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  • 特開-固定子用スプール及び固定子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042232
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】固定子用スプール及び固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149422
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】沈 慶春
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA01
(57)【要約】
【課題】コイルが挿入される固定子コアのスロットに対する絶縁構造の簡単化を図る。
【解決手段】実施形態の固定子用スプールは、絶縁材料から構成され、回転電機の固定子コアのティース部に装着され、コイルが巻回される胴部と、コイルエンドを受けるつば部とを有するものであって、前記固定子コアの厚み方向の一端側に配置される第1の分割スプールと、他端側に配置される第2の分割スプールとを有し、前記第2の分割スプールの胴部が、前記第1の分割スプールの胴部の外側にスライド移動可能に重なるように嵌合され、全体の長さ調整が可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料から構成され、回転電機の固定子コアのティース部に装着され、コイルが巻回される胴部と、コイルエンドを受けるつば部とを有するものであって、
前記固定子コアの厚み方向の一端側に配置される第1の分割スプールと、他端側に配置される第2の分割スプールとを有し、
前記第2の分割スプールの胴部が、前記第1の分割スプールの胴部の外側にスライド移動可能に重なるように嵌合され、全体の長さ調整が可能に構成されている固定子用スプール。
【請求項2】
前記第1の分割スプールの胴部の外面と、前記胴部に嵌合される前記第2の分割スプールの胴部の内面との間には、インシュロック構造が設けられている請求項1記載の固定子用スプール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固定子用スプールを有する固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、絶縁材料から構成され、回転電機の固定子コアのティース部に装着され、コイルが巻回される胴部と、コイルエンドを受けるつば部とを有する固定子用スプール、及び、その固定子用スプールを備えた固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機例えば各種モータにあっては、固定子として、リング状のヨーク部とこのヨーク部から内周方向に突出する複数のティース部とを有する固定子コアと、前記ティース部間のスロット内に収容されるコイルとを有して構成されるものがある。この場合、回転子コアとコイルとの間の絶縁を図るために、前記ティース部に対し、上下に分割したプラスチック製のスプール(インシュレータ)を軸方向の両側から嵌め込むように設けると共に、それ以外のスロット内の露出部分に絶縁紙を設けることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-188675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固定子コアのスロットの絶縁構造では、絶縁のために、スプールと絶縁紙との2種類の部材が必要であるため、部品点数が多く、組付けの工数も多くなっていた。特に、スプールとコアとの間に絶縁紙を挿入する作業は、面倒で手間がかかっていた。固定子コアの厚み寸法が変わることに対応して、絶縁紙の長さ寸法を変更する必要もあった。
【0005】
そこで、コイルが挿入される固定子コアのスロット部分に関する絶縁構造の簡単化を図ることが可能な固定子用スプール、及び、固定子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の固定子用スプールは、絶縁材料から構成され、回転電機の固定子コアのティース部に装着され、コイルが巻回される胴部と、コイルエンドを受けるつば部とを有するものであって、前記固定子コアの厚み方向の一端側に配置される第1の分割スプールと、他端側に配置される第2の分割スプールとを有し、前記第2の分割スプールの胴部が、前記第1の分割スプールの胴部の外側にスライド移動可能に重なるように嵌合され、全体の長さ調整が可能に構成されている。
また、実施形態の固定子は、上記した固定子用スプールを有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態を示すもので、固定子の要部構成を概略的に示す断面図
図2】固定子コアの要部構成を概略的に示す平面図
図3】一つのティース部に対するスプールの組付けの様子を示す分解斜視図
図4】一つのティース部にスプールを装着した状態を示す縦断側面図
図5】全体の長さ寸法を最も小さくした様子を示すスプールの縦断側面図
図6】全体の長さ寸法を最も大きくした様子を示すスプールの縦断側面図
図7】インシュロック構造を示す拡大縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るモータの固定子1の一部の構成を概略的に示しており、この固定子1は、固定子コア2にコイル3を装着して構成されている。前記固定子コア2は、周知のように、複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成され、図2にも示すように、全体として円環状に構成され、外周側のリング状のヨーク部4と、そのヨーク部4から内周方向に延びて設けられる複数本のティース部5とを備えている。ティース部5は、内周側端部が円周方向に拡がった形態に設けられている。尚、隣り合うティース部5同士間の空間部をスロット6という。
【0009】
このとき、前記各ティース部5には、絶縁材製の固定子用スプール7(以下、単にスプール7と称する)を介してコイル3が巻装される。コイル3は、固定子コア2との間がスプール7により絶縁された状態で、スロット6内に収容され、固定子コア2の図で上下両面からコイルエンドが露出する。本実施形態に係るスプール7の詳細については後述する。尚、前記固定子コア2は、全体が一体的に設けられるものであっても、ティース部5毎に分割された分割コアを組合わせて構成されるものであっても良い。また、図示はしないが、前記固定子1は、モータフレーム内に組込まれ、その内周部には、回転子が配置されてモータが構成される。
【0010】
さて、前記スプール7について、図3図7も参照して詳述する。尚、図3図7では、固定子鉄心2の軸方向つまり電磁鋼板の積層方向(厚み方向)を上下方向としている。前記スプール7は、絶縁材料例えばプラスチックから構成され、本実施形態においては、図3等に示すように、前記固定子コア2の厚み方向つまり軸方向の一端側(図で上側)に配置される第1の分割スプール11と、軸方向の他端側(図で下側)に配置される第2の分割スプール12とを有している。
【0011】
そのうち第1の分割スプール11は、第1の胴部13と、第1のつば部14とを一体に有している。前記第1の胴部13は、ティース部5の図で上面を覆う矩形状の天井板と、ティース部5の図で左右の側面のうち上部側を覆う矩形状の左右の側板とをほぼコ字型をなすように一体に有し、ティース部5に対し上方から被されるように装着される。この第1の胴部13は、後述する第2の胴部と共にティース部5を覆う。ティース部5に対するスプール7の装着により、固定子コア2との間の絶縁を図った状態でコイル3が巻装されるようになっている。
【0012】
前記第1のつば部14は、前記第1の胴部13の天井板の前後の2辺部分から上方に一体に延びるようにして、ティース部5の内周側と外周側とに配置される板状をなし、前記コイル3のコイルエンドを受けるように構成されている。尚、前記第1のつば部14には、コイル3の端部が接続される端子や、コイル3の渡り線部分を保持する保持部等を設けることができる。
【0013】
前記第2の分割スプール12は、前記第1の分割スプール11とほぼ上下対称となるようにして、第2の胴部15と、第2のつば部16とを一体に有している。前記第2の胴部15は、ティース部5の図で下面を覆う矩形状の底板と、ティース部5の図で左右の側面のうち下部側を覆う矩形状の左右の側板とをほぼコ字型をなすように一体に有し、ティース部5に対し下方から被されるように装着される。前記第2のつば部16は、前記第2の胴部15の底板の前後の2辺部分から下方に一体に延びるようにして、ティース部5の内周側と外周側とに配置される板状をなし、やはり前記コイル3のコイルエンドを受けるように構成されている。
【0014】
このとき、図4に示すように、前記第2の分割スプール12の第2の胴部15は、前記第1の分割スプール11の前記第2の分割スプール12の第2の胴部15は、前記第1の分割スプール11の第1の胴部13の外側にスライド移動可能に重なるように嵌合されている。ティース部5のうち、固定子コア2の厚み方向の中間部分では、胴部13、15が二重に重なるように設けられている。このように、スプール7全体として見れば、2つの分割スプール11、12の胴部13、15が、スライド移動可能に嵌合することにより、固定子コア2の厚み寸法に応じて、全体の長さ寸法の調整が可能に構成されている。
【0015】
更に、特に本実施形態では、第1の分割スプール11の第1の胴部13の外面と、それに嵌合する第2の分割スプール12の第2の胴部15の内面との間には、インシュロック構造17が設けられている。ここでいうインシュロック構造とは、図7に示すように、第1の分割スプール11の第1の胴部13の外面に、嵌合方向に交互に細かいギザギザとなる凹凸部17aが形成され、第2の分割スプール12の第2の胴部15の内面に、嵌合方向に交互に細かいギザギザとなる凹凸部17bが形成され、それら凹凸部17a、17bがいずれかの位置で噛み合うことによって位置決めが行われる構造をいう。
【0016】
次に、上記構成の固定子1及びスプール7の作用、効果について述べる。本実施形態においては、スプール7は、固定子コア2の厚み方向つまり軸方向に、第1の分割スプール11と第2の分割スプール12とに分割された形態とされ、それらを組合わせた状態で固定子コア2のティース部5に装着される。その際、第2の分割スプール12の第2の胴部15が、第1の分割スプール11の第1の胴部13の外側にスライド移動可能に重なるように嵌合される。
【0017】
このとき、第2の分割スプール12に対し第1の分割スプール11を、嵌合した胴部15、13同士の重なり量を変更するようにスライド移動させることにより、スプール7の全体としての長さ寸法を調整することができる。胴部13、15同士の重なり量が多ければ、全体が短くなり、重なり量が少なければ全体が長くなる。図5は、胴部13、15同士の重なり量を最大としてスプール7全体の長さ寸法を最も小さくした様子を示す。また、図6は、胴部13、15同士の重なり量を最小としてスプール7全体の長さ寸法を最も大きくした様子を示す。
【0018】
このように、分割コア2の厚み寸法に応じた長さ寸法のスプール7を得ることができ、1種類のスプール7で、固定子コア2の複数の厚み寸法に対応することが可能となる。そしてこのとき、スプール7により、固定子コア2のスロット6の内面全体を覆うことができるので、絶縁構造として、スプールの不足分を絶縁紙により補填することを行わずに済む。この結果、本実施形態のスプール7によれば、絶縁紙を不要として、コイル3が挿入される固定子コア2のスロット6に対する絶縁構造の簡単化を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0019】
また、特に本実施形態では、第1の分割スプール11の第1の胴部13の外面と、第2の分割スプール12の第2の胴部15の内面との間に、インシュロック構造17を設け、移動方向に交互に形成された凹凸部17aと凹凸部17bとが噛み合って位置決めが行われる構成とした。これにより、胴部13、15同士が嵌合位置からずれ動くことが起こりにくく、いわば仮止めを行うことができ、スプール7の取扱い性や組付け性をより高いものとすることができる。
【0020】
尚、上記した一実施形態では、第1の分割スプール11の第1の胴部13の外面と、第2の分割スプール12の第2の胴部15の内面との間に、インシュロック構造17を設けるようにしたが、インシュロック構造17は必要に応じて設ければ良い。また、各分割スプール11、12のつば部14、16の形状、構造、大きさ等については、様々な変更が可能である。更に、固定子コアのスロット数や、ティース部の形状などの具体的構成等についても、適宜変更できることは勿論である。
【0021】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
図面中、1は固定子、2は固定子コア、3はコイル、4はヨーク部、5はティース部、6はスロット、7は固定子用スプール、11は第1の分割スプール、12は第2の分割スプール、13は第1の胴部、14は第1のつば部、15は第2の胴部、16は第2のつば部、17はインシュロック構造、17a、17bは凹凸部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7