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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042226
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149416
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】和田 陽太
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA21
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】隣接するルーバの重なりによる風路の閉塞の気密性を向上した風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、回動軸線Aが互いに平行となるように隣接して配置された複数のルーバ10と、ルーバ10を互いに連動して回動させるリンク15と、を備え、隣接するルーバ10,10の一方が他方に対し所定の回動位置で順次重なって風路3を閉塞可能である。隣接するルーバ10,10の一方は、他方に対し所定の回動位置で少なくとも一部が回動軸線Aを超えるように配置される。ルーバ10とリンク15とのいずれか一方に、軸部19が形成される。ルーバ10とリンク15との他方に、軸部19が挿入される穴部18が形成される。穴部18は、第一穴部18aと、第一穴部18aよりも開口が大きい第二穴部18bと、が設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸線が互いに平行となるように隣接して配置された複数のルーバと、前記ルーバを互いに連動して回動させるリンクと、を備え、隣接する前記ルーバの一方が他方に対し所定の回動位置で順次重なって風路を閉塞可能な風向調整装置であって、
隣接する前記ルーバの一方は、他方に対し前記所定の回動位置で少なくとも一部が回動軸線を超えるように配置され、
前記ルーバと前記リンクとのいずれか一方に、軸部が形成され、
前記ルーバと前記リンクとの他方に、前記軸部が挿入される穴部が形成され、
前記穴部は、第一穴部と、この第一穴部よりも開口が大きい第二穴部と、が設定されている
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
軸部は、抜け防止用のアンダー形状を有して第一穴部に挿入される第一軸部と、円柱状に形成され第二穴部に挿入される第二軸部と、が設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
第一穴部と第二穴部とは、ルーバの隣接方向に交互に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
第二穴部は、ルーバの回動方向に沿う長穴状である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接するルーバの一方が他方に対し所定の回動位置で順次重なって風路を閉塞可能な風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置において、隣接するルーバ同士が互いに重なることで空調風を遮断する、いわゆるルーバシャット機能を備えるものが知られている。このとき、隣接するルーバの一方の端部を他方の端部に当接させるだけの構造の場合、ルーバの寸法誤差や組み付け後の温度変化等に起因するルーバの寸法変化等によって、ルーバの当接が不十分となって隙間が生じるおそれがある。そのため、ルーバを互いに連動させるリンクに形成される穴部の間隔を、ルーバに設定される回動軸とリンクの穴部に挿入されるリンク軸との間隔より大きく設定した構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-34734号公報 (第4-6頁、図1-4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の風向調整装置の場合、ルーバの回動角度を規制するために、一部のルーバがケース体に当接する構成となっているので、寸法誤差などによってルーバ同士が当接する前の位置でルーバがケース体に当接したときにすべてのルーバ同士の間に隙間が生じないように、さらなる構成が必要になる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、隣接するルーバの重なりによる風路の閉塞の気密性を向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、回動軸線が互いに平行となるように隣接して配置された複数のルーバと、前記ルーバを互いに連動して回動させるリンクと、を備え、隣接する前記ルーバの一方が他方に対し所定の回動位置で順次重なって風路を閉塞可能な風向調整装置であって、隣接する前記ルーバの一方は、他方に対し前記所定の回動位置で少なくとも一部が回動軸線を超えるように配置され、前記ルーバと前記リンクとのいずれか一方に、軸部が形成され、前記ルーバと前記リンクとの他方に、前記軸部が挿入される穴部が形成され、前記穴部は、第一穴部と、この第一穴部よりも開口が大きい第二穴部と、が設定されているものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、軸部は、抜け防止用のアンダー形状を有して第一穴部に挿入される第一軸部と、円柱状に形成され第二穴部に挿入される第二軸部と、が設定されているものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、第一穴部と第二穴部とは、ルーバの隣接方向に交互に配置されているものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置において、第二穴部は、ルーバの回動方向に沿う長穴状であるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、第二穴部に対応するルーバについては、その隣接するルーバに対して近接するように回動することが可能となり、隣接するルーバ間の隙間を小さくすることができるため、隣接するルーバの重なりによる風路の閉塞の気密性を向上できる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、第一軸部は回動時に第一穴部から抜けにくいとともに、第二軸部は第二穴部内で円滑に回動可能となり、第二軸部及び第二穴部に対応するルーバを確実に回動させて隣接するルーバ同士を互いに押し込みあう状態とすることができ、隣接するルーバの重なりによる風路の閉塞の気密性を確保できる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、第二軸部及び第二穴部に対応するルーバの回動によって、それに隣接するルーバとの隙間をより確実に閉塞することが可能となり、隣接するルーバの重なりによる風路の閉塞の気密性をより向上できる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、ルーバによって風路を閉塞する際に、第二穴部に対応するルーバを円滑に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を示す平面図である。
図2】同上風向調整装置の一部を示す斜視図である。
図3】(a)は第一軸部を示す斜視図、(b)は第二軸部を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す平面図である。
図5図4の一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置1は、ケース体2を備える。ケース体2の内部には、流体である空調風が流れる風路3が形成されている。風路3内を空調風が所定の第一方向である前後方向に通過する。すなわち、風路3内において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。また、ケース体2には、風路3に空調風を受け入れる受入口が形成されている。受入口は、風路3の上流端である後端に位置する。さらに、ケース体2には、風路3を通過した空調風が吹き出される吹出口5が形成されている。吹出口5は、風路3の下流端である前端に位置する。吹出口5は、車室内に連通し、車室内へと空調風を吹き出すように配置されている。
【0019】
本実施の形態において、ケース体2は、角筒状に形成されている。ケース体2は、風路3の通気方向に所定長を有する。ケース体2は、単数または複数の部材により構成されている。
【0020】
そして、ケース体2には、配風部としての一の配風体であるルーバ10が取り付けられている。ルーバ10は、フィンなどとも呼ばれる配風部材である。ルーバ10は、ケース体2に回動可能に支持されている。本実施の形態において、ルーバ10は、円柱状の回動軸11を備え、この回動軸11に対し、軸直方向の一方側と他方側とに板状の一方及び他方の整流部12,13が延びて形成されている。一方及び他方の整流部12,13により、空調風を整流するルーバ10の本体部が構成されている。一方及び他方の整流部12,13は、回動軸11から離れるほど徐々に厚みが小さくなるように形成されている。
【0021】
図示される例では、ルーバ10は、上下方向を軸として左右方向に回動することで左右方向に配風する。すなわち、ルーバ10は、ケース体2の上部及び下部に対して回動軸11がそれぞれ回動可能に支持された縦フィンである。この状態で、ルーバ10は、一方及び他方の整流部12,13の厚み方向が左右方向となるように配置され、一方の整流部12が後側である下流側、他方の整流部13が前側である上流側に延びている。
【0022】
ルーバ10は、吹出口5に臨んで複数配置されている。ルーバ10は、回動軸11、すなわち回動軸11の中心軸である回動軸線Aが互いに平行となるように、左右方向に複数、例えば5枚並んでいる。以下、説明をより明確にするために、これらの5枚のルーバ10を、左側から右側へと順に、第一ないし第五ルーバ10a~10eと称する。本実施の形態において、ルーバ10は、吹出口5の左右幅全体に亘り配置されている。
【0023】
また、隣接するルーバ10,10の回動軸線A,A間の距離は、一方の整流部12の回動軸線Aからの長さよりも短く設定されている。本実施の形態において、隣接するルーバ10,10の回動軸線A,A間の距離は、他方の整流部13の回動軸線Aからの長さと同程度に設定されている。そのため、図1に示すように、隣接するルーバ10の一方の少なくとも一部である一方の整流部12の先端部が、隣接するルーバ10の他方に対し所定の回動位置、例えば所定の一方向、図示される例では右方向に最大に回動した位置で回動軸11に重なり(オーバーラップし)、回動軸線Aを超える。本実施の形態では、隣接するルーバ10の一方の整流部12の先端部は、隣接するルーバ10の他方に対し所定の回動位置で他方の整流部13から回動軸11を超えて一方の整流部12の基端部に重なるように配置されている。図示される例では、隣接するルーバ10,10のうち、左側のルーバ10の一方の整流部12が、右側のルーバ10の他方の整流部13から、回動軸11を超えて一方の整流部12に亘り重なるように配置されている。このように隣接するルーバ10,10の一方が他方に対し所定の回動位置で順次重なることで、風路3を閉塞可能となっている。すなわち、本実施の形態の複数のルーバ10は、空調風を遮断するシャット部材の機能を有する。
【0024】
ルーバ10の風路3を閉塞する方向すなわちシャット方向への最大回動位置は、ストッパ部14により規制される。ストッパ部14は、ケース体2に形成されている。ストッパ部14に対してルーバ10の一部が当接することにより、ルーバ10がそれ以上回動しないように規制される。本実施の形態では、第一ルーバ10aの他方の整流部13の先端部と第五ルーバ10eの一方の整流部12の先端部とが、それぞれストッパ部14a,14bと当接可能となっている。
【0025】
これら複数のルーバ10は、リンク15により互いに連結され、回動方向が同一方向となるように連動される。図示される例では、リンク15は、他方の整流部13に接続されている。本実施の形態では、他方の整流部13は、一方の整流部12に対して、回動軸11の軸方向に短く形成されている。図示される例では、他方の整流部13は、一方の整流部12よりも上端部が低くなるように設定されている。この他方の整流部13の上端部にリンク15が位置している。
【0026】
リンク15は、長手状に形成され、ルーバ10を隣接方向、本実施の形態では左右方向に連結するように配置される。本実施の形態において、リンク15は、板状であり、上下方向に厚みを有するように配置されている。
【0027】
ルーバ10とリンク15とは、連結部17を介して互いに連結されている。連結部17は、穴部18と、この穴部18に挿入されて回動可能に保持される軸部19と、を有する。
【0028】
穴部18は、ルーバ10とリンク15との一方に形成され、軸部19は、ルーバ10とリンク15との他方に形成されている。本実施の形態では、穴部18がリンク15に形成され、軸部19がルーバ10に形成されている。
【0029】
穴部18は、ルーバ10の枚数に応じて設定されている。穴部18は、リンク15を厚み方向に貫通して形成されている。穴部18は、リンク15の長手方向に略等間隔に並んで配置されている。
【0030】
穴部18には、第一穴部18aと、第二穴部18bと、が設定されている。第一穴部18aは、相対的に小さい開口を有し、第二穴部18bは第一穴部18aより大きい開口を有する。本実施の形態において、第一穴部18aは丸穴であり、第二穴部18bは長穴である。第二穴部18bは、隣接方向の両端のルーバ10以外のルーバ10に対応して設定されることが好ましい。本実施の形態において、第二穴部18bは、第二ルーバ10bないし第四ルーバ10dの少なくともいずれかに対応して設定されることが好ましい。また、第一穴部18aと第二穴部18bとは、ルーバ10の隣接方向、本実施の形態では左右方向に交互に配置されている。図示される例では、第一穴部18aは、リンク15の両端部及び中央部に位置し、それらの間に第二穴部18bが位置する。つまり、第一穴部18aは、第一ルーバ10a、第三ルーバ10c、第五ルーバ10eに対応し、第二穴部18bは、第二ルーバ10b、第四ルーバ10dに対応する。
【0031】
第二穴部18bは、ルーバ10の回動軸線Aを中心とする円弧またはその接線に沿って形成されている。つまり、本実施の形態において、第二穴部18bは、ルーバ10の回動方向に沿って長穴状となっている。
【0032】
一方、軸部19は、穴部18と同数設定されている。軸部19は、回動軸11及び回動軸線Aと平行に形成されている。本実施の形態において、軸部19は、回動軸11及び回動軸線Aから離れた位置で、ルーバ10の他方の整流部13の上部に突設されている。図示される例では、軸部19は、他方の整流部13の上部から他方の整流部13の厚み方向に延びる軸設置部21の上部に突設されている。
【0033】
軸部19には、第一穴部18aに回動可能に挿入される第一軸部19aと、第二穴部18bに回動可能に挿入される第二軸部19bと、が設定されている。すなわち、第一軸部19aは、第一ルーバ10a、第三ルーバ10c、第五ルーバ10eに対応し、第二軸部19bは、第二ルーバ10b、第四ルーバ10dに対応する。
【0034】
図3(a)に示すように、第一軸部19aは、その先端部と基端部との間に、第一穴部18a(図1)からの抜け防止用のアンダー形状23が形成されている。すなわち、第一軸部19aは、先端部から中間部に向かって徐々に拡径し、中間部から基端部に向かって徐々に縮径するように形成されている。例えば、本実施の形態において、第一軸部19aは、球状に形成されている。
【0035】
また、図3(b)に示すように、第二軸部19bは、円柱状に形成されている。つまり、第二軸部19bは、径寸法が先端部から基端部に亘り略一定のストレート形状となっている。第二軸部19bは、第二穴部18b(図1)内で回動可能であるとともに、第二穴部18b(図1)内を移動可能となっている。本実施の形態では、図1及び図2に示すように、第二軸部19bに対し、第二穴部18bがルーバ10の回動方向(風路3を遮断するシャット方向)にクリアランスを有することで、第二軸部19bが第二穴部18b内でこの第二穴部18bの長手方向に移動可能となっている。
【0036】
そして、本実施の形態においては、図示しないが、ケース体2には、ルーバ10よりも下流側すなわち後側に、これらルーバ10と交差する方向、例えば上下方向に回動する他の配風体である下流側ルーバ(横フィン)が取り付けられている。下流側ルーバは、吹出口5に臨んで配置され、両端部がケース体2に回動可能に支持されている。下流側ルーバは、一つまたは複数個設定されている。そして、下流側ルーバには、ルーバ10を回動させるための摘みなどの操作部が、下流側ルーバに沿って、すなわち左右方向に可動的に配置され、その操作部とルーバ10とを連結するための操作連結部25が、左右方向の中央部に配置されたルーバ10(第三ルーバ10c)に形成されている。操作連結部25は、例えば回動軸線Aと平行な方向に沿って形成されている。また、このルーバ10には、操作連結部25に隣接して、一方の整流部12及び他方の整流部13に亘り、切欠部26が形成されている。また、この左右方向の中央部に配置されたルーバ10(第三ルーバ10c)に隣接するルーバ10(第四ルーバ10d)には、操作部の移動に伴い動作するギヤなどの動作部を、操作部を移動させた際に収容可能な収容部27が他方の整流部13の厚み方向に凹設されている。
【0037】
次に、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0038】
風向調整装置1は、受入口を空調装置と連結して配置する。空調装置からの空調風は、風路3を通過し、ルーバ10により左右方向に配風され、下流側ルーバにより上下方向に配風されて、吹出口5から吹き出される。
【0039】
ルーバ10は、図2に示す開位置(配風位置)において、吹出口5に対し正対する。操作部を上下に操作することで、下流側ルーバが上下方向に回動し、空調風を上下方向に整流する。また、操作部を下流側ルーバに沿って左右に操作することで、操作部と操作連結部25とが噛み合って、ルーバ10が左右方向に回動し、空調風を左右方向に整流する。したがって、下流側ルーバの回動による上下方向の配風と、ルーバ10の回動による左右方向の配風との組み合わせにより、風向調整装置1は、任意方向に風向を調整可能となる。
【0040】
一方、風路3を通過する空調風を吹出口5から吹き出させないように遮断する場合には、ルーバ10を利用する。つまり、ルーバ10を回動方向の所定の一方向、本実施の形態では右方向(図1の時計回り方向)に最大に回動させることで、図1に示すように、隣接するルーバ10の一方が他方に対し順次重なって風路3を閉塞する。
【0041】
このとき、隣接するルーバ10,10の一方、本実施の形態では左側に位置するルーバ10の一方の整流部12が、他方すなわちその右側に隣接するルーバ10の回動軸11及び回動軸線Aを超えて重なるため、右側のルーバ10が左側に隣接するルーバ10によって、それぞれ前側すなわち上流側に押し込まれることとなる。本実施の形態では、第二ルーバ10bないし第五ルーバ10eが、それぞれ第一ルーバ10aないし第四ルーバ10dによって上流側に押し込まれることとなる。
【0042】
そこで、第二軸部19bが第二穴部18b内でルーバ10の回動方向、すなわち第二穴部18bの長手方向に移動することで、第二穴部18bに対応するルーバ10、本実施の形態では第二ルーバ10b及び第四ルーバ10dがさらに右方向(シャット方向)に回動する。
【0043】
そのため、第二ルーバ10bが第一ルーバ10aを、第四ルーバ10dが第三ルーバ10cを、それぞれさらに下流側に押し込む状態となる。
【0044】
したがって、隣接するルーバ10,10同士、すなわち第一ルーバ10aと第二ルーバ10b、第二ルーバ10bと第三ルーバ10c、第三ルーバ10cと第四ルーバ10d、及び、第四ルーバ10dと第五ルーバ10eが、互いにシャット方向に押し込みあう状態となり、特に、第三ルーバ10cは、下流側から第二ルーバ10bに、上流側から第四ルーバ10dに押し込まれる状態となり、隣接するルーバ10,10間の隙間が気密に閉塞される。
【0045】
なお、第二ルーバ10b及び第四ルーバ10dは、第一ルーバ10a及び第三ルーバ10cによって上流側に押し込まれているものの、第一ルーバ10aと第五ルーバ10eとが、それぞれケース体2のストッパ部14a,14bに当接していることで回動位置が規制されるため、各ルーバ10はそれ以上回動せず、風路3を閉塞したシャット状態を保持する。
【0046】
また、ルーバ10がシャット方向に回動した際に第五ルーバ10eがストッパ部14bに先当たりしたとしても、第二穴部18bに対応する第二ルーバ10b及び第四ルーバ10dが、空調風の風圧によって押されて第二軸部19bが第二穴部18bのクリアランスに応じて回動することで第一ルーバ10a及び第三ルーバ10cとの隙間を小さくすることができ、風路3の閉塞の気密性を確保する。この場合、第一ルーバ10aとストッパ部14aとの間には僅かに隙間が生じることとなるものの、本実施の形態では、シャット状態でルーバ10が右側に傾斜していることから、空調風は左側から右側、すなわち第一ルーバ10a側から第五ルーバ10e側に向かって合流するように流れるため、第一ルーバ10aとストッパ部14aとの間の隙間から漏れる空調風は僅かで済み、風向調整装置1の性能に殆ど影響しない。
【0047】
一方、仮にルーバ10がシャット方向に回動した際に第一ルーバ10aがストッパ部14aに先当たりした場合には、第五ルーバ10eとストッパ部14bとの間に隙間が生じることとなり、上記の通り、シャット状態でルーバ10が右側に傾斜していることから、空調風が第一ルーバ10a側から第五ルーバ10e側に向かって合流するように流れるため、第五ルーバ10eとストッパ部14bとの間の隙間から空調風が大きく漏れるおそれがあり、そのような漏れは風向調整装置1の性能に影響を与える。そのため、風向調整装置1においては、シャット状態とするための回動方向(本実施の形態では右方向)の最も端に位置するルーバ10、本実施の形態では右側の端部に位置する第五ルーバ10eが、その反対側の端部に位置するルーバ10、本実施の形態では左側の最も端に位置する第一ルーバ10aよりもストッパ部14に対し先当たりするように、ストッパ部14aを削って調整することが好ましい。
【0048】
上述したように、第1の実施の形態によれば、隣接するルーバ10,10の一方の少なくとも一部が他方に対し所定の回動位置で回動軸線Aを超えるように配置され、ルーバ10とリンク15とを連結するための軸部19が挿入される穴部18に、第一穴部18aと、第一穴部18aよりも開口が大きい第二穴部18bと、を設定したことで、シャット方向に回動したルーバ10が仮にストッパ部14に先当たりして回動位置が規制されたとしても、第二穴部18bに対応するルーバ10については、その隣接するルーバ10に対して近接するように回動することが可能となり、隣接するルーバ10,10間の隙間を小さくすることができる。そのため、隣接するルーバ10,10の重なりによる風路3の閉塞の気密性を向上できる。
【0049】
また、軸部19に、抜け防止用のアンダー形状23を有して第一穴部18aに挿入される第一軸部19aと、円柱状に形成され第二穴部18bに挿入される第二軸部19bと、を設定したので、第一軸部19aは回動時に第一穴部18aから抜けにくいとともに、第二軸部19bは第二穴部18b内で円滑に回動可能となり、第二軸部19b及び第二穴部18bに対応するルーバ10を確実に回動させて隣接するルーバ10,10同士を互いに押し込みあう状態とすることができ、隣接するルーバ10,10の重なりによる風路3の閉塞の気密性を確保できる。
【0050】
第一穴部18aと第二穴部18bとをルーバ10の隣接方向に交互に配置したことで、第二軸部19b及び第二穴部18bに対応するルーバ10の回動によって、それに隣接するルーバ10との隙間をより確実に閉塞することが可能となり、隣接するルーバ10,10の重なりによる風路3の閉塞の気密性をより向上できる。
【0051】
また、第二穴部18bをルーバ10の回動方向に沿う長穴状としたことで、ルーバ10によって風路3を閉塞する際に、第二穴部18bに対応するルーバ10を円滑に回動させることができる。
【0052】
なお、上記の第1の実施の形態において、第二穴部18bは、長穴に限られず、図4及び図5に示す第2の実施の形態のように、第一穴部18aより開口が大きい丸穴状でもよい。このとき、第二穴部18bは、少なくともルーバ10のシャット方向への回動方向に第二軸部19bとの間にクリアランスを有するように形成する。この場合でも、第二穴部18bに対応するルーバ10については、その隣接するルーバ10に対して近接するように回動することが可能となり、隣接するルーバ10,10間の隙間を小さくすることができ、隣接するルーバ10,10の重なりによる風路3の閉塞の気密性を向上できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、上記の各実施の形態において、穴部18をルーバ10に形成し、軸部19をリンク15に形成してもよい。
【0054】
さらに、ルーバ10の枚数は、5枚に限られず、任意の複数枚としてよい。
【0055】
また、ルーバ10を操作部の操作により回動させる構成には限定されず、例えばリンク15を直接的または間接的に手動、あるいはアクチュエータなどを用いて移動させることでルーバ10を回動させる構成などとしてもよい。その場合、下流側ルーバを設けない構成としてもよい。すなわち、下流側ルーバ及び操作部は、必須の構成ではない。したがって、ケース体2には、ルーバ10の他に、任意の配風体が可動的に配置されていてもよいし、ルーバ10のみが配置されていてもよい。
【0056】
さらに、ルーバ10は、回動軸11を備えている必要はなく、ケース体2に形成された回動軸に対し回動可能に軸支されるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 風向調整装置
3 風路
10 ルーバ
15 リンク
18 穴部
18a 第一穴部
18b 第二穴部
19 軸部
19a 第一軸部
19b 第二軸部
23 アンダー形状
A 回動軸線
図1
図2
図3
図4
図5