(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042179
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】単相の永久磁石式同期リニア発電機を利用した振動発電装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20230317BHJP
H02K 35/02 20060101ALI20230317BHJP
H02P 103/20 20150101ALN20230317BHJP
【FI】
H02P9/00 Z
H02K35/02
H02P103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149346
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕彦
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA03
5H590CA30
5H590CC02
5H590CD01
5H590CE05
5H590EB21
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA19
5H590HA27
(57)【要約】
【課題】単相の永久磁石式同期リニア発電機を利用し、小型にして僅かの振動からでも効率良く発電を行うことが可能な、振動発電装置を実現する。
【解決手段】リニア発電機1のコイル14に生じる誘起電圧Eを検出する振動センサ15と、スイッチング素子21a~21dを有しコイル14の入出力端に接続されて交流電圧を直流電圧に変換する単相コンバータ21と、振動センサ15が検出する検出値に基づき負荷電流Iの値が所望の値をとり且つ誘起電圧Eと同相となる様にスイッチング素子21a~21dを制御する制御手段4と、を備えるものとした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相の永久磁石式同期リニア発電機を用い、外部から受ける振動で発電を行う振動発電装置であって、
前記リニア発電機のコイルに生じる誘起電圧を検出する振動センサと、スイッチング素子を有し前記コイルの入出力端に接続されて交流電圧を直流電圧に変換する単相コンバータと、前記振動センサが検出する検出値に基づき負荷電流が所望の値をとり且つ前記誘起電圧と同相となる様に前記スイッチング素子を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする振動発電装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スイッチング動作を通じて前記単相コンバータの出力電圧を、前記誘起電圧よりも高い電圧に制御する、請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記振動センサの検出値から誘起電圧の振幅を算出する誘起電圧算出部と、所望の負荷電流に対して前記コイルの電圧降下を算出するコイル電圧算出部と、前記所望の負荷電流が前記誘起電圧と同相となるための前記単相コンバータの出力電圧の振幅と位相を算出するコンバータ指令生成部と、前記コンバータ指令に基づいて前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、を備える請求項1又は2に記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記振動センサの検出値から誘起電圧と同相で負荷電流の値が所望の値となるような電流指令を生成する電流指令生成部と、負荷電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出する負荷電流と前記電流指令との偏差に基づいて前記単相コンバータへの指令を生成するコンバータ指令生成部と、前記コンバータ指令に基づいて前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、を備える請求項1又は2に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーハーベスト用途等に特に有用となる、単相の永久磁石式同期リニア発電機を利用した振動発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばエネルギーハーベスト用途として、余剰振動の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する機構の一つに、特許文献1に示される様な単相の永久磁石式同期リニア発電機が知られている。余剰振動とは、振動させる目的でなくても生じてしまう振動を言う。この発電機は、共振バネを利用して振幅の増大した振動を取り出す態様で用いられる。
【0003】
図6は発電機1のモデルである。コイル14は巻線インダクタンスLと巻線抵抗rを有しており、コイル14に誘起電圧(誘導起電力)Eが発生すると、コイル14の端子14a、14b間に電圧が現れる。このとき、コイル14の端子14a、14b間に負荷抵抗Rが接続されることで、負荷抵抗Rを通じて出力電圧Vを取り出すことができる。
【0004】
この場合、一般に余剰振動は振幅が数十mm程度以下と小さく、周波数も数十Hz程度以下と低いので、十分な誘起電圧Eを得るには、電機子の巻数を多くすることが必要である。また、発電機1の出力電圧Vは、負荷抵抗Rへの印加電圧であり、この負荷電圧RI、巻線抵抗rによる電圧降下rI、及び巻線インダクタンスLによる電圧降下ωLIの関係をベクトル図で示すと
図7のようになる。したがって、コイル14による電機子の巻数(ターン数)が多い発電機は巻線インダクタンスLが大きくなるため、巻線インダクタンスLが大きいほど出力電圧Vが巻線インダクタンスLにより制限される。
【0005】
発電機1の出力電力Wは、負荷抵抗Rで消費される電力(負荷電力:R・I2)であって、次式で表される。
【0006】
W = R・I2 = R・E2/{(R+r)2+(ωL)2}≧0 …(1)
【0007】
R→0の場合、分子が0になり、R→∞の場合、分母が0になる。したがって、0≦R≦∞の範囲で出力電力Wに極大値が存在する。そこで、負荷抵抗Rについて、出力電力W(R・I2)を微分すると次式が得られる。
【0008】
W'=(R・I2)'=[(E2)・R/{(R+r)2+(ωL)2}]'
=(E2)・{-R2+r2+(ωL)2}/{(ωL)2+(R+r)2}2 …(2)
【0009】
W'=(R・I2)'=0の時、出力電力W(R・I2)は極大値をとるため、-R2+r2+(ωL)2=0として、負荷抵抗Rは以下の(3)式で表され、最大出力電力(最大負荷電力)Wmaxは(4)式で表される。
【0010】
R=√{r2+(ωL)2} …(3)
Wmax=R・I2=(E2)/「2・[√{r2+(ωL)2}+r]」 …(4)
【0011】
以上の様に、最大負荷電力Wmaxは、巻線抵抗rのみならず、巻線インダクタンスLによっても制限される。
【0012】
この問題に対しては、特許文献2に示される様に、巻線インダクタンスLをキャンセルする様に、コンデンサCを負荷に直列に接続することによって、解決を図ることができる(
図8参照)。以下、このコンデンサCを直列コンデンサと称する。
【0013】
ベクトル図としては、
図9(a)に示すように、直列コンデンサCのインピーダンス1/(ωC)によって巻線インダクタンスLのインピーダンスωLを減じることができるから、
図9(b)に示すようにωL=1/ωCとすることによって、巻線インダクタンスLの影響を完全にキャンセルすることができる。これにより、負荷電流Iの位相を発電機1の誘起電圧Eと同相とすることができる。
【0014】
図10は発電機1に直列コンデンサCを接続しないときの発電機の出力電力Wを示し、
図11は発電機1に直列コンデンサCを接続したときの発電機の出力電力Wを示している。
【0015】
直列コンデンサCを接続しないときには上述した式(2)~式(4)が成立するのに対して、直列コンデンサCを接続したときの式(2)~式(4)に対応する式は、下記の式(5)~式(7)のようになる。
【0016】
W'=(R・I2)'=[(E2)・R/{(R+r)2+(ωL-1/ωC)2}]'
=(E2)*{-R2+r2+(ωL-1/ωC)2}/{(ωL-1/ωC)2+(R+r)2}2 …(5)
R=√{r2+(ωL-1/ωC)2}
=r …(6)
Wmax=R・I2=(E2)/「2・[√{r2+(ωL-1/ωC)2}+r]」
=E2/4r …(7)
【0017】
このように、発電機1が出力する電力(電圧、電流)に関し、負荷電流Iが発電機1の誘起電圧Eと同相ではない
図10の状態から、ωL-1/ωC=0として負荷電流Iを発電機1の誘起電圧Eと同相にする
図11の状態にすることによって、発電機1の出力電力Wの無効分を無くし発電機1の巻線抵抗rでの消費電力を減らして効率を上げることができる。また、巻線インダクタンスLに起因する電力制限分を無くすことができるので、発電機1の巻線抵抗rだけによる上限(E
2)/(4・r)まで電力を出力することが可能となる。
【0018】
図10の例では、E=AC100V,50Hz, L=50mH, r=10Ωの条件下で、発電機1の最大出力電力(最大負荷電力)Wmaxは175Wだったのに対して、
図11の例では、E=AC100V,50Hz, L=50mH, r=10Ω, C=200μFの条件下で、発電機1の最大出力電力(最大負荷電力)Wmaxは250Wと大幅に効率が改善している。
【0019】
また、
図12に示すように、発電機1と負荷抵抗Rとの間に、ダイオードDによる整流回路100aと平滑コンデンサCdcとからなる電力変換部100を設けた場合にも、発電機1の最大出力電力(最大負荷電力)Wmaxは250Wとなり、直列コンデンサCを接続する効果は変わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2017-229118
【特許文献2】特開平10-80197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、直列コンデンサCは交流対応が必要で、通常、フィルムコンデンサを選択するが、
図11に例示した250W相当の電源において、定格電圧が100VAC、静電容量が200μFのフィルムコンデンサは、電力変換部100に使用する
図12のダイオードDや平滑コンデンサCdc(通常、有極性のアルミ電解コンデンサを使用した直流コンデンサ)に比べ、外形寸法が大きくなる。この寸法の増大はエネルギーハーベストを目的とした製品の価値を下げる。
【0022】
具体的な寸法例を挙げると、ダイオードDは、耐圧200V、定格電流3Aとして、幅が約30mm、奥行きが約5mm、高さが約20mm程度の大きさである。
【0023】
また、静電容量が1000μFの平滑コンデンサCdcは、耐圧200Vとして、直径が約35mm、高さが約30mm程度の大きさである。
【0024】
これらに対して、静電容量が100μFの直列コンデンサCは、耐圧AC200V、静電容量が50μFを並列使用するとして、幅が約50mm、奥行きが約35mm、高さが約50mm程度の交流対応のコンデンサが2つ必要になり、ダイオードDと平滑コンデンサCdcに比べ、設置面積で約3倍、高さで約1.5倍の寸法が必要になる。このように、直列コンデンサCを追加するだけといっても、寸法的に大きな制約がある。
【0025】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、単相の永久磁石式同期リニア発電機を利用し、小型にして僅かの振動からでも効率良く発電を行うことが可能な、新たな構成からなる振動発電装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
そこで本発明は、巻線インダクタンスを相殺するために、寸法の大きな直列コンデンサを用いるのではなく、スイッチング素子を用いた単相コンバータを使用することとした。
【0027】
具体的に本発明は、単相の永久磁石式同期リニア発電機を用い、外部から受ける振動で発電を行う振動発電装置であって、リニア発電機のコイルに生じる誘起電圧を検出する振動センサと、スイッチング素子を有しコイルの入出力端に接続されて交流電圧を直流電圧に変換する単相コンバータと、振動センサが検出する検出値に基づき負荷電流が所望の値をとり且つ誘起電圧と同相となる様にスイッチング素子を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0028】
このようにすれば、単相の永久磁石式同期リニア発電機に生じる直接見ることができない誘起電圧を的確に検出して、制御手段を通じて発電機の出力電力の無効分(巻線インダクタンスに起因する無効電力)をなくし、発電効率を高めることができる。しかも、巻線インダクタンスをキャンセルする手段として直列コンデンサではなく単相コンバータを使用し、制御手段で制御するようにしたので、振動発電装置を小型に構成できて、余剰振動を生じている部位にこの振動発電装置を取り付け易くすることができる。
【0029】
制御手段は、スイッチング動作を通じて単相コンバータの出力電圧を、誘起電圧よりも高い電圧に制御するものであることが好適である。
【0030】
このようにすれば、負荷側に発電機よりも高い電圧を必要とする場合にも、昇圧チョッパを用いることなく単相コンバータのスイッチング制御のみで昇圧を実現することができる。
【0031】
制御手段の具体的な実施の態様としては、振動センサの検出値から誘起電圧の振幅を算出する誘起電圧算出部と、所望の負荷電流に対してコイルの電圧降下を算出するコイル電圧算出部と、所望の負荷電流が誘起電圧と同相となるための単相コンバータの出力電圧の振幅と位相を算出するコンバータ指令生成部と、コンバータ指令に基づいてスイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、を備えるものが挙げられる。
【0032】
このようにすれば、巻線インタダクタンスに起因する無効電力を確実にキャンセルすることができる。
【0033】
制御手段の具体的な実施の態様としては、振動センサの検出値から誘起電圧と同相で負荷電流の値が所望の値となるような電流指令を生成する電流指令生成部と、負荷電流を検出する電流検出部と、電流検出部で検出する負荷電流と電流指令との偏差に基づいて単相コンバータへの指令を生成するコンバータ指令生成部と、コンバータ指令に基づいてスイッチング素子を制御するスイッチング制御部と、を備えるものが挙げられる。
【0034】
このようにすれば、コンバータ指令の一部をフィードバック系によって構成することができるので、コンバータ指令を生成するためのアルゴリズムを簡素化することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した本発明によれば、単相の永久磁石式同期リニア発電機に対して、単相コンバータを用いて巻線インダクタンスをキャンセルすることで、直列コンデンサの使用を回避して小型化を実現するとともに、僅かの振動からでも効率よく発電を行えるようにした、環境に配慮した振動発電装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る振動発電装置を構成する単相の永久磁石式同期リニア発電機の構成を模式的に示す図。
【
図3】同振動発電装置の電圧制御を示すベクトル図。
【
図5】本発明の変形例を示す
図2に対応した構成図。
【
図7】同発電機における電圧-電流の関係を示すベクトル図。
【
図8】直列コンデンサを追加した振動発電装置の回路図。
【
図9】
図8の構成における電圧-電流の関係を示すベクトル図。
【
図10】
図6の場合における負荷抵抗-発電機の出力電力の関係を示すグラフ。
【
図11】
図8の場合における負荷抵抗-発電機の出力電力の関係を示すグラフ。
【
図12】電力変換部等を追加した場合における
図8に対応した負荷抵抗-発電機の出力電力の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0038】
この実施形態の振動発電装置は、単相の永久磁石式同期リニア発電機を利用して、人が歩く際の床や階段の振動や、車や電車の振動、熱音響発電の排熱管の振動等で発電を行う。
【0039】
図1は単相の永久磁石式同期リニア発電機1を利用した振動発電装置Aを模式的に示している。実際の単相の永久磁石式同期リニア発電機1の構造は、種々の具体的な態様として実現することができる。
【0040】
単相の永久磁石式同期リニア発電機1は、永久磁石10を有する可動子11がケーシング12内に往復動可能に配置され、永久磁石10はヨーク13を通って磁束を結んでいる。この磁束がケーシング12に固定したコイル14に対する鎖交磁束となる。可動子11はケーシング12の一部をなす共振バネ(板バネ)12aに支持され、共振バネ12aに外部からの振動Vibが加えられると、可動子11は振動する。これにより、鎖交磁束が振動Vibとともに移動することで、コイル14に誘起電圧Eを発生する。この誘起電圧Eは電力変換部2に入力されて直流に変換され、負荷3に出力電圧Vとして提供される。電力変換部2は制御手段4によって制御される。
【0041】
一方、可動子11の振動変位を検知する位置には、位置センサ、速度センサ、加速度センサ等の振動センサ15が取り付けられており、この振動センサ15の検出値が制御手段4に入力される。
【0042】
本実施形態の電力変換部2は、
図2に示すように、コイル端子14a、14aに単相コンバータ21を接続することによって構成されている。単相コンバータ21の出力側には平滑コンデンサCdcを介して負荷3(負荷抵抗R)が接続されている。
【0043】
単相コンバータ21は、対をなす上アームおよび下アームのそれぞれにスイッチング素子21a~21dを設けたもので、制御手段4からのスイッチング指令SによってPWM制御され、交流を直流に変換する。図ではスイッチング素子21a~21dはIGBTとして例示してあるが、スイッチング素子21a~21dにこれ以外のものを使用できるのは勿論である。なお、誘起電圧Eの周波数と同期する必要があり、周波数を変化させて電圧を制御するPFM制御は用いない。
【0044】
制御手段4は、誘起電圧算出部41、コイル電圧算出部42,コンバータ指令生成部43及びスイッチング制御部44によって構成される。
【0045】
誘起電圧算出部41は、振動センサ15から得られる可動子11の振動の検出値から、発電機1の誘起電圧Eの振幅を算出する。例えば、振動変位として、
A・sin(ω・t)[m] …(8)
を検出したとすると、振動速度は、
A・ω・cos(ω・t)[m/sec] …(9)
誘起電圧は、Kを誘起電圧定数[V・sec/m]として、
K・A・ω・cos(ω・t)[V] …(10)
となる。
【0046】
コイル電圧算出部42は、予め設定した所望の負荷電流Iに対し、
図3のベクトル図のうちの、巻線抵抗rによる電圧降下rIと巻線インダクタンスLによる電圧降下ωLIを算出する。
【0047】
コンバータ指令生成部43は、負荷電流Iが発電機1の誘起電圧Eと同相となり、また、負荷電流Iの値が所望の値となるように、単相コンバータ21の出力電圧Vconverterの振幅|Vconverter|と位相αを、次式に基づいて算出する。
|Vconverter|=√{(|E|-|rI|)2+(|ωLI|)2} …(11)
α=tan-1{|ωLI|/(|E|-|rI|)} …(12)
【0048】
スイッチング制御部44は、上記のコンバータ指令を受けて、(11)式及び(12)式を満たすように、単相コンバータ21内のスイッチング素子21a~21dに対してオン・オフ時間とその切替タイミングを制御する。
【0049】
その結果、発電機1が出力する電力(電流)において、負荷電流Iを発電機1の誘起電圧Eと同相にすることができ、発電機1の出力電力Wの無効分(巻線インダクタンスに起因する無効電力)を無くし、発電機1の巻線抵抗rでの消費電力を減らして、効率の良い発電を行うことが可能になる。
【0050】
特に、エネルギーハーベストの一環として、余剰振動からリニア振動を拾おうとする場合、振幅が小さく周波数も低いうえに、コイル14の巻き数を多くすると巻線抵抗rが大きくなり、発電機1自体の損失によって発電どころではなくなるのがこれまでの実情であった。
【0051】
本実施形態では、このような弱々しい振動源からでも効率よく電力を取り出すにあたり、直流対応の寸法の大きな直列コンデンサCを使用することなく、巻線インダクタンスLに起因する無効電力(電力制限分)を無くすことができるので、原理的には発電機1の巻線抵抗rだけによる上限(E2)/(4・r)まで電力を出力することが可能になる。
【0052】
また、寸法的には、
図12に示したダイオードDの代わりに単相コンバータ21を使用するので、高さは変わらず設置面積で2倍程度となる(スイッチング素子のドライバー部を含む)が、寸法の大きな交流対応の直列コンデンサCを用いることに比べれば、全体のサイズを小さくすることができ、スペースファクタの向上、余剰振動を取り出す対象への取付の便の向上など、充分なメリットが得られる。
【0053】
また、一般的に負荷側の出力部には、使い勝手を向上させるため、
図4に示すように、昇圧チョッパ回路(DC/DC変換回路)5でダイオードDを用いた整流回路100aの出力電圧を昇圧することが多いが、
図2で用いる単相コンバータ21は昇圧機能を有し、制御手段4はスイッチング動作を通じて単相コンバータ21の出力電圧Vを、誘起電圧Eよりも高い電圧に制御することができるので、昇圧チョッパを不要にすることができる
【0054】
また、制御手段4は、所望の負荷電流Iに対して巻線抵抗rによる電圧降下rIと巻線インダクタンスLによる電圧降下ωLIを算出し、負荷電流Iが発電機1の誘起電圧Eと同相となるための単相コンバータ2の振幅|Vconverter|と位相αを算出し、これに基づいてスイッチング素子21a~21dを制御するので、発電機1の出力電力Wの無効分(巻線インダクタンスに起因する無効電力)を確実に無くし、発電機1の巻線抵抗rでの消費電力を減らして、効率の良い発電を行うことが可能となる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0056】
例えば、
図5に示す制御手段104は、振動センサ15の検出値から誘起電圧と同相(θ)で負荷電流が所望の値となるような電流指令Irefを生成する電流指令生成部141と、負荷電流Iを検出する電流検出部142と、電流検出部142で検出する負荷電流Iと電流指令Irefとの偏差に基づいて単相コンバータ21への指令を生成するコンバータ指令生成部143と、コンバータ指令に基づいてスイッチング素子21a~21dを制御するスイッチング制御部144と、とにより構成することができる。
【0057】
この場合、コンバータ指令生成部143にはヒステリシスコンパレータを使用し、電流指令Irefと実電流Iの大小に応じて、単相コンバータ21のスイッチング素子21a~21dのスイッチングタイミングを決定する。その結果、電流Iは、発電機1の誘起電圧Eとほぼ同相となり、発電機効率を上げることが可能になる。
【0058】
このようにすれば、コンバータ指令の一部をフィードバック系によって構成することができるので、コンバータ指令を生成するためのアルゴリズムを簡素化することができる。
【0059】
その他、負荷にバッテリを使用して蓄電するように構成するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
A…振動発電装置
E…誘起電圧(誘導起電力)
V…出力電圧
1…単相の永久磁石式同期リニア発電機
4…制御手段
10…永久磁石
14…コイル
15…振動センサ
21…単相コンバータ
21a~21d…スイッチング素子
41…誘起電圧算出部
42…コイル電圧算出部
43…コンバータ指令生成部
44…スイッチング制御部
141…電流指令生成部
142…電流検出部
143…コンバータ指令生成部
144…スイッチング制御部