形成するためのインクに対して親液性を有していてもよい。
【0073】
このように、第2絶縁部80が親液性を有することで、発光層用インクを塗布したときに第2絶縁部80と発光層用インクとを密着させることができる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0074】
また、第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも、発光層50を形成するためのインクに対して撥液性を有する材料の割合が少なくてもよい。
【0075】
この第2絶縁部80によれば、発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第2絶縁部80に対してはじかれることを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0076】
また、第2絶縁部80は、第1絶縁部70から見て欠陥部Dが存在する側の第1絶縁部70の側面70aに接していてもよい。
【0077】
これによれば、画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70の画素電極20に接する裾近傍においてはじかれてしまうことを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0078】
また、第1絶縁部70は、行バンク40から見て欠陥部Dが存在する側の行バンク40の側面40aに接していてもよい。
【0079】
これによれば、欠陥部Dに隣接する画素P以外の画素に、発光層用インクの混色が拡大することを抑制できる。
【0080】
また、欠陥部Dは、2つの列バンク31、33、複数の第1絶縁部70および複数の第2絶縁部80によって囲まれていてもよい。
【0081】
これによれば、欠陥部Dに隣接する画素P以外の画素に、発光層用インクの混色が拡大することを抑制できる。また、欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0082】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル1は、基板10と、基板10の主面10aに平行な第1方向Xおよび第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って行列状に配列された複数の画素Pのそれぞれに対応する複数の画素電極20と、第1方向Xに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第2方向Yに沿って延伸する複数の列バンク30と、第2方向Yに沿って配列された複数の画素Pの間に位置し、第1方向Xに沿って延伸する複数の行バンク40と、複数の画素電極20を覆うように、複数の列バンク30の間に設けられた複数の発光層50と、複数の発光層50上に設けられた共通電極60と、を備える。また、有機EL表示パネル1は、複数の列バンク30の少なくとも1つの列バンク(例えば列バンク32)に設けられた欠陥部Dと、複数の画素Pのうち欠陥部Dに隣接する2つの画素P1、P2のそれぞれの画素電極21、22上に設けられた複数の第1絶縁部70と、第1絶縁部70とは異なる材料を含み、2つの画素P1、P2のそれぞれの画素電極21、22上に設けられた複数の第2絶縁部80と、を有する。複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側および一方側の反対である他方側に位置し、かつ、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する2つの列バンク31、33とのそれぞれの間において第1方向Xに沿って設けられている。複数の第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と2つの列バンク31、32とのそれぞれの間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられている。2つの画素P1、P2のそれぞれの複数の第1絶縁部70によって挟まれた領域において、発光層50は、直接または第2絶縁部80を介して、画素電極20の全面を覆っている。
【0083】
このように、発光層50が、直接または第2絶縁部80を介して、画素電極20の全面を覆っていることで、列バンク30の欠陥部Dに隣接する画素Pが、第1絶縁部70のリペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0084】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル1の製造方法は、基板10の主面10aに平行な第1方向Xおよび第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って行列状に複数の画素電極を形成する画素電極形成工程と、第1方向Xに沿って配置された複数の画素電極20の間において、第2方向Yに沿って延伸する複数の列バンク30を形成する、および、第2方向Yに沿って配置された複数の画素電極20の間において、第1方向Xに沿って延伸する複数の行バンク40を形成するバンク形成工程と、複数の画素電極20のうち、複数の列バンク30の少なくとも1つの列バンク(例えば列バンク32)に設けられた欠陥部Dに近接する画素電極21、22上に、複数の第1絶縁部70を形成する第1絶縁部形成工程と、複数の第1絶縁部70とは異なる材料を含む複数の第2絶縁部80を、欠陥部Dに近接する画素電極21、22上に形成する第2絶縁部形成工程と、複数の画素電極20を覆うように、複数の列バンク30の間に複数の発光層50を形成する発光層形成工程と、複数の発光層50上に共通電極60を形成する共通電極形成工程と、を含む。第1絶縁部形成工程において、複数の第1絶縁部70は、欠陥部Dから見て第2方向Yの一方側および一方側の反対である他方側に位置し、かつ、欠陥部Dを有する列バンク32と当該列バンク32の両隣に位置する列バンク31、33との間において第1方向Xに沿って形成されている。第2絶縁部形成工程において、複数の第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と両隣に位置する列バンク31、33との間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って形成される。
【0085】
この製造方法では、第1絶縁部70を形成するステップの後に、第2絶縁部80を形成するステップがある。第2絶縁部80は、欠陥部Dを有する列バンク32と、両隣に位置する列バンク31、33とのそれぞれの間において第1絶縁部70に接するように第1方向Xに沿って設けられる。これによれば、発光層50を形成するステップにて画素電極20上に発光層用インクを塗布したときに、発光層用インクが第1絶縁部70の画素電極20に接する裾近傍においてはじかれてしまうことを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、共通電極60を形成するステップにて、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、欠陥部Dに隣接する画素Pが、第1絶縁部70のリペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0086】
また、発光層形成工程において、発光層50は画素電極20上に発光層形成用のインクを塗布することで形成され、第2絶縁部80に対するインクの接触角は、第1絶縁部70に対するインクの接触角よりも小さくてもよい。
【0087】
この接触角の関係によれば、発光層形成用のインクを塗布したときに第2絶縁部80に対してインクがはじかれることを抑制できる。そのため、画素電極20が露出しないように画素電極20上に発光層50を設けることができ、画素電極20と共通電極60とが電気的に接触することを抑制できる。これにより、欠陥部Dに隣接する画素Pが、リペア処理によって発光しなくなることを抑制できる。
【0088】
(その他の形態)
以上、本発明に係る有機EL表示パネル1について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。上述した実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る有機EL表示パネル1を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0089】
例えば、有機EL表示パネル1の発光層50は、正孔注入層、有機層および電子注入層が順に積層されることで形成されていてもよい。例えば、第2絶縁部80は、第1絶縁部70よりも、正孔注入層を形成するためのインクに対して親液性を有していてもよい。また、正孔注入層を形成するためのインクの接触角は、第2絶縁部80に対する接触角のほうが第1絶縁部70に対する接触角よりも小さくてもよい。
【0090】
上記の有機EL表示パネル1では、ディスプレイの水平方向を第1方向Xとし、垂直方向を第2方向Yとしているが、それに限られず、表示装置2の水平方向を第2方向Yとし、垂直方向を第1方向Xとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る有機EL表示パネルは、高い表示品位が要求されるディスプレイ装置等に有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 有機EL表示パネル
2 表示装置
5 駆動制御回路部
6 制御回路
7 駆動回路
10 基板
10a 主面
20、21、22 画素電極
30、31、32、33 列バンク
40、41、42 行バンク
40a 側面
50 発光層
50c 底面
50d 端部
60 共通電極
70、71、72、73、74 第1絶縁部
70a 側面
70c 底面
80、81、82、83、84 第2絶縁部
80a 第1領域
80b 第2領域
D 欠陥部
P 画素
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向