(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004223
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】成形部品
(51)【国際特許分類】
B29C 33/44 20060101AFI20230110BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20230110BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230110BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20230110BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C43/34
B29C45/26
B60R13/04 Z
B62J23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105784
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘起
【テーマコード(参考)】
3D023
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
3D023AB11
3D023AD05
4F202AG25
4F202AG28
4F202AH18
4F202AR13
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CK13
4F202CK32
4F202CK54
4F204AC05
4F204AG06
4F204AH17
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】大型化することなく、形状自由度を損なうことなく、容易に成形部品を成形することができる。
【解決手段】成形部品は、固定型(61)、可動型(62)、スライド型(63)を用いて成形される。成形部品には、固定型及び可動型によって形成される本体部と、スライド型によって形成されるアンダーカット形状と、が設けられている。本体部には、アンダーカット形状からスライド型の進行方向に離間した位置で本体部の離型方向に突き出した段差(46)と、段差を挟んでスライド型の進行方向の上流側の第1面(54)と進行方向の下流側の第2面(55)を連続させるガイドリブ(53)と、が形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型、可動型、スライド型を用いて成形される成形部品であって、
前記固定型及び前記可動型によって形成される本体部と、
前記スライド型によって形成されるアンダーカット形状と、を備え、
前記本体部には、前記アンダーカット形状から前記スライド型の進行方向に離間した位置で前記本体部の離型方向に突き出した段差と、前記段差を挟んで前記スライド型の進行方向の上流側の第1面と進行方向の下流側の第2面を連続させるガイドリブと、が形成されていることを特徴とする成形部品。
【請求項2】
前記ガイドリブは複数のガイドリブであり、当該複数のガイドリブが前記スライド型の進行方向に延び、前記段差の延在方向に沿って並んでいることを特徴とする請求項1に記載の成形部品。
【請求項3】
前記スライド型が成形位置にある状態で、前記アンダーカット形状の最大深さよりも、前記スライド型の進行方向の前端と前記ガイドリブの距離が短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形部品。
【請求項4】
前記スライド型が成形位置にある状態で、前記スライド型の進行方向に沿った断面視にて、前記アンダーカット形状の深さよりも、前記スライド型の進行方向の前端と前記ガイドリブの距離が短いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の成形部品。
【請求項5】
前記本体部がカバー本体であり、前記アンダーカット形状がカバー外縁側の屈曲部であり、鞍乗型車両のカバー部品として用いられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成形部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形部品に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両等の車両外装は、複数のカバー部品を組み合わせることによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。これらの部品同士の継ぎ目を目立たなくしたり、各カバー部品の剛性を向上させたりするために、カバー部品の外縁に屈曲部分が形成される場合がある。カバー部品は金型のキャビティに溶融樹脂を充填して成形されるが、カバー部品の外縁の屈曲部分はアンダーカット形状になる。このため、屈曲部分があるカバー部品の成形時には、固定型及び可動型に加えて、カバー部品の離型方向に対する交差方向にスライド可能なスライド型が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンダーカット形状からスライド型を取り外す際に、スライド型の進行方向に段差があるような形状では、段差にスライド型が引っ掛からないようにカバー部品を設計しなければならない。このため、カバー部品が大型になったり、段差の高さ等が制約されたりするため、カバー部品の形状自由度が低下していた。このような不具合は、樹脂製のカバー部品だけでなく、他の樹脂成形品や金属成形品でも発生し得る。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、大型化することなく、形状自由度を損なうことなく、容易に成形することができる成形部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の成形部品は、固定型、可動型、スライド型を用いて成形される成形部品であって、前記固定型及び前記可動型によって形成される本体部と、前記スライド型によって形成されるアンダーカット形状と、を備え、前記本体部には、前記アンダーカット形状から前記スライド型の進行方向に離間した位置で前記本体部の離型方向に突き出した段差と、前記段差を挟んで前記スライド型の進行方向の上流側の第1面と進行方向の下流側の第2面を連続させるガイドリブと、が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の成形部品によれば、スライド型の進行路上に段差が形成されていても、ガイドリブによって段差を挟んで進行方向の上流側の第1面から下流側の第2面にスライド型がスムーズにガイドされる。スライド型が段差に引っ掛かることなくスライドして、成形部品のアンダーカット形状からスライド型が取り外される。よって、成形部品のサイズや段差の高さ等が制約されることがなく、成形部品の形状自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】比較例のスライド型の取り外し動作の一例を示す図である。
【
図3】
図1のシートフレームカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図4】本実施例のシートフレームカバーの内側面図である。
【
図5】
図4のサイドフレームカバーをB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図6】本実施例のサイドフレームカバーの上半部の斜視図である。
【
図7】本実施例のサイドフレームカバーの離型動作の遷移図である。
【
図8】本実施例のサイドフレームカバーの離型動作の遷移図である。
【
図9】本実施例の屈曲部とガイドリブの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の成形部品は、固定型、可動型、スライド型を用いて成形される。成形部品には、固定型及び可動型によって本体部が形成され、スライド型によってアンダーカット形状が形成されている。本体部には、アンダーカット形状からスライド型の進行方向に離間した位置で本体部の離型方向に突き出した段差と、段差を挟んでスライド型の進行方向の上流側の第1面と進行方向の下流側の第2面を連続させるガイドリブと、が形成されている。これにより、スライド型の進行路上に段差が形成されていても、ガイドリブによって段差を挟んで進行方向の上流側の第1面から下流側の第2面にスライド型がスムーズにガイドされる。スライド型が段差に引っ掛かることなくスライドして、成形部品のアンダーカット形状からスライド型が取り外される。よって、成形部品のサイズや段差の高さ等が制約されることがなく、成形部品の形状自由度を向上させることができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のカバー部品を適用した鞍乗型車両について説明する。ここでは、成形部品として鞍乗型車両の樹脂製のカバー部品を例示して説明するが、成形部品は固定型、可動型、スライド型を用いて成形される他の樹脂成形品や金属成形品でもよい。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム(不図示)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントフレームカバー11が設けられており、フロントフレームカバー11の後側にはライダーの足回りを保護するフロントレッグシールド12が設けられている。フロントレッグシールド12の下端から後方にリアレッグシールド13が延在しており、リアレッグシールド13の後方にはシートフレームカバー14が設けられている。フロントレッグシールド12とリアレッグシールド13によってシート15の前方にライダーの足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントフレームカバー11の上側にはハンドル21が設けられ、フロントフレームカバー11の下側には一対のフロントフォーク22を介して前輪23が回転可能に支持されている。シートフレームカバー14の上側にはシート15が設けられており、シートフレームカバー14の下側にはエンジン25が設けられている。エンジン25には変速機構を介して後輪26が連結されており、変速機構を介してエンジン25の動力が後輪26に伝達されている。エンジン25の下部から後輪26の右側方に向かって排気管27が延びており、排気管27の下流側にはマフラ28が取り付けられている。
【0013】
シートフレームカバー14は、センターフレームカバー31、左右一対のサイドフレームカバー41、左右一対のリアフレームカバー35等の樹脂製のカバー部品同士を組み合わせることによって形成されている。センターフレームカバー31の後縁にサイドフレームカバー41の前縁が連なり、サイドフレームカバー41の後縁にリアフレームカバー35の前縁が連なっている。シートフレームカバー14の各カバー部品が側方からだけではなく、前方及び後方からも見やすい位置に配置されているため、カバー部品同士の継ぎ目が目立たなくなるようにカバー部品の外縁形状が工夫されている。
【0014】
図2の比較例に示すように、サイドフレームカバー75の前縁側にはセンターフレームカバー71の後縁が突き当たる断面視略U字状の屈曲部78が形成され、サイドフレームカバー75の後縁側にはリアフレームカバー73の前縁が突き当たる段差79が形成されている。サイドフレームカバー75は金型で成形されるが、屈曲部78がアンダーカット形状で、サイドフレームカバー75の離型方向とは異なる方向に突き出している。このため、屈曲部78の形成にスライド型63が用いられるが、屈曲部78から抜け出す際にスライド型63が段差79に引っ掛かるおそれがある。
【0015】
特に、可動型の取り外し直後は、サイドフレームカバー75が内向き(図示上側)に変形してスライド型63が段差79に引っ掛かり易くなる。屈曲部78から段差79を十分に離することで、スライド型63と段差79の引っ掛かりが抑えられるが、サイドフレームカバー75が大型化する。また、スライド型63が引っ掛からないように段差79を形成することもできるが、段差79の位置や高さ等が制約される。そこで、本実施例のサイドフレームカバー41には、段差46に対するスライド型63の引っ掛かりを無くすガイドリブ53が設けられている(
図5参照)。
【0016】
以下、
図3から
図6を参照して、シートフレームカバーについて説明する。
図3は
図1のシートフレームカバーをA-A線に沿って切断した断面図である。
図4は本実施例のシートフレームカバーの内側面図である。
図5は
図4のサイドフレームカバーをB-B線に沿って切断した断面図である。
図6は本実施例のサイドフレームカバーの上半部の斜視図である。
【0017】
図3に示すように、シート15(
図1参照)の下方には左右一対のシートフレーム16が設けられている。一対のシートフレーム16の内側にはヘルメットボックス17が配置され、シートフレーム16の外側はシートフレームカバー14によって覆われている。シートフレームカバー14の前面はセンターフレームカバー31によって形成され、シートフレームカバー14の側面前側はサイドフレームカバー41によって形成され、シートフレームカバー14の側面後側はリアフレームカバー35によって形成されている。センターフレームカバー31、サイドフレームカバー41の下方にはリアレッグシールド13が設けられている。
【0018】
サイドフレームカバー41の前縁42側(カバー外縁側)は車両内側に折り曲げられており、このサイドフレームカバー41の前縁42側から前方に断面視略U字状の屈曲部44が突き出している。サイドフレームカバー41の屈曲部44には、車両内側からセンターフレームカバー31の後縁32が突き当たっている。サイドフレームカバー41の前縁42及びセンターフレームカバー31の後縁32が屈曲部44よりも車両内側に位置付けられている。このため、サイドフレームカバー41及びセンターフレームカバー31の継ぎ目が屈曲部44によって外方から隠されて目立ち難くなっている。
【0019】
サイドフレームカバー41の後縁45側が段差46によって車両内側に突き出している。サイドフレームカバー41の段差46には、車両外側からリアフレームカバー35の前縁36が突き当たっている。リアフレームカバー35の前縁36は車両内側に折り曲げられ、リアフレームカバー35の内側にサイドフレームカバー41の後縁45が位置付けられている。このため、リアフレームカバー35の前縁36及びサイドフレームカバー41の後縁45の外方への露出が抑えられて、リアフレームカバー35及びサイドフレームカバー41の継ぎ目が外方から目立ち難くなっている。
【0020】
図4に示すように、センターフレームカバー31の後縁32及びサイドフレームカバー41の前縁42は上方から下方に向かって斜め前方に傾斜している。センターフレームカバー31の後縁32側には複数の突出片33が設けられており、サイドフレームカバー41の前縁42側には複数の突出片33に対応して複数の挿込穴47(
図5参照)が形成されている。サイドフレームカバー41の複数の挿込穴47にセンターフレームカバー31の複数の突出片33が挿し込まれて、センターフレームカバー31の後縁32側とサイドフレームカバー41の前縁42側が連結されている。
【0021】
リアフレームカバー35の前縁36及びサイドフレームカバー41の後縁45は上方から下方に向かって斜め前方に傾斜した後に略後方に向かって延びている。すなわち、リアフレームカバー35の前縁36の上側は略V字状に前方へ突き出しており、サイドフレームカバー41の後縁45の上側は略V字状に前方へ凹んでいる。リアフレームカバー35の略V字状の先端部には取付片37が設けられており、サイドフレームカバー41の後縁45側には取付片37に対応して取付穴48(
図6参照)が形成されている。サイドフレームカバー41の取付穴48にリアフレームカバー35の取付片37が挿し込まれている。
【0022】
リアフレームカバー35の前縁36側には略V字状部分の後方に複数の掛止片38が設けられており、サイドフレームカバー41の後縁45側には複数の掛止片38に対応して複数の切欠き49が形成されている。リアフレームカバー35の前縁36側がサイドフレームカバー41の後縁45側に車両外側から突き当たり、複数の掛止片38がサイドフレームカバー41の後縁45側に車両内側から突き当っている。また、リアフレームカバー35の前縁36及びサイドフレームカバー41の後縁45の両端はネジ止めされている。このように、リアフレームカバー35の前縁36側とサイドフレームカバー41の後縁45側が連結されている。
【0023】
サイドフレームカバー41の下縁51及びリアレッグシールド13の上縁59は前方から後方に向かって延びている。サイドフレームカバー41の下縁51側からは複数のフック片52が下方に突き出しており、リアレッグシールド13の上縁59側には複数のフック片52に対応して複数の挿込穴(不図示)が形成されている。サイドフレームカバー41の複数のフック片52がリアレッグシールド13の複数の挿込穴に挿し込まれて、サイドフレームカバー41の下縁51側とリアレッグシールド13の上縁59側が連結されている。なお、上記の連結箇所以外については説明を省略するが、掛け止め、ネジ止め、クリップ止め等が適宜使用される。
【0024】
図5に示すように、サイドフレームカバー41の前縁42側には屈曲部44が形成され、サイドフレームカバー41の後縁45側には段差46が形成されている。屈曲部44は、サイドフレームカバー41の前縁42側から前方に断面視略U字状に突き出している。詳細は後述するが、サイドフレームカバー41は金型を用いて成形され、屈曲部44は前縁42側から断面視略U字状に突き出したアンダーカット形状になっている。金型からのサイドフレームカバー41の取り外し方向と屈曲部44の突き出し方向が直交するため、サイドフレームカバー41の成形時にはスライド型63を用いて屈曲部44が形成されている。
【0025】
サイドフレームカバー41の離型時には、屈曲部44から後方にスライド型63をスライドさせる必要がある。屈曲部44の後方には車両内側に突き出した段差46が形成されているため、サイドフレームカバー41の内面には段差46に対するスライド型63の引っ掛かりを抑える複数のガイドリブ53が設けられている。複数のガイドリブ53は、段差46よりも前方の第1面54と段差46よりも後方の第2面55を連ねている。複数のガイドリブ53に沿ってスライド型63がスライドすることで、スライド型63が段差46を乗り越えて、屈曲部44からスライド型63がスムーズに取り外される。
【0026】
図6に示すように、複数のガイドリブ53は、スライド型63の進行方向A2(
図7(B)参照)に延びている。また、複数のガイドリブ53は、段差46の延在方向に沿ってガイドリブ53の厚みよりも広い間隔を空けて並んでいる。これにより、スライド型63がサイドフレームカバー41の段差46に沿って長く形成されても、スライド型63が段差46に引っ掛かることが防止されている。また、複数のガイドリブ53による厚肉箇所が最小限に抑えられることで、サイドフレームカバー41の成形時にガイドリブ53の形成面とは逆側の外面のヒケの発生が抑えられる。
【0027】
図7から
図9を参照して、サイドフレームカバーの離型動作について説明する。
図7及び
図8は本実施例のサイドフレームカバーの離型動作の遷移図である。
図9は本実施例の屈曲部とガイドリブの位置関係を示す図である。なお、
図7及び
図8は
図4のサイドフレームカバーをB-B線に沿って切断した断面、
図9は
図4のサイドフレームカバーをC-C線に沿って切断した断面を示している。
【0028】
図7(A)に示すように、サイドフレームカバー41は、固定型61、可動型62、スライド型63を用いて成形される樹脂成形品である。固定型61及び可動型62の内側にスライド型63が配置されており、固定型61に対して可動型62が型締めされた状態で、金型のキャビティに溶融樹脂が充填されてサイドフレームカバー41が成形されている。サイドフレームカバー41には、固定型61及び可動型62によってカバー本体(本体部)43が形成され、スライド型63によってアンダーカット形状(本実施例では断面視略U字状)の屈曲部44が形成されている。
【0029】
カバー本体43には、屈曲部44の後方、すなわち屈曲部44からスライド型63の進行方向A2に離間した位置に段差46が形成されている。段差46はカバー本体43の内面から可動型62の離間方向A1、すなわちカバー本体43の離型方向に突き出しており、段差46を挟んでスライド型63の進行方向A2の上流側よりも下流側が一段高くなっている。カバー本体43には、段差46を挟んでスライド型63の進行方向A2の上流側(本実施例では前側)の第1面54とスライド型63の進行方向A2の下流側(本実施例では後側)の第2面55を連続させる複数のガイドリブ53(
図7(B)参照)が形成されている。
【0030】
図7(B)に示すように、サイドフレームカバー41から可動型62が離間方向A1に取り外されると、サイドフレームカバー41に対してスライド型63が成形位置P1から進行方向A2にスライド可能になる。スライド型63が成形位置P1にある状態で、スライド型63の進行方向A2の前端64がガイドリブ53に近づけられている。より詳細には、スライド型63の進行方向A2に沿った断面視にて、スライド型63が成形位置P1にある状態で、屈曲部44の深さd1よりも、スライド型63の進行方向A2の前端64とガイドリブ53の距離d2が短く形成されている。
【0031】
図8(A)に示すように、サイドフレームカバー41の成形位置P1から進行方向A2にスライド型63が動かされると、スライド型63の進行方向A2の前端64がガイドリブ53上を渡って取り外し位置P2までスライドする。スライド型63の進行路上に段差46が形成されているが、スライド型63がガイドリブ53上を移動して、スライド型63の進行方向A2の前端64が段差46に引っ掛かることがない。また、スライド型63が取り外し位置P2まで動かされると、スライド型63の進行方向A2の後端65が屈曲部44から抜け出して、スライド型63が離間方向A1に取り外し可能になる。
【0032】
このとき、可動型62の取り外し直後からサイドフレームカバー41が離間方向A1に変形し始めるが、スライド型63の進行方向A2の前端64がガイドリブ53に接触してサイドフレームカバー41の変形が抑えられている。屈曲部44の深さd1よりもスライド型63の進行方向A2の前端64とガイドリブ53の距離d2が短いため、屈曲部44からスライド型63の進行方向A2の後端65が抜け出す前に、スライド型63の進行方向A2の前端64がガイドリブ53に接触し始める。可動型62の取り外し後の変形がスライド型63に抑えられて、屈曲部44からスライド型63がスムーズに取り外される。
【0033】
そして、
図8(B)に示すように、サイドフレームカバー41からスライド型63が取り外されると、固定型61からサイドフレームカバー41が離型される。なお、屈曲部44の全長に亘って、屈曲部44の深さよりも、スライド型63の進行方向A2の前端64とガイドリブ53の距離d2が短く形成されている必要はない。
図9に示すように、屈曲部44の深さが最も大きな位置で進行方向A2に沿った断面視にて、少なくとも屈曲部44の最大深さd3よりも、スライド型63の進行方向A2の前端64とガイドリブ53の距離d2(
図7(B)参照)が短く形成されていることが好ましい。
【0034】
以上、本実施例によれば、スライド型63の進行路上に段差46が形成されていても、ガイドリブ53によって段差46を挟んで進行方向A2の上流側の第1面54から下流側の第2面55にスライド型63がスムーズにガイドされる。スライド型63が段差46に引っ掛かることなくスライドして、サイドフレームカバー41の屈曲部44からスライド型63が取り外される。よって、サイドフレームカバー41のサイズや段差46の高さ等が制約されることがなく、サイドフレームカバー41の形状自由度を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施例では、成形部品がサイドフレームカバーである構成について説明したが、成形部品は固定型、可動型、スライド型によって形成されるものであればよい。例えば、成形部品は他のフレームカバー、レッグシールド、フェンダ等のカバー部品でもよいし、バッテリホルダ等の他の成形部品でもよい。また、成形部品は樹脂成形品に限らず、金属成形品でもよいし、金属粉を含む樹脂成形品でもよい。
【0036】
また、本実施例では、アンダーカット形状がサイドフレームカバーに形成された断面視略U字状の屈曲部である構成について説明したが、アンダーカット形状はサイドフレームカバーの離型時にアンダーカットとなる形状であればよい。
【0037】
また、本実施例では、屈曲部の突き出し方向がサイドフレームカバーの離型方向に直交しているが、屈曲部の突き出し方向がサイドフレームカバーの離型方向に斜めに交差していてもよい。
【0038】
また、本実施例では、サイドフレームカバーに複数のガイドリブが形成されたが、サイドフレームカバーには少なくとも1つのガイドリブが形成されていればよい。
【0039】
また、成形部品は、バギータイプの自動三輪車等の他の鞍乗型車両用の部品にも適宜適用することができる。また、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。また、成形部品は、鞍乗型車両用の部品以外にも適用可能である。
【0040】
以上の通り、本実施例の成形部品(サイドフレームカバー41)は、固定型(61)、可動型(62)、スライド型(63)を用いて成形される成形部品であって、固定型及び可動型によって形成される本体部(カバー本体43)と、スライド型によって形成されるアンダーカット形状(屈曲部44)と、を備え、本体部には、アンダーカット形状からスライド型の進行方向(A2)に離間した位置で本体部の離型方向に突き出した段差(46)と、段差を挟んでスライド型の進行方向の上流側の第1面(54)と進行方向の下流側の第2面(55)を連続させるガイドリブ(53)と、が形成されている。この構成によれば、スライド型の進行路上に段差が形成されていても、ガイドリブによって段差を挟んで進行方向の上流側の第1面から下流側の第2面にスライド型がスムーズにガイドされる。スライド型が段差に引っ掛かることなくスライドして、成形部品のアンダーカット形状からスライド型が取り外される。よって、成形部品のサイズや段差の高さ等が制約されることがなく、成形部品の形状自由度を向上させることができる。
【0041】
本実施例の成形部品において、ガイドリブは複数のガイドリブであり、当該複数のガイドリブがスライド型の進行方向に延び、段差の延在方向に沿って並んでいる。この構成によれば、スライド型が段差に沿って長く形成されていても、スライド型を段差に引っ掛けることなく取り外すことができる。また、ガイドリブによる厚肉箇所が最小限に抑えられることで、成形部品の成形時にガイドリブの形成面とは逆側の面のヒケの発生を抑えることができる。
【0042】
本実施例の成形部品において、スライド型が成形位置(P1)にある状態で、アンダーカット形状の最大深さ(d3)よりも、スライド型の進行方向の前端とガイドリブの距離(d2)が短い。この構成によれば、最も深いアンダーカット形状からスライド型の進行方向の後端が抜け出す前に、スライド型の進行方向の前端がガイドリブに接触し始める。可動型の取り外し後に生じる変形がスライド型によって抑えられ、アンダーカット形状からスライド型をスムーズに取り外すことができる。
【0043】
本実施例の成形部品において、スライド型が成形位置にある状態で、スライド型の進行方向に沿った断面視にて、アンダーカット形状の深さ(d1)よりも、スライド型の進行方向の前端とガイドリブの距離が短い。この構成によれば、アンダーカット形状からスライド型の進行方向の後端が抜け出す前に、スライド型の進行方向の前端がガイドリブに接触し始める。可動型の取り外し後に生じる変形が、より早い段階でスライド型によって抑えられ、アンダーカット形状からスライド型をスムーズに取り外すことができる。
【0044】
本実施例の成形部品において、本体部がカバー本体であり、アンダーカット形状がカバー外縁側の屈曲部であり、鞍乗型車両のカバー部品として用いられる。この構成によれば、鞍乗型車両のカバー部品の成形時にカバー外縁側の屈曲部を深く形成することができる。カバー部品同士の継ぎ目となるカバー外縁を車体内側に隠して鞍乗型車両の外観性を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0046】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。